説明

電気機器収納ケースの結露防止装置

【課題】電気機器の収納ケース50内の結露により、水分が重要保安部位(制御基板56、高電圧配線57)へ付着するのを防止する。
【解決手段】収納ケース50内に、電気エネルギーの供給を受けて両面に温度差を発生させることができる熱電素子71を設ける。また、この熱電素子71の低温側の面に金属プレートを介して吸水部材73を配置する。そして、通電方向により、熱電素子71の吸水部材73側の面を低温側にするか高温側にするかを切換え可能とし、結露が発生しやすい条件にて熱電素子71の吸水部材73側の面を低温側にし、結露が発生しにくい条件にて熱電素子71の吸水部材73側の面を高温側にするように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の収納ケース内での結露を防止する装置、特に結露による重要保安部位への水分の付着を防止する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電気機器収納ケースの除湿に関するもので、湿度センサによりケース内の湿度の上昇を検知すると、ケース内の空気をケース外に設けた吸着剤に循環させて、吸着剤に水分を吸着させることにより除湿し、吸着剤が飽和すると、再生用ヒータにより吸着剤を加熱して、水分を脱離させ、循環経路外へ排出するようにしている。
【特許文献1】特開昭57−096598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車両用電気機器、例えばハイブリッド自動車においてバッテリとモータジェネレータとの間に設けられて、バッテリからの直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータに供給するパワーコントロールユニットの収納ケース内で、結露が発生した場合、具体的には、外部雰囲気(温度や湿度)の変化により、電気回路系の構成部品上で結露したり、サービスカバーなど、熱容量の小さいカバー類に結露した場合、走行中の振動などで、水滴が制御基板や高電圧配線に付着することにより、絶縁低下による動作不良の原因となる。
【0004】
これに対し、特許文献1のような除湿技術では、ケース外に装置を設けて、循環経路を構築する必要があり、大がかりとなる故、車載等に適さない。
【0005】
本発明は、このような実状に鑑み、コンパクトな構成で、電気機器の収納ケース内での結露をコントロールして、制御回路部や高電圧部など重要保安部位への水滴の付着を防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明では、電気機器の収納ケース内に、電気エネルギーの供給を受けて両面に温度差を発生させて一方の面を低温にすることができる熱電素子と、この熱電素子の前記一方の面にて結露した水分を吸収する吸水部材とを設ける構成とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱電素子は、電気エネルギーを与えることで、その一方の面を低温側にし、他方の面を高温側にすることができる。従って、収納ケース内の空気中の水分を低温側の面で積極的に結露させ、結露した水分を吸水部材に吸収させて保持することにより、重要保安部位への水分の付着を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
図1は本発明の一実施形態に係るハイブリッド自動車の車両駆動装置の断面図、図2はその模式図である。主に図2で説明する。
【0010】
この車両駆動装置は、同一軸線上に、エンジンENGと、電動機と発電機とを兼ね、主に発電機として動作するモータジェネレータMG1と、主に電動機として動作するモータジェネレータMG2とを備えている。
【0011】
エンジンENGは、内燃機関であり、その出力軸1はトーションダンパ2を経て出力軸3となり、モータジェネレータMG1の中空の回転軸4内を通って、延在している。
【0012】
モータジェネレータMG1は、回転軸4に取付けられ複数の永久磁石が埋め込まれた内側のロータ5と、三相コイルを巻回してなる外側のステータ6とからなり、電動機と発電機とを兼ねるが、主として発電機として動作する(ロータ5の回転によりステータ6側のコイルに電流を発生させる)。
【0013】
モータジェネレータMG2は、回転軸7に取付けられ複数の永久磁石が埋め込まれた内側のロータ8と、三相コイルを巻回してなる外側のステータ9とからなり、電動機と発電機とを兼ねるが、主として電動機として動作する(ステータ9側のコイルに供給する電流による磁界でロータ8を回転させる)。
【0014】
また、モータジェネレータMG1とMG2との間に、動力分配機構PSDと、減速機構RDとを備えている。
【0015】
動力分配機構PSDは、内側のサンギア10と、外側のリングギア11と、これらの中間のピニオンギア12と、ピニオンギア12を支持するプラネタリーキャリア13とから構成される遊星歯車機構であり、サンギア10の軸、リングギア11の軸、キャリア13の軸が動力の入出力軸となり、これら3軸のうち、いずれか2軸へ入出力される動力が決定されると、これらに基づいて残りの1軸に入出力される動力が決定される。
【0016】
そして、エンジンENGの出力軸1(3)が動力分配機構PSDのキャリア13に接続され、モータジェネレータMG1の回転軸4が動力分配機構PSDのサンギア10に接続されている。また、モータジェネレータMG2の回転軸7が減速機構RDを介して動力分配機構PSDのリングギア11に接続されている。そして、このリングギア11から動力が取出される。
【0017】
減速機構RDは、内側のサンギア14と、外側のリングギア15と、これらの中間のピニオンギア16と、ピニオンギア16を支持するプラネタリーキャリア17とから構成される遊星歯車機構であり、キャリア17は固定されている。従って、サンギア14の回転を減速してリングギア15へ伝達するものである。
【0018】
そして、モータジェネレータMG2の回転軸7が減速機構RDのサンギア14に接続されている。その一方、減速機構RDのリングギア15と動力分配機構PSDのリングギア11は、同一のリングギアケース18の内周に形成されていて、一体に回転するようになっている。
【0019】
そして、動力分配機構PSD(及び減速機構RD)のリングギアケース18の外周に動力取出し用のカウンタードライブギア19が設けられ、このカウンタードライブギア19によりカウンタードリブンギア20を介して、中間軸21を駆動する。
【0020】
中間軸21にはファイナルドライブギア22が設けられ、このファイナルドライブギア22によりファイナルドリブンギア23を介して、駆動輪の車軸に設けられたデファレンシャル装置DEFを駆動する。
【0021】
次にモータジェネレータMG1、MG2への電力供給系について図3及び図4により説明する。図3は概略図、図4は回路図である。
【0022】
電力供給系は、ニッケル水素又はリチウムイオン等の二次電池からなるバッテリ30と、パワーコントロールユニット(以下「PCU」という)31とから構成される。PCU31は、バッテリ30から供給される直流電圧を昇圧する昇圧コンバータ32と、昇圧コンバータ32からの直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータMG1、MG2に供給するインバータ33、34とから構成される。
【0023】
尚、モータジェネレータMG1、MG2が発電機として動作するときは、モータジェネレータMG1、MG2からの交流電圧がインバータ33、34にて直流電圧に変換され、昇圧コンバータ32にて逆に降圧された後、バッテリ30に充電される。
【0024】
昇圧コンバータ32は、図4に示すように、コンデンサ35と、リアクトル36と、昇圧用IPM(Intelligent Power Module)37とを含んで構成される。また、昇圧用IPM37は、パワースイッチング素子として用いた絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)Q1、Q2と、ダイオードD1、D2とを含んで構成される。
【0025】
コンデンサ35は、バッテリ30の電源ラインと接地ラインとの間に接続され、バッテリ30から供給される直流電圧を平滑化し、その平滑化した直流電圧をリアクトル36へ供給(あるいは逆にリアクトル36からの直流電圧を平滑化し、その平滑化した直流電圧をバッテリ30に充電)する。
【0026】
リアクトル36は、その一端がコンデンサ35の電源ラインに接続され、他端がIGBT・Q1とIGBT・Q2との中間点(IGBT・Q1のエミッタとIGBT・Q2のコレクタとの間)に接続される。
【0027】
IGBT・Q1とIGBT・Q2は直列に接続されて、IGBT・Q1のコレクタが後段のインバータ33、34(コンデンサ38)の電源ラインに接続され、IGBT・Q2のエミッタが接地ラインに接続される。
【0028】
また、各IGBT・Q1、Q2のコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードD1、D2が接続される。
【0029】
ここで、接地側のIGBT・Q2がONとなるとバッテリ30(コンデンサ35)の電圧がリアクトル36に充電され、その結果、リアクトル36内の電圧が上昇する。リアクトル36内の電圧が上昇すると接地側のIGBT・Q2をOFFとし、このときIGBT・Q2に逆起電力が発生する。すると、発生した逆起電力に引き起こされ、リアクトル36に充電されている電力が電源側のダイオードD1を経てインバータ33、34側(コンデンサ38側)に流れる。これにより、接地側のIGBT・Q2がONされた期間に応じて、バッテリ30(コンデンサ35)から供給される直流電圧を昇圧し、インバータ33、34(コンデンサ38)へ供給する。
【0030】
インバータ33は、図4に示すように、コンデンサ38と、インバータ用IPM39とを含んで構成される。また、インバータ用IPM39は、パワースイッチング素子として用いた絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)Q3〜Q8と、ダイオードD3〜D8とを含んで構成される。
【0031】
コンデンサ38は、昇圧コンバータ32からの直流電圧を平滑化し、その平滑化した直流電流をインバータ用IPM39へ供給(あるいは逆にインバータ用IPM39からの直流電圧を平滑化し、その平滑化した直流電圧を昇圧コンバータ32へ供給)する。
【0032】
インバータ用IPM39は、コンデンサ38からの直流電圧をPWM制御(擬似的に正弦波を得るために一定周期でパルス幅を変調した電圧を発生させる制御)により交流電圧に変換してモータジェネレータMG1に供給(あるいは逆にモータジェネレータMG1からの交流電圧を直流電圧に変換してコンデンサ38に供給)するもので、コンデンサ38の電源ラインと接地ラインとの間に、並列に、U相アームと、V相アームと、W相アームとを備える。
【0033】
U相アームは、コンデンサ38の電源ラインと接地ラインとの間に直列に、2つのIGBT・Q3、Q4を備え、各IGBT・Q3、Q4にダイオードD3、D4がそれぞれ逆並列に接続される。
【0034】
V相アームも、コンデンサ38の電源ラインと接地ラインとの間に直列に、2つのIGBT・Q5、Q6を備え、各IGBT・Q5、Q6にダイオードD5、D6がそれぞれ逆並列に接続される。
【0035】
W相アームも、コンデンサ39の電源ラインと接地ラインとの間に直列に、2つのIGBT・Q7、Q8を備え、各IGBT・Q7、Q8にダイオードD7、D8がそれぞれ逆並列に接続される。
【0036】
U、V、W各相アームの中間点は、モータジェネレータMG1の各一端においてスター結線されたU、V、W各相コイルの他端に接続される。すなわち、IGBT・Q3、Q4の中間点がU相コイルに接続され、IGBT・Q5、Q6の中間点がV相コイルに接続され、IGBT・Q7、Q8の中間点がW相コイルに接続される。
【0037】
従って、U、V、W各相への正弦波電圧に合わせて、各相アームの電源側のIGBTのON期間と接地側のIGBTのON期間との比率を制御することにより、擬似的な交流電圧を得て、モータジェネレータMG1を駆動することができる。
【0038】
ここで、モータジェネレータMG1は、トルク指令値に応じたトルクを発生するように駆動される。また、車両の回生制動時は、モータジェネレータMG1が発電した交流電圧をPWM制御により直流電圧に変換し、その変換した直流電圧をコンデンサ38を介して昇圧コンバータ32へ供給して降圧させ、コンデンサ35を介してバッテリ30に充電する。
【0039】
インバータ34は、図4に示すように、インバータ33と共用のコンデンサ38と、インバータ用IPM40とを含んで構成される。また、インバータ用IPM40は、インバータ用IPM39と同様に、パワースイッチング素子として用いた6個の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)と、各IGBTに逆並列に接続されるダイオードとを含んで構成される。
【0040】
従って、MG2用インバータ34は、MG1用インバータ33と同様にして、モータジェネレータMG2を駆動することができる。
【0041】
次にPCU31のケースについて説明する。
【0042】
PCU31は、既に述べたように、昇圧コンバータ32と、インバータ33、34とを備え、より詳しくは、コンデンサ35、リアクトル36、昇圧用IPM37、コンデンサ38、インバータ用IPM39、40を備える。ここで、昇圧コンバータ32のコンデンサ35とインバータ33、34のコンデンサ38はユニットとして扱う。
【0043】
従って、PCU31のケース内には、リアクトル36、昇圧用IPM37、インバータ用IPM39、40、コンデンサユニット35、38、その他、が収納される。
【0044】
図5にPCUの収納ケース50の断面図を示す。ここでは、収納部品として、インバータ用IPM39、40とコンデンサユニット35、38のみを示している。
【0045】
PCUの収納ケース50は、上面開放の上ケース51と、上ケース51の開放部を覆う上蓋52と、下面開放の下ケース53と、下ケース53の開放部を覆う下蓋(図示せず)とから構成されている。また、上蓋52の一部は、着脱可能なサービスカバー54となっている。
【0046】
本例では、上ケース51内の底部にインバータ用IPM39、40を収納し、上蓋52側にコンデンサユニット35、38を収納している。
【0047】
また、インバータ用IPM39、40のブロック上面に取付座55を設け、この取付座55を介して、制御基板56を固定している。この制御基板56は、インバータ用IPM39、40中のパワースイッチング素子であるIGBT・Q3〜Q8のON・OFFを制御する制御回路を形成するものである。
【0048】
また、上ケース51内から外部へは高電圧配線(パワーケーブル)57が引出される。
【0049】
また、上ケース51の側壁に呼吸穴58を設け、ここにゴアテックス(商標名)などの防水透湿性部材59を装着している。
【0050】
また、下ケース53内には、エアコン用DC/DCコンバータ60と、エアコン用インバータ61とを収納している。
【0051】
また、上ケース51と下ケース53とは、上ケース51の下面フランジ部と下ケース53の上面フランジ部とで接合されるが、上ケース51の下面には多数の冷却フィン62が突出形成され、下ケース53の上面には前記冷却フィン62を受け入れる凹部63が形成されている。そして、この凹部63と冷却フィン62との間に冷却水を流通させるための冷却水通路64が形成されている。
【0052】
ところで、PCU(昇圧コンバータ及びインバータ)の収納ケース50内で、結露が発生した場合、具体的には、外部雰囲気(温度や湿度)の変化により、電気回路系の構成部品上で結露したり、サービスカバーなど、熱容量の小さいカバー類に結露した場合、走行中の振動などで、水滴が制御基板や高電圧配線に付着することにより、絶縁低下による動作不良の原因となる。
【0053】
尚、PCUの収納ケース50は基本的には密閉構造であるが、呼吸穴58により湿度の出入りがある。従って、外部雰囲気(温度、湿度)が変化した場合、ケース内部の構成部品の温度差により結露部位が発生する場合がある。
【0054】
そこで、本実施形態では、PCUの収納ケース50内で結露を生じた場合でも、制御回路部や高電圧部など重要保安部位への水滴の付着を防止できるようにする。
【0055】
このため、収納ケース50内に、電気エネルギーの供給を受けて両面に温度差を発生させて一方の面を低温にすることができる熱電素子71と、この熱電素子71の前記一方の面にこれを覆うように取付けられる吸水部材73とを設ける。
【0056】
具体的には、図5に示すように、ケース50(上ケース51)の内壁部に、熱電素子71と吸水部材73とを配置する。また、この部位の詳細構造を図6に示している。
【0057】
熱電素子71は、電気エネルギーを与えることにより(通電により)、その両面に温度差を発生させることができ(ペルチェ効果)、また、通電方向により、低温側の面と高温側の面を入れ替えることができる。
【0058】
そして、この熱電素子71の一方の面に、高熱伝導率の板状部材として、熱伝導率が大きい金属プレート72を接合し、この金属プレート72に吸水部材(吸水シート)73を貼り付けている。尚、金属プレート72は熱電素子71より大きくしている。吸水部材73としては、ポリスチレン発泡体等からなる吸水シートを用いることができる。
【0059】
また、熱電素子71の他方の面に、低熱伝導率の板状部材として、ケース50(アルミ製)より熱伝導率が小さい樹脂プレート74を接合し、この樹脂プレート74をケース50(上ケース51)の内壁に貼り付けている。
【0060】
そして、ケース50の内部もしくは外部に熱電素子71への通電を制御する通電制御回路75を設けている。
【0061】
通電制御回路75は、熱電素子71に通電することにより熱電素子71の一方の面を低温側にし、他方の面を高温側にすることができ、また、通電方向を切換えることにより、前記一方の面を高温側にし、前記他方の面を低温側にすること(すなわち低温側と高温側とを入れ替えること)ができる。
【0062】
図7は、通電制御回路75による熱電素子71への通電制御のフローチャートである。
【0063】
S1では、結露しやすい条件である低温始動時(運転開始時)か否かを判定し、YESの場合に、S2へ進む。
【0064】
S2では、熱電素子71への通電を開始し、熱電素子71の吸水部材73側の面を低温側とする低温モードになるように、熱電素子71への通電を制御する。
【0065】
次に、S3では、結露しにくい条件である暖機後か否かを判定し、YESの場合に、S4へ進む。
【0066】
S4では、熱電素子71の吸水部材73側の面を高温側とする高温モードになるように、熱電素子71への通電を制御する。言い換えれば、通電方向をS2での通電方向と反対方向にする。
【0067】
次に、S5では、高温モードで所定時間経過したか否かを判定し、YESの場合に、S6へ進み、熱電素子71への通電を終了する(OFF)。
【0068】
次に作用を説明する。
【0069】
図8に示すように、ケース内に結露が発生しやすい条件である低温始動時に、熱電素子71に通電して、吸水部材73側の面を低温側にする。これにより、局部的な低温部を作り出して、金属プレート72上で積極的に結露させ、結露した水分を金属プレート72を覆うように装着されている吸水部材73に吸着保持する。これにより、制御基板56や高電圧配線57への水分の付着を防止できる。
【0070】
その一方、始動後にPCU(インバータ)各部の温度が上昇して、結露の発生しにくい条件になると(PCU各部が露点温度を超えたタイミングで)、一定期間、熱電素子71に逆方向に通電して、吸水部材73側の面を高温側にする。これにより、吸水部材73から水分を蒸散させることにより、吸水部材73の機能を回復させる。尚、このときは、ケース内の湿度が上昇するが、ケース内の温度上昇による内圧の上昇で、一部が呼吸穴58から排出されるので、湿度の上昇は抑制される。
【0071】
また、図7のフローチャート及び図8のタイムチャートでは省略したが、運転停止時に、熱電素子71に通電して、吸水部材73側の面を低温側にし、これにより、局部的な低温部を作り出して、積極的に結露させ、結露した水分を吸水部材73に吸着保持しておくようにしてもよい。
【0072】
以上のように、熱電素子71と吸水部材73とを用いて、予めPCU(インバータ及び昇圧コンバータ)の収納ケース50内の水分を捕捉することで、運転開始直後や運転停止直後の外部雰囲気との温度差で生じる結露の発生を防止することができる。結露を防止することで制御基板や高電圧系の水分付着による動作不良を防止できる。従って、PCU(インバータ及び昇圧コンバータ)の信頼性を大幅に向上させることができる。
【0073】
また、吸水部材73に捕捉された水分はPCU(インバータ)各部温度が上昇した段階で能動的に蒸散できるため、走行時の振動などにより水分が重要保安部位に飛散することを防止できる。
【0074】
本実施形態によれば、電気機器の収納ケース50(51)内に、電気エネルギーの供給を受けて両面に温度差を発生させて一方の面を低温にすることができる熱電素子71と、この熱電素子71の前記一方の面にて結露した水分を吸収する吸水部材73と、を設けることにより、収納ケース50(51)内の空気中の水分を熱電素子71の前記一方の面(低温側の面)で積極的に結露させ、結露させた水分を吸水部材73に吸収して保持し、重要保安部位への付着を確実に防止することができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、吸水部材73は、熱電素子71の前記一方の面にこれを覆うように取付けられることにより、結露させた水分を逃がすことなく確実に吸収して保持することができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、吸水部材73は、熱電素子71の一方の面に、高熱伝導率の部材(金属プレート73)を介して、接する構成とすることにより、この部材にて結露させることができるので、熱電素子71の保護、結露面(吸水面)の拡大、吸水部材73の貼り付けの容易化等の効果が得られる。
【0077】
また、本実施形態によれば、低温始動時等の結露が発生しやすい条件にて、熱電素子71の前記一方の面(吸水部材73側の面)を低温側にするように熱電素子71に通電する通電制御回路75を備えることにより、必要なときに限って熱電素子71を作動させて、結露を防止することができる。
【0078】
また、本実施形態によれば、通電制御回路75は、通電方向により、熱電素子71の前記一方の面(吸水部材73側の面)を低温側にするか高温側にするかを切換え可能であり、低温始動時等の結露が発生しやすい条件にて熱電素子71の前記一方の面(吸水部材73側の面)を低温側にし、暖機後等の結露が発生しにくい条件にて熱電素子71の前記一方の面(吸水部材73側の面)を高温側にするように制御することにより、結露の発生しやすい条件にて吸水部材73に吸収した水分を、結露の発生しにくい条件にて蒸散させて、吸水部材73の機能を回復し、結露の発生しやすい条件に備えることができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、熱電素子71は、前記ケース50(51)の内壁に、前記一方の面(吸水部材73側の面)をケース内に向けて配置されることにより、重要保安部位である制御基板56や高電圧配線57から離れた位置でケース内の水分の回収を行うことができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、熱電素子71の他方の面(吸水部材73側と反対側の面)は、低熱伝導率の部材(樹脂プレート74)を介して、前記ケース50(51)の内壁に接する構成とすることにより、前記ケース50(51)の温度に影響されることなく、熱電素子71を作動させることができ、また、熱電素子71の他方の面が低温側に制御された場合でも、その面が露出しないようにしているので、他方の面への結露を防止できる。
【0081】
また、本実施形態によれば、収納ケース50は、防水透湿性(59)を有する呼吸穴(58)を備えているので、ケース内外の温度差によるケースの膨張・収縮を生じることがなく、温度変化に対し強固な構造をとる必要がなくなる。この反面、湿度変化による結露が問題となるが、これを本結露防止装置により解消できる。
【0082】
次に本発明の他の実施形態を図9及び図10により説明する。
【0083】
図9はPCUの収納ケース50の断面図である。
【0084】
本実施形態では、制御基板56上に、熱電素子71と吸水部材73とを配置する。また、この部位の詳細構造を図10に示している。
【0085】
熱電素子71の一方の面(上面)に熱伝導率が大きい金属プレート72を接合し、この金属プレート72に吸水部材(吸水シート)73を貼り付けている。
【0086】
そして、熱電素子71の他方の面(下面)を制御基板56の上に直接貼り付けている。
【0087】
ここで、制御基板56は、インバータ用IPM39、40中のパワースイッチング素子(IGBT)のON・OFFを制御する制御回路を形成するものであり、熱電素子71は、制御基板56上で、制御回路形成部位から離れた位置(制御回路非形成部位)に配置して実装する。
【0088】
従って、熱電素子71への通電を制御する通電制御回路75は、制御基板56内に形成される。通電制御回路75による通電制御は前述の実施形態での制御(図7、図8)と同じでよい。
【0089】
従って、ケース内に結露が発生しやすい条件である低温始動時に、熱電素子71に通電して、吸水部材73側の面を低温側にする。これにより、局部的な低温部を作り出して、積極的に結露させ、結露した水分を吸水部材73に吸着保持する。これにより、制御基板56の制御回路形成部位や高電圧配線57への水分の付着を防止できる。
【0090】
その一方、始動後にPCU(インバータ)各部の温度が上昇して、結露の発生しにくい条件になると(PCU各部が露点温度を超えたタイミングで)、一定期間、熱電素子71に逆方向に通電して、吸水部材73側の面を高温側にする。これにより、吸水部材73から水分を蒸散させることにより、吸水部材73の機能を回復させる。
【0091】
但し、制御基板56上に熱電素子71及び吸水部材73を設ける場合は、制御基板56自体がインバータ用IPM39、40から熱を受けて高温になるので、高温モードでの通電を省略し、自然に蒸散させて、吸水部材73の機能を回復させるようにしてもよい。
【0092】
水分の蒸散時にはケース内の湿度が上昇するが、ケース内の温度上昇による内圧の上昇で、一部が呼吸穴58から排出されるので、湿度の上昇は抑制される。
【0093】
また、運転停止時に、熱電素子71に通電して、吸水部材73側の面を低温側にし、これにより、局部的な低温部を作り出して、積極的に結露させ、結露した水分を吸水部材73に吸着保持しておくようにしてもよい。
【0094】
特に本実施形態によれば、ケース内に収納される電気機器が、少なくとも、パワースイッチング素子(39、40)と、このパワースイッチング素子のON・OFFを制御する制御回路を形成する制御基板56とを含むことを前提に、熱電素子71を制御基板56上に、前記一方の面(吸水部材73側の面)をケース内に向けて配置する構成としたため、制御回路56の制御回路形成部位の近くではあるが、その付近の水分を確実に回収できるので、制御回路への結露を確実に防止することができる。すなわち、制御基板56付近の水分を積極的に取込むことができ、制御基板56の回路部への結露を防止できる。また、当然に、高電圧部からは十分離れているため、高電圧部など重要保安部位への結露を確実に防止することができる。
【0095】
また、特に本実施形態によれば、熱電素子71を、制御基板56上で、制御回路形成部位から離れた位置(制御回路非形成部位)に、他方の面(吸水部材73側と反対側の面)が制御基板56に接する状態で、実装する構成としたため、熱電素子71への取り回し配線が不要となり、レイアウトも容易となる。
【0096】
また、特に本実施形態によれば、制御基板56は、運転中にインバータ用IPM39、40から熱を受けるため、吸水部材73に捕捉された水分はCPU(インバータ)内部温度の上昇により自然に蒸散されるので、必ずしも高温モードにしなくても、保持中の水滴の飛散を防止することができる。したがって、通電制御を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態に係るハイブリッド自動車の車両駆動装置の断面図
【図2】同上の車両駆動装置の模式図
【図3】モータジェネレータへの電力供給系の概略図
【図4】同上の電力供給系の回路図
【図5】PCUケースの断面図
【図6】図5中の結露防止装置の構成図
【図7】通電制御回路による通電制御のフローチャート
【図8】熱電素子の動作のタイムチャート
【図9】他の実施形態を示すPCUケースの断面図
【図10】図9中の結露防止装置の構成図
【符号の説明】
【0098】
ENG エンジン
MG1 モータジェネレータ
MG2 モータジェネレータ
PSD 動力分配機構
RD 減速機構
DEF ディファレンシャル装置
1、3 エンジン出力軸
2 トーションダンパ
4 回転軸
5 ロータ
6 ステータ
7 回転軸
8 ロータ
9 ステータ
10 サンギア
11 リングギア
12 ピニオンギア
13 プラネタリーキャリア
14 サンギア
15 リングギア
16 ピニオンギア
17 プラネタリーキャリア
18 リングギアケース
19 カウンタードライブギア
20 カウンタードリブンギア
21 中間軸
22 ファイナルドライブギア
23 ファイナルドリブンギア
30 バッテリ
31 パワーコントロールユニット(PCU)
32 昇圧コンバータ
33 MG1用インバータ
34 MG2用インバータ
35 コンデンサ
36 リアクトル
37 昇圧用IPM(Intelligent Power Module)
38 コンデンサ
39、40 インバータ用IPM(Intelligent Power Module)
50 PCUの収納ケース
51 上ケース
52 上蓋
53 下ケース
54 サービスカバー
55 取付座
56 制御基板
57 高電圧配線
58 呼吸穴
59 防水透湿性部材
60 エアコン用DC/DCコンバータ
61 エアコン用インバータ
62 冷却フィン
63 凹部
64 冷却水通路
71 熱電素子
72 金属プレート
73 吸水部材(吸水シート)
74 樹脂プレート
75 通電制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器の収納ケース内に、電気エネルギーの供給を受けて両面に温度差を発生させて一方の面を低温にすることができる熱電素子と、この熱電素子の前記一方の面にて結露した水分を吸収する吸水部材と、を備えることを特徴とする電気機器収納ケースの結露防止装置。
【請求項2】
前記吸水部材は、前記熱電素子の前記一方の面にこれを覆うように取付けられる請求項1記載の電気機器収納ケースの結露防止装置。
【請求項3】
前記吸水部材は、前記熱電素子の前記一方の面に、高熱伝導率の部材を介して、接している請求項2記載の電気機器収納ケースの結露防止装置。
【請求項4】
結露が発生しやすい条件にて前記熱電素子の前記一方の面を低温側にするように前記熱電素子に通電する通電制御回路を備える請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の電気機器収納ケースの結露防止装置。
【請求項5】
前記通電制御回路は、通電方向により、前記熱電素子の前記一方の面を低温側にするか高温側にするかを切換え可能であり、結露が発生しやすい条件にて前記熱電素子の前記一方の面を低温側にし、結露が発生しにくい条件にて前記熱電素子の前記一方の面を高温側にするように制御する請求項4記載の電気機器収納ケースの結露防止装置。
【請求項6】
前記熱電素子は、前記ケースの内壁に、前記一方の面をケース内に向けて配置される請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の電気機器収納ケースの結露防止装置。
【請求項7】
前記熱電素子の他方の面は、低熱伝導率の部材を介して、前記ケースの内壁に接している請求項6記載の電気機器収納ケースの結露防止装置。
【請求項8】
前記ケース内に収納される電気機器は、少なくとも、パワースイッチング素子と、このパワースイッチング素子のON・OFFを制御する制御回路を形成する制御基板とを含み、前記熱電素子は、前記制御基板上に、前記一方の面をケース内に向けて配置される請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の電気機器収納ケースの結露防止装置。
【請求項9】
前記熱電素子は、前記制御基板上で、制御回路形成部位から離れた位置に、他方の面がが、前記制御基板に接する状態で、実装される請求項8記載の電気機器収納ケースの結露防止装置。
【請求項10】
前記収納ケースは、防水透湿性を有する呼吸穴を備える請求項1〜請求項9のいずれか1つに記載の電機機器収納ケースの結露防止装置。
【請求項11】
前記電気機器は、バッテリとモータジェネレータとの間に設けられて、バッテリからの直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータに供給するパワーコントロールユニットである請求項1〜請求項10のいずれか1つに記載の電気機器収納ケースの結露防止装置。
【請求項12】
前記パワーコントロールユニットは、バッテリからの直流電圧を昇圧する昇圧コンバータと、該昇圧コンバータからの直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータに供給するインバータとを含んでいる請求項11記載の電気機器収納ケースの結露防止装置。
【請求項13】
電機機器の収納ケース内で熱電素子に電気エネルギーを供給して熱電素子の両面に温度差を発生させることにより、低温側の面に収納ケース内の空気中の水分を結露させ、この低温側の面に近接させて配置した吸水部材により、結露した水分を吸収することを特徴とする電気機器収納ケースの結露防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−267131(P2009−267131A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115729(P2008−115729)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】