説明

電気接続箱における嵌合部材のロック構造

【課題】電気接続箱の電気部品装着部に装着された嵌合部材を取り外すに際してロック解除に必要とされる周りの作業スペースを削減し、且つロック解除を容易に行うことができる、新規なロック構造を提供すること。
【解決手段】嵌合部材22において電気部品装着部18aへの装着方向の後端側から前端側に向かって延び出すロック片42を形成し、電気部品装着部18aへの係止により電気部品装着部18aからの嵌合部材22の離脱を阻止する慣性ロック用の係止部48をロック片42の先端側に設けると共に、係止部48の電気部品装着部18aへの係止を解除するロック片42の変位方向と反対側に突出する操作用突部54を、ロック片42における係止部48よりも基端側に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に用いられる電気接続箱の関連技術であり、特に電気接続箱に形成された電気部品装着部に対してコネクタやカバー等の嵌合部材を装着するに際して、嵌合部材を電気部品装着部への装着状態に保持するロック構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジャンクションボックス等の自動車用電気接続箱には、その外部表面において、外部電線端末のコネクタやリレー,ヒューズ等の各種電気部品が装着される電気部品装着部が設けられている。また、かかる電気部品装着部には、電気部品を装着しない状況下で異物の侵入防止等の目的でカバーを取り付けることもある。
【0003】
ところで、このような電気部品やカバー等の嵌合部材は、電気部品装着部に対して確実に装着して脱落を防止する必要がある。一方、部品交換等のメンテナンスを考慮して、かかる嵌合部材は、電気部品装着部から容易に取り外すことも必要とされる。そこで、電気接続箱の電気部品装着部に対する嵌合部材の装着部分では、従来から、解除可能なロック構造が採用されている。例えば、特開平11−16635号公報(特許文献1)や特開2001−155820号公報(特許文献2)に記載のものがそれである。
【0004】
このような従来のロック構造は、慣性ロック構造とされており、係止部を有するロック片が嵌合部材に設けられていると共に、嵌合部材を電気部品装着部に嵌め入れる際にロック片の係止部が突き当たる当接部が電気部品装着部に設けられている。そして、作業者が力を加えて大きな慣性力で嵌合部材を電気部品装着部に嵌め入れることで、当接部を乗り越えるようにしてロック片の係止部を当接部に係止させるようになっている。
【0005】
ところが、このような従来の慣性ロック構造では、ロックを解除する際に、作業者がロック片を側方から押圧変位させなければならないことから、ロック片の外方に少なくとも手指が入る作業スペースが必要とされる。そのために、かかる作業スペースの確保が、電気接続箱の外面における電気部品等の装着スペース効率の向上に大きな障壁となっていたのである。
【0006】
特に近年では、電装品の増加に伴って電気接続箱の高密度化の要求が大きいことから、かかる要求に対応するために電気部品等の周囲の作業スペースを小さくせざるを得ない場合がある。そうすると、狭い隙間に手指を差し入れてロックを解除する作業が困難となり、メンテナンス等の作業性の悪化が避けられないという問題があったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−16635号公報
【特許文献2】特開2001−155820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、電気接続箱の電気部品装着部に装着された嵌合部材を取り外すに際してロック解除に必要とされる周りの作業スペースを削減し、且つロック解除を容易に行うことを可能と為し得る、新規なロック構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、電気接続箱に形成された電気部品装着部と該電気部品装着部に嵌め合わされて装着される嵌合部材との間に設けられて、該嵌合部材を該電気部品装着部への装着状態に保持する解除可能なロック構造であって、前記嵌合部材において前記電気部品装着部への装着方向の後端側から前端側に向かって延び出すロック片を形成し、前記電気部品装着部への係止により該電気部品装着部からの前記嵌合部材の離脱を阻止する慣性ロック用の係止部を前記ロック片の先端側に設けると共に、前記係止部の前記電気部品装着部への係止を解除する前記ロック片の変位方向と反対側に突出する操作用突部を、前記ロック片における前記係止部よりも基端側に設けたことを特徴とする電気接続箱における嵌合部材のロック構造、を特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ロック片の操作用突部に対してロック片の延び出し方向(嵌合部材の装着方向)の先端側に向かう押圧力を加えることで、ロック片の先端側を係止解除方向に変形変位させるモーメントをロック片に及ぼすことが出来る。そして、このモーメントによるロック片の曲げ変形により、ロック片の係合部における電気部品装着部への係止が解除される。
【0011】
すなわち、本発明によれば、ロック片の操作用突部に対して、嵌合部材の装着方向外方からの押圧力を及ぼすことでロックを解除できるから、嵌合部材の外周側に操作用のスペースを特別に設ける必要がない。それ故、電気部品装着部を複数隣接して配置することが可能となり、電気接続箱の表面における電気部品等の配設スペース効率の向上が図られ得る。
【0012】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係るロック構造であって、前記ロック片が、前記嵌合部材の後端部分から外周面上に突出して円弧状に延びる湾曲部と、該湾曲部から直線的に前記嵌合部材の前端側に向かって延び出すストレート部を備えており、該ストレート部において前記湾曲部に近接する位置に、前記操作用突部が設けられているものである。
【0013】
本態様によれば、嵌合部材とロック片の連結部分が湾曲部とされていることから、操作用突部に押圧力が及ぼされた際に作用点となるロック片の基端部側において、局部的な応力の集中を回避することがで、ロック片の耐久性の向上を図ることができる。また、ストレート部において前記湾曲部に近接する位置に、即ち、剛性の高くなる基端部を少し外れた位置で且つ曲げモーメントの十分なアーム長を確保できる位置に、前記操作用突部が設けられていることから、操作用突部への少ない押込み量に対して、ロック片の先端部の内方への変位量を大きく効率的に得ることができる。
【0014】
本発明の第三の態様は、前記第二の態様に係るロック構造であって、前記嵌合部材の外周面において、前記ロック片を挟んだ周方向両側でそれぞれ前記嵌合部材の後端側から前端側に向かって延びるガイド突起が突出形成されていると共に、前記電気部品装着部において、前記ガイド突起を案内して前記嵌合部材を装着方向に導く案内溝が設けられているものである。
【0015】
本態様では、ガイド突起の案内作用に基づいて、嵌合部材の装着時にロック片の係止部を電気部品装着部に対して確実に且つ容易にロックさせることができる。しかも、ロック片を両側から挟んで突設されたガイド突起が、ロック片を保護し得るから、嵌合部材を取り外した状態でのロック片への異物の打ち当り等による損傷も回避される。なお、電気部品装着部における案内溝は、嵌合部材の装着方向に向かって直線的に延びる有底溝であっても良いし、壁部に形成されたスリットからなる底無溝であっても良い。
【0016】
本発明の第四の態様は、前記第一〜三の何れか一つの態様に係るロック構造において、前記操作用突部における前記ロック片の基端側の端面が、該ロック片の延び出し方向に対して直交する平面をもって広がる押圧操作面とされている一方、前記操作用突部における該ロック片からの突出高さが該ロック片の先端側に向かって次第に小さくなる傾斜面をもって、該操作用突部が該ロック片の先端側に延び出しているものである。
【0017】
本態様では、操作用突部の基端側端面に形成された押圧操作面により、嵌合部材の装着方向外方から及ぼされる押圧力を操作用突部に対して一層効率的に及ぼすことが出来る。しかも、操作用突部の先端側において傾斜面をもってロック片の先端側に延び出した部分により、操作用突部に及ぼされた押圧力を、ロック片の先端側に対して一層効率的に及ぼすことが出来る。それ故、ロック片に対して、ロック解除させる方向により大きなモーメントを効率的に及ぼすことが可能となるのである。
【0018】
本発明の第五の態様は、前記第一〜四の何れか一つの態様に係るロック構造において、前記電気部品装着部がフード部を備えた雌型コネクタとされており、前記嵌合部材が該雌型コネクタの該フード部に挿し入れられて嵌合装着されるようになっているものである。
【0019】
本態様では、雌型コネクタとされたフード部を利用して、嵌合部材をより安定して確実に嵌め合わせてロック状態で装着することが出来る。特に、このようなフード部を形成する場合には、嵌合部材のロック片の係止部をフード部に対して係止させても良いし、フード部とは異なる部分に係止させても良い。また、かかるロック片をフード部を跨いで外周側に位置させても良いし、フード部の内周側に位置させても良い。
【0020】
本発明の第六の態様は、前記第五の態様に係るロック構造において、前記嵌合部材が、外部電線端末に設けられた雄型コネクタとされているものである。
【0021】
本態様では、電気接続箱の内部通電部材に対して外部電線を取り外し可能に接続する接続コネクタに対して、本発明を適用することが出来る。なお、本態様では、雄型コネクタが接続されていない状態で、ロック片を備えた本発明に従う構造のカバーを嵌合部材として、雄型コネクタに代えて装着することも可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に従う嵌合部材のロック構造においては、嵌合部材のロック片に設けられた操作部に対して、嵌合部材の装着方向外方からの押圧操作力を及ぼすことにより、ロック片の電気部品装着部に対するロックを解除できる。それ故、嵌合部材の外周側にロック解除作業用のスペースを特別に設ける必要がなく、電気接続箱の表面における電気部品の装着スペース効率の向上が図られ得る。しかも、嵌合部材の電気部品装着部に対するロックの解除操作を容易に行うことが出来るから、嵌合部材の電気部品装着部からの取り外しを必要とするメンテナンス等の作業性も向上され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一の実施形態としての電気接続箱における嵌合部材のロック構造を備えた電気部品装着部とカバーの嵌合前の状態を示す斜視図。
【図2】図1に示した電気部品装着部の平面図。
【図3】図1に示した電気部品装着部とカバーの嵌合前の状態を説明するための図2におけるIII−III断面図。
【図4】図1に示した電気部品装着部とカバーの嵌合状態を説明するための図3に対応する断面図。
【図5】図4に示した電気部品装着部とカバーの嵌合状態を解除する操作を説明するための図4に対応する断面図。
【図6】本発明の第二の実施形態としての電気接続箱における嵌合部材のロック構造を備えた雌コネクタと雄コネクタの嵌合状態を示す図4に対応する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
先ず、図1には、本発明の第一の実施形態としてのロック構造を備えた自動車用の電気接続箱10が示されている。この電気接続箱10は、合成樹脂製の中空矩形箱体からなる箱本体12を備えている。かかる箱本体12は、各浅底の開口箱形状とされたロアケース14とアッパケース16を、互いの開口側で組み合わせて固定することにより形成されており、その内部には、図示しないプリント基板やバスバー回路基板等が収容されて内部電気回路が構成されている。
【0026】
また、アッパケース16の上壁部には、各種の電気部品装着部18が形成されている。これらの電気部品装着部18は、図示しないヒューズやリレー等や外部電線端末に設けられたコネクタ等の別体の電気部品が装着されるようになっている。即ち、各電気部品装着部18には、内部の電気回路に接続された接続端子20が、これらの電気部品に対して通電接続可能に配設されている。
【0027】
また、これらの電気部品装着部18には、電気部品の他、図示されているように、カバー22が装着可能とされている。電気部品が装着されていない場合に、かかるカバー22によって電気部品装着部18が保護されてるようになっている。
【0028】
本発明では、電気部品装着部18に対して装着される嵌合部材には、コネクタ等の電気部品の他、かかるカバー22も含まれる。そして、これら電気部品とカバー22は、何れも、電気部品装着部18に装着されるものであるから、その装着部の形状が対応しており、且つ本発明に従うロック構造も同様に備えている。従って、本実施形態では、嵌合部材としてのカバー22について説明する。
【0029】
詳細には、図2および図3に示されているように、アッパケース16に設けられた一つの電気部品装着部18aは、雌型コネクタとされている。即ち、矩形の接続凹所24が形成されており、この接続凹所24の底面には、それぞれ内部回路に導通された複数本の接続端子20が突設されている。また、接続凹所24の周囲には、アッパケース16の表面に突出するフード部26が、略矩形筒形状で一体形成されている。
【0030】
また、アッパケース16には、フード部26の一つの長辺部27の中央部分の外周側に係合用凹部28が開口形成されている。この係合用凹部28は、フード部26の外周面に沿って、接続凹所24と略同じ深さで形成されている。更に、この係合用凹部28の内部には、外側の壁面30において内方に突出する係合突起32が形成されている。この係合突起32が、後述するカバー22のロック構造を構成するようになっている。
【0031】
さらに、係合用凹部28を挟んだ、フード部26の周方向両側には、それぞれ、案内溝34,34が形成されている。これらの案内溝34は、何れも、接続凹所24の底面からフード部26の突出先端面まで連続して直線的に延びており、係合用凹部28およびフード部26の各内周面に開口する有底溝とされている。
【0032】
一方、この電気部品装着部18aに装着されるカバー22は、図1および図3に示されているように、雌型コネクタとされた電気部品装着部18aに対応した雄型コネクタに相当する形状を備えている。
【0033】
すなわち、かかるカバー22の形状は、電気部品装着部18aの接続凹所24及びフード部26で構成された嵌合部に対して、それに対応した形状で嵌まり込む全体として略矩形ブロック形状を呈している。尤も、本実施形態では、嵌め込み方向の前端側に向かって開口する肉抜穴36が複数形成された中空構造とされており、カバー22が嵌合部に対して嵌まり込んだ際に、肉抜穴36の内部に接続端子20が収容されるようになっている。また、嵌め込み方向の後方側端部には、外周面上に突出する鍔状の操作用片38が一体形成されている。なお、この操作用片38は少なくとも一部に形成されていれば良いが、本実施形態では、一つの長辺と両短辺において突設されている。
【0034】
さらに、カバー22の一つの長辺部40には、その辺長方向の中央部分において、外周面上に突出する合成樹脂製のロック片42が一体形成されている。このロック片42は、カバー22の後端側部分から外周面上に突出し、1/4周の円弧状に延びる湾曲部44を介してそこから直線的にカバー22の前端側に向かって延び出しているストレート部46を備えた片持ち構造とされている。これら湾曲部44とストレート部46は、全体に略一定の幅寸法で延び出しており、ストレート部46は、カバー22の外周面と略平行に延びている。そして、ロック片42の長さは、そのストレート部46の先端部がカバー22の前端部と略同じか僅かに達しない程度に調整されている。
【0035】
本実施形態のロック片42の先端側には、慣性ロック用の窓状の係止部48が形成されている。この係止部48は、ロック片42の長さ方向中間部分に、厚さ方向で貫通して、長さ方向に延びて形成されており、係止部48の先端側の端面により係止面50が構成されている。なお、ロック片42において、特に係止面50よりも先端側の外側面が、その先端に向かうに従ってカバー22側の外周面側に向かって傾斜するテーパ面52とされていることが望ましい。ロック片42の先端側の外側面は、慣性ロック時に係合用凹部28に挿し入れられた際、係合突起32が押し付けられて内方、即ち、カバー22の外周面に接近する方向に撓み、ロック片42の外側面を係合突起32が滑るようにして係止位置に至ることになる。この係合突起32の滑動、即ち、ロック片42における係止部48よりも先端側部分の当該係合突起32の乗り越えをスムーズに行わせるために、当該部分にテーパ面52が形成されている。
【0036】
さらに、ロック片42には、その長さ方向の中間部分における係止部48よりも基端側の位置において、外側面上に突出する操作用突部54が一体形成されている。この操作用突部54は、ロック片42の先端部(係合突起32への係止部48)におけるストローク(変形変位)量を効率的に確保するために、ロック片42の長さ方向の中間部分よりも基端側に形成されることが望ましい。これにより、少ない押込み量に対して、ロック片42の先端部の内方への変位量を大きく効率的に得ることができる。尤も、ロック片42の基端縁部では、ロック片42の剛性が大きくて大きな操作力が必要とされるおそれがあるから、基端縁部から先端側に少し離れた位置が望ましい。本実施形態では、操作用突部54がストレート部46において湾曲部44に近接位置して形成されている。
【0037】
また、操作用突部54のロック片42における基端側の端面は、ロック片42の延び出し方向に対して直交する平面をもって広がる押圧操作面56とされており、カバー22の装着方向外方(図5上方)から及ぼされる押圧力が操作用突部54に対して効率的に及ぼされるようになっている。一方、操作用突部54のロック片42における先端側は、カバー22の外周面側に向かって傾斜する傾斜面58とされており、ロック片42の先端側に行くに従って操作用突部54の突出高さが次第に小さくなるようにして、ロック片42の先端側に延び出している。これにより、操作用突部54に及ぼされた押圧力がロック片42の先端側に対して効率的に及ぼされるようになっている。
【0038】
また、カバー22の外周面において、ロック片42を挟んだ周方向両側には、一対のガイド突起60,60が一体形成されている。これら一対のガイド突起60,60は、互いに平行にカバー22の後端側から前端側に向かって延びる薄肉のプレート形状とされている。
【0039】
このようなロック片42を備えたカバー22は、図3および図4に示されているように、その前端側から、前述の電気接続箱10に形成された電気部品装着部18aのフード部26に対して嵌め入れられて嵌合装着される。これにより、当該電気部品装着部18aを覆蓋して保護するようになっている。
【0040】
そこにおいて、カバー22を電気部品装着部18aに嵌め込むに際して、ロック片42が係合用凹部28に挿し入れられる。そして、ロック片42の先端部に設けられたテーパ面52が、係合用凹部28の内面に突出する係合突起32に当接すると、ロック片42の撓みにより当該係合突起32を乗り越えて、ロック片42が弾性復帰することによりロック片42の係止部48が係合突起32に嵌め合わされる。そして、係止部48の係止面50と係合突起32の係止作用によって、カバー22が電気部品装着部18aに対して抜け出し不能にロックされて、装着状態に保持される。このような慣性ロック機構により、カバー22と電気部品装着部18aとの間で本実施形態に従う嵌合部材のロック構造が構成されている。
【0041】
また、カバー22の電気部品装着部18aへの嵌め込みの際に、カバー22に突設された一対のガイド突起60,60が電気部品装着部18aの案内溝34,34に嵌め合わされて案内されるようになっていることから、ロック片42が係止位置に一層安定して導かれて確実なロック状態が安定して発現されることとなる。なお、このガイド突起60により、ロック片42の他部材との衝突による損傷も回避されるようになっている。
【0042】
一方、図5に示されているように、ロック片42の係合突起32に対する係合を解除するためには、操作用突部54の押圧操作面56に対して、外方(図5に矢印で示す上方)から先端側に向かって押しつける外力を及ぼす。この外力の作用点である操作用突部54がロック片42から外方にずれていることから、このずれ量をアーム長としてロック片42に対して曲げモーメントが作用することとなる。この曲げモーメントによって、ロック片42は、その先端部分が、カバー22の外周面に接近する方向に変形変位される。この変形変位によって、ロック片42の係止部48は、係合突起32から離隔する方向に変位して、係止部48と係合突起32の嵌合が解除される。その結果、カバー22の電気部品装着部18aに対するロックが解除される。図5に示すロック解除状態で、カバー22を引き抜くことにより、カバー22は容易に電気部品装着部18aから離脱することができる。
【0043】
このような構造とされたロック機構を備えたカバー22及び電気部品装着部18aは、ロック片42の操作用突部54に対して、カバー22の装着方向の上方から押圧力を加えることで、ロック片42の先端側を係止解除方向に変形変位させるモーメントをロック片42に及ぼして、ロック片42の係合突起32との係合を解除することができる。それ故、カバー22の外周側に操作用のスペースを特別に設ける必要がなく、電気部品装着部18を複数隣接して配置することが可能となり、電気接続箱10の表面における電気部品等の配設スペース効率の向上が達成される。また、操作用突部54に上方から押圧力を加えるという簡単な操作で、カバー22を電気部品装着部18aとのロック状態から容易に解除できる。
【0044】
特に、ロック片42のストレート部46において湾曲部44に近接する位置に、操作用突部54が設けられていることから、少ない押込み量に対して、ロック片42の先端部の内方への変位量を大きく確保することができ、一層容易にロックの解除操作を行うことができる。
【0045】
加えて、ロック片42がカバー22の外周面上に突出して形成されている一方、電気部品装着部18aにおいてロック片42が収容される係合用凹部28が接続凹所24とフード部26とからなる嵌合部の外周側に設けられていることから、電気部品装着部18aに配置される接続端子20等による制限を受けることなく、高い設計自由度をもってロック片42を形成することができる。
【0046】
次に、図6には、本発明の第二の実施形態としてのロック構造を備えた電気接続箱10に設けられた電気部品装着部としての雌型コネクタ61と、嵌合部材としての外部電線端末に設けられた雄型コネクタ62が示されている。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と同様の構造とされた部材および部位には、図中に第一の実施形態と同一の符号を付することにより、その説明を適宜に省略する。
【0047】
雌型コネクタ61は、電気接続箱10のアッパケース16の表面に開口形成された接続凹所24と、該接続凹所24からアッパケース16の表面上に突設されたフード部26で構成される嵌合部を備えている。雌型コネクタ61は、前記実施形態と同様、フード部26の一つの長辺部27の外周側に形成された係合用凹部28を備えており、係合用凹部28の内部には、外側の壁面30において内方に突出する係合突起32が形成されている。
【0048】
雄型コネクタ62は、雌型コネクタ61の嵌合部に対応した略矩形ブロック形状の合成樹脂製のコネクタハウジング64を備えている。コネクタハウジング64には、雄型コネクタ62の装着方向の後端側の端面(図6中上端面)に開口して、複数の端子挿入孔66が形成されている。各端子挿入孔66に対して、外部電線68の端末に設けられた雌型端子70が嵌合装着されている。また、各端子挿入孔66の底面には、雌型コネクタ61の底面から突出する接続端子20が挿通される端子挿通孔72が貫通形成されている。
【0049】
前記実施形態と同様に、コネクタハウジング64の一つの長辺部40には、その辺長方向の中央部分において、外周面上に突出するロック片42が一体形成されている。このロック片42は、コネクタハウジング64の後端部分から外周面上に突出し、1/4周の円弧状に延びる湾曲部44とそこから直線的にコネクタハウジング64の前端側に向かって延び出すストレート部46を備えており、これら湾曲部44とストレート部46が全体に略一定の幅寸法で延び出している。ストレート部46は、コネクタハウジング64の外周面と略平行に延びて、その先端部がコネクタハウジング64の前端部に僅かに達しない程度の長さとされている。
【0050】
このようなロック片42を備えた雄型コネクタ62は、その前端側から、前述の電気接続箱10に形成された雌型コネクタ61に対して嵌め入れられて嵌合装着される。これにより、雄型コネクタ62に設けられた雌型端子70と雌型コネクタ61の底面に突出する接続端子20が接続されて、それら雌型端子70と接続端子20を介して、外部電線68が電気接続箱10の内部回路に導通されるようになっている。
【0051】
雄型コネクタ62を雌型コネクタ61に嵌め込むに際して、前記実施形態と同様に、ロック片42が係合用凹部28に挿し入れられて、ロック片42の弾性変形を利用して、ロック片42の係止部48が係合突起32に嵌め合わされる。これにより、係止部48の係止面50と係合突起32の係止作用によって、雄型コネクタ62が雌型コネクタ61に対して抜け出し不能にロックされて、装着状態に保持される。このような慣性ロック機構により、雄型コネクタ62と雌型コネクタ61との間で本実施形態に従う嵌合部材のロック構造が構成されている。
【0052】
また、ロック片42の係合突起32に対する係合解除は、前記実施形態と同様の操作で為し得る。即ち、操作用突部54の押圧操作面56に対して、外方(図6中上方)から先端側に向かって押しつける外力を及ぼすことにより、操作用突部54を作用点として、ロック片42に対して曲げモーメントが作用する。この曲げモーメントによって、ロック片42の係止部48は、係合突起32から離隔する方向、即ち、コネクタハウジング64の外周面側に変位して、係止部48と係合突起32の嵌合が解除される。その結果、雄型コネクタ62の雌型コネクタ61に対するロックが解除される。このロック解除状態で、雄型コネクタ62を引き抜くことにより、雄型コネクタ62は容易に雌型コネクタ61から離脱することができる。
【0053】
このような構造とされたロック機構を備えた雄型コネクタ62および雌型コネクタ61は、前記実施形態と同様に、ロック片42の操作用突部54に対して、雄型コネクタ62の装着方向の上方から押圧力を加えることで、ロック片42の先端側を係止解除方向に変形変位させるモーメントをロック片42に及ぼして、ロック片42の係合突起32との係合を解除することができる。それ故、雌型コネクタ61に装着された雄型コネクタ62の外周側に操作用のスペースを特別に設ける必要がい。従って、雌型コネクタ61を複数隣接して配置することが可能となり、電気接続箱10の表面における電気部品等の配設スペース効率の向上が達成される。また、操作用突部54に上方から押圧力を加えるという簡単な操作で、雄型コネクタ62を雌型コネクタ61とのロック状態から容易に解除できる。その他、前記実施形態と同様の構成により、同様の効果を奏することは云うまでもない。
【0054】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、ロック片42に設けられた係止部48が窓状の凹部とされており、該係止部48の凹部が嵌め入れられる係合突起32が凸部とされていたが、ロック片42の係止部48が凸状とされると共に、該凸状の係止部48が嵌め入れられる係合凹部が電気部品装着部18aや雌型コネクタ61の係合用凹部28に設けられるようにしてもよい。
【0055】
また、前記実施形態では、本発明のロック構造を、電気部品装着部18に内挿されて嵌め合わされるカバー22や雄型コネクタ62に適用した例を説明したが、本発明は、例えば複数のヒューズ装着部等の電気部品装着部に対して外挿的に嵌め合わされて装着されるヒューズカバー等の嵌合部材にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
10:電気接続箱、18:電気部品装着部、22:カバー(嵌合部材)、26:フード部、34:案内溝、42:ロック片、44:湾曲部、46:ストレート部、48:係止部、54:操作用突部、56:押圧操作面、58:傾斜面、60:ガイド突起、61:雌型コネクタ、62:雄型コネクタ(嵌合部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接続箱に形成された電気部品装着部と該電気部品装着部に嵌め合わされて装着される嵌合部材との間に設けられて、該嵌合部材を該電気部品装着部への装着状態に保持する解除可能なロック構造であって、
前記嵌合部材において前記電気部品装着部への装着方向の後端側から前端側に向かって延び出すロック片を形成し、
前記電気部品装着部への係止により該電気部品装着部からの前記嵌合部材の離脱を阻止する慣性ロック用の係止部を前記ロック片の先端側に設けると共に、
前記係止部の前記電気部品装着部への係止を解除する前記ロック片の変位方向と反対側に突出する操作用突部を、前記ロック片における前記係止部よりも基端側に設けたことを特徴とする電気接続箱における嵌合部材のロック構造。
【請求項2】
前記ロック片が、前記嵌合部材の後端部分から外周面上に突出して円弧状に延びる湾曲部と、該湾曲部から直線的に前記嵌合部材の前端側に向かって延び出すストレート部を備えており、該ストレート部において前記湾曲部に近接する位置に、前記操作用突部が設けられている請求項1に記載の電気接続箱における嵌合部材のロック構造。
【請求項3】
前記嵌合部材の外周面において、前記ロック片を挟んだ周方向両側でそれぞれ前記嵌合部材の後端側から前端側に向かって延びるガイド突起が突出形成されていると共に、前記電気部品装着部において、前記ガイド突起を案内して前記嵌合部材を装着方向に導く案内溝が設けられている請求項2に記載の電気接続箱における嵌合部材のロック構造。
【請求項4】
前記操作用突部における前記ロック片の基端側の端面が、該ロック片の延び出し方向に対して直交する平面をもって広がる押圧操作面とされている一方、
前記操作用突部における前記ロック片からの突出高さが該ロック片の先端側に向かって次第に小さくなる傾斜面をもって、前記操作用突部が前記ロック片の先端側に延び出している請求項1〜3の何れか1項に記載の電気接続箱における嵌合部材のロック構造。
【請求項5】
前記電気部品装着部がフード部を備えた雌型コネクタとされており、前記嵌合部材が前記雌型コネクタの前記フード部に挿し入れられて嵌合装着される請求項1〜4の何れか1項に記載の電気接続箱における嵌合部材のロック構造。
【請求項6】
前記嵌合部材が、外部電線端末に設けられた雄型コネクタである請求項5に記載の電気接続箱における嵌合部材のロック構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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