電気泳動ディスプレイ、並びに電気泳動ディスプレイを駆動する方法および装置
画像を表示するためにディスプレイの帯電粒子が電極(3,4)の間の複数の位置のうちの一つの位置を占めることができるように、駆動波形の形式の別々の画像電位差のシーケンスが供給される駆動方法が使用される電気泳動ディスプレイである。駆動波形は画像電位差を含む一連の画像更新信号からなり、画像更新信号はドウェル時間によって分離されており、駆動方法は、ドウェル時間の間に一つ以上の振動パルスを発生させるステップを含んでいる。斯かる振動パルスは各画像更新信号の直後に発生させてもよく、又は、斯かる振動パルスは所定の間隔で駆動波形に発生する規則的な振動パルスを有していてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気泳動表示装置に関する。この電気泳動表示装置は、流体中に帯電粒子を有する電気泳動材料と、複数の画素と、前記各画素に関連し電位差を受け取る第1の電極および第2の電極と、を有しており、前記帯電粒子は、前記第1の電極と前記第2の電極との間の複数の位置のうちの1つの位置を占めることができ、前記電気泳動表示装置は、画像を表示するため前記帯電粒子が前記複数の位置のうちの1つの位置を占めることを可能にする駆動波形の形で、一連の画像電位差を供給する駆動手段を有している。
【背景技術】
【0002】
電気泳動ディスプレイは、流体中の帯電粒子からなる電気泳動媒体と、マトリックス状に配された複数の画素(ピクセル)と、各画素に関連する第1および第2の電極と、画像を表示するため、印加された電位差についての値と持続時間とに依存して、帯電粒子が電極と電極との間の位置を占めるように電位差を各画素の電極に印加する電圧ドライバと、を有する。
【0003】
更に詳細にいうと、電気泳動表示装置は、交差するデータ電極と選択電極との交差部に関連する画素のマトリックスを有するマトリックス・ディスプレイである。グレーレベル、即ち画素の着色レベルは、画素に特定のレベルの駆動電圧が与えられる時間に依存する。駆動電圧の極性に依存して、画素の光学状態は、その現在の光学状態から2つの極限状態のうちの一方の状態に向かって連続的に変化し、例えば、一方の極性の帯電粒子の全てが、画素の上部又は底部に近づく。グレースケールは、画素に電圧が与えられる時間を制御することによって得られる。
【0004】
通常、全ての画素は、適切な電圧を選択電極に供給することによってラインごとに選択される。データは、データ電極を介して、選択されたラインに関連する画素に並列に供給される。ディスプレイがアクティブマトリックス・ディスプレイである場合、選択電極が、データが画素に順に供給されるようにするための、TFT、MIM、ダイオードなどのアクティブ素子を活性化する。マトリックス・ディスプレイの全ての画素を一回選択するのに必要な時間は、サブフレーム期間と呼ばれる。特定の画素は、実現する必要がある光学状態の変化に依存して、サブフレーム期間全体の間に、正の駆動電圧、負の駆動電圧、又はゼロの駆動電圧を受け取る。光学状態を変化させる必要がない場合、ゼロの駆動電圧が画素に印加される。
【0005】
図10および図11は、第1の基板8と、第2の対向基板9と、複数の画素2と、を有する表示パネル1の典型的な一実施例を示す。一実施例では、画素2は、略直線に沿って並ぶ二次元構造に配されている場合がある。別の実施例では、画素2は、ハニカム配列の場合がある。
【0006】
基板8、9の間には、流体中に帯電粒子6を有する電気泳動媒体5が存在する。第1および第2の電極3、4は、電位差を受け取る各画素2に関連している。図11に示す構造では、第1の基板8は、各画素2に対して第1の電極3を有し、第2の基板9は、各画素2に対して第2の電極4を有している。帯電粒子6は、電極3、4の近くの極位置と、電極3、4の間の中間位置と、を占めることができる。各画素2は、電極3、4の間の帯電粒子6の位置によって決定される外観を有する。
【0007】
電気泳動媒体は、それ自体、例えば、US5,961,804号、US6,120,839号、およびUS6,130,774号から既知であり、例えば、EInk社から入手できる。一例として、電気泳動媒体5は、白の液体中に、負に帯電した黒の粒子6を有する場合がある。電極3,4に印加される電位差(例えば、15V)によって、帯電粒子6が第1の極位置に、即ち第1の電極3の近くに存在するとき、画素2が第2の基板9の側から観察される場合の画素2の外観は例えば白である。
【0008】
電極3,4に印加される電位差(例えば、−15V)によって、帯電粒子6が第2の極位置に、即ち第2の電極4の近くに存在するとき、画素の外観は黒である。帯電粒子6が複数の中間位置のうちの1つの中間位置に、即ち電極3、4の間に存在するとき、画素2は、複数の中間の外観(白と黒との間のグレーレベルである、例えば、ライトグレー、ミドルグレー、およびダークグレー)のうちの一つの外観を有する。
【0009】
図12は、パルス幅変調された遷移マトリックス(transition matrix)を使用する典型的な従来のランダムグレースケール遷移シーケンスの一部を示す。画像状態nと画像状態n+1との間には、ユーザに依存して数秒から数分までとすることができる利用可能な特定の時間間隔(ドウェル時間)が常に存在する。
【0010】
一般的には、グレースケール(即ち、中間カラー状態)を生成するために、複数のサブフレームを有するフレーム期間が規定され、何個のサブフレームの間は画素がどの駆動電圧(正、ゼロ、又は負)を受け取るべきかを画素ごとに選択することによって、画像のグレースケールを再現できる。通常、サブフレームは同じ持続期間であるが、必要であれば、異なるように選択できる。言い換えると、典型的には、固定値の駆動電圧(正、負、又はゼロ)と可変持続時間の駆動期間とを用いて、グレースケールを発生する。あるいは、大きさが可変の駆動電圧を印加してグレーレベルを発生させることもできるだろう。
【0011】
電気泳動ホイルを使用するディスプレイでは、ITO電極とITO電極との間に多くの絶縁層が存在し、これら層は電位差により帯電する。絶縁層に存在する電荷は、絶縁層に初めに存在する電荷と、その後に生じる電位差履歴と、によって決定される。したがって、粒子の位置は、印加されている電位差だけでなく電位差履歴にも依存する。結果として、かなりの画像残留が起こり得ることになり、画像データに従って続いて表示される画像は、画像データを正確に表現した画像とはかなり異なる。
【0012】
上記のように、電気泳動ディスプレイのグレーレベルは、一般的には、電圧パルスを特定の時間の間印加することによって、作り出される。グレーレベルは、画像履歴、ドウェル時間、温度、湿気、電気泳動ホイルの横方向の不均質性などの影響を強く受ける。履歴を完全に考慮するために、遷移マトリックス(transition matrix)に基づく駆動方式が提案されている。斯かる装置では、マトリックス・ルックアップテーブル(LUT)が必要であり、これによって、異なる画像履歴のグレースケール遷移用の駆動信号が決定される。しかし、駆動電圧レベルの選択は一般的にグレー値の要求値に基づいているので、画素が或るグレーレベルから別のグレーレベルに駆動された後の残留dc電圧の蓄積は避けられない。特に複数回のグレースケール遷移後の集積した後の残留dc電圧は、深刻な画像残留をもたらし、表示装置の寿命を短くする場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、電気泳動ディスプレイの画像残留を低減するために、上記の問題を克服する方法および装置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、表示装置が提供される。この表示装置は、
流体中に帯電粒子を有する電気泳動材料と、
複数の画素と、
上記各画素に関連し電位差を受け取る第1の電極および第2の電極と、
を有し、上記帯電粒子は、上記第1の電極と上記第2の電極との間の複数の位置のうちの1つの位置を占めることができ、
上記表示装置は、画像を表示するため上記帯電粒子が上記複数の位置のうちの1つの位置を占めることを可能にする駆動波形の形で、一連の画像電位差を供給する駆動手段を有し、上記駆動波形は、画像電位差を含む一連の画像更新信号からなり、上記画像更新信号はドウェル時間で分離され、1つ以上の振動パルスが上記ドウェル時間の間に発生する。
【0015】
また、本発明によれば、表示装置を駆動する方法が提供される。上記表示装置は、
流体中に帯電粒子を有する電気泳動材料と、
複数の画素と、
上記各画素に関連し電位差を受け取る第1の電極および第2の電極と、
を有し、上記帯電粒子は、上記第1の電極と上記第2の電極との間の複数の位置のうちの一つの位置を占めることができ、
上記表示装置は、画像を表示するため上記帯電粒子が上記複数の位置のうちの一つの位置を占めることを可能にする駆動波形の形で、一連の画像電位差を供給する駆動手段を有し、上記駆動波形は、画像電位差を含む一連の画像更新信号からなり、上記画像更新信号はドウェル時間によって分離されており、上記方法は、上記ドウェル時間の間に一つ以上の振動パルスを発生させるステップを含んでいる。
【0016】
更に、本発明によれば、表示装置を駆動する駆動装置が提供される。上記表示装置は、
流体中に帯電粒子を有する電気泳動材料と、
複数の画素と、
上記各画素に関連し電位差を受け取る第1の電極および第2の電極と、
を有し、上記帯電粒子は、上記第1の電極と上記第2の電極との間の複数の位置のうちの一つの位置を占めることができ、
上記駆動装置は、画像を表示するため上記帯電粒子が上記複数の位置のうちの一つの位置を占めることを可能にする駆動波形の形で、一連の画像電位差を供給し、上記駆動波形は、画像電位差を含む一連の画像更新信号からなり、上記画像更新信号はドウェル時間によって分離されており、上記駆動装置は、上記ドウェル時間の間に一つ以上の振動パルスを発生させる手段を更に有している。
【0017】
一態様では、上記1つ以上の振動パルスは、上記各画像更新信号の後に発生する、好ましくは、上記各画像更新信号の実質的に直後に発生する。
【0018】
上記各画像更新信号は、リセットパルスと、グレースケール駆動パルスと、からなることが好ましい。1つ以上の振動パルスは、画像更新信号の一部として、リセットパルスとグレースケール駆動パルスとの間に発生する、および/又は、画像シーケンスの一部として、リセットパルスの実質的に直前に発生してもよい。
【0019】
本発明の一つの好ましい実施例では、上記各画像更新信号の後に一連の振動パルスが発生し、(電圧の大きさ)と(時間)との積として規定される一連の振動パルスの振動パルスエネルギーは、一連の振動パルスの最初の数個のパルスのエネルギーが同じ一連の振動パルスの最後の数個のパルスのエネルギーよりも大きいように、この一連の振動パルスの間に次第に減少する。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、上記1つ以上の振動パルスは規則的な振動パルスを有しており、この規則的な振動パルスは、上記駆動波形に所定の間隔で、好ましくは実質的に等距離の間隔で、発生する。
【0021】
各画像更新信号は、1つ以上の振動パルスの直後であってもよい。画像更新シーケンスの間に1つ以上の規則的な振動パルスの発生を一時的に停止する手段を備えることができる。
【0022】
消費電力を低減するように電荷リサイクル手段を備えてもよい。あるいは、又はこれに加えて、規則的な振動パルスの発生を可能にする第1のモードでの消費電力に比べて、上記規則的な振動パルスの発生を不可にする第2のモードでの消費電力が低減するように、上記表示装置を少なくとも2つのモードのうちの一つのモードで動作するように構成してもよい。
【0023】
本明細書において、用語「振動パルス」は、一つの短い電圧パルス、又は交番する一連の短い正および負の電圧パルスに言及するものとして使用されている。1個の振動パルスは、2つの極位置のうちの一方の極位置に存在する粒子を解放するには十分なエネルギー値ではあるが、2つの電極の間において粒子を一方の極位置から他方の極位置に移動させるには不十分なエネルギー値を表す単一極性電圧パルスである。単一振動パルスが使用される場合、その極性は次の駆動波形の最初のパルスとは反対の極性であることが好ましい。
【0024】
本発明のこれらのおよび他の態様は、以下に記載される実施例から明らかであり、この実施例を基準にして説明されている。
【0025】
本発明の実施例はほんの一例として記載されており、添付図面を基準にして記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
先に詳細に説明されているように、電気泳動ディスプレイのグレーレベルは、一般的には、電圧パルスを対応する画素の電極に特定の時間の間印加することによって、作り出される。電気泳動ディスプレイのグレースケールの精度は、画像履歴、ドウェル時間、温度、湿気、電気泳動ホイルの横方向の不均一性などによって強く影響を受ける。
【0027】
正確なグレーレベルは、いわゆるレール安定化方式を用いることによって実現できることが証明されている。これは、画像シーケンス自体に関係なく、2つの極光学状態、即ち「レール」、のうちの一つの状態(例えば、黒又は白)を介して、グレーレベルが常に実現されることを意味している。
【0028】
実質的にdc−バランスの取れた駆動を実現するために、近年、サイクリックレール安定化グレースケール(cyclic rail-stabilized greyscale)の考えが提案されており、これは、図面のうちの図1に概略的に示されている。この方法では、上記のように、「インク」は、図1の矢印で示されているように、画像シーケンスに関係なく、2つの極光学状態、例えば完全な黒又は完全な白(即ち、2つのレール)の間で、常に同じ光学経路をたどらなければならない。図示された例では、ディスプレイは4つの異なる状態、即ち、黒(B)、ダークグレー(G1)、ライトグレー(G2)、および白(W)、を有している。
【0029】
近年、電気泳動ディスプレイを駆動するために、単一オーバーリセット電圧パルスを使用した駆動方法が提案されており、この駆動方法が、黒(B)、ダークグレー(G1)、ライトグレー(G2)、および白(W)から、ダークグレーへの画像遷移について、図2aに概略的に示されている。一連のパルスは、通常4つの部分、即ち、第1の一連の振動パルス、リセットパルス、第2の一連の振動パルス、およびグレースケール駆動パルス、からなり、これにより、第2の一連の振動パルスは、リセットパルスとグレースケール駆動パルスとの間に発生する。
【0030】
リセットパルスは、「インク」を完全な黒又は白から反対のレール状態に切り替えるのに必要な最小時間より長く、これによって、前の画像は、新しい画像更新の間に、完全に消去される。画像更新シーケンスに関係なく、ドウェル時間および画像履歴効果を低減するのに、第1の一連の振動パルスと第2の一連の振動パルスとの両方が要求され、これによって、画像残留が緩和され、グレースケール精度が向上する。
【0031】
しかし、画像更新時間が、例えば1秒以下に限られる場合、画像残留は依然として受け入れることができないくらいに目に見える場合があり、斯かる画像残留は、もっと長いリセットパルスおよび/又はもっと多くの振動パルスを備えることによって低減できるが、これは、画像更新時間を必要なレベル以上に明らかに長くしてしまう。
【0032】
したがって、本発明の第1の態様によれば、少なくとも4つのグレースケールレベル(以下、「2ビットグレースケール」と呼ぶ)を有する電気泳動ディスプレイの駆動方法であって、振動パルスが各グレースケール駆動パルスのぼほ直後に供給される駆動方法が提案されている。したがって、好ましい方法では、一連の駆動パルスは、やはり4つの部分、即ち、図2aを基準にして記載されているように、第1の一連の振動パルス、リセットパルス、第2の一連の振動パルス(リセットパルスとグレースケール駆動パルスとの間)、およびグレースケール駆動パルス、からなるが、グレースケール駆動パルスの直後のドウェル時間の間に第3の一連の振動パルスが追加される。第3の一連の振動パルスに含まれるエネルギーは、粒子が比較的短い距離を移動するのに十分なエネルギーではあるが、目に見える光学的フリッカが防止されるように、粒子がかなりの距離に渡って移動するには不十分なエネルギーとしなければならないことは、当業者に明らかである。
【0033】
第3の一連の振動パルスは、例えば、画素に画像更新シーケンスとは独立して電圧が印加されるハードウェア振動方式(hardware shaking)によって、ディスプレイ全体に同時に印加されることが有利である。このようにして、全画像更新時間を長くせずに、画像残留を低減させることができる。
【0034】
もっと詳細には、図面のうちの図2bを参照すると、本発明の好適な一実施例では、電気泳動ディスプレイは、2つのレール状態と、少なくとも2ビットグレーレベル(即ち、黒(B)、ダークグレー(G1)、ライトグレー(G2)、および白(W))と、を有している。W、G2、G1、およびBからG1への4つの遷移は、上記のオーバリセット技術がディスプレイをリセットするのに使用される場合は2つのタイプのパルスシーケンスを使用して実現され、長いシーケンスはG2からW又はG1への遷移に対して必要であり、短いシーケンスはG1又はBからG1への遷移に対して使用される。
【0035】
図示された例では、全てのタイプの画像遷移に対して、各シーケンスは、5つの部分からなり、即ち、既に述べたように、第1の一連の振動パルス、リセットパルス、第2の一連の振動パルス(リセットパルスとグレースケール駆動パルスとの間)、およびグレースケール駆動パルス、を有する画像更新シーケンスと、画像更新の完了後、即ち、画像更新の直後のドウェル時間の間、に発生する第3の一連の振動パルスを有する第5の部分と、からなる。画像更新時間は、上記の最初の4つの部分のシーケンスの影響しか受けないので、第3の一連の振動パルスの影響はユーザには目に見えないはずであり、第3の一連の振動パルスの追加によって悪い影響は受けない。したがって、要約すれば、図面のうちの図2bを基準にして記載された実施例では、(最後の組の振動パルスは観察者にはほとんど見えないので)画像更新時間を増加させることなく、画像残留が少なくなる。
【0036】
含まれるエネルギーは比較的小さい距離を粒子が移動するには十分なエネルギーであるが、かなりの距離を粒子が移動するには不十分なエネルギーであるように、振動パルスのパルス時間又は振幅を適切に制御することによって、第3の一連の振動パルスによって生じ得る目に見える光学フリッカを抑制することが重要である。
【0037】
本発明の第2の好適な実施例によれば、図3に概略的に示されているように、図2bを基準にして記載された好適な実施例のように画像更新シーケンスの直後に第3の一連の振動パルスが発生するが、この第3の一連の振動パルスは、ここでは、第3の一連の振動パルスの最初のパルスに含まれるエネルギーが第3の一連の振動パルスの最後のパルスに含まれるエネルギーよりも大きいように、可変振幅又は可変パルス長時間を有している。したがって、図面のうちの図3を基準にして記載された本発明の好適な実施例では、(最後の振動パルスの視認性が、そのエネルギーの減少によって、図2bに示された駆動波形と比較して更に低減されるので)画像更新時間を増加させずに、画像残留が低減される。
【0038】
本発明の第3の好適な実施例によれば、図面のうちの図4に概略的に示されているように(右側)、各画像更新シーケンスに使用されるリセットパルスの長さは可変であり、この長さは、画像遷移を生じさせるためにインクが垂直方向に移動する必要がある距離に比例する。明確にするため、図4の左側の図に、既知の駆動方法によって発生する類似の駆動波形が示されている。
【0039】
一例として、画像更新データがパルス幅変調(PWM)される場合に、白から黒への遷移を生じさせるのに全パルス幅(FPW)が必要であるが、G2から黒への遷移を生じさせるのに2/3FPWしか必要とせず、G1から黒になるのに1/3FPWしか必要としない状況を考える。したがって、白から黒への遷移用の画像更新シーケンスでは全リセットパルスが使用され、G2から黒への遷移用の画像更新シーケンスではこのパルス長の2/3が使用され、G1から黒への遷移用の画像更新シーケンスではこのパルス長の1/3が使用され、黒からG1への遷移に対してはリセットパルスは使用されない、即ち、「オーバリセット」技術は使用されない。これらの波形は、例えば、次の画像に必要なパルスのエネルギーインパルス(時間×電圧)を決定するのに前の画像が考慮される遷移マトリックス(transition matrix)に基づいた方法が使用されるとき、使用可能である。更に、これらの波形は、ディスプレイで使用される電気泳動材料が画像履歴および/又はドウェル時間の影響を受けないときに使用可能である。
【0040】
図示されているように、第3の一連の振動パルスは、波形において、グレースケール駆動パルス(又は画像更新シーケンスの完了)の直後のドウェル時間の間に加えられる。既に述べたように、画像更新時間は、本発明の第1の好適な実施例を基準にして記載したように画像更新シーケンスの影響のみを受けるので、第3の一連の振動パルスを画像更新シーケンスの直後のドウェル時間の間に追加することによって悪い影響は受けない。
【0041】
前と同様に、含まれるエネルギーは比較的小さい距離を粒子が移動するには十分であるが、かなりの距離を粒子が移動するには不十分であるように、振動パルスのパルス時間又は振幅を適切に制御することによって、第3の一連の振動パルスによって生じ得る目に見える光学フリッカを抑制することが重要である。既に述べたように、第3の一連の振動パルスは、画像更新シーケンスにかかわらず、例えば、ハードウェア振動方式によって、ディスプレイ全体に同時に印加されることが有利である。このようにして、全画像更新時間を増加させずに、画像残留を低減することができる。
【0042】
図面のうちの図5を参照すると、本発明の第4の好適な実施例によって発生する駆動波形は、図面のうちの図4を基準にして記載され、且つ図4によって概略的に示された駆動波形と、多くの点で同じである。しかし、この場合、第3の一連の振動パルスとして異なるタイプの振動パルスが使用されており、この一連の振動パルスにおいては振幅又はパルス長時間が減少する、即ち、一連の振動パルスの最初のパルスに含まれるエネルギーは、本発明の第2の好適な実施例を基準にして記載されているように、この一連の振動パルスの最後のパルスのエネルギーよりも大きい。
【0043】
実際、図4および図5の実施例に関する全画像更新時間は、図2bおよび図3を基準にして記載された実施例に比べて、更に短くすることができる。
【0044】
図面のうちの図6を参照すると、本発明の第5の好適な実施例によって発生する駆動波形は、図5を基準にして記載され、且つ図5によって概略的に示された駆動波形と、多くの点で同じである。しかし、この場合、第4の一連の振動パルスは、第1の一連の振動パルスとリセットパルスとの間に発生する。これらの追加の振動パルスを使うことによって、ドウェル時間および/又は画像履歴の影響をさらに低減することができ、その結果として得られる画像は、従来の方法と比較して、画像残留が更に低減され画質が向上したものである。第4の一連の振動パルスは、第1、第2、および第3の一連の振動パルスとは異なる形式を有する。この実施例により、画像残留を更に低減することができる。
【0045】
本発明の第2の態様によれば、別の駆動方法が提案されている。上記から明らかなように、電気泳動ディスプレイの駆動波形に振動パルスを含むことは、(電圧変調とパルス幅変調との両方において)電気泳動ディスプレイの全ての駆動方法に好ましいとはいえないにしても、ほとんどの駆動方法に好ましいことである。振動パルスは、グレースケールの精度を向上させ、画像残留を取り除き、ドウェル時間を考慮しており、この振動パルスは適切に実行されるのであれば、光学的にはユーザに見えない。
【0046】
画質は確かに重要であるが、特に、或るグレースケール画像から別のグレースケール画像に変化するときに、画像更新時間を最小にする必要もある。現在のところ、使用される駆動方式のディテールに依存して、600msec〜800msecの画像更新時間が達成可能である。しかし、例えば、画像更新シーケンスの間において、各グレースケール遷移を生じさせるのに必要な各グレースケール駆動パルスの直前に、一連の振動パルスが印加されている図7に示されるように、全ての駆動方式において、画像更新時間のかなりの部分は、振動させることに費やされている。図示された波形の振動パルスは、画像更新シーケンスと一体の部分であり、最良の画質を達成するためには、この振動パルスは、理想的には、できるだけ長く、例えば、少なくとも80msec、もっと典型的には、160msec程度にすべきである。したがって、振動させることにより、全画像更新時間がかなり延びる。言い換えると、既知のシステムでは、画像更新時間を短くするためには、振動させる時間を短くしなければならないが、これは画質に悪影響を与えるので、画質と画像更新時間のどちらを採るかという兼ね合いがある。
【0047】
したがって、本発明の第2の態様によれば、画像更新信号とは無関係に、駆動波形において各画像更新シーケンスの間のドウェル時間の間に振動パルスを発生させることが提案されている。このやり方では、画質はかなり改善され、および/又は、画像更新時間を短くすることができる。例えば、短いパルス、列反転方式などを使用して、先に説明したように、振動がユーザに光学的に見えないようにすることができる。比較的短い振動パルスが使用される場合、データに依存しない振動方式を、光学フリッカを見えるようにすることなくディスプレイ全体に適用することができる。
【0048】
本発明の第2の態様の第1の好適な実施例では、一組の振動パルスが、画像更新データ信号に関係なく、画像更新シーケンスの間のドウェル時間の間に、駆動波形に規則的な間隔で印加され、一方、グレースケール駆動パルスの前に印加される「駆動」振動パルス、即ち、図7に示す画像更新シーケンスの一部を形成するパルスは、そのままである。これは、図7に示す4つのランダムなグレースケール遷移用の代表的な駆動波形を表す図8に概略的に示されている。図8には、異なるグレースケール遷移の後のドウェル時間tn、tn+1、tn+2が互いに異なっていることも概略的に示されている。
【0049】
追加の規則的な振動パルスは、これらのドウェル時間の影響を低減する効果、およびグレースケール精度(画質)を向上させる効果を有する。これらの規則的な振動パルスを追加すると、図7を基準にして記載された駆動方法に比べて、全画像更新時間を増加させること無く画像残留がさらに低減するので、画質が更に向上する。言い換えると、ドウェル時間によって生じる悪影響が低減され、グレーレベル精度が高まり、画像残留が低減する。
【0050】
隣接する2つの一連の振動パルスの間は、図8のtregular shakeで示されているように、一定の時間間隔であることが好ましいが、これらの規則的な振動パルスは、画像更新シーケンスに対してランダムに位置させる/タイミングを取ることができる。したがって、結果として、一連の振動パルスは、画像更新シーケンスの前又は後に発生させることができ、時には画像更新シーケンスの中に位置させてもよい。
【0051】
規則的な振動パルスは一般的には対称であり、例えば短いパルスが使用される場合は、光学的な乱れがあったとしても本質的にはほんの僅かしか生じさせないので、グレースケール精度は、規則的な振動パルスのタイミングの影響を受けにくい。規則的な振動がグレースケール精度に悪影響を与える可能性を低減する目的で、画像を更新させている間は規則的に振動させることができないようにし、次いで、画像更新が完了した後に規則的に振動させることができるようにすることができる。
【0052】
本発明の第2の態様の別の実施例では、画像更新データ信号に関らず、図8を基準にして記載した実施例のように、追加の組の規則的な振動パルスをディスプレイに印加することができ、一方、図7および図8に示された波形の各グレースケール駆動パルスの前に印加される「駆動」振動パルスは、図7および図8に示されているランダムな4つのグレースケール遷移の代表的な駆動波形を表す図9に概略的に示されているように、省略される。
【0053】
前と同じように、規則的な振動パルスを追加すると、画像残留が低減するので画質が向上し、全画像更新時間は(ほとんど)増加しない。同様に、隣接する2つの一連の振動パルスの間は、図8のtregular shakeで示されているように、一定の時間間隔であることが好ましいが、これらの規則的な振動パルスは、画像更新シーケンスに対してランダムに位置させる/タイミングを取ることができる。したがって、結果として、一連の振動パルスは、画像更新シーケンスの前又は後に発生させることができ、時には画像更新シーケンスの中に位置させてもよい。
【0054】
「駆動」振動パルスを省略すると、全画像更新時間は短くなるが、規則的な振動パルスのタイミングは一般的には画像更新シーケンスとは関連していないので、ドウェルの影響は完全には除去できない。これは、ドウェル時間依存性のより少ない電気泳動材料を使用することによって克服できる。
【0055】
本発明の1つの好適な実施例では、規則的な振動パルスのタイミングは、多数の規則的な振動パルスが駆動波形に印加され、これによって画質が向上するようにされている。
【0056】
したがって、要約すると、本発明の第2の態様によれば、規則的な振動パルスを電気泳動ディスプレイの駆動波形に印加すると、画質がかなり向上し、および/又は画像更新時間が短くなるが、従来の方式と比べると消費電力が増加する。この問題を克服し、消費電力を低減するために、特に規則的な振動パルスに関して、振動パルスの繰返しの間に画素電極をチャージおよびディスチャージするのに使用される電力を低減するように既知の電荷リサイクル技術を適用することができる。別の選択肢は、例えば、規則的な振動を行う場合と規則的な振動を行わない場合との間で表示装置を切り替えることができるような専用スイッチを使用して、表示装置に複数の使用モードを備えることである。例えば、装置がネットワーク電源に接続されているときに規則的な振動モードを可能とし、装置が携帯装置として使用されており、したがって装置自体の電源に頼っているときには、規則的な振動モードを使用不可にすることができる。
【0057】
本発明は、パッシブマトリックス電気泳動ディスプレイおよびアクティブマトリックス電気泳動ディスプレイで実現できることに注意すべきである。また、本発明は、タイプライターモードのあるシングルウインドウディスプレイとマルチプルウインドウディスプレイとの両方に適用可能である。本発明は、カラー双安定ディスプレイにも適用可能である。また、電極構造は限定されない。例えば、トップ/ボトム電極構造、ハニカム構造、又はIPS(in-plane-switching)とVS(vertical switching)との他の組合せを使用することができる。
【0058】
本発明の実施例はほんの一例として上述されており、当業者は、添付された特許請求の範囲によって規定されている本発明の範囲を逸脱すること無く、上記の実施例を修正および変形できることが明らかである。用語「有する」は、請求項に列挙された以外の構成要素又はステップの存在を排除するものではない。用語が単数であることは、複数の存在を排除するものではない。本発明は、幾つかの個別の素子を有するハードウェアによって、および適切にプログラムされたコンピュータによって、実現することができる。幾つかの手段を列挙している装置の請求項では、これらの手段の一部を同じハードウェアに含めることができる。これらの手段が相互に異なる独立項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを有利に使用することができないことを示すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】4つの光学状態、即ち、白(W)、ライトグレー(G2)、ダークグレー(G1)、および黒(B)を有する電気泳動ディスプレイのサイクリックレール安定化駆動方法(cyclic rail-stabilized driving method)を概略的に示す図である。
【図2a】既知の方法によって発生する駆動波形を概略的に示す図である。
【図2b】本発明の第1の好適な実施例による方法によって発生する駆動波形を概略的に示す図である。
【図3】本発明の第2の好適な実施例による方法によって発生する駆動波形を概略的に示す図である。
【図4】本発明の第3の好適な実施例による方法によって発生する駆動波形を、既知の方法によって発生する駆動波形と比較して、概略的に示す図である。
【図5】本発明の第4の好適な実施例による方法によって発生する駆動波形を概略的に示す図である。
【図6】本発明の第5の好適な実施例による方法によって発生する駆動波形を概略的に示す図である。
【図7】既知の方法によって発生する駆動波形を概略的に示す図である。
【図8】本発明の第6の好適な実施例による方法によって発生する駆動波形を概略的に示す図である。
【図9】本発明の第7の好適な実施例による方法によって発生する駆動波形を概略的に示す図である。
【図10】本発明の好適な実施例による表示パネルの概略正面図である。
【図11】図10のII−IIに沿う概略断面図である。
【図12】従来技術による電圧変調された遷移マトリックス(transition matrix)を使用した典型的なグレースケール遷移シーケンスの一部を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は電気泳動表示装置に関する。この電気泳動表示装置は、流体中に帯電粒子を有する電気泳動材料と、複数の画素と、前記各画素に関連し電位差を受け取る第1の電極および第2の電極と、を有しており、前記帯電粒子は、前記第1の電極と前記第2の電極との間の複数の位置のうちの1つの位置を占めることができ、前記電気泳動表示装置は、画像を表示するため前記帯電粒子が前記複数の位置のうちの1つの位置を占めることを可能にする駆動波形の形で、一連の画像電位差を供給する駆動手段を有している。
【背景技術】
【0002】
電気泳動ディスプレイは、流体中の帯電粒子からなる電気泳動媒体と、マトリックス状に配された複数の画素(ピクセル)と、各画素に関連する第1および第2の電極と、画像を表示するため、印加された電位差についての値と持続時間とに依存して、帯電粒子が電極と電極との間の位置を占めるように電位差を各画素の電極に印加する電圧ドライバと、を有する。
【0003】
更に詳細にいうと、電気泳動表示装置は、交差するデータ電極と選択電極との交差部に関連する画素のマトリックスを有するマトリックス・ディスプレイである。グレーレベル、即ち画素の着色レベルは、画素に特定のレベルの駆動電圧が与えられる時間に依存する。駆動電圧の極性に依存して、画素の光学状態は、その現在の光学状態から2つの極限状態のうちの一方の状態に向かって連続的に変化し、例えば、一方の極性の帯電粒子の全てが、画素の上部又は底部に近づく。グレースケールは、画素に電圧が与えられる時間を制御することによって得られる。
【0004】
通常、全ての画素は、適切な電圧を選択電極に供給することによってラインごとに選択される。データは、データ電極を介して、選択されたラインに関連する画素に並列に供給される。ディスプレイがアクティブマトリックス・ディスプレイである場合、選択電極が、データが画素に順に供給されるようにするための、TFT、MIM、ダイオードなどのアクティブ素子を活性化する。マトリックス・ディスプレイの全ての画素を一回選択するのに必要な時間は、サブフレーム期間と呼ばれる。特定の画素は、実現する必要がある光学状態の変化に依存して、サブフレーム期間全体の間に、正の駆動電圧、負の駆動電圧、又はゼロの駆動電圧を受け取る。光学状態を変化させる必要がない場合、ゼロの駆動電圧が画素に印加される。
【0005】
図10および図11は、第1の基板8と、第2の対向基板9と、複数の画素2と、を有する表示パネル1の典型的な一実施例を示す。一実施例では、画素2は、略直線に沿って並ぶ二次元構造に配されている場合がある。別の実施例では、画素2は、ハニカム配列の場合がある。
【0006】
基板8、9の間には、流体中に帯電粒子6を有する電気泳動媒体5が存在する。第1および第2の電極3、4は、電位差を受け取る各画素2に関連している。図11に示す構造では、第1の基板8は、各画素2に対して第1の電極3を有し、第2の基板9は、各画素2に対して第2の電極4を有している。帯電粒子6は、電極3、4の近くの極位置と、電極3、4の間の中間位置と、を占めることができる。各画素2は、電極3、4の間の帯電粒子6の位置によって決定される外観を有する。
【0007】
電気泳動媒体は、それ自体、例えば、US5,961,804号、US6,120,839号、およびUS6,130,774号から既知であり、例えば、EInk社から入手できる。一例として、電気泳動媒体5は、白の液体中に、負に帯電した黒の粒子6を有する場合がある。電極3,4に印加される電位差(例えば、15V)によって、帯電粒子6が第1の極位置に、即ち第1の電極3の近くに存在するとき、画素2が第2の基板9の側から観察される場合の画素2の外観は例えば白である。
【0008】
電極3,4に印加される電位差(例えば、−15V)によって、帯電粒子6が第2の極位置に、即ち第2の電極4の近くに存在するとき、画素の外観は黒である。帯電粒子6が複数の中間位置のうちの1つの中間位置に、即ち電極3、4の間に存在するとき、画素2は、複数の中間の外観(白と黒との間のグレーレベルである、例えば、ライトグレー、ミドルグレー、およびダークグレー)のうちの一つの外観を有する。
【0009】
図12は、パルス幅変調された遷移マトリックス(transition matrix)を使用する典型的な従来のランダムグレースケール遷移シーケンスの一部を示す。画像状態nと画像状態n+1との間には、ユーザに依存して数秒から数分までとすることができる利用可能な特定の時間間隔(ドウェル時間)が常に存在する。
【0010】
一般的には、グレースケール(即ち、中間カラー状態)を生成するために、複数のサブフレームを有するフレーム期間が規定され、何個のサブフレームの間は画素がどの駆動電圧(正、ゼロ、又は負)を受け取るべきかを画素ごとに選択することによって、画像のグレースケールを再現できる。通常、サブフレームは同じ持続期間であるが、必要であれば、異なるように選択できる。言い換えると、典型的には、固定値の駆動電圧(正、負、又はゼロ)と可変持続時間の駆動期間とを用いて、グレースケールを発生する。あるいは、大きさが可変の駆動電圧を印加してグレーレベルを発生させることもできるだろう。
【0011】
電気泳動ホイルを使用するディスプレイでは、ITO電極とITO電極との間に多くの絶縁層が存在し、これら層は電位差により帯電する。絶縁層に存在する電荷は、絶縁層に初めに存在する電荷と、その後に生じる電位差履歴と、によって決定される。したがって、粒子の位置は、印加されている電位差だけでなく電位差履歴にも依存する。結果として、かなりの画像残留が起こり得ることになり、画像データに従って続いて表示される画像は、画像データを正確に表現した画像とはかなり異なる。
【0012】
上記のように、電気泳動ディスプレイのグレーレベルは、一般的には、電圧パルスを特定の時間の間印加することによって、作り出される。グレーレベルは、画像履歴、ドウェル時間、温度、湿気、電気泳動ホイルの横方向の不均質性などの影響を強く受ける。履歴を完全に考慮するために、遷移マトリックス(transition matrix)に基づく駆動方式が提案されている。斯かる装置では、マトリックス・ルックアップテーブル(LUT)が必要であり、これによって、異なる画像履歴のグレースケール遷移用の駆動信号が決定される。しかし、駆動電圧レベルの選択は一般的にグレー値の要求値に基づいているので、画素が或るグレーレベルから別のグレーレベルに駆動された後の残留dc電圧の蓄積は避けられない。特に複数回のグレースケール遷移後の集積した後の残留dc電圧は、深刻な画像残留をもたらし、表示装置の寿命を短くする場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、電気泳動ディスプレイの画像残留を低減するために、上記の問題を克服する方法および装置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、表示装置が提供される。この表示装置は、
流体中に帯電粒子を有する電気泳動材料と、
複数の画素と、
上記各画素に関連し電位差を受け取る第1の電極および第2の電極と、
を有し、上記帯電粒子は、上記第1の電極と上記第2の電極との間の複数の位置のうちの1つの位置を占めることができ、
上記表示装置は、画像を表示するため上記帯電粒子が上記複数の位置のうちの1つの位置を占めることを可能にする駆動波形の形で、一連の画像電位差を供給する駆動手段を有し、上記駆動波形は、画像電位差を含む一連の画像更新信号からなり、上記画像更新信号はドウェル時間で分離され、1つ以上の振動パルスが上記ドウェル時間の間に発生する。
【0015】
また、本発明によれば、表示装置を駆動する方法が提供される。上記表示装置は、
流体中に帯電粒子を有する電気泳動材料と、
複数の画素と、
上記各画素に関連し電位差を受け取る第1の電極および第2の電極と、
を有し、上記帯電粒子は、上記第1の電極と上記第2の電極との間の複数の位置のうちの一つの位置を占めることができ、
上記表示装置は、画像を表示するため上記帯電粒子が上記複数の位置のうちの一つの位置を占めることを可能にする駆動波形の形で、一連の画像電位差を供給する駆動手段を有し、上記駆動波形は、画像電位差を含む一連の画像更新信号からなり、上記画像更新信号はドウェル時間によって分離されており、上記方法は、上記ドウェル時間の間に一つ以上の振動パルスを発生させるステップを含んでいる。
【0016】
更に、本発明によれば、表示装置を駆動する駆動装置が提供される。上記表示装置は、
流体中に帯電粒子を有する電気泳動材料と、
複数の画素と、
上記各画素に関連し電位差を受け取る第1の電極および第2の電極と、
を有し、上記帯電粒子は、上記第1の電極と上記第2の電極との間の複数の位置のうちの一つの位置を占めることができ、
上記駆動装置は、画像を表示するため上記帯電粒子が上記複数の位置のうちの一つの位置を占めることを可能にする駆動波形の形で、一連の画像電位差を供給し、上記駆動波形は、画像電位差を含む一連の画像更新信号からなり、上記画像更新信号はドウェル時間によって分離されており、上記駆動装置は、上記ドウェル時間の間に一つ以上の振動パルスを発生させる手段を更に有している。
【0017】
一態様では、上記1つ以上の振動パルスは、上記各画像更新信号の後に発生する、好ましくは、上記各画像更新信号の実質的に直後に発生する。
【0018】
上記各画像更新信号は、リセットパルスと、グレースケール駆動パルスと、からなることが好ましい。1つ以上の振動パルスは、画像更新信号の一部として、リセットパルスとグレースケール駆動パルスとの間に発生する、および/又は、画像シーケンスの一部として、リセットパルスの実質的に直前に発生してもよい。
【0019】
本発明の一つの好ましい実施例では、上記各画像更新信号の後に一連の振動パルスが発生し、(電圧の大きさ)と(時間)との積として規定される一連の振動パルスの振動パルスエネルギーは、一連の振動パルスの最初の数個のパルスのエネルギーが同じ一連の振動パルスの最後の数個のパルスのエネルギーよりも大きいように、この一連の振動パルスの間に次第に減少する。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、上記1つ以上の振動パルスは規則的な振動パルスを有しており、この規則的な振動パルスは、上記駆動波形に所定の間隔で、好ましくは実質的に等距離の間隔で、発生する。
【0021】
各画像更新信号は、1つ以上の振動パルスの直後であってもよい。画像更新シーケンスの間に1つ以上の規則的な振動パルスの発生を一時的に停止する手段を備えることができる。
【0022】
消費電力を低減するように電荷リサイクル手段を備えてもよい。あるいは、又はこれに加えて、規則的な振動パルスの発生を可能にする第1のモードでの消費電力に比べて、上記規則的な振動パルスの発生を不可にする第2のモードでの消費電力が低減するように、上記表示装置を少なくとも2つのモードのうちの一つのモードで動作するように構成してもよい。
【0023】
本明細書において、用語「振動パルス」は、一つの短い電圧パルス、又は交番する一連の短い正および負の電圧パルスに言及するものとして使用されている。1個の振動パルスは、2つの極位置のうちの一方の極位置に存在する粒子を解放するには十分なエネルギー値ではあるが、2つの電極の間において粒子を一方の極位置から他方の極位置に移動させるには不十分なエネルギー値を表す単一極性電圧パルスである。単一振動パルスが使用される場合、その極性は次の駆動波形の最初のパルスとは反対の極性であることが好ましい。
【0024】
本発明のこれらのおよび他の態様は、以下に記載される実施例から明らかであり、この実施例を基準にして説明されている。
【0025】
本発明の実施例はほんの一例として記載されており、添付図面を基準にして記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
先に詳細に説明されているように、電気泳動ディスプレイのグレーレベルは、一般的には、電圧パルスを対応する画素の電極に特定の時間の間印加することによって、作り出される。電気泳動ディスプレイのグレースケールの精度は、画像履歴、ドウェル時間、温度、湿気、電気泳動ホイルの横方向の不均一性などによって強く影響を受ける。
【0027】
正確なグレーレベルは、いわゆるレール安定化方式を用いることによって実現できることが証明されている。これは、画像シーケンス自体に関係なく、2つの極光学状態、即ち「レール」、のうちの一つの状態(例えば、黒又は白)を介して、グレーレベルが常に実現されることを意味している。
【0028】
実質的にdc−バランスの取れた駆動を実現するために、近年、サイクリックレール安定化グレースケール(cyclic rail-stabilized greyscale)の考えが提案されており、これは、図面のうちの図1に概略的に示されている。この方法では、上記のように、「インク」は、図1の矢印で示されているように、画像シーケンスに関係なく、2つの極光学状態、例えば完全な黒又は完全な白(即ち、2つのレール)の間で、常に同じ光学経路をたどらなければならない。図示された例では、ディスプレイは4つの異なる状態、即ち、黒(B)、ダークグレー(G1)、ライトグレー(G2)、および白(W)、を有している。
【0029】
近年、電気泳動ディスプレイを駆動するために、単一オーバーリセット電圧パルスを使用した駆動方法が提案されており、この駆動方法が、黒(B)、ダークグレー(G1)、ライトグレー(G2)、および白(W)から、ダークグレーへの画像遷移について、図2aに概略的に示されている。一連のパルスは、通常4つの部分、即ち、第1の一連の振動パルス、リセットパルス、第2の一連の振動パルス、およびグレースケール駆動パルス、からなり、これにより、第2の一連の振動パルスは、リセットパルスとグレースケール駆動パルスとの間に発生する。
【0030】
リセットパルスは、「インク」を完全な黒又は白から反対のレール状態に切り替えるのに必要な最小時間より長く、これによって、前の画像は、新しい画像更新の間に、完全に消去される。画像更新シーケンスに関係なく、ドウェル時間および画像履歴効果を低減するのに、第1の一連の振動パルスと第2の一連の振動パルスとの両方が要求され、これによって、画像残留が緩和され、グレースケール精度が向上する。
【0031】
しかし、画像更新時間が、例えば1秒以下に限られる場合、画像残留は依然として受け入れることができないくらいに目に見える場合があり、斯かる画像残留は、もっと長いリセットパルスおよび/又はもっと多くの振動パルスを備えることによって低減できるが、これは、画像更新時間を必要なレベル以上に明らかに長くしてしまう。
【0032】
したがって、本発明の第1の態様によれば、少なくとも4つのグレースケールレベル(以下、「2ビットグレースケール」と呼ぶ)を有する電気泳動ディスプレイの駆動方法であって、振動パルスが各グレースケール駆動パルスのぼほ直後に供給される駆動方法が提案されている。したがって、好ましい方法では、一連の駆動パルスは、やはり4つの部分、即ち、図2aを基準にして記載されているように、第1の一連の振動パルス、リセットパルス、第2の一連の振動パルス(リセットパルスとグレースケール駆動パルスとの間)、およびグレースケール駆動パルス、からなるが、グレースケール駆動パルスの直後のドウェル時間の間に第3の一連の振動パルスが追加される。第3の一連の振動パルスに含まれるエネルギーは、粒子が比較的短い距離を移動するのに十分なエネルギーではあるが、目に見える光学的フリッカが防止されるように、粒子がかなりの距離に渡って移動するには不十分なエネルギーとしなければならないことは、当業者に明らかである。
【0033】
第3の一連の振動パルスは、例えば、画素に画像更新シーケンスとは独立して電圧が印加されるハードウェア振動方式(hardware shaking)によって、ディスプレイ全体に同時に印加されることが有利である。このようにして、全画像更新時間を長くせずに、画像残留を低減させることができる。
【0034】
もっと詳細には、図面のうちの図2bを参照すると、本発明の好適な一実施例では、電気泳動ディスプレイは、2つのレール状態と、少なくとも2ビットグレーレベル(即ち、黒(B)、ダークグレー(G1)、ライトグレー(G2)、および白(W))と、を有している。W、G2、G1、およびBからG1への4つの遷移は、上記のオーバリセット技術がディスプレイをリセットするのに使用される場合は2つのタイプのパルスシーケンスを使用して実現され、長いシーケンスはG2からW又はG1への遷移に対して必要であり、短いシーケンスはG1又はBからG1への遷移に対して使用される。
【0035】
図示された例では、全てのタイプの画像遷移に対して、各シーケンスは、5つの部分からなり、即ち、既に述べたように、第1の一連の振動パルス、リセットパルス、第2の一連の振動パルス(リセットパルスとグレースケール駆動パルスとの間)、およびグレースケール駆動パルス、を有する画像更新シーケンスと、画像更新の完了後、即ち、画像更新の直後のドウェル時間の間、に発生する第3の一連の振動パルスを有する第5の部分と、からなる。画像更新時間は、上記の最初の4つの部分のシーケンスの影響しか受けないので、第3の一連の振動パルスの影響はユーザには目に見えないはずであり、第3の一連の振動パルスの追加によって悪い影響は受けない。したがって、要約すれば、図面のうちの図2bを基準にして記載された実施例では、(最後の組の振動パルスは観察者にはほとんど見えないので)画像更新時間を増加させることなく、画像残留が少なくなる。
【0036】
含まれるエネルギーは比較的小さい距離を粒子が移動するには十分なエネルギーであるが、かなりの距離を粒子が移動するには不十分なエネルギーであるように、振動パルスのパルス時間又は振幅を適切に制御することによって、第3の一連の振動パルスによって生じ得る目に見える光学フリッカを抑制することが重要である。
【0037】
本発明の第2の好適な実施例によれば、図3に概略的に示されているように、図2bを基準にして記載された好適な実施例のように画像更新シーケンスの直後に第3の一連の振動パルスが発生するが、この第3の一連の振動パルスは、ここでは、第3の一連の振動パルスの最初のパルスに含まれるエネルギーが第3の一連の振動パルスの最後のパルスに含まれるエネルギーよりも大きいように、可変振幅又は可変パルス長時間を有している。したがって、図面のうちの図3を基準にして記載された本発明の好適な実施例では、(最後の振動パルスの視認性が、そのエネルギーの減少によって、図2bに示された駆動波形と比較して更に低減されるので)画像更新時間を増加させずに、画像残留が低減される。
【0038】
本発明の第3の好適な実施例によれば、図面のうちの図4に概略的に示されているように(右側)、各画像更新シーケンスに使用されるリセットパルスの長さは可変であり、この長さは、画像遷移を生じさせるためにインクが垂直方向に移動する必要がある距離に比例する。明確にするため、図4の左側の図に、既知の駆動方法によって発生する類似の駆動波形が示されている。
【0039】
一例として、画像更新データがパルス幅変調(PWM)される場合に、白から黒への遷移を生じさせるのに全パルス幅(FPW)が必要であるが、G2から黒への遷移を生じさせるのに2/3FPWしか必要とせず、G1から黒になるのに1/3FPWしか必要としない状況を考える。したがって、白から黒への遷移用の画像更新シーケンスでは全リセットパルスが使用され、G2から黒への遷移用の画像更新シーケンスではこのパルス長の2/3が使用され、G1から黒への遷移用の画像更新シーケンスではこのパルス長の1/3が使用され、黒からG1への遷移に対してはリセットパルスは使用されない、即ち、「オーバリセット」技術は使用されない。これらの波形は、例えば、次の画像に必要なパルスのエネルギーインパルス(時間×電圧)を決定するのに前の画像が考慮される遷移マトリックス(transition matrix)に基づいた方法が使用されるとき、使用可能である。更に、これらの波形は、ディスプレイで使用される電気泳動材料が画像履歴および/又はドウェル時間の影響を受けないときに使用可能である。
【0040】
図示されているように、第3の一連の振動パルスは、波形において、グレースケール駆動パルス(又は画像更新シーケンスの完了)の直後のドウェル時間の間に加えられる。既に述べたように、画像更新時間は、本発明の第1の好適な実施例を基準にして記載したように画像更新シーケンスの影響のみを受けるので、第3の一連の振動パルスを画像更新シーケンスの直後のドウェル時間の間に追加することによって悪い影響は受けない。
【0041】
前と同様に、含まれるエネルギーは比較的小さい距離を粒子が移動するには十分であるが、かなりの距離を粒子が移動するには不十分であるように、振動パルスのパルス時間又は振幅を適切に制御することによって、第3の一連の振動パルスによって生じ得る目に見える光学フリッカを抑制することが重要である。既に述べたように、第3の一連の振動パルスは、画像更新シーケンスにかかわらず、例えば、ハードウェア振動方式によって、ディスプレイ全体に同時に印加されることが有利である。このようにして、全画像更新時間を増加させずに、画像残留を低減することができる。
【0042】
図面のうちの図5を参照すると、本発明の第4の好適な実施例によって発生する駆動波形は、図面のうちの図4を基準にして記載され、且つ図4によって概略的に示された駆動波形と、多くの点で同じである。しかし、この場合、第3の一連の振動パルスとして異なるタイプの振動パルスが使用されており、この一連の振動パルスにおいては振幅又はパルス長時間が減少する、即ち、一連の振動パルスの最初のパルスに含まれるエネルギーは、本発明の第2の好適な実施例を基準にして記載されているように、この一連の振動パルスの最後のパルスのエネルギーよりも大きい。
【0043】
実際、図4および図5の実施例に関する全画像更新時間は、図2bおよび図3を基準にして記載された実施例に比べて、更に短くすることができる。
【0044】
図面のうちの図6を参照すると、本発明の第5の好適な実施例によって発生する駆動波形は、図5を基準にして記載され、且つ図5によって概略的に示された駆動波形と、多くの点で同じである。しかし、この場合、第4の一連の振動パルスは、第1の一連の振動パルスとリセットパルスとの間に発生する。これらの追加の振動パルスを使うことによって、ドウェル時間および/又は画像履歴の影響をさらに低減することができ、その結果として得られる画像は、従来の方法と比較して、画像残留が更に低減され画質が向上したものである。第4の一連の振動パルスは、第1、第2、および第3の一連の振動パルスとは異なる形式を有する。この実施例により、画像残留を更に低減することができる。
【0045】
本発明の第2の態様によれば、別の駆動方法が提案されている。上記から明らかなように、電気泳動ディスプレイの駆動波形に振動パルスを含むことは、(電圧変調とパルス幅変調との両方において)電気泳動ディスプレイの全ての駆動方法に好ましいとはいえないにしても、ほとんどの駆動方法に好ましいことである。振動パルスは、グレースケールの精度を向上させ、画像残留を取り除き、ドウェル時間を考慮しており、この振動パルスは適切に実行されるのであれば、光学的にはユーザに見えない。
【0046】
画質は確かに重要であるが、特に、或るグレースケール画像から別のグレースケール画像に変化するときに、画像更新時間を最小にする必要もある。現在のところ、使用される駆動方式のディテールに依存して、600msec〜800msecの画像更新時間が達成可能である。しかし、例えば、画像更新シーケンスの間において、各グレースケール遷移を生じさせるのに必要な各グレースケール駆動パルスの直前に、一連の振動パルスが印加されている図7に示されるように、全ての駆動方式において、画像更新時間のかなりの部分は、振動させることに費やされている。図示された波形の振動パルスは、画像更新シーケンスと一体の部分であり、最良の画質を達成するためには、この振動パルスは、理想的には、できるだけ長く、例えば、少なくとも80msec、もっと典型的には、160msec程度にすべきである。したがって、振動させることにより、全画像更新時間がかなり延びる。言い換えると、既知のシステムでは、画像更新時間を短くするためには、振動させる時間を短くしなければならないが、これは画質に悪影響を与えるので、画質と画像更新時間のどちらを採るかという兼ね合いがある。
【0047】
したがって、本発明の第2の態様によれば、画像更新信号とは無関係に、駆動波形において各画像更新シーケンスの間のドウェル時間の間に振動パルスを発生させることが提案されている。このやり方では、画質はかなり改善され、および/又は、画像更新時間を短くすることができる。例えば、短いパルス、列反転方式などを使用して、先に説明したように、振動がユーザに光学的に見えないようにすることができる。比較的短い振動パルスが使用される場合、データに依存しない振動方式を、光学フリッカを見えるようにすることなくディスプレイ全体に適用することができる。
【0048】
本発明の第2の態様の第1の好適な実施例では、一組の振動パルスが、画像更新データ信号に関係なく、画像更新シーケンスの間のドウェル時間の間に、駆動波形に規則的な間隔で印加され、一方、グレースケール駆動パルスの前に印加される「駆動」振動パルス、即ち、図7に示す画像更新シーケンスの一部を形成するパルスは、そのままである。これは、図7に示す4つのランダムなグレースケール遷移用の代表的な駆動波形を表す図8に概略的に示されている。図8には、異なるグレースケール遷移の後のドウェル時間tn、tn+1、tn+2が互いに異なっていることも概略的に示されている。
【0049】
追加の規則的な振動パルスは、これらのドウェル時間の影響を低減する効果、およびグレースケール精度(画質)を向上させる効果を有する。これらの規則的な振動パルスを追加すると、図7を基準にして記載された駆動方法に比べて、全画像更新時間を増加させること無く画像残留がさらに低減するので、画質が更に向上する。言い換えると、ドウェル時間によって生じる悪影響が低減され、グレーレベル精度が高まり、画像残留が低減する。
【0050】
隣接する2つの一連の振動パルスの間は、図8のtregular shakeで示されているように、一定の時間間隔であることが好ましいが、これらの規則的な振動パルスは、画像更新シーケンスに対してランダムに位置させる/タイミングを取ることができる。したがって、結果として、一連の振動パルスは、画像更新シーケンスの前又は後に発生させることができ、時には画像更新シーケンスの中に位置させてもよい。
【0051】
規則的な振動パルスは一般的には対称であり、例えば短いパルスが使用される場合は、光学的な乱れがあったとしても本質的にはほんの僅かしか生じさせないので、グレースケール精度は、規則的な振動パルスのタイミングの影響を受けにくい。規則的な振動がグレースケール精度に悪影響を与える可能性を低減する目的で、画像を更新させている間は規則的に振動させることができないようにし、次いで、画像更新が完了した後に規則的に振動させることができるようにすることができる。
【0052】
本発明の第2の態様の別の実施例では、画像更新データ信号に関らず、図8を基準にして記載した実施例のように、追加の組の規則的な振動パルスをディスプレイに印加することができ、一方、図7および図8に示された波形の各グレースケール駆動パルスの前に印加される「駆動」振動パルスは、図7および図8に示されているランダムな4つのグレースケール遷移の代表的な駆動波形を表す図9に概略的に示されているように、省略される。
【0053】
前と同じように、規則的な振動パルスを追加すると、画像残留が低減するので画質が向上し、全画像更新時間は(ほとんど)増加しない。同様に、隣接する2つの一連の振動パルスの間は、図8のtregular shakeで示されているように、一定の時間間隔であることが好ましいが、これらの規則的な振動パルスは、画像更新シーケンスに対してランダムに位置させる/タイミングを取ることができる。したがって、結果として、一連の振動パルスは、画像更新シーケンスの前又は後に発生させることができ、時には画像更新シーケンスの中に位置させてもよい。
【0054】
「駆動」振動パルスを省略すると、全画像更新時間は短くなるが、規則的な振動パルスのタイミングは一般的には画像更新シーケンスとは関連していないので、ドウェルの影響は完全には除去できない。これは、ドウェル時間依存性のより少ない電気泳動材料を使用することによって克服できる。
【0055】
本発明の1つの好適な実施例では、規則的な振動パルスのタイミングは、多数の規則的な振動パルスが駆動波形に印加され、これによって画質が向上するようにされている。
【0056】
したがって、要約すると、本発明の第2の態様によれば、規則的な振動パルスを電気泳動ディスプレイの駆動波形に印加すると、画質がかなり向上し、および/又は画像更新時間が短くなるが、従来の方式と比べると消費電力が増加する。この問題を克服し、消費電力を低減するために、特に規則的な振動パルスに関して、振動パルスの繰返しの間に画素電極をチャージおよびディスチャージするのに使用される電力を低減するように既知の電荷リサイクル技術を適用することができる。別の選択肢は、例えば、規則的な振動を行う場合と規則的な振動を行わない場合との間で表示装置を切り替えることができるような専用スイッチを使用して、表示装置に複数の使用モードを備えることである。例えば、装置がネットワーク電源に接続されているときに規則的な振動モードを可能とし、装置が携帯装置として使用されており、したがって装置自体の電源に頼っているときには、規則的な振動モードを使用不可にすることができる。
【0057】
本発明は、パッシブマトリックス電気泳動ディスプレイおよびアクティブマトリックス電気泳動ディスプレイで実現できることに注意すべきである。また、本発明は、タイプライターモードのあるシングルウインドウディスプレイとマルチプルウインドウディスプレイとの両方に適用可能である。本発明は、カラー双安定ディスプレイにも適用可能である。また、電極構造は限定されない。例えば、トップ/ボトム電極構造、ハニカム構造、又はIPS(in-plane-switching)とVS(vertical switching)との他の組合せを使用することができる。
【0058】
本発明の実施例はほんの一例として上述されており、当業者は、添付された特許請求の範囲によって規定されている本発明の範囲を逸脱すること無く、上記の実施例を修正および変形できることが明らかである。用語「有する」は、請求項に列挙された以外の構成要素又はステップの存在を排除するものではない。用語が単数であることは、複数の存在を排除するものではない。本発明は、幾つかの個別の素子を有するハードウェアによって、および適切にプログラムされたコンピュータによって、実現することができる。幾つかの手段を列挙している装置の請求項では、これらの手段の一部を同じハードウェアに含めることができる。これらの手段が相互に異なる独立項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを有利に使用することができないことを示すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】4つの光学状態、即ち、白(W)、ライトグレー(G2)、ダークグレー(G1)、および黒(B)を有する電気泳動ディスプレイのサイクリックレール安定化駆動方法(cyclic rail-stabilized driving method)を概略的に示す図である。
【図2a】既知の方法によって発生する駆動波形を概略的に示す図である。
【図2b】本発明の第1の好適な実施例による方法によって発生する駆動波形を概略的に示す図である。
【図3】本発明の第2の好適な実施例による方法によって発生する駆動波形を概略的に示す図である。
【図4】本発明の第3の好適な実施例による方法によって発生する駆動波形を、既知の方法によって発生する駆動波形と比較して、概略的に示す図である。
【図5】本発明の第4の好適な実施例による方法によって発生する駆動波形を概略的に示す図である。
【図6】本発明の第5の好適な実施例による方法によって発生する駆動波形を概略的に示す図である。
【図7】既知の方法によって発生する駆動波形を概略的に示す図である。
【図8】本発明の第6の好適な実施例による方法によって発生する駆動波形を概略的に示す図である。
【図9】本発明の第7の好適な実施例による方法によって発生する駆動波形を概略的に示す図である。
【図10】本発明の好適な実施例による表示パネルの概略正面図である。
【図11】図10のII−IIに沿う概略断面図である。
【図12】従来技術による電圧変調された遷移マトリックス(transition matrix)を使用した典型的なグレースケール遷移シーケンスの一部を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中に帯電粒子を有する電気泳動材料と、
複数の画素と、
前記各画素に関連し電位差を受け取る第1の電極および第2の電極と、
を有する表示装置であって、
前記帯電粒子は、前記第1の電極と前記第2の電極との間の複数の位置のうちの1つの位置を占めることができ、
前記表示装置は、画像を表示するため前記帯電粒子が前記複数の位置のうちの1つの位置を占めることを可能にする駆動波形の形で、一連の画像電位差を供給する駆動手段を有し、
前記駆動波形は、画像電位差を含む一連の画像更新信号からなり、前記画像更新信号はドウェル時間で分離され、1つ以上の振動パルスが前記ドウェル時間の間に発生する、表示装置。
【請求項2】
前記1つ以上の振動パルスは、前記各画像更新信号の後に発生する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記1つ以上のパルスは、前記各画像更新信号の実質的に直後に発生する、請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記各画像更新信号は、リセットパルスと、グレースケール駆動パルスと、を有する、請求項2又は3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記各画像更新信号は1つ以上の振動パルスを含む、請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記1つ以上の振動パルスは、前記各画像更新信号のリセットパルスの前に供給される、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記1つ以上の振動パルスは、前記各画像更新信号のリセットパルスとグレースケール駆動パルスとの間に供給される、請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記各画像更新信号の後に一連の振動パルスが発生し、前記一連の振動パルスのエネルギーは前記一連の振動パルスの間に次第に減少する、請求項2〜7のうちのいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記1つ以上の振動パルスは、前記駆動波形に所定の間隔で発生する規則的な振動パルスを有する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
前記所定の間隔は実質的に等距離である、請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記規則的な振動パルスを発生させるのに使用される電源内に電荷リサイクル手段を更に含む、請求項9又は10に記載の表示装置。
【請求項12】
前記規則的な振動パルスが画像更新シーケンスの間に発生するのを一時的に阻止し、前記画像更新シーケンスが完了した後に前記規則的な振動パルスの発生を再び始める手段を有する、請求項9〜11のうちのいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項13】
前記表示装置は少なくとも2つのモードのうちの1つのモードで動作し、前記表示装置は前記2つのモードの間で切り替える手段を更に有する、請求項9〜12のうちのいずれか一項に記載の表示素子。
【請求項14】
前記表示装置は、前記規則的な振動パルスの発生を可能にする第1のモードと、前記規則的な振動パルスの発生を不可にする第2のモードと、のうちの一方のモードで動作する、請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
表示装置を駆動する方法であって、
前記表示装置は、
流体中に帯電粒子を有する電気泳動材料と、
複数の画素と、
前記各画素に関連し電位差を受け取る第1の電極および第2の電極と、
を有し、
前記帯電粒子は、前記第1の電極と前記第2の電極との間の複数の位置のうちの一つの位置を占めることができ、
前記表示装置は、画像を表示するため前記帯電粒子が前記複数の位置のうちの一つの位置を占めることを可能にする駆動波形の形で、一連の画像電位差を供給する駆動手段を有し、
前記駆動波形は、画像電位差を含む一連の画像更新信号からなり、前記画像更新信号はドウェル時間によって分離されており、
前記方法は、前記ドウェル時間の間に一つ以上の振動パルスを発生させるステップを含む、方法。
【請求項16】
表示装置を駆動する駆動装置であって、前記表示装置は、
流体中に帯電粒子を有する電気泳動材料と、
複数の画素と、
前記各画素に関連し電位差を受け取る第1の電極および第2の電極と、
を有し、
前記帯電粒子は、前記第1の電極と前記第2の電極との間の複数の位置のうちの一つの位置を占めることができ、
前記駆動装置は、画像を表示するため前記帯電粒子が前記複数の位置のうちの一つの位置を占めることを可能にする駆動波形の形で、一連の画像電位差を供給し、
前記駆動波形は、画像電位差を含む一連の画像更新信号からなり、前記画像更新信号はドウェル時間によって分離されており、
前記駆動装置は、前記ドウェル時間の間に一つ以上の振動パルスを発生させる手段を更に有する、駆動装置。
【請求項1】
流体中に帯電粒子を有する電気泳動材料と、
複数の画素と、
前記各画素に関連し電位差を受け取る第1の電極および第2の電極と、
を有する表示装置であって、
前記帯電粒子は、前記第1の電極と前記第2の電極との間の複数の位置のうちの1つの位置を占めることができ、
前記表示装置は、画像を表示するため前記帯電粒子が前記複数の位置のうちの1つの位置を占めることを可能にする駆動波形の形で、一連の画像電位差を供給する駆動手段を有し、
前記駆動波形は、画像電位差を含む一連の画像更新信号からなり、前記画像更新信号はドウェル時間で分離され、1つ以上の振動パルスが前記ドウェル時間の間に発生する、表示装置。
【請求項2】
前記1つ以上の振動パルスは、前記各画像更新信号の後に発生する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記1つ以上のパルスは、前記各画像更新信号の実質的に直後に発生する、請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記各画像更新信号は、リセットパルスと、グレースケール駆動パルスと、を有する、請求項2又は3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記各画像更新信号は1つ以上の振動パルスを含む、請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記1つ以上の振動パルスは、前記各画像更新信号のリセットパルスの前に供給される、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記1つ以上の振動パルスは、前記各画像更新信号のリセットパルスとグレースケール駆動パルスとの間に供給される、請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記各画像更新信号の後に一連の振動パルスが発生し、前記一連の振動パルスのエネルギーは前記一連の振動パルスの間に次第に減少する、請求項2〜7のうちのいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記1つ以上の振動パルスは、前記駆動波形に所定の間隔で発生する規則的な振動パルスを有する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
前記所定の間隔は実質的に等距離である、請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記規則的な振動パルスを発生させるのに使用される電源内に電荷リサイクル手段を更に含む、請求項9又は10に記載の表示装置。
【請求項12】
前記規則的な振動パルスが画像更新シーケンスの間に発生するのを一時的に阻止し、前記画像更新シーケンスが完了した後に前記規則的な振動パルスの発生を再び始める手段を有する、請求項9〜11のうちのいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項13】
前記表示装置は少なくとも2つのモードのうちの1つのモードで動作し、前記表示装置は前記2つのモードの間で切り替える手段を更に有する、請求項9〜12のうちのいずれか一項に記載の表示素子。
【請求項14】
前記表示装置は、前記規則的な振動パルスの発生を可能にする第1のモードと、前記規則的な振動パルスの発生を不可にする第2のモードと、のうちの一方のモードで動作する、請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
表示装置を駆動する方法であって、
前記表示装置は、
流体中に帯電粒子を有する電気泳動材料と、
複数の画素と、
前記各画素に関連し電位差を受け取る第1の電極および第2の電極と、
を有し、
前記帯電粒子は、前記第1の電極と前記第2の電極との間の複数の位置のうちの一つの位置を占めることができ、
前記表示装置は、画像を表示するため前記帯電粒子が前記複数の位置のうちの一つの位置を占めることを可能にする駆動波形の形で、一連の画像電位差を供給する駆動手段を有し、
前記駆動波形は、画像電位差を含む一連の画像更新信号からなり、前記画像更新信号はドウェル時間によって分離されており、
前記方法は、前記ドウェル時間の間に一つ以上の振動パルスを発生させるステップを含む、方法。
【請求項16】
表示装置を駆動する駆動装置であって、前記表示装置は、
流体中に帯電粒子を有する電気泳動材料と、
複数の画素と、
前記各画素に関連し電位差を受け取る第1の電極および第2の電極と、
を有し、
前記帯電粒子は、前記第1の電極と前記第2の電極との間の複数の位置のうちの一つの位置を占めることができ、
前記駆動装置は、画像を表示するため前記帯電粒子が前記複数の位置のうちの一つの位置を占めることを可能にする駆動波形の形で、一連の画像電位差を供給し、
前記駆動波形は、画像電位差を含む一連の画像更新信号からなり、前記画像更新信号はドウェル時間によって分離されており、
前記駆動装置は、前記ドウェル時間の間に一つ以上の振動パルスを発生させる手段を更に有する、駆動装置。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−519045(P2007−519045A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550375(P2006−550375)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050086
【国際公開番号】WO2005/071650
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050086
【国際公開番号】WO2005/071650
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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