説明

電気機器の冷却装置

【課題】冷却効率のばらつきが抑制される電気機器の冷却装置、を提供する。
【解決手段】電気機器の冷却装置は、平板形状を有し、EV機器に含まれるインバータ素子が接続される冷媒通路形成部材120を備える。冷媒通路形成部材120には、その平面方向に車室空調用の冷媒が流通する冷媒通路32と、その厚み方向に冷媒通路32と積み重なって設けられ、冷媒が配置される冷媒配置空間181とが形成される。冷媒通路32は、冷媒の流れ方向に対して並列に並ぶ多孔菅形状を有する多孔菅部151Aと、冷媒の流れ方向に対して並列に並ぶ多孔菅形状を有し、冷媒の流れ方向に対して平行に延びる仕切り壁127によって多孔菅部151Aと隔てられた多孔菅部151Bと、多孔菅部151Aおよび多孔菅部151Bを互いに連通させ、多孔菅部151Aと多孔菅部151Bとの間で冷媒の流れ方向を反転させる反転空間部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、車両に搭載された電気機器の冷却装置に関し、より特定的には、車室空調用の冷媒を利用する電気機器の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気機器の冷却装置に関して、たとえば、特開2005−191527号公報には、優れた冷却能力を有することを目的とした積層型冷却器が開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示された積層型冷却器は、冷却媒体を流通させる冷媒流路が形成された複数の冷却菅と、複数の冷却菅の間を連通する連通部材とを有する。冷却管には、自動車用インバータの一部を構成する、IGBT等の半導体素子とダイオードとを内蔵した電子部品が接触して設けられている。冷却媒体としては、エチレングリコール系の不凍液が利用される。
【0003】
また、特開2010−245158号公報には、パワーデバイス等の発熱体の冷却に用いる水冷式の冷却器であって、冷却性能を向上させることを目的とした冷却器が開示されている(特許文献2)。特許文献2に開示された冷却器においては、冷却器天板と冷却器底板との間に冷媒流路が形成されている。冷媒流路には、2つのコルゲートフィンが板状体を介して積層されている。
【0004】
また、特開2001−168254号公報には、製造を容易として、製造単価を低減するとともに、熱交換効率を向上させることを目的とした熱交換器が開示されている(特許文献3)。特許文献3に開示された熱交換器は、センタープレートと、発熱部材に接続されるベースプレースと、フィン部材とを有する。センタープレートは、内部に複数の流路が形成された押し出し多穴菅を主体として構成されている。
【0005】
また、特開2010−140964号公報には、圧力損失の増加を抑えつつ、放熱性能を向上させることを目的とした半導体素子用冷却器が開示されている(特許文献4)。特許文献4に開示された半導体素子用冷却器は、冷媒の入り口および出口が設けられるケーシングと、ケーシングの外面に設けられ、IGBTが取り付けられる絶縁基板と、ケーシングの内面に接合され、冷媒通路を規定するコルゲートフィンとを有する。コルゲートフィンは、冷媒の流れ方向に複数のブロックに分割され、隣接するブロック間で冷媒の流れ方向と直角方向にピッチがずらして配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−191527号公報
【特許文献2】特開2010−245158号公報
【特許文献3】特開2001−168254号公報
【特許文献4】特開2010−140964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両に搭載された電気機器を冷却するための装置として、車室内の空調のための蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用する技術が提案されている。
【0008】
このような冷却装置においては、気相および液相間の状態変化を伴う冷媒が利用されるため、冷媒がガス化し易い、冷媒の気相および液相間の比重差が大きい、冷媒サイクルの応答性が遅いといった特性がある。このような特性により、電気機器にヒートスポットや急激な熱負荷変動といった発熱状況が生じた場合には、冷媒が気泡化し、その気泡同士が干渉したり、局所的なドライアウトが生じたりする可能性がある。その結果、電気機器の冷却効率がばらつく懸念が生じる。
【0009】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、冷却効率のばらつきが抑制される電気機器の冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に従った電気機器の冷却装置は、車両に搭載された電気機器の冷却装置である。電気機器の冷却装置は、平板形状を有し、電気機器に含まれる発熱源が接続される冷媒通路形成部材を備える。冷媒通路形成部材には、その平面方向に車室空調用の冷媒が流通する冷媒通路と、その厚み方向に冷媒通路と積み重なって設けられ、冷媒が配置される冷媒配置空間とが形成される。冷媒通路は、冷媒の流れ方向に対して並列に並ぶ多孔菅形状を有する第1の多孔菅部と、冷媒の流れ方向に対して並列に並ぶ多孔菅形状を有し、冷媒の流れ方向に対して平行に延びる仕切り壁によって第1の多孔菅部と隔てられた第2の多孔菅部と、第1の多孔菅部および第2の多孔菅部を互いに連通させ、第1の多孔菅部と第2の多孔菅部との間で冷媒の流れ方向を反転させる反転空間部とを有する。
【0011】
このように構成された電気機器の冷却装置によれば、冷媒通路内で生じた車室空調用の冷媒による冷却効率の低下の影響を、冷媒通路に対して冷媒が配置される冷媒配置空間を積層して設けることによって緩和することができる。また、第1の多孔菅部と第2の多孔菅部との間に反転空間部を設けることによって、冷媒の流れ方向を反転させながら、温度差のある冷媒を攪拌することができる。これにより、電気機器の冷却効率にばらつきが生じることを抑制できる。
【0012】
また好ましくは、発熱源は、発熱源と冷媒通路との間に冷媒配置空間が位置するように冷媒通路形成部材に接続される。冷媒配置空間には、冷媒通路を流通する冷媒よりも大きい比熱を有する冷媒が配置される。
【0013】
このように構成された電気機器の冷却装置によれば、発熱源と冷媒通路との間に位置決めされる冷媒配置空間を、発熱源から伝達された熱を一旦蓄える蓄熱層として利用できる。これにより、発熱源における発熱変動によって車室空調用の冷媒がガス化する現象を抑えることができる。
【0014】
また好ましくは、冷媒配置空間には、冷媒通路を流通する冷媒とは異なる冷媒が貯留される。また好ましくは、冷媒配置空間には、冷媒通路を流通する冷媒とは異なる冷媒が流通される。
【0015】
このように構成された電気機器の冷却装置によれば、冷媒配置空間に貯留または流通された冷媒によって、冷媒通路内で生じた車室空調用の冷媒による冷却効率の低下の影響を緩和することができる。
【0016】
また好ましくは、第1の多孔菅部は、第2の多孔菅部が有する多孔菅形状と異なる多孔菅形状を有する。このように構成された電気機器の冷却装置によれば、第1の多孔菅部と第2の多孔菅部との間で冷媒流れの形態に変化が生じるため、反転空間部における冷媒の攪拌を促進させることができる。
【0017】
また好ましくは、冷媒通路形成部材は、第1の多孔菅部および第2の多孔菅部を形成するための押し出し成形材を有する。このように構成された電気機器の冷却装置によれば、低コストで、第1の多孔菅部および第2の多孔菅部の耐圧性を確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上に説明したように、この発明に従えば、冷却効率のばらつきが抑制される電気機器の冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態1における電気機器の冷却装置が適用される車両を示す概略図である。
【図2】この発明の実施の形態1における電気機器の冷却装置の構成を模式的に示す図である。
【図3】図2中の蒸気圧縮式冷凍サイクルにおける冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図4】蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転中の、EV機器を冷却する冷媒の流れを示す模式図である。
【図5】蒸気圧縮式冷凍サイクルの停止中の、EV機器を冷却する冷媒の流れを示す模式図である。
【図6】この発明の実施の形態1における電気機器の冷却装置において、流量調整弁および切り換え弁の開閉状態を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1における電気機器の冷却装置において、図2中の冷却部の構造を示す正面図である。
【図8】図7中のVIII−VIII線上に沿った冷却部を示す断面図である。
【図9】図8中の多孔菅部が有する多孔菅形状の第1変形例を示す断面図である。
【図10】図8中の多孔菅部が有する多孔菅形状の第2変形例を示す断面図である。
【図11】図7中の冷却部の変形例を示す正面図である。
【図12】図11中のXII−XII線上に沿った冷却部を示す断面図である。
【図13】この発明の実施の形態2における電気機器の冷却装置において、図2中の冷却部の構造を示す正面図である。
【図14】図13中のXIV−XIV線上に沿った冷却部を示す断面図である。
【図15】図13中の冷却部の変形例を示す正面図である。
【図16】図15中の冷却部を示す背面図である。
【図17】図15中のXVII−XVII線上に沿った冷却部を示す断面図である。
【図18】車両に搭載されるバッテリの冷却装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1における電気機器の冷却装置が適用される車両を示す概略図である。
【0022】
車両1000は、内燃機関であるエンジン100と、電動機である駆動ユニット200と、PCU(Power Control Unit)700と、走行用バッテリ400とを有し、エンジン100および駆動ユニット200を動力源とするハイブリッド自動車である。
【0023】
エンジン100は、ガソリンエンジンであってもよいし、ディーゼルエンジンであってもよい。駆動ユニット200は、エンジン100とともに車両1000を駆動する駆動力を発生させる。エンジン100および駆動ユニット200は、ともに車両1000のエンジンルーム内に設けられている。駆動ユニット200は、ケーブル500によりPCU700と電気的に接続されている。PCU700は、ケーブル600により走行用バッテリ400と電気的に接続されている。
【0024】
図2は、この発明の実施の形態1における電気機器の冷却装置の構成を模式的に示す図である。
【0025】
図2を参照して、本実施の形態における電気機器の冷却装置は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10を備える。蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、たとえば、車室内の冷房を行なうために、車両1000に搭載されている。蒸気圧縮式冷凍サイクル10を用いた冷房は、たとえば、冷房を行なうためのスイッチがオンされた場合、または、自動的に車室内の温度を設定温度になるように調整する自動制御モードが選択されており、かつ、車室内の温度が設定温度よりも高い場合に行なわれる。
【0026】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12と、第1熱交換器としての熱交換器14と、熱交換器15と、減圧器の一例としての膨張弁16と、第2熱交換器としての熱交換器18とを有する。蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、熱交換器14と熱交換器15との間の冷媒の経路上に配置された気液分離器40を有する。
【0027】
圧縮機12は、車両に搭載されたモータまたはエンジンを動力源として作動し、冷媒ガスを断熱的に圧縮して過熱状態冷媒ガスとする。圧縮機12は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の作動時に熱交換器18から流通する冷媒を吸入圧縮して、冷媒通路21に高温高圧の気相冷媒を吐出する。圧縮機12は、冷媒通路21に冷媒を吐出することで、蒸気圧縮式冷凍サイクル10に冷媒を循環させる。
【0028】
熱交換器14,15は、圧縮機12において圧縮された過熱状態冷媒ガスを、外部媒体へ等圧的に放熱させて冷媒液とする。圧縮機12から吐出された高圧の気相冷媒は、熱交換器14,15において周囲に放熱し冷却されることによって、凝縮(液化)する。熱交換器14,15は、冷媒を流通するチューブと、チューブ内を流通する冷媒および熱交換器14,15の周囲の空気の間で熱交換するためのフィンとを有する。
【0029】
熱交換器14,15は、冷却風と冷媒との間で、熱交換を行なう。冷却風は、車両の走行によって発生する自然の通風によって熱交換器14,15に供給されてもよい。冷却風は、コンデンサファン42もしくはエンジン冷却用のラジエータファンなどの冷却ファンからの強制通風によって熱交換器14,15に供給されてもよい。熱交換器14,15における熱交換によって、冷媒の温度は低下し冷媒は液化する。
【0030】
膨張弁16は、冷媒通路25を流通する高圧の液相冷媒を小さな孔から噴射させることにより膨張させて、低温・低圧の霧状冷媒に変化させる。膨張弁16は、熱交換器14,15によって凝縮された冷媒液を減圧して、気液混合状態の湿り蒸気とする。なお、冷媒液を減圧するための減圧器は、絞り膨張する膨張弁16に限られず、毛細管であってもよい。
【0031】
熱交換器18は、その内部を流通する霧状冷媒が気化することによって、熱交換器18に接触するように導入された周囲の空気の熱を吸収する。熱交換器18は、膨張弁16によって減圧された冷媒を用いて、冷媒の湿り蒸気が蒸発して冷媒ガスとなる際の気化熱を、車室内へ流通する空調用空気から吸収して、車室内の冷房を行なう。熱が熱交換器18に吸収されることにより温度が低下した空調用空気が車室内に再び戻されることによって、車室内の冷房が行なわれる。冷媒は、熱交換器18において周囲から吸熱し加熱される。
【0032】
熱交換器18は、冷媒を流通するチューブと、チューブ内を流通する冷媒および熱交換器18の周囲の空気の間で熱交換するためのフィンとを有する。チューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流通する。冷媒は、チューブ内を流通する際に、フィンを経由して車室内の空気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって蒸発し、さらに顕熱によって過熱蒸気になる。気化した冷媒は、冷媒通路27を経由して圧縮機12へ流通する。圧縮機12は、熱交換器18から流通する冷媒を圧縮する。
【0033】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12と熱交換器14とを連通する冷媒通路21と、熱交換器14と熱交換器15とを連通する冷媒通路22,23,24と、熱交換器15と膨張弁16とを連通する冷媒通路25と、膨張弁16と熱交換器18とを連通する冷媒通路26と、熱交換器18と圧縮機12とを連通する冷媒通路27とを有する。
【0034】
冷媒通路21は、冷媒を圧縮機12から熱交換器14に流通させるための通路である。冷媒は、冷媒通路21を経由して、圧縮機12と熱交換器14との間を、圧縮機12の出口から熱交換器14の入口へ向かって流れる。冷媒通路22〜25は、冷媒を熱交換器14から膨張弁16に流通させるための通路である。冷媒は、冷媒通路22〜25を経由して、熱交換器14と膨張弁16との間を、熱交換器14の出口から膨張弁16の入口へ向かって流れる。
【0035】
冷媒通路26は、冷媒を膨張弁16から熱交換器18に流通させるための通路である。冷媒は、冷媒通路26を経由して、膨張弁16と熱交換器18との間を、膨張弁16の出口から熱交換器18の入口へ向かって流れる。冷媒通路27は、冷媒を熱交換器18から圧縮機12に流通させるための通路である。冷媒は、冷媒通路27を経由して、熱交換器18と圧縮機12との間を、熱交換器18の出口から圧縮機12の入口へ向かって流れる。
【0036】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12、熱交換器14,15、膨張弁16および熱交換器18が、冷媒通路21〜27によって連結されて構成される。なお、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷媒としては、たとえば二酸化炭素、プロパンやイソブタンなどの炭化水素、アンモニア、フロン類または水などを用いることができる。
【0037】
気液分離器40は、熱交換器14と熱交換器15との間の冷媒の経路上に設けられている。気液分離器40は、熱交換器14から流出する冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する。気液分離器40の内部には、液相冷媒である冷媒液と、気相冷媒である冷媒蒸気とが蓄蔵されている。気液分離器40には、冷媒通路22,23と、冷媒通路34とが連結されている。
【0038】
熱交換器14の出口側において冷媒は、飽和液と飽和蒸気とが混合した気液二相状態の湿り蒸気の状態にある。熱交換器14から流出した冷媒は、冷媒通路22を通って気液分離器40へ供給される。冷媒通路22から気液分離器40へ流入する気液二相状態の冷媒は、気液分離器40の内部において気相と液相とに分離される。気液分離器40は、熱交換器14によって凝縮された冷媒を液体状の冷媒液とガス状の冷媒蒸気とに分離して、一時的に蓄える。
【0039】
分離された冷媒液は、冷媒通路34を経由して、気液分離器40の外部へ流出する。気液分離器40内の液相中に配置された冷媒通路34の端部は、液相冷媒の気液分離器40からの流出口を形成する。分離された冷媒蒸気は、冷媒通路23を経由して、気液分離器40の外部へ流出する。気液分離器40内の気相中に配置された冷媒通路23の端部は、気相冷媒の気液分離器40からの流出口を形成する。気液分離器40から導出された気相の冷媒蒸気は、第3熱交換器としての熱交換器15において周囲に放熱し冷却されることによって、凝縮する。
【0040】
気液分離器40の内部では、冷媒液が下側、冷媒蒸気が上側に溜まる。気液分離器40から冷媒液を導出する冷媒通路34の端部は、気液分離器40の底部に連結されている。冷媒通路34を経由して、気液分離器40の底側から冷媒液のみが気液分離器40の外部へ送り出される。気液分離器40から冷媒蒸気を導出する冷媒通路23の端部は、気液分離器40の天井部に連結されている。冷媒通路23を経由して、気液分離器40の天井側から冷媒蒸気のみが気液分離器40の外部へ送り出される。これにより、気液分離器40は、気相冷媒と液相冷媒との分離を確実に行なうことができる。
【0041】
熱交換器14の出口から膨張弁16の入口へ向かって流れる冷媒が流通する経路は、熱交換器14の出口側から気液分離器40へ至る冷媒通路22と、気液分離器40から冷媒蒸気を流出させ、後述する流量調整弁28を経由する冷媒通路23と、熱交換器15の入口側へ連結される冷媒通路24と、熱交換器15の出口側から冷媒を膨張弁16へ流通させる冷媒通路25とを有する。冷媒通路23は、気液分離器40で分離された気相冷媒が流れるための通路である。
【0042】
熱交換器14と熱交換器15との間を流通する冷媒の経路は、気液分離器40と冷却部30とを連通する冷媒通路34と、冷却部30と冷媒通路24とを連通する冷媒通路36とを有する。冷媒通路34を経由して、気液分離器40から冷却部30へ冷媒液が流れる。冷却部30を通過した冷媒は、冷媒通路36を経由して、冷媒通路24へ戻る。冷却部30は、熱交換器14から熱交換器15へ向けて流れる冷媒の経路上に設けられている。
【0043】
図2に示すD点は、冷媒通路23と冷媒通路24と冷媒通路36との連結点を示す。つまり、D点は、冷媒通路23の下流側(熱交換器15に近接する側)の端部、冷媒通路24の上流側(熱交換器14に近接する側)の端部、および、冷媒通路36の下流側の端部を示す。冷媒通路23は、気液分離器40から膨張弁16へ向かう冷媒が流通する経路の、気液分離器40からD点へ至る一部を形成する。
【0044】
本実施の形態における電気機器の冷却装置は、冷媒通路23と並列に配置された冷媒の経路を備え、冷却部30は、当該冷媒の経路上に設けられている。冷却部30は、熱交換器14と膨張弁16との間を気液分離器40から熱交換器15へ向けて流れる冷媒の経路において並列に接続された複数の通路のうちの、一方に設けられている。冷却部30は、車両に搭載される電気機器であるEV(Electric Vehicle)機器31と、車室空調用の冷媒が流通する冷媒通路32とを有する。EV機器31は、その運動時に発熱する発熱源を含む。冷媒通路32の一方の端部は、冷媒通路34に接続される。冷媒通路32の他方の端部は、冷媒通路36に接続される。
【0045】
気液分離器40と図2に示すD点との間の冷媒通路23に並列に接続された冷媒の経路は、冷却部30よりも上流側(気液分離器40に近接する側)の冷媒通路34と、冷却部30に含まれる冷媒通路32と、冷却部30よりも下流側(熱交換器15に近接する側)の冷媒通路36とを有する。冷媒通路34は、気液分離器40から冷却部30に、液相の冷媒を流通させるための通路である。冷媒通路36は、冷却部30からD点に冷媒を流通させるための通路である。D点は、冷媒通路23,24と、冷媒通路36との分岐点である。
【0046】
気液分離器40から流出した冷媒液は、冷媒通路34を経由して、冷却部30へ向かって流通する。冷却部30へ流通し、冷媒通路32を経由して流れる冷媒は、電気機器としてのEV機器31に含まれる発熱源から熱を奪って、EV機器31を冷却させる。冷却部30は、気液分離器40において分離され冷媒通路34を経由して冷媒通路32へ流れる液相の冷媒を用いて、EV機器31を冷却する。冷却部30において、冷媒通路32内を流通する冷媒と、EV機器31に含まれる発熱源とが熱交換することにより、EV機器31は冷却され、冷媒は加熱される。冷媒はさらに冷媒通路36を経由して冷却部30からD点へ向かって流通し、冷媒通路24を経由して熱交換器15へ至る。
【0047】
冷却部30は、冷媒通路32においてEV機器31と冷媒との間で熱交換が可能な構造を有するように設けられる。冷却部30の構造については後で詳細に説明する。
【0048】
EV機器31は、冷媒通路32の外部に配置される。この場合、冷媒通路32の内部を流通する冷媒の流れにEV機器31が干渉することはない。このため、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の圧力損失は増大しないので、圧縮機12の動力を増大させることなく、EV機器31を冷却することができる。
【0049】
EV機器31は、電力の授受によって発熱を伴う電気機器である。電気機器は、たとえば、直流電力を交流電力に変換するためのインバータ、回転電機であるモータジェネレータ、蓄電装置であるバッテリ、バッテリの電圧を昇圧させるための昇圧コンバータ、バッテリの電圧を降圧するためのDC/DCコンバータなどの、少なくともいずれか一つを含む。バッテリは、リチウムイオン電池あるいはニッケル水素電池等の二次電池である。バッテリに代えてキャパシタが用いられてもよい。
【0050】
熱交換器18は、空気が流通するダクト90の内部に配置されている。熱交換器18は、冷媒とダクト90内を流通する空調用空気との間で熱交換して、空調用空気の温度を調節する。ダクト90は、ダクト90に空調用空気が流入する入口であるダクト入口91と、ダクト90から空調用空気が流出する出口であるダクト出口92とを有する。ダクト90の内部の、ダクト入口91の近傍には、ファン93が配置されている。
【0051】
ファン93が駆動することにより、ダクト90内に空気が流通する。ファン93が稼働すると、ダクト入口91を経由してダクト90の内部へ空調用空気が流入する。ダクト90へ流入する空気は、外気であってもよく、車両の室内の空気であってもよい。図2中の矢印95は、熱交換器18を経由して流通し、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷媒と熱交換する空調用空気の流れを示す。冷房運転時には、熱交換器18において空調用空気が冷却され、冷媒は空調用空気からの熱伝達を受けて加熱される。矢印96は、熱交換器18で温度調節され、ダクト出口92を経由してダクト90から流出する、空調用空気の流れを示す。
【0052】
冷媒は、圧縮機12と熱交換器14,15と膨張弁16と熱交換器18とが冷媒通路21〜27によって順次接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を、図2に示すA点、B点、C点、D点、E点およびF点を順に通過するように冷媒が流れ、圧縮機12と熱交換器14,15と膨張弁16と熱交換器18とに冷媒が循環する。
【0053】
図3は、図2中の蒸気圧縮式冷凍サイクルにおける冷媒の状態を示すモリエル線図である。図3中の横軸は、冷媒の比エンタルピーを示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力を示す。比エンタルピーの単位はkJ/kgであり、絶対圧力の単位はMPaである。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。
【0054】
図3中には、熱交換器14の出口の冷媒通路22から気液分離器40を経由して冷媒通路34へ流入し、EV機器31を冷却し、冷媒通路36からD点を経由して熱交換器15の入口の冷媒通路24へ戻る、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点(すなわちA,B,C,D,EおよびF点)における冷媒の熱力学状態が示される。このときの冷媒が流れる経路、すなわち冷媒通路21、冷媒通路22、冷媒通路34、冷媒通路36および冷媒通路24〜27は、第1通路を形成する。
【0055】
図3を参照して、圧縮機12に吸入された過熱蒸気状態の冷媒(A点)は、圧縮機12において等比エントロピー線に沿って断熱圧縮される。圧縮するに従って冷媒の圧力と温度とが上昇し、高温高圧の過熱度の大きい過熱蒸気になって(B点)、冷媒は熱交換器14へと流れる。圧縮機12から吐出された気相冷媒は、熱交換器14において周囲に放熱し冷却されることによって、凝縮(液化)する。熱交換器14における外気との熱交換によって、冷媒の温度は低下し冷媒は液化する。熱交換器14へ入った高圧の冷媒蒸気は、熱交換器14において等圧のまま過熱蒸気から乾き飽和蒸気になり、凝縮潜熱を放出し徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になる。気液二相状態である冷媒のうち、凝縮した冷媒は飽和液の状態である(C点)。
【0056】
冷媒は気液分離器40において気相冷媒と液相冷媒とに分離される。気液分離された冷媒のうち、液相の冷媒液が、気液分離器40から冷媒通路34を経由して冷却部30の冷媒通路32へ流れ、EV機器31を冷却する。冷却部30において、熱交換器14を通過して凝縮された飽和液状態の液冷媒に熱を放出することで、EV機器31が冷却される。EV機器31との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。冷媒は、EV機器31から潜熱を受け取って一部気化することにより、飽和液と飽和蒸気とが混合した湿り蒸気となる(D点)。
【0057】
その後冷媒は、熱交換器15に流入する。冷媒の湿り蒸気は、熱交換器15において外気と熱交換して冷却されることにより再度凝縮され、冷媒の全部が凝縮すると飽和液になり、さらに顕熱を放出して過冷却された過冷却液になる(E点)。その後冷媒は、冷媒通路25を経由して膨張弁16に流入する。膨張弁16において、過冷却液状態の冷媒は絞り膨張され、比エンタルピーは変化せず温度と圧力とが低下して、低温低圧の気液混合状態の湿り蒸気となる(F点)。
【0058】
膨張弁16から出た湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路26を経由して熱交換器18へ流入する。熱交換器18のチューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流入する。冷媒は、熱交換器18のチューブ内を流通する際に、フィンを経由して車両の室内の空気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって、等圧のまま蒸発する。全ての冷媒が乾き飽和蒸気になると、さらに顕熱によって冷媒蒸気は温度上昇して、過熱蒸気となる(A点)。その後、冷媒は、冷媒通路27を経由して圧縮機12に吸入される。圧縮機12は、熱交換器18から流通する冷媒を圧縮する。
【0059】
冷媒はこのようなサイクルに従って、圧縮、凝縮、絞り膨張、蒸発の状態変化を連続的に繰り返す。なお、上述した蒸気圧縮式冷凍サイクルの説明では、理論冷凍サイクルについて説明しているが、実際の蒸気圧縮式冷凍サイクル10では、圧縮機12における損失、冷媒の圧力損失および熱損失を考慮する必要があるのは勿論である。
【0060】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10の運転中に、冷媒は、蒸発器として作用する熱交換器18において蒸発する際に気化熱を車両の室内の空気から吸収して、車室内の冷房を行なう。加えて、熱交換器14から流出し気液分離器40で気液分離された高圧の液冷媒が冷却部30へ流通し、EV機器31と熱交換することでEV機器31を冷却する。本実施の形態における電気機器の冷却装置は、車両に搭載された発熱源であるEV機器31を、車室内の空調用の蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、冷却する。なお、EV機器31を冷却するために必要とされる温度は、少なくともEV機器31の温度範囲として目標となる温度範囲の上限値よりも低い温度であることが望ましい。
【0061】
熱交換器18において被冷却部を冷却するために設けられた蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、EV機器31の冷却が行なわれるので、EV機器31の冷却のために、専用の水循環ポンプまたは冷却ファンなどの機器を設ける必要はない。このため、EV機器31の冷却装置のために必要な構成を低減でき、装置構成を単純にできるので、冷却装置の製造コストを低減することができる。加えて、EV機器31の冷却のためにポンプや冷却ファンなどの動力源を運転する必要がなく、動力源を運転するための消費動力を必要としない。したがって、EV機器31の冷却のための消費動力を低減することができる。
【0062】
熱交換器14では、冷媒を湿り蒸気の状態にまで冷却すればよく、気液混合状態の冷媒は気液分離器40により分離され、飽和液状態の冷媒液のみが冷却部30へ供給される。EV機器31から蒸発潜熱を受け取り一部気化した湿り蒸気の状態の冷媒は、熱交換器15で再度冷却される。湿り蒸気状態の冷媒を凝縮させ完全に飽和液にするまで、冷媒は一定の温度で状態変化する。熱交換器15はさらに、車両の室内の冷房のために必要な程度の過冷却度にまで、液相冷媒を過冷却する。冷媒の過冷却度を過度に大きくする必要がないので、熱交換器14,15の容量を低減することができる。したがって、車室用の冷房能力を確保でき、かつ、熱交換器14,15のサイズを低減することができるので小型化され車載用に有利な、電気機器の冷却装置を得ることができる。
【0063】
熱交換器14の出口から膨張弁16の入口へ向かう冷媒の経路の一部を形成する冷媒通路23は、熱交換器14と熱交換器15との間に設けられている。気液分離器40から膨張弁16へ向かう冷媒が流通する経路として、冷却部30を通過しない経路である冷媒通路23と、冷却部30を経由してEV機器31を冷却する冷媒の経路である冷媒通路34,36および冷媒通路32とが並列に設けられる。冷媒通路34,36を含むEV機器31の冷却系は、冷媒通路23と並列に接続されている。このため、熱交換器14から流出した冷媒の一部のみが、冷却部30へ流れる。EV機器31の冷却のために必要な量の冷媒を冷却部30へ流通させ、EV機器31は適切に冷却される。したがって、EV機器31が過冷却されることを防止できる。
【0064】
熱交換器14から直接、熱交換器15へ流れる冷媒の経路と、熱交換器14から冷却部30を経由して熱交換器15へ流れる冷媒の経路とを並列に設け、一部の冷媒のみを冷媒通路34,36へ流通させることで、EV機器31の冷却系に冷媒が流れる際の圧力損失を低減することができる。全ての冷媒が冷却部30に流れないため、冷却部30を経由する冷媒の流通に係る圧力損失を低減することができ、それに伴い、冷媒を循環させるための圧縮機12の運転に必要な消費電力を低減することができる。
【0065】
膨張弁16を通過した後の低温低圧の冷媒をEV機器31の冷却に使用すると、熱交換器18における車室内の空気の冷却能力が減少して、車室用の冷房能力が低下する。これに対し、本実施の形態における電気機器の冷却装置では、蒸気圧縮式冷凍サイクル10において、圧縮機12から吐出された高圧の冷媒は、第1の凝縮器としての熱交換器14と、第2の凝縮器としての熱交換器15との両方によって凝縮される。圧縮機12と膨張弁16との間に二段の熱交換器14,15を配置し、EV機器31を冷却する冷却部30は、熱交換器14と熱交換器15との間に設けられている。熱交換器15は、冷却部30から膨張弁16に向けて流れる冷媒の経路上に設けられている。
【0066】
EV機器31から蒸発潜熱を受けて加熱された冷媒を熱交換器15において十分に冷却することにより、膨張弁16の出口において、冷媒は、車両の室内の冷房のために本来必要とされる温度および圧力を有する。このため、熱交換器18において冷媒が蒸発するときに外部から受け取る熱量を十分に大きくすることができる。このように、冷媒を十分に冷却できる熱交換器15の放熱能力を定めることにより、車室内の空気を冷却する冷房の能力に影響を与えることなく、EV機器31を冷却することができる。したがって、EV機器31の冷却能力と、車室用の冷房能力との両方を、確実に確保することができる。
【0067】
熱交換器14から冷却部30へ流れる冷媒は、EV機器31を冷却するときに、EV機器31から熱を受け取り加熱される。冷却部30において冷媒が飽和蒸気温度以上に加熱され冷媒の全量が気化すると、冷媒とEV機器31との熱交換量が減少してEV機器31を効率よく冷却できなくなり、また冷媒が配管内を流れる際の圧力損失が増大する。このため、EV機器31を冷却した後に冷媒の全量が気化しない程度に、熱交換器14において十分に冷媒を冷却するのが望ましい。
【0068】
具体的には、熱交換器14の出口における冷媒の状態を飽和液に近づけ、典型的には熱交換器14の出口において冷媒が飽和液線上にある状態にする。このように冷媒を十分に冷却できる能力を熱交換器14が有する結果、熱交換器14の冷媒から熱を放出させる放熱能力は、熱交換器15の放熱能力よりも高くなる。放熱能力が相対的に大きい熱交換器14において冷媒を十分に冷却することにより、EV機器31から熱を受け取った冷媒を湿り蒸気の状態に留めることができ、冷媒とEV機器31との熱交換量の減少を回避できるので、EV機器31を十分に効率よく冷却することができる。EV機器31を冷却した後の湿り蒸気の状態の冷媒は、熱交換器15において効率よく再度冷却され、飽和温度を下回る過冷却液の状態にまで冷却される。したがって、車室用の冷房能力とEV機器31の冷却能力との両方を確保した、電気機器の冷却装置を提供することができる。
【0069】
熱交換器14の出口において気液二相状態にある冷媒は、気液分離器40内において、気相と液相とに分離される。気液分離器40で分離された気相冷媒は、冷媒通路23,24を経由して流れ直接熱交換器15に供給される。気液分離器40で分離された液相冷媒は、冷媒通路34を経由して流れ、冷却部30に供給されてEV機器31を冷却する。この液相冷媒は、過不足の全くない真に飽和液状態の冷媒である。気液分離器40から液相の冷媒のみを取り出し冷却部30へ流すことにより、熱交換器14の能力を最大限に活用してEV機器31を冷却することができるので、EV機器31の冷却能力を向上させた電気機器の冷却装置を提供することができる。
【0070】
気液分離器40の出口で飽和液の状態にある冷媒をEV機器31を冷却する冷媒通路32に導入することにより、冷媒通路34,36および冷媒通路32を含むEV機器31の冷却系を流れる冷媒のうち、気相状態の冷媒を最小限に抑えることができる。このため、EV機器31の冷却系を流れる冷媒蒸気の流速が早くなり圧力損失が増大することを抑制でき、冷媒を流通させるための圧縮機12の消費電力を低減できるので、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の性能の悪化を回避することができる。
【0071】
気液分離器40の内部には、飽和液状態の冷媒液が貯留されている。気液分離器40は、その内部に液状の冷媒である冷媒液を一時的に貯留する蓄液器として機能する。気液分離器40内に所定量の冷媒液が溜められることにより、負荷変動時にも気液分離器40から冷却部30へ流れる冷媒の流量を維持できる。気液分離器40が液だめ機能を有し、負荷変動に対するバッファとなり負荷変動を吸収できるので、EV機器31の冷却性能を安定させることができる。
【0072】
図2を参照して、本実施の形態における電気機器の冷却装置は、流量調整弁28を備える。流量調整弁28は、熱交換器14から膨張弁16へ向かう冷媒の経路において、並列に接続された経路のうちの一方を形成する、冷媒通路23に配置されている。流量調整弁28は、その弁開度を変動させ、冷媒通路23を流れる冷媒の圧力損失を増減させることにより、冷媒通路23を流れる冷媒の流量と、冷媒通路32を含むEV機器31の冷却系を流れる冷媒の流量とを任意に調節する。
【0073】
たとえば、流量調整弁28を全閉にして弁開度を0%にすると、熱交換器14を出た冷媒の全量が気液分離器40から冷媒通路34へ流入する。流量調整弁28の弁開度を大きくすれば、熱交換器14から冷媒通路22へ流れる冷媒のうち、冷媒通路23を経由して熱交換器15へ直接流れる流量が大きくなり、冷媒通路34を経由して冷媒通路32へ流れEV機器31を冷却する冷媒の流量が小さくなる。流量調整弁28の弁開度を小さくすれば、熱交換器14から冷媒通路22へ流れる冷媒のうち、冷媒通路23を経由して熱交換器15へ直接流れる流量が小さくなり、冷媒通路32を経由して流れEV機器31を冷却する冷媒の流量が大きくなる。
【0074】
流量調整弁28の弁開度を大きくするとEV機器31を冷却する冷媒の流量が小さくなり、EV機器31の冷却能力が低下する。流量調整弁28の弁開度を小さくするとEV機器31を冷却する冷媒の流量が大きくなり、EV機器31の冷却能力が向上する。流量調整弁28を使用して、EV機器31に流れる冷媒の量を最適に調節できるので、EV機器31の過冷却を確実に防止することができ、加えて、EV機器31の冷却系の冷媒の流通に係る圧力損失および冷媒を循環させるための圧縮機12の消費電力を、確実に低減することができる。
【0075】
本実施の形態における電気機器の冷却装置はさらに、冷媒通路51を備える。冷媒通路51は、圧縮機12と熱交換器14との間を冷媒が流通する冷媒通路21と、冷却部30に冷媒を流通させる冷媒通路34,36のうち冷却部30に対し下流側の冷媒通路36とを連通する。冷媒通路36は、冷媒通路51との分岐よりも上流側の冷媒通路36aと、冷媒通路51との分岐よりも下流側の冷媒通路36bとに二分割される。
【0076】
冷媒通路36および冷媒通路51には、冷媒通路51と冷媒通路21,36との連通状態を切り換える切り換え弁52が設けられている。切り換え弁52は、その開閉を切り換えることにより、冷媒通路51を経由する冷媒の流通を可能または不可能にする。切り換え弁52を使用して冷媒の経路を切り換えることにより、EV機器31を冷却した後の冷媒を、冷媒通路36b,24を経由させて熱交換器15へ、または、冷媒通路51および冷媒通路21を経由して熱交換器14へのいずれかの経路を任意に選択して、流通させることができる。
【0077】
より具体的には、切り換え弁52として2つの弁57,58が設けられている。蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷房運転中には、弁57を全開(弁開度100%)とし弁58を全閉(弁開度0%)とし、流量調整弁28の弁開度を冷却部30に十分な冷媒が流れるように調整する。これにより、EV機器31を冷却した後の冷媒通路36aを流通する冷媒を、冷媒通路36bを経由させて、確実に熱交換器15へ流通させることができる。
【0078】
一方、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の停止中には、弁58を全開とし弁57を全閉とし、さらに流量調整弁28を全閉とする。これにより、EV機器31を冷却した後の冷媒通路36aを流通する冷媒を、冷媒通路51を経由させて熱交換器14へ流通させ、圧縮機12を経由せずに冷却部30と熱交換器14との間に冷媒を循環させる環状の経路を形成することができる。
【0079】
図4は、蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転中の、EV機器を冷却する冷媒の流れを示す模式図である。図5は、蒸気圧縮式冷凍サイクルの停止中の、EV機器を冷却する冷媒の流れを示す模式図である。図6は、この発明の実施の形態1における電気機器の冷却装置において、流量調整弁および切り換え弁の開閉状態を示す図である。
【0080】
図6中に示す運転モードのうち「エアコン運転モード」とは、図4に示す蒸気圧縮式冷凍サイクル10を運転させる場合、すなわち圧縮機12を運転させて蒸気圧縮式冷凍サイクル10の全体に冷媒を流通させる場合を示す。一方「ヒートパイプ運転モード」とは、図5に示す蒸気圧縮式冷凍サイクル10を停止させる場合、すなわち、圧縮機12を停止させ、冷却部30と熱交換器14とを結ぶ環状の経路を経由させて冷媒を循環させる場合を示す。
【0081】
図4および図6を参照して、圧縮機12を駆動させ蒸気圧縮式冷凍サイクル10が運転している「エアコン運転モード」のときには、流量調整弁28は、冷却部30に十分な冷媒が流れるように、弁開度を調整される。切り換え弁52は、冷媒を冷却部30から熱交換器15を経由して膨張弁16へ流通させるように操作される。すなわち、弁57を全開にし弁58を全閉にすることで、冷媒が冷却装置の全体を流れるように冷媒の経路が選択される。このため、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷却能力を確保できるとともに、EV機器31を効率よく冷却することができる。
【0082】
図5および図6を参照して、圧縮機12を停止させ蒸気圧縮式冷凍サイクル10が停止している「ヒートパイプ運転モード」のときには、冷媒を冷却部30から熱交換器14へ循環させるように切り換え弁52を操作する。すなわち、弁57を全閉にし弁58を全開にし、さらに流量調整弁28を全閉にすることで、冷媒は冷媒通路36aから冷媒通路36bへは流れず冷媒通路51を経由して流通する。これにより、熱交換器14から、冷媒通路22と冷媒通路34とを順に経由して冷却部30へ至り、さらに冷媒通路36a、冷媒通路51、冷媒通路21を順に経由して熱交換器14へ戻る、閉じられた環状の経路が形成される。このときの冷媒が流れる経路、すなわち冷媒通路21、冷媒通路22、冷媒通路34、冷媒通路36aおよび冷媒通路51は、第2通路を形成する。
【0083】
この環状の経路を経由して、圧縮機12を動作することなく、熱交換器14と冷却部30との間に冷媒を循環させることができる。冷媒は、EV機器31を冷却するとき、EV機器31から蒸発潜熱を受けて蒸発する。EV機器31との熱交換により気化された冷媒蒸気は、冷媒通路36a、冷媒通路51および冷媒通路21を順に経由して、熱交換器14へ流れる。熱交換器14において、車両の走行風、または、コンデンサファン42もしくはエンジン冷却用のラジエータファンからの通風により、冷媒蒸気は冷却されて凝縮する。熱交換器14で液化した冷媒液は、冷媒通路22,34を経由して、冷却部30へ戻る。
【0084】
このように、冷却部30と熱交換器14とを経由する環状の経路によって、EV機器31を加熱部とし熱交換器14を冷却部とする、ヒートパイプが形成される。したがって、蒸気圧縮式冷凍サイクル10が停止しているとき、すなわち車両用の冷房が停止しているときにも、圧縮機12を起動する必要なく、EV機器31を確実に冷却することができる。EV機器31の冷却のために圧縮機12を常時運転する必要がないことにより、圧縮機12の消費動力を低減して車両の燃費を向上することができ、加えて、圧縮機12を長寿命化できるので圧縮機12の信頼性を向上することができる。
【0085】
図4および図5には、地面60が図示されている。地面60に対して垂直な鉛直方向において、冷却部30は、熱交換器14よりも下方に配置されている。熱交換器14と冷却部30との間に冷媒を循環させる環状の経路において、冷却部30が下方に配置され、熱交換器14が上方に配置される。熱交換器14は、冷却部30よりも高い位置に配置される。
【0086】
この場合、冷却部30で加熱され気化した冷媒蒸気は、環状の経路内を上昇して熱交換器14へ到達し、熱交換器14において冷却され、凝縮されて液冷媒となり、重力の作用により環状の経路内を下降して冷却部30へ戻る。つまり、冷却部30と、熱交換器14と、これらを連結する冷媒の経路(すなわち第2通路)とによって、サーモサイフォン式のヒートパイプが形成される。ヒートパイプを形成することでEV機器31から熱交換器14への熱伝達効率を向上することができるので、蒸気圧縮式冷凍サイクル10が停止しているときにも、動力を加えることなく、EV機器31をより効率よく冷却することができる。
【0087】
冷媒通路51と冷媒通路21,36との連通状態を切り換える切り換え弁52としては、上述した一対の弁57,58を使用してもよく、または、冷媒通路36と冷媒通路51との分岐に配置された三方弁を使用してもよい。いずれの場合でも、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の運転時および停止時の両方において、EV機器31を効率よく冷却することができる。弁57,58は、冷媒通路の開閉ができる単純な構造であればよいので安価であり、2つの弁57,58を使用することにより、より低コストな電気機器の冷却構造を提供することができる。一方、2つの弁57,58を配置するよりも三方弁の配置に要する空間はより小さくてよいと考えられ、三方弁を使用することにより、より小型化され車両搭載性に優れた電気機器の冷却構造を提供することができる。
【0088】
本実施の形態における電気機器の冷却構造はさらに、逆止弁54を備える。逆止弁54は、圧縮機12と熱交換器14との間の冷媒通路21の、冷媒通路21と冷媒通路51との接続箇所よりも圧縮機12に近接する側に、配置されている。逆止弁54は、圧縮機12から熱交換器14へ向かう冷媒の流れを許容するとともに、その逆向きの冷媒の流れを禁止する。このようにすれば、図5に示すヒートパイプ運転モードのとき、熱交換器14と冷却部30との間に冷媒を循環させる閉ループ状の冷媒の経路を、確実に形成することができる。
【0089】
逆止弁54がない場合、冷媒が冷媒通路51から圧縮機12側の冷媒通路21へ流れるおそれがある。逆止弁54を備えることによって、冷媒通路51から圧縮機12側へ向かう冷媒の流れを確実に禁止できるため、環状の冷媒経路で形成するヒートパイプを使用した、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の停止時のEV機器31の冷却能力の低下を防止できる。したがって、車両の車室用の冷房が停止しているときにも、EV機器31を効率よく冷却することができる。
【0090】
また、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の停止中に、閉ループ状の冷媒の経路内の冷媒の量が不足する場合には、圧縮機12を短時間のみ運転することで、逆止弁54を経由して閉ループ経路に冷媒を供給できる。これにより、閉ループ内の冷媒量を増加させ、ヒートパイプの熱交換処理量を増大させることができる。したがって、ヒートパイプの冷媒量を確保することができるので、冷媒量の不足のためにEV機器31の冷却が不十分となることを回避することができる。
【0091】
すなわち、本実施の形態における電気機器の冷却装置は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成し、車両空調用の冷媒が循環する循環通路としての冷媒通路21〜27と、冷媒通路21〜27と冷媒通路32との間を連絡する連絡通路としての冷媒通路34,36,51と、冷媒通路34,36,51の経路上に設けられ、冷媒通路21〜27と冷媒通路32との間の冷媒流れを許容もしくは遮断する切り換え弁52(弁57および弁58)とを備える。
【0092】
続いて、本実施の形態における電気機器の冷却装置を構成する図2中の冷却部30の構造について詳細に説明する。図7は、この発明の実施の形態1における電気機器の冷却装置において、図2中の冷却部の構造を示す正面図である。図8は、図7中のVIII−VIII線上に沿った冷却部を示す断面図である。
【0093】
図7および図8を参照して、冷却部30は、冷媒通路形成部材120、冷媒供給用配管141および冷媒排出用配管142を有する。
【0094】
冷媒通路形成部材120は、平板形状を有する。本実施の形態では、冷媒通路形成部材120が、a(縦)×b(横)×t(厚み)の大きさを有する直方体形状を有する(a,b>t)。冷媒通路形成部材120は、熱伝導性に優れた材料により形成されている。冷媒通路形成部材120は、アルミニウムや銅などの金属から形成されている。
【0095】
冷媒通路形成部材120は、素子搭載面122を有する。素子搭載面122は、a(縦)×b(横)の大きさを有しており、冷媒通路形成部材120が有する複数の側面のうち最も大きい面積を有する側面である。本明細書において、素子搭載面122が延在する方向を、冷媒通路形成部材120の平面方向という。素子搭載面122に直交する方向、すなわち、冷媒通路形成部材120の、厚みtを有する端辺が延びる方向を、冷媒通路形成部材120の厚み方向という。
【0096】
冷媒通路形成部材120には、複数のインバータ素子110が接続されている。複数のインバータ素子110は、素子搭載面122に接合されている。複数のインバータ素子110は、素子搭載面122上において、互いに間隔を設けてマトリクス状に配置されている。インバータ素子110は、図2中のEV機器31がインバータである場合に、そのインバータに含まれる発熱源として設けられている。
【0097】
冷媒通路形成部材120には、図2中の冷媒通路32が形成されている。冷媒通路32には、車両空調用の冷媒(A/C(Air Conditioner)冷媒)が流通される。冷媒通路32は、A/C冷媒が冷媒通路形成部材120の平面方向に流通するように形成されている。冷媒通路32は、素子搭載面122に平行な平面内で延びるように形成されている。インバータ素子110で発生した熱は、冷媒通路形成部材120を伝わって、冷媒通路32を流通するA/C冷媒に放熱される。
【0098】
冷媒供給用配管141は、冷媒通路32にA/C冷媒を供給するための冷媒供給部として、冷媒通路形成部材120に接続されている。冷媒排出用配管142は、冷媒通路32からA/C冷媒を排出するための冷媒排出部として、冷媒通路形成部材120に接続されている。
【0099】
冷媒通路32は、A/C冷媒の流れ方向に対して並列に並ぶ多孔菅形状を有する複数の多孔菅部151と、A/C冷媒に含まれる気泡を排出するための複数のリセット空間部157と、冷媒の流れを反転させるための反転空間部156とを含む複数の区間から構成されている。
【0100】
複数の多孔菅部151は、A/C冷媒の流れ方向において互いに間隔を設けて並んでいる。リセット空間部157は、A/C冷媒の流れ方向において互いに隣り合う多孔菅部151間に配置されている。反転空間部156は、A/C冷媒の流れ方向において互いに隣り合う多孔菅部151間に配置されている。反転空間部156は、その両側に配置された多孔菅部151間で冷媒の流れ方向を反転させるように設けられている。
【0101】
より具体的に説明すると、複数の多孔菅部151は、A/C冷媒の流れ方向において2列に渡って設けられている。複数の多孔菅部151のうち1列目に設けられたものを複数の多孔菅部151Yといい、2列目に設けられたものを複数の多孔菅部151Xという。複数の多孔菅部151Xは、複数の多孔菅部151X間で冷媒の流れ方向が同一となるように設けられている。複数の多孔菅部151Yは、複数の多孔菅部151Y間で冷媒の流れ方向が同一となるように設けられている。
【0102】
複数の多孔菅部151Xのうち一方の端に配置されたものを特に多孔菅部151Aといい、複数の多孔菅部151Xのうち他方の端に配置されたものを特に多孔菅部151Bという。複数の多孔菅部151Yのうち一方の端に配置されたものを特に多孔菅部151Cといい、複数の多孔菅部151Yのうち他方の端に配置されたものを特に多孔菅部151Dという。
【0103】
互いに隣り合う多孔菅部151Xの間には、リセット空間部157が設けられている。互いに隣り合う多孔菅部151Yの間には、リセット空間部157が設けられている。多孔菅部151Aおよび多孔菅部151Cに隣り合う位置には、反転空間部156が設けられている。反転空間部156は、多孔菅部151Aおよび多孔菅部151Cに対してリセット空間部157の反対側に配置されている。多孔菅部151Bには、冷媒排出用配管142が接続されている。多孔菅部151Dには、冷媒供給用配管141が接続されている。
【0104】
冷媒通路形成部材120は、ケース体126と、蓋体121と、仕切り壁127と、複数の押し出し成形材131とを有する。ケース体126は、一方向に開口する筐体形状を有する。蓋体121は、ケース体126の開口部を閉塞するように設けられている。蓋体121は、ロウ付けによりケース体126に接合されている。仕切り壁127は、ケース体126内に収容されている。仕切り壁127は、複数の多孔菅部151Xと複数の多孔菅部151Yとを隔てるように設けられている。
【0105】
押し出し成形材131は、多孔菅部151を形成している。押し出し成形材131は、アルミニウムなどの金属を押し出し成形することによって形成されている。押し出し成形材131は、平板形状の外観を有する。押し出し成形時、押し出し成形材131には、多孔菅部151におけるA/C冷媒の流路をなす複数の孔152が形成される。押し出し成形材131は、ケース体126内に収容されるとともに、複数の多孔菅部151の各々に対応する位置に配置されている。多孔菅部151Xを形成する押し出し成形材131と、多孔菅部151Yを形成する押し出し成形材131とが、仕切り壁127を隔てた両側に配置されている。
【0106】
互いに隣り合う押し出し成形材131間の空間には、リセット空間部157が形成されている。リセット空間部157には、その両側に配置される押し出し成形材131の複数の孔152が開放されている。押し出し成形材131の複数の孔152は、リセット空間部157において1つの空間に開放されている。リセット空間部157におけるA/C冷媒の流路断面は、多孔菅部151におけるA/C冷媒の流路断面よりも大きい。リセット空間部157は、その両側に配置される2つの押し出し成形材131と、ケース体126と、蓋体121と、仕切り壁127とに囲まれた空間に形成されている。
【0107】
多孔菅部151Aを形成する押し出し成形材131と、多孔菅部151Cを形成する押し出し成形材131とに隣り合う空間には、反転空間部156が形成されている。反転空間部156には、多孔菅部151Aを形成する押し出し成形材131の複数の孔152と、多孔菅部151Cを形成する押し出し成形材131の複数の孔152とが開放されている。反転空間部156は、多孔菅部151Aを形成する押し出し成形材131と、多孔菅部151Cを形成する押し出し成形材131と、ケース体126と、蓋体121と、仕切り壁127とに囲まれた空間に形成されている。
【0108】
冷媒通路形成部材120には、リセット空間部157および反転空間部156において排出された気泡を回収するための図示しないガス回収機構が設けられている。ガス回収機構は、たとえば、一定の圧力以上となると開放し、リセット空間部157および反転空間部156の上面に設けられるバルブにより構成される。そのガス回収機構により回収された気泡は、気相冷媒として、図2中に示す冷却部30と気液分離器40とを繋ぐ冷媒通路35を通じて気液分離器40に戻される。
【0109】
冷媒供給用配管141を通じて冷媒通路32に供給されたA/C冷媒は、多孔菅部151とリセット空間部157とを交互に流れた後、多孔菅部151Cから反転空間部156に流入する。A/C冷媒は、反転空間部156においてその流れ方向を反転させ、多孔菅部151Aに流入する。さらに、A/C冷媒は、多孔菅部151とリセット空間部157とを交互に流れた後、冷媒排出用配管142を通じて冷媒通路32から排出される。A/C冷媒は、冷媒通路32を流通する間、インバータ素子110から伝熱された冷媒通路形成部材120と熱交換することによって、EV機器31を冷却する。冷媒通路形成部材120は、EV機器31とA/C冷媒との間の熱交換を行なう熱交換器として機能する。
【0110】
なお、本実施の形態では、複数の多孔菅部151を2列に渡って設けたが、これに限られず、複数の多孔菅部151を3列以上の複数列に渡って設けてもよい。この場合、反転空間部156が、各列に並ぶ複数の多孔菅部151の一方の端と他方の端とに交互に設けられ、A/C冷媒は蛇行しながら冷媒通路32を流れる。
【0111】
本実施の形態における電気機器の冷却装置では、EV機器31の冷却に車室空調用の冷媒(A/C冷媒)を利用する。A/C冷媒は、ガス化(蒸発)し易く、また、ガス状態と液体状態との間の比重差が大きいなどの特徴を有する。このようなA/C冷媒を用いた場合、EV機器31の発熱源であるインバータ素子110において、ヒートスポット的な発熱が生じたり、発熱負荷が短時間に変動したりすると、蒸発潜熱として熱を吸収したA/C冷媒が気泡化し、その気泡同士の干渉が生じたりする。これにより、EV機器31の冷却効率にばらつきが生じる懸念が発生する。
【0112】
これに対して、本実施の形態では、互いに隣り合う多孔菅部151間に、多孔菅部151に形成された流路が開放されるリセット空間部157が設けられる。このような構成により、リセット空間部157において、多孔菅部151で生じたA/C冷媒の気泡を排出したり、A/C冷媒を攪拌することによってA/C冷媒の温度差を抑えたりできる。また、本実施の形態では、多孔菅部151Aと多孔菅部151Cとの間に反転空間部156を形成することによって、A/C冷媒の流れを往復(Uターン)流れとする。これにより、反転空間部156において、A/C冷媒の流れ方向を反転させつつ温度差のあるA/C冷媒を攪拌させたり、A/C冷媒中の気泡を排出したりできる。これにより、より均等な温度を有するA/C冷媒が気泡を含まない状態で多孔菅部151に供給されるため、EV機器31の冷却効率にばらつきが生じることを抑制できる。
【0113】
また、EV機器31をA/C冷媒を用いた冷却する場合、その熱交換器は、熱を奪い易いように平面形状であり、かつ、高耐圧性(たとえば、3MPa以上)を有することが要望される。本実施の形態では、多孔菅部151に押し出し成形材131を用いることにより、このような要望を低コストで実現することができる。
【0114】
なお、A/C冷媒は、熱交換器内で気液2相流体であるため、熱の吸収に伴って気相割合が増加する(乾き度が増加)。つまり、A/C冷媒は、乾き度を変化させながら熱交換器内を流通する。このため、A/C冷媒を用いる場合、熱交換器の下側からA/C冷媒を供給し、熱交換器の上側からA/C冷媒を排出する構造とする方が、気体が上側に逃げ易いため有利である。冷媒排出部が上側となるように熱交換器を傾けてもよい。
【0115】
複数の多孔菅部151は、第1の多孔菅部としての多孔菅部151pと、第2の多孔菅部としての多孔菅部151qとの2種類から構成されている。多孔菅部151pと多孔菅部151qとは、A/C冷媒の流れ方向において互いに隣り合って配置されている。多孔菅部151pと多孔菅部151qとは、冷媒の流れ方向において交互に配置されている。反転空間部156を挟んで互いに隣り合う多孔菅部151Aおよび多孔菅部151Cの種類は、それぞれ、多孔菅部151pおよび多孔菅部151qである。
【0116】
多孔菅部151pが有する多孔菅形状と、多孔菅部151qが有する多孔菅形状とは、互いに異なる。多孔菅部151pが有する多孔菅形状と、多孔菅部151qが有する多孔菅形状とでは、A/C冷媒の流路を形成する孔152の形状や数、位置が異なる。図8に示されるように、本実施の形態では、多孔菅部151qが、矩形断面の4つの孔と、その両側に配置された円形断面の2つの孔とからなる多孔菅形状を有するのに対して、多孔菅部151pは、円形断面の9つの孔からなる多孔菅形状を有する。
【0117】
このような構成によれば、多孔菅形状が異なる多孔菅部151pと多孔菅部151qとの間でA/C冷媒の流れの形態に変化が生じる。このため、リセット空間部157や反転空間部156において、気泡の排出やA/C冷媒の攪拌を促進させることができる。
【0118】
図9は、図8中の多孔菅部が有する多孔菅形状の第1変形例を示す断面図である。図10は、図8中の多孔菅部が有する多孔菅形状の第2変形例を示す断面図である。
【0119】
図9を参照して、本変形例では、多孔菅部151qが、円形断面の5つの孔からなる多孔菅形状を有するのに対して、多孔菅部151pは、円形断面の7つの孔からなる多孔菅形状を有する。図10を参照して、本変形例では、多孔菅部151qが、両端と中心とに配置された三角断面の3つの孔と、その三角断面の孔の間に配置された矩形断面の2つの孔とからなる多孔菅形状を有するのに対して、多孔菅部151pは、両端と中心とに配置された矩形断面の3つの孔と、その矩形断面の孔の間に配置された三角断面の2つの孔とからなる多孔菅形状を有する。
【0120】
これらの変形例においても、リセット空間部157や反転空間部156において気泡の排出やA/C冷媒の攪拌を促進させる効果を得ることができる。
【0121】
図11は、図7中の冷却部の変形例を示す正面図である。図12は、図11中のXII−XII線上に沿った冷却部を示す断面図である。
【0122】
図11および図12を参照して、本変形例では、複数の多孔菅部151が、各多孔菅部151を流れる冷媒の流れ方向に直交する方向に並んで設けられている。反転空間部156は、A/C冷媒の流れ方向において互いに隣り合う多孔菅部151間に配置されている。反転空間部156は、その両側に配置された多孔菅部151間でA/C冷媒の流れを反転させるように設けられている。複数の多孔菅部151は、多孔菅部151pと多孔菅部151qとの2種類から構成されている。多孔菅部151pと多孔菅部151qとは、A/C冷媒の流れ方向において互いに隣り合って配置されている。多孔菅部151pと多孔菅部151qとは、冷媒の流れ方向において交互に配置されている。
【0123】
冷媒供給用配管141を通じて冷媒通路32に供給されたA/C冷媒は、蛇行しながら多孔菅部151と反転空間部156とを交互に流れ、図示しない冷媒排出用配管を通じて冷媒通路32から排出される。
【0124】
本変形例では、図7中のリセット空間部157が反転空間部156と同一の空間として設けられている。
【0125】
以上に説明した、この発明の実施の形態1における電気機器の冷却装置の構造についてまとめて説明すると、本実施の形態における電気機器の冷却装置は、車両に搭載された電気機器としてのEV機器31の冷却装置である。電気機器の冷却装置は、平板形状を有し、EV機器31に含まれる発熱源としてのインバータ素子110が接続される冷媒通路形成部材120を備える。冷媒通路形成部材120には、その平面方向に車室空調用の冷媒が流通する冷媒通路32が形成される。冷媒通路32は、冷媒の流れ方向に対して並列に並ぶ多孔菅形状を有し、互いに間隔を設けて配置される複数の多孔菅部151と、冷媒の流れ方向において互いに隣り合う多孔菅部151の間に設けられ、冷媒に含まれる気泡を排出するリセット空間部157と、冷媒の流れ方向において互いに隣り合う多孔菅部151を互いに連通させ、その隣り合う多孔菅部151の間で冷媒の流れ方向を反転させる反転空間部156とを有する。
【0126】
このように構成された、この発明の実施の形態1における電気機器の冷却装置によれば、互いに隣り合う多孔菅部151の間にリセット空間部157もしくは反転空間部156を設けることによって、A/C冷媒の気泡を排出したり、温度差のあるA/C冷媒を攪拌したりできる。これにより、ガス化し易い、ガス状態と液体状態との間の比重差が大きいといった特徴を有するA/C冷媒を利用した冷却構造にもかかわらず、EV機器31の冷却効率にばらつきが生じることを抑制できる。
【0127】
(実施の形態2)
図13は、この発明の実施の形態2における電気機器の冷却装置において、図2中の冷却部の構造を示す正面図である。図14は、図13中のXIV−XIV線上に沿った冷却部を示す断面図である。以下、本実施の形態における電気機器の冷却装置の構造を説明するに当たって、実施の形態1における電気機器の冷却装置と重複する構造については、その説明を繰り返さない。
【0128】
図13および図14を参照して、冷却部30は、冷媒通路形成部材120、図示しない冷媒供給用配管および冷媒排出用配管142を有する。冷媒通路形成部材120には、図2中の冷媒通路32に加えて、冷媒配置空間181が形成されている。
【0129】
冷媒通路32は、A/C冷媒の流れ方向に対して並列に並ぶ多孔菅形状を有する複数の多孔菅部151と、冷媒の流れを反転させるための反転空間部156とを含む複数の区間から構成されている。複数の多孔菅部151は、各多孔菅部151を流れる冷媒の流れ方向に直交する方向に並んで設けられている。
【0130】
図13中に示された範囲の中で、冷媒流れの上流側に設けられた多孔菅部151を多孔菅部151Aといい、冷媒の流れ方向において多孔菅部151Aと隣り合い、冷媒流れの下流側に設けられた多孔菅部151を多孔菅部151Bという。反転空間部156は、A/C冷媒の流れ方向において互いに隣り合う多孔菅部151間に配置されている。反転空間部156は、多孔菅部151Aと多孔菅部151Bとを互いに連通させるように設けられている。反転空間部156は、その両側に配置された多孔菅部151Aと多孔菅部151Bとの間でA/C冷媒の流れを反転させるように設けられている。
【0131】
複数の多孔菅部151は、多孔菅部151pと多孔菅部151qとの2種類から構成されている。多孔菅部151pと多孔菅部151qとは、A/C冷媒の流れ方向において互いに隣り合って配置されている。多孔菅部151pと多孔菅部151qとは、冷媒の流れ方向において交互に配置されている。多孔菅部151pおよび多孔菅部151qは、ともに矩形断面の4つの孔からなる多孔菅形状を有するが、孔の断面の大きさが互いに異なる。
【0132】
図示しない冷媒供給用配管を通じて冷媒通路32に供給されたA/C冷媒は、蛇行しながら、多孔菅部151と反転空間部156とを交互に流れ、冷媒排出用配管142を通じて冷媒通路32から排出される。
【0133】
冷媒配置空間181は、冷媒通路32とは独立した経路で形成されている。冷媒配置空間181は、冷媒通路形成部材120の厚み方向において冷媒通路32と積み重なって設けられている。素子搭載面122を正面から見た場合に、冷媒配置空間181と冷媒通路32とは、互いに重なって設けられている。冷媒配置空間181は、冷媒通路32と、素子搭載面122に搭載されたインバータ素子110との間に設けられている。
【0134】
冷媒配置空間181には、冷媒が配置されている。本実施の形態では、冷媒配置空間181に冷媒が貯留されている。冷媒は、冷媒配置空間181に密封配置されている。
【0135】
冷媒配置空間181に貯留される冷媒は、冷媒通路32に流通されるA/C冷媒とは異なる冷媒である。冷媒配置空間181に貯留される冷媒は、冷媒通路32に流通されるA/C冷媒の比熱よりも大きい比熱を有する。すなわち、冷媒配置空間181に貯留される冷媒は、冷媒通路32に流通されるA/C冷媒よりも温まり難く、冷め難い特性を有する。冷媒配置空間181に貯留される冷媒としては、たとえば、熱伝導性の良いゲル媒体が用いられる。
【0136】
冷媒通路形成部材120は、押し出し成形材161と、仕切り壁127と、蓋体162および蓋体163とを有する。
【0137】
押し出し成形材161は、多孔菅部151と、反転空間部156と、冷媒配置空間181とを形成している。押し出し成形材161は、アルミニウムなどの金属を押し出し成形することによって形成されている。押し出し成形材161は、平板形状の外観を有する。押し出し成形時、押し出し成形材161には、多孔菅部151におけるA/C冷媒の流路をなす複数の孔152と、冷媒配置空間181を規定する孔186とが形成される。押し出し成形後に実施される押し出し成形材161の開口端面の加工によって、反転空間部156におけるA/C冷媒の流路をなす空間が形成される。
【0138】
仕切り壁127は、押し出し成形材161に一体に成形されている。仕切り壁127は、互いに隣り合う2つの多孔菅部151を隔てるように設けられている。蓋体162および蓋体163は、押し出し成形材161の両側の開口端をそれぞれ塞ぐように設けられている。蓋体162および蓋体163は、ロウ付けにより押し出し成形材161に接合されている。反転空間部156は、押し出し成形材161と蓋体162および蓋体163とに囲まれた空間に形成されている。
【0139】
本実施の形態では、A/C冷媒の流れ方向において互いに隣り合う多孔菅部151(151A)と多孔菅部151(151B)との間に反転空間部156を形成することによって、A/C冷媒の流れを往復(Uターン)流れとする。これにより、反転空間部156において、A/C冷媒の流れ方向を反転させつつ温度差のあるA/C冷媒を攪拌させたり、A/C冷媒中の気泡を排出したりできる。これにより、より均等な温度を有するA/C冷媒が気泡を含まない状態で多孔菅部151に供給されるため、EV機器31の冷却効率にばらつきが生じることを抑制できる。
【0140】
また、本実施の形態では、発熱源であるインバータ素子110とA/C冷媒が流通する冷媒通路32との間に、A/C冷媒よりも大きい比熱を有する冷媒が貯留される冷媒配置空間181が設けられている。このような構成により、冷媒配置空間181に貯留された冷媒を、インバータ素子110から伝達された熱を蓄える蓄熱媒体として機能させる。これにより、インバータ素子110における発熱が短時間で大きく変動することがあっても、ヒートスポット的なA/C冷媒の沸騰(ガス化)を抑制することができる。また、冷凍サイクルは、A/C冷媒が気体、液体の状態変化を伴うため、システム応答性が遅くなる特徴があるが、そのようなシステム応答性の遅れの影響を低減することができる。
【0141】
特にEV機器31を構成する部品は、発熱密度が高く、上記のように発熱量が短時間で大きく変動する場面が想定されるため、本実施の形態における2階建て構造を有する熱交換器がより有効に適用される。
【0142】
さらに本実施の形態では、2階建て構造を有する熱交換器が押し出し成形材161によって一体に形成されている。このような構成により、高耐圧性を発揮する平板形状の熱交換器を低コストで実現することができる。
【0143】
図15は、図13中の冷却部の変形例を示す正面図である。図16は、図15中の冷却部を示す背面図である。図16中では、素子搭載面122に搭載されたインバータ素子110が省略して描かれている。図17は、図15中のXVII−XVII線上に沿った冷却部を示す断面図である。
【0144】
図15から図17を参照して、本変形例では、冷媒が冷媒配置空間181で流通される。
【0145】
より具体的には、冷却部30が、冷媒配置空間181のために設けられた冷媒供給用配管143と、図示しない冷媒排出用配管とをさらに有する。冷媒供給用配管143は、冷媒配置空間181に冷媒を供給するための冷媒供給部として、冷媒通路形成部材120に接続されている。図示しない冷媒排出用配管は、冷媒配置空間181から冷媒を排出するための冷媒排出部として、冷媒通路形成部材120に接続されている。
【0146】
本実施の形態では、冷媒配置空間181のために設けられた冷媒供給用配管および冷媒排出用配管の位置が、冷媒通路32のために設けられた冷媒供給用配管および冷媒排出配管の位置から上下反転している。
【0147】
冷媒配置空間181は、複数の直線部182と、反転空間部183とを含む複数の区間から構成されている。直線部182は、冷媒の流れ方向に対して並列に並ぶ多孔菅形状を有する。複数の直線部182は、各直線部182を流れる冷媒の流れ方向に直交する方向に並んで設けられている。複数の直線部182は、それぞれ、複数の多孔菅部151と重なる位置に設けられている。反転空間部183は、A/C冷媒の流れ方向において互いに隣り合う直線部182間に配置されている。反転空間部183は、その両側に配置された直線部182間でA/C冷媒の流れを反転させるように設けられている。
【0148】
なお、冷媒配置空間181に形成する冷媒流路の経路は、上記構成に限られないが、押し出し成形材161の押し出し成形時に冷媒通路32の多孔菅部151と同時に成形される形状が好ましい。
【0149】
冷媒配置空間181に流通される冷媒は、冷媒通路32に流通されるA/C冷媒とは異なる冷媒である。冷媒配置空間181に流通される冷媒は、冷媒通路32に流通されるA/C冷媒の比熱よりも大きい比熱を有する。媒配置空間181に流通される冷媒としては、たとえば、LLC(ロングライフクーラント)が用いられる。
【0150】
このような構成によれば、冷媒配置空間181を流通する冷媒と、冷媒通路32を流通するA/C冷媒との間の熱交換性能を向上させるとともに、冷却部30における冷却性能の応答性を高めることができる。
【0151】
以上に説明した、この発明の実施の形態2における電気機器の冷却装置の構造についてまとめて説明すると、本実施の形態における電気機器の冷却装置は、車両に搭載された電気機器としてのEV機器31の冷却装置である。電気機器の冷却装置は、平板形状を有し、EV機器31に含まれる発熱源としてのインバータ素子110が接続される冷媒通路形成部材120を備える。冷媒通路形成部材120には、その平面方向に車室空調用の冷媒が流通する冷媒通路32と、その厚み方向に冷媒通路32と積み重なって設けられ、冷媒が配置される冷媒配置空間181とが形成される。冷媒通路32は、冷媒の流れ方向に対して並列に並ぶ多孔菅形状を有する第1の多孔菅部としての多孔菅部151Aと、冷媒の流れ方向に対して並列に並ぶ多孔菅形状を有し、冷媒の流れ方向に対して平行に延びる仕切り壁127によって多孔菅部151Aと隔てられた第2の多孔菅部としての多孔菅部151Bと、多孔菅部151Aおよび多孔菅部151Bを互いに連通させ、多孔菅部151Aと多孔菅部151Bとの間で冷媒の流れ方向を反転させる反転空間部156とを有する。
【0152】
このように構成された、この発明の実施の形態2における電気機器の冷却装置によれば、冷媒通路32において互いに隣り合う多孔菅部151の間に反転空間部156を設けることによって、A/C冷媒の気泡を排出したり、温度差のあるA/C冷媒を攪拌したりできる。また、冷媒通路32と冷媒配置空間181との2階建て構造により、冷媒通路32内でA/C冷媒による冷却効率が局所的に低下する場合であっても、その影響を冷媒配置空間181に配置された冷媒によって緩和することができる。これにより、ガス化し易い、ガス状態と液体状態との間の比重差が大きいといった特徴を有するA/C冷媒を利用した冷却構造にもかかわらず、EV機器31の冷却効率にばらつきが生じることを抑制できる。
【0153】
なお、実施の形態1および実施の形態2で説明した電気機器の冷却装置の構造を適宜組み合わせて、新たな冷却装置を構成してもよい。たとえば、図11および図13中に示す冷却部30において、図7中に示すように、リセット空間部157を間に挟みながら冷媒の流れ方向に沿って複数の多孔菅部151を設けてもよい。
【0154】
また、実施の形態1および実施の形態2では、本発明をハイブリッド自動車に搭載されるEV機器31の冷却に適用した場合について説明したが、冷却対象となる電気機器は、以下に一例を挙げるように、これに限られるものではない。
【0155】
図18は、車両に搭載されるバッテリの冷却装置を示す斜視図である。図18を参照して、複数のバッテリセル191が一方向に積層されてバッテリ190が構成されている。バッテリ190の両側には、実施の形態1および実施の形態2において説明した冷媒通路形成部材120が設けられている。
【0156】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0157】
この発明は、たとえば、モータジェネレータおよびインバータなどの電気機器を搭載するハイブリッド自動車や電気自動車などの車両に適用される。
【符号の説明】
【0158】
10 蒸気圧縮式冷凍サイクル、12 圧縮機、14,15,18 熱交換器、16 膨張弁、21,22,23,24,25,26,27,32,34,35,36,36a,36b,51 冷媒通路、28 流量調整弁、30 冷却部、31 EV機器、40 気液分離器、42 コンデンサファン、52 切り換え弁、54 逆止弁、57,58 弁、60 地面、90 ダクト、91 ダクト入口、92 ダクト出口、93 ファン、100 エンジン、110 インバータ素子、120 冷媒通路形成部材、121,162,163 蓋体、122 素子搭載面、126 ケース体、127 仕切り壁、131,161 押し出し成形材、141,143 冷媒供給用配管、142 冷媒排出用配管、151,151A,151B,151C,151D,151X,151Y,151p,151q 多孔菅部、152 孔、156,183 反転空間部、157 リセット空間部、181 冷媒配置空間、182 直線部、190 バッテリ、191 バッテリセル、200 駆動ユニット、400 走行用バッテリ、500,600 ケーブル、1000 車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された電気機器の冷却装置であって、
平板形状を有し、電気機器に含まれる発熱源が接続される冷媒通路形成部材を備え、
前記冷媒通路形成部材には、その平面方向に車室空調用の冷媒が流通する冷媒通路と、その厚み方向に前記冷媒通路と積み重なって設けられ、冷媒が配置される冷媒配置空間とが形成され、
前記冷媒通路は、冷媒の流れ方向に対して並列に並ぶ多孔菅形状を有する第1の多孔菅部と、冷媒の流れ方向に対して並列に並ぶ多孔菅形状を有し、冷媒の流れ方向に対して平行に延びる仕切り壁によって前記第1の多孔菅部と隔てられた第2の多孔菅部と、前記第1の多孔菅部および前記第2の多孔菅部を互いに連通させ、前記第1の多孔菅部と前記第2の多孔菅部との間で冷媒の流れ方向を反転させる反転空間部とを有する、電気機器の冷却装置。
【請求項2】
前記発熱源は、前記発熱源と前記冷媒通路との間に前記冷媒配置空間が位置するように前記冷媒通路形成部材に接続され、
前記冷媒配置空間には、前記冷媒通路を流通する冷媒よりも大きい比熱を有する冷媒が配置される、請求項1に記載の電気機器の冷却装置。
【請求項3】
前記冷媒配置空間には、前記冷媒通路を流通する冷媒とは異なる冷媒が貯留される、請求項1または2に記載の電気機器の冷却装置。
【請求項4】
前記冷媒配置空間には、前記冷媒通路を流通する冷媒とは異なる冷媒が流通される、請求項1または2に記載の電気機器の冷却装置。
【請求項5】
前記第1の多孔菅部は、前記第2の多孔菅部が有する多孔菅形状と異なる多孔菅形状を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の電気機器の冷却装置。
【請求項6】
前記冷媒通路形成部材は、前記第1の多孔菅部および前記第2の多孔菅部を形成するための押し出し成形材を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の電気機器の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−105880(P2013−105880A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248612(P2011−248612)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】