説明

電気機器に使用される光学ガスセンサおよびその組立て方法

【課題】電気機器内のガス状副生成物の検出に使用される装置を提供する。
【解決手段】光源13と、光電池14と、光源と光電池との間に挟まれるメンブラン12であって、当該メンブランとガス状副生成物との相互作用により、光源と光電池との間の光通信を防止することおよび許可することのうちの少なくとも一方が行われるようにする、メンブラン12とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、全体として、光学ガスセンサアセンブリに関し、より具体的には、変圧器に使用される光学ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気機器が作動すると、機器および/または機器と関連する構成要素に対する損傷を防ぐため、その機器を冷却するのに必要な熱が発生する。小型の電気機器は、ファンを通して方向付けられる周囲空気を使用して冷却される場合が多い。より大型の電気機器は、誘電性流体など、別の冷却源からの付加的な冷却を必要とする場合が多い。例えば、少なくともいくつかの既知の電源変圧器は、油を使用して、巻線を絶縁するとともに、ある回路から別の回路へと電気エネルギーを転送する助けとする。かかる変圧器では、多くの場合、絶縁耐力が高く、伝熱性があり、化学的に安定しているという理由から、炭化水素もしくは鉱物ベースの油、および/またはシリコンベースの油が冷却流体として使用される。
【0003】
正常運転条件下では、一般に、誘電性流体の分解はほとんど生じない。あしかし、熱的または電気的な障害が起こると、誘電性流体および/または固体絶縁体が分解し始めることがある。さらに、例えば、過剰な熱的および/または電気的応力によって変圧器の絶縁材料が絶縁破壊を起こすにつれて、誘電性流体に可溶性であり得るガス状の副生成物が生じる。流体中に存在する不良ガス(fault gas)それぞれの量または濃度を分析することによって、コロナ、火花発生、過熱、およびアーク発生などの不良プロセスを特定することができる。絶縁材料が絶縁破壊を起こした場合、時間とともに変圧器が故障および/または断裂することがあり、そのことが停電および電力損失に結び付くことがある。
【0004】
変圧器の修理および停電の回復と関連するコストの低減を容易にするため、より正確に変圧器の故障を予測しようとする目的で少なくともいくつかの既知の検出システムが使用される。例えば、変圧器の機能停止を検出し防止する少なくともいくつかの既知の方法は、ブッフホルツ継電器を使用して、内部アーク発生中に放出されたガスを検出するとともに、変圧器を迅速に遮断して壊損を回避できるようにする。しかし、かかる継電器のコストによってそれらの使用が制限されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,852,480号明細書
【発明の概要】
【0006】
1つの態様では、ガス検出デバイスを電気機器に連結することによって、電気機器内のガス状副生成物を検出する方法が提供される。この方法は、電磁波源を提供するステップと、電磁波源から放射される光を受け取るように電磁検出器を位置付けるステップと、電磁波源と電磁検出器との間にメンブランを位置付け、それによって電磁検出器が、メンブランを通して伝送された電磁波源からの光のみを受け取るようにするステップとを含む。この方法はまた、少なくとも1つのガスを検出して、それによって少なくとも1つのガスの検出が、電磁波源と電磁検出器との通信を防止または許可することを含むようにする、ステップと、少なくとも1つのガスの検出に応答して、電磁検出器によって信号を放射するステップとを含む。
【0007】
別の態様では、電気機器のガス状副生成物を検出する光シールド(light sealed)装置が提供される。この装置は、光源と、光電池と、前記光源と前記光電池との間に挟まれたメンブランであって、当該メンブランとガス状副生成物との相互作用により、前記光源と前記光電池との間の光通信が防止または許可されるようにする、メンブランとを含む。
【0008】
さらに別の態様では、電気機器のガス状副生成物を検出するシステムが提供される。このシステムは、油冷電気装置と、油冷電気装置に連結された光シールド装置であって、それによって油冷電気装置のガス状副生成物を検出するように構成される、光シールド装置とを含む。光シールド装置は、光源と、光電池と、前記光源と前記光電池との間に挟まれるメンブランであって、当該メンブランとガス状副生成物との相互作用により、前記光源と前記光電池との間の光通信が防止または許可されるようにする、メンブランとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】油冷変圧器から放出されたガスをモニタするのに使用されてもよい例示的なモニタリングシステムを示す概略図である。
【図2】図1に示されるモニタリングシステムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、油冷変圧器20などの電気機器から放出されたガスをモニタするのに使用されてもよいシステム10を示す概略図である。図2は、図1に示されるモニタリングシステム10を示す概略図である。例示的な実施形態では、システム10は導管24を介して変圧器20に連結される。さらに、例示的な実施形態では、変圧器20は、変圧器20全体に油21を循環させて、変圧器20内で発生する熱を除去するのを容易にするとともに、変圧器20内で負荷を受けて電気的破壊を起こすのを防ぐのを容易にする油冷システム10を含む。例えば、油21は、変圧器20内を循環させて変圧器20の冷却を容易にする鉱油である。あるいは、変圧器20が本明細書に記載されるように機能することを可能にする、他の任意の液体が変圧器20内を循環してもよい。
【0011】
例示的な実施形態では、動作中、時間とともに変圧器20内を循環する油21が徐々に劣化し崩壊することがある。劣化プロセス中、内部アークが生じるとガスまたはガス状副生成物23が変圧器20内へと放出される。例えば、いくつかの既知の変圧器内では、油21の崩壊中に水素ガスが放出されることがある。時間とともに、油21の劣化に応じて、油21が劣化した状態で動作を継続することで、変圧器20の故障、断裂、および/または過熱を引き起こすことがある。
【0012】
モニタリングシステム10は、例示的な実施形態では、ハウジング11を含み、導管24を介して変圧器20に連結される。ハウジング11は、メンブラン12、電磁波源または光源13、および電磁検出器または光電池14を含む。メンブラン12は、導管24がメンブラン12と流体連通するようにして、光源13とそれに対応する光電池14との間に延在する。光電池14は、プロセッサ16と、能動的または受動的であり得る送信器17、例えばRFIDとを含む、デジタル変換器15に電気的に結合される。
【0013】
例示的な実施形態では、メンブラン12は、システム10内の他の構成要素をシステム10から除去し、かつ/または分解する必要なしにメンブラン12を交換できるように、システム10内で解放可能に連結される。さらに、例示的な実施形態では、メンブラン12は、光が通過するように、可視もしくは近可視光スペクトルの特定の波長または周波数に対してほぼ半透明である。さらに、例示的な実施形態では、メンブラン12は、酢酸鉛および硫黄の少なくとも1つを含むメンブラン材料などであるがそれらに限定されない、変圧器20のガス状副生成物23に反応する材料から加工される。あるいは、メンブラン12は、変圧器20内の冷却流体が崩壊するにつれて生成されるあらゆるガス状副生成物と反応し、かつモニタリングシステムが本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の材料から加工される。
【0014】
ガス23がシステム10に入ると、ガス23はメンブラン12と反応し、可視もしくは近可視光スペクトルの波長に対してメンブラン12をほぼ不透明または半透明にする。代替実施形態では、メンブラン12は、電波、マイクロ波、赤外波、可視光波、紫外波、X線、および/またはγ線を含むがそれらに限定されない、電気測定スケール上の任意の光波長に対してほぼ不透明になるように設計されてもよい。例えば、例示的な実施形態では、水素ガスが変圧器20からシステム10に入り、水素ガスがメンブラン12と反応し、メンブラン12が可視光に対してほぼ不透明になり、その結果、光源13から光電池14へと光が透過することを防ぐ。メンブラン12を加工するのに使用される材料は、水素以外の元素と反応するように可変的に選択されてもよいことに留意されたい。一実施形態では、メンブラン12は、ガス状副生成物23の予め定められた濃度および量のレベルに応答して、ほぼ不透明または半透明になるように構成される。
【0015】
例えば、一実施形態では、メンブラン12は、各ガスのメンブラン12との相互作用によってメンブラン12が異なる波に対してほぼ不透明になるように、複数のガス状副生成物23に反応するように選択される。例えば、メンブラン12は、水素と反応して、メンブラン12を赤色可視光に対してほぼ不透明にしてもよく、二酸化炭素との反応によって、メンブラン12を緑色可視光に対してほぼ不透明にしてもよい。別の実施形態では、メンブラン12は、ガス23がメンブラン12を通過できるように多孔質である。より具体的には、かかる実施形態では、メンブラン12を通過するガス23は捕捉され、光源13と光電池14との間の通信がほぼすべて妨害されるまでメンブラン12を膨張させる。あるいは、メンブラン12は、水素などの第1のガスと反応して、メンブラン12を紫外光波に対してほぼ不透明にし、二酸化炭素などの第1のガスとは異なる第2のガスに対しては異なる反応を有してもよい。かかる実施形態では、二酸化炭素との反応により、メンブラン12は赤外光波に対してほぼ不透明になってもよい。
【0016】
代替実施形態では、メンブラン12は、任意の波がシステム10に導入される前に、メンブラン12を通して伝達されるのをほぼ防ぐように選択される。かかる実施形態では、ガス23は、メンブラン12をほぼ半透明にするようにメンブラン12と相互作用し、結果として波がメンブラン12を通過できるようにする。
【0017】
例示的な実施形態では、光源13は、メンブラン12の第1の側30に位置付けられ、光電池14はメンブラン12の反対側、すなわち第2の側31に位置する。光源13および光電池14は、光源13から放射された光が光電池14に受け取られる前にメンブラン12を通過するように向けられる。例示的な実施形態では、光源13は発光ダイオード(LED)光である。あるいは、光源13は、有機LED(OLED)源、白熱光源、蛍光源、およびハロゲン光源などであるがそれらに限定されない他の任意の光源、ならびに/またはシステム10が本明細書に記載されるように機能することを可能にする他の任意の光源であってもよい。さらに、光源13は、緑色、青色、赤色、および/または白色光を含むがそれらに限定されない任意の色の光を放射してもよく、光電池14は、特定の波長が存在するか否かを検出する比色計を含むことができる。あるいは、光源13は、光電池14に向けてメンブラン12を通過する同じまたは異なる波長の光を放射してもよい。
【0018】
光電池14は、光電池14が光源13から放射された光を受け取ることを可能にする向きでデジタル変換器15に連結される。より具体的には、例示的な実施形態では、光電池14は、所望の光の色および/または光の波長が光源13から放射されていることを検出するように選択される。さらに、例示的な実施形態では、光が光電池14によって検出されない場合、光電池14によって電気信号が処理用に変換器15に伝送される。代替実施形態では、光電池14は複数の光源13から放射された光を受け取り、光電池14は、任意の各光源13との何らかの通信の損失が生じた場合、すなわち光電池14が任意の光源13から放射された光を受け取るのを止めた場合に電気信号を伝送する。例えば、光電池14が、紫外光波、赤外波、青色可視光波、および緑色可視光波と通信している場合、光電池14が光源13から放射された任意の特定波長の光を受け取るのを止めたか否か、光電池14が変換器15に電気信号を伝送するように構成される。
【0019】
デジタル変換器15は、光電池14および送信器17と電気的に結合される。変換器15は、プロセッサ16を介して、光電池14から伝送された信号を処理し復号化する。より具体的には、例示的な実施形態では、送信器17は、予め定められたガス23の存在、濃度、および量の少なくとも1つを示す処理済みの信号を、システム10外部の供給源に伝送する。一実施形態では、送信器17は、変換器15およびプロセッサ16によって提供される情報を使用して、故障までの先行時間を示す。別の実施形態では、送信器17は、変換器15およびプロセッサ16によって提供される情報を使用して、変圧器20などの電気機器の故障を示す。
【0020】
例えば、例示的な実施形態では、送信器17は、信号を受け取るように構成されたデバイスに信号を無線で伝送する。例えば、一実施形態では、かかる外部デバイスは、移動通信デバイスおよびコンピュータを含んでもよいが、それらのみを含むことに限定されない。あるいは、デジタル変換器は、光電池14から受け取った復号化済み信号をユーザの目に見える形で表示する表示装置(図示なし)に連結されてもよい。
【0021】
本明細書に記載される例示的な方法およびシステムは、電気機器で使用される誘電性流体の崩壊によって形成されるガス状副生成物の検出を容易にする。ガス状副生成物を検出することで、例示的な方法およびシステムによって、停電および電力損失に結び付くことがある電気機器の故障および/または断裂を回避するように、電気機器を修理することが可能になり、したがって、電気機器の動作寿命が増大する。それに加えて、本明細書に記載される方法およびシステムは、桁違いにコストが掛かり得る既知の検出システムに対してコスト効率の良い代替例を提供する。
【0022】
電気機器に使用される光学ガスセンサアセンブリ、およびその組立て方法の例示的な実施形態が、詳細に上述されている。方法およびシステムは、本明細書に記載される特定の実施形態に限定されず、それよりもむしろ、システムの構成要素および/または方法のステップは、本明細書に記載される他の構成要素および/またはステップとは独立して別個に利用されてもよい。例えば、方法はまた、他の電気システムおよび方法と組み合わせて使用されてもよく、本明細書に記載したような油冷電気システムおよび方法のみを用いて実施することに限定されない。より正確には、例示的な実施形態は、他の多くの電気的用途と併せて実現され利用されてもよい。
【0023】
本発明の様々な実施形態の特定の特徴は、一部の図面には示され他の図面には示されないことがあるが、これは単に便宜上のことである。本発明の原理にしたがって、図面のいかなる特徴も、他の任意の図面の任意の特徴と組み合わせて参照および/または請求されることがある。
【0024】
本明細書は、最良の形態を含めて本発明を開示するため、また、任意のデバイスもしくはシステムを作成して使用し、任意の組み込まれた方法を実行することを含めて、当業者が本発明を実施できるようにするため、実施例を使用する。本発明の特許の範囲は、請求項によって定義され、当業者が想到する他の実施例を含んでもよい。他のそのような実施例は、それらが請求項の文言と異ならない構造的要素を有する場合、またはそれらが請求項の文言と実質的に異ならない等価の構造的要素を含む場合、請求項の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0025】
10 システム
11 ハウジング
12 メンブラン
13 光源
14 光電池
15 デジタル変換器
16 プロセッサ
17 送信器
20 変圧器
21 油
23 ガス状副生成物
24 導管
30 第1の側
31 第2の側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源(13)と、
光電池(14)と、
前記光源と前記光電池との間に挟まれるメンブラン(12)であって、当該メンブランとガス状副生成物との相互作用により、前記光源と前記光電池との間の光通信をすることおよび許可することのうちの少なくとも一方が行われるようにする、メンブラン(12)と
を備える、電気機器内のガス状副生成物(23)の検出に使用される装置。
【請求項2】
前記光電池(14)からの電気信号を変換するように構成されたデジタル変換器(15)をさらに備える、請求項1記載の装置。
【請求項3】
ガス状副生成物(23)が検出されたことの指示を伝送するように構成された送信器(17)をさらに備える、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記送信器(17)が無線送信器である、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記光源(13)が、可視光、赤外光、および紫外光の少なくとも1つである、請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記光源(13)が複数の光源である、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記ガス状副生成物(23)が水素ガスである、請求項1記載の装置。
【請求項8】
油冷電気装置と、
前記油冷電気装置に連結された光シールド装置であって、それによって前記油冷電気装置のガス状副生成物(23)を検出するように構成される、光シールド装置と、
光源(13)と、
光電池(14)と、
前記光源と前記光電池との間に挟まれるメンブラン(12)であって、当該メンブランとガス状副生成物との相互作用により、前記光源と前記光電池との間の光通信を防止することまたは許可することのうちの少なくとも一方が行われるようにする、メンブラン(12)と
を備える、電気機器のガス状副生成物を検出するシステム(10)。
【請求項9】
前記光電池(14)からの電気信号を変換するように構成されたデジタル変換器(15)をさらに備える、請求項8記載のシステム(10)。
【請求項10】
ガス状副生成物(23)が検出されたことの指示を伝送するように構成された送信器(17)をさらに備える、請求項9記載のシステム(10)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−173288(P2012−173288A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−28993(P2012−28993)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】