説明

電気泳動粒子

電気泳動媒体において、フッ素化アクリレートモノマー又はフッ素化メタクリレートモノマー由来の繰り返し単位を0.1乃至5モルパーセント含むポリマー外殻を有する顔料粒子を用いることは有利である。このポリマーは、主鎖から伸びる側鎖を有する有枝鎖構造を有することが望ましい。本発明は、このような粒子を備える電気泳動媒体及びディスプレイに関する。より詳細には、本発明は表面をポリマーで改質した電気泳動粒子に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動粒子(即ち、電気泳動媒体に使用するための粒子)及びこのような電気泳動粒子の製造プロセスに関する。また、本発明は、このような粒子を備える電気泳動媒体及びディスプレイに関する。より詳細には、本発明は、表面をポリマーで改質した電気泳動粒子に関する。
【0002】
本出願は、本出願人の国際出願第02/093246号に関連しており、読者は背景情報についてこの国際出願を参照のこと。
【背景技術】
【0003】
電気泳動ディスプレイは、多年にわたり精力的な研究開発の対象であった。こうしたディスプレイは、液晶ディスプレイと比較して輝度及びコントラストが良く、視野角が広く、状態双安定性が高く、かつ低電力消費であるという特質を持ち得る。(本明細書では、「双安定」及び「双安定性」という用語は、少なくとも1つの光学的性質が異なる第1および第2の表示状態を持つ表示素子を備えたディスプレイで、いずれか所与の表示素子が有限持続時間のアドレスパルスを用いてこれら第1又は第2の表示状態を取るよう駆動された後、このアドレスパルスが終了してから、その状態が、この所与の表示素子の状態を変化させるのに必要なアドレスパルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば少なくとも4倍持続するように構成されたディスプレイを指す当該分野での通常の意味で使用している。)にもかかわらず、これらの電気泳動ディスプレイは、長期的な画質に付随した問題があるため、広範な利用が妨げられて来た。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は沈降する傾向があり、その結果、これらのディスプレイにとって十分な耐用年数が得られていない。
【0004】
最近、カプセル封入電気泳動及び媒体に用いられる各種技術を開示したMassachusetts Institute of Technology及びE Ink Corporationへ譲渡された、或いはこれらの名義の多数の特許および特許出願が公開されるに至った。このようなカプセル封入媒体は、それ自身が液状媒体中に電気泳動移動性粒子を含有する内相及びこの内相を取り囲むカプセル壁を備えた多数の小さいカプセルよりなる。通常、こうしたカプセルは、それ自体ポリマー結合剤中に保持されて、2つの電極間に位置するコヒーレント層を形成する。これらの特許及び特許出願に開示されている技術としては以下のものが挙げられる:
(a)電気泳動粒子、流体及び流体添加剤;例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21、特許文献22、特許文献23、特許文献24、特許文献25、特許文献26、特許文献27、特許文献28、特許文献29、特許文献30及び特許文献31並びに特許文献32、特許文献33、特許文献34、特許文献35、特許文献36、特許文献37、特許文献38、特許文献39、特許文献40、特許文献41及び特許文献42参照;
(b)カプセル、結合剤及びカプセル封入プロセス;例えば、特許文献43及び特許文献44参照;
(c)膜及び電気光学材料を含有するサブアセンブリ;例えば、特許文献45及び特許文献46参照;
(d)ディスプレイに用いられるバックプレーン、接着剤層及び他の補助層並びに方法;例えば、特許文献47及び特許文献48参照;
(e)色成及び色調整;例えば、特許文献49及び特許文献46;
(f)ディスプレイの駆動方法;例えば、特許文献50及び特許文献51;並びに
(g)ディスプレイの用途;例えば、特許文献52及び特許文献53。
【0005】
例えば特許文献18に記載されているように、公知の電気泳動媒体は、カプセル封入、非カプセル封入のいずれも主に2つのタイプに分けることができ、これらを以下、それぞれ便宜上「単粒子」及び「二粒子」と称する。単粒子媒体は、着色懸濁媒体中に懸濁する一つのタイプの電気泳動粒子のみを有し、その媒体の少なくとも一つの光学特性は、粒子の光学特性と異なる。二粒子媒体は、少なくとも1つの光学特性において異なる二つのタイプの粒子及び、着色していてもいなくてもよいが、通常は着色していない懸濁流体を有する。これら二つのタイプの粒子は、電気泳動移動度において異なり、この移動度における相違は、極性(このタイプは以下、「異電荷二粒子」媒体と称する場合がある)、及び/又は大きさにおいてである。単粒子電気泳動ディスプレイ及び二粒子電気泳動ディスプレイはいずれも、既述の2つの極端な光学的状態の中間にある光学的特性を有する中間の灰色状態をとることができると考えられる。
【0006】
上記の特許及び出願公開の一部には、各カプセル内に3つ以上のタイプの粒子を有するカプセル封入電気泳動媒体が開示されている。本願では、そのような多粒子媒体は二粒子媒体のサブクラスと見なしている。
【0007】
上記の特許および特許出願の多くは、カプセル封入電気泳動媒体中の互いに離散状をなすマイクロカプセルを取り囲む壁は連続相に置き換えることができ、その結果、電気泳動媒体が電気泳動流体の複数の離散状滴とポリマー材料の連続相とを含むいわゆるポリマー分散型電気泳動ディスプレイを生成することができること、及びこのようなポリマー分散型電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の離散状滴は、個々の各滴に個別のカプセル膜が伴ってはいないが、カプセル或いはマイクロカプセルと見なすことが可能であることを認めている;例えば、特許文献54を参照されたい。従って、本願では、このようなポリマー分散型電気泳動媒体はカプセル封入電気泳動媒体のサブクラスと見なしている。
【0008】
前述のように、電気泳動媒体は流体の存在を必要とする。多くの従来技術の電気泳動媒体では、この流体は液体であるが、ガス状流体を用いて電気泳動媒体を作製することができる;例えば、非特許文献1及び非特許文献2を参照されたい。また、特許文献55及び特許文献56をも参照されたい。このようなガスをベースとした電気泳動媒体は、この媒体が粒子の沈降を可能にする向きで、例えばこの媒体が垂直面として配置される標識で使用される場合、液体ベースの電気泳動媒体と同種の粒子沈降による問題を生じやすいように思われる。実際のところ、粒子沈降の問題は、液体ベースの電気泳動媒体よりもガスベースの電気泳動媒体においてより深刻である。というのは、液状のものに比してガス状の懸濁流体の粘度が低いため、電気泳動粒子のより急速な沈降が可能となるからである。
【0009】
関連したタイプの電気泳動ディスプレイとして、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」がある。マイクロセル電気泳動ディスプレイにおいては、荷電粒子及び流体はマイクロカプセル中に封入されるのではなく、キャリヤー媒体、通常ポリマー膜中に形成された複数のキャビティ中に保持される。例えば、特許文献57及び特許文献58(共にSipix Imaging,Inc.社に譲渡されている)を参照されたい。
【0010】
電気泳動粒子の物理的性質及び表面特性は、この粒子の表面に種々の材料を吸着させることで、又はこうした表面に種々の材料を化学的に結合させることで改質することができることは、かなり以前から知られている。その後、電気泳動粒子を改質材で単純に被覆したのでは、操作条件が変化すると改質材の一部又は全部が粒子表面から離脱し、それによって粒子の電気泳動特性に好ましくない変化がもたらされる虞があるため、余り満足のゆくものではなく、改質材が電気泳動ディスプレイ内の他の表面に沈着することになりかねず、そのことによりさらに問題を生ずることも考えられることが分かった。そこで、改質材を粒子の表面に固定する技術が開発されてきた。
【0011】
特許文献59には、多種多様なポリマー被覆電気泳動粒子が記載されている。このようなポリマー被覆粒子に有用であると教示された数多くのモノマーにはいくつかのフッ素化モノマーがあり、本特許出願には、約10モルパーセントのフッ素化モノマーを約90モルパーセントの非フッ素化モノマーと組み合せて用いてポリマー塗膜を形成する実施例20が含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,961,804号明細書
【特許文献2】米国特許第6,017,584号明細書
【特許文献3】米国特許第6,120,588号明細書
【特許文献4】米国特許第6,120,839号明細書
【特許文献5】米国特許第6,262,706号明細書
【特許文献6】米国特許第6,262,833号明細書
【特許文献7】米国特許第6,300,932号明細書
【特許文献8】米国特許第6,323,989号明細書
【特許文献9】米国特許第6,377,387号明細書
【特許文献10】米国特許第6,515,649号明細書
【特許文献11】米国特許第6,538,801号明細書
【特許文献12】米国特許第6,580,545号明細書
【特許文献13】米国特許第6,652,075号明細書
【特許文献14】米国特許第6,693,620号明細書
【特許文献15】米国特許第6,721,083号明細書
【特許文献16】米国特許第6,727,881号明細書
【特許文献17】米国特許第6,822,782号明細書
【特許文献18】米国特許第6,870,661号明細書
【特許文献19】米国特許第7,002,728号明細書
【特許文献20】米国特許第7,038,655号明細書
【特許文献21】米国特許第7,170,670号明細書
【特許文献22】米国特許第7,180,649号明細書
【特許文献23】米国特許第7,230,750号明細書
【特許文献24】米国特許第7,230,751号明細書
【特許文献25】米国特許第7,236,290号明細書
【特許文献26】米国特許第7,247,379号明細書
【特許文献27】米国特許第7,312,916号明細書
【特許文献28】米国特許第7,375,875号明細書
【特許文献29】米国特許第7,411,720号明細書
【特許文献30】米国特許第7,532,388号明細書
【特許文献31】米国特許第7,679,814号明細書
【特許文献32】米国特許出願公開第2005/0012980号明細書
【特許文献33】米国特許出願公開第2006/0202949号明細書
【特許文献34】米国特許出願公開第2008/0013155号明細書
【特許文献35】米国特許出願公開第2008/0013156号明細書
【特許文献36】米国特許出願公開第2008/0266245号明細書
【特許文献37】米国特許出願公開第2008/0266246号明細書
【特許文献38】米国特許出願公開第2009/0009852号明細書
【特許文献39】米国特許出願公開第2009/0027762号明細書
【特許文献40】米国特許出願公開第2009/0206499号明細書
【特許文献41】米国特許出願公開第2009/0225398号明細書
【特許文献42】米国特許出願公開第2010/0045592号明細書
【特許文献43】米国特許第6,922,276号明細書
【特許文献44】米国特許第7,411,719号明細書
【特許文献45】米国特許第6,982,178号明細書
【特許文献46】米国特許出願公開第2007/0109219号明細書
【特許文献47】米国特許第7,116,318号明細書
【特許文献48】米国特許第7,535,624号明細書
【特許文献49】米国特許第7,075,502号明細書
【特許文献50】米国特許第7,012,600号明細書
【特許文献51】米国特許第7,453,445号明細書
【特許文献52】米国特許第7,312,784号明細書
【特許文献53】米国特許出願公開第2006/0279527号明細書
【特許文献54】米国特許第6,866,760号明細書
【特許文献55】米国特許第7,321,459号明細書
【特許文献56】米国特許第7,236,291号明細書
【特許文献57】米国特許第6,672,921号明細書
【特許文献58】米国特許第6,788,449号明細書
【特許文献59】国際公開第02/093246号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Kitamura,T.ほか、”Electrical toner movement for electronic paper−like display”、IDW Japan、2001年、Paper HCS1−1
【非特許文献2】Yamaguchi,Y.ほか、”Toner display using insulative particles charged triboelectrically”、IDW Japan、2001年、Paper AMD4−4
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
現在では、比較的小さなモル比(約5モルパーセント以下)のフッ素化アクリレートモノマー又はフッ素化メタクリレートモノマー(特に、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、以下、「TFEM」と略す)を電気泳動粒子のポリマー外殻に用いることにより上記のWO02/093246には記載されていない大きな利点が得られる。具体的には、このようなフッ素化モノマーを用いると、顔料粒子の電荷を調整することが可能となる。
【0015】
一態様において、本発明は、流体中に複数の顔料粒子を含む電気泳動媒体であって、この顔料粒子はこの顔料粒子に化学的に結合したポリマーを有し、このポリマーはフッ素化アクリレートモノマー又はフッ素化メタクリレートモノマー由来の繰り返し単位を約0.1乃至約5モルパーセント含むものとする電気泳動媒体を提供する。
【0016】
本発明の電気泳動媒体は、上記のWO02/093246に記載されているポリマー外殻の任意選択の特徴のいずれかを備えることができる。上記被覆粒子中のポリマーの好ましい割合は、通常、実質的に上記WO02/093246に記載されている通りとなる、即ち、こうした粒子はポリマーの粒子の重量の約4乃至約15パーセント、望ましくは約8乃至約12パーセントがこの粒子に結合している。この粒子は金属酸化物又は水酸化物、例えばチタニアを含むことができる。上記ポリマーは荷電又は荷電性基、例えばアミノ又はカルボン酸基を含むことができる。このポリマーは、主鎖及びこの主鎖から伸びる複数の側鎖を含み、これらの側鎖のそれぞれは少なくとも約4個の炭素原子を含むことができる。通常、このポリマーは2個以上のアクリレートモノマー及び/又はメタクリレートモノマーから形成される。
【0017】
通常、上記フッ素化モノマーは、非フッ素化アクリレートモノマー又は非フッ素化メタクリレートモノマーと組み合わせて用いることになり(即ち、このポリマーはフッ素化アクリレートモノマー及び/又はメタクリレートモノマーならびに非フッ素化アクリレートモノマー及び/又はメタクリレートモノマーの両者に由来する残基を含むことができる)、ラウリルメタクリレートがこの目的に好ましいモノマーである。フッ素化モノマーの非フッ素化モノマーに対するモル比は変わり得るが、通常は、フッ素化モノマーはポリマー中の全モノマーの約1乃至約5モルパーセントを含むことになる。少なくとも3個のフッ素原子を含む高度にフッ素化されたモノマーが好ましい。特に好ましいフッ素化モノマーは、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートであるが、他のフッ素化モノマー、例えば2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルアクリレート及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルアクリレートを用いることもできる。
【0018】
本発明には、本発明の電気泳動媒体及びこの電気泳動媒体に電場をかけるために配置された少なくとも1個の電極を含む電気泳動ディスプレイ並びにこのようなディスプレイを含む電子書籍リーダ、携帯用のコンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電話、スマートカード、標識、腕時計、棚札又はフラッシュドライブが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】図1Aは、電気泳動媒体が着色懸濁流体中に単一タイプの粒子を含む本発明の第1の電気泳動ディスプレイの模式的断面図である。
【図1B】図1Bは、電気泳動媒体が着色懸濁流体中に単一タイプの粒子を含む本発明の第1の電気泳動ディスプレイの模式的断面図である。
【図2A】図2Aは、電気泳動媒体が非着色懸濁流体中に異極性の電荷を有する2つの異なるタイプの粒子を含む本発明の第2の電気泳動ディスプレイの、図1Aと概ね同様の模式的断面図である。
【図2B】図2Bは、電気泳動媒体が非着色懸濁流体中に異極性の電荷を有する2つの異なるタイプの粒子を含む本発明の第2の電気泳動ディスプレイの、図1Bと概ね同様の模式的断面図である。
【図3A】図3Aは、電気泳動媒体が非着色懸濁流体中に同極性の電荷を有するが電気泳動移動度が異なる2つの異なるタイプの粒子を含む本発明の第3の電気泳動ディスプレイの、図2Aと概ね同様の模式的断面図である。
【図3B】図3Bは、電気泳動媒体が非着色懸濁流体中に同極性の電荷を有するが電気泳動移動度が異なる2つの異なるタイプの粒子を含む本発明の第3の電気泳動ディスプレイの、図2Bと概ね同様の模式的断面図である。
【図4A】図4Aは、本発明のポリマー分散型電気泳動媒体及びこの媒体を製造するのに用いたプロセスを例示した図である。
【図4B】図4Bは、本発明のポリマー分散型電気泳動媒体及びこの媒体を製造するのに用いたプロセスを例示した図である。
【図5】図5は、下記の実施例1で報告した実験におけるポリマー外殻中のフッ素化モノマーの割合と共に変化するゼータ電位を示す棒グラフである。
【図6】図6は、下記の実施例3で報告した実験におけるポリマー外殻中のフッ素化モノマーの割合と共に変化する暗状態及び白状態の不安定度を示す棒グラフである。
【図7】図7は、下記の実施例3で報告した実験におけるポリマー外殻中のフッ素化モノマーの割合と共に変化する最高白状態、最低暗状態及び全ダイナミックレンジを示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の電気泳動媒体及びプロセスを詳細に説明する前に、この媒体を使用することが意図されている電気泳動ディスプレイの種類をいくつか簡単に説明することが望ましいと考えられる。
【0021】
本発明の電気泳動媒体は上記のE Ink及びMITの特許及び特許出願に記載されているタイプのいずれかとすることができ、ここに、このような媒体の好ましい実施態様について添付の図面の図1乃至図4に基づき説明する。
【0022】
図1A及び図1Bに示した本発明の第1の電気泳動ディスプレイ(全体を符号100で表した)は、複数のカプセル104(図1A及び図1Bにはそのうちの1つのみが示されている)を含むカプセル封入電気泳動媒体(全体を符号102で表した)を含み、複数のカプセルのそれぞれが懸濁液体106を含み、カプセル内部に、説明のため黒色とした単一のタイプの複数の粒子108を分散させている。粒子108は電気泳動移動性を有し、カーボンブラックで形成することができる。以下の説明では、粒子108は正に荷電していると仮定するが、勿論、所望であれば、負に荷電した粒子を用いることもできる。(粒子108の三角形並びに以下で説明する他の粒子の正方形及び円形は、添付の図において様々な粒子のタイプを容易に識別できるよう単に例示するために用いたものであり、通常実質的に球形である実際の粒子の物理的形状に相当するものでは全くない。しかしながら、本ディスプレイに非球形粒子を使用することを排除するものではない。)さらに、ディスプレイ100は、透明な共通前面電極110並びに複数の離れた背面電極112(図1A及び図1Bには背面電極112が1個のみ示されている)を含み、上記透明な共通前面電極は表示表面(viewing surface)を形成し、観察者はこの表示表面を通して見、上記複数の離れた背面電極のそれぞれがディスプレイ100の1つの画素を規定する。説明及び理解を容易にするために、図1A及び図1Bには背面電極112で規定される画素を形成する単一のマイクロカプセルのみを示しているが、実際には、画素毎に多数(20個以上)のマイクロカプセルが通常用いられる。背面電極112は基材114に取り付けられている。
【0023】
懸濁液体106は、背面電極112に隣接する図1Aに示す位置にある粒子108が前面電極110を介してディスプレイ100を見る観察者に見えないように着色されている。懸濁液体106に必要な色は、この液体に染料を溶かすことで得ることができる。着色懸濁液体106及び粒子108は電気泳動媒体102を不透明にするので、背面電極112及び基材114は、不透明な電気泳動媒体102を通して見えないので、透明でも不透明でもよい。
【0024】
カプセル104及び粒子108は種々の大きさにすることができる。しかしながら、一般には、電極に対して直角に測定されたカプセルの厚さが約15乃至約500μmの範囲にあり、粒子108が通常約0.25乃至約2μmの範囲の直径を有することが好ましい。
【0025】
図1Aは、背面電極112が負に荷電し、前面電極110が正に荷電したディスプレイ100を示したものである。この状態下では、正に荷電した粒子108は負の背面電極112に引き寄せられ、その結果、背面電極112に隣接するが、この場合、この粒子は、前面電極110を通してディスプレイ100を見る観察者から着色液体106によって隠されている。従って、図1Aに示した画素は観察者に液体106の色を表示し、この液体106は説明のために白とする。(図1A及び図1Bではディスプレイ100は背面電極112を下にして示されているが、実際には、前面電極及び背面電極は共に、ディスプレイ100が最もよく見えるように垂直に配置されているのが通常である。一般に、本明細書に記載した本発明の媒体及びディスプレイは、粒子の移動を制御するのに重力に一切依存しない;重力によるそのような移動は、実際には速度が極めて遅いので粒子の移動を制御するのに有用ではない。)
図1Bは、前面電極110を背面電極112に対して負にしたディスプレイ100を示す。粒子108は正に荷電しているので、負に荷電した前面電極110に引き寄せられ、その結果、粒子108は移動して前面電極110に隣接し、画素は粒子108の黒色を表示する。
【0026】
図1A及び図1Bでは、カプセル104は、実質的にプリズム状であり、(電極の面に平行である)幅が(こうした面に対し直角である)高さより有意に大きいものとして例示されている。カプセル104のこのプリズム形状は意図的なものである。カプセル104が基本的に球形であれば、図1Bに示した黒状態の粒子108は、カプセルの中心の直ぐ上を中心とした限定された領域の、カプセルの最も高い部分に集まりやすいことになる。そのとき、観察者に見える色は、この中心の黒領域とこの中心領域を囲む白い環状の部分の平均であることになり、この場合、白い液体106が目に見えることになる。従って、おそらくこの黒状態とした場合でも、観察者には純粋の黒ではなく灰色がかった色が見えることになり、それに応じて、画素の両極端の光学的状態の間のコントラストは限定されることになる。これに対して、図1A及び図1Bに示したプリズム状のマイクロカプセルの場合、粒子108は基本的にこのカプセルの断面全体をカバーするので、白い液体は全く又は少なくともほとんど見えず、カプセルの両極端の光学的状態のコントラストは増幅される。この点及び電気泳動層内にこうしたカプセルを密充填することの望ましさに関してさらに検討するために、読者は上記の米国特許第6,067,185号及びこれに対応する公開国際出願WO99/10767の参照のこと。また、上記のE Ink及びMITの特許及び特許出願に記載されているように、電気泳動媒体に機械的完全性もたらすためには、通常マイクロカプセルを固体結合剤内に包埋するが、この結合剤は説明をわかり易くするため図1乃至図3から除外している。
【0027】
図2A及び図2Bに示した本発明の第2の電気泳動ディスプレイ(全体を符号200で表した)は、複数のカプセル204を含むカプセル封入電気泳動媒体(全体を符号202で表した)を含み、上記複数のカプセルのそれぞれが懸濁液体206を含み、カプセル内部に上で検討された第1のディスプレイ100のカプセルに対して同じく検討された複数の正荷電黒粒子108を分散させている。ディスプレイ200はさらに、前面電極110、背面電極112及び基材114を含み、これらの符号は全て第1のディスプレイ100における対応する整数と同一である。しかしながら、液体206には、黒粒子108の他に、複数の負荷電粒子218が懸濁して存在しており、この複数の負荷電粒子218は本目的のために白とする。
【0028】
通常、液体206は着色されていない(即ち、基本的には透明)が、ディスプレイの種々の状態の光学的特性を調整するために、その中に何らかの色を存在させることができる。図2Aは、前面電極110が例示画素の背面電極112に対して正に荷電したディスプレイ200を示す。正に荷電した粒子108は背面電極112に隣接して静電的に保持される一方で、負に荷電した粒子218は前面電極110に対して静電的に保持される。従って、前面電極110を通してディスプレイ200を見る観察者には、白粒子218が目にみえ、黒粒子108を隠すので、白画素が見える。
【0029】
図2Bは、前面電極110が例示画素の背面電極112に対して負に荷電したディスプレイ200を示す。図1Bに示した対応する光学的状態における場合と同様に、正に荷電した粒子108は、そのとき負の前面電極110に静電的に引き寄せられるが、負に荷電した粒子218は正の背面電極112に静電的に引き寄せられる。従って、粒子108は移動して前面電極110に隣接し、画素は粒子108の黒色を表示し、この粒子が白粒子218を隠す。
【0030】
図3A及び図3Bに示した本発明の第3の電気泳動ディスプレイ(全体を符号300で表した)は、複数のカプセル304を含むカプセル封入電気泳動媒体(全体を符号302で表した)を含む。ディスプレイ300はさらに、前面電極110、背面電極112及び基材114を含み、これらの符号は全て先に記載したディスプレイ100及び200における対応する整数と同一である。ディスプレイ300は、液体306が着色されておらず、負に荷電した白粒子218がその中で懸濁している点で、上記のディスプレイ200に類似している。しかしながら、ディスプレイ300は、白粒子218よりも電気泳動移動度が実質的に低い負に荷電した赤粒子320が存在することでディスプレイ200と異なる。
【0031】
図3Aは、前面電極110が例示画素の背面電極112に対して正に荷電したディスプレイ300を示す。負に荷電した白粒子218及び負に荷電した赤粒子320は共に、前面電極110に引き寄せられるが、白粒子218の方が実質的に高い電気泳動移動度を有するので、これが前面電極110に最初に到達する(図3Aに示す光学的状態は通常、図3Bに示す光学的状態の電極から極性を急に逆転させ、その結果、白粒子218及び赤粒子320の両者にカプセル304の厚い部分を横切らせ、その結果、白粒子218の移動度がより大きいことによりこれが赤粒子320の前に前面電極110に隣接した位置に到達することで、生じることに留意されたい)。そのため、白粒子218は前面電極110のすぐ近隣に連続層を形成し、これによって赤粒子320を隠す。従って、ディスプレイ300を前面電極110を通して見る観察者には、白粒子218が目に見えて赤粒子320を隠すので、白画素が見える。
【0032】
図3Bは、前面電極110が例示画素の背面電極112に対して負に荷電したディスプレイ300を示す。負に荷電した白粒子218及び負に荷電した赤粒子320は共に、背面電極112に引き寄せられるが、白粒子の方が高い電気泳動移動度を有するので、図3Bに示す光学的状態が図3Aに示す光学的状態の電極の極性を逆転させることで生じる場合、白粒子218は赤粒子320よりも素早く背面電極112に到達し、その結果、白粒子218が電極112に隣接して連続層を形成し、前面電極110に面する赤粒子320の連続層を残す。従って、ディスプレイ300を前面電極110を通して見る観察者には、赤粒子320が目に見えて白粒子218を隠すので、赤画素が見える。
【0033】
図4A及び図4Bは、本発明のポリマー分散型電気泳動媒体及びこの媒体の作製に用いるプロセスを示す。このポリマー分散型電気泳動媒体は、非球形滴を含むものであり、膜形成材料であって膜形成後十分に収縮可能な膜を生成する材料を用いることで調製される。この目的に好ましい不連続相はゼラチンであるが、他の蛋白質性材料及び、場合によっては架橋可能なポリマーを代わりに用いることができる。この液状材料(は最終的には連続相を形成することになる)及び滴の混合物を形成し、基材に塗布して図4Aに示すような構造を形成する。図4Aは、膜の形成プロセスにある液状媒体414中に分散した滴412を含む層410であって、インジウム−スズ酸化物などの透明な導電性材料の層418を予め設けてある基材416(好ましくは、ポリエステルフィルムなどの可撓性ポリマー膜)に塗布された層410を示す。この液状材料は、図4Aに示したように、基本的に球形滴412を含む比較的厚い層410を形成する。層410が固体連続相を形成した後、この層を、好ましくはほぼ室温で(所望であれば加熱しても良い)このゼラチンを脱水するのに十分な期間、乾燥させることで、この層の厚さを実質的に減少させて図4Bに示すタイプの構造を得るが、この乾燥し収縮した層を図4Bに符号410’で表した。この層の垂直方向の収縮(即ち、基材416の表面に対し直角方向の収縮)は結果的に、扁平楕円体状に元の球形滴を圧縮し、上記表面に対し直角方向の扁平楕円体の厚さが、上記表面に平行な横寸法よりも実質的に小さい。実際のところは、滴は通常、隣り合った滴の外側縁が互いに接触するほど十分密に充填されており、その結果、滴の最終形態は扁平楕円体よりも不規則プリズムに酷似している。また、図4Bに示したように、最終の媒体には滴の層が1層より多く存在し得る。この媒体が、滴が多分散系である(即ち、広い範囲の滴サイズが存在する)図4Bに示したタイプである場合、そのような複数層の存在は、基材の小さな領域がいずれの滴でもカバーされない可能性を低下させる点で有利であり、従って、こうした複数層は、電気泳動媒体が完全に不透明となり、この媒体から形成されたディスプレイには基材のどの部分も見えなくなることを確実にするのに役立つ。しかしながら、基本的に単分散系の滴(即ち、すべてが実質的に同じサイズの滴)を用いる媒体では、一般には、収縮後、密充填された滴の単層をもたらすことになる層として媒体を塗布する方がよい(米国特許第6,839,158号参照)。本発明のポリマー分散型媒体中の滴は、マイクロカプセル封入電気泳動媒体にみられる比較的硬いマイクロカプセル壁を有しないので、マイクロカプセルよりもきっちりと密充填単層状に充填し易いと考えられる。
【0034】
予想されることとは反対に、実験的に、滴同士が媒体の乾燥中に合体することはないことが分かっている。しかしながら、本発明の一部の実施態様において隣り合うカプセル間の壁にある破裂が生じ、そのために滴間の部分的な結合がもたらされる可能性は除外しない。
【0035】
乾燥工程中に生じる滴の変形の程度、従って滴の最終形態は、ゼラチン溶液中の水の割合及び滴に対するこの溶液の比率を制御することで変更することができる。例えば、2乃至15重量パーセントのゼラチン溶液を用い、かつ、200グラムの各ゼラチン溶液及び滴を形成する50グラムの内部非水相を用いて、実験を行った。厚さ30μmの電気泳動媒体の最終層を作製するには、厚さ139μmの2パーセントゼラチン溶液/内部相混合物の層を塗布する必要があり、この層は、乾燥すると、92.6容量パーセントの滴を含む厚さ30μmの電気泳動媒体をもたらした。他方、同じ最終厚さの電気泳動媒体を作製するために、15パーセントゼラチン溶液/内部相混合物を93μmの厚さに塗布し、乾燥して62.5容量パーセントの滴を含む電気泳動媒体を得た。2パーセントゼラチン溶液から作製した媒体は、粗暴な取り扱いに耐えるのに望まれるよりも軟弱であり、5乃至15重量パーセントのゼラチンを含むゼラチン溶液から作製した媒体は満足のいく機械的性質を有した。
【0036】
また、最終電気泳動媒体中の滴の変形の程度は、滴の初期サイズ及びこの初期サイズと電気泳動媒体の最終層の厚さとの関係によっても影響を受ける。実験によれば、滴の平均初期サイズが大きいほど、かつ/又は最終層の厚さに対するこの平均初期サイズの比が大きいほど、最終層における滴の球形からの変形は大きくなることが分かる。一般に、滴の平均初期サイズは最終層の厚さの約25パーセント乃至約400パーセントであることが好ましい。例えば、最終層の厚さが30μmであった既述の実験では、10乃至100μmの初期平均滴サイズで良好な結果が得られた。
【0037】
ゼラチンはゾル/ゲル変換によって膜を形成するが、本発明は、そのようなゾル/ゲル変換により膜を形成する膜形成材料に制約されない。例えば、モノマー又はオリゴマーの重合、ポリマー又はオリゴマーの架橋、ポリマーの放射硬化或いは任意の他の公知の膜形成プロセスによって膜形成を達成することができる。同様に、膜を最初に形成し、次いで膜の厚さを縮小させる本発明の好ましい変形例では、この縮小は、ゼラチン膜が縮小する同じタイプの脱水機構で達成される必要はなく、膜からの水性又は非水性溶媒の除去、ポリマー膜の架橋或いは任意の他の従来法により達成され得る。
【0038】
本発明のポリマー分散型電気泳動媒体では、滴はこの電気泳動媒体の少なくとも約40容量パーセント、好ましくは約50乃至約80容量パーセントを構成することが望ましい(米国特許第6,866,760参照)。本発明のポリマー分散型電気泳動媒体に用いられる滴は図1乃至図3に示した粒子と懸濁流体との組合せのうちのいずれかを有することができることを強調しておきたい。
【0039】
本発明は、図1乃至図4に示したカプセル封入電気泳動媒体の形態のいずれかに適用することができる。しかしながら、本発明は、カプセル封入電気泳動媒体及びポリマー分散型電気泳動媒体に限定されるものではなく、マイクロセル及び非カプセル封入媒体にも適用することができる。
【0040】
下記の実施例によって明らかなように、電気泳動ディスプレイに用いる粒子のポリマー外殻においてフッ素化モノマーの量を制御して用いることにより負に荷電した粒子のゼータ電位が増加し、一般にそうであるように負の粒子がチタニアなどの白粒子である場合には、得られる負のゼータ電位の増加は白状態の向上(反映増大)として現れる。ポリマー外殻におけるフッ素化モノマーの割合が増加するにつれて、このゼータ電位はますます負になる。しかしながら、フッ素化モノマーが約5パーセントを超えると、ある特定の不利益が明らかになる。暗状態の影像減衰量(ディスプレイが駆動されていない状態で(例えば)2分間後のディスプレイの暗状態の変化として測定される)が増加し始め、暗状態自体の暗さが低下することで、ディスプレイのダイナミックレンジ(L単位で測定されるディスプレイの暗状態と白状態との差(Lは、通常のCIEの定義:
=116(R/R1/3−16、
式中、Rは反射率であり、Rは標準反射率値である)を有する)が不利な影響を受ける。従って、ポリマー外殻中のフッ素化モノマーのモル比を約0.1乃至約5モルパーセント、望ましくは約1乃至約5モルパーセントの範囲に維持することが一般には好ましい。フッ素化モノマーの最適な割合が、使用する特定のフッ素化モノマー(及び特にそのフッ素化の程度)、使用するその他のモノマー及び電気泳動媒体中に存在するその他の粒子を含む他の因子とともに多少変化し得ることは、明瞭に理解される。一般に、フッ素化モノマーの最適な割合は約1モルパーセントであると思われる。というのは、このレベルのフッ素化モノマーであれば、高い割合のフッ素化モノマーに伴う上記の不利益を避けつつ、ゼータ電位の大きさの実質的な増加が得られるからである。
【0041】
本発明の電気泳動媒体に用いるポリマー被覆粒子は、上記のWO02/093246に記載のプロセスのいずれかによって作製することができる。そのような一プロセスでは、ポリマー塗膜が形成されることになる粒子を、この粒子と反応し結合することができる官能基を有する二官能基試薬及び重合性基、例えば、ペンダントビニル又は他のエチレン性不飽和基と反応させる。
【0042】
次に、本発明に用いる特に好ましい試薬、条件及び技術の詳細を示すために、以下に、もっぱら例証としてではあるが、実施例を示す。
【実施例】
【0043】
実施例1
ポリマー外殻中に2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート及びラウリルメタクリレートを含む白色チタニア顔料の調製
3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートで表面官能化したDuPont R−794チタニアを、実質的に上記のPCEP用途で説明したようにして調製した。1Lのプラスチック瓶に500gのこの顔料を426g(500mL)のトルエン中に超音波処理により分散させた。1Lのジャケット付きガラス反応器に、ラウリルメタクリレートとTFEMとの間で所望のモル濃度の各モノマーが得られるように分けたモノマーを1.7158モル入れた。TFEMのモル比は0.1、1、5、10、25及び50モル%であり、残りはラウリルメタクリレートであった。この顔料分散液を反応器に添加し、反応器を窒素でパージして65℃で加熱した。予め110mLのトルエンに溶かした遊離基開始剤(5.0gの2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル(AIBN))を60分かけて滴下した。この容器を窒素雰囲気下に一夜65℃で連続攪拌しながら加熱し、次いで大気に曝した。次に、この混合物を1Lのプラスチック瓶4本に分け、さらにトルエン約500mLを各瓶に添加した。これらの瓶は激しく攪拌した。上記顔料を3500rpmで20分間の遠心により単離した。上清を捨て、顔料を、各瓶に約700mLのトルエンを加え、激しく攪拌して顔料を分散させ、3,500rpmで20分間遠心することで2回洗浄した。この顔料を一夜空気乾燥した後、65℃で一夜真空乾燥した。熱重量分析(TGA)を行い、6.7重量%乃至9.7重量%のポリマー濃度を得た。ゼータ電位測定は、界面活性剤(Solsperse 17K)でIsopar E中に分散させたサンプルに対してColloidal Dynamics ZetaProbeを用いて行った。図5にゼータ電位の数値を示した。
【0044】
図5のデータから、ゼータ電位の大きさはポリマー外殻中のTFEMの増加と共に増加したことが理解できる。
【0045】
実施例2
本発明の電気泳動粒子を用いたディスプレイの調製
上記実施例1で調製したポリマー被覆チタニア粒子を以下のようにして電気泳動ディスプレイに変換した。
【0046】
パートA:カプセルの調製
実施例1で調製した顔料を用い、以下の手順によりゼラチン−アカシアマイクロカプセルを調製した。内相は250mLのプラスチック瓶中、以下のものを混合して調製した。
【0047】
【表1】

次いで、得られた混合物を実質的に上記米国特許第6,822,782号中の実施例27乃至29に記載されているようにしてゼラチン−アカシアマイクロカプセルに変換した。
【0048】
パートB:ディスプレイの調製
上記パートAで調製したマイクロカプセルを静置した後、過剰の水をデカントした。次に、こうしたカプセルをポリマー結合剤と、結合剤1部に対してカプセル8部の重量比で混合してスラリーを作製した。このスラリーを4mil(101μm)のギャップを用いてインジウムスズ酸化物(ITO)被覆ポリマー膜に目標塗膜厚さ18μmでバーコーティングし、60℃のコンベヤーオーブン中で約2分乾燥して得られたシートを細かく切った。
【0049】
別個に、離型シートを、180ppmのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェイトでドープした、米国特許第7,012,735号に記載の25μm層特注ポリウレタン積層接着剤で被覆し、上記マイクロカプセル/ポリマー膜片よりも僅かに小さいサイズに切った。これら2種の膜を、120℃に設定したトップローラ及びボトムローラを有するホットロールラミネータを通過させて上記塗膜に積層し、得られた複合膜を所望のサイズに切った。離型シートを除去し、接着剤層を、93℃のトップローラ及びボトムローラ温度で別途ラミネータを通すことでグラファイト層を有する2インチ(51mm)四方のポリマー膜に積層した。得られた積層物から単一画素ディスプレイを切り出し、電気的に接続し、こうして作製した実験的単一画素ディスプレイを50%の相対湿度で5日間コンディショニングした。
【0050】
実施例3
電気光学的試験
電気光学的測定は、PR−650 SpectraScan Colorimeterを用いて実施例2で調製した単一画素ディスプレイで行った。この試験では、このディスプレイを250ミリ秒15Vのパルスを用いて黒及び白の極端な光学的状態へ繰り返し駆動した後、黒又は白のいずれかの極端な光学的状態へ駆動した。光学的状態の反射率を、(特定の一時的効果が消滅するのを可能にする)最終駆動パルスの約3秒後、次いで最終駆動パルスの2分後に測定し、2つの測定を比較して各画像不安定性(即ち、画像における双安定性の欠如)を検出した。
【0051】
図6(図中、「DS」は暗状態、「WS」は白状態を指す−白状態の画像不安定性が反射率の低下をもたらすので白状態画像不安定性値は負である)に結果を示したが、この図から、ポリマー外殻中のTFEMのレベルが1モルパーセントを超えると、画像不安定性が顕著に増加することが理解できる。0.1及び1モルパーセントレベルのTFEMでは、画像安定性は対照と同一か僅かに良好である。図7(図中、「DR」はダイナミックレンジを指す)は、図6に示した画像不安定性を考慮に入れた後の各ディスプレイの最高白状態、最低暗状態及び全ダイナミックレンジを示す。最大10モルパーセントまで(ただし10モルパーセントは含まない)TFEMのレベルが増加するにつれて、光学的状態が対照よりも改善する傾向がみられる。より高いTFEMレベルで光学的状態の改善が低下するのは図6に示した画像安定性の減少に帰することができる。図6及び図7から、ポリマー外殻にTFEMを混入させることにより、光学的状態、特に最終的なダイナミックレンジを改善することができること、及び電気泳動ディスプレイの主要な利点である画像双安定性の低下を伴わずに光学的状態の改善をもたらすTFEMレベルの枠があることが分かる。
【0052】
他の実験では、他のフッ素化モノマー(即ち、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルアクリレート及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルアクリレート)がTFEMと同様に上記白顔料のゼータ電位を調整し、光学的状態の同様な改善をもたらし得ることが示されている。これらのフッ素化モノマーがゼータ電位の変化及び光学的状態の変化をもたらす正確な機構については現在のところ不明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中に懸濁した複数の顔料粒子を含む電気泳動媒体であって、該顔料粒子は該顔料粒子に化学的に結合したポリマーを有し、該ポリマーの0.1乃至5モルパーセントはフッ素化アクリレートモノマー又はフッ素化メタクリレートモノマー由来の繰り返し単位を含む、電気泳動媒体。
【請求項2】
前記ポリマー中の1乃至5モルパーセントの前記モノマーがフッ素化モノマーを含む、請求項2に記載の電気泳動媒体。
【請求項3】
前記粒子が、該顔料粒子に化学的に結合した前記ポリマーの該顔料を4乃至15重量パーセント有する請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項4】
前記粒子が、該顔料粒子に化学的に結合した前記ポリマーの該顔料を8乃至12重量パーセント有する請求項3に記載の電気泳動媒体。
【請求項5】
前記ポリマーが主鎖及び該主鎖から伸びる複数の側鎖を含み、該側鎖のそれぞれが少なくとも4個の炭素原子を含む、請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項6】
前記ポリマーが非フッ素化アクリレートモノマー及び/又はメタクリレートモノマー由来の残基をさらに含む、請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項7】
前記非フッ素化メタクリレートモノマーがラウリルメタクリレートを含む、請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項8】
前記フッ素化モノマーが2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルアクリレート及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルアクリレートの中の少なくとも1種を含む、請求項2に記載の電気泳動媒体。
【請求項9】
少なくとも1つの光学的特性が異なり、異なる電気泳動移動度を有する二つのタイプの粒子を有する、請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項10】
前記二つのタイプの粒子が異極性の電荷を有する、請求項9に記載の電気泳動媒体。
【請求項11】
前記顔料粒子及び前記流体が複数のカプセル又はマイクロセルに封入されている、請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項12】
前記カプセルがポリマー結合剤内に保持されている、請求項11に記載の電気泳動媒体。
【請求項13】
前記顔料粒子及び前記流体がポリマー材料を含む連続相に囲まれた複数の離散状滴として存在する、請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項14】
前記流体がガス状である、請求項1に記載の電気泳動媒体。
【請求項15】
請求項1に記載の電気泳動媒体及び該電気泳動媒体に電場をかけるために配置された少なくとも1個の電極を含む電気泳動ディスプレイ。
【請求項16】
請求項15に記載のディスプレイを含む電子書籍リーダ、携帯用のコンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電話、スマートカード、標識、腕時計、棚札又はフラッシュドライブ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−530283(P2012−530283A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516230(P2012−516230)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/038780
【国際公開番号】WO2010/148061
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(500080214)イー インク コーポレイション (148)
【Fターム(参考)】