説明

電気泳動ディスプレイのグレースケールアドレス方式とモノクロアドレス方式との間の遷移

本発明は、グレースケール更新モード(502)とモノクロ更新モード(501)との間で切替可能な電気泳動ディスプレイに関する。モノクロ更新モード(501)は極画素状態のみ(例えば、黒および白)を定めるものであり、一方、グレースケール更新モード(502)は、中間グレースケール画素状態も定めるものである。本発明によれば、グレースケール更新モード(502)からモノクロ更新モード(501)に切り替えるときに、適切に選択された遷移信号(504)が印加される。遷移信号(504)は、グレースケール更新モード(502)とモノクロ更新モード(501)との違いにより各画素に生じ得る残留DCレベルを低減する役割をする駆動パルスを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動ディスプレイ、特に、グレースケール駆動方式とモノクロ駆動方式との間の遷移を行うディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動ディスプレイは、例えばUS3612758号により、ずっと以前から知られている。電気泳動ディスプレイの基本原理は、ディスプレイにカプセル化された電気泳動媒体の外観が電界によって制御可能なことである。この目的のため、電気泳動媒体は、典型的には、液体又は空気などの流体に含まれる第1の光学的外観(例えば、黒)を有する電気的に帯電した粒子を有しており、この流体は第1の光学的外観とは異なる第2の光学的外観(例えば、白)を有している。あるいは、この電気泳動媒体は透明であってもよく、色が異なり電荷が反対である異なる2つのタイプの粒子を有していてもよい。
【0003】
電気泳動ディスプレイは典型的には複数の画素を有しており、各画素は電極構造によって与えられる電界により別々に制御可能である。したがって、帯電粒子は、可視位置と、非可視位置と、おそらく中間半可視位置と、の間を、電界によって移動可能である。これによって、電気泳動ディスプレイの外観が制御可能である。粒子の非可視位置は、例えば、液体の底又はブラックマスクの後ろとすることができる。
【0004】
電気泳動ディスプレイのごく最近の設計が、Eink社によって、例えばWO99/53373号に記載されている。電気泳動媒体は、それ自体は、US5961804号、US6120839号、およびUS6130774号から既知であり、例えば、EInk社から入手できる。
【0005】
電気泳動ディスプレイのグレースケール又は中間光学状態は、一般的には、粒子が、中間位置、即ち半可視位置に移動するように、電圧パルスを所定の時間の間電気泳動媒体に印加することによって与えられる。しかし、電気泳動ディスプレイのグレースケールを実行することは、多くの問題につながっている。基本的な問題は、電気泳動媒体中の粒子の実際の位置を正確に制御しその実際の位置を正確に把握することが非常に困難であること、空間的な僅かなずれでも、目に見えるグレースケールの乱れを生じさせる場合があること、である。
【0006】
典型的には、極状態(即ち、全ての粒子が一方の特定の電極に引き寄せられる状態)しか正確に規定されない。粒子を強制的に一方の極状態に向ける電位が印加される場合、電位が十分長く印加されると、全ての粒子は基本的に当該一つの極状態に集まる。しかし、中間状態(グレーレベル)の場合は、粒子間に空間的な広がりが常に存在し、粒子の実際の位置は多くの状況に依存し、ある程度しか制御できない。中間グレーレベルのアドレスを連続的に行うと、特に問題となる。実際、現実のグレースケールは、画像履歴(即ち、前の画像遷移)、待ち時間(即ち、連続するアドレス信号とアドレス信号との間の時間)、周囲温度、湿度、電気泳動媒体の横方向の不均一性などの影響を強く受ける。
【0007】
更に、電気泳動媒体の正確なアドレスは、粒子が受ける慣性力によって妨げられる。その結果、粒子は電界に直ぐには応答せず、アドレスされるときに或る起動時間が必要であり、これによって画像残留が増加する。この目的のため、出願人整理番号PHNL020441およびPHNL030091に対応し、ヨーロッパ特許出願02077017.8号およびヨーロッパ特許出願03100133.2号として出願されたまだ公開されていない特許出願には、プリセットパルス(振動パルスとも呼ばれる)を用いて画像残留を最小にすることが提案されている。好ましくは、振動パルスは一連のACパルスを有している。しかし、振動パルスは、単一のプリセットパルスのみを有していてもよい。
【0008】
各振動パルス(即ち、各プリセットパルス)は、一方の極位置に存在する粒子を解放するには十分であるが、粒子を実質的に移動させるには不十分なエネルギーを有している。これによって、振動パルスは粒子の移動度を増加させ、次の駆動パルス又はリセットパルスが即時の効果を有する。
【0009】
同時係属中のヨーロッパ出願02079203.2(=PHNL021000)によれば、グレーレベル精度はレール安定化方法を使用して更に改善することができ、これは、グレーレベルが、常に、正確に規定されるリセット状態、典型的には一方の極状態(即ち、一方のレール)を介してアドレスされることを意味する。この方法の利点は、あまり正確には規定されない中間状態とは反対に、極状態が安定であり正確に規定されることである。したがって、極状態は各グレースケール遷移の基準状態として使用される。
【0010】
したがって、初期位置が正確に知られているので、理論的には、各グレーレベルの不確実性は、現実に行われた当該特定のグレーレベルのアドレスにしか依存しない。
【0011】
しかし、この方法を使用すると、或るグレーレベルから別のグレーレベルへの遷移には、画素が一方の極状態になる中間遷移が含まれるので、グレースケール遷移がフリッカとして目に見える。このフリッカ効果は、リセット状態が前の状態および/又は次の状態に最も近い特定の極状態として選択される場合に、低減できる。
【0012】
例えば、白黒ディスプレイでは、所望のグレーレベルに従って、グレースケール遷移用の基準の初期レール状態が選択される。白(100%の明るさ)とミドルグレー(50%の明るさ)との間のグレーレベルは、白の基準状態から開始して実現され、完全な黒(0%の明るさ)とミドルグレー(50%の明るさ)との間のグレーレベルは、黒の基準状態から開始して実現される。この方法の利点は、フリッカを最小にするとともに画像更新時間を短くして、正確なグレースケールをアドレスできることにある。
【0013】
したがって、上記の原理によれば、各グレースケール遷移には、画素を対応する極状態にリセットするリセットパルスと、画素を所望のグレースケール状態に設定するアドレスパルスと、が含まれている。理論的には、リセットパルスの持続時間は、粒子が現在の状態から選択された極状態に移動するのに必要な時間よりも長くする必要はない。しかし、斯かる限定を受けたリセットパルスを使用すると、実際には画素は完全にはリセットされない。実際、画素の外観は、依然として画素のアドレス履歴にある程度依存している。
【0014】
同時係属中のヨーロッパ出願EP03100133.2(PHNL030091)では、リセットパルスの持続時間を延長したオーバリセット電圧パルスを使用して更に改良されたものが提案されている。これにより、リセットパルスは2つの部分、即ち、「標準リセット」部分および「オーバリセット」部分、からなる。「標準リセット」は、現在の光学状態と極状態との間の距離に比例した時間を必要とする。「オーバリセット」は、画像履歴を消去し画像品質を向上させるのに必要とされる。
【0015】
リセットパルスを使用すると、画素は、先ず、表示されるべき画像に従って駆動パルスが画素の光学状態を変化させる前に、正確に規定される極状態になる。これにより、グレーレベルの精度が向上する。「オーバリセット」パルスと「標準リセット」パルスは、協働して、画素を極状態に運ぶのに必要なエネルギーよりも大きいエネルギーを有している。明示的に言及されない限り、簡単のため、以下においてリセットパルスという用語は、「オーバリセット」パルスを含まないリセットパルスと、「オーバリセット」パルスを含むリセットパルスと、に言及している。
【0016】
しかし、「オーバリセット」方法を使用する場合、全リセット期間が、現実のグレースケール駆動パルス(即ち、粒子を、選択された極状態から所望のグレーレベルに移動させるパルス)よりも常に長く、画素に正味の残留DC電圧を蓄積させる。残留DCは実際に蓄積され、表示媒体に或る程度蓄えられる。したがって、次の画像更新でのグレースケールドリフトを回避するために、残留DCは適時に取り除かれるか、少なくとも低減されなければならない。リセット状態が2つの極状態のそれぞれに連続的に変化する場合は、これにより集積残留DC電圧はゼロ近くに保持されるので、ドリフト問題は実質的に解消される。しかし、実際には、しばしば、画像の順序はランダムではなく、ダークグレーからダークグレーへの遷移、又はライトグレーからライトグレーへの遷移が繰り返して生じる場合がある。この場合、同じ極状態を介した連続画像遷移の回数が増えるほど、残留DCが集積し、次の画像遷移で、この特定の極状態に向かう大きなグレースケールドリフトが生じる。このような遷移の繰返しの確率は、ディスプレイが多数のグレーレベルを有する場合に特に高い。
【0017】
画像更新期間の間に画素に提供されなければならない全体の電圧波形は、駆動電圧波形又は単に駆動信号と呼ばれる。駆動電圧波形は、通常は、画素の光学遷移が異なれば、異なった波形になる。ディスプレイのアドレスを完全に行うのに必要な駆動波形即ち駆動信号は、典型的には、現在の状態と次の状態とを入力として取り込んでこれらの状態に基づいて適切な波形を特定するルックアップテーブルに記憶される。
【0018】
画像と次の画像との間の遷移を滑らかにするには、更新時間を短くすることが重要である。しかし、上記の振動パルスとプリセットパルスを含む駆動波形は、当然に更新時間を長くする。したがって、画像更新時間と正確な画像更新との間で、どちらを取るか妥協しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
異なるグレーレベルの間で切替えをする場合、典型的には、振動パルスとリセットパルスとによる手の込んだ組合せが必要である。しかし、中間グレーレベルとは異なり、極状態は正確に規定されるので、極状態と極状態との間(例えば、黒状態と白状態との間)の切替えだけは、非常に容易であることがわかった。したがって、グレースケールを備える必要のないディスプレイ(即ち、モノクロディスプレイ)では、駆動波形はより簡単に作ることができ、したがって、この場合の更新時間は、グレースケールを備えているディスプレイと比較して短い。
【0020】
或る時にはモノクロディスプレイ(例えば、電子ブック)として使用され、別の時にはグレースケール(例えば、画像)を表示するために使用されるディスプレイに、2つの異なる動作モード、即ち、モノクロ更新モード(MU)およびグレースケール更新モード(GU)、を備えることができることが更にわかった。比較すると、モノクロモードの更新には約300msの更新時間を必要とし、4つのレベルのグレースケールモードの更新には約900ms必要とする。これによって、一個のディスプレイにおいて、グレースケール精度と更新時間との間の兼ね合いを、グレースケールが実際に必要であるかどうかに応じて、調整できる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の態様は、駆動ユニットと、駆動回路と、複数の駆動電極で定められる少なくとも一つの画素セルであって、上記複数の駆動電極の間に印加される電界に応答する電気泳動媒体を含む少なくとも一つの画素セルと、を有する電気泳動ディスプレイを提供する。上記駆動ユニットは、上記駆動回路を介して上記画素セルに駆動信号を供給し、上記駆動ユニットは、モノクロ駆動方式とグレースケール駆動方式との間の切替えが可能である。上記モノクロ駆動方式には、2つの極光学画素状態のみを与える駆動信号が含まれ、上記グレースケール駆動方式には、上記2つの極光学画素状態の間の少なくとも一つの追加の中間画素状態を与える駆動信号が含まれる。言い換えると、モノクロ駆動方式は、典型的には、異なる2つの極状態しか提供しないがディスプレイの迅速な更新を容易にするための、それほど複雑ではない短い駆動信号を含んでいる。一方、グレースケール駆動方式は、極カラー状態の間の追加の中間カラー状態を提供するが、更新時間が長く、従ってディスプレイの全体の性能を低下させる、かなり複雑な長い駆動信号を含んでいる。
【0022】
上記駆動ユニットは、更に、上記グレースケール駆動方式から上記モノクロ駆動方式に切り替るときに、別個の遷移駆動信号を印加するよう動作し、上記遷移駆動信号が上記画素セルの残留DC電圧の蓄積を抑制する。
【0023】
本発明のこの態様を実行する一つの方法では、極状態および多数の(又は少なくとも一つの)グレーレベルに正確に到達させるためにグレースケール駆動方式が使用され、極状態のみが目的である場合にモノクロ駆動方式が使用され、グレースケール更新モードからモノクロ更新モードに切り替える場合に遷移信号が使用される。一方の極状態から他方の極状態にアドレスすることは、明らかに、どちらの駆動方式によっても可能であるが、モノクロ駆動方式の方がより素早く行われる。
【0024】
グレースケール更新モードとモノクロ更新モードとの両方を特徴として備えたディスプレイは、一般的には、グレースケールモードとモノクロモードとの両方で十分に動作する。しかし、グレースケールモードからモノクロモードへの切替えに関する問題が生じる。特に、この切替えにより、典型的には、上記の不正確なグレーレベルおよび画像残留効果を生じさせる残留DC電圧がかなり蓄積する結果となる。残留DC電圧の蓄積は、2つの駆動方式の間で頻繁に切り替えられる場合、残留DCが徐々に集積するので、特に問題である。例えば、モノクロ更新モードにおける黒から白への切替えには、300msかかり、グレースケール更新モードにおける黒から黒への切替えには、800msかかることがある。このような各サイクルによって、500ms余分の駆動電圧が与えられ、表示セルに集積される。したがって、本発明による駆動ユニットは、上記グレースケール駆動方式から上記モノクロ駆動方式に切り替るときに、別個の遷移駆動信号を印加するよう動作する。遷移駆動信号は、グレースケール更新方式からモノクロ更新方式に切り替る場合に生じ得る画素セルの残留DCの蓄積を、抑制するように選択される。
【0025】
遷移駆動信号は種々の多くの方法で実現することができる。共通点は、グレースケール更新モードからモノクロ更新モードに切り替える場合に、モノクロ更新方式自体によっては規定されていない特別な手段が取られることである。この態様を実行する別の方法は、後に続くモノクロ駆動の間の駆動方式の一部ではない駆動シーケンスによってモノクロ更新方式が常に始まることである。
【0026】
例えば、一実施例によれば、上記遷移駆動信号は、上記モノクロ駆動方式が始まる前に上記画素セルの残留DC電圧が取り除かれるように、上記画素セルを2つの極カラー状態の間で繰り返し駆動する。これによって、画素セルに存在している残留駆動履歴が効率的に除去される。しかし、この実施例を単純に実現すると、ディスプレイは実際にはディスプレイにフリッカを生じさせる2つの極状態の間で駆動されるので、目に見える画像の乱れが生じるかもしれない。
【0027】
グレースケール更新モードからモノクロ更新モードに切り替るときに画素セルに現れる残留DCは、グレースケールモードで表示された最後の画像が一方の極状態に近く、且つモノクロモードで表示される最初の画像が反対の極状態である場合(例えば、グレースケールモードのライトグレー又は白からモノクロモードの黒への遷移)に、最も顕著であることが更に分かった。これは、グレースケールモードでは一般的に高い残留電圧がセルに蓄積されるという事実によるものであるが、この残留電圧はグレースケールモード動作の間においては許容できるものである。その理由は、次の駆動信号がそれに対応した高い残留電圧を反対の極性で加えるので、集積された残留DCが許容可能なレベルに保持されるからである。一実施例によれば、遷移駆動信号は、グレースケール駆動方式の信号に対応した駆動信号を含んでいる。これは、事実上、グレースケール更新モードが、モノクロ更新モードが始まった後の1アドレスサイクルの間は、故意に続けられることを意味している。
【0028】
グレースケール更新モードからモノクロ更新モードに切り替える場合に集積残留電圧を低減する更に他の一つの方法は、唯一の目的が集積残留電圧を低減するための追加の電圧パルスを使用することである。したがって、一実施例によれば、上記遷移駆動信号は、上記モノクロ駆動方式の信号に対応するが、残留DC電圧を低減する追加の電圧パルスで修正される、短時間の且つそれほど複雑ではない駆動信号を有する。
【0029】
一実施例によれば、上記残留DC電圧を低減する追加の電圧パルスは、短時間の且つそれほど複雑ではない駆動信号の前に使用される。
【0030】
電気泳動ディスプレイは、典型的には、上記のようにマトリックス構造に配されるような多数の画素セルを有している。この場合、画素は連続的にアドレスされることが好ましい。斯かるアドレスは、例えば薄膜トランジスタ(TFT)を使用するアクティブアドレスモードにより実行することができ、又はパッシブアドレス方式によって実行することができる。選択される方式にかかわらず、各画素のアドレス時間は、典型的には、所定の期間に制限される。一部の方式によれば、各画素の駆動パルスの一部は、実際に、全ての画素に共通したものである。例えば、振動パルスが使用される場合、振動パルスは全ての画素に同時に印加されることがある。この状況では、更新が容易にすばやく行われるが、異なる画素に異なる更新方式を使用することは困難であり、したがって、標準化する波形を使用する必要がある。この状況下においては、本発明は特に役立つ。その理由は、いずれかの画素にどれかのグレーレベルが要求される場合は、グレースケール駆動方式を使用することができ、一方、全ての画素に極状態のみが要求される場合は、高速であるモノクロ駆動方式が使用されるからである。したがって、これにより、モノクロ画像がすばやく更新され、グレースケールを含む画像が非常に正確に更新される。したがって、一実施例によれば、上記電気泳動ディスプレイは、画像フレームの間にアドレス可能な多数の画素セルを有しており、上記グレースケール駆動方式は、少なくとも一つの中間画素状態を含む画像フレームに対して使用され、上記モノクロ駆動方式は、極状態のみを含む画像フレームに対して使用される。一部の用途では、表示領域を、異なる種類の情報を表示する複数のサブフレームに分割することが有利である。例えば、表示領域の中の四角形の部分で画像を表示し、表示領域の残りの部分で白黒の文字を表示することができる。あるいは、表示領域を複数のウインドウコンピュータプログラム用のユーザインターフェースとして使用してもよく、これによって、表示領域は、多数のサブウインドウに自然に分割される。モノクロ情報が一つのサブウインドウに表示され、グレースケールが必要な情報が別のウインドウに表示される場合、異なるサブウインドウに異なる駆動方式を適用してもよい。
【0031】
駆動信号は、所与の状況に適した駆動信号を得るときに、ある程度の範囲の駆動履歴を考慮して、コンピュータユニット内で得ることができる。本発明が斯かるディスプレイに適用される場合、コンピュータユニットは、一つはモノクロ駆動方式用で一つはグレースケール駆動方式用の2つの異なるアルゴリズムを有することができる。しかし、これは、かなり複雑な解決策であり、装置が高価になる。したがって、一実施例によれば、駆動方式がルックアップテーブルに規定される。この目的のため、ディスプレイは、上記モノクロ駆動方式又はグレースケール駆動方式に対応する所定の駆動信号が上記駆動ユニットによってアクセス可能に記憶されるメモリを更に有している。実際に、本発明の有利な点は、ルックアップテーブルを使用することにより更に明らかになる。その理由は、選択された駆動方式が、斯かるルックアップテーブルに非常に適したバイナリ情報を有するからである。一実施例によれば、メモリユニットは、2つのルックアップテーブルを有するようになっており、一つのルックアップテーブルが一つの駆動方式に対応している。あるいは、2つの駆動方式が一つのルックアップテーブルに含まれていてもよい。
【0032】
本発明の別の態様は、電気泳動ディスプレイを駆動する方法を提供する。本発明による方法は、
− 表示される画像に関係する画像情報を受け取るステップ、
− 上記表示される画像の中のグレースケールの存在に依存して、モノクロ更新駆動方式およびグレースケール更新駆動方式から、駆動方式を選択するステップ、
− 上記駆動方式を上記グレースケール駆動方式から上記モノクロ駆動方式に変化させる場合に、残留DC電圧を低減するために遷移信号を使用するステップ、
− 選択された上記駆動方式に基づいた駆動信号であって、上記表示される画像に対応する駆動信号を使用するステップ、
を有する。
【0033】
本発明は、例として示された添付図面を基準にして更に記載されており、添付図面により発明が限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
先ず、電気泳動ディスプレイの基本原理を図1および図2を基準にして更に記載する。図1および図2は、それぞれ、後部側基板108と前部側基板109と複数の画素102とを有する電気泳動表示パネル101の上面図および断面図を示す。画素102は略直線に沿って二次元構造に配されている。しかし、画素の他の配列も、もちろん可能である。この装置は、更に、ディスプレイを駆動する駆動手段110を有している。
【0035】
後部側基板108および前部側基板109は、互いに平行に配されており、内部に電気泳動媒体105を封入している。基板は、例えばガラスプレートとすることができ、目に見える画像を表示するためには、少なくとも前部側基板109は透明であることが重要である。各画素は、それぞれの基板に配されているライン電極および行電極103,104の重なる領域によって規定されている。例えば、ライン電極104は前部側基板109に配することができ、斯かる場合、行電極103は後部側基板109に配することができる。ディスプレイをアクティブアドレスするために個々の薄膜トランジスタ(TFT)を使用する別の構成も、明らかに実施可能である。電極はITO(酸化インジウムスズ)から形成されていることが好ましいが、他の電極材料も可能である。しかし、図1および図2に示す構造においては、前部側基板に配される電極は透明で、画素の表示画像の妨げにならないことが重要である。
【0036】
電気泳動媒体105により、各画素102には、第1の極外観(状態)、第2の極外観(状態)、および第1の極外観と第2の極外観との間の複数の中間外観(状態)のうち、どれかの外観が与えられる。電気泳動媒体の色成分に依存して、第1の極外観は、例えば黒とすることができ、第2の外観は白とすることができる。斯かる場合、複数の中間外観は、異なるグレースケール度である。しかし、極外観は、異なる色、好ましくは反対の色である(例えば、青および黄であり、このとき、中間外観は、種々の異なる色である)。本発明では、簡潔のため、このような中間色もグレースケールと呼ぶ。
【0037】
図3は、グレースケール更新モード(GU)の典型的な駆動信号を示す。駆動信号は、最初の振動信号301と、画素を極状態(例えば、黒)にするオーバリセット信号302と、追加の振動信号303と、最後に、画素を所望のダークグレー状態304にする駆動信号304と、を有している。比較のために、図4は、モノクロ更新モード(MU)の典型的な駆動信号を示す。この駆動信号は、1つの振動信号401と、1つの駆動信号402と、からなり、画素を第1の極状態(例えば、白)から反対の極状態(例えば、黒)に変化させる。明らかに、モノクロ更新モードで使用される駆動信号は時間的にかなり短く、それほど複雑ではない。
【0038】
電気泳動ディスプレイ101の駆動ユニット110に使用することができる本発明の一例のアルゴリズムが、図5に概略的に示されている。モノクロデータのみが更新される場合、モノクロ更新方式(MU)501がロードされる。このようなモノクロ更新方式のロードは、白黒の本又はサブウインドウにおいてしばしば生じる。この利点は、モノクロ方式501の全画像更新時間が、通常は、グレースケール更新方式で使用される全画像更新時間の約半分であることである。しかし、画像にグレースケールが含まれる場合、モノクロモードに代えて、グレースケール更新モード502が使用される。したがって、画像が更新されて次の画像情報を受け取ると、当該次の画像情報に対してグレースケール505の存在がチェックされる。グレースケールが存在する場合、グレースケール更新モード502が起動する。この駆動モードは、希望している画像にグレースケールが存在している限り使用される。
【0039】
しかし、グレースケールの必要性がなければ直ぐに、素早くモノクロ更新モード501を起動することができる。斯かる場合、モノクロ更新モード501から駆動信号を選ぶ前に、先ず、本発明に従って、遷移駆動信号504が印加される。
【0040】
図6は、グレースケール更新モードからモノクロ更新モードに切り替えるときに印加される一連の駆動信号を示す。先ず、GUに基づいた駆動信号601が使用され、モノクロ更新モードへの遷移が要求されると起動する遷移駆動信号602が続く。遷移駆動信号602には異なる多くのデザインがあり、画素の残留DC電圧を低減する役割をする。図6に示されている特定の遷移駆動信号602は、画素を最終的に所望の状態(一方の極状態)にするモノクロ駆動信号603が印加される前に、画素を2つの極状態の間で連続的に駆動するように構成される。
【0041】
以下に、遷移駆動信号の考えられる幾つかの実施例を記載する。
【0042】
実施例1:初期化モードを介したGUからMUへの遷移
GUからMUへの遷移を可能にする第1の方法は、MU画像が書き込まれる前にディスプレイを確実に初期化することである。初期化において、例えば、ディスプレイ全体を2つの極状態の間で繰返し切り替えることによって、ディスプレイの全ての前の履歴が実質的に除去される。この実施例は、図6および遷移駆動信号602を基準にして、実際に上述されている。
【0043】
この方法は、画像残留の問題を解決するが、上記の残留DC問題を解決するものではない。この問題を緩和するためには、MUモードとGUモードとの両方でDC成分が同じであるように初期化を開始することが好ましい。斯かる方法は次の実施例に記載されている。
【0044】
実施例2:GU波形を用いて最初のMU画像を書き込む遷移
GUからMUへの遷移を可能にする第2の方法は、GU波形を用いて、MUの最初のモノクロ画像を書き込むことである。これは、全てのグレー画素が、正確な規定をするGU波形に従って黒又は白となり、したがって追加のアーチファクトが生じないという利点がある。もちろん、この画像更新時間はMUモードの画像更新時間よりも長い(しかし、一般的に最も長い波形となる、例えば白からダークグレー又は黒からライトグレーの遷移が無いことから、GUモードの画像更新時間よりも短い)。
【0045】
全ての画素が黒状態又は白状態になると、短くなったMU波形に従って画像更新が行われる。
【0046】
したがって、この実施例で認識されることは、グレースケール更新モードからモノクロ更新モードへの切替えが、画素をいずれかの極状態にするグレースケール駆動信号を使用することによって常に生じることである。
【0047】
この方法は、少なくとも最初の画像更新がGUモードで実行されるので、画像残留の問題を解決し、上記のDCバランシングの問題を低減する。
【0048】
実施例3:DC電圧パルスを最初のMU波形に加えた遷移
GUからMUへの遷移を可能にする第3の方法は、GUの最後の画像に生じるDC電圧を除去するために、追加の電圧パルスをMUの最初のモノクロ画像のMU波形に組み込むことである。
【0049】
これは、例えば、(最後のGU波形の)ダークグレー画素から(最初のMU波形の)白の画素への遷移が表されている図7に示す波形によって実現できる。この実施例では、4つのグレーレベル表示に対して、別のルックアップテーブル(例えば、MU’と呼ばれるルックアップテーブル)に16個の追加の波形を記憶して、この遷移を容易に行うことができる。
【0050】
GU画像のダークグレー画素に書き込むのに使用される電圧は、通常のMU波形の前の短い電圧パルスによって除去される。この方法は、画像残留の問題を解消し、実施例2よりも短い駆動波形を使用して上記のDCバランシングの問題を緩和する。
【0051】
更に他の実施例では、この追加の電圧パルスを、標準MU波形を印加する前に、別個の短い駆動波形として印加することができる。この作用は上記の動作(図7)と同一であるが、追加の16個の波形をもはや記憶する必要はなく、少数個の短いパルスを記憶する必要があるだけである(ライトグレー状態又はダークグレー状態から始まり得る遷移は8個だけなので、最大で8個のパルスである)。これによって、波形を記憶するメモリが節約される。
【0052】
先の記載は、本発明を単に例示しているに過ぎないことを理解すべきである。同じ原理と同様の利点とに基づいた、莫大な数の代替構造が可能であることが容易に理解される。例えば、本発明は、パッシブマトリックス電気泳動ディスプレイおよびアクティブマトリックス電気泳動ディスプレイで実現することができる。更に、駆動波形(即ち、駆動信号)は、パルス幅変調、電圧変調、又はパルス幅と電圧との両方の変調をすることができる。また、本発明は、カラー双安定ディスプレイ、タイプライターモードのあるシングルウィンドウ・ディウプレイ、およびマルチウィンドウ・ディスプレイに適用可能である。電極構造は特定のデザインには限定されない。むしろ、本発明は、現在利用可能な又は将来的に開発される任意の電極構造を有し、異なるグレースケール駆動方式およびモノクロ駆動方式が使用されるディスプレイに適用可能である。電極構造の例には、トップ/ボトム電極構造、ハニカム構造、電気泳動媒体のIPS(in-plane-switching)用の電極構造、電気泳動媒体のVS(vertical switching)用の電極構造が含まれる。
【0053】
本質的には、本発明は、グレースケール更新モード502とモノクロ更新モード501との間で切替可能な電気泳動ディスプレイに関するものである。モノクロ更新モード501は極画素状態のみ(例えば、黒および白)を提供し、グレースケール更新モード501は中間グレースケール画素状態も提供する。本発明によれば、グレースケール更新モード502からモノクロ更新モード501に切り替えるときに適切に選択された遷移信号504が印加される。遷移信号504は、グレースケール更新モード502とモノクロ更新モード501との差異によって各画素に生じ得る残留DC電圧のレベルを低減する役割をする駆動パルスを有している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】電気泳動表示ユニットの概略上面図である。
【図2】図1の表示ユニットの概略断面図である。
【図3】グレースケールドライブ方式の典型的な駆動信号波形を示す図である。
【図4】モノクロ駆動方式の典型的な駆動信号波形を示す図である。
【図5】本発明を実行する駆動方式を示す図である。
【図6】グレースケール更新モードからモノクロ更新モードに切替えるときに遷移信号を使用する駆動シーケンスを示す図である。
【図7】残留DCを低減する単一の電圧パルスの形の遷移信号を含む駆動波形を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ユニット、
駆動回路、および
複数の駆動電極で定められる少なくとも一つの画素セルであって、前記複数の駆動電極の間に印加される電界に応答する電気泳動媒体を含む少なくとも一つの画素セル、
を有する電気泳動ディスプレイであって、
前記駆動ユニットは、前記駆動回路を介して前記画素セルに駆動信号を供給し、前記駆動ユニットは、モノクロ駆動方式とグレースケール駆動方式との間の切替えが可能であり、
前記モノクロ駆動方式には、2つの極光学画素状態のみを与える駆動信号が含まれ、前記グレースケール駆動方式には、前記2つの極光学画素状態の間の少なくとも一つの追加の中間画素状態を与える駆動信号が含まれ、
前記駆動ユニットは、更に、前記グレースケール駆動方式から前記モノクロ駆動方式に切り替るときに、別個の遷移駆動信号を印加するよう動作し、前記遷移駆動信号が前記画素セルの残留DC電圧の蓄積を抑制する、電気泳動ディスプレイ。
【請求項2】
前記電気泳動ディスプレイは、画像フレームの間にアドレス可能な多数の画素セルを有しており、
前記グレースケール駆動方式は、少なくとも一つの中間画素状態を含む画像フレームに対して使用され、
前記モノクロ駆動方式は、極状態のみを含む画像フレームに対して使用される、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項3】
前記モノクロ駆動方式又はグレースケール駆動方式に対応する所定の駆動信号が前記駆動ユニットによってアクセス可能に記憶されるメモリを有する、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項4】
前記遷移駆動信号は、前記モノクロ駆動方式が始まる前に前記画素セルの残留DC電圧が取り除かれるように、前記画素セルを2つの極カラー状態の間で繰り返し駆動する、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項5】
前記遷移駆動信号は、前記グレースケール駆動方式の信号に対応する駆動信号を含む、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項6】
前記遷移駆動信号は、2つ以上の遷移駆動信号を有する遷移駆動スキームから選択される、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項7】
前記モノクロ駆動方式に切り替る場合、前記グレースケール駆動方式により提供される複数の画素状態のうちの一部の画素状態から切り替わる場合にだけ、前記遷移駆動信号が供給される、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項8】
前記複数の画素状態のうちの一部の画素状態には、前記極光学画素状態が含まれない、請求項7に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項9】
前記遷移駆動信号は、前記モノクロ駆動方式の信号に対応する駆動信号であって、残留DC電圧を低減する追加の電圧パルスで修正される駆動信号を含む、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項10】
前記残留DC電圧を低減する追加の電圧パルスは、前記モノクロ駆動方式の駆動信号の前に使用される、請求項9に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項11】
電気泳動ディスプレイを駆動する方法であって、前記方法は、
− 表示される画像に関係する画像情報を受け取るステップ、
− 前記表示される画像の中のグレースケールの存在に依存して、モノクロ更新駆動方式およびグレースケール更新駆動方式から、駆動方式を選択するステップ、
− 前記駆動方式を前記グレースケール駆動方式から前記モノクロ駆動方式に変化させる場合に、残留DC電圧を低減するために遷移信号を使用するステップ、
− 選択された前記駆動方式に基づいた駆動信号であって、前記表示される画像に対応する駆動信号を使用するステップ、
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−525719(P2007−525719A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501403(P2007−501403)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050671
【国際公開番号】WO2005/088603
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】