説明

電気泳動方法、及び電気泳動装置

【課題】電気泳動において、指定の電気勾配を安定して印加できる。
【解決手段】ゲル状の誘電媒体に挿入された陽電極と陰電極の電極対45a’、45b’であって、電圧が印加された位置から電極間の中心に近い位置に位置する電極対45a’、45b’に、電圧を再印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動方法、及び電気泳動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動は、導電媒体中で電圧を印加した結果、電荷を持った分子や粒子が帯電している電荷と反対符号の電極に向かって動く現象である。
電気泳動の手法としては、非特許文献1記載の手法が知られていた。また、近年では、特許文献1記載の手法や非特許文献2記載の手法が知られている。これらの先行技術文献記載の手法では、基本的な構成、つまり、冷却ユニットの上に電気泳動槽を載せ、その中にサンプル分離用の導電媒体を入れ、その導電媒体へ電圧を印加するための陽電極および陰電極を入れる構成が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−517954号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Patrick H. O’Farrell、High Resolution Two−Dimensional Electrophoresis of Proteins、The Journal of Biological Chemistry、1975 May 25、Vol.250,No.10、4007−4021頁
【非特許文献2】戸田 年総, 中村 和行, 平野 久、タンパク質なるほどQ&A、羊土社、2005年、76〜77頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、電極間への電圧を印加すると、サンプル及び導電媒体などに含まれる各種荷電性物質が電極へ向かって移動する。各種荷電性物質の大部分は電極近傍で電子の受け渡されて塩として堆積し、また、一部は荷電を帯びたまま平衡状態で留まるので、電極週辺での電気抵抗を大きく上昇させてしまう。また、電極間での電位勾配の直線性が失われ、特に電極付近で泳動パターンが乱れる場合もある。
以上に例示したように、従来技術では、電気泳動において、指定の電気勾配を安定して印加できない場合があるという欠点があった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、電気泳動において、指定の電気勾配を安定して印加できる電気泳動方法、及び電気泳動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、ゲル状の誘電媒体に挿入された陽電極と陰電極の電極対であって、電圧が印加された位置から電極間の中心に近い位置に位置する電極対に、電圧を再印加することを特徴とする電気泳動方法である。
【0008】
(2)また、本発明の一態様は、上記の電気泳動方法において、前記再印加された位置から電極間の中心に近い位置に位置する電極対に、電圧を再印加することを特徴とする。
【0009】
(3)また、本発明の一態様は、上記の電気泳動方法において、前記誘電媒体は、等電点電気泳動で用いられる媒体であることを特徴とする。
【0010】
(4)また、本発明の一態様は、上記の電気泳動方法において、前記電極対は、電圧が印加された位置から電極間の中心に近い位置へ移動された電極対であることを特徴とする。
【0011】
(5)また、本発明の一態様は、上記の電気泳動方法において、前記電極対は、電圧の印加が停止された後に、電圧が印加された位置から電極間の中心に近い位置へ移動された電極対であることを特徴とする。
【0012】
(6)また、本発明の一態様は、上記の電気泳動方法において、前記電極対は、電圧が印加された後に逆電圧が印加され、その後、電圧の印加が停止された後に、電圧が印加された位置から電極間の中心に近い位置へ移動された電極対であることを特徴とする。
【0013】
(7)また、本発明の一態様は、上記の電気泳動方法において、第1の電極対に電圧が印加された後、第1の電極対の電極の位置から電極間の中心に近い位置に設けられている第2の電極対に、電圧を再印加することを特徴とする。
【0014】
(8)また、本発明の一態様は、上記の電気泳動方法において、再印加を行う場合に、第2の電極対の電極間の電位差よりも大きい電位差を、第1の電極対の電極間に与えることを特徴とする。
【0015】
(9)また、本発明の一態様は、上記の電気泳動方法において、電圧が印加された位置付近に位置する物質が隔離された後、電圧が印加された位置から電極間の中心に近い位置に位置する電極対に、電圧を再印加することを特徴とする。
【0016】
(10)また、本発明の一態様は、上記の電気泳動方法において、電圧が印加されている電極対が前記誘電媒体から引き抜かれることで、電圧が印加された位置付近に位置する物質が隔離された後、電圧が印加された位置から電極間の中心に近い位置に位置する電極対に、電圧を再印加することを特徴とする。
【0017】
(11)また、本発明の一態様は、上記の電気泳動方法において、前記電極対に接合された吸着体を取り除くことで、電圧が印加された位置付近に位置する物質が隔離された後、電圧を再印加することを特徴とする。
【0018】
(12)また、本発明の一態様は、上記の電気泳動方法において、前記誘電媒体が切断されることで、電圧が印加された位置付近に位置する物質が隔離された後、電圧を再印加することを特徴とする。
【0019】
(13)また、本発明の一態様は、上記の電気泳動方法において、前記誘電媒体に障壁が挿入されることで、電圧が印加された位置付近に位置する物質が隔離された後、電圧を再印加することを特徴とする。
【0020】
(14)また、本発明の一態様は、ゲル状の誘電媒体に挿入された陽電極と陰電極の電極対であって、電圧が印加された位置から電極間の中心に近い位置に位置する電極対と、前記電極対に、電圧を再印加する再印加部と、を備えることを特徴とする電気泳動装置である。
【0021】
(15)また、本発明の一態様は、上記の電気泳動装置において、ゲル状の誘電媒体に挿入された陽電極と陰電極の電極対に電圧を印加する初期印加部と、前記誘電媒体を流れる電流量に基づいて、前記初期印加部によって電圧が印加された電極の位置から電極間の中心に近い位置に位置する電極対に、電圧の再印加を開始する再印加部と、を備えることを特徴とする。
【0022】
(16)また、本発明の一態様は、上記の電気泳動装置において、前記電極対を移動させる駆動部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電気泳動において、指定の電気勾配を安定して印加できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る電気泳動を説明する説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電気泳動を説明する説明図である。
【図3】本実施形態に係る電気泳動装置の断面図である。
【図4】本実施形態に係る電気泳動装置の動作の一例を示す断面図である。
【図5】本実施形態に係る電極部の動作の一例を説明する断面図である。
【図6】本実施形態に係る電極部、導電媒体、及び支持板の斜視図である。
【図7】本実施形態の変形例1に係る電気泳動装置の断面図である。
【図8】本実施形態の変形例2に係る電気泳動装置の断面図である。
【図9】本実施形態の変形例3に係る電気泳動装置の断面図である。
【図10】本実施形態の変形例4に係る電気泳動装置の断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る電極部の正面図である。
【図12】本実施形態に係る電極部の右側面図である。
【図13】本実施形態に係る電極部、導電媒体、及び支持板の斜視図である。
【図14】本発明の実施形態に係る電気泳動を説明する説明図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る電極部の断面図である。
【図16】本実施形態に係る電極部、導電媒体、及び支持板の斜視図である。
【図17】本実施形態に係る電気泳動装置の断面図である。
【図18】本発明の第4の実施形態に係るカセット及び電極部の動作の一例を説明する断面図である。
【図19】本実施形態に係る電極部の斜視図である。
【図20】本実施形態に係る電気泳動装置の断面図である。
【図21】各実施形態に係る電気泳動装置の論理的な構成を示す概略ブロック図である。
【図22】各実施形態に係る駆動装置の論理的な構成を示す概略ブロック図である。
【図23】各実施形態に係る印加制御の一例を説明するための概略図である。
【図24】各実施形態に係る電気泳動装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図25】各実施形態に係る陰電極及び陽電極の別の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電気泳動を説明する説明図である。この図は、ゲル状の誘電媒体6に電極が挿入されていることを表す。
符号1Aを付した図1Aは、陰電極45aと陽電極45bへ電圧が印加(初期印加とも称する)され、誘電媒体6内の荷電性物質が電極近傍6a、6bに移動したことを示す。なお、一部の荷電性物質は、電極近傍で電子の受け渡されて塩として堆積している。
【0026】
符号1Bを付した図1Bは、初期印加の後、陰電極45a’と陽電極45b’へ電圧が印加(再印加とも称する)されたことを示す。ここで、電極45a’と陽電極45b’は、陰電極45aと陽電極45bと比較して、中心方向に近い位置に位置している。
図1Bには、電極への電圧印加によって生ずる電界を表す電気力線が示されている。この電気力線は、荷電性物質が位置している電極近傍6a、6bでは電界がない、又は、電極45a’、45b’の間の位置の電界と比較して非常に小さい強度の電界であることを示す。
つまり、初期印加によって荷電性物質を電極近傍6a、6bに移動させ、この電極近傍6a、6bに電界が生じないような位置又は電界が小さくなるような位置に、陰電極45a’と陽電極45b’を位置させてから再印加される。再印加されることで、荷電性物質や塩の影響を受けない又は影響を受けにくい状況で、電気泳動を行うことができる。
【0027】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第1の実施形態について詳しく説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る電気泳動装置1を示す斜視図である。図3は、本実施形態に係る電気泳動装置1の断面図である。図3は、図2のA−A’断面の断面図である。電気泳動装置1では、電極部4における陰電極45a’及び陽電極45b’が、(a)初期印加のときの陰電極45a及び陽電極45bの位置(初期印加位置とも称する)よりも、(b)陰電極45a及び陽電極45bを結ぶ直線状に沿って誘電媒体6の中心方向に近づく位置へ変更され、再印加が行われる(図4、図5参照)。
【0028】
図2、3に示されるように、電気泳動装置1には、カセット2、電極部4、電極接続部5a、5b、誘電媒体6、支持板7、保持部8、駆動部9、冷却部10、ステージ11が備えられている。図示するように、電極部4の陰電極と陽電極を結ぶ直線がZ軸(陽電極から陰電極の方向をZ軸の正方向とする)である。また、Z軸と直交する軸であって電極反応槽3の底面(導電媒体6の底面でもある)と平行な面に含まれる軸がX軸である。また、X、Z軸いずれにも直交する軸がY軸である。この座標空間において、陰電極45aおよび陽電極45bを結ぶ直線状に沿って導電媒体6の中心方向により近づく位置へ変更とは、Z軸に沿って電極間距離を互いに縮めることを意味する。
【0029】
冷却装置10には、放熱フィンや放熱ファンからなる放熱手段と冷却ペルチェ素子とを有するペルチェ冷却制御機構が設けられている。
ステージ11は、段差を有するように形成されており、X軸の小さい方がへこんでいる。ステージ11は、例えば、アクリル製である。ステージ11には、電極部4や誘電媒体6及び支持板7を保管する保管場所が設けられている(図示せず)。
カセット2には、複数の槽3が設けられている。カセット2は、例えば、ガラス製である。槽3は、それぞれ、電極反応槽、各種試薬槽、洗浄槽として用いられる。カセット2の電極反応槽3付近には、電極接続部5a、5bが設けられている。電極接続部5aは導線を介して電源の陰電極に接続され、電極接続部5bは導線を介して電源の陽電極に接続されている。
【0030】
電極部4には、Z軸方向へ移動可能な陰電極45a及び陽電極45bが設けられている。電極部4は、金属等の導体(陰電極45a及び陽電極45b等)及びプラスチックで成形されている。
誘電媒体6は、ゲル状の固体物質であり、例えばアクリルアミド、多糖のアガロースなどを用いて作製されている。誘電媒体6は、例えば、等電点電気泳動で用いられる媒体である。
支持板7は、例えば、アクリル板である。
保持部8には、X方向に移動可能な保持爪81が設けられている。保持部8には、Z軸方向に移動可能な押込部81a、81bが設けられている。
駆動部9には、駆動アームが設けられている。
【0031】
図2において、冷却装置10には、ステージ11が載せられている。ステージ11のくぼみ部分には、カセット2が取り付けられている。なお、カセット2は、ステージ11から脱着可能である。電気泳動は高電圧下にて行われ、サンプルの分離中には電極反応槽3が高温になる。冷却部10が電気泳動時の電極反応槽3を冷却することで、温度を一定に保つ。ステージ11には、駆動部9が固定されている。
ステージ2の電極反応槽3には、電極部4が取り付けられている。ここで、電極部4に設けられた導電部41a、41bが、電極接続部5a、5bに挿入されている。これにより、電極部4が電極接続部5を介して電源と接続されて陰電極及び陽電極へ電圧が印加され、陰電極及び陽電極が誘電媒体6を介して電気的に接続されることとなる。
電極反応槽3には、誘電媒体6が置かれている。誘電媒体6は、アクリル板などからなる支持板7に固定されている。
【0032】
駆動部9は、保持部8の保持爪81を移動させて、保持部8に電極部4又は支持板7を挟み込ませる。これにより、保持部8が電極部4又は支持板7を保持する。なお、導電媒体6は一般的に薄くかつ軟らかいので、保持部8は、支持板7を保持することで誘電媒体6を保持する。一方、電極部4は保持部8に保持される部分がプラスチックで成形されており、保持部8は、電極部4を直接保持する。駆動部9は、保持部8をX方向及びY方向に移動させることで、保持部8が挟み込んだ電極部4又は支持板7を移動させる。
駆動部9は、保持部8の押込部81a、81bを可動させることにより、陰電極45a及び陽電極45bをZ軸方向に移動させる。なお、駆動部9は、駆動装置A1に接続され、駆動装置A1からの命令に従って動作する。
【0033】
図4は、本実施形態に係る電気泳動装置1の動作の一例を示す断面図である。この図は、電極部4の電極を誘電媒体6に挿入するときの電気泳動装置1の動作の一例を示す。この図は、図2のA−A’断面の位置の断面図である。符号4Aを付した図4Aは電極を誘電媒体6挿入する前の断面図であり、符号4Bを付した図4Bは電極を誘電媒体6挿入した後の断面図である。
図4Aでは、カセット2の電極反応槽3には、電極部4がカセット2に取り付けられている。この図では、誘電媒体6が固定されている支持板7は、保持部8で保持されており、電極部4の真上に位置している。その後、駆動部9の駆動アームが保持部8をY軸の負方向へ移動させ、図4Bの示す状態となる。
図4Bは、陰電極45a及び陽電極45bが誘電媒体6に挿入されたことを示す。
【0034】
図5は、本実施形態に係る電極部4の動作の一例を説明する断面図である。この図は、図2のA−A’断面の位置の断面図であり、カセット2、電極部4、及び導電媒体6のみを示したものである。符号5Aを付した図5Aは初期印加時の断面図であり、図4Bの示す状態と同じ状態のときの図である。符号5Bを付した図5Bは再印加時の断面図である。
【0035】
図5Aでは、導電部41a、41bの上部には導電板が設けられ、それぞれ、可動部42a、42bの下部に設けられた導電板に接触している。可動部42a、42bの一端には、それぞれ、バネ(弾性体)43a、43bが取り付けられている。可動部42a、42bの導電板には、それぞれの一端に、L字型に屈曲した電極支持部44a、44bが固定されている。電極支持部44a、44bには、それぞれ、陰電極45a及び陽電極45bが固定され、可動部42a、42bの導電板を介して供給される電気を陰電極45a及び陽電極45bに伝える電導材を内包する。なお、電極支持部44a、44bの電導材は、絶縁体で包まれている。
【0036】
図5Aの示す状態で、初期印加が行われる。具体的には、駆動装置A1が陰電極45a及び陽電極45bと電源とに接続されたスイッチ117をオンにすることで、陰電極45aと陽電極45bへ電圧が印加される。その後、駆動装置A1は、スイッチ117をオフにすることで、陰電極45aと陽電極45bへの電圧の印加を停止する。電圧の印加を停止した後、駆動部9が保持部8の押込部81aをZ軸の負方向、押込部81bをZ軸の正方向に移動させて、電極部4の押込穴16の押込部81a、81bを押す。これにより、バネ43a、43bが縮み、可動部42a、42bがZ軸方向へ移動されることで、陰電極45a及び陽電極45bが移動される。これにより、図5Bの示す状態となる。つまり、陰電極45a及び陽電極45bが、Z軸に沿っての電極間距離を互いに縮めるように移動されることで、陰電極45a’及び陽電極45b’の位置(再印加位置)に移動される。
【0037】
図5Bの示す状態で、再印加が行われる。具体的には、駆動装置A1が陰電極45a’及び陽電極45b’と電源とに接続されたスイッチ117をオンにすることで、陰電極45a’と陽電極45b’へ電圧が印加される。
なお、初期印加位置は、安定な通電が可能な範囲で出来る限り導電媒体6の末端となる位置としている。ここで、安定な通電が可能な範囲で出来る限り導電媒体6の末端となる位置とは、例えば、電極が導電媒体に確実に挿入され得る位置、つまり、電極先端が導電媒体6に覆われ外気にさらされない位置である。これにより、導電媒体6末端の断面は均一性に欠く場合でも、安定な通電が可能となる。また、再印加のために電極をZ軸方向へ移動させる距離(初期印加位置での電極間の距離と再印加位置での電極間の距離の差)を最大にでき、再印加のときに、荷電性物質や塩の影響を最小にできる。
【0038】
図6は、本実施形態に係る電極部4、導電媒体6、及び支持板7の斜視図である。符号6Aを付した図6Aは初期印加時の斜視図であり、図5Aと同じ状態のときの図である。符号6Bを付した図5Bは再印加時の斜視図であり、図5Bと同じ状態のときの図である。
図6Aと図6Bを比較すると、電極支持部44aと44bよりも、電極支持部44a’と44b’の方が、電極の中心方向へ押し込まれている。
【0039】
以上のように、本実施形態では、電気泳動装置1は、ゲル状の誘電媒体に挿入された陽電極と陰電極の電極対(陰電極45a’及び陽電極45b’)であって、初期印加位置から電極間の中心に近い位置へ移動された電極対に、電圧を再印加する。これにより、電気泳動装置1は、荷電性物質や塩の影響を受けない又は影響を受けにくい状況で、電気泳動を行うことができる。つまり、本実施形態では、電気泳動装置1は、電気泳動において電極間に、指定の電気勾配を安定して印加できる。
【0040】
従来技術に係る電気泳動装置によれば、電圧印加と同時に、電極符号と逆符号に大きく移動し始める導電媒体6中に含まれる荷電性の小物質(例えば、導電媒体6を構成する緩衝溶液中の荷電性物質、導電媒体6にアプライされる分離用サンプル中に含まれる荷電性物質、および導電媒体6へ行う各種前処理の溶液中に含まれる荷電性物質、導電媒体6にpH勾配を形成する時に加える両性電解質のなかで自身の等電点に収束しないものなど)が、電極に集まる。電極に集まった小物質は、電極から電子の受渡され、電極およびその近傍で塩化または一部電荷を帯びたまま滞在してしまう。これが原因となり、導電媒体6では、電流がほとんど流れなくなってしまう。
これに対して、本実施形態における電気泳動装置1では、電極を移動させることによって、塩および塩化せずに残っている一部の荷電性物質を初期印加位置に留める。つまり、荷電性物質は電位勾配がかかる電極間の外側に隔離されているため、電位は電極位置における電位とほぼ等電位になる。これにより、電極方向への電気的な力が荷電性物質に作用し難いため、隔離された塩および荷電性物質が再度、電極に付着し難い状態で、電気泳動を行うことができる。よって、その状態でより分子量が大きく移動度の小さい複数成分サンプル(たとえばタンパク質などの荷電性高分子)を、十分な電流を確保しつつ分離展開できる。例えば、電気泳動装置1では、電極近傍での電圧印加の不安定性を抑制することができ、電極近傍まで高い分離能を確保できる。
【0041】
また、上記実施形態において、誘電媒体6は、等電点電気泳動で用いられる媒体である。電気泳動装置1では、pH勾配を形成するために導電媒体6に加えられる両性担体(キャリアアンフォライト)のうち、(印加時にかける電圧では)等電点に落ち着かず電極に作用して、分離能(特に電極付近の分離能)に影響を与えるものを隔離できる。また、電気泳動装置1では、pH勾配を形成するために様々なpIの側鎖を持つアクリルアミド誘導体(イモビライン)を添加して形成したIPGゲル中の未重合のモノマーのうち、印加時に電極に作用して、分離能特に電極付近の分離能に影響を与えるものを隔離できる。
【0042】
なお、上記の実施形態において、電気泳動装置1は、陰電極及び陽電極の移動と印加を繰り返してもよい。つまり、電気泳動装置1は、再印加された位置(陰電極45a’及び陽電極45b’の位置)から電極間の中心に近い位置に位置する電極対に、電圧を再印加してもよい。例えば、電気泳動装置1は、再印加の後に、陰電極45a’及び陽電極45b’をさらに近づく方向に移動させ、その後、電圧を再印加する。
これにより、電気泳動装置1では、電極付近に集まってくる移動度の異なる荷電性物質とその塩を逐一隔離することができ、より安定した電気泳動を行うことができる。そのため、電気泳動装置1では、電気泳動時に、塩および荷電性物質が電極周りを覆う時間を最小限に減らすことができ、より分解能の高いサンプル分離を実現できる。
【0043】
また、上記実施形態において、先に電極部4がカセット2に取り付けられ、その後に誘電媒体6を移動させて電極部4の電極を挿入する場合について説明した。しかし、本発明はこれに限らず、先に誘電媒体6がカセット2の電極反応槽3に置かれ、その後に電極部4がカセット2に取り付けられてもよい。
【0044】
<変形例1>
図7は、本実施形態の変形例1に係る電気泳動装置1の断面図である。この図は、図2のA−A’断面の位置の断面図であり、カセット2、電極部4、導電媒体6、及び支持板7を示したものである。図7と図4を比較すると、図7では、電極部4には、誘電媒体6のZ軸方向の長さより大きい間隔で、陰電極45a’’及び陽電極45b’’が設けられる。
符号7Aを付した図7Aでは、誘電媒体6がカセット2の電極反応槽3に置かれている。電極部4は、保持部8(図示せず)で保持されており、誘電媒体6の真上に位置している。駆動部9の駆動アームが保持部8をY軸の負方向へ移動させることにより、符号7Bを付した図7Bの示す状態となる。
【0045】
図7Bは、電極部4がカセット2に取り付けられたときの断面図である。なお、図7Bは、先に電極部4がカセット2に取り付けられ、その後に誘電媒体6が移動されたものであってもよい。駆動部9が保持部8の押込部81aをZ軸の負方向、押込部81bをZ軸の正方向に移動させて電極部4の押込穴16内部の可動部42a’’、42b’’を押す。これにより、陰電極45a’’及び陽電極45b’’が誘電媒体6に挿入され、符号7Cを付した図7Cの示す状態となる。
図7Cは、初期印加時の断面図である。初期印加後、駆動部9が保持部8の押込部81aをZ軸の負方向、押込部81bをZ軸の正方向に移動させて、可動部42a’、42b’を押す。これにより、陰電極45a及び陽電極45bが誘電媒体6に挿入され、符号7Dを付した図7Dの示す状態となる。
【0046】
図7Dは、再印加時の断面図である。その後、駆動部9が保持部8の押込部81aをZ軸の正方向、押込部81bをZ軸の負方向に移動させる。バネ43a、43bの反発力によって、可動部42a’がZ軸の正方向、可動部42b’がZ軸の負方向に移動することで、陰電極45a’及び陽電極45b’も移動する。移動後、図7Bの示す状態となる。
その後、駆動部9の駆動アームが保持部8をY軸の正方向へ移動させることにより、符号7Aを付した図7Aの示す状態となる。なお、本発明はこれに限らず、図7Bの示す状態で、保持部8が支持板7を保持し、駆動部9の駆動アームが保持部8をY軸の正方向へ移動させることにより、導電媒体6を電極反応槽3から取り出してもよい。
【0047】
<変形例2>
図8は、本実施形態の変形例2に係る電気泳動装置1の断面図である。この図は、図2のA−A’断面の位置の断面図であり、カセット2、電極部4、導電媒体6、及び支持板7を示したものである。図8と図4を比較すると、図8では、導電媒体6は、Z軸方向の長さが導電媒体6より短い支持板7に固定されている。なお、導電媒体6と支持板7のZ軸方向の長さの差は、初期印加時の電極の位置と再印加時の電極の位置との差の合計より、大きな値となっている。
符号8Aを付した図8Aでは、誘電媒体6がカセット2の電極反応槽3に置かれている。電極部4は、保持部8(図示せず)で保持されており、誘電媒体6の真上に位置している。駆動部9の駆動アームが保持部8をY軸の負方向へ移動させることにより、符号8Bを付した図8Bの示す状態となる。
【0048】
図8Bは、電極部4がカセット2に取り付けられたときの断面図であり、初期印加時の断面図である。この図では、陰電極45a及び陽電極45bが誘電媒体6に挿入されている。その後、陰電極45a及び陽電極45bが移動され、符号8Cを付した図8Cの示す状態となる。
図8Cは、再印加時の断面図である。その後、駆動部9の駆動アームが保持部8をY軸の正方向へ移動させることにより、符号8Dを付した図8Dの示す状態となる。
【0049】
<変形例3>
本実施形態において、初期印加時については電極部4を用い、再印加については、電極部4よりも電極間の距離が短い電極が設けられた電極部4’を用いてもよい。つまり、1つの電極部に電極をスライドさせる構成に代えて、電極間の距離が異なる2つの電極部が差し替えられる構成でもよい。
【0050】
図9は、本実施形態の変形例3に係る電気泳動装置1の断面図である。この図は、図2のA−A’断面の位置の断面図であり、カセット2、電極部4、4’、導電媒体6、及び支持板7を示したものである。
符号9Aを付した図9Aでは、誘電媒体6がカセット2の電極反応槽3に置かれている。この図では、電極部4がカセット2に取り付けられ、陰電極45a及び陽電極45bが誘電媒体6に挿入されている。なお、陰電極45a及び陽電極45bは、電極部4に固定され、移動できなくてもよい。この図は、初期印加時の断面図である。駆動部9の駆動アームが保持部8をY軸の正方向へ移動させることにより、符号9Bを付した図9Bの示す状態となる。
符号9Bを付した図9Bでは、陰電極45a及び陽電極45bが誘電媒体6から引き抜かれたことを示す。その後、駆動部9の駆動アームをX軸方向へ移動し、電極収納箇所(図示せず)へ運び、電極部4を収納する。保持部8が電極収納箇所の別の電極部4’を保持し、駆動部9の駆動アームが移動する。
【0051】
符号9Cを付した図9Cでは、電極部4’が誘電媒体6の真上に運ばれたことを示す。ここで、電極部4’には、電極部4の陰電極45a及び陽電極45bの間の距離よりも、電極間の距離が短い陰電極45a’及び陽電極45b’が設けられている。駆動部9の駆動アームが保持部8をY軸の負方向へ移動させることにより、符号9Dを付した図9Dの示す状態となる。
図9Dは、電極部4’がカセット2に取り付けられたときの断面図である。この図は、再印加時の断面図である。すなわち、電極部4’における陰電極45a’及び陽電極45b’が、初期印加のときの電極部4の陰電極45a及び陽電極45bの位置よりも、陰電極45a及び陽電極45bを結ぶ直線状に沿って誘電媒体6の中心方向に近づく位置へ変更され、再印加が行われる。
【0052】
<変形例4>
なお、電気泳動装置1では、陰電極45aと陽電極45bが独立して設けられてもよく、この場合、それらが独立に移動されて誘電媒体6に挿入してもよい。また、この場合、陰電極45aと陽電極45bが、独立に移動されて、初期印加位置から再印加位置へ移動されてもよい。
【0053】
図10は、本実施形態の変形例4に係る電気泳動装置1の断面図である。この図は、図2のA−A’断面の位置の断面図であり、カセット2、電極部4、導電媒体6、及び支持板7を示したものである。図10と図4を比較すると、図10では、陰電極45aが固定されている電極部4lと、陽電極45bが固定されている電極4rと、が独立して設けられている。なお、この場合、保持部8及び駆動部9が複数設けられ、一方が電極部4lを、他方が電極4rを独立して保持し、移動させてもよい。
符号10Aを付した図10Aでは、誘電媒体6がカセット2の電極反応槽3に置かれ、電極部4がカセット2に取り付けられている。この図は、初期印加時の断面図であり、陰電極45a及び陽電極45bが誘電媒体6に挿入されている。初期印加の後、電極部4lが移動されて、符号10Bを付した図10Bの示す状態となる。
【0054】
図10Bでは、陰電極45a’は、図10Aの陰電極45aと比較して、陰電極45a及び陽電極45bを結ぶ直線状に沿って誘電媒体6の中心方向に近づく位置にある。その後、電極部4rが移動されて、符号10Cを付した図10Cの示す状態となる。
図10Cでは、陽電極45b’が、図10Aの陽電極45bと比較して、陰電極45a及び陽電極45bを結ぶ直線状に沿って誘電媒体6の中心方向に近づく位置にある。この図は、再印加時の断面図である。再印加の後、支持板7がY軸正方向に移動される。これにより、誘電媒体6が陰電極45a’及び陽電極45b’から引き抜かれ、図10Dの示す状態となる。
【0055】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第2の実施形態について詳しく説明する。本実施形態では、電極部4aには4つの電極(2つの電極対)が設けられている。本実施形態に係る電気泳動装置1aと、第1の実施形態に係る電気泳動装置1とを比較すると、電極部4aが異なる。その他の構成は、電気泳動装置1と同じであるので説明は省略する。
図11は本発明の第2の実施形態に係る電極部4aの正面図であり、図12は、本実施形態に係る電極部4aの右側面図である。図13は、本実施形態に係る電極部4a、導電媒体6、及び支持板7の斜視図である。
【0056】
電極部4aには、初期印加に用いられる陰電極45a及び陽電極45bの対と、再印加に用いられる陰電極45a’及び陽電極45b’の対と、が設けられている。ここで、陰電極45a’及び陽電極45b’は、陰電極45a及び陽電極45bを結ぶ直線状に沿って誘電媒体6の中心方向に近づく位置に設けられている。また、電極部4aには、YZ平面でL字型に屈曲した電極支持部44a、44bと、XY平面でL字型に屈曲した電極支持部44a’、44b’と、が設けられている。
なお、符号6を付した2点鎖線は、電極が挿入された場合の誘電媒体6を表す。符合2を付した2点鎖線は、電極部4aが取り付けられた場合のカセット2を表す。
【0057】
図12において、電極部4aには、導電部411b、絶縁体412b、導電部411b’が設けられている。導電部411bと導電部411b’は、絶縁体412bによって分離され、電気的に接続されない。導電部411bは、電極支持部44bを介して、陽電極45bが電気的に接続されている。導電部411b’は、電極支持部44b’を介して、陽電極45b’が電気的に接続されている。
初期印加時、導電部411bと接触する電極接続部5の部分から電圧が印加されるが、導電部411b’と接触する電極接続部5の部分から電圧は印加されない。再印加時、導電部411b’と接触する電極接続部5の部分から電圧が印加されるが、導電部411bと接触する電極接続部5の部分から電圧は印加されない。つまり、本実施形態に係る電気泳動装置1aは、陰電極45aと陽電極45bに初期印加する。初期印加の後、電気泳動装置1aは、陰電極45a’と陽電極45b’に再印加する。
【0058】
以上のように、本実施形態では、電気泳動装置1aは、陰電極45a及び陽電極45b(第1の電極対)に電圧が印加された後、陰電極45a及び陽電極45bの位置から電極間の中心に近い位置に設けられている陰電極45a’と陽電極45b’(第2の電極対)に、電圧を再印加する。これにより、電気泳動装置1aは、陰電極45a及び陽電極45bを移動させなくても、再印加時に、初期印加時と比較してZ軸に沿って電極間距離を互いに縮めることができる。また、電気泳動装置1aは、初期印加時と再印加時の電極が異なるので、同じ電極を利用する場合と比較して、塩や各種荷電性物質の付着が少ない陰電極45a’と陽電極45b’に再印加でき、より精度の高い電気泳動を行うことができる。
【0059】
なお、本実施形態において、電極部4aには、電極対を2つ、つまり、4つの電極が設けられる場合について説明した。しかし、本発明はこれに限らず、電極部4aには、3つ以上の電極対が設けられていてもよい。例えば、電極部4aには、Z軸に沿った複数の電極対を、電極対同士が電極間距離を徐々に狭め内包されていく形で設けられてもよい。電気泳動装置1aは、この電極部4aを導電媒体6へ挿入配置し、印加点を順次内側に切り替える。これにより、電気泳動装置1aは、より確実に塩および一部塩化せずに残った荷電性物質を逐一隔離できる。
ここで、導電媒体6へ接続した電極対の一番外側に位置する電極対から電圧印加し、荷電性物質が印加している電極に集まった時点(例えば、電極間の電流が小さくなったとき等)で印加を停止し、続いて、直前の印加電極位置より、より内側の電極対で印加を開始する。これを繰り返すことで、移動度の異なる荷電性物質を逐一隔離することができ、より安定した電気泳動を行うことができる。これによって、泳動時に、塩および荷電性物質が電極周りを覆う時間を最小限に減らすことができ、より分解能の高いサンプル分離を実現できる。
【0060】
図14は、本発明の実施形態に係る電気泳動を説明する説明図である。
符号14Aを付した図14Aは、図1Aと同じ図である。
符号14Bを付した図14Bは、初期印加によって電極近傍6a、6bに集まった塩や各種荷電性物質が除去されたことを示す。この状態で再印加されることで、荷電性物質や塩の影響を受けない又は影響を受けにくい状況で、電気泳動を行うことができる。
【0061】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第3の実施形態について詳しく説明する。本実施形態では、電極部4bの陰電極45a及び陽電極45bには、吸着体が装着されている。以下、本実施形態に係る電気泳動装置1bと、第1の実施形態に係る電気泳動装置1とを比較すると、電極部4bが異なる。その他の構成は、電気泳動装置1と同じであるので説明は省略する。
図15は本発明の第3の実施形態に係る電極部4bの断面図であり、図16は、本実施形態に係る電極部4b、導電媒体6、及び支持板7の斜視図である。符号15Aを付した図15Aは初期印加時の断面図であり、符号15Bを付した図15Bは再印加時の断面図である。
【0062】
図15Aでは、陰電極45a及び陽電極45bには、それぞれ、吸着体46a、46bが装着されている。吸着体46a、46bは、PVA(PolyVinyl Alcohol)(気孔率(中空率)90%)である。ただし、本発明はこれに限らず、吸着体46a、46bは、導電媒体6に用いる材料と同一材料、又は多孔質の材料であってもよい。多孔質の材料としては、例えば、親水性の特殊ポリウレタン(同83%)、ろ紙などである。
図15Aでは、吸着体46a、46bは、導電媒体6の端に接合されている。
図15Bでは、陰電極45a’及び陽電極45b’には、吸着体46a、46bが装着されていない。
【0063】
図17は、本実施形態に係る電気泳動装置1bの断面図である。この図は、図2のA−A’断面の位置の断面図であり、カセット2、電極部4、4’、導電媒体6、及び支持板7を示したものである。
符号17Aを付した図17Aは、初期印加時の断面図である。この図では、誘電媒体6がカセット2の電極反応槽3に置かれ、電極部4がカセット2に取り付けられている。ここで、吸着体46a、46bは、導電媒体6の端に接合されている。この状態で、初期印加されると、塩や各種荷電性物質が吸着体46a、46bに付着する。ここで、電気泳動装置1bでは、電圧印加を停止して、移動を行ってもよいし、電圧印加しながら移動を行ってもよい。
初期印加後、駆動部9の駆動アームが保持部8をY軸の正方向へ移動させることにより、符号17Bを付した図17Bの示す状態となる。
【0064】
図17Bでは、電極部4は、保持部8(図示せず)で保持されており、誘電媒体6の真上に位置している。この状態で、吸着体46a、46bが取り外される。その後、駆動部9の駆動アームが保持部8をY軸の負方向へ移動させることにより、符号17Cを付した図17Cの示す状態となる。その後、陰電極45a及び陽電極45bが移動され、符号17Dを付した図17Dの示す状態となる。
図17Dは、再印加時の断面図である。
【0065】
以上のように、本実施形態では、電気泳動装置1bは、電極対に接合された吸着体46a、46bを取り除くことで、電圧が印加された位置付近に位置する物質が隔離された後、電圧を再印加する。これにより、荷電性物質を除去した状況で、電気泳動を行うことができ、より分解能の高いサンプル分離を実現することができる。
つまり、電気泳動装置1bでは、塩および荷電性物質が印加中の電極45a、45b及びその周り、つまり吸着体46a、46bに集まるので、電圧印加を停止した後に電極45a、45bから吸着体46a、46bを取り外すことで、吸着体46a、46b内に隔離された塩および荷電性物質が分離用導電媒体6から除去される。その後、電気泳動装置1bは、電極45a、45bを分離用導電媒体6の中心方向に近い位置へ移動させていき、分離用導電媒体6に直接接続することで再印加を行う。また、電気泳動装置1bでは、吸着体46a、46bを装着することにより、陰電極及び陽電極の移動による導電媒体6の分析領域のわずかな減少も回避することにも貢献する。
【0066】
なお、吸着体46a、46bを導電媒体6末端に対して上方(Y軸方向)から接合した場合も、初期印加後に吸着体46a、46bを電極45a、45bから外し、両電極45a、45bを導電媒体6末端上方から挿入するので、Z軸方向の印加間隔は、導電媒体6の中心からみて、初期印加位置に比べ互いに縮まる。ここで、吸着体46a、46bを電極45a、45bから取り外す手法として、初期印加位置からの電極移動時に報知部により実験者に知らせ、手動で取り除いても良く、また電気泳動装置1bに他の工程同様、自動で取り除く機構を組み込んでもよい。
この構成を用いれば、初期印加位置(吸着体内)に隔離された塩および一部塩化せずに残った荷電性物質を吸着体46a、46bと共に除去することができ、その後の再印加位置への影響を完全に排除でき得る。
【0067】
なお、本実施形態において、図17では、吸着体46a、46bの装着された陰電極45a及び陽電極45bが、それらを導電媒体6末端に対し横(Y軸方向)から接合される場合について説明した。しかし、本発明はこれに限らず、吸着体46a、46bの装着された陰電極45a及び陽電極45bが、上方(Y軸方向)から移動され、接合されてもよい。
【0068】
(第4の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第4の実施形態について詳しく説明する。本実施形態に係る電気泳動装置1cには、誘電媒体6を切断する切断具が設けられている。
図18は本発明の第4の実施形態に係るカセット2a、2a’及び電極部4c、4c’電極部の動作の一例を説明する断面図であり、図19は本実施形態に係る電極部4cの斜視図である。符号18Aを付した図18A及び符号19Aを付した図19Aは、初期印加時の図である。符号18Bを付した図18B及び符号19Bを付した図19Bは、再印加時の図である。
【0069】
図18では、カセット2の底面には、切断具が内蔵されている。
図18Aでは、切断具21a、21bが、カセット2a内に収納されている。切断具21a、21bは、板状の刃である(図19参照)。初期印加後、陰電極45a及び陽電極45bが、Z軸に沿っての電極間距離を互いに縮めるように移動されることで、陰電極45a’及び陽電極45b’の再印加位置に移動される。
その後、切断具21a、21bがY軸の正方向に移動され、切断具21a’、21b’の位置に移動される。これにより、導電媒体6の一部分が切断される。導電媒体6において、切断面から外側を除去部分という)。除去部分には、荷電性物質や塩が含まれている。除去部分を除去後、図18Bの示す状態となる。
図18Bでは、導電媒体6の除去部分が点線で示されている。この除去部分は除去されている。この状態で、再印加が行われる。なお、電気泳動装置1cでは、切断具21a’、21b’がカセット2a内に収納され、切断具21a、21bの位置にしてから、再印加されてもよい。
【0070】
図20は、本実施形態に係る電気泳動装置1の断面図である。この図は、図2のA−A’断面の位置の断面図であり、カセット2a、2a’、電極部4c、4c’、導電媒体6、及び支持板7を示したものである。
符号20Aを付した図20Aは、初期印加時の断面図である。この図では、図18Aと同じ状態のときの図である。初期印加後、陰電極45a及び陽電極45bが移動され、符号20Bを付した図20Bの示す状態となる。
図20Bの示す状態で、切断具21a、21bが移動され、符号20Cを付した図20Cの示す状態となる。この図では、導電媒体6のY方向下方またはX方向から一直線にXY平面に沿って、導電媒体6が切断されている。
図20Cの示す状態で、除去部分が除去され、符号20Dを付した図20Dの示す状態となる。
【0071】
以上のように、本実施形態では、電気泳動装置1cは、誘電媒体6が切断されることで、初期印加位置付近に位置する物質が隔離された後、電圧を再印加する。電気泳動装置1cでは、隔離した塩および荷電性物質を含む導電媒体6自体(除去部分)を取り除くので、隔離した塩および荷電性物質を分離用の導電媒体6から除去することができる。
なお、本実施形態において、切断具21a、21bは、上方向(Y軸正方向)へ移動する場合について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、切断具21a、21bが、電極部4c又は支持板7に設けられ、下方向(Y軸負方向)へ移動することで、導電媒体6を切断してもよい。
【0072】
なお、本実施形態では、除去部分を除去したが、本発明はこれに限らず、カセット2aには、切断具21a、21bに代えて絶縁体の障壁が設けられてもよい。この場合、電圧再印加時に、障壁が切断具21a’、21b’の位置に移動される。これにより、電気泳動装置1cでは、隔離した塩および荷電性物質を含む導電媒体領域6自体(除去部分)を分離用の導電媒体6から隔てるための境界を形成するので、隔離した塩および荷電性物質を完全に分離用の導電媒体から除去することができる。
また、例えば、電気泳動装置1cは、イオン選択透過膜を挿入してもよい。例えば、電気泳動装置1cは、陰電極側(切断具21a’に相当)では、プラスの電荷交換基が固定されて、陽イオンの通過を妨げ陰イオンのみを透過させるアニオン膜を挿入する。逆に、陽電極側(切断具21b’に相当)では、電気泳動装置1cは、マイナスの電荷交換基が固定されて、陰イオンは反発し通過できず陽イオンのみを通過させるカチオン膜を挿入する。
【0073】
(第5の実施形態)
以下、図面を参照しながら、上記各実施形態に係る駆動装置A1について説明をする。駆動装置A1は、プログラムに基づいて、駆動部9を制御する。本実施形態では、電気泳動装置1、1a、1b、1cを電気泳動装置1とも称する。また、電極部4、4a、4b、4cを電極部4とも称し、電極部4’、4a’、4b’、4c’を電極部4’とも称する。
【0074】
図21は、上記各実施形態に係る電気泳動装置1の論理的な構成を示す概略ブロック図である。この図は、電気泳動装置1の動作制御に関わる構成を表した図である。この図において、電気泳動装置1は、保持部8、駆動部9、切断具、位置センサ110、報知部111、温度センサ112、冷却手段10、湿度センサ113、保湿手段114、電圧センサ115、電流センサ116、及びスイッチ117を含んで構成される。
【0075】
位置センサ110は、電極部4、導電媒体6、陰電極45a、45a’、45a’’(単に、陰電極とも称する)及び陽電極45b、45b’、45b’’(単に、陽電極とも称する)、切断具2、保持部8の位置を検出し、検出した位置情報を駆動装置A1へ出力する。この位置情報は、絶対的な座標であってもよいし、相対的な座標であってもよい。また、例えば、この位置情報は、予め定められた正しい位置からのずれを示す情報であってもよい。位置センサ110は、例えば、圧力センサや光センサ、撮像装置である。
報知部111は、駆動装置A1からの制御に基づいて、音や画像を出力する出力部である。例えば、報知部111は、スピーカである。
【0076】
温度センサ112は、導電媒体6、カセット2の電極反応槽3内、又はそれらの近傍の温度を測定する。例えば、温度センサ112は、カセット2に設けられた微小穴に熱電対が差し込まれているものである。なお、温度センサ112は、保持部8や駆動部9に設けられてもよく、例えば、駆動部9の駆動によって、熱電対を電極反応槽3の表面に触れさせるものであってもよい。温度センサ112は、測定した温度を示す温度情報を駆動装置A1へ出力する。
【0077】
冷却手段10は、駆動装置A1からの制御に基づいて、導電媒体6を冷却する。なお、冷却手段10は、循環冷却水を用いる水冷パイプが電極反応槽3またはカセット2周りに設置されたものであってもよい。冷却手段10は、駆動装置A1からの制御に基づいて、電極反応槽3を同じ温度に保つように制御してもよいし、別々の温度に保つようにしてもよい。また、冷却手段10は、電極反応槽3内の温度を均一ではなく、場所ごとに異なる温度となるように冷却してもよい。
【0078】
湿度センサ113は、導電媒体6の近傍又はカセット2の電極反応槽3内、又はそれらの近傍の湿度を測定する。湿度センサ113は、測定した湿度を示す湿度情報を駆動装置A1へ出力する。
保湿手段114は、駆動装置A1からの制御に基づいて、導電媒体6の近傍を保湿する。
【0079】
電圧センサ115は、陰電極と陽電極との間の電圧を測定し、測定した電圧を示す電圧情報を駆動装置A1へ出力する。
電流センサ116、陰電極と陽電極との間の電流を測定し、測定した電流を示す電流情報を駆動装置A1へ出力する。
スイッチ117 は、陰電極及び陽電極と電源とに接続されている。スイッチ117がオンになることで、陰電極と陽電極へ電圧が印加される。また、スイッチ117がオフになることで、陰電極と陽電極への電圧の印加が停止される。
【0080】
図22は、上記各実施形態に係る駆動装置A1の論理的な構成を示す概略ブロック図である。駆動装置A1は、保持部移動制御部A11、電圧電流情報取得部A12、初期印加部A13、電極移動制御部A14、切断具制御部A15、再印加部A16、温度制御部A17、及び湿度制御部A18を含んで構成される。なお、切断具制御部A14は第4の実施形態のときに含まれる構成であり、その他の実施形態に係る駆動装置A1は切断具制御部A14を含まなくてもよい。
【0081】
保持部移動制御部A11は、プログラムに基づいて駆動部9を駆動させることで、保持部8を制御する。例えば、保持部移動制御部A11は、保持部8に電極部又は支持部を保持させて移動させる。保持部移動制御部A11は、例えば、誘電媒体6がカセット2の電極反応槽3に置かれ、電極部4がカセット2に取り付けられたとき、初期印加前には、電気泳動を開始できることを示す初期印加可能信号を初期印加部A13へ出力する。また例えば、保持部移動制御部A11は、電極部4又は電極支持部44a、44a’、44b、44b’の位置を表す位置情報を電極移動制御部A14へ出力する。
なお、保持部移動制御部A11は、位置センサ110から入力された位置情報に基づいて、駆動部9及び保持部8の位置や移動のずれを修正してもよい。例えば、駆動アーム9に設けられた圧力センサや光センサ(位置センサ)が、駆動部9の駆動アームの底部から圧力、及び駆動アームのからY方向底面へのびる光の屈折率の変化を検出し、保持部移動制御部A11へ出力する。保持部移動制御部A11は、入力された情報に基づいて、フィードバック制御し、実験ごとに生じうる基準位置からのずれに正確に適合させてもよい。つまり、保持部移動制御部A11は、ずれが影響する工程に関する固定駆動座標位置を、標準値からずれの情報に基づいて自動補正する。なお、保持部移動制御部A11は、ユーザから入力された座標変異量に基づいて位置を補正してもよい。
【0082】
電圧電流情報取得部A12は、電圧センサ115から電圧情報、電流センサ116から電流情報を取得する。電圧電流情報取得部A12は、取得した電圧情報及び電流情報を、初期印加部A13へ出力する。
初期印加部A13は、保持部移動制御部A11から初期印加可能信号を入力されると、スイッチ117をONにすることで、初期印加を開始する。初期印加部A13は、電圧電流情報取得部A12から入力された電圧情報又は電流情報のいずれか一方或いは両方に基づいて、スイッチ117をOFFにする。つまり、初期印加部A13は、電圧情報又は電流情報に基づいて、初期印加を停止する。初期印加部A13は、初期印加を停止した後、初期印加が終了したことを示す初期印加終了信号を、電極移動制御部A14へ出力する。
【0083】
電極移動制御部A14は、初期印加部A13から初期印加終了信号を入力されると、駆動部9を介して、保持部8やその押込部81a、81bを制御して陰電極及び陽電極を移動させる。具体的には、電極移動制御部A14は、陰電極及び陽電極を、初期印加位置から再印加位置へ移動させる。ここで、電極移動制御部A14は、電極部又は電極支持部の移動を伴う場合には、保持部移動制御部A11から入力された位置情報に基づいて、陰電極及び陽電極を移動させる。なお、第2の実施形態に係る駆動装置A1では、電極移動制御部A14は、陰電極及び陽電極を移動させなくてもよい。
電極移動制御部A14は、位置センサ110から入力された情報が示す陰電極及び陽電極の位置が、再印加位置であると判定すると、切断具制御部A15へ切断命令を出力する。切断具制御部A15は、電極移動制御部A14から入力された切断命令に従って、切断具21a、21bを移動させることで、導電媒体6を切断させる。
【0084】
切断後、電極移動制御部A14は、報知部111に、除去部分を除去できることを報知させる。なお、第3の実施形態の場合には、電極移動制御部A14は、吸着体46a、46bを取り外すことができることを報知させる。また、電極移動制御部A14は、この報知を、陰電極及び陽電極を移動させる前に報知させてもよい。なお、電極移動制御部A14は、報知部111に対して、電圧電流情報取得部A12から入力された電圧情報又は電流情報をモニター等に表示させるように制御してもよい(図23参照)。
報知から予め定めた時間の経過後、又は、除去部分の除去や吸着体46a、46bの取り外しが完了したことを示す情報がユーザから入力された後、電極移動制御部A14は、再印加可能信号を再印加部A16へ出力する。
【0085】
再印加部A16は、電極移動制御部A14から再印加可能信号を入力されると、スイッチ117をONにすることで、再印加を開始する。つまり、再印加部A16は、初期印加後に陰電極及び陽電極の位置が変更された後、再印加を開始する。
再印加部A16は、予め定められた時間の経過後、スイッチ117をOFFにすることで、再印加を停止する。なお、再印加部A16は、電圧電流情報取得部A12から入力された電圧情報又は電流情報のいずれか一方或いは両方に基づいて、スイッチ117をOFFにしてもよい。
【0086】
温度制御部A17は、温度センサ112から入力された温度情報に基づいて、温度が予め定められた温度になるように、冷却手段10を制御する。
湿度制御部A18は、湿度センサ113から入力された温度情報に基づいて、湿度が予め定められた湿度になるように、保湿手段114を制御する。
【0087】
以下、初期印加部A13及び再印加部A16が行う電圧印加に関する制御(印加制御という)の一例について説明をする。
図23は、上記各実施形態に係る印加制御の一例を説明するための概略図である。この図は、第2の実施形態に係る印加制御の一例を示す。符号23Aを付した図23Aは、陰電極と陽電極との間の電圧を示す。この図において、縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。
図23Aは、初期印加部A13が、「00:00−00:05」分の期間において、初期印加部A13が、「200V」の一定電圧を印加していることを示す。初期印加部A13が、「00:05−00:10」分の期間にかけて、電圧を緩やかに「1000V」まで上げたことを示す。この図は、「00:10−00:15」分の期間において、初期印加部A13が、「1000V」の一定電圧を印加していることを示す。これらの「00:00−00:15」分の期間の電圧印加が初期印加である。
図23Aは、再印加部A16が、「00:15−00:25」分の期間にかけて電圧を「6000V」まで上げ、「00:25」分以降に「6000V」の一定電圧を印加することを示す。
【0088】
符号23Bを付した図23Bは陰電極と陽電極との間の電流を示す。この図において、縦軸は電流を示し、横軸は時間を示す。
図23Bは、「00:00−00:05」分の期間にかけて、荷電性の物質が、帯電している電荷と異符号の電極へ向かって導電媒体6内を移動し、電流が流れていることを示す。ここで、移動が大きい物質は、比較的分子の総電荷が大きい小物質(荷電性またはイオン性物質という)のうち、質量の極小さい小物質である。この図は、「00:05−00:10」分の期間にかけて、荷電性物質が移動し、電流が大きくなることを示す。この図は、「00:10−00:15」分の期間において、電極近傍に荷電性物質や塩が集まることで電極周りの抵抗が上昇し、また、電極へ流れる荷電性の小物質の総数も減少していくので、電流値が減少に転じることを示す。
【0089】
図23Bは、「00:15」分以降に、比較的総電荷の小さいサンプルや両性担体(電気泳動の対象物質)、例えば、タンパク質が移動する。ここで、上記各実施形態では、電極を移動させて、又は吸着体や除去部分を除去して、再印加を行うので、サンプルをより正確に分離できる。
なお、「00:25」以降において、サンプルがpH勾配を形成したゲル状の導電媒体6上で固有の等電点に落ち着く割合が増えるに従って電流が減少し、電流の減少時の傾きが0に近くなった状態で各タンパク質の分離が完了したことを表す。
【0090】
上記の図23において、初期印加部A13は電流の極小値(00:15分)を検出した場合に初期印加を停止し、再印加部A16は再印加を開始する。なお、初期印加部A13及び再印加部A16は、電流の時間に対する傾きが予め定めた閾値以下になった場合に、初期印加を停止し、再印加を開始してもよい。つまり、初期印加部A13は電流の時間に対する傾きに基づいて初期印加を停止し、再印加部A16は電流の時間に対する傾きに基づいて再印加を開始する。
しかし、本発明はこれに限らず、初期印加部A13は電流の時間に対する傾きの変化が正から負に変わった場合(図23Bでは例えば、00:125付近)に、初期印加を停止し、再印加部A16は再印加を開始してもよい。つまり、初期印加部A13は電流の時間に対する傾きの変化に基づいて初期印加を停止し、再印加部A16は電流の時間に対する傾きの変化に基づいて再印加を開始してもよい。また、再印加部A16は、再印加後に極小値を検出した場合に、再印加を停止してもよい。
なお、上記の第1、3、4の実施形態では、駆動装置A1は、「00:15」分の後に初期印加を停止し、電極を移動した後又は吸着体46a、46b或いは除去部分を除去した後、再印加を開始する。
【0091】
図24は、上記各実施形態に係る電気泳動装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
(ステップS101)電気泳動装置1は、電極部4及び誘電媒体6を設置する。その後、ステップS102へ進む。
(ステップS102)電気泳動装置1は、初期印加を行う。その後、ステップS103へ進む。
【0092】
(ステップS103)電気泳動装置1は、初期印加を停止する。その後、ステップS104へ進む。
(ステップS104)電気泳動装置1は、陰電極及び陽電極の位置を変更する。その後、ステップS105へ進む。ここで、第1の実施形態に係る電気泳動装置1は、初期印加を停止してから陰電極及び陽電極を移動させるので、電極に付着した荷電性物質や塩が付着したまま電極を移動させてしまうことを防止できる。
【0093】
(ステップS105)電気泳動装置1は、再印加を行う。その後、ステップS106へ進む。
(ステップS106)再印加の停止後、誘電媒体6が電極反応槽3から取り出される。その誘電媒体6内で分離されたサンプルの位置に基づいて、分析が行われる。
【0094】
このように、本実施形態によれば、初期印加部A13は、ゲル状の誘電媒体6に挿入された陰電極45aと陽電極45bの電極対に電圧を印加する。初期印加部A13は、電圧情報又は電流情報に基づいて、初期印加を停止する。再印加部A16は、初期印加位置から電極間の中心に近い位置に位置する電極対(陰電極45a’と陽電極45b’)に、再印加を開始する。つまり、本実施形態によれば、再印加される電極対(陰電極45a’と陽電極45b’)は、初期印加が停止された後に、初期印加位置から電極間の中心に近い位置へ移動された電極対である。
電気泳動装置1は、初期印加位置から再印加位置へ移動する際には、初期印加位置に集まって塩化した塩および一部塩化せずに電荷を帯びたまま滞在している荷電性物質を、可能な限り初期印加位置に隔離するため、移動時直前に電圧印加を停止する。これにより、電気泳動装置1では、塩のみならず一部塩化せずに残っている荷電性物質が移動する電極に電気的に引き寄せられることなく、初期印加位置に留まり、隔離した状態を維持できる。
【0095】
また、電気泳動装置1は、移動時直前に電圧印加を僅かの時間、逆方向にかけて停止してもよい。これにより、電気泳動装置1では、電極に付着している一部塩化せずに残っている荷電性物質を確実に初期印加位置に留めることができる。また、電気泳動装置1は、印加地点を移動する手法を複数回繰り返し行うことで、確実かつ安定的に導電媒体6中の荷電性物質または隔離した塩および一部塩化せずに残っている荷電性物質の電極に与える影響を除くことができる。
【0096】
また、電気泳動装置1において、陰電極及び陽電極の移動は初期印加位置に隔離された塩および一部塩化せずに残っている荷電性物質が、再印加位置の電極に対し影響を与えなければよく、例えば、その距離はμmオーダーでよい。隔離された塩および一部塩化せずに残った荷電性物質は、電圧のかかる電極間の外に外れているので、移動後の電極とほぼ等電位にあり、(導電媒体の周りが空気に覆われており、)また電極へ向かう電気力線の密度が電極間のそれに比べ極端に低く、また誘電媒体6のため移動抵抗も大きいので電気作用の受けない塩はもちろん塩化せずに残った一部の荷電性物質も、再印加位置の電極に再度移動するのは容易ではない。例えば、電気泳動装置1は、再印加位置で与える電位差よりも絶対的により大きい電位差を、Z軸に沿って再印加位置間を内包するより広い区間で与え続ける電極を、補助的に備えてもよい。例えば、電気泳動装置1aは、再印加を行う場合に、陰電極45a’及び陽電極45b’(第2の電極対の電極)間の電位差よりも大きい電位差を、陰電極45a及び陽電極45b(第1の電極対の電極)間に与える。
上記構成によれば、初期印加位置に隔離された一部塩化せずに残った荷電性物質が再印加位置とは逆方向への力を確実に受け、再印加位置間でのサンプル分離へ及ぼす影響をより確実に取り除くことができる。
また、上記第2の実施形態において、再印加時に、初期印加位置にある電極(陰電極45a及び陽電極45b’)を、上述した「再印加位置間に与える電位差よりも絶対的により大きい電位差を与え続ける電極」として利用しても良い。
【0097】
なお、上記各実施形態において、陰電極及び陽電極は、金属などの導電性を有する材料から形成される。陰電極及び陽電極を形成する材料としては、例えば、電極のイオン化を抑制する観点から、白金が好ましい。また、陰電極及び陽電極の形状は、XY平面で広がりを持ってもよく、電極のXY断面積/導電媒体のXY断面積を1に近づけるような形状であってもよい。これにより、塩および一部塩化せずに残った荷電性物質を隔離されている初期印加位置から再印加位置の電極へ向かわせる、電気力線の密度をさらに減少できる。
図25は、各実施形態に係る陰電極及び陽電極の別の一例を示す概略図である。この図において、陰電極及び陽電極は、平板状である。図25と図1Bとを比較すると、図25の方が、電極近傍6a、6bの電界が少なくなっている。
【0098】
上記の各実施形態に係るおける電気泳動装置1は、複合混合物中の分子を分離することに応用される。ここで、電気泳動装置1では、分離対象物に固有の独立した複数の性質に基づいて、高次元(この次元は一般に、各次元に対して直行的または垂直的である)に分離する。例えば、電気泳動装置1は、ポストゲノム研究の中心的位置を担っているプロテオーム解析において、最も良く選択される手法である二次元電気泳動法(2DE)に適用できる。具体的に、電気泳動装置1は、タンパク質の2つの物理的性質(電荷および分子量)を利用して、二次元のマップ上に分離を行い、移動位置からタンパク質の同定すること及び特徴付けることができる。
【0099】
例えば、電気泳動装置1では、タンパク質の二次元電気泳動としては、分離能、再現性において非常に優れた二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D−PAGE)が用いられてもよい。この場合、電気泳動装置1では、一次元目には、ゲル(導電媒体6)にpH勾配を作製し、その中をタンパク質に等電点電気泳動(IEF)させ、電場からの力を受けなくなる、タンパク質の総電荷がゼロとなるpH(pI値)にそれぞれのタンパク質を収束させ、分離させる。なお、pH勾配の作製は、様々な等電点を持つ両性担体(キャリアアンフォライト)をゲルに添加して電場をかけてpH勾配を形成する手法と、様々なpIの側鎖を持つアクリルアミド誘導体(イモビライン)を添加して、ポリアクリルアミドマトリックスに共有結合させてpH勾配を形成する手法(IPG法: Immobilized pH gradient)とがあるが、そのどちらを用いても良い。
【0100】
また、電気泳動装置1では、二次元目は、IEFゲル内のタンパク質をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で変性させ、負電荷を帯びたSDS-タンパク質複合体としてもよい。この場合、どのタンパク質もほぼ同程度の分子量/電荷比を持つことになるので、このIEFゲルをポリアクリルアミドゲルの上に積層して電気泳動を行い、主としてポリアクリルアミドゲルから受ける抵抗力の大きさの違い(分子量の違い)によって分離させる。
【0101】
なお、上記各実施形態において、電気泳動装置1で分離されるサンプルは限定されることはないが、例えば、生物材料(例えば、生物個体、体液、細胞株、組織培養物、または組織断片)からの調製物、市販の試薬などが挙げられる。例えば、タンパク質などのポリペプチドまたはDNAなどのポリヌクレオチドが挙げられる。
また、上記各実施形態において、カセット2の形状は図2のものに限られない。なお、電極反応槽や各種試薬槽、洗浄槽の槽3を単一の絶縁体に形成してもよい。例えば、カセット2は、アクリルや、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック、ガラス等の絶縁体が形成されたものである。
なお、槽3には、電極反応槽の他に乾燥ゲルを膨潤させる膨潤液槽や、サンプル溶液を入れるサンプル槽、蛍光色素などを格納した染色槽、過剰な蛍光色素を除いたり、電極を洗浄するための洗浄槽、平衡化を行う平衡化槽などがある。
また、槽3は、カバー等を用いて閉鎖空間としてもよい。これにより、電気泳動装置1では、温度、湿度共に外部環境に左右されない恒温恒湿状態を維持できる。
【0102】
また、上記各実施形態において、電極部は、可動部42a、42bを固定する固定部を備えてもよい。例えば、電圧印加時には、電極部は、可動部42a、42bを固定する。なお、電極部は、電圧が印加されていないときは、可動部42a、42bを固定しないようにしてもよい。これにより、電圧印加時に、陽電極及び陰電極が引力によって可動してしまうことを防止できる。
また、上記各実施形態において、誘電媒体6は、粘性を持つ物質であってもよいし、液体であってもよい。例えば、導電媒体6は、熱対流が起こりにくい媒体(環境下)であってもよく、キャピラリーのような極めて微小管で電気泳動を行ってもよい。
また、上記各実施形態において、再印加を行う陽電極および陰電極は、初期印加で用いた電極を交換したものでも、そのままのものであってもよい。
【0103】
(実施例)
上記第1の実施形態に係る電気泳動装置1を、以下のように作製した。
まず、カセット2を幅70mm×長さ40mm×厚7mmの寸法でガラスから形成し、その内部には、電極反応槽3とし幅62mm×長5mm×深さ6.85mmの溝およびサンプルや各実験工程に用いる試薬および洗浄のための試薬槽3を形成した。
電極反応槽3には、白金線からなる陰電極45a及び陽電極45bが一体となった電極部4が、電源と接続するための差込口(電極接続部5a、5b)がZ方向側壁に設けられている。また、電極反応槽3には、アクリルからなる支持板7に接着した導電媒体6を固定するための溝(サイズ)が底面に彫られている。なお、電極部4には、Y方向から支持板に固定された導電媒体6を直接底面の溝へセットできるスリットを形成した。このスリットにより電極反応槽底面の溝だけでなく、上方でも支持板を支えることができる。また、電極部4の陰電極45a及び陽電極45bの先は、導電媒体6に挿入されるようL字型に屈曲されている。また、陰電極45a及び陽電極45bは、電極部4本体に対して陰電極45a及び陽電極45bが本体内でZ軸方向に移動(スライド)できる構造をとった。
【0104】
導電媒体6は、膨潤させた際に0.5mm厚となる乾燥タイプのポリアクリルアミドを主成分とする固定化pH勾配ゲルで、幅1.15mm×長さ52mm×厚0.35mmのサイズに切断したものを用いた。このような導電媒体に対して、支持板のサイズを、幅1.2mm×長さ53mm×高さ14mmとし、幅1.2mm×長さ53mmの面にて両者を固定した。
【0105】
カセット2を、駆動アームを備えたアクリル製のステージ上に固定した。駆動アームはステッピングモータ駆動のX軸およびY軸ステージにより構成した。X軸ステージについてストローク85mm(分解能1μm/パルス)、Y軸ステージについてストローク15mm(分解能1μm/パルス)とし、汎用の多軸ステッピングモータコントローラを介してGPIB接続したパソコン(駆動装置A1)にて制御した。さらに検出装置などの複数の機器との統合制御を行った。
【0106】
また、予め電圧印加時の発熱防止のために、ペルチェ素子を用いた冷却装置10を、ステージ11下部に取り付けておいた。ペルチェ素子は容量51.4W、サイズ40mm×40mmであり、Kタイプの熱電対を温度センサとして接続した温度調節器により設定温度に制御されている。ペルチェ素子の放熱面側には放熱フィンを配置し、空冷用DCファンをさらに配置した。
導電媒体6に電圧を印加するための電圧印加手段として、パソコン制御可能なモジュールタイプの高電圧ユニットを使用した。電圧印加手段の制御を、駆動手段の制御と連動して行った。
【0107】
最大電圧6kV、最大電流1.7mAの10W仕様の高電圧ユニットを用いた。このユニットは、AD/DA変換ボードをインストールしたパソコンにより制御した。これにより、出力電圧設定、電圧および/または電流をモニタリング可能となった。
上記構成において、試薬槽3に、導電媒体膨潤液(電気泳動用緩衝液)、サンプルとして前処理したマウス肝臓サンプル、染色工程に必要な染色液、過剰な染色液及び使用後の電極を洗浄するための洗浄液を充填した。
【0108】
以上の準備を行った後、電極部4を、ステージ上の所定の保管場所(図示せず)から駆動アームの保持部8に保持させた状態で、電極反応槽3の電極接続部5a、5bに自動搬送、設置させた。続いて、支持板7に固定された導電媒体6を、ステージ11上の所定の保管場所(図示せず)から駆動アームの保持部8に保持させた状態で、試薬槽3にてサンプルを導入し、次に膨潤させた。その後、電極反応槽3上方から電極部4のスリットを通り底面の溝上へ自動搬送、設置されることを持って、導電媒体6にL字に屈曲した陰電極45a及び陽電極45bが挿入され、電圧印加が開始されて電気泳動分離が行われた。
なお、200V定電圧5分、200〜1000Vへの単調増加直線傾斜電圧5分、1000V定電圧、1000〜6000V単調増加直線傾斜電圧10分、6000V定電圧の5段階で電圧印加を行った。1000V定電圧および6000V定電圧の終点時間は1μA/1分以下の変動率に収束した時点とした。
【0109】
上記モニタリングされる情報に基づいて、1000V定電圧終了時点で、電圧印加が一旦停止し、駆動アームの保持部8によって導電媒体6が固定された支持板7が保持されつつ、駆動アームの押込部81a、81bによって、陰電極45a及び陽電極45bが電極部4本体内をZ軸方向にそれぞれ100μmスライドさせ(電極間距離が互いに200μm狭まり)、電極移動が行われた。塩および一部塩化せずに残った荷電性物質が初期印加位置に隔離できた状態で、再印加が行われた。そして、6000V定電圧終了時点では、サンプル中の各タンパク質固有の等電点に基づいて、固定化pH勾配ゲル上への分離展開が完了していた。
【0110】
その後、駆動アームの保持部8に保持された状態で、染色へ進み過剰な染色液を洗浄槽3ですすいだ後、ステージ上の所定の初期保管場所に導電媒体6が固定された支持板7が搬送格納された。次に、電極部4も電極反応槽3から駆動アームの保持部8で保持され、試薬槽3の洗浄部で洗浄された後、ステージ上の所定の初期電極保管場所へ搬送格納された。
【0111】
なお、上述した実施形態における電気泳動装置の一部、例えば、駆動装置A1をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、電気泳動装置に内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
また、上述した実施形態における電気泳動装置の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現しても良い。電気泳動装置の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化しても良い。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いても良い。
【0112】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0113】
1、1a、1b、1c・・・電気泳動装置、2、2a、2a’・・・カセット、4、4a、4b・・・電極部、5a、5b・・・電極接続部、6・・・誘電媒体、7・・・支持板、8・・・保持部、9・・・駆動部、10・・・冷却部、11・・・ステージ、41a、41b・・・導電部、42a、42a’、42a’’、42b’’、42b、42b’・・・可動部、43a、43b・・・バネ、44a、44b・・・電極支持部、45a、45a’、45a’’・・・ 陰電極、45b、45b’、45b’’・・・ 陽電極、81・・・保持部、81a、81b・・・押込部、110・・・位置センサ、111・・・報知部、112・・・温度センサ、113・・・湿度センサ、114・・・保湿手段、115・・・電圧センサ、116・・・電流センサ、117・・・スイッチ、A1・・・駆動装置、A11・・・保持部移動制御部、A12・・・電圧電流情報取得部、A13・・・初期印加部、A14・・・電極移動制御部、A15・・・切断具制御部、A16・・・再印加部、A17・・・温度制御部、A18・・・湿度制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル状の誘電媒体に挿入された陽電極と陰電極の電極対であって、電圧が印加された位置から電極間の中心に近い位置に位置する電極対に、電圧を再印加することを特徴とする電気泳動方法。
【請求項2】
前記再印加された位置から電極間の中心に近い位置に位置する電極対に、電圧を再印加することを特徴とする電気泳動方法。
【請求項3】
前記誘電媒体は、等電点電気泳動で用いられる媒体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気泳動方法。
【請求項4】
前記電極対は、電圧が印加された位置から電極間の中心に近い位置へ移動された電極対であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電気泳動方法。
【請求項5】
前記電極対は、電圧の印加が停止された後に、電圧が印加された位置から電極間の中心に近い位置へ移動された電極対であることを特徴とする請求項4に記載の電気泳動方法。
【請求項6】
前記電極対は、電圧が印加された後に逆電圧が印加され、その後、電圧の印加が停止された後に、電圧が印加された位置から電極間の中心に近い位置へ移動された電極対であることを特徴とする電気泳動方法。
【請求項7】
第1の電極対に電圧が印加された後、第1の電極対の電極の位置から電極間の中心に近い位置に設けられている第2の電極対に、電圧を再印加することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電気泳動方法。
【請求項8】
再印加を行う場合に、第2の電極対の電極間の電位差よりも大きい電位差を、第1の電極対の電極間に与えることを特徴とする請求項7に記載の電気泳動方法。
【請求項9】
電圧が印加された位置付近に位置する物質が隔離された後、電圧が印加された位置から電極間の中心に近い位置に位置する電極対に、電圧を再印加することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電気泳動方法。
【請求項10】
電圧が印加されている電極対が前記誘電媒体から引き抜かれることで、電圧が印加された位置付近に位置する物質が隔離された後、電圧が印加された位置から電極間の中心に近い位置に位置する電極対に、電圧を再印加することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電気泳動方法。
【請求項11】
前記電極対に装着された吸着体を取り除くことで、電圧が印加された位置付近に位置する物質が隔離された後、電圧を再印加することを特徴とする請求項9に記載の電気泳動方法。
【請求項12】
前記誘電媒体が切断されることで、電圧が印加された位置付近に位置する物質が隔離された後、電圧を再印加することを特徴とする請求項9に記載の電気泳動方法。
【請求項13】
前記誘電媒体に障壁が挿入されることで、電圧が印加された位置付近に位置する物質が隔離された後、電圧を再印加することを特徴とする請求項9に記載の電気泳動方法。
【請求項14】
ゲル状の誘電媒体に挿入された陽電極と陰電極の電極対であって、電圧が印加された位置から電極間の中心に近い位置に位置する電極対と、
前記電極対に、電圧を再印加する再印加部と、
を備えることを特徴とする電気泳動装置。
【請求項15】
ゲル状の誘電媒体に挿入された陽電極と陰電極の電極対に電圧を印加する初期印加部と、
前記誘電媒体を流れる電流量に基づいて、前記初期印加部によって電圧が印加された電極の位置から電極間の中心に近い位置に位置する電極対に、電圧の再印加を開始する再印加部と、
を備えることを特徴とする請求項14に記載の電気泳動装置。
【請求項16】
前記電極対を移動させる駆動部を備えることを特徴とする請求項14又は15に記載の電気泳動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−242084(P2012−242084A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108709(P2011−108709)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)