説明

電気機器監視システム及び電気機器監視方法

【課題】 可視光を透過して電気機器を観察することが可能であると共に、赤外光を透過して電気機器の温度を監視可能な電気機器監視システムを提供する。
【解決手段】 電気機器監視システム1は、電気部品51,52,53をカバーするアクリルからなるカバー部材2と、カバー部材2を通して電気部品51,52,53から放射される赤外線を撮影する赤外線サーモグラフィカメラ3と、を備え、前記赤外線サーモグラフィカメラの測定波長は、以下の式(1)を満足することを特徴とする電気機器監視システム。
13.5μm ≦ λ ≦ 18μm (1)
ただし、λは、前記赤外線サーモグラフィカメラの測定波長である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器から発生する赤外光を測定する電気機器監視システム及び電気機器監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器の端子箱として、特許文献1に記載されたような技術がある。
【0003】
特許文献1に記載された技術は、回転電機の端子箱の蓋を鋳物により一体成形し、曲面上に膨らませて、十分な機械的強度を得るようにしたものである。
【0004】
特許文献1に記載されたような電気機器は、蓋を設けることで、人が接触して感電すること又は工具類等が接触して破損することを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−149085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気機器は、施工不良によるボルトの弛み、不適切な仕様の端子の使用、部品の経年劣化等により、通電部位が過熱して、破損したり、火災が発生する等の不具合が生じるおそれがある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたような電気機器では、端子箱に鋳物の蓋を設けているため、端子箱内部の状態を観察することができず、通電部位の過熱、破損、及び火災等の不具合を短時間で見つけることができなかった。
【0008】
本発明は、従来技術のこのような状況に鑑みてなされたものであり、可視光を透過して電気機器を観察することが可能であると共に、赤外光を透過して電気機器の温度を監視可能な電気機器監視システム及び電気機器監視方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
電気機器監視システムは、電気部品をカバーするアクリルからなるカバー部材と、前記カバー部材を通して前記電気部品から放射される赤外線を撮影する赤外線サーモグラフィカメラと、を備え、前記赤外線サーモグラフィカメラの測定波長は、以下の式(1)を満足することを特徴とする。
13.5μm ≦ λ ≦ 18μm (1)
ただし、λは、前記赤外線サーモグラフィカメラの測定波長である。
【0010】
さらに、電気機器監視方法は、電気部品をカバーするアクリルからなるカバー部材を通して、前記電気部品から放射される赤外線を、以下の式(1)を満足する測定波長を有する赤外線サーモグラフィカメラで測定することを特徴とする。
13.5μm ≦ λ ≦ 18μm (1)
ただし、λは、前記赤外線サーモグラフィカメラの測定波長である。
【発明の効果】
【0011】
以上の本発明においては、可視光を透過して電気機器を観察することが可能であると共に、赤外光を透過して電気機器の温度を監視可能な電気機器監視システム及び電気機器監視方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態の電気機器カバー部材を用いた監視システムを示す図である。
【図2】実施形態の電気機器カバー部材を用いた監視システムの概念図である。
【図3】実施形態のカバー部材の波長と透過率を示す図である。
【図4】赤外線サーモグラフィカメラのカメラ本体内部にフィルタを装着した状態を示す図である。
【図5】赤外線サーモグラフィカメラのカメラ本体外部にフィルタを装着した状態を示す図である。
【図6】赤外線サーモグラフィカメラの外部にフィルタを装着した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態の電気機器監視システムについて説明する。
【0014】
図1は、実施形態の電気機器監視システムを示す図である。
【0015】
図1に示すように、電気機器40は、カバー部材2と、端子箱50と、第1ケーブル群51と、第2ケーブル群52と、端子箱50内で第1ケーブル群51と第2ケーブル群52を接続する圧縮端子53と、圧縮端子53を接続するボルト54と、ボルト54に締め付けられる図示しないナットと、を有する。
【0016】
第1ケーブル群51は、第1ケーブル導管51aと、第1ケーブル導管51a内に収められた複数のケーブル511,512,513等からなる。第2ケーブル群52は、第2ケーブル導管52aと、第2ケーブル導管52a内に収められた複数のケーブル521,522,523等からなる。なお、本実施形態では、ケーブルは3本であるが、これに限らず、何本でもよい。
【0017】
各ケーブル511,512,513,521,522,523の端部は、被覆が剥がされて、各導体511a,512a,513a,521a,522a,523aが剥き出ている。各導体511a,512a,513a,521a,522a,523aは、各圧縮端子53に接続される。このような構成により、端子箱50内で第1ケーブル群51と第2ケーブル群52は、接続されている。
【0018】
また、端子箱50は、電気部品を構成する第1ケーブル群51、第2ケーブル群52、及び圧縮端子53等をカバーするカバー部材2を有する。カバー部材2は、ねじ2a等によって端子箱50に取り付けられる。カバー部材2によって、端子箱50内の第1ケーブル群51と第2ケーブル群52を接続する電気部品に、人が接触して感電すること又は工具類等が接触して破損することを防止する。
【0019】
第1ケーブル群51と第2ケーブル群52を接続する電気部品は、施工不良によるボルト54の弛み、不適切な仕様の圧縮端子53の使用、第1ケーブル群51、第2ケーブル群52、及び圧縮端子53の経年劣化等により、通電部位が過熱して、破損したり、火災が発生する等の不具合が生じるおそれがある。
【0020】
そこで、電気機器40が過熱してしまい温度が上がった場合に放射される赤外線を利用して、監視システム1により、異常を診断する。
【0021】
監視システム1は、カバー部材2を通して電気機器40から放射される赤外線を赤外線サーモグラフィカメラ3によって撮影し、撮影画像の解析を行うことにより、撮影部位の温度を計測して、異常の有無を診断する。
【0022】
図2は、実施形態のカバー部材を用いた電気機器監視システムの概念図である。
【0023】
監視システム1は、カバー部材2を通して熱源Hから放射される赤外線を赤外線サーモグラフィカメラ3によって撮影し、撮影画像の解析を行うことにより、撮影部位の温度を計測して、異常の有無を診断する。
【0024】
本実施形態のカバー部材2としては、アクリル材を使用する。アクリル材は、厚さ1mm程度の板状であり、可視光を透過して設備内を観察することが可能であると共に、赤外光を透過して設備内の温度を監視可能である。
【0025】
さらに、監視システム1の赤外線サーモグラフィカメラ3の測定波長λが、以下の式(1)を満足するように設定する。
13.5μm ≦ λ ≦ 18μm (1)
【0026】
式(1)を満足するため、赤外線サーモグラフィカメラ3は、マイクロボロメータ素子を使用したカメラにフィルタを用いて、式(1)を満足する測定波長に変更する。
【0027】
図3は、実施形態のカバー部材2の波長と透過率を示す図である。
【0028】
図3に示すように、実施形態のカバー部材2は、式(1)の波長の範囲では、高い透過率を持つことがわかる。式(1)の上限を上回ったり、下限を下回った場合、透過率が低くなる。
【0029】
したがって、実施形態のカバー部材2を使用した監視システム1は、可視光を透過して設備内を観察することが可能であると共に、赤外光を透過して設備内の温度を監視可能である。
【0030】
次に、赤外線サーモグラフィカメラ3について説明する。
【0031】
図4は赤外線サーモグラフィカメラのカメラ本体内部にフィルタを装着した状態を示す図、図5は赤外線サーモグラフィカメラのカメラ本体外部にフィルタを装着した状態を示す図、図6は赤外線サーモグラフィカメラの外部にフィルタを装着した状態を示す図である。
【0032】
一般に赤外線サーモグラフィカメラの測定波長は、8μm〜13μmである。しかしながら、図3に示すように、アクリルは、8μm〜13μmの波長の赤外線を透過しない。したがって、一般の赤外線サーモグラフィカメラは、フィルタ等を使用して測定波長を変更させる。
【0033】
赤外線サーモグラフィカメラ3にフィルタを装着するには、図4に示すように赤外線サーモグラフィカメラ3のカメラ本体31内部にフィルタ4を装着する例、図5に示すように赤外線サーモグラフィカメラ3のカメラ本体31外部にフィルタ4を装着する例、又は図6に示すように赤外線サーモグラフィカメラ3の外部にフィルタ4を装着する例等がある。
【0034】
図4に示すように、赤外線サーモグラフィカメラ3の内部にフィルタ4を装着する例では、赤外線が検出部31aに入射する前のカメラ本体31内にフィルタ4を配置するとよい。
【0035】
また、図5に示すように、赤外線サーモグラフィカメラ3の内部にフィルタ4を装着する例では、赤外線がレンズ32を射出し、カメラ本体31に入射する前にフィルタ4を配置するとよい。
【0036】
さらに、図6に示すように、赤外線サーモグラフィカメラ3の外部にフィルタ4を装着する例では、赤外線がレンズ32に入射する前にフィルタ4を配置するとよい。
【0037】
なお、複数のフィルタ4を組み合わせて検出部31aに入射する前に測定波長を変更してもよい。
【0038】
また、実施形態では、電気機器40として端子箱50について説明したが、制御盤等の各種電気機器40に適用することが可能である。
【0039】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0040】
1…監視システム
2…カバー部材
3…赤外線サーモグラフィカメラ
31…カメラ本体
31a…検出部
32…レンズ
4…フィルタ
40…電気機器
50…端子箱
51…第1ケーブル群(電気部品)
52…第2ケーブル群(電気部品)
53…圧縮端子(電気部品)
54…ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品をカバーするアクリルからなるカバー部材と、
前記カバー部材を通して前記電気部品から放射される赤外線を撮影する赤外線サーモグラフィカメラと、
を備え、
前記赤外線サーモグラフィカメラの測定波長は、以下の式(1)を満足することを特徴とする電気機器監視システム。
13.5μm ≦ λ ≦ 18μm (1)
ただし、λは、前記赤外線サーモグラフィカメラの測定波長である。
【請求項2】
電気部品をカバーするアクリルからなるカバー部材を通して、前記電気部品から放射される赤外線を、以下の式(1)を満足する測定波長を有する赤外線サーモグラフィカメラで測定することを特徴とする電気機器監視方法。
13.5μm ≦ λ ≦ 18μm (1)
ただし、λは、前記赤外線サーモグラフィカメラの測定波長である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−19821(P2013−19821A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154468(P2011−154468)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】