説明

電気接続箱

【課題】電気接続箱の内部の水滴を円滑に排出できる一方、外部からの水等の侵入を確実に防止できる簡素な排水構造を提供する。
【解決手段】電気接続箱は、ハウジング2と、筒部4と、排水キャップ6と、を備える。筒部4は、ハウジング2が有する底壁3に接続するように構成される。筒部4には排水孔5が形成され、排水キャップ6は排水孔5の内壁に密着するように取り付けられる。排水キャップ6の外周面には、螺旋溝7が形成されている。螺旋溝7の一端はハウジング2の内部に接続され、螺旋溝7の他端はハウジング2の外部に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等に備えられる電気接続箱の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の電気接続箱においては、その内部で結露等により水滴が発生することがある。この水滴が電気接続箱の内部に長時間留まっていると、内部の電気部品を腐食させたり、回路間でのリークを発生させたりするため、水滴を外部に適切に排出する必要がある。従って、そのための排水構造を有する電気接続箱の構成が従来から提案されている。
【0003】
特許文献1は、この種の電気接続箱を開示する。特許文献1の電気接続箱においては、ケース底面部の略中央の下端に排水穴を設ける一方、その排水穴の周囲に外周枠をケース底壁より突設し、外周枠内に邪魔板部を突設している。特許文献1は、この構成により、排水穴への外部からの浸水を防止できるとしている。
【0004】
また、特許文献2に開示される電気接続箱においては、底壁に設けた水抜き孔に、弾性変形可能な樹脂製のクランプが組み付けられている。このクランプは、水抜き孔の開口部及びその周辺を広く覆う板部を有している。また、このクランプは上下にスライド可能に構成されており、クランプを押し上げる力が作用すると、板部が底壁の外面に密着して水抜き孔を閉鎖するように構成されている。特許文献2は、この構成により、泥等が掛かった場合でも水抜き孔が詰まることがなく、安定して排水ができ、かつ外部からの水の侵入を防止できるとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4063020号公報
【特許文献2】特開2001−95129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成は、外部からの水等が邪魔板部にぶつかるようにはなっているものの、水や泥等が排水穴を介して内部に侵入することを確実に防止できるとは言いがたい。従って、車両が跳ね上げる水や泥が排水穴の開口部に大量に掛かるような場合は、水や泥の侵入を防止し切れず、内部の電気部品に悪影響を与えるおそれがあった。
【0007】
一方、上記特許文献2は、可動部品であるクランプを有しているため、可動部分に泥等を噛み込むことでスライド動作が不安定になることがあり、耐久性の点で課題があった。また、クランプが有する板部が水抜き孔の開口から大きく周囲に張り出すように構成されているため、コンパクトな構成を実現する上で限界があり、周囲の部材と干渉させないようにレイアウトを設計することが困難な場合があった。更には、クランプが有する板部に水が跳ね返って、その跳ね返った水が水抜き穴から内部に侵入するおそれもあり、より確実な防水を実現する観点からも改善の余地が残されていた。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、電気接続箱の内部の水滴を円滑に排出できる一方、外部からの水等の侵入を確実に防止できる簡素な排水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成の電気接続箱が提供される。即ち、この電気接続箱は、ハウジングと、筒部と、弾性部材と、を備える。前記ハウジングは、底壁を有する。前記筒部は、前記底壁に接続するように構成される。また、前記筒部には排水孔が形成される。前記弾性部材は、前記排水孔の内壁に密着するように取り付けられる。前記弾性部材の外周面及び前記排水孔の内壁のうち少なくとも何れか一方には、螺旋溝が形成されている。前記螺旋溝の一端は前記ハウジングの内部に接続され、前記螺旋溝の他端は前記ハウジングの外部に接続されている。
【0011】
これにより、電気接続箱の内部の水滴を円滑に排出できる一方で、外部からの水等の侵入を確実に防止できる。また、コンパクトかつ簡素であり、耐久性にも優れた排水構造を実現することができる。
【0012】
前記の電気接続箱においては、前記螺旋溝は、前記排水孔の内壁に沿って少なくとも180°周回する長さを有していることが好ましい。
【0013】
これにより、外部からの水等の侵入を確実に防止することができる。
【0014】
前記の電気接続箱においては、前記弾性部材において、前記ハウジング内部を向く面には凹部が形成されており、この凹部が前記螺旋溝の一端に接続していることが好ましい。
【0015】
これにより、ハウジング内部で水が凹部に入り込むように案内した上で、螺旋溝にスムーズに流して排水することができる。
【0016】
前記の電気接続箱においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記弾性部材において、前記ハウジング内部を向く面に第1凹部が形成され、前記ハウジング外部を向く面に第2凹部が形成される。前記第1凹部及び前記第2凹部は、何れも前記螺旋溝の端部に接続している。前記第1凹部と第2凹部が同一の形状である。
【0017】
これにより、排水孔に対して弾性部材の向きを逆に組み付けても、同一の排水構造が実現されることになる。従って、弾性部材の向きを管理しながら排水孔に取り付ける必要がないので、組立作業が簡単になり、取付ミスも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気接続箱の全体的な構成を示す斜視図。
【図2】電気接続箱における排水構造を詳細に示す拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る電気接続箱1の全体的な構成を示す斜視図、図2は電気接続箱1の排水構造を詳細に示す拡大斜視図である。
【0020】
図1に示す電気接続箱1は、例えば自動車のエンジンルーム内に配置されるジャンクションボックスとして構成されている。この電気接続箱1はハウジング2を備えており、このハウジング2は、上カバーと下カバーを備えている。なお、図1には下カバーのみが描かれている。
【0021】
ハウジング2(下カバー)は、合成樹脂を成形することで構成されている。このハウジング2は、電気接続箱1の収容物の下側を覆う底壁3を有している。底壁3には、円筒状の筒部4が下向きに突出するように一体的に形成され、この筒部4の部分において電気接続箱1の排水構造が構成されている。
【0022】
この筒部4には、円形の排水孔5が貫通状に形成されている。この排水孔5は、その軸線を上下方向に向けた円柱状に形成されており、その上端がハウジング2の内部に接続され、下端がハウジング2の外部(電気接続箱1の外部)に接続されている。
【0023】
前記排水孔5の内部には、ゴム等の弾性を有する素材で形成された排水キャップ(栓部材、弾性部材)6が嵌め込まれている。この排水キャップ6は円柱状に形成されており、その外径は、前記排水孔5の内径よりも若干小さく設定されている。従って、排水キャップ6を排水孔5の内部に取り付けると、排水キャップ6の外周面が排水孔5の内壁に密着する。ただし、図2に示すように、排水キャップ6の外周面には螺旋溝7が形成されているので、ハウジング2内部の水を、螺旋溝7を通じて外部に排出することができる。
【0024】
図2には、図1における筒部4の周辺が詳細に示されている。なお、図2はハウジング2の内側からやや下向きに見た図であり、底壁3の一部のみが描かれている。また、図2においては、排水キャップ6に形成される螺旋溝7の形状等を明確に示すために、本来は実線で描かれるべき底壁3及び筒部4を鎖線で透視的に図示している。
【0025】
この図2に示すように、螺旋溝7は、排水キャップ6の外周面に等間隔で形成されている。螺旋溝7は排水孔5の内壁に沿って複数回周回するように形成され、螺旋溝7と螺旋溝7の間の部分においては、前述したように排水キャップ6が排水孔5の内壁に密着している。これにより、排水キャップ6と筒部4の内壁との間には、長い1本の螺旋状の排水通路が形成される。また、螺旋溝7の長手方向に垂直な平面で切った断面は、半円形となっている。
【0026】
本実施形態において、螺旋溝7は、排水キャップ6の外周を6周(360°×6)程度周回するだけの長さを有しているが、螺旋溝7の長さは任意に設定することができる。ただし、外部からの水等の侵入を確実に防止する観点からは、少なくとも半周(180°)程度、好ましくは1周(360°)以上の長さを有していることが好ましい。
【0027】
排水キャップ6の上面には第1凹部(凹部)11が、下面には第2凹部12が、それぞれ形成されている。第1凹部11及び第2凹部12は何れも4半円状に形成されており、第1凹部11と第2凹部12とは互いに同一形状となっている。そして、前記螺旋溝7の一端が第1凹部11に、他端が第2凹部12に、それぞれ接続されている。第1凹部11はハウジング2の内側に露出しており、第2凹部12はハウジング2の外部に露出している。
【0028】
以上の構成で、ハウジング2内で結露等により発生した水は、排水キャップ6の上側に形成された第1凹部11に入り込むことによって、螺旋溝7へ円滑に導かれる。そして、螺旋溝7内の水は、当該螺旋溝7に沿って周回しながら自重によって下側へ流れて第2凹部12に至り、最終的には排水孔5の開口から落下して排出される。
【0029】
一方で、電気接続箱1の設置場所によっては、自動車の走行によって跳ね上げられる水や泥等が筒部4の下面(排水孔5の開口部、排水キャップ6の下面、第2凹部12)に掛かることがある。しかしながら、そのような水や泥が長い螺旋溝7を上ってハウジング2の内部にまで到達することは、重力等の関係で事実上不可能である。これによって、簡素で耐久性に優れた逆流防止構造が実現されている。
【0030】
以上に説明したように、本実施形態の電気接続箱1は、ハウジング2と、筒部4と、排水キャップ6と、を備える。ハウジング2は、底壁3を有する。筒部4は、底壁3に接続するように形成される。また、筒部4には排水孔5が形成される。排水キャップ6は、排水孔5の内壁に密着するように取り付けられる。排水キャップ6の外周面には、螺旋溝7が形成されている。螺旋溝7の一端はハウジング2の内部に接続され、螺旋溝7の他端はハウジング2の外部に接続されている。
【0031】
これにより、電気接続箱1の内部の水滴を円滑に排出できる一方、外部からの水等の侵入を確実に防止できる。また、コンパクトかつ簡素であり、耐久性にも優れた排水構造を実現することができる。
【0032】
また、本実施形態の電気接続箱1において、螺旋溝7は、排水孔5の内壁に沿って少なくとも180°周回する長さを有している。
【0033】
これにより、外部からの水等の侵入を確実に防止することができる。
【0034】
また、本実施形態の電気接続箱1において、排水キャップ6の上側の面(ハウジング2の内部を向く面)には第1凹部11が形成されており、この第1凹部11が螺旋溝7の一端に接続している。
【0035】
これにより、ハウジング2内部で水が第1凹部11に入り込むように案内した上で、螺旋溝7にスムーズに流して排水することができる。
【0036】
また、本実施形態の電気接続箱1において、排水キャップ6の下側の面(ハウジング2の外部を向く面)に第2凹部12が形成されており、この第2凹部12が螺旋溝7の端部に接続している。そして、第1凹部11と第2凹部12が同一の形状である。
【0037】
これにより、排水孔5に対して排水キャップ6を仮に上下逆に組み付けたとしても、同一の排水構造が実現されることになる。従って、排水キャップ6の上下の向きを管理しながら排水孔5に取り付ける必要がないので、組立作業が簡単になり、取付ミスも防止できる。
【0038】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0039】
排水キャップ6の外周面に螺旋溝7を形成することに代えて、或いはそれに加えて、排水孔5の内壁に螺旋溝を形成するように変更することができる。
【0040】
排水孔(排水キャップ)の形状は、断面円形とすることに代えて、例えば断面4角形や断面8角形となる形状に変更することができる。なお、本明細書で「螺旋」とは、円柱の外周面に沿って形成される通常の形状のほか、例えば4角柱や8角柱の外周面に沿って形成されるような形状も含むものとする。
【0041】
螺旋溝7は、上記の実施形態のように等ピッチで形成することに代えて、不等ピッチで形成するように変更することができる。例えば、排水キャップ6の上側においてはピッチを小さくして緩い傾斜とする一方で、下側に近づくにつれてピッチを大きくして急な傾斜となるように構成したり、或いはその逆となるように構成したりすることができる。
【0042】
螺旋溝7の長手方向に垂直な平面で切った断面は、上記の実施形態のように半円状とすることに代えて、例えば矩形状、V字状等に変更することができる。
【0043】
排水孔5の開口は、上記実施形態のように真下を向くように形成されることに代えて、例えば斜め下を向くように形成しても良い。また、上記実施形態では、筒部4(排水孔5)及び排水キャップ6が上下鉛直方向に向けられているが、螺旋溝7において水が滞留せずに下向きに流れることを確保できる範囲で、斜めに向けて配置しても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 電気接続箱
2 ハウジング
3 底壁
4 筒部
5 排水孔
6 排水キャップ(弾性部材)
7 螺旋溝
11 第1凹部(凹部)
12 第2凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁を有するハウジングと、
前記底壁に接続するとともに、排水孔が形成される筒部と、
前記排水孔の内壁に密着するように取り付けられる弾性部材と、
を備え、
前記弾性部材の外周面及び前記排水孔の内壁のうち少なくとも何れか一方には、螺旋溝が形成されており、
前記螺旋溝の一端は前記ハウジングの内部に接続され、前記螺旋溝の他端は前記ハウジングの外部に接続されていることを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
請求項1に記載の電気接続箱であって、
前記螺旋溝は、前記排水孔の内壁に沿って少なくとも180°周回する長さを有していることを特徴とする電気接続箱。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気接続箱であって、
前記弾性部材において、前記ハウジング内部を向く面には凹部が形成されており、この凹部が前記螺旋溝の一端に接続していることを特徴とする電気接続箱。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電気接続箱であって、
前記弾性部材において、前記ハウジング内部を向く面に第1凹部が形成され、前記ハウジング外部を向く面に第2凹部が形成され、
前記第1凹部及び前記第2凹部は、何れも前記螺旋溝の端部に接続しており、
前記第1凹部と第2凹部が同一の形状であることを特徴とする電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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