電気泳動用ゲルカセット及びその製造方法
【課題】バッチ式容器への収容数を増やすことができ、効率よくゲルを充填できるとともに、ゲルの品質が安定して再現性にも優れ、かつ、電気泳動時に取り扱いやすく作業性がよい電気泳動用ゲルカセット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】板状をなし厚さ方向Tに間隔をあけて対向配置される一対の基材1、前記一対の基材1同士の間に充填されるゲル2、前記基材1の厚さ方向Tに垂直な通電方向Eの一方側で前記ゲル2を露出させる第1開口部3、及び、前記基材1の前記通電方向Eの他方側で前記ゲル2を露出させる第2開口部4を有するカセット部材5と、前記第1開口部3が配置される第1バッファー槽6、及び、前記第1バッファー槽6とは区画され前記第2開口部4が配置される第2バッファー槽7を形成するバッファー槽形成部材8と、を備え、前記バッファー槽形成部材8は、前記カセット部材5に着脱可能とされていることを特徴とする。
【解決手段】板状をなし厚さ方向Tに間隔をあけて対向配置される一対の基材1、前記一対の基材1同士の間に充填されるゲル2、前記基材1の厚さ方向Tに垂直な通電方向Eの一方側で前記ゲル2を露出させる第1開口部3、及び、前記基材1の前記通電方向Eの他方側で前記ゲル2を露出させる第2開口部4を有するカセット部材5と、前記第1開口部3が配置される第1バッファー槽6、及び、前記第1バッファー槽6とは区画され前記第2開口部4が配置される第2バッファー槽7を形成するバッファー槽形成部材8と、を備え、前記バッファー槽形成部材8は、前記カセット部材5に着脱可能とされていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動用ゲルカセット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遺伝子や蛋白質を分離するための方法として、電気泳動法が知られている。電気泳動法とは、核酸やタンパク質などの分離分析対象を、電気泳動の移動速度等の違いに基づいて分離する方法である。特に分離試料(サンプル)を、電解質を含むゲル中に導入しゲルの両端に電圧をかけることで分離する方法が一般的である。
【0003】
蛋白質混合物を分離する際に広く普及している方法のひとつとしてSDS−PAGEと呼ばれるゲル電気泳動法がある。SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)でコートすることで蛋白質に電荷を持たせ、ポリアクリルアミドゲル中を移動させ、蛋白質のサイズにより分離するという方法である。
【0004】
泳動はサンプルの導入後、陰極、陽極の両電極とゲル媒体とを電極用バッファー溶液中で電気的に接触(接続)させ、電流を流すことにより行われる。電流を流し始めると蛋白質は陰極から陽極に向かってゲル中を移動し始め、その分子量が小さいほど速く移動する。
【0005】
SDS−PAGEは、実験者が平板な硝子板の間にゲル作製のための溶液(ゾル状のゲル溶液)を流し込み重合させてゲルプレートを作製し用いるのが一般的であった。しかし近年では利便性、再現性のため、業者が作製したプレキャストゲルカセットの需要が高まっている。プレキャストゲルカセットも基本的には2枚の平板なガラス、または樹脂板の間の領域にゲルが充填されており、泳動時に外部に設けたバッファー溶液と該ゲルとを接触させ使用するものである。
【0006】
プレキャストゲルカセットのゲル(ゲルプレート)の作製の方法としては、カセット一組ごとにゲル溶液を注入することが一般的である。しかしこの方法では、カセットごとに繰り返し充填を行うことになるため、生産効率が悪く、また充填の再現性が確保できず、カセットの品質が安定しないことがある。
【0007】
このような問題に対処する手法として、例えば下記特許文献2には、バッチ式容器の中に複数のカセットを並べ、該バッチ式容器内にゲル溶液を充填するとともにカセット内にゲル溶液を充填して、一度に複数のゲルプレートを作製する手法が記載されている。このようなバッチ方式のゲル充填法によれば、一度に大量のゲルプレート(ゲルカセット)が作製可能であり、さらに同一品質のゲルが作製され好適である。
【0008】
一方、下記特許文献1には、バッファー溶液を貯留するバッファー槽がカセットと一体とされた、バッファー槽一体型の電気泳動用ゲルカセットについての記載がある。一体型とすることで省スペースなシステムを可能にしている。またカセットとバッファー槽とを一体型にすることで、別個にそれぞれ容器を用意する必要が無く作業的にも簡便である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4441653号公報
【特許文献2】特許第3071927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1に記載されているバッファー槽一体型の電気泳動用ゲルカセットでは、バッファー溶液の扱いに関しては簡便であり、ミスも起こらないが、ゲル溶液充填の際に問題が生じることがある。特に大きな問題は、特許文献2のようなバッチ式の充填を行いにくいことである。
【0011】
すなわち、バッファー槽が一体になっていることによりカセットの厚みが大きくなり、またカセットの外面同士を密着させることが出来ず、その結果、バッチ式容器内に収容できる数が少なくなり、ゲル充填の効率を低下させていた。また、バッファー槽一体型のカセット同士を密着させるようにバッチ式容器に収容してゲル溶液を充填しても、カセット同士の間に出来る空間(バッファー槽など)にゲル溶液が入り込む場合があり、充填が安定して行えなかった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、バッチ式容器への収容数を増やすことができ、効率よくゲルを充填できるとともに、ゲルの品質が安定して再現性にも優れ、かつ、電気泳動時に取り扱いやすく作業性がよい電気泳動用ゲルカセット及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明は、板状をなし厚さ方向に間隔をあけて対向配置される一対の基材、前記一対の基材同士の間に充填されるゲル、前記基材の厚さ方向に垂直な通電方向の一方側で前記ゲルを露出させる第1開口部、及び、前記基材の前記通電方向の他方側で前記ゲルを露出させる第2開口部を有するカセット部材と、前記第1開口部が配置される第1バッファー槽、及び、前記第1バッファー槽とは区画され前記第2開口部が配置される第2バッファー槽を形成するバッファー槽形成部材と、を備え、前記バッファー槽形成部材は、前記カセット部材に着脱可能とされていることを特徴とする。
また本発明は、板状をなし厚さ方向に間隔をあけて対向配置される一対の基材、前記一対の基材同士の間に充填されるゲル、前記基材の厚さ方向に垂直な通電方向の一方側で前記ゲルを露出させる第1開口部、及び、前記基材の前記通電方向の他方側で前記ゲルを露出させる第2開口部を有するカセット部材と、前記第1開口部が配置される第1バッファー槽、及び、前記第1バッファー槽とは区画され前記第2開口部が配置される第2バッファー槽を形成するバッファー槽形成部材と、を備えた電気泳動用ゲルカセットの製造方法であって、前記バッファー槽形成部材は、前記カセット部材に着脱可能とされており、前記バッファー槽形成部材を前記カセット部材から取り外した状態で、該カセット部材をバッチ式容器に複数収容し、このバッチ式容器にゾル状のゲル溶液を流入することにより、これらカセット部材の一対の基材同士の間に前記ゲル溶液を充填する充填工程と、前記カセット部材に前記バッファー槽形成部材を装着する装着工程と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る電気泳動用ゲルカセット及びその製造方法によれば、バッファー槽形成部材がカセット部材に着脱可能とされているので、下記の効果を奏する。
すなわち、カセット部材及びバッファー槽形成部材のうち、カセット部材のみをバッチ式容器に収容してゲルを充填できる。詳しくは、一対の基材同士の間にゲル充填のための隙間をあけた状態で、このような基材の対をバッチ式容器に複数収容し、このバッチ式容器にゾル状のゲル溶液を充填するとともに、前記隙間にゲル溶液を充填する。そして、ゲル溶液を重合させてゲル(ゲルプレート)とすることにより、一度にカセット部材が複数作製される。
【0015】
このように、カセット部材にバッファー槽形成部材を装着しない状態で基材間にゲルを充填できるので、バッチ式容器に収容するカセット部材の数を十分に確保でき、生産効率が向上する。また、バッチ式容器を用いてカセット部材に充填されたゲルは特性が均一となるとともに品質が安定して、再現性に優れたものとなる。
【0016】
また、このように作製したカセット部材にバッファー槽形成部材を装着して一体にできることから、この電気泳動用ゲルカセットを備えた電気泳動装置をコンパクトに構成できる。また、カセット部材とバッファー槽形成部材とを一体にすることで、別個にそれぞれ容器(第1、第2バッファー槽)を用意する必要がなく、よって取り扱いやすく、作業性が向上する。
また、電気泳動に用いられたカセット部材は廃棄されるが、バッファー槽形成部材は該カセット部材から取り外して再利用可能であるため、コスト削減の効果が得られる。
【0017】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記バッファー槽形成部材が、接着部材を介して前記カセット部材に装着されることとしてもよい。
【0018】
この場合、バッファー槽形成部材をカセット部材に容易かつ確実に装着でき、作業性が向上する。
【0019】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記バッファー槽形成部材と前記カセット部材との間に配設される弾性部材と、前記バッファー槽形成部材と前記カセット部材とを互いに接近させた状態で保持する保持手段と、を備えたこととしてもよい。
【0020】
この場合、保持手段が、バッファー槽形成部材とカセット部材とを互いに接近させた状態で保持するとともに、これらの間に配設された弾性部材が弾性変形させられてバッファー槽形成部材とカセット部材とに密着される。これにより、バッファー槽形成部材が形成する第1、第2バッファー槽が液密とされて、これらバッファー槽に貯留されるバッファー溶液の漏洩等が防止される。
【0021】
また、保持手段の保持を解除することにより、弾性部材の弾性力によってバッファー槽形成部材とカセット部材とが互いに離間するとともに、該弾性部材は復元変形する。従って、使用済みのカセット部材からバッファー層形成部材を取り外して新しい別のカセット部材に装着する際に、この弾性部材も古いカセット部材から取り外して再利用することができる。従って、コスト削減の効果が得られる。
また、弾性部材は、カセット部材及びバッファー槽形成部材に対して弾性変形により密着させられているのみであるので、該弾性部材をカセット部材又は/及びバッファー槽形成部材から取り外す作業は簡便であり、作業性が向上する。
【0022】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記バッファー槽形成部材の前記第1バッファー槽と前記第2バッファー槽とに、電極がそれぞれ設けられていることとしてもよい。
【0023】
この場合、バッファー槽形成部材の第1、第2バッファー槽に電極がそれぞれ設けられているので、このバッファー槽形成部材を備えた電気泳動用ゲルカセットを電気泳動装置に配設する際に、第1、第2バッファー槽に電極を装着する作業が不要となり、作業性が向上する。尚、この場合、バッファー槽形成部材を繰り返し使用することとすれば、配設した電極が無駄になることもない。
【0024】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記一対の基材のうち、一の基材の外面における前記通電方向の端部には、前記第1開口部及び前記第2開口部のいずれかが形成されており、前記一対の基材のうち、他の基材の外面における前記通電方向の端部に対応する部位には、この外面から前記厚さ方向に後退するように凹部が形成されていることとしてもよい。
【0025】
この場合、バッチ式容器にカセット部材を複数収容する際、該バッチ式容器内においてカセット部材同士が厚さ方向に隣接するように配列し、カセット部材の一の基材の外面における前記通電方向の端部と、このカセット部材に隣り合う別のカセット部材の他の基材の外面における前記通電方向の端部に対応する部位とが対向配置されるようにする。これにより、カセット部材の一の基材の外面における第1開口部又は第2開口部と、このカセット部材に隣接する別のカセット部材の他の基材の外面における凹部とが対向配置されることになる。
【0026】
ここで、凹部は、前記他の基材の外面から厚さ方向に後退するように形成されているので、この凹部と前記第1開口部又は第2開口部との間には隙間が形成されることになる。このような状態で、バッチ式容器にゲル溶液が充填されることにより、ゲル溶液は前記隙間を通って第1開口部又は第2開口部に確実に流入することになり、一対の基材間に精度よく充填される。
【0027】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記カセット部材には、前記一対の基材同士の間と外部とを連通するように、少なくとも1つ以上の通気口が形成されていることとしてもよい。
【0028】
この場合、カセット部材の一対の基材同士の間にゲル溶液を充填するときに、基材間に存在するガスが通気口を通して外部へ排出されてゲル溶液に置換されやすくなる。従って、カセット部材の基材間にゲルをより精度よく充填できる。
【0029】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記基材は、少なくともガラス材料及び樹脂材料のいずれかからなる絶縁体であることとしてもよい。
【0030】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記バッファー槽形成部材は、前記第1バッファー槽及び前記第2バッファー槽を一体に備えたこととしてもよい。
【0031】
この場合、バッファー槽形成部材をカセット部材に着脱する作業がより簡便となる。
【0032】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記バッファー槽形成部材は、前記カセット部材を収容可能な外容器と、前記外容器に収容されて、該外容器の内底面に前記基材の外面を対向させるように配設された前記カセット部材上に載置される内容器と、を備えたこととしてもよい。
【0033】
この場合、カセット部材が外容器に収容されているので、外容器及び内容器により区画されてなる、カセット部材の第1開口部が配置された第1バッファー槽及び第2開口部が配置された第2バッファー槽のうち、例えばいずれか一方から他方へ向けてバッファー溶液が漏洩するようなことがあっても、このバッファー溶液が電気泳動用ゲルカセットの外部へと漏洩することがない。従って、バッファー溶液の漏洩による電気泳動装置の汚損や故障等が防止される。
【0034】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記内容器は、前記外容器に嵌合されることとしてもよい。
【0035】
この場合、外容器と内容器との相対的な固定が容易に行え、かつ、これらの相対的な位置決めも高精度に行える。
【0036】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記基材及び前記バッファー槽形成部材は、射出成形及び真空成形のいずれかにより作製されたこととしてもよい。
【0037】
この場合、基材及びバッファー槽形成部材を射出成形により作製すれば、高精度な成形が可能となる。また、基材及びバッファー槽形成部材を真空成形により作製すれば、より薄肉・安価に製造でき、コスト削減の効果が得られる。
【0038】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記基材の外面のうち、少なくとも前記第1開口部及び前記第2開口部のいずれかを含む領域が、剥離可能な封止部材により封止されており、前記封止部材は、前記接着部材を介して前記外面に貼付されているとともに、この外面から剥離されることにより、前記接着部材を接着可能に露出させることとしてもよい。
【0039】
この場合、封止部材が、少なくとも第1開口部及び第2開口部のいずれかを含む領域を封止しているので、未使用のカセット部材内に充填されたゲルを外気等に晒すことなく清浄に保持でき、ゲルの品質が良好に維持される。また、電気泳動を行う際には、この封止部材を剥離することにより、少なくとも第1開口部及び第2開口部のいずれかが開封されるとともに、バッファー槽形成部材をカセット部材に装着するための接着部材が露出されるので、該接着部材を介してバッファー槽形成部材をカセット部材に一体に装着して、電気泳動用ゲルカセットが簡便に作製される。従って、ゲルの品質を良好に維持しつつ、電気泳動時の作業性を向上することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る電気泳動用ゲルカセット及びその製造方法によれば、バッチ式容器への収容数を増やすことができ、効率よくゲルを充填できるとともに、ゲルの品質が安定して再現性にも優れ、かつ、電気泳動時に取り扱いやすく作業性がよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット10の(a)分解斜視図、(b)斜視図である。
【図2】電気泳動用ゲルカセット10の(a)カセット部材5の構成を説明する側断面図、(b)側断面図である。
【図3】電気泳動用ゲルカセット10の(a)上面図、(b)側面図である。
【図4】電気泳動用ゲルカセット10の接着部材12を説明する上面図である。
【図5】電気泳動用ゲルカセット10のカセット部材5にゲル2を充填する方法を説明する図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット20のバッファー槽形成部材8を示す上面図である。
【図7】電気泳動用ゲルカセット20のバッファー槽形成部材8及び弾性部材21を示す側面図である。
【図8】電気泳動用ゲルカセット20のバッファー槽形成部材8及び弾性部材21を示す下面図である。
【図9】電気泳動用ゲルカセット20の構成を説明する(a)分解側断面図、(b)側断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット30の(a)上面図、(b)側断面図である。
【図11】電気泳動用ゲルカセット30のカセット部材5を示す(a)上面図、(b)側断面図である。
【図12】カセット部材5の変形例を示す図である。
【図13】電気泳動用ゲルカセット30の変形例を示す側断面図である。
【図14】本発明の第4実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット40の側断面図である。
【図15】電気泳動用ゲルカセット40の変形例を示す側断面図である。
【図16】本発明の第5実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット50の側断面図である。
【図17】電気泳動用ゲルカセット50の変形例を示す側断面図である。
【図18】本発明の第6実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット60の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット10について、図1〜図5を参照して説明する。
この電気泳動用ゲルカセット10は、核酸やタンパク質などの分離分析対象(サンプル)を、電気泳動の移動速度等の違いに基づいて分離する電気泳動装置(不図示)に着脱可能に配設されるものである。詳しくは、この電気泳動装置は、サンプルの等電点(電荷)の違いに基づく等電点電気泳動、及び、分子量の違いに基づくSDS−PAGEの2つの電気泳動ステップを組み合わせてなる二次元電気泳動装置である。
【0043】
図1〜図3に示すように、電気泳動用ゲルカセット10は、板状をなし厚さ方向Tに間隔をあけて対向配置される一対の基材1(1A、1B)、一対の基材1同士の間に充填されるゲル2、基材1の厚さ方向Tに垂直な通電方向Eの一方側(図2(b)における右側)でゲル2を露出させる第1開口部3、及び、基材1の通電方向Eの他方側(図2(b)における左側)でゲル2を露出させる第2開口部4を有するカセット部材5と、第1開口部3が配置される第1バッファー槽6、及び、第1バッファー槽6とは区画され第2開口部4が配置される第2バッファー槽7を形成するバッファー槽形成部材8と、を備えている。
【0044】
一対の基材1は、少なくともガラス材料及び樹脂材料のいずれかからなる絶縁体であり、本実施形態では透明性を有する樹脂材料が用いられている。この樹脂材料としては、公知の低酸素透過性部材が用いられることが好ましく、特にPMMA(ポリメチルメタクリレート)が望ましい。基材1は、射出成形により作製されている。
【0045】
図3(a)において、一対の基材1は、それぞれ矩形板状をなしており、その長手方向が前記通電方向Eとなっている。一対の基材1のうち、一の基材1Aの外面(厚さ方向Tの外側を向く面)における通電方向Eの両端部には、矩形孔状若しくはスリット状の第1開口部3と第2開口部4とが、通電方向E及び厚さ方向Tに垂直な幅方向Wに延びて形成されている。図2(a)において、本実施形態では、基材1Aの外面における通電方向Eの一端部(図2(a)における右端部)に第1開口部3が形成され、通電方向Eの他端部(図2(a)における左端部)に第2開口部4が形成されている。また、これら第1開口部3及び第2開口部4は、一の基材1Aを厚さ方向Tに貫通して形成されている。
【0046】
また、一対の基材1のうち、他の基材1Bにおいて基材1A側を向く面は、その外周縁以外の領域が矩形穴状に凹んで形成されている。そして、これら基材1A、1Bは、互いに向かい合う面の外周縁同士が超音波溶着されることにより、一体とされている。尚、基材1A、1Bは、互いの前記外周縁同士が接着剤や接着シールなどを用いて固着されていてもよいが、前述のように、超音波溶着で固着されることが部材削減等を鑑みてより好ましい。また、基材1Bに矩形穴状の領域を形成せず、例えば、基材1A、1Bの対向する面同士の間にスペーサー部材を配設した状態で、これら基材1同士を一体に固着しても構わない。
このように基材1A、1B同士が固着された状態で、これら一対の基材1間には、ゲル2を充填するための扁平した直方体状空間(充填領域)が形成されており、この充填領域に第1開口部3及び第2開口部4が連通している。
【0047】
また、図3(b)に示すように、カセット部材5には、一対の基材1同士の間(前記充填領域)と外部とを連通するように、少なくとも1つ以上の通気口11が形成されている。本実施形態では、カセット部材5において通電方向Eを向く両面のうち、前記他方側を向く面(図3(a)において下側を向く面)に通気口11が1つ形成されている。尚、通気口11は、カセット部材5に複数形成されていてもよく、配置される位置も限定されない。
【0048】
また、図2(a)に示すように、他の基材1Bの外面において、基材1Aの外面の通電方向Eの一端部に対応する部位には、基材1Bの外面から厚さ方向Tに後退するように凹部9が形成されている。詳しくは、凹部9は、基材1Bの外面における前記一端部において、基材1Aの第1開口部3の厚さ方向Tに対応する部位に位置している。本実施形態では、凹部9は、他の基材1Bの外面において通電方向Eに沿う内側(中央)から外側(前記一方側、図2(a)における右側)へ向かうに従い漸次厚さ方向Tの基材1A側へ向かうように、テーパー状に形成されている。
【0049】
また、ゲル2は、例えばアクリルアミドゲル等の電気泳動用のゲルであり、ゾル状のゲル溶液を重合して形成されている。ゲル2は、一対の基材1間に充填されてプレート状(ゲルプレート)とされており、透明な基材1を通して外部から視認可能となっている。図2(b)に示されるように、カセット部材5内において、ゲル2は、基材1同士の間、第1開口部3内及び第2開口部4内に充填されていて、第1開口部3と第2開口部4とにおいて外部に露出されている。
【0050】
また、バッファー槽形成部材8は、樹脂材料等の絶縁体からなり、射出成形により作製されている。図1(a)に示されるように、本実施形態のバッファー槽形成部材8は、矩形枠状をなしており、その通電方向E及び幅方向Wの外形が、基材1の外面の外形と略同一とされている。バッファー槽形成部材8は、矩形状の外枠部8Aと、外枠部8Aにおいて幅方向Wに対向する面同士を連結するように延びる一対の壁部8Bと、を備えている。
【0051】
すなわち、バッファー槽形成部材8の外枠部8Aの内部領域は、一対の壁部8Bによって3つの領域に区画されている。そして、バッファー槽形成部材8において通電方向Eに分割された前記3つの領域のうち、基材1Aの第1開口部3に対応する領域が前記第1バッファー槽6とされ、第2開口部4に対応する領域が前記第2バッファー槽7とされる。詳しくは、図1(b)において、バッファー槽形成部材8が基材1A上に配設された状態で、前記3つの領域はそれぞれ上部が開口された矩形容器状をなしており、液体を貯留可能となっている。このように、本実施形態のバッファー槽形成部材8は、第1バッファー槽6及び第2バッファー槽7を一体に備えている。
【0052】
また、特に図示しないが、バッファー槽形成部材8は、その第1バッファー槽6と第2バッファー槽7とに、電極がそれぞれ設けられている。これら電極は、例えば、銀コロイドペースト等がバッファー槽形成部材8に塗布されて作製されてもよいが、白金等の導電性金属線で作製されることがより好ましい。これら電極は、第1、第2バッファー槽6、7内においてバッファー溶液に浸漬可能な位置に配設され、一対の陰極と陽極とからなる。
尚、バッファー槽形成部材8における前記3つの領域のうち、第1、第2バッファー槽6、7に挟まれた中央の領域は、電気泳動の状況を確認する視認領域として用いたり、冷却水を貯留して冷却槽に用いたりすることができる。
【0053】
そして、バッファー槽形成部材8は、カセット部材5に着脱可能とされている。詳しくは、図4に示すように、カセット部材5の基材1Aの外面には、バッファー槽形成部材8において厚さ方向Tを向く端面に対応した形状とされた両面接着性テープ等からなる接着部材12が配設されており、バッファー槽形成部材8は、この接着部材12を介してカセット部材5に装着されるようになっている。
【0054】
尚、図4に示されるように、接着部材12は切れ目なく一体に形成されており、これにより、バッファー槽形成部材8とカセット部材5との連結部分における液密性が確保されるとともに、第1バッファー槽6及び第2バッファー槽7が液密の容器状に形成されるようになっている。
【0055】
次に、本実施形態の電気泳動用ゲルカセット10を製造する方法について説明する。
この電気泳動用ゲルカセット10は、バッファー槽形成部材8をカセット部材5から取り外した状態で、該カセット部材5をバッチ式容器13に複数収容し、このバッチ式容器13にゾル状のゲル溶液を流入することにより、これらカセット部材5の一対の基材1同士の間に前記ゲル溶液を充填する充填工程と、カセット部材5にバッファー槽形成部材8を装着する装着工程と、を備えて製造されている。
【0056】
(充填工程)
図5に示されるように、バッチ式容器13は、複数のカセット部材5を収容可能な大きさの例えば直方体状容器とされている。カセット部材5は、予め一対の基材1A、1B同士を前述した超音波溶着等により固着して前記充填領域を形成しておき、基材1Aの第2開口部4をシール材等で封止しておく。
【0057】
次いで、複数の前記カセット部材5をバッチ式容器13内に収容する。この際、図5に示されるように、カセット部材5の通電方向Eの一端部(第1開口部3側の端部)をバッチ式容器13の底部に配置して、カセット部材5の通電方向Eが鉛直方向に沿うようにする。また、これらカセット部材5同士は、互いに厚さ方向Tに隣接するように配列し、一のカセット部材5の基材1Aの外面における前記一端部の第1開口部3と、このカセット部材5に隣り合う他のカセット部材5の基材1Bの外面における前記一端部の凹部9とが対向配置されるようにする。
次いで、バッチ式容器13に底部からゲル溶液を送液する。尚、この際、基材1Aには、予め前記接着部材12が貼付されていてもよい。カセット部材5にゲル溶液が充填された後、該ゲル溶液を重合させることにより、ゲル2が形成される。
【0058】
(装着工程)
次いで、図1に示されるように、前記カセット部材5にバッファー槽形成部材8を装着する。
本実施形態では、図4で説明したように、バッファー槽形成部材8は接着部材12を介してカセット部材5の基材1Aに固着される。
【0059】
このように製造された電気泳動用ゲルカセット10を電気泳動装置に装着し、第1、第2バッファー槽6、7にバッファー溶液を貯留して、これらの電極同士の間に電圧を印加し電流を流すことにより、サンプルの分離が行われるようになっている。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット10及びその製造方法によれば、バッファー槽形成部材8がカセット部材5に着脱可能とされているので、下記の効果を奏する。
すなわち、カセット部材5及びバッファー槽形成部材8のうち、カセット部材5のみをバッチ式容器13に収容してゲル2を充填できる。詳しくは、一対の基材1A、1B同士の間にゲル充填のための隙間(充填領域)をあけた状態で、このような基材1の対をバッチ式容器13に複数収容し、このバッチ式容器13にゾル状のゲル溶液を充填するとともに、前記隙間にゲル溶液を充填する。そして、ゲル溶液を重合させてゲル(ゲルプレート)2とすることにより、一度にカセット部材5が複数作製される。
【0061】
このように、カセット部材5にバッファー槽形成部材8を装着しない状態で基材1A、1B間にゲル2を充填できるので、バッチ式容器13に収容するカセット部材5の数を十分に確保でき、生産効率が向上する。また、バッチ式容器13を用いてカセット部材5に充填されたゲル2は特性が均一となるとともに品質が安定して、再現性に優れたものとなる。
【0062】
また、このように作製したカセット部材5にバッファー槽形成部材8を装着して一体にできることから、この電気泳動用ゲルカセット10を備えた電気泳動装置をコンパクトに構成できる。詳しくは、本実施形態のように、バッファー槽形成部材8の外形(通電方向Eの外形及び幅方向Wの外形)を基材1の前記外形と略同一に設定した場合には、電気泳動装置の通電方向Eの外形及び幅方向Wの外形を省スペースに構成できる。
【0063】
また、カセット部材5とバッファー槽形成部材8とを一体にすることで、別個にそれぞれ容器(第1、第2バッファー槽)を用意する必要がなく、よって取り扱いやすく、作業性が向上する。
また、電気泳動に用いられたカセット部材5は廃棄されるが、バッファー槽形成部材8は該カセット部材5から取り外して再利用可能であるため、コスト削減の効果が得られる。
【0064】
また、バッファー槽形成部材8が、接着部材12を介してカセット部材5に装着されるようになっているので、バッファー槽形成部材8をカセット部材5に容易かつ確実に装着でき、作業性が向上する。尚、本実施形態では、両面接着性テープ等からなる接着部材12として説明したが、これに限定されるものではなく、例えばそれ以外の接着剤等からなる接着部材12を用いても構わない。
【0065】
また、特に図示しないが、例えば、基材1の外面のうち、少なくとも第1開口部3及び第2開口部4のいずれかを含む領域が、剥離可能な封止部材により封止されており、前記封止部材は、接着部材12を介して前記外面に貼付されているとともに、この外面から剥離されることにより、接着部材12を接着可能に露出させることとしてもよい。
【0066】
この場合、前記封止部材が、少なくとも第1開口部3及び第2開口部4のいずれかを含む領域を封止しているので、未使用のカセット部材5内に充填されたゲル2を外気等に晒すことなく清浄に保持でき、ゲル2の品質が良好に維持される。また、電気泳動を行う際には、この封止部材を剥離することにより、少なくとも第1開口部3及び第2開口部4のいずれかが開封されるとともに、バッファー槽形成部材8をカセット部材5に装着するための接着部材12が露出されるので、該接着部材12を介してバッファー槽形成部材8をカセット部材5に一体に装着して、電気泳動用ゲルカセット10が簡便に作製される。従って、ゲル2の品質を良好に維持しつつ、電気泳動時の作業性を向上することができる。
【0067】
また、バッファー槽形成部材8の第1、第2バッファー槽6、7に電極がそれぞれ設けられているので、このバッファー槽形成部材8を備えた電気泳動用ゲルカセット10を電気泳動装置に配設する際に、第1、第2バッファー槽6、7に電極を装着する作業が不要となり、作業性が向上する。尚、この場合、バッファー槽形成部材8を繰り返し使用することとすれば、配設した電極が無駄になることもない。
【0068】
また、カセット部材5の一対の基材1A、1Bのうち、一の基材1Aの外面における通電方向Eの一端部に第1開口部3が形成されており、他の基材1Bの外面における基材1Aの前記一端部に対応する部位に凹部9が形成されているので、下記の効果を奏する。すなわち、図5で説明したように、バッチ式容器13にカセット部材5を複数収容する際、該バッチ式容器13内においてカセット部材5同士が厚さ方向Tに隣接するように配列され、カセット部材5の基材1Aの外面における第1開口部3と、このカセット部材5に隣接する別のカセット部材5の基材1Bの外面における凹部9とが対向配置される。
【0069】
ここで、凹部9は、基材1Bの外面から厚さ方向Tに後退するように形成されているので、この凹部9と前記第1開口部3との間には隙間が形成されることになる。このような状態で、バッチ式容器13にゲル溶液が充填されることにより、ゲル溶液は前記隙間を通って第1開口部3内に確実に流入することになるとともに、一対の基材1A、1B同士の間(充填領域)に精度よく充填される。従って、カセット部材5へのゲル2の充填が、確実かつ高精度に行える。
【0070】
尚、前述の説明では、基材1Aの外面における通電方向Eの一端部に第1開口部3が形成され、基材1Bの外面において、基材1Aの外面の前記一端部の第1開口部3に対応する部位にテーパー状の凹部9が形成されているとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、凹部9は、基材1Bの外面のうち、基材1Aの外面における通電方向Eの他端部の第2開口部4に対応する部位に形成されていてもよい。また、凹部9の形状はテーパー状に限られるものではなく、例えば、基材1Bの外面から一段窪まされた段部や溝等であってもよい。
【0071】
また、カセット部材5には、一対の基材1A、1B同士の間と外部とを連通するように、少なくとも1つ以上の通気口11が形成されているので、カセット部材5の一対の基材1A、1B同士の間にゲル溶液を充填するときに、基材1間に存在する不活性ガスや空気等のガスが通気口11を通して外部へ排出されてゲル溶液に置換されやすくなる。従って、カセット部材5の基材1間にゲル2をより精度よく充填できる。尚、本実施形態では、図5に示されるカセット部材5の鉛直方向(通電方向E)に沿う上端部に通気口11が形成されていることから、前述の効果が確実に得られるようになっている。
【0072】
また、本実施形態のバッファー槽形成部材8は、第1バッファー槽6及び第2バッファー槽7を一体に備えているので、該バッファー槽形成部材8をカセット部材5に着脱する作業がより簡便となる。尚、本実施形態では、基材1の通電方向Eの一端部に第1開口部3が配置されるとともにバッファー槽形成部材8の一端部に該第1開口部3を含む第1バッファー槽6が配置され、基材1の通電方向Eの他端部に第2開口部4が配置されるとともにバッファー槽形成部材8の他端部に該第2開口部4を含む第2バッファー槽7が配置されるとしたが、これらの配置が互いに逆向き(通電方向Eの一端部と他端部とが反対)にされていてもよい。
【0073】
また、基材1及びバッファー槽形成部材8は、射出成形により作製されているので、これら基材1及びバッファー槽形成部材8を高精度に成形することが可能である。尚、基材1及びバッファー槽形成部材8は、射出成形以外の真空成形により作製されていてもよい。この場合、より薄肉・安価に作製でき、コスト削減の効果が得られる。また、基材1及びバッファー槽形成部材8は、射出成形及び真空成形以外の製法により作製されていても構わない。
【0074】
また、この電気泳動用ゲルカセット10は、第1、第2バッファー槽6、7がカセット部材5上に位置しており、カセット部材5の基材1Bの外面を電気泳動装置上に直接当接して配設できる。従って、電気泳動装置に設けられたペルチェ素子や冷却ファン等の冷却手段等によりカセット部材5を冷却しやすくなっていて、温度調整が容易である。
【0075】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット20について、図6〜図9を参照して説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
本実施形態の電気泳動用ゲルカセット20は、前述の電気泳動用ゲルカセット10で説明した接着部材12の代わりに、バッファー槽形成部材8とカセット部材5との間に配設される弾性部材21と、バッファー槽形成部材8とカセット部材5とを互いに接近させた状態で保持する保持手段22と、を備えている。
【0077】
弾性部材21は、シリコンゴム、ウレタンゴム等の軟質の弾性材料からなり、図7及び図8に示すように、バッファー槽形成部材8において厚さ方向Tを向く端面に対応した形状とされている。図9(a)(b)に示すように、バッファー槽形成部材8は、この弾性部材21を介してカセット部材5に装着されるようになっている。
【0078】
尚、図示の例では、弾性部材21が、バッファー槽形成部材8に固着等により一体とされた状態(支持された状態)で、カセット部材5に当接されるようになっているが、これに限定されるものではない。すなわち、弾性部材21は、カセット部材5に一体とされた状態で、バッファー槽形成部材8に当接されるようになっていてもよい。或いは、弾性部材21は、カセット部材5及びバッファー槽形成部材8とは別体とされているとともに、電気泳動用ゲルカセット20の組立時にこれらの間に配設されてもよい。
【0079】
また、図8に示されるように、弾性部材21は切れ目なく一体に形成されており、これにより、バッファー槽形成部材8とカセット部材5との連結部分における液密性が確保されるとともに、第1バッファー槽6及び第2バッファー槽7が液密の容器状に形成されるようになっている。
【0080】
また、図9(a)(b)において、保持手段22は、バッファー槽形成部材8の外枠部8Aに設けられた取付板23と、カセット部材5の基材1Bの外面に厚さ方向Tから当接して該カセット部材5をバッファー槽形成部材8側へ向けて支持する支持板24と、取付板23及び支持板24を互いに係合させる係合部25と、を備えている。
【0081】
図6〜図8に示すように、取付板23は、バッファー槽形成部材8の外枠部8Aから通電方向Eの外側へ向けて突出して形成されている。図示の例では、取付板23は、外枠部8Aの外周面から通電方向Eの一方側と他方側とに突出して、一対ずつ設けられている。これら取付板23には、厚さ方向Tに貫通して取付孔23Aが形成されている。
【0082】
図9(a)(b)に示すように、支持板24は、板状又は容器状をなし基材1Bの外面に当接される支持本体24Aと、この支持本体24Aの通電方向Eの端部に設けられて取付板23に対向配置される支持取付部24Bと、を備えている。図示の例では、支持本体24Aは、カセット部材5を収容するように断面コ字状となっており、支持取付部24Bは、該支持本体24Aの前記端部から通電方向Eに向けて延びている。
【0083】
また、係合部25は、支持板24の支持取付部24Bに配設されるナット25Aと、取付板23の取付孔23Aを通してこのナット25Aに螺合されるボルト25Bと、を備えている。
そして、これらボルト25B・ナット25A同士を螺合により締め付けることで、カセット部材5とバッファー槽形成部材8とが厚さ方向Tに接近するようになっており、図示の例では、ボルト25B・ナット25Aを締め付けた状態で、支持板24の支持取付部24Bと取付板23とが当接している。
尚、係合部25として、ボルト25B・ナット25A以外の、例えば弾性を利用したスナップフィットやクリップ等の係合を用いても構わない。
【0084】
本実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット20によれば、保持手段22が、バッファー槽形成部材8とカセット部材5とを互いに接近させた状態で保持するとともに、これらの間に配設された弾性部材21が弾性変形させられてバッファー槽形成部材8とカセット部材5とに密着される。これにより、バッファー槽形成部材8が形成する第1、第2バッファー槽6、7が液密とされて、これらバッファー槽に貯留されるバッファー溶液の漏洩等が防止される。
【0085】
また、保持手段22の保持を解除することにより、弾性部材21の弾性力によってバッファー槽形成部材8とカセット部材5とが互いに離間するとともに、該弾性部材21は復元変形する。従って、使用済みのカセット部材5からバッファー層形成部材8を取り外して新しい別のカセット部材5に装着する際に、この弾性部材21も古いカセット部材5から取り外して再利用することができる。従って、コスト削減の効果が得られる。
また、弾性部材21は、カセット部材5及びバッファー槽形成部材8に対して弾性変形により密着させられているのみであるので、該弾性部材21をカセット部材5又は/及びバッファー槽形成部材8から取り外す作業は簡便であり、作業性が向上する。
【0086】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット30について、図10〜図13を参照して説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0087】
本実施形態の電気泳動用ゲルカセット30は、前述したバッファー槽形成部材8の代わりに、カセット部材5に着脱可能なバッファー槽形成部材31を備えている。バッファー槽形成部材31は、カセット部材5を収容可能な外容器32と、外容器32に収容されて、該外容器32の内底面32Aに基材1B(1)の外面を対向させるように配設されたカセット部材5上に載置される内容器33と、を備えている。また、この電気泳動用ゲルカセット30は、バッファー槽形成部材31とカセット部材5との間に配設される弾性部材35、37と、バッファー槽形成部材31とカセット部材5とを互いに接近させた状態で保持する保持手段38と、を備えている。
【0088】
図10(a)に示すように、バッファー槽形成部材31の外容器32は、上部が開口された矩形容器状をなしており、通電方向E及び幅方向Wの外形がカセット部材5の前記外形よりも僅かに大きく設定されていて、該カセット部材5を収容可能となっている。また、外容器32の周壁のうち、幅方向Wに向かい合う一対の内壁面における通電方向Eの中央部は、他の部分よりもそれぞれ窪まされて嵌合凹部34とされている。
【0089】
また、図10(b)に示すように、外容器32の厚さ方向Tの外形は、カセット部材5の前記外形よりも大きく設定されている。また、外容器32の内底面32Aと、該外容器32に収容されたカセット部材5の基材1Bの外面との間には、幅方向Wに延在する帯状の弾性部材35が配設されている。このように弾性部材35が配設されていることにより、基材1Bと内底面32Aとの間に形成される扁平した直方体状空間が通電方向Eの一方側と他方側とに液密に区画されている。尚、弾性部材35は、通電方向Eに間隔をあけて複数配設されていてもよい。
【0090】
また、図10(a)において、バッファー槽形成部材31の内容器33は、上部が開口された矩形容器状をなしており、幅方向Wに延在している。内容器33の通電方向Eの外形は外容器32よりも小さく設定されており、内容器33が外容器32内に収容された状態で、該内容器33の通電方向Eの一方側(図10(a)における左側)にカセット部材5の第1開口部3が配置されるとともに第1バッファー槽6が形成され、該内容器33の通電方向Eの他方側(図10(a)における右側)にカセット部材5の第2開口部4が配置されるとともに第2バッファー槽7が形成されている。
【0091】
また、内容器33の幅方向Wの外形は、外容器32の一対の嵌合凹部34間の距離と略同一に設定されているとともに、内容器33の幅方向Wの両端部は嵌合凸部36とされて、前記嵌合凹部34に嵌合可能となっている。
【0092】
このように、嵌合凸部36と嵌合凹部34とが嵌合することにより、内容器33は、外容器32に嵌合されるようになっている。また、嵌合凸部36と嵌合凹部34とが嵌合することによって、カセット部材5に対して外容器32及び内容器33が接近させられた状態で保持されるようになっている。すなわち、本実施形態では、嵌合凸部36と嵌合凹部34とからなる嵌合部38が、前記保持手段38となっている。
【0093】
また、図10(b)において、内容器33の外底面33Aと、外容器32に収容されたカセット部材5の基材1Aの外面との間には、幅方向Wに延在する帯状の弾性部材37が配設されている。このように弾性部材37が配設されていることにより、基材1Aと外底面33Aとの間に形成される空間が通電方向Eの一方側と他方側とに液密に区画されているとともに、外容器32内において内容器33の前記一方側に位置する第1バッファー槽6と前記他方側に位置する第2バッファー槽7とが液密に区画されている。尚、弾性部材37は、通電方向Eに間隔をあけて複数配設されていてもよい。
また、電気泳動時には、内容器33には例えば冷却水が貯留される。
【0094】
本実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット30によれば、前述の実施形態と同様の効果が得られるとともに、下記の効果を奏する。すなわち、カセット部材5が外容器32に収容されているので、外容器32及び内容器33により区画されてなる、カセット部材5の第1開口部3が配置された第1バッファー槽6及び第2開口部4が配置された第2バッファー槽7のうち、例えばいずれか一方から他方へ向けてバッファー溶液が漏洩するようなことがあっても、このバッファー溶液が電気泳動用ゲルカセット30の外部へと漏洩することがない。従って、バッファー溶液の漏洩による電気泳動装置の汚損や故障等が防止される。
【0095】
また、内容器33が外容器32に嵌合されることにより、これら内容器33及び外容器32(すなわちバッファー槽形成部材31)が、弾性部材37、35を介してカセット部材5に接近した状態で保持されるようになっているので、内容器33と外容器32との相対的な固定が容易に行え、かつ、これらの相対的な位置決めも高精度に行える。
【0096】
尚、図11(a)(b)に示すように、本実施形態の電気泳動用ゲルカセット30に用いられるカセット部材5は、前述の電気泳動用ゲルカセット10、20同様に、基材1Aの外面における通電方向Eの一端部と他端部とに、第1開口部3と第2開口部4とが1つずつ形成されたものであるが、カセット部材5の形状及び第1開口部3、第2開口部4の配置や数は、図示の例に限定されるものではない。
【0097】
図12(a)〜(d)は、カセット部材5の変形例を示している。
図12(a)に示す例では、基材1Aの外面における通電方向Eの一端部(図12における左端部)と他端部(図12における右端部)とに第1開口部3と第2開口部4とが形成されており、それ以外に、カセット部材5の外面において通電方向Eの一方側(図12における左側)を向く面が開口されて、ゲル2を外部に露出させる第1開口部3となっている。すなわち、図示の例では、カセット部材5の一端部に第1開口部3が2つ形成されており、これら第1開口部3は、厚さ方向Tと通電方向Eとにそれぞれ開口されている。
【0098】
また、図12(b)に示す例では、第1開口部3は、図12(a)と同様にカセット部材5の一端部に2つ形成されている。また、カセット部材5の外面において通電方向Eの他方側(図12における右側)を向く面が開口されて、ゲル2を外部に露出させる第2開口部4とされている。この例では、カセット部材5の他端部に前記第2開口部4が1つだけ形成されており、基材1Aの外面には第2開口部4は形成されていない。
【0099】
また、図12(c)に示す例では、基材1Bの一端部が、基材1Aの一端部よりも前記一方側に突出して形成されており、これら基材1A、1Bの一端部同士の間に第1開口部3が形成されている。すなわち、この第1開口部3は、厚さ方向T及び通電方向Eに向けて開口されており、基材1A、1B間に充填されたゲル2の一端部も同様に、厚さ方向T及び通電方向Eに露出されている。また、第2開口部4は、図12(b)と同様に通電方向Eの他方側へ向けて開口して形成されている。この例では、基材1Aの外面には、第1、第2開口部3、4は形成されていない。
【0100】
また、図12(d)に示す例では、カセット部材5の外面において通電方向Eの一方側を向く面が開口されて、ゲル2を外部に露出させる第1開口部3となっている。また、カセット部材5の外面において通電方向Eの他方側を向く面が開口されて、ゲル2を外部に露出させる第2開口部4となっている。この例では、基材1Aの外面には、第1、第2開口部3、4は形成されていない。
【0101】
このように、カセット部材5の形状、及び、第1、第2開口部3、4の配置や数は種々に設定できる。図13に示す例では、バッファー槽形成部材31と、図12(c)で説明したカセット部材5とを組み合わせている。また、図示の例では、カセット部材5の通電方向Eを向く両端部と外容器32の周壁との間に、それぞれ隙間が設けられている。これら隙間は、作業用のスペースであるとともに、バッファー溶液をゲル2の露出部分に十分に供給するために設けられている。
【0102】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット40について、図14、図15を参照して説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0103】
本実施形態の電気泳動用ゲルカセット40は、前述の電気泳動用ゲルカセット30とは外容器32に対する内容器33の配置や形状が異なっている。この電気泳動用ゲルカセット40では、内容器33は、外容器32内における通電方向Eの他端部(図14における右端部)に配置されている。また、内容器33の底部には、第2開口部4よりも大きい矩形状等からなる孔33Bが形成されている。そして、この内容器33内が第2バッファー槽7とされ、外容器32内における内容器33の通電方向Eの一方側に位置して第1バッファー槽6が形成されている。
【0104】
また、内容器33の外底面33Aと、外容器32に収容されたカセット部材5の基材1Aの外面との間には、孔33Bを通電方向Eに挟むように一対の弾性部材37が配設されている。尚、本実施形態においては、外容器32の内底面32Aとカセット部材5の基材1Bの外面との間には、弾性部材35は配設されていない。
【0105】
本実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット40によれば、前述の実施形態と同様の効果が得られる。尚、本実施形態では、内容器33が、カセット部材5の第2開口部4上に配置されているとともに、第2バッファー槽7を形成しているとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、内容器33が、カセット部材5の第1開口部3上に配置されているとともに、第1バッファー槽6を形成することとしてもよい。
【0106】
また、図15はこの電気泳動用ゲルカセット40の変形例を示している。
図示の例では、内容器33が、通電方向Eに間隔をあけて2つ配設されており、これら内容器33のうち通電方向Eの一方側(図15における左側)に位置する内容器33が、第1開口部3上に配置されて第1バッファー槽6を形成している。また、通電方向Eの他方側(図15における右側)に位置する内容器33が、第2開口部4上に配置されて第2バッファー槽7を形成している。この場合、電気泳動時には、外容器32内における一対の内容器33同士の間に、例えば冷却水が貯留される。
【0107】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット50について、図16、図17を参照して説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0108】
本実施形態の電気泳動用ゲルカセット50は、前述したバッファー槽形成部材8、31の代わりに、カセット部材5に着脱可能なバッファー槽形成部材51を備えている。このバッファー槽形成部材51は、第1開口部3が配置される第1バッファー槽6と、第2開口部4が配置される第2バッファー槽7とを別体に備えている。
【0109】
図16に示すように、バッファー槽形成部材51は、カセット部材5の基材1A上に通電方向Eに互いに離間して載置される容器52、53を備えている。これら容器52、53のうち、通電方向Eの一方側(図16における左側)に位置する容器52は、第1開口部3上に配置されて第1バッファー槽6を形成している。また、通電方向Eの他方側(図16における右側)に位置する容器53は、第2開口部4上に配置されて第2バッファー槽7を形成している。
【0110】
容器52の底部には、第1開口部3よりも大きい矩形状等からなる孔52Bが形成されている。また、容器53の底部には、第2開口部4よりも大きい矩形状等からなる孔53Bが形成されている。また、容器52の外底面52Aと、カセット部材5の基材1Aの外面との間には、孔52Bを通電方向Eに挟むように一対の弾性部材37が配設されている。また、容器53の外底面53Aと、カセット部材5の基材1Aの外面との間には、孔53Bを通電方向Eに挟むように一対の弾性部材37が配設されている。また、特に図示しないが、この電気泳動用ゲルカセット50は、バッファー槽形成部材51とカセット部材5とを互いに接近させた状態で保持する保持手段を備えている。尚、これら弾性部材37及び前記保持手段の代わりに、前述した接着部材12を用いてもよい。
【0111】
本実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット50によれば、前述の実施形態と同様の効果が得られる。また、この場合、電気泳動用ゲルカセット50を電気泳動装置に装着する際に、外形精度のよいカセット部材5で位置決め(通電方向E及び幅方向Wの位置決め)ができることから、一次元目の電気泳動と二次元目の電気泳動との接続位置が高精度に設定されて、好ましい。
尚、本実施形態では、容器52の底部には、第1開口部3よりも大きい孔52Bが形成されており、容器53の底部には、第2開口部4よりも大きい孔53Bが形成されているとしたが、これに限定されるものではない。
【0112】
図17は、この電気泳動用ゲルカセット50の変形例を示している。
図示の例では、バッファー槽形成部材51の容器52、53の底部に孔52B、53Bが形成される代わりに、これら容器52、53において通電方向Eに互いに向かい合う壁部に、孔52C、53Cがそれぞれ形成されている。孔52C、53Cは、カセット部材5が通電方向Eに貫通可能な矩形状とされており、孔52Cとこれに挿入されるカセット部材5との間、及び、孔53Cとこれに挿入されるカセット部材5との間には、矩形枠状のシール部材54がそれぞれ配設されている。
【0113】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット60について、図18を参照して説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0114】
本実施形態の電気泳動用ゲルカセット60は、前述したバッファー槽形成部材8、31、51の代わりに、カセット部材5に着脱可能なバッファー槽形成部材61を備えている。このバッファー槽形成部材61は、弾性部材37(又は接着部材12)を介してカセット部材5の基材1A上に載置されているとともに、第1開口部3が配置される第1バッファー槽6と、第2開口部4が配置される第2バッファー槽7とを一体に備えている。そして、これら第1、第2バッファー槽6、7は、バッファー槽形成部材61の壁部61Bを介して隣接して配置されている。
【0115】
本実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット60によれば、前述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0116】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、前述の実施形態では、電気泳動用ゲルカセット10、20、30、40、50、60が、二次元電気泳動装置からなる電気泳動装置に配設されることとしたが、これに限定されるものではなく、SDS−PAGE単一の構成を備えた電気泳動装置に配設されることとしてもよい。この場合、基材1同士の間にゲル2を充填する際には、第1、第2開口部3、4のいずれかにウェル作製のためのコームを差し込んだ状態で、ゲル溶液を充填する。
【0117】
その他、本発明の前述の実施形態の構成要素を、適宜組み合わせても構わない。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前述の構成要素を周知の構成要素に置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0118】
1 基材
1A 一の基材
1B 他の基材
2 ゲル
3 第1開口部
4 第2開口部
5 カセット部材
6 第1バッファー槽
7 第2バッファー槽
8、31、51、61 バッファー槽形成部材
9 凹部
10、20、30、40、50、60 電気泳動用ゲルカセット
11 通気口
12 接着部材
13 バッチ式容器
21、35、37 弾性部材
22 保持手段
32 外容器
32A 外容器の内底面
33 内容器
38 嵌合部(保持手段)
E 通電方向
T 厚さ方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動用ゲルカセット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遺伝子や蛋白質を分離するための方法として、電気泳動法が知られている。電気泳動法とは、核酸やタンパク質などの分離分析対象を、電気泳動の移動速度等の違いに基づいて分離する方法である。特に分離試料(サンプル)を、電解質を含むゲル中に導入しゲルの両端に電圧をかけることで分離する方法が一般的である。
【0003】
蛋白質混合物を分離する際に広く普及している方法のひとつとしてSDS−PAGEと呼ばれるゲル電気泳動法がある。SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)でコートすることで蛋白質に電荷を持たせ、ポリアクリルアミドゲル中を移動させ、蛋白質のサイズにより分離するという方法である。
【0004】
泳動はサンプルの導入後、陰極、陽極の両電極とゲル媒体とを電極用バッファー溶液中で電気的に接触(接続)させ、電流を流すことにより行われる。電流を流し始めると蛋白質は陰極から陽極に向かってゲル中を移動し始め、その分子量が小さいほど速く移動する。
【0005】
SDS−PAGEは、実験者が平板な硝子板の間にゲル作製のための溶液(ゾル状のゲル溶液)を流し込み重合させてゲルプレートを作製し用いるのが一般的であった。しかし近年では利便性、再現性のため、業者が作製したプレキャストゲルカセットの需要が高まっている。プレキャストゲルカセットも基本的には2枚の平板なガラス、または樹脂板の間の領域にゲルが充填されており、泳動時に外部に設けたバッファー溶液と該ゲルとを接触させ使用するものである。
【0006】
プレキャストゲルカセットのゲル(ゲルプレート)の作製の方法としては、カセット一組ごとにゲル溶液を注入することが一般的である。しかしこの方法では、カセットごとに繰り返し充填を行うことになるため、生産効率が悪く、また充填の再現性が確保できず、カセットの品質が安定しないことがある。
【0007】
このような問題に対処する手法として、例えば下記特許文献2には、バッチ式容器の中に複数のカセットを並べ、該バッチ式容器内にゲル溶液を充填するとともにカセット内にゲル溶液を充填して、一度に複数のゲルプレートを作製する手法が記載されている。このようなバッチ方式のゲル充填法によれば、一度に大量のゲルプレート(ゲルカセット)が作製可能であり、さらに同一品質のゲルが作製され好適である。
【0008】
一方、下記特許文献1には、バッファー溶液を貯留するバッファー槽がカセットと一体とされた、バッファー槽一体型の電気泳動用ゲルカセットについての記載がある。一体型とすることで省スペースなシステムを可能にしている。またカセットとバッファー槽とを一体型にすることで、別個にそれぞれ容器を用意する必要が無く作業的にも簡便である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4441653号公報
【特許文献2】特許第3071927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1に記載されているバッファー槽一体型の電気泳動用ゲルカセットでは、バッファー溶液の扱いに関しては簡便であり、ミスも起こらないが、ゲル溶液充填の際に問題が生じることがある。特に大きな問題は、特許文献2のようなバッチ式の充填を行いにくいことである。
【0011】
すなわち、バッファー槽が一体になっていることによりカセットの厚みが大きくなり、またカセットの外面同士を密着させることが出来ず、その結果、バッチ式容器内に収容できる数が少なくなり、ゲル充填の効率を低下させていた。また、バッファー槽一体型のカセット同士を密着させるようにバッチ式容器に収容してゲル溶液を充填しても、カセット同士の間に出来る空間(バッファー槽など)にゲル溶液が入り込む場合があり、充填が安定して行えなかった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、バッチ式容器への収容数を増やすことができ、効率よくゲルを充填できるとともに、ゲルの品質が安定して再現性にも優れ、かつ、電気泳動時に取り扱いやすく作業性がよい電気泳動用ゲルカセット及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明は、板状をなし厚さ方向に間隔をあけて対向配置される一対の基材、前記一対の基材同士の間に充填されるゲル、前記基材の厚さ方向に垂直な通電方向の一方側で前記ゲルを露出させる第1開口部、及び、前記基材の前記通電方向の他方側で前記ゲルを露出させる第2開口部を有するカセット部材と、前記第1開口部が配置される第1バッファー槽、及び、前記第1バッファー槽とは区画され前記第2開口部が配置される第2バッファー槽を形成するバッファー槽形成部材と、を備え、前記バッファー槽形成部材は、前記カセット部材に着脱可能とされていることを特徴とする。
また本発明は、板状をなし厚さ方向に間隔をあけて対向配置される一対の基材、前記一対の基材同士の間に充填されるゲル、前記基材の厚さ方向に垂直な通電方向の一方側で前記ゲルを露出させる第1開口部、及び、前記基材の前記通電方向の他方側で前記ゲルを露出させる第2開口部を有するカセット部材と、前記第1開口部が配置される第1バッファー槽、及び、前記第1バッファー槽とは区画され前記第2開口部が配置される第2バッファー槽を形成するバッファー槽形成部材と、を備えた電気泳動用ゲルカセットの製造方法であって、前記バッファー槽形成部材は、前記カセット部材に着脱可能とされており、前記バッファー槽形成部材を前記カセット部材から取り外した状態で、該カセット部材をバッチ式容器に複数収容し、このバッチ式容器にゾル状のゲル溶液を流入することにより、これらカセット部材の一対の基材同士の間に前記ゲル溶液を充填する充填工程と、前記カセット部材に前記バッファー槽形成部材を装着する装着工程と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る電気泳動用ゲルカセット及びその製造方法によれば、バッファー槽形成部材がカセット部材に着脱可能とされているので、下記の効果を奏する。
すなわち、カセット部材及びバッファー槽形成部材のうち、カセット部材のみをバッチ式容器に収容してゲルを充填できる。詳しくは、一対の基材同士の間にゲル充填のための隙間をあけた状態で、このような基材の対をバッチ式容器に複数収容し、このバッチ式容器にゾル状のゲル溶液を充填するとともに、前記隙間にゲル溶液を充填する。そして、ゲル溶液を重合させてゲル(ゲルプレート)とすることにより、一度にカセット部材が複数作製される。
【0015】
このように、カセット部材にバッファー槽形成部材を装着しない状態で基材間にゲルを充填できるので、バッチ式容器に収容するカセット部材の数を十分に確保でき、生産効率が向上する。また、バッチ式容器を用いてカセット部材に充填されたゲルは特性が均一となるとともに品質が安定して、再現性に優れたものとなる。
【0016】
また、このように作製したカセット部材にバッファー槽形成部材を装着して一体にできることから、この電気泳動用ゲルカセットを備えた電気泳動装置をコンパクトに構成できる。また、カセット部材とバッファー槽形成部材とを一体にすることで、別個にそれぞれ容器(第1、第2バッファー槽)を用意する必要がなく、よって取り扱いやすく、作業性が向上する。
また、電気泳動に用いられたカセット部材は廃棄されるが、バッファー槽形成部材は該カセット部材から取り外して再利用可能であるため、コスト削減の効果が得られる。
【0017】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記バッファー槽形成部材が、接着部材を介して前記カセット部材に装着されることとしてもよい。
【0018】
この場合、バッファー槽形成部材をカセット部材に容易かつ確実に装着でき、作業性が向上する。
【0019】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記バッファー槽形成部材と前記カセット部材との間に配設される弾性部材と、前記バッファー槽形成部材と前記カセット部材とを互いに接近させた状態で保持する保持手段と、を備えたこととしてもよい。
【0020】
この場合、保持手段が、バッファー槽形成部材とカセット部材とを互いに接近させた状態で保持するとともに、これらの間に配設された弾性部材が弾性変形させられてバッファー槽形成部材とカセット部材とに密着される。これにより、バッファー槽形成部材が形成する第1、第2バッファー槽が液密とされて、これらバッファー槽に貯留されるバッファー溶液の漏洩等が防止される。
【0021】
また、保持手段の保持を解除することにより、弾性部材の弾性力によってバッファー槽形成部材とカセット部材とが互いに離間するとともに、該弾性部材は復元変形する。従って、使用済みのカセット部材からバッファー層形成部材を取り外して新しい別のカセット部材に装着する際に、この弾性部材も古いカセット部材から取り外して再利用することができる。従って、コスト削減の効果が得られる。
また、弾性部材は、カセット部材及びバッファー槽形成部材に対して弾性変形により密着させられているのみであるので、該弾性部材をカセット部材又は/及びバッファー槽形成部材から取り外す作業は簡便であり、作業性が向上する。
【0022】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記バッファー槽形成部材の前記第1バッファー槽と前記第2バッファー槽とに、電極がそれぞれ設けられていることとしてもよい。
【0023】
この場合、バッファー槽形成部材の第1、第2バッファー槽に電極がそれぞれ設けられているので、このバッファー槽形成部材を備えた電気泳動用ゲルカセットを電気泳動装置に配設する際に、第1、第2バッファー槽に電極を装着する作業が不要となり、作業性が向上する。尚、この場合、バッファー槽形成部材を繰り返し使用することとすれば、配設した電極が無駄になることもない。
【0024】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記一対の基材のうち、一の基材の外面における前記通電方向の端部には、前記第1開口部及び前記第2開口部のいずれかが形成されており、前記一対の基材のうち、他の基材の外面における前記通電方向の端部に対応する部位には、この外面から前記厚さ方向に後退するように凹部が形成されていることとしてもよい。
【0025】
この場合、バッチ式容器にカセット部材を複数収容する際、該バッチ式容器内においてカセット部材同士が厚さ方向に隣接するように配列し、カセット部材の一の基材の外面における前記通電方向の端部と、このカセット部材に隣り合う別のカセット部材の他の基材の外面における前記通電方向の端部に対応する部位とが対向配置されるようにする。これにより、カセット部材の一の基材の外面における第1開口部又は第2開口部と、このカセット部材に隣接する別のカセット部材の他の基材の外面における凹部とが対向配置されることになる。
【0026】
ここで、凹部は、前記他の基材の外面から厚さ方向に後退するように形成されているので、この凹部と前記第1開口部又は第2開口部との間には隙間が形成されることになる。このような状態で、バッチ式容器にゲル溶液が充填されることにより、ゲル溶液は前記隙間を通って第1開口部又は第2開口部に確実に流入することになり、一対の基材間に精度よく充填される。
【0027】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記カセット部材には、前記一対の基材同士の間と外部とを連通するように、少なくとも1つ以上の通気口が形成されていることとしてもよい。
【0028】
この場合、カセット部材の一対の基材同士の間にゲル溶液を充填するときに、基材間に存在するガスが通気口を通して外部へ排出されてゲル溶液に置換されやすくなる。従って、カセット部材の基材間にゲルをより精度よく充填できる。
【0029】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記基材は、少なくともガラス材料及び樹脂材料のいずれかからなる絶縁体であることとしてもよい。
【0030】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記バッファー槽形成部材は、前記第1バッファー槽及び前記第2バッファー槽を一体に備えたこととしてもよい。
【0031】
この場合、バッファー槽形成部材をカセット部材に着脱する作業がより簡便となる。
【0032】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記バッファー槽形成部材は、前記カセット部材を収容可能な外容器と、前記外容器に収容されて、該外容器の内底面に前記基材の外面を対向させるように配設された前記カセット部材上に載置される内容器と、を備えたこととしてもよい。
【0033】
この場合、カセット部材が外容器に収容されているので、外容器及び内容器により区画されてなる、カセット部材の第1開口部が配置された第1バッファー槽及び第2開口部が配置された第2バッファー槽のうち、例えばいずれか一方から他方へ向けてバッファー溶液が漏洩するようなことがあっても、このバッファー溶液が電気泳動用ゲルカセットの外部へと漏洩することがない。従って、バッファー溶液の漏洩による電気泳動装置の汚損や故障等が防止される。
【0034】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記内容器は、前記外容器に嵌合されることとしてもよい。
【0035】
この場合、外容器と内容器との相対的な固定が容易に行え、かつ、これらの相対的な位置決めも高精度に行える。
【0036】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記基材及び前記バッファー槽形成部材は、射出成形及び真空成形のいずれかにより作製されたこととしてもよい。
【0037】
この場合、基材及びバッファー槽形成部材を射出成形により作製すれば、高精度な成形が可能となる。また、基材及びバッファー槽形成部材を真空成形により作製すれば、より薄肉・安価に製造でき、コスト削減の効果が得られる。
【0038】
また、本発明に係る電気泳動用ゲルカセットにおいて、前記基材の外面のうち、少なくとも前記第1開口部及び前記第2開口部のいずれかを含む領域が、剥離可能な封止部材により封止されており、前記封止部材は、前記接着部材を介して前記外面に貼付されているとともに、この外面から剥離されることにより、前記接着部材を接着可能に露出させることとしてもよい。
【0039】
この場合、封止部材が、少なくとも第1開口部及び第2開口部のいずれかを含む領域を封止しているので、未使用のカセット部材内に充填されたゲルを外気等に晒すことなく清浄に保持でき、ゲルの品質が良好に維持される。また、電気泳動を行う際には、この封止部材を剥離することにより、少なくとも第1開口部及び第2開口部のいずれかが開封されるとともに、バッファー槽形成部材をカセット部材に装着するための接着部材が露出されるので、該接着部材を介してバッファー槽形成部材をカセット部材に一体に装着して、電気泳動用ゲルカセットが簡便に作製される。従って、ゲルの品質を良好に維持しつつ、電気泳動時の作業性を向上することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る電気泳動用ゲルカセット及びその製造方法によれば、バッチ式容器への収容数を増やすことができ、効率よくゲルを充填できるとともに、ゲルの品質が安定して再現性にも優れ、かつ、電気泳動時に取り扱いやすく作業性がよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット10の(a)分解斜視図、(b)斜視図である。
【図2】電気泳動用ゲルカセット10の(a)カセット部材5の構成を説明する側断面図、(b)側断面図である。
【図3】電気泳動用ゲルカセット10の(a)上面図、(b)側面図である。
【図4】電気泳動用ゲルカセット10の接着部材12を説明する上面図である。
【図5】電気泳動用ゲルカセット10のカセット部材5にゲル2を充填する方法を説明する図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット20のバッファー槽形成部材8を示す上面図である。
【図7】電気泳動用ゲルカセット20のバッファー槽形成部材8及び弾性部材21を示す側面図である。
【図8】電気泳動用ゲルカセット20のバッファー槽形成部材8及び弾性部材21を示す下面図である。
【図9】電気泳動用ゲルカセット20の構成を説明する(a)分解側断面図、(b)側断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット30の(a)上面図、(b)側断面図である。
【図11】電気泳動用ゲルカセット30のカセット部材5を示す(a)上面図、(b)側断面図である。
【図12】カセット部材5の変形例を示す図である。
【図13】電気泳動用ゲルカセット30の変形例を示す側断面図である。
【図14】本発明の第4実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット40の側断面図である。
【図15】電気泳動用ゲルカセット40の変形例を示す側断面図である。
【図16】本発明の第5実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット50の側断面図である。
【図17】電気泳動用ゲルカセット50の変形例を示す側断面図である。
【図18】本発明の第6実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット60の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット10について、図1〜図5を参照して説明する。
この電気泳動用ゲルカセット10は、核酸やタンパク質などの分離分析対象(サンプル)を、電気泳動の移動速度等の違いに基づいて分離する電気泳動装置(不図示)に着脱可能に配設されるものである。詳しくは、この電気泳動装置は、サンプルの等電点(電荷)の違いに基づく等電点電気泳動、及び、分子量の違いに基づくSDS−PAGEの2つの電気泳動ステップを組み合わせてなる二次元電気泳動装置である。
【0043】
図1〜図3に示すように、電気泳動用ゲルカセット10は、板状をなし厚さ方向Tに間隔をあけて対向配置される一対の基材1(1A、1B)、一対の基材1同士の間に充填されるゲル2、基材1の厚さ方向Tに垂直な通電方向Eの一方側(図2(b)における右側)でゲル2を露出させる第1開口部3、及び、基材1の通電方向Eの他方側(図2(b)における左側)でゲル2を露出させる第2開口部4を有するカセット部材5と、第1開口部3が配置される第1バッファー槽6、及び、第1バッファー槽6とは区画され第2開口部4が配置される第2バッファー槽7を形成するバッファー槽形成部材8と、を備えている。
【0044】
一対の基材1は、少なくともガラス材料及び樹脂材料のいずれかからなる絶縁体であり、本実施形態では透明性を有する樹脂材料が用いられている。この樹脂材料としては、公知の低酸素透過性部材が用いられることが好ましく、特にPMMA(ポリメチルメタクリレート)が望ましい。基材1は、射出成形により作製されている。
【0045】
図3(a)において、一対の基材1は、それぞれ矩形板状をなしており、その長手方向が前記通電方向Eとなっている。一対の基材1のうち、一の基材1Aの外面(厚さ方向Tの外側を向く面)における通電方向Eの両端部には、矩形孔状若しくはスリット状の第1開口部3と第2開口部4とが、通電方向E及び厚さ方向Tに垂直な幅方向Wに延びて形成されている。図2(a)において、本実施形態では、基材1Aの外面における通電方向Eの一端部(図2(a)における右端部)に第1開口部3が形成され、通電方向Eの他端部(図2(a)における左端部)に第2開口部4が形成されている。また、これら第1開口部3及び第2開口部4は、一の基材1Aを厚さ方向Tに貫通して形成されている。
【0046】
また、一対の基材1のうち、他の基材1Bにおいて基材1A側を向く面は、その外周縁以外の領域が矩形穴状に凹んで形成されている。そして、これら基材1A、1Bは、互いに向かい合う面の外周縁同士が超音波溶着されることにより、一体とされている。尚、基材1A、1Bは、互いの前記外周縁同士が接着剤や接着シールなどを用いて固着されていてもよいが、前述のように、超音波溶着で固着されることが部材削減等を鑑みてより好ましい。また、基材1Bに矩形穴状の領域を形成せず、例えば、基材1A、1Bの対向する面同士の間にスペーサー部材を配設した状態で、これら基材1同士を一体に固着しても構わない。
このように基材1A、1B同士が固着された状態で、これら一対の基材1間には、ゲル2を充填するための扁平した直方体状空間(充填領域)が形成されており、この充填領域に第1開口部3及び第2開口部4が連通している。
【0047】
また、図3(b)に示すように、カセット部材5には、一対の基材1同士の間(前記充填領域)と外部とを連通するように、少なくとも1つ以上の通気口11が形成されている。本実施形態では、カセット部材5において通電方向Eを向く両面のうち、前記他方側を向く面(図3(a)において下側を向く面)に通気口11が1つ形成されている。尚、通気口11は、カセット部材5に複数形成されていてもよく、配置される位置も限定されない。
【0048】
また、図2(a)に示すように、他の基材1Bの外面において、基材1Aの外面の通電方向Eの一端部に対応する部位には、基材1Bの外面から厚さ方向Tに後退するように凹部9が形成されている。詳しくは、凹部9は、基材1Bの外面における前記一端部において、基材1Aの第1開口部3の厚さ方向Tに対応する部位に位置している。本実施形態では、凹部9は、他の基材1Bの外面において通電方向Eに沿う内側(中央)から外側(前記一方側、図2(a)における右側)へ向かうに従い漸次厚さ方向Tの基材1A側へ向かうように、テーパー状に形成されている。
【0049】
また、ゲル2は、例えばアクリルアミドゲル等の電気泳動用のゲルであり、ゾル状のゲル溶液を重合して形成されている。ゲル2は、一対の基材1間に充填されてプレート状(ゲルプレート)とされており、透明な基材1を通して外部から視認可能となっている。図2(b)に示されるように、カセット部材5内において、ゲル2は、基材1同士の間、第1開口部3内及び第2開口部4内に充填されていて、第1開口部3と第2開口部4とにおいて外部に露出されている。
【0050】
また、バッファー槽形成部材8は、樹脂材料等の絶縁体からなり、射出成形により作製されている。図1(a)に示されるように、本実施形態のバッファー槽形成部材8は、矩形枠状をなしており、その通電方向E及び幅方向Wの外形が、基材1の外面の外形と略同一とされている。バッファー槽形成部材8は、矩形状の外枠部8Aと、外枠部8Aにおいて幅方向Wに対向する面同士を連結するように延びる一対の壁部8Bと、を備えている。
【0051】
すなわち、バッファー槽形成部材8の外枠部8Aの内部領域は、一対の壁部8Bによって3つの領域に区画されている。そして、バッファー槽形成部材8において通電方向Eに分割された前記3つの領域のうち、基材1Aの第1開口部3に対応する領域が前記第1バッファー槽6とされ、第2開口部4に対応する領域が前記第2バッファー槽7とされる。詳しくは、図1(b)において、バッファー槽形成部材8が基材1A上に配設された状態で、前記3つの領域はそれぞれ上部が開口された矩形容器状をなしており、液体を貯留可能となっている。このように、本実施形態のバッファー槽形成部材8は、第1バッファー槽6及び第2バッファー槽7を一体に備えている。
【0052】
また、特に図示しないが、バッファー槽形成部材8は、その第1バッファー槽6と第2バッファー槽7とに、電極がそれぞれ設けられている。これら電極は、例えば、銀コロイドペースト等がバッファー槽形成部材8に塗布されて作製されてもよいが、白金等の導電性金属線で作製されることがより好ましい。これら電極は、第1、第2バッファー槽6、7内においてバッファー溶液に浸漬可能な位置に配設され、一対の陰極と陽極とからなる。
尚、バッファー槽形成部材8における前記3つの領域のうち、第1、第2バッファー槽6、7に挟まれた中央の領域は、電気泳動の状況を確認する視認領域として用いたり、冷却水を貯留して冷却槽に用いたりすることができる。
【0053】
そして、バッファー槽形成部材8は、カセット部材5に着脱可能とされている。詳しくは、図4に示すように、カセット部材5の基材1Aの外面には、バッファー槽形成部材8において厚さ方向Tを向く端面に対応した形状とされた両面接着性テープ等からなる接着部材12が配設されており、バッファー槽形成部材8は、この接着部材12を介してカセット部材5に装着されるようになっている。
【0054】
尚、図4に示されるように、接着部材12は切れ目なく一体に形成されており、これにより、バッファー槽形成部材8とカセット部材5との連結部分における液密性が確保されるとともに、第1バッファー槽6及び第2バッファー槽7が液密の容器状に形成されるようになっている。
【0055】
次に、本実施形態の電気泳動用ゲルカセット10を製造する方法について説明する。
この電気泳動用ゲルカセット10は、バッファー槽形成部材8をカセット部材5から取り外した状態で、該カセット部材5をバッチ式容器13に複数収容し、このバッチ式容器13にゾル状のゲル溶液を流入することにより、これらカセット部材5の一対の基材1同士の間に前記ゲル溶液を充填する充填工程と、カセット部材5にバッファー槽形成部材8を装着する装着工程と、を備えて製造されている。
【0056】
(充填工程)
図5に示されるように、バッチ式容器13は、複数のカセット部材5を収容可能な大きさの例えば直方体状容器とされている。カセット部材5は、予め一対の基材1A、1B同士を前述した超音波溶着等により固着して前記充填領域を形成しておき、基材1Aの第2開口部4をシール材等で封止しておく。
【0057】
次いで、複数の前記カセット部材5をバッチ式容器13内に収容する。この際、図5に示されるように、カセット部材5の通電方向Eの一端部(第1開口部3側の端部)をバッチ式容器13の底部に配置して、カセット部材5の通電方向Eが鉛直方向に沿うようにする。また、これらカセット部材5同士は、互いに厚さ方向Tに隣接するように配列し、一のカセット部材5の基材1Aの外面における前記一端部の第1開口部3と、このカセット部材5に隣り合う他のカセット部材5の基材1Bの外面における前記一端部の凹部9とが対向配置されるようにする。
次いで、バッチ式容器13に底部からゲル溶液を送液する。尚、この際、基材1Aには、予め前記接着部材12が貼付されていてもよい。カセット部材5にゲル溶液が充填された後、該ゲル溶液を重合させることにより、ゲル2が形成される。
【0058】
(装着工程)
次いで、図1に示されるように、前記カセット部材5にバッファー槽形成部材8を装着する。
本実施形態では、図4で説明したように、バッファー槽形成部材8は接着部材12を介してカセット部材5の基材1Aに固着される。
【0059】
このように製造された電気泳動用ゲルカセット10を電気泳動装置に装着し、第1、第2バッファー槽6、7にバッファー溶液を貯留して、これらの電極同士の間に電圧を印加し電流を流すことにより、サンプルの分離が行われるようになっている。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット10及びその製造方法によれば、バッファー槽形成部材8がカセット部材5に着脱可能とされているので、下記の効果を奏する。
すなわち、カセット部材5及びバッファー槽形成部材8のうち、カセット部材5のみをバッチ式容器13に収容してゲル2を充填できる。詳しくは、一対の基材1A、1B同士の間にゲル充填のための隙間(充填領域)をあけた状態で、このような基材1の対をバッチ式容器13に複数収容し、このバッチ式容器13にゾル状のゲル溶液を充填するとともに、前記隙間にゲル溶液を充填する。そして、ゲル溶液を重合させてゲル(ゲルプレート)2とすることにより、一度にカセット部材5が複数作製される。
【0061】
このように、カセット部材5にバッファー槽形成部材8を装着しない状態で基材1A、1B間にゲル2を充填できるので、バッチ式容器13に収容するカセット部材5の数を十分に確保でき、生産効率が向上する。また、バッチ式容器13を用いてカセット部材5に充填されたゲル2は特性が均一となるとともに品質が安定して、再現性に優れたものとなる。
【0062】
また、このように作製したカセット部材5にバッファー槽形成部材8を装着して一体にできることから、この電気泳動用ゲルカセット10を備えた電気泳動装置をコンパクトに構成できる。詳しくは、本実施形態のように、バッファー槽形成部材8の外形(通電方向Eの外形及び幅方向Wの外形)を基材1の前記外形と略同一に設定した場合には、電気泳動装置の通電方向Eの外形及び幅方向Wの外形を省スペースに構成できる。
【0063】
また、カセット部材5とバッファー槽形成部材8とを一体にすることで、別個にそれぞれ容器(第1、第2バッファー槽)を用意する必要がなく、よって取り扱いやすく、作業性が向上する。
また、電気泳動に用いられたカセット部材5は廃棄されるが、バッファー槽形成部材8は該カセット部材5から取り外して再利用可能であるため、コスト削減の効果が得られる。
【0064】
また、バッファー槽形成部材8が、接着部材12を介してカセット部材5に装着されるようになっているので、バッファー槽形成部材8をカセット部材5に容易かつ確実に装着でき、作業性が向上する。尚、本実施形態では、両面接着性テープ等からなる接着部材12として説明したが、これに限定されるものではなく、例えばそれ以外の接着剤等からなる接着部材12を用いても構わない。
【0065】
また、特に図示しないが、例えば、基材1の外面のうち、少なくとも第1開口部3及び第2開口部4のいずれかを含む領域が、剥離可能な封止部材により封止されており、前記封止部材は、接着部材12を介して前記外面に貼付されているとともに、この外面から剥離されることにより、接着部材12を接着可能に露出させることとしてもよい。
【0066】
この場合、前記封止部材が、少なくとも第1開口部3及び第2開口部4のいずれかを含む領域を封止しているので、未使用のカセット部材5内に充填されたゲル2を外気等に晒すことなく清浄に保持でき、ゲル2の品質が良好に維持される。また、電気泳動を行う際には、この封止部材を剥離することにより、少なくとも第1開口部3及び第2開口部4のいずれかが開封されるとともに、バッファー槽形成部材8をカセット部材5に装着するための接着部材12が露出されるので、該接着部材12を介してバッファー槽形成部材8をカセット部材5に一体に装着して、電気泳動用ゲルカセット10が簡便に作製される。従って、ゲル2の品質を良好に維持しつつ、電気泳動時の作業性を向上することができる。
【0067】
また、バッファー槽形成部材8の第1、第2バッファー槽6、7に電極がそれぞれ設けられているので、このバッファー槽形成部材8を備えた電気泳動用ゲルカセット10を電気泳動装置に配設する際に、第1、第2バッファー槽6、7に電極を装着する作業が不要となり、作業性が向上する。尚、この場合、バッファー槽形成部材8を繰り返し使用することとすれば、配設した電極が無駄になることもない。
【0068】
また、カセット部材5の一対の基材1A、1Bのうち、一の基材1Aの外面における通電方向Eの一端部に第1開口部3が形成されており、他の基材1Bの外面における基材1Aの前記一端部に対応する部位に凹部9が形成されているので、下記の効果を奏する。すなわち、図5で説明したように、バッチ式容器13にカセット部材5を複数収容する際、該バッチ式容器13内においてカセット部材5同士が厚さ方向Tに隣接するように配列され、カセット部材5の基材1Aの外面における第1開口部3と、このカセット部材5に隣接する別のカセット部材5の基材1Bの外面における凹部9とが対向配置される。
【0069】
ここで、凹部9は、基材1Bの外面から厚さ方向Tに後退するように形成されているので、この凹部9と前記第1開口部3との間には隙間が形成されることになる。このような状態で、バッチ式容器13にゲル溶液が充填されることにより、ゲル溶液は前記隙間を通って第1開口部3内に確実に流入することになるとともに、一対の基材1A、1B同士の間(充填領域)に精度よく充填される。従って、カセット部材5へのゲル2の充填が、確実かつ高精度に行える。
【0070】
尚、前述の説明では、基材1Aの外面における通電方向Eの一端部に第1開口部3が形成され、基材1Bの外面において、基材1Aの外面の前記一端部の第1開口部3に対応する部位にテーパー状の凹部9が形成されているとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、凹部9は、基材1Bの外面のうち、基材1Aの外面における通電方向Eの他端部の第2開口部4に対応する部位に形成されていてもよい。また、凹部9の形状はテーパー状に限られるものではなく、例えば、基材1Bの外面から一段窪まされた段部や溝等であってもよい。
【0071】
また、カセット部材5には、一対の基材1A、1B同士の間と外部とを連通するように、少なくとも1つ以上の通気口11が形成されているので、カセット部材5の一対の基材1A、1B同士の間にゲル溶液を充填するときに、基材1間に存在する不活性ガスや空気等のガスが通気口11を通して外部へ排出されてゲル溶液に置換されやすくなる。従って、カセット部材5の基材1間にゲル2をより精度よく充填できる。尚、本実施形態では、図5に示されるカセット部材5の鉛直方向(通電方向E)に沿う上端部に通気口11が形成されていることから、前述の効果が確実に得られるようになっている。
【0072】
また、本実施形態のバッファー槽形成部材8は、第1バッファー槽6及び第2バッファー槽7を一体に備えているので、該バッファー槽形成部材8をカセット部材5に着脱する作業がより簡便となる。尚、本実施形態では、基材1の通電方向Eの一端部に第1開口部3が配置されるとともにバッファー槽形成部材8の一端部に該第1開口部3を含む第1バッファー槽6が配置され、基材1の通電方向Eの他端部に第2開口部4が配置されるとともにバッファー槽形成部材8の他端部に該第2開口部4を含む第2バッファー槽7が配置されるとしたが、これらの配置が互いに逆向き(通電方向Eの一端部と他端部とが反対)にされていてもよい。
【0073】
また、基材1及びバッファー槽形成部材8は、射出成形により作製されているので、これら基材1及びバッファー槽形成部材8を高精度に成形することが可能である。尚、基材1及びバッファー槽形成部材8は、射出成形以外の真空成形により作製されていてもよい。この場合、より薄肉・安価に作製でき、コスト削減の効果が得られる。また、基材1及びバッファー槽形成部材8は、射出成形及び真空成形以外の製法により作製されていても構わない。
【0074】
また、この電気泳動用ゲルカセット10は、第1、第2バッファー槽6、7がカセット部材5上に位置しており、カセット部材5の基材1Bの外面を電気泳動装置上に直接当接して配設できる。従って、電気泳動装置に設けられたペルチェ素子や冷却ファン等の冷却手段等によりカセット部材5を冷却しやすくなっていて、温度調整が容易である。
【0075】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット20について、図6〜図9を参照して説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
本実施形態の電気泳動用ゲルカセット20は、前述の電気泳動用ゲルカセット10で説明した接着部材12の代わりに、バッファー槽形成部材8とカセット部材5との間に配設される弾性部材21と、バッファー槽形成部材8とカセット部材5とを互いに接近させた状態で保持する保持手段22と、を備えている。
【0077】
弾性部材21は、シリコンゴム、ウレタンゴム等の軟質の弾性材料からなり、図7及び図8に示すように、バッファー槽形成部材8において厚さ方向Tを向く端面に対応した形状とされている。図9(a)(b)に示すように、バッファー槽形成部材8は、この弾性部材21を介してカセット部材5に装着されるようになっている。
【0078】
尚、図示の例では、弾性部材21が、バッファー槽形成部材8に固着等により一体とされた状態(支持された状態)で、カセット部材5に当接されるようになっているが、これに限定されるものではない。すなわち、弾性部材21は、カセット部材5に一体とされた状態で、バッファー槽形成部材8に当接されるようになっていてもよい。或いは、弾性部材21は、カセット部材5及びバッファー槽形成部材8とは別体とされているとともに、電気泳動用ゲルカセット20の組立時にこれらの間に配設されてもよい。
【0079】
また、図8に示されるように、弾性部材21は切れ目なく一体に形成されており、これにより、バッファー槽形成部材8とカセット部材5との連結部分における液密性が確保されるとともに、第1バッファー槽6及び第2バッファー槽7が液密の容器状に形成されるようになっている。
【0080】
また、図9(a)(b)において、保持手段22は、バッファー槽形成部材8の外枠部8Aに設けられた取付板23と、カセット部材5の基材1Bの外面に厚さ方向Tから当接して該カセット部材5をバッファー槽形成部材8側へ向けて支持する支持板24と、取付板23及び支持板24を互いに係合させる係合部25と、を備えている。
【0081】
図6〜図8に示すように、取付板23は、バッファー槽形成部材8の外枠部8Aから通電方向Eの外側へ向けて突出して形成されている。図示の例では、取付板23は、外枠部8Aの外周面から通電方向Eの一方側と他方側とに突出して、一対ずつ設けられている。これら取付板23には、厚さ方向Tに貫通して取付孔23Aが形成されている。
【0082】
図9(a)(b)に示すように、支持板24は、板状又は容器状をなし基材1Bの外面に当接される支持本体24Aと、この支持本体24Aの通電方向Eの端部に設けられて取付板23に対向配置される支持取付部24Bと、を備えている。図示の例では、支持本体24Aは、カセット部材5を収容するように断面コ字状となっており、支持取付部24Bは、該支持本体24Aの前記端部から通電方向Eに向けて延びている。
【0083】
また、係合部25は、支持板24の支持取付部24Bに配設されるナット25Aと、取付板23の取付孔23Aを通してこのナット25Aに螺合されるボルト25Bと、を備えている。
そして、これらボルト25B・ナット25A同士を螺合により締め付けることで、カセット部材5とバッファー槽形成部材8とが厚さ方向Tに接近するようになっており、図示の例では、ボルト25B・ナット25Aを締め付けた状態で、支持板24の支持取付部24Bと取付板23とが当接している。
尚、係合部25として、ボルト25B・ナット25A以外の、例えば弾性を利用したスナップフィットやクリップ等の係合を用いても構わない。
【0084】
本実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット20によれば、保持手段22が、バッファー槽形成部材8とカセット部材5とを互いに接近させた状態で保持するとともに、これらの間に配設された弾性部材21が弾性変形させられてバッファー槽形成部材8とカセット部材5とに密着される。これにより、バッファー槽形成部材8が形成する第1、第2バッファー槽6、7が液密とされて、これらバッファー槽に貯留されるバッファー溶液の漏洩等が防止される。
【0085】
また、保持手段22の保持を解除することにより、弾性部材21の弾性力によってバッファー槽形成部材8とカセット部材5とが互いに離間するとともに、該弾性部材21は復元変形する。従って、使用済みのカセット部材5からバッファー層形成部材8を取り外して新しい別のカセット部材5に装着する際に、この弾性部材21も古いカセット部材5から取り外して再利用することができる。従って、コスト削減の効果が得られる。
また、弾性部材21は、カセット部材5及びバッファー槽形成部材8に対して弾性変形により密着させられているのみであるので、該弾性部材21をカセット部材5又は/及びバッファー槽形成部材8から取り外す作業は簡便であり、作業性が向上する。
【0086】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット30について、図10〜図13を参照して説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0087】
本実施形態の電気泳動用ゲルカセット30は、前述したバッファー槽形成部材8の代わりに、カセット部材5に着脱可能なバッファー槽形成部材31を備えている。バッファー槽形成部材31は、カセット部材5を収容可能な外容器32と、外容器32に収容されて、該外容器32の内底面32Aに基材1B(1)の外面を対向させるように配設されたカセット部材5上に載置される内容器33と、を備えている。また、この電気泳動用ゲルカセット30は、バッファー槽形成部材31とカセット部材5との間に配設される弾性部材35、37と、バッファー槽形成部材31とカセット部材5とを互いに接近させた状態で保持する保持手段38と、を備えている。
【0088】
図10(a)に示すように、バッファー槽形成部材31の外容器32は、上部が開口された矩形容器状をなしており、通電方向E及び幅方向Wの外形がカセット部材5の前記外形よりも僅かに大きく設定されていて、該カセット部材5を収容可能となっている。また、外容器32の周壁のうち、幅方向Wに向かい合う一対の内壁面における通電方向Eの中央部は、他の部分よりもそれぞれ窪まされて嵌合凹部34とされている。
【0089】
また、図10(b)に示すように、外容器32の厚さ方向Tの外形は、カセット部材5の前記外形よりも大きく設定されている。また、外容器32の内底面32Aと、該外容器32に収容されたカセット部材5の基材1Bの外面との間には、幅方向Wに延在する帯状の弾性部材35が配設されている。このように弾性部材35が配設されていることにより、基材1Bと内底面32Aとの間に形成される扁平した直方体状空間が通電方向Eの一方側と他方側とに液密に区画されている。尚、弾性部材35は、通電方向Eに間隔をあけて複数配設されていてもよい。
【0090】
また、図10(a)において、バッファー槽形成部材31の内容器33は、上部が開口された矩形容器状をなしており、幅方向Wに延在している。内容器33の通電方向Eの外形は外容器32よりも小さく設定されており、内容器33が外容器32内に収容された状態で、該内容器33の通電方向Eの一方側(図10(a)における左側)にカセット部材5の第1開口部3が配置されるとともに第1バッファー槽6が形成され、該内容器33の通電方向Eの他方側(図10(a)における右側)にカセット部材5の第2開口部4が配置されるとともに第2バッファー槽7が形成されている。
【0091】
また、内容器33の幅方向Wの外形は、外容器32の一対の嵌合凹部34間の距離と略同一に設定されているとともに、内容器33の幅方向Wの両端部は嵌合凸部36とされて、前記嵌合凹部34に嵌合可能となっている。
【0092】
このように、嵌合凸部36と嵌合凹部34とが嵌合することにより、内容器33は、外容器32に嵌合されるようになっている。また、嵌合凸部36と嵌合凹部34とが嵌合することによって、カセット部材5に対して外容器32及び内容器33が接近させられた状態で保持されるようになっている。すなわち、本実施形態では、嵌合凸部36と嵌合凹部34とからなる嵌合部38が、前記保持手段38となっている。
【0093】
また、図10(b)において、内容器33の外底面33Aと、外容器32に収容されたカセット部材5の基材1Aの外面との間には、幅方向Wに延在する帯状の弾性部材37が配設されている。このように弾性部材37が配設されていることにより、基材1Aと外底面33Aとの間に形成される空間が通電方向Eの一方側と他方側とに液密に区画されているとともに、外容器32内において内容器33の前記一方側に位置する第1バッファー槽6と前記他方側に位置する第2バッファー槽7とが液密に区画されている。尚、弾性部材37は、通電方向Eに間隔をあけて複数配設されていてもよい。
また、電気泳動時には、内容器33には例えば冷却水が貯留される。
【0094】
本実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット30によれば、前述の実施形態と同様の効果が得られるとともに、下記の効果を奏する。すなわち、カセット部材5が外容器32に収容されているので、外容器32及び内容器33により区画されてなる、カセット部材5の第1開口部3が配置された第1バッファー槽6及び第2開口部4が配置された第2バッファー槽7のうち、例えばいずれか一方から他方へ向けてバッファー溶液が漏洩するようなことがあっても、このバッファー溶液が電気泳動用ゲルカセット30の外部へと漏洩することがない。従って、バッファー溶液の漏洩による電気泳動装置の汚損や故障等が防止される。
【0095】
また、内容器33が外容器32に嵌合されることにより、これら内容器33及び外容器32(すなわちバッファー槽形成部材31)が、弾性部材37、35を介してカセット部材5に接近した状態で保持されるようになっているので、内容器33と外容器32との相対的な固定が容易に行え、かつ、これらの相対的な位置決めも高精度に行える。
【0096】
尚、図11(a)(b)に示すように、本実施形態の電気泳動用ゲルカセット30に用いられるカセット部材5は、前述の電気泳動用ゲルカセット10、20同様に、基材1Aの外面における通電方向Eの一端部と他端部とに、第1開口部3と第2開口部4とが1つずつ形成されたものであるが、カセット部材5の形状及び第1開口部3、第2開口部4の配置や数は、図示の例に限定されるものではない。
【0097】
図12(a)〜(d)は、カセット部材5の変形例を示している。
図12(a)に示す例では、基材1Aの外面における通電方向Eの一端部(図12における左端部)と他端部(図12における右端部)とに第1開口部3と第2開口部4とが形成されており、それ以外に、カセット部材5の外面において通電方向Eの一方側(図12における左側)を向く面が開口されて、ゲル2を外部に露出させる第1開口部3となっている。すなわち、図示の例では、カセット部材5の一端部に第1開口部3が2つ形成されており、これら第1開口部3は、厚さ方向Tと通電方向Eとにそれぞれ開口されている。
【0098】
また、図12(b)に示す例では、第1開口部3は、図12(a)と同様にカセット部材5の一端部に2つ形成されている。また、カセット部材5の外面において通電方向Eの他方側(図12における右側)を向く面が開口されて、ゲル2を外部に露出させる第2開口部4とされている。この例では、カセット部材5の他端部に前記第2開口部4が1つだけ形成されており、基材1Aの外面には第2開口部4は形成されていない。
【0099】
また、図12(c)に示す例では、基材1Bの一端部が、基材1Aの一端部よりも前記一方側に突出して形成されており、これら基材1A、1Bの一端部同士の間に第1開口部3が形成されている。すなわち、この第1開口部3は、厚さ方向T及び通電方向Eに向けて開口されており、基材1A、1B間に充填されたゲル2の一端部も同様に、厚さ方向T及び通電方向Eに露出されている。また、第2開口部4は、図12(b)と同様に通電方向Eの他方側へ向けて開口して形成されている。この例では、基材1Aの外面には、第1、第2開口部3、4は形成されていない。
【0100】
また、図12(d)に示す例では、カセット部材5の外面において通電方向Eの一方側を向く面が開口されて、ゲル2を外部に露出させる第1開口部3となっている。また、カセット部材5の外面において通電方向Eの他方側を向く面が開口されて、ゲル2を外部に露出させる第2開口部4となっている。この例では、基材1Aの外面には、第1、第2開口部3、4は形成されていない。
【0101】
このように、カセット部材5の形状、及び、第1、第2開口部3、4の配置や数は種々に設定できる。図13に示す例では、バッファー槽形成部材31と、図12(c)で説明したカセット部材5とを組み合わせている。また、図示の例では、カセット部材5の通電方向Eを向く両端部と外容器32の周壁との間に、それぞれ隙間が設けられている。これら隙間は、作業用のスペースであるとともに、バッファー溶液をゲル2の露出部分に十分に供給するために設けられている。
【0102】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット40について、図14、図15を参照して説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0103】
本実施形態の電気泳動用ゲルカセット40は、前述の電気泳動用ゲルカセット30とは外容器32に対する内容器33の配置や形状が異なっている。この電気泳動用ゲルカセット40では、内容器33は、外容器32内における通電方向Eの他端部(図14における右端部)に配置されている。また、内容器33の底部には、第2開口部4よりも大きい矩形状等からなる孔33Bが形成されている。そして、この内容器33内が第2バッファー槽7とされ、外容器32内における内容器33の通電方向Eの一方側に位置して第1バッファー槽6が形成されている。
【0104】
また、内容器33の外底面33Aと、外容器32に収容されたカセット部材5の基材1Aの外面との間には、孔33Bを通電方向Eに挟むように一対の弾性部材37が配設されている。尚、本実施形態においては、外容器32の内底面32Aとカセット部材5の基材1Bの外面との間には、弾性部材35は配設されていない。
【0105】
本実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット40によれば、前述の実施形態と同様の効果が得られる。尚、本実施形態では、内容器33が、カセット部材5の第2開口部4上に配置されているとともに、第2バッファー槽7を形成しているとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、内容器33が、カセット部材5の第1開口部3上に配置されているとともに、第1バッファー槽6を形成することとしてもよい。
【0106】
また、図15はこの電気泳動用ゲルカセット40の変形例を示している。
図示の例では、内容器33が、通電方向Eに間隔をあけて2つ配設されており、これら内容器33のうち通電方向Eの一方側(図15における左側)に位置する内容器33が、第1開口部3上に配置されて第1バッファー槽6を形成している。また、通電方向Eの他方側(図15における右側)に位置する内容器33が、第2開口部4上に配置されて第2バッファー槽7を形成している。この場合、電気泳動時には、外容器32内における一対の内容器33同士の間に、例えば冷却水が貯留される。
【0107】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット50について、図16、図17を参照して説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0108】
本実施形態の電気泳動用ゲルカセット50は、前述したバッファー槽形成部材8、31の代わりに、カセット部材5に着脱可能なバッファー槽形成部材51を備えている。このバッファー槽形成部材51は、第1開口部3が配置される第1バッファー槽6と、第2開口部4が配置される第2バッファー槽7とを別体に備えている。
【0109】
図16に示すように、バッファー槽形成部材51は、カセット部材5の基材1A上に通電方向Eに互いに離間して載置される容器52、53を備えている。これら容器52、53のうち、通電方向Eの一方側(図16における左側)に位置する容器52は、第1開口部3上に配置されて第1バッファー槽6を形成している。また、通電方向Eの他方側(図16における右側)に位置する容器53は、第2開口部4上に配置されて第2バッファー槽7を形成している。
【0110】
容器52の底部には、第1開口部3よりも大きい矩形状等からなる孔52Bが形成されている。また、容器53の底部には、第2開口部4よりも大きい矩形状等からなる孔53Bが形成されている。また、容器52の外底面52Aと、カセット部材5の基材1Aの外面との間には、孔52Bを通電方向Eに挟むように一対の弾性部材37が配設されている。また、容器53の外底面53Aと、カセット部材5の基材1Aの外面との間には、孔53Bを通電方向Eに挟むように一対の弾性部材37が配設されている。また、特に図示しないが、この電気泳動用ゲルカセット50は、バッファー槽形成部材51とカセット部材5とを互いに接近させた状態で保持する保持手段を備えている。尚、これら弾性部材37及び前記保持手段の代わりに、前述した接着部材12を用いてもよい。
【0111】
本実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット50によれば、前述の実施形態と同様の効果が得られる。また、この場合、電気泳動用ゲルカセット50を電気泳動装置に装着する際に、外形精度のよいカセット部材5で位置決め(通電方向E及び幅方向Wの位置決め)ができることから、一次元目の電気泳動と二次元目の電気泳動との接続位置が高精度に設定されて、好ましい。
尚、本実施形態では、容器52の底部には、第1開口部3よりも大きい孔52Bが形成されており、容器53の底部には、第2開口部4よりも大きい孔53Bが形成されているとしたが、これに限定されるものではない。
【0112】
図17は、この電気泳動用ゲルカセット50の変形例を示している。
図示の例では、バッファー槽形成部材51の容器52、53の底部に孔52B、53Bが形成される代わりに、これら容器52、53において通電方向Eに互いに向かい合う壁部に、孔52C、53Cがそれぞれ形成されている。孔52C、53Cは、カセット部材5が通電方向Eに貫通可能な矩形状とされており、孔52Cとこれに挿入されるカセット部材5との間、及び、孔53Cとこれに挿入されるカセット部材5との間には、矩形枠状のシール部材54がそれぞれ配設されている。
【0113】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット60について、図18を参照して説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0114】
本実施形態の電気泳動用ゲルカセット60は、前述したバッファー槽形成部材8、31、51の代わりに、カセット部材5に着脱可能なバッファー槽形成部材61を備えている。このバッファー槽形成部材61は、弾性部材37(又は接着部材12)を介してカセット部材5の基材1A上に載置されているとともに、第1開口部3が配置される第1バッファー槽6と、第2開口部4が配置される第2バッファー槽7とを一体に備えている。そして、これら第1、第2バッファー槽6、7は、バッファー槽形成部材61の壁部61Bを介して隣接して配置されている。
【0115】
本実施形態に係る電気泳動用ゲルカセット60によれば、前述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0116】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、前述の実施形態では、電気泳動用ゲルカセット10、20、30、40、50、60が、二次元電気泳動装置からなる電気泳動装置に配設されることとしたが、これに限定されるものではなく、SDS−PAGE単一の構成を備えた電気泳動装置に配設されることとしてもよい。この場合、基材1同士の間にゲル2を充填する際には、第1、第2開口部3、4のいずれかにウェル作製のためのコームを差し込んだ状態で、ゲル溶液を充填する。
【0117】
その他、本発明の前述の実施形態の構成要素を、適宜組み合わせても構わない。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前述の構成要素を周知の構成要素に置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0118】
1 基材
1A 一の基材
1B 他の基材
2 ゲル
3 第1開口部
4 第2開口部
5 カセット部材
6 第1バッファー槽
7 第2バッファー槽
8、31、51、61 バッファー槽形成部材
9 凹部
10、20、30、40、50、60 電気泳動用ゲルカセット
11 通気口
12 接着部材
13 バッチ式容器
21、35、37 弾性部材
22 保持手段
32 外容器
32A 外容器の内底面
33 内容器
38 嵌合部(保持手段)
E 通電方向
T 厚さ方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなし厚さ方向に間隔をあけて対向配置される一対の基材、前記一対の基材同士の間に充填されるゲル、前記基材の厚さ方向に垂直な通電方向の一方側で前記ゲルを露出させる第1開口部、及び、前記基材の前記通電方向の他方側で前記ゲルを露出させる第2開口部を有するカセット部材と、
前記第1開口部が配置される第1バッファー槽、及び、前記第1バッファー槽とは区画され前記第2開口部が配置される第2バッファー槽を形成するバッファー槽形成部材と、を備え、
前記バッファー槽形成部材は、前記カセット部材に着脱可能とされていることを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項2】
請求項1に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記バッファー槽形成部材が、接着部材を介して前記カセット部材に装着されることを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項3】
請求項1に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記バッファー槽形成部材と前記カセット部材との間に配設される弾性部材と、
前記バッファー槽形成部材と前記カセット部材とを互いに接近させた状態で保持する保持手段と、を備えたことを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記バッファー槽形成部材の前記第1バッファー槽と前記第2バッファー槽とに、電極がそれぞれ設けられていることを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記一対の基材のうち、一の基材の外面における前記通電方向の端部には、前記第1開口部及び前記第2開口部のいずれかが形成されており、
前記一対の基材のうち、他の基材の外面における前記通電方向の端部に対応する部位には、この外面から前記厚さ方向に後退するように凹部が形成されていることを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記カセット部材には、前記一対の基材同士の間と外部とを連通するように、少なくとも1つ以上の通気口が形成されていることを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記基材は、少なくともガラス材料及び樹脂材料のいずれかからなる絶縁体であることを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記バッファー槽形成部材は、前記第1バッファー槽及び前記第2バッファー槽を一体に備えたことを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記バッファー槽形成部材は、
前記カセット部材を収容可能な外容器と、
前記外容器に収容されて、該外容器の内底面に前記基材の外面を対向させるように配設された前記カセット部材上に載置される内容器と、を備えたことを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項10】
請求項9に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記内容器は、前記外容器に嵌合されることを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記基材及び前記バッファー槽形成部材は、射出成形及び真空成形のいずれかにより作製されたことを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項12】
請求項2、4〜11のいずれか一項に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記基材の外面のうち、少なくとも前記第1開口部及び前記第2開口部のいずれかを含む領域が、剥離可能な封止部材により封止されており、
前記封止部材は、前記接着部材を介して前記外面に貼付されているとともに、この外面から剥離されることにより、前記接着部材を接着可能に露出させることを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項13】
板状をなし厚さ方向に間隔をあけて対向配置される一対の基材、前記一対の基材同士の間に充填されるゲル、前記基材の厚さ方向に垂直な通電方向の一方側で前記ゲルを露出させる第1開口部、及び、前記基材の前記通電方向の他方側で前記ゲルを露出させる第2開口部を有するカセット部材と、
前記第1開口部が配置される第1バッファー槽、及び、前記第1バッファー槽とは区画され前記第2開口部が配置される第2バッファー槽を形成するバッファー槽形成部材と、を備えた電気泳動用ゲルカセットの製造方法であって、
前記バッファー槽形成部材は、前記カセット部材に着脱可能とされており、
前記バッファー槽形成部材を前記カセット部材から取り外した状態で、該カセット部材をバッチ式容器に複数収容し、このバッチ式容器にゾル状のゲル溶液を流入することにより、これらカセット部材の一対の基材同士の間に前記ゲル溶液を充填する充填工程と、
前記カセット部材に前記バッファー槽形成部材を装着する装着工程と、を備えたことを特徴とする電気泳動用ゲルカセットの製造方法。
【請求項1】
板状をなし厚さ方向に間隔をあけて対向配置される一対の基材、前記一対の基材同士の間に充填されるゲル、前記基材の厚さ方向に垂直な通電方向の一方側で前記ゲルを露出させる第1開口部、及び、前記基材の前記通電方向の他方側で前記ゲルを露出させる第2開口部を有するカセット部材と、
前記第1開口部が配置される第1バッファー槽、及び、前記第1バッファー槽とは区画され前記第2開口部が配置される第2バッファー槽を形成するバッファー槽形成部材と、を備え、
前記バッファー槽形成部材は、前記カセット部材に着脱可能とされていることを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項2】
請求項1に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記バッファー槽形成部材が、接着部材を介して前記カセット部材に装着されることを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項3】
請求項1に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記バッファー槽形成部材と前記カセット部材との間に配設される弾性部材と、
前記バッファー槽形成部材と前記カセット部材とを互いに接近させた状態で保持する保持手段と、を備えたことを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記バッファー槽形成部材の前記第1バッファー槽と前記第2バッファー槽とに、電極がそれぞれ設けられていることを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記一対の基材のうち、一の基材の外面における前記通電方向の端部には、前記第1開口部及び前記第2開口部のいずれかが形成されており、
前記一対の基材のうち、他の基材の外面における前記通電方向の端部に対応する部位には、この外面から前記厚さ方向に後退するように凹部が形成されていることを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記カセット部材には、前記一対の基材同士の間と外部とを連通するように、少なくとも1つ以上の通気口が形成されていることを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記基材は、少なくともガラス材料及び樹脂材料のいずれかからなる絶縁体であることを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記バッファー槽形成部材は、前記第1バッファー槽及び前記第2バッファー槽を一体に備えたことを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記バッファー槽形成部材は、
前記カセット部材を収容可能な外容器と、
前記外容器に収容されて、該外容器の内底面に前記基材の外面を対向させるように配設された前記カセット部材上に載置される内容器と、を備えたことを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項10】
請求項9に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記内容器は、前記外容器に嵌合されることを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記基材及び前記バッファー槽形成部材は、射出成形及び真空成形のいずれかにより作製されたことを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項12】
請求項2、4〜11のいずれか一項に記載の電気泳動用ゲルカセットであって、
前記基材の外面のうち、少なくとも前記第1開口部及び前記第2開口部のいずれかを含む領域が、剥離可能な封止部材により封止されており、
前記封止部材は、前記接着部材を介して前記外面に貼付されているとともに、この外面から剥離されることにより、前記接着部材を接着可能に露出させることを特徴とする電気泳動用ゲルカセット。
【請求項13】
板状をなし厚さ方向に間隔をあけて対向配置される一対の基材、前記一対の基材同士の間に充填されるゲル、前記基材の厚さ方向に垂直な通電方向の一方側で前記ゲルを露出させる第1開口部、及び、前記基材の前記通電方向の他方側で前記ゲルを露出させる第2開口部を有するカセット部材と、
前記第1開口部が配置される第1バッファー槽、及び、前記第1バッファー槽とは区画され前記第2開口部が配置される第2バッファー槽を形成するバッファー槽形成部材と、を備えた電気泳動用ゲルカセットの製造方法であって、
前記バッファー槽形成部材は、前記カセット部材に着脱可能とされており、
前記バッファー槽形成部材を前記カセット部材から取り外した状態で、該カセット部材をバッチ式容器に複数収容し、このバッチ式容器にゾル状のゲル溶液を流入することにより、これらカセット部材の一対の基材同士の間に前記ゲル溶液を充填する充填工程と、
前記カセット部材に前記バッファー槽形成部材を装着する装着工程と、を備えたことを特徴とする電気泳動用ゲルカセットの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−73078(P2012−73078A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217225(P2010−217225)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
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