説明

電気機器のガス−油直結三相一括型絶縁区分装置

【課題】油入変圧器の絶縁油としてシリコーン液を用いても接続部容器の径を小さくしてコンパクトに構成することができる電気機器の三相一括型絶縁区分装置を提供する。
【解決手段】接続部容器1はシリコーン液4が封入された変圧器とSF6ガス5が封入されたガス絶縁開閉装置を電気的に接続する。コーン形絶縁スペーサ3は接続部容器1内に配設され、シリコーン液4とSF6ガス5を区分する。三相のスペーサ支持導体6は絶縁スペーサ3の正三角形のそれぞれの略頂点位置に貫通して固定支持されている。変圧器側絶縁被覆導体7は三相のスペーサ支持導体6の油封入側端6aにそれぞれ接続される。ガス絶縁開閉装置側接続導体8は三相のスペーサ支持導体6のガス封入側端6bにそれぞれ接続される。油封入側端6aと絶縁被覆導体7の接続部9にシールド材を充填してシールド材で覆い、シールド材の外面にアラミド絶縁紙を装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス絶縁開閉装置と油入変圧器を絶縁区分して電気的に接続する電気機器のガス−油直結三相一括型絶縁区分装置に関する。
【背景技術】
【0002】
良く知られているように、ガス絶縁開閉装置は電力系統の開閉に多く採用されている。ガス絶縁開閉装置は油入変圧器と電気的に接続することが必要である。ガス絶縁開閉装置はSF6ガスなどの絶縁ガスが封入され、一方、油入変圧器は鉱油などの絶縁油が封入されている。ガス絶縁開閉装置と油入変圧器を電気的に接続するには絶縁ガスと絶縁油を絶縁区分することが要求される。
【0003】
従来、ガス絶縁開閉装置と油入変圧器の間にガス油型ブッシングを配置して絶縁ガスと絶縁油を絶縁区分している。しかしながら、ガス−油貫通ブッシングを用いると軸方向の長さが大きくなり、設置面積の縮小化や機器の小形軽量化の妨げとなる。
【0004】
このことを解決するために、ガス絶縁開閉装置と油入変圧器を接続部容器で接続し、接続部容器内にコーン形絶縁スペーサを配設して絶縁ガスと絶縁油を区分することが提案されている。このことは、例えば、下記に特許文献1に記載されている。なお、特許文献1には絶縁スペーサに埋め込んだ導体と変圧器側接続導体の接続部に絶縁紙を巻回装着し絶縁するということも記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−129851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、油入変圧器の絶縁油としては一般的に鉱油が用いられている。しかし、鉱油は引火点が145℃であり、危険物あつかいとなり、また化石燃料から作られることから地球資源枯渇の問題があり、絶縁油として難燃性のシリコーン液(シリコーン油とも云われている)を用いることが考えられており、車両用変圧器では一部実用に供されている。一方、三相一括型にするとシリコーン液自体の電界集中を伴う部位においては、鉱油より耐電圧値が低い場合があるので、相間絶縁と大地絶縁を確保するには接続部容器の径を大きくしなければならないという問題点を有する。このため、絶縁油としてシリコーン液を用いても接続部容器の径を小さくしてコンパクトに構成する技術の開発が強く要求されている。
【0007】
本発明の目的は、油入変圧器の絶縁油としてシリコーン液を用いても接続部容器の径を小さくしてコンパクトに構成することができる電気機器のガス−油直結三相一括型絶縁区分装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴とするところは、絶縁油としてシリコーン液が封入された変圧器と絶縁ガスが封入されたガス絶縁開閉装置を電気的に接続する接続部容器と、接続部容器内に配設され、シリコーン液と絶縁ガスを区分するコーン形絶縁スペーサと、絶縁スペーサに、二等辺三角形のそれぞれの略頂点位置に貫通して固定支持されている三相のスペーサ支持導体と、三相のスペーサ支持導体の油封入側端にそれぞれ接続される三相の変圧器側絶縁被覆導体と、三相のスペーサ支持導体のガス封入側端にそれぞれ接続される三相のガス絶縁開閉装置側接続導体とを具備し、スペーサ支持導体の油封入側端と変圧器側絶縁被覆導体の接続部をシールド材で覆い、シールド材の外表の略全面をアラミド絶縁紙で包囲したことにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明はスペーサ支持導体の油封入側端と変圧器側絶縁被覆導体の接続部にシールド材を充填してシールド材で覆い、シールド材の外面にアラミド絶縁紙を装着している。シリコーン液とアラミド絶縁紙は共に負電荷に帯電し、シリコーン液流動によるアラミド絶縁紙の蓄積電荷密度は他の絶縁紙(例えば、プレスボード)に比べて小さくなる。蓄積電荷密度が小さいと絶縁破壊電圧すなわち耐電圧が高くなる。したがって、相間距離と接続部容器(接地容器)との距離を小さくしても相間絶縁と大地絶縁を確保することができるために接続部容器の径を小さくしてコンパクトに構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1、図2は本発明の第1の実施例を示す。図1は本発明の一実施例を示す一部破断した接続部容器の側面断面図、図2は変圧器側接続部の断面した拡大構成図である。
【0012】
図1、図2において、円筒状の接続部容器1にはフランジ2に挟持されてコーン形絶縁スペーサ3が配設されている。絶縁スペーサ3の変圧器側(凸面側)には絶縁油としてシリコーン液4が充填封入され、ガス絶縁開閉装置(GIS側:凹面側)にはSF6ガス5が充填封入されている。絶縁スペーサ3はシリコーン液4とSF6ガス5を絶縁区分する。
【0013】
三相のスペーサ支持導体6は絶縁スペーサ3に二等辺三角形のそれぞれの略頂点位置に貫通して固定支持されている。図1は二相を図示しているが、残りの一相のスペーサ支持導体6は図示下側のスペーサ支持導体6の後方に固定支持されている。スペーサ支持導体6は丸銅導体で構成され、油封入側端6aは平板状に加工されている。油封入側端6aには2個のネジ穴が穿設されている。
【0014】
三相のスペーサ支持導体6の油封入側端6aにはそれぞれ変圧器側絶縁被覆付導体7が接続され、また、スペーサ支持導体6のガス封入側端6bにはそれぞれガス絶縁開閉装置側接続導体8が接続されている。
【0015】
スペーサ支持導体6の油封入側端6aと絶縁被覆導体7の接続部9は図2に示すように構成されている。絶縁被覆導体7の一端は被覆を剥ぎ落とし圧着端子金具10を装着している。圧着端子金具10には2個のネジ穴が穿設されている。圧着端子金具10をスペーサ支持導体6の油封入側端6aの平板状部に重ねてボルト11で螺着する。
【0016】
絶縁被覆導体7をスペーサ支持導体6の油封入側端6aに接続した後に接着剤入りシールド材12を充填し、シールド材12を硬化させる。シールド材12は、例えば、接着剤を塗布したアルミ箔、カーボン含有ワニスなどが用いられる。硬化されたシールド材12は略円柱状に形成され、絶縁被覆付導体7の一端、スペーサ支持導体6の油封入側端6a、圧着端子金具10およびボルト11はシールド材12で覆われる。
【0017】
硬化したシールド材12の外面に密着してアラミド絶縁紙13を多重に巻回して装着する。スペーサ支持導体6の油封入側端6aと絶縁被覆付導体7の接続部9はアラミド絶縁紙13により絶縁される。
【0018】
本発明の三相一括型絶縁区分装置はこのように構成されているが、スペーサ支持導体の油封入側端と変圧器側絶縁被覆付導体の接続部をシールド材で覆い、シールド材の外面にアラミド絶縁紙を装着している。シリコーン液とアラミド絶縁紙は共に負電荷に帯電し、シリコーン液流動によるアラミド絶縁紙の蓄積電荷密度は他の絶縁紙(例えば、プレスボード)に比べて小さくなる。このことは、例えば、文献「電気学会技術報告」第1090号、第43頁、図4.80、図4.81、に記載されている。
【0019】
アラミド絶縁紙はシリコーン液と組み合わせると蓄積電荷密度が小さくなり絶縁破壊電圧が高くなる。したがって、シリコーン液中でアラミド絶縁紙を用いて絶縁すると、相間距離と接続部容器(接地容器)との距離を小さくしても相間絶縁と大地絶縁を確保することができるために接続部容器の径を小さくしてコンパクトに構成することができる。
【実施例2】
【0020】
図3に本発明の第2の実施例を示す。図3はスペーサ支持導体6の油封入側端6aと絶縁被覆付導体7を接続する接続部9の他の例を示す。
【0021】
図3において図2と異なるところはシールド材12とアラミド絶縁紙13の間に絶縁筒14を配置したことにある。このようにシールド材12とアラミド絶縁紙13の間に絶縁筒14を配置すると、絶縁材がアラミド絶縁紙13と絶縁筒14の2層になるので第1の実施例に比べてより一層電界緩和を図ることができる。また、接続部6の機械的強度を向上させる効果も奏し得る。
【0022】
第2の実施例においても接続部容器の径を小さくしてコンパクトに構成することができ、かつ、電界緩和を高くして接続部の機械的強度を向上させることができる。
【実施例3】
【0023】
第3の実施例は第1、2の実施例における変圧器側絶縁被覆導体7の絶縁被覆をアラミド絶縁紙で行うようにしたものである。
【0024】
絶縁被覆導体7の絶縁被覆をアラミド絶縁紙で形成すると、シリコーン液とアラミド絶縁紙の誘電率が近いので誘電整合性が良くなり安全率を向上させることができる。
【0025】
なお、上述の実施例は絶縁ガスとしてSF6ガスの例を示しているが、窒素、フッ素系ガスなどの他の絶縁ガスでも良いことは勿論のことである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例を示す一部破断した接続部容器の側面断面図である。
【図2】変圧器側接続部の断面した拡大構成図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す変圧器側接続部の断面した拡大構成図である。
【符号の説明】
【0027】
1…接続部容器、2…フランジ、3…コーン形絶縁スペーサ、4…シリコーン液、5…SF6ガス、6…スペーサ支持導体、6a…油封入側端、6b…ガス封入側端、7…変圧器側絶縁被覆付導体、8…ガス絶縁開閉装置側接続導体、9…接続部、10…圧着端子金具、11…ボルト、12…シールド材、13…アラミド絶縁紙、14…絶縁筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁油としてシリコーン液が封入された変圧器と絶縁ガスが封入されたガス絶縁開閉装置を電気的に接続する接続部容器と、前記接続部容器内に配設され、前記シリコーン液と前記絶縁ガスを区分するコーン形絶縁スペーサと、前記絶縁スペーサに、二等辺三角形のそれぞれの略頂点位置に貫通して固定支持されている三相のスペーサ支持導体と、前記三相のスペーサ支持導体の油封入側端にそれぞれ接続される三相の前記変圧器側絶縁被覆付導体と、前記三相のスペーサ支持導体のガス封入側端にそれぞれ接続される三相の前記ガス絶縁開閉装置側接続導体とを具備し、前記スペーサ支持導体の油封入側端と前記変圧器側絶縁被覆付導体の接続部をシールド材で覆い、シールド材の外表面の略全面をアラミド絶縁紙で包囲したことを特徴とする電気機器のガス−油直結三相一括型絶縁区分装置。
【請求項2】
請求項1において、前記スペーサ支持導体の油封入側端と前記変圧器側接続導体の接続部の外面を覆うシールド材と前記アラミド絶縁紙の間に絶縁筒を配置したことを特徴とする電気機器のガス−油直結三相一括型絶縁区分装置。
【請求項3】
請求項1、2のいずれか1項において、前記三相の変圧器側絶縁被覆付導体はそれぞれ端子金具によって前記三相のスペーサ支持導体の油封入側端にそれぞれ接続され、前記スペーサ支持導体の油封入側端と前記端子金具を含む前記変圧器側絶縁被覆付導体の接続部をシールド材で覆うようにしたことを特徴とする電気機器のガス−油直結三相一括型絶縁区分装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、前記変圧器側絶縁被覆付導体の前記接続側端の絶縁被覆の外表面は前記アラミド絶縁紙によって絶縁被覆されていることを特徴とする電気機器のガス−油直結三相一括型絶縁区分装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−29005(P2010−29005A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189245(P2008−189245)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【Fターム(参考)】