説明

電気暖房器

【課題】融雪用電力のような通電停止期間を有する電源を用いた場合において、通電停止期間であっても室温の低下を低減できる電気暖房器を提供する。
【解決手段】この暖房器は、ヒータ1と、ヒータ1とメイン商用電源Vとを接続するメイン回路部2と、ヒータ1とサブ商用電源Vとを接続するサブ回路部3と、電源Vからの電力供給により、メイン回路部2及びサブ回路部3の双方を電気的に開閉可能なリレー4と、周囲の温度に応じてヒータ1への供給電力を制御可能なサーモスタット5とを具える。メイン商用電源Vの通電時、ヒータ1には、電源Vからの電力が供給され、通電停止時、リレー4により回路が切り換えられて、電源Vからの電力が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内などで利用される電気暖房器に関するものである。特に、電気暖房器の電源として、通電が停止される時間帯(停止期間)を有する契約電力を利用する場合において、通電停止中の室内の温度低下を低減し、快適な室温を保持し易い電気暖房器に関する。
【背景技術】
【0002】
北海道などの寒冷地において、電力会社は、融雪用電力と呼ばれるサービスを行っている。融雪用電力は、冬期に所定期間(例えば、3ヶ月以上)に亘って電力を利用する場合に電気代を割安とする契約電力である。このような低料金の電力をパネルヒータやベースボードヒータといった電気暖房器の電源に利用することで、長期に亘り快適な室温を維持しながら、電気代を抑えることができる。
【0003】
一方、暖房器として暖房用ヒータと蓄熱体とを具える暖房器がある(特許文献1,2参照)。この暖房器は、通電により加熱される暖房用ヒータと、通電により加熱される蓄熱用ヒータを内蔵する蓄熱体とを具え、暖房用ヒータと蓄熱体との双方により暖房を行うことができる。
【0004】
【特許文献1】特許第2967638号公報
【特許文献2】特開平6−300361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
融雪用電力には、24時間のうち2時間又は5時間といった通電停止期間が設けられている。電力会社は、通電停止期間になると、契約者宅に設けたタイムスイッチにより電力供給を遮断する。この停止期間中、契約者は、電気暖房器による暖房を行えず、室温が低下し、室内の快適性が損なわれる。停止期間は、暖房の必要性が高いピーク時間帯(16時〜21時)に設けられているため、特に、一日中暖房を必要とするような寒冷地では、上記停止期間における室内の快適性の改善が望まれる。
【0006】
そこで、特許文献1,2に開示される暖房器を利用し、通電期間中に蓄熱体に蓄熱しておき、停止期間中は、蓄熱体を利用して暖房を行うことが考えられる。しかし、この暖房器では、以下の問題がある。
【0007】
(1) 暖房器が大型化、大重量化する。
停止期間中に必要とされる放熱量を確保しようとすると、相当量の蓄熱体を暖房器に内蔵する必要がある。また、蓄熱体は、通常、重量が大きい。
(2) 温度制御が行いにくい。
蓄熱体を具える暖房器では、ファンなどを調整して周囲の低温の大気を器内に取り込み、温風と所望量の低温の大気とを混合して、温度を調整する。しかし、停止期間中は、ファンなどの電力を必要とする部材が利用できない。そのため、自然対流による温度調整となり、使用者の所望の温度に調整することが難しい。また、蓄熱体は、温度が低くなると放熱量が低下するため、再度蓄熱させる必要があるが、停止期間中は、蓄熱用ヒータに通電できず、蓄熱できない。従って、停止期間の初期には、蓄熱体の放熱量が大き過ぎて室温を上げ過ぎ、停止期間の終期には、蓄熱体の放熱量が小さ過ぎて室温を下がり過ぎる恐れがある。
(3) 構成が複雑化する。
蓄熱体を具える暖房器は、上記ファンなどの他に、暖房器からの熱漏れを防止する断熱材なども必要であり、構成が複雑になる。また、複雑な構成であるため、この暖房器は、製造性がよくなく、製造コストが高くなる。
【0008】
そこで、本発明の主目的は、一時的に通電を停止する通電停止期間を有する契約電力を電源とする場合に、その停止期間にあっても室温の低下を低減可能な電気暖房器を提供することにある。また、本発明の他の目的は、大型化、大重量化することなく、簡単な構造でありながら、温度調節が容易に行える電気暖房器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、二つの商用電源を利用可能な構成とすることで上記目的を達成する。具体的には、第一の本発明電気暖房器は、一つの発熱体と、この発熱体と二つの商用電源とをそれぞれ接続する二つの回路部とを具える。より具体的には、この暖房器は、通電により発熱する第一発熱体と、メイン商用電源と第一発熱体とを接続するメイン回路部と、サブ商用電源と第一発熱体とを接続するサブ回路部と、メイン回路部とサブ回路部とを選択的に開閉可能な第一切換部と、周囲の温度に応じて第一発熱体に供給される電力を制御する第一温度調整部とを具える。そして、この暖房器は、第一切換部がサブ回路部を開いているとき、メイン商用電源からの電力が第一発熱体に供給され、第一切換部がサブ回路部を閉じているとき、サブ商用電源からの電力が第一発熱体に供給されるように構成する。
【0010】
第二の本発明電気暖房器は、二つの発熱体と、各発熱体と各商用電源とをそれぞれ接続する二つの回路部とを具える。より具体的には、この暖房器は、通電により発熱する第二発熱体及び第三発熱体と、メイン商用電源と第二発熱体とを接続するメイン回路部と、サブ商用電源と第三発熱体とを接続するサブ回路部と、サブ回路部を開閉可能な第二切換部と、周囲の温度に応じて、第二発熱体及び第三発熱体に供給される電力を制御する第二温度調整部とを具える。そして、この暖房器は、第二切換部がサブ回路部を開いているとき、メイン商用電源からの電力が第二発熱体に供給され、第二切換部がサブ回路部を閉じているとき、サブ商用電源からの電力が第三発熱体に供給されるように構成する。
【0011】
発熱体は、ジュール効果により加熱可能な種々のものが利用できる。代表的には、シーズヒータが挙げられる。その他、フィルムヒータ、絶縁被覆ヒータ、ラバーヒータ、石英ヒータ、セラミックヒータ、PCTヒータ(positive temperature coefficient heater)といった各種のヒータが利用できる。また、線状ヒータ、面状ヒータのいずれも利用できる。第一の本発明暖房器では、少なくとも一つの発熱体(第一発熱体)を具える。第二の本発明暖房器では、少なくとも二つの発熱体(第二、第三発熱体)を具える。
【0012】
本発明暖房器は、メイン回路部とサブ回路部との二つの回路を具える。メイン回路部は、メイン商用電源と第一発熱体(又は第二発熱体)とを接続し、サブ回路部は、サブ商用電源と第一発熱体(又は第三発熱体)とを接続する。これら回路部は、電力の伝送が可能な導体を有する電線で構成する。そして、本発明暖房器は、少なくとも一方の回路部を開閉可能な切換部を具え、この切換部により一方の回路部が開かれても、他方の回路部は、閉じた状態となるように構成し、閉じている回路部及びこの回路部を介して接続される発熱体と商用電源とを用いて暖房を行う。切換部としては、いずれか一方の電源、例えば、メイン商用電源からの電力により自動的に開閉動作を行うリレーが挙げられる。このようなリレーを用いることで、切換部用の電源を別途用意する必要がない。
【0013】
第一の本発明暖房器は、同一の第一発熱体に対して、二つの商用電源が接続されて電力供給可能な構成である。そこで、第一切換部は、メイン回路部とサブ回路部とを選択的に開閉可能とする。従って、メイン回路部及びサブ回路部の双方とも開閉可能な構成である。そして、第一切換部は、サブ回路部を開き、かつメイン回路部を閉じたとき、メイン商用電源からの電力が第一発熱体に供給され、サブ回路部を閉じ、かつメイン回路部を開いたとき、サブ商用電源からの電力が第一発熱体に供給されるように構成する。この構成により、両回路部のうちいずれか一方の回路部が電気的に開かれ、他方の回路部が閉じた状態となり、閉じている回路部に接続される商用電源からの電力のみを第一発熱体に供給して暖房を行うことができる。このような本発明暖房器は、メイン商用電源として、一時的に通電が停止されるような契約電力を利用していても、サブ商用電源を利用することで、通電停止期間における室温の低下を低減できる。
【0014】
一方、第二の本発明暖房器は、異なる二つの発熱体のそれぞれに別の商用電源が接続されて電力供給可能な構成である。そこで、第二切換部は、例えば、サブ回路部のみを開閉可能とする。そして、サブ回路部が開いているとき、メイン商用電源からの電力が供給される第二発熱体により暖房を行い、サブ回路部が閉じているとき、サブ商用電源からの電力が供給される第三発熱体により暖房を行う構成とする。この構成では、メイン回路部は、電気的に開かれることがないため、メイン商用電源として1日のうち所定の時間に通電が停止されるような契約電力を利用することで、第二発熱体を利用した暖房及び第三発熱体を利用した暖房のいずれかを行うことができる。或いは、第二切換部は、メイン回路部及びサブ回路部の双方を開閉可能とし、サブ回路部を開き、かつメイン回路部を閉じたとき、メイン商用電源からの電力が第二発熱体に供給され、サブ回路部を閉じ、かつメイン回路部を開いたとき、サブ商用電源からの電力が第三発熱体に供給されるように構成してもよい。この構成では、両回路部のうちいずれか一方の回路部が電気的に開かれ、他方の回路部が閉じた状態となるため、閉じている回路部に接続される発熱体を利用して暖房を行うことができる。第二の本発明暖房器も第一の本発明暖房器と同様に、メイン商用電源として、一時的に通電が停止されるような契約電力を利用していても、サブ商用電源を利用することで、通電停止期間における室温の低下を低減できる。
【0015】
本発明暖房器は、発熱体への供給電力を制御して発熱体の放熱量を調整する温度調整部を具え、暖房器の周囲の温度を自動的に調整可能な構成とする。温度調整部としては、例えば、発熱体と電源との間の回路部を電気的に開閉することで、発熱体への供給電力を制限するものが利用できる。より具体的には、温度調整部は、周囲の温度に応じて回路部を電気的に開閉して、発熱体への供給電力を制御するサーモスタットが利用できる。温度調整部を具える本発明暖房器は、室温の過剰な温度上昇や過度の温度低下を低減し、室内の快適性を維持できる。
【0016】
本発明暖房器で使用する商用電源は、種々の契約電源が利用できる。メイン商用電源としては、1日のうち所定期間に通電が停止されるような契約電源、例えば、融雪用電力、深夜電力が挙げられる。サブ商用電源としては、電力会社から常時通電が行われる契約電源、例えば、従量電灯が挙げられる。このとき、本発明暖房器は、融雪用電力の通電期間においてメイン回路部を利用して第一発熱体(又は第二発熱体)により暖房を行い、停止期間になると、切換部により従量電灯電源に切り換えてサブ回路部を利用して第一発熱体(又は第三発熱体)への電力供給を行い、暖房を継続する。或いは、サブ商用電源として、夜間の電気代が割安で昼間の電気代が割高な契約電源、例えば、時間帯別電灯を利用してもよい。このとき、使用者が設定した任意の時間、例えば、電気代が安価な夜間にメイン商用電源から時間帯別電灯電源に切り替わると、電気代をより低減することができる。そこで、本発明暖房器は、使用者が設定した時間に切換部が切換動作するように時間制御手段を具えた構成としてもよい。
【0017】
契約電源の標準電圧が複数ある場合、本発明暖房器で使用する両電源は、標準電圧を等しくしてもよいし、異ならせてもよい。標準電圧が大きいと、高い暖房能力が得られる。例えば、電源の標準電圧として100Vと200Vとが利用できる場合、両電源の標準電圧を200Vとすると、いずれの電源の使用中も高い暖房能力を維持できる。一方の電源の標準電圧を200V、他方の電源の標準電圧を100Vとすると、高電圧の電源の使用中は、高い暖房能力が発揮できるが、低電圧の電源の使用中は、高電圧の電源のときと比較して発熱体の容量が低下する。しかし、本発明者が調べたところ、このような暖房器でも室温の低下を十分に抑えることができる。また、低電圧の電源の使用中は、消費電力が低減され、電気代をより抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
上記構成を具える本発明電気暖房器は、常時、いずれか一方の商用電源からの電力が発熱体に供給可能であるため、一方の電源が通電停止期間を有するような契約電力であっても、暖房を継続して行うことができる。そのため、本発明暖房器は、通電停止期間における室内の温度低下を低減し、快適な室温を維持し易い。また、本発明暖房器は、温度調整部により室内を所望の温度に調整できるため、室温が過剰に上昇したり、低温になり過ぎることを抑制できる。更に、本発明暖房器は、上述した蓄熱体を利用しない簡単な構成であるため、大型化、大重量化することなく、長期に亘り快適な室温を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(実施例1 一つ発熱体を共通に用いる例)
図1は、本発明電気暖房器の概略を示す回路図である。この暖房器は、ヒータ1(第一発熱体)と、ヒータ1と電源V(メイン商用電源)とを接続して電源Vからの電力をヒータ1に供給するメイン回路部2と、ヒータ1と電源V(サブ商用電源)とを接続して電源Vからの電力をヒータ1に供給するサブ回路部3とを具える。また、この暖房器は、電源Vからの電力供給により、メイン回路部2及びサブ回路部3の双方を電気的に開閉可能なリレー4(第一切換部)を具える。更に、この暖房器は、周囲の温度に応じてヒータ1への供給電力を制御可能なサーモスタット5(第一温度調整部)を具える。その他、この暖房器は、異常過熱時にヒータ1への電力を遮断して異常過熱を防止する温度過昇防止器6、メインスイッチ(図示せず)を具える。これらヒータ1、メイン回路部2、サブ回路部3、リレー4、サーモスタット5、温度過昇防止器6などの構成部材は、図示しない本体ケースに収納される。使用者は、メインスイッチをONすることで、暖房を行え、OFFすることで、暖房を停止できる。
【0020】
電源Vとして、24時間のうち所定の時間通電が停止される契約電力(例えば、融雪用電力や深夜電力)を利用し、電源Vとして、常時通電される契約電力(例えば、従量電灯)を利用する。また、電源Vの標準電圧を200V、電源Vの標準電圧を100Vとする。メイン回路部2、サブ回路部3は、一般的な電線を用いて形成している。メイン回路部2は、電源Vとヒータ1とを直列に接続し、中間にリレー4を具える回路であり、サブ回路部3は、電源Vとヒータ1とを直列に接続し、中間にリレー4を具える回路である。これら両回路部2、3で構成される全体回路は、各電源側を分岐回路、ヒータ側を共通回路とし、リレー4の開閉動作により、分岐回路と共通回路とが電気的に接続又は切り離される。リレー4は、ソレノイドコイルを用いて回路の開閉動作を行う構成であり、コイルが電源Vに接続される。このリレー4は、電源Vの通電時、電源Vとヒータ1との間を閉じると共に電源Vとヒータ1との間を開き、電源Vの通電が停止されると、電源Vとヒータ1との間を開くと共に電源Vとヒータ1との間を閉じる。このリレー4の開閉動作により、ヒータ1は、電源V及び電源Vのいずれか一方からの電力のみが供給される。ヒータ1は、シーズヒータであり、所望の放熱量が得られるように使用量を選択している。サーモスタット5、温度過昇防止器6、メインスイッチは、一般的な電気暖房器に用いられるものを使用しており、共通回路においてヒータ1に直列に具える。
【0021】
次に、この暖房器の利用状態を説明する。例えば、電源Vとして、1日のうち16時〜20時までの間に15分間隔で合計2時間に亘り通電が停止される停止期間を有する融雪用電力を用いる場合、停止される2時間以外の22時間において、リレー4は、電源Vからの電力が供給されてヒータ1と電源Vとの間を閉じ、ヒータ1と電源Vとの間を開いた状態にする。この状態によりこの暖房器は、閉じた状態にあるメイン回路部2を介して電源Vからの電力がヒータ1に供給されて暖房を行うことができる。また、サーモスタット5は、室温に応じて回路部の開閉を適宜行い、ヒータ1の放熱量が所望の量になるように自動的に調整する。この暖房器を用いた室温状態を図2のグラフに示す。電源Vの定常通電期間、つまり、20時以降翌16時までの間は、室温が安定している。
【0022】
一方、16時になって、電源Vからの電力がタイムスイッチ(図示せず)などにより自動的に停止されると、リレー4は、ヒータ1と電源Vとの間を開き、ヒータ1と電源Vとの間を閉じた状態にする。この状態によりこの暖房器は、閉じた状態にあるサブ回路部3を介して電源Vからの電力がヒータ1に供給されて、引き続き暖房を行うことができる。つまり、16時〜20時の間は、15分ごとに電源Vを用いた暖房と、電源Vを用いた暖房とを交互に行う。ここで、電源V(100V)は、電源V(200V)よりも標準電圧が小さいことから、ヒータ容量が1/4程度となる。そのため、図2に示すように、電源Vの定常通電期間(20時〜翌16時)と比較して電源Vを使用する期間では、室温が若干低下する。しかし、電源Vの通電停止時に暖房が行われない従来の暖房器を用いた場合と比較して、本発明暖房器は、室温の低下を十分低減していることが図2のグラフからわかる。なお、図2で用いた従来の暖房器は、図1に示す暖房器と同様の容量を有するヒータ、サーモスタット、温度過昇防止器を直列に接続した回路を具え、電源V(200V)を使用した。
【0023】
このように本発明暖房器は、通電停止期間が設けられた電源を利用する場合であっても、ヒータに継続的に通電することができるため、継続的に暖房を行うことができ、室温の低下を低減して、快適な室温の維持を実現する。また、ここで説明した暖房器は、サブ商用電源の標準電圧をメイン商用電源の標準電圧よりも小さくしているため、サブ商用電源の使用期間中の消費電力を小さくし、電気代を低減する。更に、この暖房器は、既存の暖房器を利用して簡単に構成することができる。例えば、電源に接続可能であり、ヒータ、サーモスタット、温度過昇防止器を有する回路を具える既存の暖房器に、この回路に接続される電源と別の電源に接続可能な回路と、上述したリレーとを追加することで本発明暖房器を構成することができる。
【0024】
<変形例1−1 リレーにタイマ手段を具える例>
次に、リレーにタイマ手段(時間制御手段)を具える構成を説明する。図3は、本発明電気暖房器の概略を示す回路図であり、リレーにタイマ手段を具える例を示す。図3において図2と同一符号は、同一物を示す。この暖房器の基本的構成は、上記実施例1で説明した暖房器と同様であり、異なる点は、リレー4Tにタイマ手段8を具えることにある。以下、この点を詳しく説明し、その他の詳細については省略する。
【0025】
リレー4Tに具えるタイマ手段8は、使用者が設定した所定の時間にリレー4Tが自動的に開閉動作を行えるように制御する部材である。具体的には、タイマ手段8は、開始時間になると、電源Vとヒータ1との間を開き、電源Vとヒータ2との間を閉じた状態にし、終了時間になると、電源Vとヒータ1との間を閉じ、電源Vとヒータ2との間を開いた状態にするようにリレー4Tの開閉動作を制御する。このようなリレー4Tを具える暖房器では、使用者が設定した任意の時間に亘って、電源Vからの電力をヒータ1に供給して、電源Vを利用した暖房を行うことができる。例えば、電源Vとして、昼間の電気代が割高で、夜間(23時から翌7時まで)の電気代が割安である契約電力(例えば、時間帯別電灯)を利用する場合、割安な夜間にリレー4Tが開閉するようにタイマ手段8を設定しておき、本来電源Vの定常通電期間において、電源Vを利用する。つまり、この暖房器は、電源Vの通電停止期間と、タイマ手段8の設定時間とにおいて電源Vを利用する。このようにタイマ手段を具えて所望の時間に亘ってサブ商用電源を利用することで、この暖房器は、継続的な暖房を行うことができながら、電気代を低減できる。特に、上述のように電気代が安い特定の時間に低電圧のサブ商用電源を利用すると、電気代をより低減することができる。
【0026】
<変形例1−2 メイン商用電源及びサブ商用電源の標準電圧が等しい例>
実施例1では、メイン商用電源の標準電圧をサブ商用電源の標準電圧よりも大きくしていたが、両電源の標準電圧を等しくしてもよい。例えば、サブ商用電源の標準電圧をメイン商用電源の標準電圧と同様に200Vにする。両電源の標準電圧を高くすることで、この暖房器は、サブ商用電源を用いて暖房を行うとき、メイン商用電源を用いて暖房を行うときと同程度の暖房能力を有することができる。従って、メイン商用電源の停止期間中も、温度の低下がほとんどなく、安定した室温を維持することができる。
【0027】
(実施例2 二つの発熱体を具える例)
実施例1では、二つの電源に対して一つの発熱体を共通に利用する構成について説明した。この例では、各電源に対してそれぞれ別の発熱体を具える暖房器について説明する。図4は、本発明電気暖房器の概略を示す回路図であり、二つの発熱体を具える例を示す。この暖房器は、ヒータ10(第二発熱体)と、ヒータ10と電源V(メイン商用電源)とを接続して電源Vからの電力をヒータ10に供給するメイン回路部11と、ヒータ12(第三発熱体)と、ヒータ12と電源V(サブ商用電源)とを接続して電源Vからの電力をヒータ12に供給するサブ回路部13とを具える。また、この暖房器は、電源Vからの電力により、電源Vとヒータ12との間を電気的に開閉可能なリレー14(第二切換部)を具える。更に、この暖房器は、周囲の温度に応じてヒータ10への供給電力、及びヒータ12への供給電力を制御可能なサーモスタット15(第二温度調整部)を具える。その他、この暖房器は、異常過熱時にヒータ10への電力を遮断して異常過熱を防止する温度過昇防止器16、及びヒータ12への電力を遮断する温度過昇防止器17、メインスイッチ(図示せず)を具える。これらヒータ10、12、メイン回路部11、サブ回路部13、リレー14、サーモスタット15、温度過昇防止器16、17といった構成部材は、図示しない本体ケースに収納される。使用者は、メインスイッチをONにすることで、暖房が行え、OFFすることで、暖房を停止できる。
【0028】
電源Vとして、実施例1で説明した融雪用電力(標準電圧200V)、電源Vとして、従量電灯(同100V)を利用する。メイン回路部11、サブ回路部13は、実施例1と同様の一般的な電線を用いて形成している。メイン回路部11は、電源Vとヒータ10とを直列に接続し、中間にリレー14(ソレノイドコイル)を並列に具える回路であり、サブ回路部13は、電源Vとヒータ12とを直列に接続し、中間にリレー14(開閉箇所)を具える回路である。両回路部11、13は、独立的な回路であり、電源Vの通電時、リレー14を介して電磁的に結合される。リレー14は、ソレノイドコイルを用いて回路の開閉動作を行う構成であり、電源Vの通電時、サブ回路部13を開いた状態にし、電源Vの通電が停止されると、サブ線路部13を閉じた状態にする。このリレー14の開閉動作により、この暖房器は、電源V及び電源Vのいずれか一方の電源を利用して暖房を行うことができる。ヒータ10、12は、シーズヒータであり、所望の放熱量が得られるように使用量を調整している。サーモスタット15は、メイン回路部11に直列に接続される第一サーモスタット接点部15aと、サブ回路部13に直列に接続される第二サーモスタット接点部15bとを具える。各サーモスタット接点部15a、15b、温度過昇防止器16、17、メインスイッチは、一般的な暖房器に用いられるものである。温度過昇防止器16、17は、それぞれヒータ10、12に直列に配され、メインスイッチは、ヒータ10、12に直列に配される。
【0029】
次に、この暖房器の利用状態を説明する。例えば、電源Vとして、実施例1と同じ融雪用電力を用いる場合、通電が停止される2時間以外の22時間において、リレー14は、電源Vからの電力が供給されて、電源Vとヒータ12との間を開いた状態、つまり、サブ回路部13を開いた状態にする。この状態によりこの暖房器は、電源Vからの電力がメイン回路部11によりヒータ10に供給されて暖房を行うことができる。また、サーモスタット15の第一サーモスタット接点部15aは、室温に応じてメイン回路部11の開閉を適宜行い、ヒータ10の放熱量が所望の量になるように自動的に調整する。この暖房器を用いることで、実施例1の暖房器と同様に20時以降翌16時までの間、室温が安定する。
【0030】
一方、16時になって、電源Vからの電力がタイムスイッチ(図示せず)などにより自動的に停止されると、リレー14は、ヒータ12と電源Vとの間を閉じる、つまり、サブ回路部13を閉じた状態にする。この状態によりこの暖房器は、電源Vからの電力がサブ回路部13によりヒータ12に供給されて、引き続き暖房を行うことができる。また、サーモスタット15の第二サーモスタット接点部15bは、室温に応じてサブ回路部13の開閉を適宜行い、ヒータ12の放熱量が所望の量になるように自動的に調整する。この暖房器も実施例1の暖房器と同様に電源Vの通電停止期間において、室内の温度低下を低減することができる。
【0031】
実施例2の暖房器も実施例1と同様に、通電停止期間が設けられた電源を利用していても、継続的な暖房が可能であり、室温の低下を少なくし、快適な室温の維持を実現する。また、ここで説明した暖房器は、サブ商用電源の標準電圧をメイン商用電源の標準電圧よりも小さくしているため、サブ商用電源の使用中の消費電力を小さくし、電気代を低減できる。なお、両電源の標準電圧を等しくしてもよい。例えば、サブ商用電源の標準電圧も200Vとすると、サブ商用電源の使用時においても高い暖房能力を維持することができ、室温の低減をより少なくすることができる。更に、この暖房器は、二つの発熱体として、仕様(容量など)が異なるものを利用してもよく、所望の発熱体を任意に設定することができる。このような暖房器も実施例1の暖房器と同様に、既存の暖房器を利用して簡単に構成することができる。例えば、電源に接続可能であり、ヒータ、サーモスタット、温度過昇防止器を有する回路を具える既存の暖房器に、別の電源に接続可能であり、ヒータ、サーモスタット、温度過昇防止器を有する追加回路と、上述したリレーとを追加することで本発明暖房器を構成することができる。
【0032】
<変形例2−1 メイン回路部にタイマ手段を具える例>
実施例2に示す暖房器においても、タイマ手段を具えてリレーの開閉動作を制御することができる。図5は、二つの発熱体を具える本発明電気暖房器の概略を示す回路図であり、メイン回路部にタイマ手段を具える例を示す。図5において図4と同一符号は、同一物を示す。この暖房器の基本的構成は、上記実施例2で説明した暖房器と同様であり、異なる点は、メイン回路部11にタイマ手段18を具えることにある。以下、この点を詳しく説明し、その他の詳細については、省略する。
【0033】
タイマ手段18は、変形例1−1で説明したタイマ手段8と同様であり、使用者が設定した開始時間になると、リレー14への通電を停止し、終了時間になると、リレーへの通電を開始する。このようなタイマ手段18の動作により、上記開始時間になると、リレー14は、サブ回路部13を閉じた状態にし、終了時間になると、サブ回路部13を開いた状態にする。このようなタイマ手段18を具える暖房器では、使用者が設定した任意の時間に亘って、電源Vからの電力をヒータ12に供給して、電源Vを利用した暖房を行うことができる。例えば、電源Vとして、変形例1−1で説明した時間帯別電灯を利用する場合、割安な夜間にリレー14が開閉動作を行えるようにタイマ手段18を設定しておき、本来電源Vの定常通電期間において、電源Vを利用する。つまり、この暖房器は、電源Vの通電停止期間と、タイマ手段18の設定時間とにおいて電源Vを利用する。このようにタイマ手段を具えて所望の時間に亘ってサブ商用電源を利用することで、この暖房器は、継続的な暖房を行うことができながら、電気代を低減することができる。特に、上述のように電気代が安い特定の時間に低電圧のサブ商用電源を利用すると、電気代をより低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明電気暖房器は、室内の暖房設備として好適に利用することができる。特に、本発明暖房器は、継続的な暖房を行うことができるため、継続的に暖房が望まれる寒冷地の利用に適する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明電気暖房器の概略を示す電気回路図である。
【図2】本発明電気暖房器と従来の電気暖房器とを使用したときの室内の温度変化を示すグラフである。
【図3】本発明電気暖房器の概略を示す電気回路図であり、リレーにタイマ手段を具える例を示す。
【図4】発熱体を二つ具える本発明電気暖房器の概略を示す電気回路図である。
【図5】発熱体を二つ具える本発明電気暖房器の概略を示す電気回路図であり、メイン回路部にタイマ手段を具える例を示す。
【符号の説明】
【0036】
1,10,12 ヒータ 2,11 メイン回路部 3,13 サブ回路部
4,4T,14 リレー 5,15 サーモスタット
6,16,17 温度過昇防止器 8,18 タイマ手段
15a 第一サーモスタット接点部 15b 第二サーモスタット接点部
メイン商用電源 V サブ商用電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱する第一発熱体と、
メイン商用電源と第一発熱体とを接続するメイン回路部と、
サブ商用電源と第一発熱体とを接続するサブ回路部と、
メイン回路部とサブ回路部とを選択的に開閉可能な第一切換部と、
周囲の温度に応じて発熱体に供給される電力を制御する第一温度調整部とを具え、
第一切換部がサブ回路部を開いているとき、メイン商用電源からの電力が第一発熱体に供給され、サブ回路部が閉じているとき、サブ商用電源からの電力が第一発熱体に供給されるように構成されることを特徴とする電気暖房器。
【請求項2】
通電により発熱する第二発熱体及び第三発熱体と、
メイン商用電源と第二発熱体とを接続するメイン回路部と、
サブ商用電源と第三発熱体とを接続するサブ回路部と、
サブ回路部を開閉可能な第二切換部と、
周囲の温度に応じて第二発熱体に供給される電力及び第三発熱体に供給される電力を制御する第二温度調整部とを具え、
第二切換部がサブ回路部を開いているとき、メイン商用電源からの電力が第二発熱体に供給され、サブ回路部を閉じているとき、サブ商用電源からの電力が第三発熱体に供給されるように構成されることを特徴とする電気暖房器。
【請求項3】
切換部は、メイン商用電源からの電力により開閉動作を行うリレーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気暖房器。
【請求項4】
メイン商用電源の標準電圧がサブ商用電源の標準電圧よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気暖房器。
【請求項5】
メイン商用電源の標準電圧とサブ商用電源の標準電圧とが等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気暖房器。
【請求項6】
設定した時間に切換部の開閉動作を可能にする時間制御手段を具えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気暖房器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−255743(P2007−255743A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77807(P2006−77807)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(592048040)北海道電機株式会社 (5)
【Fターム(参考)】