説明

電気治療器

【課題】使用感や装着感がよく、長期に渡って簡便に使用でき、さらにシンプルでフレキシブルな構成でも、刺激に対する順応や分極の影響を受けにくい電気治療器を提供する。
【解決手段】電気治療器100を、皮膚に物理的エネルギー刺激を加える柔軟な刺激付与部20と、前記刺激付与部に電気的に接続される可撓性の光電池30とを備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気治療器に関する。さらに詳しくは、皮膚上に適用され、光電池より得られた電気エネルギーを電気刺激等の物理エネルギー刺激として経皮的に加えることにより、疾患の予防や治療、生理的な機能の維持や改善を行う電気治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
医療、美容、スポーツ等の分野において、電気刺激等の物理エネルギー刺激を経皮的に加えることにより、皮膚、筋肉、腱、靭帯、骨、関節、神経等に関わる疾患の予防や治療、又はこれら部分の生理的な機能の維持や改善を行うことが行われている。
【0003】
従来、これらの電気的治療に用いられる機器は、一般的に大掛りで取扱いが煩雑なものが多く、使用環境が限定されたり、専門の知識や技術を必要としたりする問題があった。
【0004】
電気的治療の一例として、神経的機能の改善等を目的として、筋力訓練等のリハビリテーションと電気刺激を併用することが行われている。また、骨折や創傷等があり、リハビリテーションや他の処置が行えない場合に、電気刺激による拘縮予防や治癒促進は非常に有用と考えられる。このような治療方法は、継続的・長期的な利用によって一定の効果が得られやすいが、特別な施設や専門化のもと治療を受ける必要があり、活用場面が非常に制限されていた。したがって、このような電気的治療が、日常生活動作や既存の筋力訓練・治療の中に、簡単に取り入れられるものであれば、継続的・長期的に利用することができ、治療の選択肢が広がり、効果的に治療を進めることができる。
【0005】
この点、小型でシンプルな電気治療器が開発されつつあり、携帯性や取扱い性等は改善している(例えば、特許文献1〜3)。しかしながら、電源等に硬質な部品を採用しているため、機器装着時に皮膚伸展が制限される等して使用感や装着感が悪かったり、電極部が皮膚に密着せず適切な電気刺激が導通されなかったりする問題があった。また、医療従事者等においては、機器や電源確保の管理項目や操作項目が増えるため、その治療の有効性が大いに期待できるにもかかわらず、なかなか実用的な普及には至らない問題があった。
【0006】
これらの問題を解決するものとして、弱電流を利用して経皮的に薬物を導入するイオントフォレシス治療器において、電源にフレキシブルなペーパー電池を用いたイオントフォレシスフィルムが提案されている(特許文献4)。
【0007】
この種の治療器は、比較的短時間での薬物導入を目的に使い捨て用途にするものとしては非常に簡便で、上記の問題を解決するものであるが、長期間の治療を目的とする場合や、何度か繰り返して使う目的がある場合には不向きである。電池が消耗する都度、治療器を剥がして交換したり、電池を交換したりする手間は煩雑であり、結果としてランニングコストも増加するという問題がある。
【0008】
ところで、人体に加える電気刺激を加える際、定常的な電気刺激だと、刺激に対する順応や閾値上昇により、刺激を感じ難くなることがあり、治療効果が持続しないことが考えられる。また、一定の電圧等を皮膚に印加したとしても、皮膚のコンデンサー類似作用により、皮膚に溜まった電荷の影響で流れる電流が次第に減衰し、電気刺激の治療効果が低下する問題がある。そのため、このような生体特性も考慮した、継続的・長期的に利用可能な電気治療の開発が望まれる。
【0009】
この点、パルス変圧器、インバーター、交流電源等を用いる等して、電流の流れを適当に変え、このような順応や皮膚での分極を抑える方法も考えられるが、機器の構成が複雑になり、使用感や装着感、使い勝手が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表平8-505303号公報
【特許文献2】特表2008-500850号公報
【特許文献3】特表2009-504267号公報
【特許文献4】特許第3267291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上のような現状を鑑みてなされたものであり、使用感や装着感がよく、長期に渡って簡便に使用できる電気治療器を提供することを課題とする。
【0012】
また、本発明は、シンプルでフレキシブルな構成でも、刺激に対する順応や分極の影響を受けにくい電気治療器を提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決する本発明の電気治療器は、皮膚に物理的エネルギー刺激を加える柔軟な刺激付与部と、前記刺激付与部に電気的に接続される可撓性の光電池とを備えることを特徴とする。
この電気治療器は、前記刺激付与部及び光電池を直接若しくは間接的に積層し、又は前記刺激付与部及び光電池を同一平面上に配置し、扁平な一体構造物となるようにすることが好ましい。また、不定的及び/又は断続的な物理的エネルギー刺激を皮膚に加えることが好ましい。さらに、皮膚に加える物理的エネルギー刺激が電気刺激であることが好ましい。また、光電池が伸縮性や通気性を有することが好ましい。さらに、光電池が色素増感型であることが好ましい。
また、この電気治療器は、前記刺激付与部及び/又は光電池が、使用者の所定の皮膚、筋肉、腱、靭帯、骨、又は関節から選択される1以上の部位に対応するよう区画されることが好ましい。さらに、使用時に、前記刺激付与部及び/又は光電池の長手方向が筋繊維の走行とほぼ平行になるように、前記刺激付与部及び/又は光電池を所定の位置に配置することが好ましい。また、前記刺激付与部及び光電池を、皮膚の所定位置に保持させる柔軟な通気性又は透湿性の固定手段をさらに備えることが好ましい。さらに、スリーブ状被服、帯状被服、上半身用被服、又は下半身用被服から選択される形状を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、可撓性の光電池を用いることにより、使用感や装着感がよく、長期に渡って簡便に使用できる電気治療器が提供される。
また、本発明の電気治療器は、人体に装着するという特性と光電池の電気エネルギー発生特性との関係を利用することで、シンプルでフレキシブルな構成でも、刺激の順応や分極による治療効果の低下を抑制することができる。
さらに、本発明によれば、使用者の使用環境に制限されず、他の治療や処置とも併用ができるので、治療の選択肢が広がり、長期に渡って簡便に有効な治療を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1(a)】本発明の第一実施形態に係る電気治療器の模式図。
【図1(b)】本発明の第二実施形態に係る電気治療器の模式図。
【図2】本発明の実施形態に係る電気治療器の模式図。(A)は本発明の第三実施形態、(B)は本発明の第四実施形態、(C)は本発明の第五実施形態を示す。
【図3】本発明の実施形態に係る電気治療器の模式図。(D)は本発明の第六実施形態、(E)は本発明の第七実施形態、(F)は本発明の第八実施形態を示す。
【図4】本発明の実施形態に係る電気治療器の模式図。(G)は本発明の第九実施形態、(H)は本発明の第十実施形態、(I)は本発明の第十一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して説明する。同一の部分には、同一の符号を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1(a)は、本発明の第一実施形態に係る電気治療器の模式図で、(A)は正面図、(B)は背面図、(C)は(A)のc-c矢印に沿った拡大断面図を示す。
本発明の電気治療器100は、皮膚に電気刺激を加える柔軟で導電性の1対の刺激付与部20と、刺激付与部20に導体50を介して電気的に接続される可撓性の光電池30と、刺激付与部20の短絡を防ぐために刺激付与部上に載置される絶縁シート60と、刺激付与部20と光電池30とを皮膚の所定位置に保持させるプラスチックフィルム基材41と粘着剤層42とからなる柔軟で透明な固定手段40とからなる。本発明の電気治療器100は、扁平な刺激付与部20と光電池30とを積層し、固定手段40で保持することで、扁平な一体構造物となるようにしてある。
【0018】
電気治療器100は、固定手段40の粘着剤層42によって、電気刺激を付与したい患部に粘着固定することで、1対の導電性の刺激付与部20が電極として働き、光電池30で起電された電流が一方の刺激付与部20から皮膚を経由して他方の刺激付与部20に流れる。このように本発明の電気治療器100は、全ての部材を柔軟でフレキシブルな材料でシンプルに構成することができるので、携帯性や取扱い性に優れ、使用感や装着感もよい。さらに、光電池を使う事で、継続的・長期的に簡便に利用することができ、治療の選択肢を広げ、効果的に治療を進めることができる。
【0019】
また、図1(b)は、本発明の第二実施形態に係る電気治療器の模式図で、(A)は正面図、(B)は(A)のb-b矢印に沿った断面図を示す。この第二実施形態の電気治療器100は、第一実施形態よりも光電池30の面積をより大きくとり、電気治療器100の厚さ方向に貫通する多数の孔70を設けたものである。このような態様にすることで、より多くの電気を効率的に発電できるようにするとともに、電気治療器100に通気性と柔軟性を付与し、装着感、使用感を向上させることが可能となる。なお、この第二実施形態の電気治療器100では、固定手段40に設ける粘着剤層42は、基材41の対向する両縁にのみ設けてある。
【0020】
また、本発明の電気治療器100は、皮膚に加える電気刺激等の物理エネルギー刺激の電源として可撓性の光電池を用いることで、良好な携帯性、取扱い性、使用感、装着感等を維持したまま、不定的及び/又は断続的な電気刺激等を、継続的・長期的に皮膚に加えることが可能となる。これは、本発明の電気治療器が、その携帯性や装着性等によって、皮膚に装着したまま自由に移動したり、動いたまま使用したりすることができるので、光電池への光の入射角度や光量が変化して、発電する電力が不規則になったり、断続的になったりすることによる。具体的には、発電する経時の電流値、電圧値等がジグザグ状や波状等の一定でない挙動をしめしたり、発電状態と非発電状態とをランダムに繰り返したりする。また、蛍光灯等の交流電流を用いた室内灯のある環境下では、交流電流に基づく光量等の変化(ちらつき等)により、発電する電力が不規則になったり、断続的になったりする。このように、光電池を用いることで、発電する電力を一定の値に維持せず不定的にしたり、断続的にしたりすることができるので、パルス変圧器、インバーター等の機器を用いなくとも、シンプルでフレキシブルな構成で 一定値の(定常的な)電気刺激による順応や分極による治療効果の低下を抑制することが可能となる。
【0021】
以下、本発明の電気治療器の各構成部材について説明する。
【0022】
1.刺激付与部
(1)皮膚に加える刺激
刺激付与部は、皮膚に電気刺激等の物理エネルギー刺激を加えることができる柔軟で導電性の材料等を含むものであれば特に限定されず、従来公知の生体用電極、温熱療法機器等の構成を使用することができる。物理エネルギー刺激の種類としては、電気刺激、熱刺激、冷刺激、磁気刺激、光刺激等があるが、電気刺激、熱刺激が好ましく、順応や分極による治療効果の低下を効果的に抑制する観点から電気刺激が特に好ましい。皮膚に電気刺激を加える場合の刺激付与部の作成方法は、例えば、粘着性を有する導電性ゲル、導電性材料を印刷や塗工で所定パターン(回路)に形成した基板、導電性樹脂フィルム、導電性繊維からなる糸又は布、金属箔、非導電性のフィルム等の扁平材料を単独又は適宜組み合わせて柔軟なシート状の形態にする態様が利用できる。なお、本発明における、「皮膚に物理的エネルギー刺激を加える」なる用語は、皮膚表面のみならず、皮膚表面より下方(内部)にある表皮、真皮、及び皮下脂肪組織に物理的エネルギー刺激を加える場合や、皮膚に形成された創傷部に物理的エネルギー刺激を加える場合をも含む概念である。したがって、皮膚に針状物を刺し、真皮や皮下脂肪組織に電気刺激等を加える場合や、創傷面に刺激付与部を被覆し、電気刺激等を加える場合も、「皮膚に物理的エネルギー刺激を加える」場合に該当する。
【0023】
また、皮膚に熱刺激を加える場合は、例えば、この刺激付与部に発熱性の抵抗体やその他の熱電素子を設けることで、光電池からの電気エネルギーを熱に変換する態様を利用することができる。この態様により、いわゆる温熱療法として皮膚に熱刺激を加える治療に使用することが可能である。
皮膚に冷刺激を加える場合は、例えば、ペルティエ素子等の熱電素子をこの刺激付与部に設けることで、光電池からの電気エネルギーを冷刺激に変換する態様を利用することができる。
皮膚に磁気刺激を加える場合は、例えば、この刺激付与部に磁場を発生させるコイル等を設けることで、光電池からの電気エネルギーを磁気刺激に変換する態様を利用することができる。この態様により、磁場による電流誘導効果を用いたいわゆる磁気療法として、皮膚に磁気刺激を加える治療に使用することが可能である。
皮膚に光刺激を加える場合は、例えば、この刺激付与部に発光素子を設けることで、エレクトロルミネセンス効果により、光電池からの電気エネルギーを特定色(波長)の光に変換する態様を利用することができる。この態様により、皮膚に光刺激を加える治療に使用することも可能である。
【0024】
(2)刺激付与部の形状等
刺激付与部の形状としては、従来公知のものを用いることができ、多角形、円形、楕円形等、特に限定されないが、使用者の所定の皮膚、筋肉、腱、靭帯、骨、又は関節から選択される1以上の部位に対応するよう区画されていることが好ましい。具体的には、刺激付与部の形状が、治療や処置の対象となる所定の皮膚(創傷含む)、筋肉、腱、靭帯、骨、又は関節の形状に対応する形状に区画され、その区画された刺激付与部が本発明の電気治療器の所定部位に配置される。このように刺激付与部の形状を、刺激を加える患部の形状と対応させることで、電気治療器自体の構造をシンプルかつ小型にできると共に装着位置の目安として電気治療器を正しい位置に簡便に取り付けることができ、また、皮膚に加える物理エネルギー刺激のロスを減らす等して効率的に皮膚に電気刺激等を加えることが可能となる。
【0025】
刺激付与部の形状を治療や処置の対象となる所定の部位に対応するよう区画して電気治療器を利用する態様としては、例えば、次のような態様がある。例えば、皮膚疾患、創傷、骨折等の治療をする場合は、刺激付与部の形状をこれらの患部形状と同等又は若干多きいサイズにカット又は成型し、それを患部に被覆する。また、筋肉、腱、靭帯、又は関節の治療や生理的な機能の維持・改善を行う場合は、刺激付与部の形状を、スポーツや整形外科の分野で行われているテーピングテープが貼付される部位、形態に適用できるようにする。テーピングテープには、筋肉、関節等の対象部位を圧迫もしくは緊締して、これら部位の機能を保護、制限、補強、強化等する効果があるが、刺激付与部をこのような態様にすることで、シンプルな構成で、電気刺激とテーピングテープの相乗効果を得ることができる。
【0026】
また、刺激付与部の形状を長方形、楕円形、繊維状等の一定方向に長い形態にした場合に、本発明の電気治療器の使用時に、刺激付与部の長手方向が筋繊維の走行とほぼ平行になるように、刺激付与部を所定の位置に配置することが好ましい。また、電気治療器の使用時に、刺激付与部を筋腹に重ならない位置、例えば、筋腹の側部に配置することが好ましい。刺激付与部をこのような位置に配置することにより、筋肉の動きを阻害することを抑え、装着時の違和感を軽減できる。なお、上記に説明した刺激付与部の形状、位置等は、本発明の作用を損なわなければ、ここで説明した形状又は位置と完全に同一とされる必要はなく、多少の形状・位置変更したものも本発明の範囲に包含されるものとする。
【0027】
2.光電池
光電池としては、可撓性のあるものであれば特に限定されず、色素増感型、シリコン系、化合物半導体、有機半導体等が挙げられるが、色素増感型が特に好ましい。色素増感型光電池は、シリコン系等の他の光電池と比較して、広い入射光角度の範囲で高い変換効率が得られ、太陽光の散乱光や屋内の人工照明光又は拡散光に対しても利用効率が高い特徴がある。そのため、本発明のように使用者が皮膚の様々な部位に装着し、動いたり屋内で使用したりして、入射光角度が頻繁に変化したり、強い太陽光が得られない場合であっても、色素増感型光電池を用いることで効率的に光発電を行うことができる。
【0028】
(1)光電池の基本構成
光電池の基本構成は、光電池の種類に応じて、従来公知の構成を使用できる。光電池をフレキシブルにするために、フィルム状形態、繊維状形態、布状形態等にすることが好ましい。フィルム状形態としては、電極層や半導体層等を構成する薄層を積層、封止した構造等を利用できる。繊維状形態としては、内面に導電ポリマーを塗布したポリマーチューブ中に、半導体でコーティングした導電性材料からなる内部電極を挿入した構造等を利用できる。布状形態としては、前記の繊維状形態の光電池を、製織、編成、又は絡み合わせて、織布、編布、又は不織布にした構造等を利用できる。
【0029】
(2)光電池の伸縮・通気特性
また、本発明の光電池は、伸縮性を有することが好ましい。皮膚、筋肉、関節等の屈曲、伸展等の体の動きに対する順応性を高め、使用感を向上させるためである。光電池を伸縮性にするには、光電池の基板や対極等を伸縮性の材料で構成したり、光電池を上述の布状形態(特に編布)で構成したりすればよい。
また、本発明の光電池は、通気性を有することが好ましい。長期間使用した場合に、発汗等による不快感や皮膚障害をなくすためである。光電池を通気性にするには、フィルム状の光電池に貫通する多数の孔を形成したり、光電池を構成する複数のセルを互いに間隙をあけて接合したり、光電池を繊維状形態又は布状形態にしたりする方法等を利用できる。
【0030】
(3)光電池の形状等
光電池のモジュール構造としては、従来公知のセル形状、セル接続の方式(対向セルモジュール、Z型モジュール、W型モジュール、モノリス型モジュール等)を用いることができる。光電池の全体形状又は光電池を構成する個々のセル形状としては、多角形、円形、楕円形等、特に限定されないが、使用者の所定の皮膚、筋肉、腱、靭帯、骨、又は関節から選択される1以上の部位に対応するよう区画されていることが好ましい。具体的には、光電池の全体形状又はそれを構成する個々のセルの形状が、治療や処置の対象となる所定の皮膚(創傷含む)、筋肉、腱、靭帯、骨、又は関節の形状に対応する形状に区画され、その区画された光電池が本発明の電気治療器の所定部位に配置される。このように光電池の形状を、刺激を加える患部の形状と対応させることで、電気治療器自体の構造をシンプルかつ小型にできると共に装着位置の目安として電気治療器を正しい位置に簡便に取り付けることができ、また、皮膚に加える物理エネルギー刺激のロスを減らす等して効率的に皮膚に電気刺激等を加えることができる。
【0031】
光電池の形状を所定の部位に対応するよう区画する態様としては、前記の刺激付与部の態様と同様の態様を利用でき、例えば、皮膚疾患、創傷、骨折等の治療をする場合は、光電池の形状をこれらの患部形状と同等又は若干多きいサイズにカット又は成型し、それを患部に被覆する態様を利用できる。また、筋肉、腱、靭帯、又は関節の治療や生理的な機能の維持・改善を行う場合は、光電池の形状を、スポーツや整形外科の分野で行われているテーピングテープが貼付される部位、形態に適用できるようにする。光電池は、テープ、サポーター、包帯等の繊維材料や発泡体材料よりは腰のある部材にすることができるため、光電池を筋肉、関節等を圧迫もしくは緊締する目的で所定の部位・形態で適用することにより、シンプルな構成で、電気刺激とテーピングテープの相乗効果を得ることもできる。
【0032】
また、光電池の形状を長方形、楕円形、繊維状等の一定方向に長い形態にした場合に、本発明の電気治療器の使用時に、光電池の長手方向が筋繊維の走行とほぼ平行になるように、光電池を所定の位置に配置することが好ましい。また、電気治療器の使用時に、光電池を筋腹に重ならない位置、例えば、筋腹の側部に配置することが好ましい。光電池をこのような位置に配置することにより、筋肉の動きを阻害することを抑え、装着時の違和感を軽減できる。なお、上記に説明した光電池の形状、位置等は、本発明の作用を損なわなければ、ここで説明した形状又は位置と完全に同一とされる必要はなく、多少の形状・位置変更したものも本発明の範囲に包含されるものとする。
【0033】
また、本発明の電気治療器を使用感や装着感がよく、長期に渡って簡便に使用できるようにするために、本発明の電気治療器は、刺激付与部と光電池とが扁平な一体構造物となるようにすることが好ましい。刺激付与部と光電池とを扁平な一体構造にするには、刺激付与部及び光電池を直接若しくは間接的に重ね合わせ扁平な積層構造にしたり、刺激付与部及び光電池を同一平面上に配置したりすればよい。また、必要に応じて、下記に詳述する固定手段によって、刺激付与部と光電池を一体的に保持させてもよい。
【0034】
(4)色素増感型光電池
本発明の電気治療器に用いる光電池として特に好ましい色素増感型光電池についてさらに詳しく説明する。なお、上述した「光電池の基本構成、伸縮・通気特性、形状等」については、色素増感型光電池にも採用できるものである。色素増感型光電池の態様としては、特に限定されず、例えば、(i)基板、(ii)導電膜、(iii)半導体膜(光電極)、(iv)色素、(v)電荷輸送材(電解質、溶媒)、(vi)対極、(vii)封止材等から構成される従来公知の形態を利用することができる。
【0035】
(i)基板
色素増感型光電池の基板としては、ガラスやプラスチック等の導電膜を担持できる各種のものを利用できるが、人体への装着感が良好なフレキシブル材料を用いることが好ましく、とくに無着色で透明なプラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムの材料としては、耐熱性、耐薬品性、ガス遮断性等に優れるポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、柔軟性に優れるポリウレタン(PU)、ポリアミド、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・ビニル・アセテート(EVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)などが挙げられる。これらのプラスチック材料はそれぞれ単独で用いても良いし、複数を混合して用いてもよい。また、これの樹脂から形成される複数のプラスシックフィルムを、粘着、接着、熱融着などによって積層して用いても良い。
【0036】
(ii)導電膜
色素増感型光電池の導電膜としては、例えば、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)などの透明導電膜が挙げられる。また、人体において特に動的挙動を有する部位での装着、使用を想定する場合には引っかき強度が優れるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)や耐曲性が優れる銀微粒子を用いても良い。
【0037】
さらに、これらの材料以外に導電性を向上させる目的で、光透過率を著しく損ねない範囲の面積率で、金、銀、白金、アルミニウム、ニッケル、チタンなどからなる金属配線層を併用してもよい。金属配線層を用いる場合、格子状、縞状、櫛状、網目状などのパターンとして、基板になるべく均一に光が透過するように配設するとよい。なお、対極側の導電膜においては必ずしも入射光を取り込む必要性がないため、前記の導電膜以外に低抵抗値である金、銀、白金、アルミニウム、ニッケル、チタンなどの金属を透過性がないような膜厚領域にて使用することができる。また、これらの金属を使用する場合には色素が吸収しきれずに透過した入射光を再利用する目的で可視光反射率が高いものを使用することができる
【0038】
(iii)半導体膜(光電極)
色素増感型光電池の半導体膜としては、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化タングステン(WO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb25)などの酸化物半導体を1種または2種以上を複合させたものが挙げられる。これらの半導体膜の膜厚は0.5〜50μm程度が好ましい。酸化物半導体は色素との接触界面における表面積を増やすために主成分に平均粒径1〜1000nmの微粒子を用いても良いし、多孔質の薄膜にしても良い。TiO2よりなるチタニア粒子としては、アナターゼ結晶型のものおよびルチル結晶型のものが挙げられるが、アナターゼ結晶型が好ましい。
【0039】
半導体膜は、プラスチックの耐熱性の範囲内である低温条件下、例えば200℃以下、好ましくは150℃以下で、プラスチック基板上に半導体粒子層を形成する低温製膜技術をもって作製することができる。このような低温製膜は、例えば、プレス法、水熱分解法、泳動電着法、マイクロ波照射法、又はポリマーなどのバインダー材料を用いない粒子分散液をコーティングして作製するバインダーフリーコーティング法等によって行うことができる。また、バインダーフリーコーティング法の場合は、スクリーンプリント法、インクジェットプリント法、ロールコート法、ドクターブレード法、スピンコート法、スプレー塗布法など公知の塗布により塗布する方法が適用できる。
【0040】
(iv)色素
半導体膜に担持される色素としては、特に制限されるものではなく、例えば、ビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体や鉄錯体、ポルフィリン系やフタロシアニン系の金属錯体、エオシン、ローダミン、メロシアニン、クマリン、カルバゾールなどの有機色素などが挙げられる。用途や酸化物半導体多孔質膜の材料に応じて前記化合物のうち1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0041】
(v)電荷輸送材(電解質、溶媒)
色素増感型光電池において、色素を担持した半導体膜および対極との間に介在される電荷輸送材は、電気治療器装着中における曲折時の応力緩和が可能な液体状のものを使用しても良いし、溶媒の揮発や液漏れの心配を無くすために固体状、凝固体状、常温溶融塩状態のものを使用しても良い。また、この電荷輸送材の厚み、すなわち色素を担持した半導体膜と対極との離間距離は、例えば1〜100μmが好ましい。
【0042】
電荷輸送材が例えば溶液状のものである場合は、この電荷輸送材は、電解質、溶媒、及び添加物で構成されることが好ましい。電解質としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウムなどの金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせや、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなどの第4級アンモニウム化合物のヨウ素塩とヨウ素の組み合わせ、あるいは前記ヨウ素化合物−ヨウ素のかわりに臭素化合物−臭素の組み合わせでもよい。電解質がイオン性液体の場合は、特に溶媒を用いなくてもよい。電解質は、ゲル電解質、高分子電解質、固体電解質でもよく、また、電解質の代わりに有機電荷輸送物質を用いてもよい。
【0043】
電荷輸送材が溶液状のものである場合の溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリルのようなニトリル系溶媒や、エチレンカーボネートのようなカーボネート系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒などが挙げられる。この場合、電解質溶液における電解質の濃度(モル濃度)は、電解質の種類によっても異なるが、例えば電解質がヨウ素塩−ヨウ素の組み合わせである場合は、0.1〜5.0Mであることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜1.0Mである。
【0044】
電荷輸送材が固体状、凝固体状のものである場合、この電荷輸送材は、固体電解質単独もしくは固体電解質と液体状、凝固体状、常温溶融塩状態などの電解質の混合物として構成されることが好ましい。固体電解質としては、カーボンナノチューブ、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)のような導電性ポリマー、CuIなどが挙げられる。
【0045】
(vi)対極
白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウムなどの金属、ITO、FTOなどの導電性金属酸化物、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)のような導電性高分子、炭素等が挙げられる。
【0046】
(vii)封止材
色素増感光電池においては、電荷輸送材中の溶媒の揮発や、外部からの水等の浸入などを防ぐために、封止材を用いて、少なくとも半導体膜側の基板と対極側の基板の外縁部を封止することが好ましい。ただし、電荷輸送材の媒体として固体状の材料を用いるなどの対応により、溶媒の揮発や流出の心配がない場合には封止材は必ずしも必要ではない。また、対極側の基板をプラスチックフィルム基板とし、これを用いて複数の光電変換単位素子全体を覆い、周囲を融着することで電荷輸送材中の溶媒の揮発や、外部からの水等の浸入を防ぐことも可能であり、この場合にも独立した封止材は必要ではない。
【0047】
封止材としては、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等を用いることができ、例えば、シリコーン樹脂、アイオノマー樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられ、単独で、または2種類以上の材料を組み合わせて用いることができる。封止材の性状は、ペースト状、シート状、液状等、特に限定されず、印刷などの公知の方法によって塗工できる。
【0048】
3.固定手段
刺激付与部、光電池、及び必要に応じてその他の部品を皮膚の所定位置に保持させるために、本発明の電気治療器には固定手段を設けてもよい。固定手段の形態は、電気治療器を皮膚上に固定できるものであれば特に限定されず、例えば、図1の実施形態に示したような粘着シート状のものでもよいし、患部に巻き付けたり被せたりすることができる繊維材料等から形成される被服であってもよいし、ベルトや面ファスナー等の着脱自在の固定手段でもよい。光電池の上から本固定手段を覆って固定する場合は、固定手段を光透過性の材料にするか、開口を設ける等して光電池に光が透過するようにする。
【0049】
固定手段としては、皮膚への順応性、装着感の観点から柔軟なもの、好ましくは伸縮性のものを使用でき、さらに、不感蒸泄による水分や発汗に対しての蒸れや不快感の軽減の観点から、通気性又は透湿性のものを使用できる。このようなものとしては、繊維材料からなる編布、織布、不織布等の布帛、連続気泡発泡体、透湿性のプラスチックフィルム等が挙げられる。固定手段は、特に、通気性を有する繊維材料からなる布帛が好ましく、少なくとも一部に伸縮性を備えることが好ましい。
【0050】
4.導体
刺激付与部に光電池からの電気を供給するために、刺激付与部と光電池とを電気的に接続する導体を用いてもよい。導体とし ては、従来公知のものを使用することができ、導電性材料の細条、又はこれを柔軟性の絶縁体で被覆したもの等を用いることができる。
【0051】
5.絶縁シート
光電池、刺激付与部、導体等が隣接又は積層して配置された場合、回路の短絡を防ぐために、電気治療器の適当な部位に絶縁シートを配置してもよい。特に、刺激付与部での短絡は、過電流による火傷の恐れもあるため、刺激付与部上に絶縁シートを載置等することが好ましい。また、図1の実施形態のような形態にした場合、光電池の下面は、皮膚に対向する側であるため光の入射が少ない。そこで、光電池の下面に配置する絶縁シートに光反射機能を持たせることで、光電池を通過した光を反射させ、反射した光エネルギーも効率的に起電に使うことができる。絶縁シートとしては、プラスチックフィルム、繊維材料からなる布帛、発泡シート等を利用することができる。
【0052】
6.その他の部材
その他、必要に応じて、本発明の電気治療器には、光電池で発電した電力を蓄える蓄電器、電流にパルスを供給するためのパルス変圧器、直流電流を交流電流に変換するインバーター、周波数変換器、印加する電気刺激や熱刺激の量や時間を制御するマイクロコンピューター等を設けてもよい。
【0053】
7.電気治療器の用途
本発明の電気治療器の用途としては、皮膚、筋肉、腱、骨、関節、神経等に関わる疾患の予防や治療、又はこれら部分の生理的な機能の維持や改善等があり、電気刺激を用いて、例えば、以下(i)〜(vii)の作用・目的を単独又は複数奏するように機器を構成することが好ましい。そして、その作用・目的によって、電流、電圧、周波数、パルス幅、刺激時間、製品の形状や構造等を変えることができる。
(i)経皮的神経電気刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation;TENS)。疼痛やこりの軽減、血液やリンパ液の循環促進、自律神経の調整等を目的とする。
(ii)治療的電気刺激(Therapeutic Electrical Stimulation;TES)。筋萎縮の予防改善、随意運動能力の回復、排尿機能の改善、末梢循環治療、創傷治癒、骨癒合等を目的とする。
(iii)機能的電気刺激(Functional Electrical Stimulation;FES)。運動機能、排尿機能、心肺機能、感覚系機能等の生体機能の補助、代行等を目的とする。
(iv)電気的筋肉刺激(Electrical Muscle Stimulation;EMS)。筋力増強、リハビリ、ウォーミングアップ、マッサージ、老廃物除去等を目的とする。
(v)微小電流神経刺激(Micro‐current Electrical Nerve Stimulation;MENS)。細胞の賦活化による皮膚改善(美容)、損傷組織や部位の治癒、血流改善、除痛等を目的とする。具体的には、ATP生成、蛋白質合成、アミノ酸の能動輸送等の 生体内化学反応の改善や促進、乳酸などの分解促進、コラーゲン繊維の合成助長等の作用がある。
(vi)イオン導入(Iontophoresis)。電気的移動、電気浸透、又はエレクトロポレーション等の作用により薬剤を経皮的に導入する。刺激付与部の皮膚接触面に、イオン性薬物を含有した導電性ゲル層等を設ける構成が利用できる。
(vii)その他、汚れや菌等の吸着、放出、除去、殺菌、抗菌等。
【0054】
8.電気刺激
(1)電流
本発明の電気治療器で用いる電気刺激の電流値としては、0.1μA〜50mAの範囲が挙げられ、特に上記(i )〜(vii)の用途を目的とする場合、10μA〜30mA程度の範囲が望ましい。これは、細胞の刺激閾値、生体安全の面から考えられる刺激強度である。より具体的には、微小電流神経刺激(MENS)やイオン導入の場合は、細胞の損傷電流である10〜30μAが適当であり、経皮的神経電気刺激(TENS)を目的とする場合は、認知的刺激より1〜10mAである。また、筋肉を刺激する場合は、神経刺激や筋繊維刺激の観点から10〜30mAの刺激電流が必要である。
【0055】
また、本発明の電気治療器で用いるこれらの電流値は、本発明の電気治療器の使用中に不定的及び/又は断続的に変化することが望ましい。電流値のこのような不定的及び/又は断続的な変化は、前述の光電池の特性によって奏することができる。具体的には、細胞の損傷電流や活動電位から想定し、数μA〜数十mA程度の電流のばらつきの幅があることが望ましい。例えば、表層に近い皮膚や創傷等の場合は10μA以上、深部になる神経や筋肉等の場合は5mA以上の皮膚に印加する電流のばらつきがあることが有効と考えられる。また、一定値の電流であっても、オンとオフを繰り返し、断続的に通電するようにしてもよい。なお、パルス変圧器、インバーター等を組み込み、矩形波、三角波、正弦波等のパルス波を形成することで、このような電流のバラツキと同様の電気刺激の作用・効果を得てもよい。また、皮膚表面のpHコントロールや創傷部の細胞増殖因子の定着等を目的とする場合は、電流値をある程度一定(定常)にした方が有効な場合もある。
【0056】
(2)電圧
本発明の電気治療器で用いる電気刺激の電圧値については、電気刺激を皮膚表層から印加する場合、目的部位の深さによって電圧値を選択しえる。特に皮膚は、電気抵抗性が高いことから、この影響を考慮して電気刺激を加える。微小電流神経刺激(MENS)やイオン導入の場合は電圧値は0.1〜10V、機能的電気刺激(FES)や電気的筋肉刺激(EMS)では1V〜50Vが望ましい。本発明の電気治療器で用いるこれらの電圧値は、本発明の電気治療器の使用中に不定的及び/又は断続的に変化することが望ましい。
【0057】
(3)周波数
また本発明の電気治療器で用いる電気刺激の周波数としては、細胞膜等の分極の影響を考えると10Hz〜50,000Hzが利用できる。周波数の上限を超えると発熱や感知低減の可能性があることから、10Hz〜20,000Hz程度が望ましい。また、人に使用する場合の痛みを考慮した場合、連続パルスが発生する期間と発生しない期間を設けることが望ましい。これらの周波数をもたせる電流は直流でも交流でもよい。本発明の電気治療器で用いるこれらの周波数は、本発明の電気治療器の使用中に不定的及び/又は断続的に変化することが望ましい。
【0058】
より具体的には、本発明の電気治療器を使用して所定部位に至適電流を与えるためには、皮膚表面から所定部位までの距離により周波数と電圧を決定し、所定部位の組織の反応性・分極特性により周波数を決定することができる。また、上記(i )〜(vii)の用途を目的とする場合、電気刺激は、電流値10μA〜30mA、周波数10〜20,000Hz、電圧値1V〜50Vの範囲で調整し得る。
【0059】
9.その他の実施形態
次に本発明の電気治療器に係る他の実施形態について説明する。本発明の電気治療器は、図1の実施形態のような皮膚に貼付可能なシート形態の他、皮膚上に巻きつけたり、被せたり、装着したりできる被服形態にすることができる。本発明の電気治療器を被服形態とすることで、装着位置の調節や変更、長期間の使用、繰り返しの使用などが簡便、快適に行える。
被服形態の電気治療器の態様としては、例えば、四肢、体幹(胸部又は腹部など)、頚部、頭部等を被覆するスリーブ状や帯状の被服、シャツ状(袖ありシャツ、袖なしシャツ等)等の上半身用被服、ソックス状、ハイソックス状、ストッキング状、タイツ状、パンツ状等の下半身用被服等の形状を備えたものが好ましい。
【0060】
(1)上半身用被服形態の電気治療器
次に、図2を参照しながら、本発明の上半身用被服形態に係る電気治療器を説明する。図2(A)は、本発明の第三実施形態に係る電気治療器100Aを示す模式図である。(A1)は身体の正面側からみた図、(A2)は身体の背面側からみた図である。電気治療器100Aは、上半身用被服として全体形状を成形されている。電気治療器100Aは、被服の内側(皮膚と接する側)に設置される刺激付与部20(図示せず)と、被服の外側に設置される光電池30と、刺激付与部20と光電池30とを保持する編布等の繊維材料からなる被服形状の固定手段40とからなっている。刺激付与部20は、電気刺激等を付与する目的筋肉に対応する形状に形成され、その筋肉に対応する部分に配置される。また、光電池30は、刺激付与部20の形状、位置に対応するように、刺激付与部20の皮膚面と反対側に直接、または固定手段40を介して間接的に積層され、電気治療器が扁平な一体構造となるように構成される。本実施形態では、刺激付与部20(図示せず)及び光電池30は、身体の矢状面に対して左右対称に配置される。
【0061】
また、図2(B)及び(C)は、本発明の第四及び第五実施形態で、刺激付与部20、光電池30、及び固定手段40の形状、位置を第三実施形態から変更したものである。
図2(B)は、本発明の第四実施形態に係る電気治療器100Bを示す模式図である。(B1)は身体の正面側からみた図、(B2)は身体の背面側からみた図である。
図2(C)は、本発明の第五実施形態に係る電気治療器100Cを示す模式図である。(C1)は身体の正面側からみた図、(C2)は身体の背面側からみた図である。
本発明の第四及び第五実施形態も、刺激付与部20(図示せず)及び光電池30は、身体の矢状面に対して左右対称に配置される。
【0062】
このように刺激付与部20や光電池30の形状や位置を、使用者の所定の筋肉・関節等に対応するよう区画したり、筋繊維の走行とほぼ平行になるよう配置したりすることで、装着位置の目安として簡便な取り付けができ、筋肉の動きを阻害することも抑え、装着時の違和感を軽減できる。さらに、発電した電気のエネルギーロスを減らして効率的に皮膚に電気刺激等を加えることができる。また、刺激付与部20や光電池30のもつ適度な密着性や腰により、圧迫や緊締によるテーピングテープと類似の作用が奏され、これと電気刺激等の効果が相俟って、より効果的な治療や生理的な機能の維持・改善を行うことができる。また、区画された各部位ごとに、起電させる電気量等を変化させることもでき、このようにすることで、各部位に合った適当な電気刺激を印加することができ、効率的に治療等を進めることが可能となる。
【0063】
(2)下半身用被服形態の電気治療器
次に、図3を参照しながら、本発明の下半身用被服形態に係る電気治療器を説明する。
図3(D)は、本発明の第六実施形態に係るタイツ状の電気治療器100Dを示す模式図である。(D1)は身体の正面側からみた図、(D2)は身体の背面側からみた図である。
図3(E)は、本発明の第七実施形態に係るタイツ状の電気治療器100Eを示す模式図である。(E1)は身体の正面側からみた図、(E2)は身体の背面側からみた図である。
図3(F)は、本発明の第八実施形態に係るハイソックス状の電気治療器100Fを示す模式図である。(F1)は身体の正面側からみた図、(F2)は身体の背面側からみた図である。
本発明の第六〜八実施形態も、刺激付与部20(図示せず)及び光電池30は、身体の矢状面に対して左右対称に配置される。
これらの本発明の第六〜八実施形態は、刺激付与部20、光電池30、及び固定手段40の形状、位置をそれぞれ変えたものである。本実施形態の作用・効果は、前述した上半身用被服形態の電気治療器と同様なため、説明を省略する。
【0064】
(3)スリーブ状・帯状形態の電気治療器
次に、図4を参照しながら、本発明のスリーブ状又は帯状の被服形態に係る電気治療器を説明する。
図4(G)は、本発明の第九実施形態に係るスリーブ状の電気治療器100Gを示す模式図で、主に大腿部に使用されるものである。(G1)は身体の正面側からみた図、(G2)は身体の背面側からみた図である。
図4(H)は、本発明の第十実施形態に係るスリーブ状の電気治療器100Hを示す模式図で、主に下腿部又は上肢部に使用されるものである。(H1)は身体の正面側からみた図、(H2)は身体の背面側からみた図である。
図4(I)は、本発明の第十一実施形態に係る帯状の電気治療器100Iを示す模式図で、皮膚に接触させる側の面を示した図である。
スリーブ状の電気治療器100G又は100Hと、帯状の電気治療器100Iは、例えば、四肢、肩、体幹(胸部又は腹部など)等の所望の部位に被せたり、巻き付けたりして装着できるようにされている。電気治療器100Iは、固定手段40の末端部分に面ファスナー等の着脱自在の部材を設けることで、位置や締め付けの調節を簡便に行う事が可能である。
これらの本発明の第九〜十一実施形態についても、本実施形態の作用・効果は、前述した上半身用被服形態の電気治療器と同様である。
【符号の説明】
【0065】
100 電気治療器
20 刺激付与部
30 光電池
40 固定手段
41 基材
42 粘着剤層
50 導体
60 絶縁シート
70 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に物理的エネルギー刺激を加える柔軟な刺激付与部と、
前記刺激付与部に電気的に接続される可撓性の光電池と、を備える電気治療器。
【請求項2】
前記刺激付与部及び光電池を直接若しくは間接的に積層し、又は前記刺激付与部及び光電池を同一平面上に配置し、扁平な一体構造物となるようにした請求項1記載の電気治療器。
【請求項3】
不定的及び/又は断続的な物理的エネルギー刺激を皮膚に加える請求項1又は2に記載の電気治療器。
【請求項4】
皮膚に加える物理的エネルギー刺激が電気刺激である請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気治療器。
【請求項5】
光電池が伸縮性を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気治療器。
【請求項6】
光電池が通気性を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気治療器
【請求項7】
光電池が色素増感型である請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気治療器。
【請求項8】
前記刺激付与部及び/又は光電池が、使用者の所定の皮膚、筋肉、腱、靭帯、骨、又は関節から選択される1以上の部位に対応するよう区画された請求項1〜7のいずれか一項に記載の電気治療器。
【請求項9】
使用時に、前記刺激付与部及び/又は光電池の長手方向が筋繊維の走行とほぼ平行になるように、前記刺激付与部及び/又は光電池を所定の位置に配置した請求項1〜8のいずれか一項に記載の電気治療器。
【請求項10】
前記刺激付与部及び光電池を、皮膚の所定位置に保持させる柔軟な通気性又は透湿性の固定手段をさらに備える請求項1〜9のいずれか一項に記載の電気治療器。
【請求項11】
スリーブ状被服、帯状被服、上半身用被服、又は下半身用被服から選択される形状を備える請求項1〜10のいずれか一項に記載の電気治療器。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−220754(P2010−220754A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70303(P2009−70303)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】