説明

電気泳動表示パネル

【課題】グレースケールの再生を改善した電気泳動表示デバイスを提供する。
【解決手段】画素を先行する光学的状態から画像情報に応じたグレースケールにもっていくために、プリセットパルスと駆動(グレースケール)パルスとを統合して(V=0について)非対称の統合パルス列にした電気泳動表示パネル、及び電気泳動表示パネルを駆動する方法を提供する。これにより、よりゆるやかなグレースケールの導入を達成し、1つの画像から他の画像への遷移の突発性を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
帯電粒子を含む電気泳動媒体と;
複数の画素と;
前記画素の各々に関連し、電位差を受ける電極と;
駆動手段とを具えて、
前記駆動手段が、前記複数の画素の各々の電位差を、前記粒子が画像情報に対応する位置を占めることを可能にするグレースケール(中間調)電位差にすべく制御するように構成された電気泳動表示パネルに関するものである。
【0002】
本発明は、電気泳動表示デバイスを駆動する方法にも関するものであり、この方法では、リセット電位差の印加後にグレースケール電位差が前記表示デバイスの画素に印加される。
【0003】
本発明はさらに、電気泳動表示パネルを駆動するための駆動手段に関するものである。
【背景技術】
【0004】
【特許文献1】国際特許出願 WO 02/073304
【0005】
冒頭段落に記載した種類の電気泳動表示パネルの具体例は、国際特許出願WO 02/073304に記載されている。
【0006】
上述した電気泳動表示パネルでは、画像の表示中に、各画素は前記粒子の位置によって決まる外見を有する。「グレースケール」とは、あらゆる中間状態を意味する。ディスプレイが白黒ディスプレイである際には、「グレースケール」は実際にグレー(灰色)の影に関係し、他の種類の有色素子が使用されている際には、「グレースケール」は、極限(両極端)の光学的状態の間のあらゆる中間状態を包含する。
【0007】
画像情報が変化する際に、画素がリセットされる。このリセット後に、グレースケール電位差の印加によってグレースケールが設定される。
【0008】
この例のディスプレイの欠点は、不正確なグレースケールの再生をもたらすアンダードライブ(駆動不足)効果を示すことにある。このアンダードライブ効果は、例えば、表示デバイスの初期状態がブラック(黒色)であり、ディスプレイがホワイト(白色)状態とブラック状態との間で周期的に切り換えられる際に発生する。例えば、数秒の休止時間後に、表示デバイスが200msの期間中負電界を印加されることによってホワイトに切り換えられる。これに続く次の期間中には、200msの間電界が印加されず、ディスプレイはホワイトのままであり、これに続く次の期間中には、正電界が200msの間印加されてディスプレイはブラックに切り換えられる。この(電界)パルス列の最初のパルスの応答としてのディスプレイの輝度(ブライトネス)は所望の最大輝度を下回り、このことは数パルス後に再現され得る。このアンダードライブ効果は、特にこのアンダードライブ効果がその後の画像の遷移中に積分されると、所望のグレーレベルからの大幅な乖離または誤差を生じさせる。上述したディスプレイの他の欠点は、前の画像履歴からの画像の保持(保存効果)が存在することにある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、グレースケールの再生を改善した応用を可能にする、冒頭段落に記載した種類の表示デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、前記駆動手段はさらに、画素毎に、駆動波形全体の少なくとも部分集合について、グレースケール電位差を、列中の電位値の符号が交番する電位差列にすべく制御するように構成され、一方の符号の電位差のエネルギー(V×t)は他方の符号の電位差のエネルギーよりも実質的に大きい。
【0011】
本発明は次の識見に基づくものである:
等強度の電位差(以下、「プリセット電位」とも称する)の交番列の印加は、画素の外見の、電位差の履歴への依存性を低減し、グレースケールの印加に必要な時間を低減する。プリセット電位差を印加する際に、プリセット信号は、電気泳動粒子を2つの電極の一方における静止状態から解放するのに十分なエネルギーを有するが、この粒子が他方の電極に到達するには低すぎ、アンダードライブ効果が低減される。アンダードライブ効果が低減されることにより、同一のデータ信号に対する光学的応答は、表示デバイスの履歴、特にその休止時間にかかわらずほぼ等しくなる。この基になるメカニズムは次のように説明することができる:表示デバイスが所定状態、例えばブラック状態に切り換えられた後に、電気泳動粒子は静止状態になり、これに続くホワイト状態への切り換え時には、これらの粒子の自転(スピン)速度が0に近いので、これらの粒子のモーメントが低いからである。このことは長い切り換え(スイッチング)時間を生じさせる。プリセットパルスの印加は、電気泳動粒子のモーメントを増加させ、これにより切り換え(スイッチング)時間を短縮する。表示デバイスが所定状態、例えばブラック状態に切り換えられた後に、電気泳動粒子を包囲する逆イオンによって電気泳動粒子を「凍結」させることも可能である。これに続く切り換えがホワイト状態への切り換えである際には、これらの逆イオンが適時に解放されなければならず、このことは追加的な時間を必要とする。プリセットパルスの印加は、これらの逆イオンの解放を加速し、これにより電気泳動粒子を「解凍」し、従って切り換え時間を短縮する。以下では、このプロセスを「シェーキング・アップ(揺さぶり)」と称することもある。しかし、グレースケール電位差を印加する前に等強度の電位差列を印加すると、外見的には光学的効果を示さないが、こうした印加は、知覚される画像の更新に(以上で説明したような)好影響を与えるが、前記プリセット信号が遅延として見えるので悪影響も与えることを発明者は見出した。このことは、更新時間全体を増加させるだけでなく、変化する画像の急な停止を導入することによって画像更新の自然な流れを悪化させる。前記シェーキングが長くなる(画像の保持はさらに低減される)と共に、これらの問題は一層深刻になる。本発明によるデバイスでは、リセット後に交番電位の列を用い、(この交番の)一方の符号の電位差のエネルギー(V×t)は、他方の符号の電位差のエネルギーよりも実質的に大きい。本発明によるデバイス及び方法では、プリセット信号(前記粒子を「シェークアップ」する(揺さぶる)ための、ほぼ0の平均電位を有する、即ち0Vを中心にほぼ対称の比較的小さいエネルギーの交番信号)とグレースケール電位差パルス(前記粒子を特定位置(グレースケール)にもっていくための実質的に正または負の符号のパルス)とを織り混ぜ、即ち交番パルス列中に組み込み、ここに非対称性が存在し、即ち、一方の符号のパルスのエネルギーは、逆符号のパルスのエネルギーよりも実質的に大きい(ここでエネルギーは、電位差と時間との積として定義される)。前記パルス列の交番特性は、画像保持を低減する「シェーキング効果」を提供し、前記非対称性は、前記粒子が所望の位置に移動すること、即ちグレースケールを達成することを可能にし、前記信号の組み込みは、画像の転換が即座に、あるいはリセットのすぐ後に始まることを可能にし、上述した転換の長引き、及び突発的な動きの画像遷移という負の光学的効果を低減する。
【0012】
光学的極限状態に等しいか非常に近いグレーレベルへの遷移、あるいはより一般的には、先行する光学的状態に等しいか非常に近いグレーレベルへの遷移も、本発明の概念では、プリセット(事前設定)された先行する光学的状態から少なくとも1つの中間的なグレースケールへの遷移、好ましくは大部分のグレースケールへの遷移に関する限り、そしてグレースケールパルスがプリセットされ、グレースケールパルスが組み込まれる限り、プリセットパルスが先行する1つの短いグレースケールパルス内で適用することができる。グレースケールの印加時間全体が下限しきい値より長いすべての遷移については、2つ以上のパルスを使用することが好ましい。グレースケールパルスの印加はしばしば、固定周期、例えばフレーム周期によって束縛され、このフレーム周期数には最大値(例えば8〜16なるN)が存在する。非常に短いパルス全体(前記固定またはフレーム周期の0、1、多くても2倍)を必要とする遷移を、(パルスのシェーキングによって)中断のない1つのパルス内で行うことができる。駆動波形全体の少なくとも部分集合については(ここで駆動波形とは、画素を1つの光学的状態からグレーレベルの光学的状態にもっていくための駆動パルスの形状を表わす)、プリセットパルスとグレーレベルパルスとを統合する。「部分集合」とは、本発明の概念では、あらゆるすべてのグレースケール電位差の印加について、グレースケールパルスとプリセットパルスとを統合する必要は必ずしもないことを示すために用いる。
【0013】
前記駆動手段はさらに、前記複数の画素の各々の電位差を、グレースケール電位差を印加する前のリセット期間中にリセット値及びリセット持続時間を有するリセット電位差にすべく制御するように構成されていることが好ましい。前記粒子の位置は、最後に印加された電位差だけでなく、電位差の履歴にも依存する。リセット電位差の印加の結果として、画素の外見の履歴への依存性が低減される、というのは、グレースケール電位差が印加される前に、前記粒子はほぼ一方の極限位置を占めるからである。従って、前記画素は毎回、一方の極限状態にリセットされる。これに続いて、プリセット−グレースケールの組合せの電位差を印加した結果として、前記粒子が、画像情報に対応するグレースケールを表示するための位置を占める。
【0014】
本発明は、リセットパルスを使用するデバイス内で使用するのに特に適している。リセットパルスは好影響を有するが、更新時間を長くする。従ってあらゆる遅延がより目につくようになる。従って本発明の平滑効果は、リセットパルスを用いる際に比較的大きな効果を有する。
【0015】
本発明によれば、
帯電粒子を具えた電気泳動媒体と;
複数の画素と
を具えた電気泳動表示デバイスを駆動する方法が提供され、この方法では、画素をグレースケールの光学的状態に設定するための駆動波形全体の少なくとも部分集合について、グレースケール電位差を電位差列の形で印加し、この列の電位値は符号が交番し、一方の符号の電位差のエネルギー(V×t)は他方の符号の電位差のエネルギーよりも大きい。
【0016】
また、本発明によれば、電気泳動表示パネルを駆動する駆動手段が提供され、この表示パネルは、
帯電粒子を具えた電気泳動媒体と;
複数の画素と;
前記画素の各々に関連し、電位差を受ける電極とを具えて、
前記駆動手段は、前記画素の各々の電位差を、前記粒子が画像情報に対応する位置を占めることを可能にするグレースケール電位差にすべく制御するように構成され、
前記駆動手段はさらに、前記画素毎に、駆動波形全体の少なくとも部分集合について、前記グレースケール電位差を符号が交番する電位差列にすべく制御するように構成され、ここで一方の符号の電位差のエネルギー(V×t)は他方の符号の電位差のエネルギーよりも大きい。
【0017】
以上では、複数の画素を具えた表示パネルについて本発明を説明してきたが、本発明は、単一の画素を具えた表示パネル、例えばサイン表示用途にも利用可能であることは当業者にとって明らかである。
【0018】
本発明の表示パネルのこれら及び他の態様は、以下で図面を参照しながら説明する。すべての図において、対応する部分は通常、同一参照符号で参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
【特許文献2】米国特許 US 5,961,804
【特許文献3】米国特許 US 6,120,839
【特許文献4】米国特許 US 6,130,774
【0020】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1及び2に、第1基板8、反対側の第2基板9、及び複数の画素2を有する表示パネル1の実施例を示す。画素2は、ほぼ直線に沿って二次元構造に配置されていることが好ましい。画素2のこれに代わる他の配列、例えばハニカム配置も可能である。基板8と9の間には、帯電粒子6を有する電気泳動媒体5が存在する。第1及び第2電極3、4は各画素に関連する。電極3、4は電位差を受けることができる。図2では、第1基板8は画素2毎に第1電極3を有し、第2基板9は画素2毎に第2電極4を有する。帯電粒子6は、電極3、4付近の極限位置、及び電極3と4の間の中間位置を占めることができる。各画素2は、帯電粒子6の電極3、4間の位置によって決まる外見を有して画像を表示する。電気泳動媒体5自体は、例えば米国特許US 5,961,804、米国特許US 6,120,839及び米国特許US 6,130,774より知られ、E−インク社より入手可能である。例として、電気泳動媒体5は、負に帯電した黒色粒子6を白色流体中に具えている。帯電粒子6が第1極限位置、即ち第1電極3付近にある際には、前記電位差が例えば15Vであることの結果として、画素2の外見は例えばホワイト(白色)になる。ここで、画素2を第2基板9の側から観察することを考える。帯電粒子6が第2極限位置、即ち第2電極4付近にある委細には、逆極性の電位差、即ち−15Vの結果として、画素2の外見はブラック(黒色)になる。帯電粒子6が前記中間位置のうちの1つ、即ち電極3、4間にある際には、画素2は中間的な外見のうちの1つ、例えばライトグレー(明灰色)、ミドルグレー(中間的な灰色)、及びダークグレー(暗灰色)を有し、これらはホワイトとブラックの間のグレーレベルである。駆動手段100は、各画素2の電位差を、粒子6がほぼ一方の極限位置を占めることを可能にするリセット値及びリセット持続時間を有するリセット電位差にし、これに続いて、粒子6が画像情報に対応する位置を占めることを可能にするグレースケール電位差にすべく制御するように構成されている。
【0021】
図3に、電気泳動表示デバイス31の別な例の一部分、例えば2、3個の表示素子のサイズの断面図を図式的に示し、表示デバイス31は、ベース基板32、例えばポリエチレンの2枚の透明基板33と34の間に存在する電子インクを有する電気泳動フィルムを具え、一方の基板33には透明の画像(画素)電極35が設けられ、他方の基板34には透明の対向電極36が設けられている。この電子インクは、約10〜50ミクロンの多数のマイクロカプセルを具えている。各マイクロカプセル37は、流体F中に懸濁した、正に帯電した白色粒子38及び負に帯電した黒色粒子39を具えている。画素電極35に正電界が印加されると、白色粒子38は、マイクロカプセル37の対向電極36向きの側に移動し、表示素子は観測者にとって可視になる。同時に、黒色粒子39はマイクロカプセル37の反対側の、観測者から見て隠れた所に移動する。画素電極35に負電界を印加することによって、黒色粒子39はマイクロカプセル37の対向電極36向きの側に移動して、表示素子は観測者にとって暗くなる(図示せず)。電界が取り除かれると、粒子38、39は獲得した状態に留まり、ディスプレイは双安定の特性を示し、電力をほとんど消費しない。
【0022】
図4に、ベース基板上に積層された電気泳動フィルムを具え、アクティブ・スイッチング(能動切り換え)素子、行ドライバ(駆動回路)43、及び列ドライバ40が設けられた画像表示デバイス31の等化回路を図式的に示す。対抗電極36は、閉じ込められた電子インクを具えたフィルム上に設けられていることが好ましいが、面内電界を用いた動作の場合には、代わりにベース基板上に設けることができる。表示デバイス31はアクティブ・スイッチング素子、この例では薄膜フィルムトランジスタ(TFT)49によって駆動される。表示デバイス31は、行または選択電極47と列またはデータ電極41とが交差する領域に表示素子のマトリクスを具えている。行ドライバ43は行電極47を順次選択し、その間に列ドライバ40はデータ信号を列電極41に供給する。プロセッサ45は、まず入力データ46を処理してデータ信号にすることが好ましい。列ドライバ40と行ドライバ43との相互間の同期は駆動線42によって行われる。行ドライバ43からの選択信号は、薄膜フィルムトランジスタ49を介して画素電極を選択し、薄膜フィルムトランジスタ49のゲート電極50は行電極47に電気的に接続され、そのソース電極51は列電極41に電気的に接続されている。列電極41に存在するデータ信号は、TFT49によって、そのドレイン電極に結合された表示素子の画素電極52に転送される。本実施例では、図3の表示デバイスは、各表示素子の位置に追加的なキャパシタ53も具えている。本実施例では、追加的なキャパシタ53は1つ以上の蓄積キャパシタ線54に接続されている。TFTの代わりに、ダイオード、MIM(Metal-Insulator-Metal:金属−絶縁体−金属で構成されるキャパシタ)、等の他のスイッチング素子を適用することもできる。
【0023】
例として、リセット電位差を印加する前には、部分集合の画素の外見はライトグレーであり、これをG2で表わす。さらに、同じ画素の、画像情報に対応する画像としての外見はダークグレーであり、これをG1で表わす。この例について、図5Aに、画素の電位差を時間の関数として示す。前記リセット電位差は、例えば15Vの値を有し、時刻t1から時刻t2まで存在し、t2は最大リセット持続時間、即ちリセット期間Presetである。このリセット持続時間及び最大リセット持続時間は例えば、それぞれ50ms及び300msである。その結果、リセット電位を印加した後に、画素はほぼ白色の外見を有し、これをWで表わす。前記グレースケール電位差は、時刻t3から時刻t4まで存在し、例えば−15Vの値及び例えば150msの持続時間を有する。その結果、画素は、グレースケール電位差の印加後に、ダークグレー(G1)の外見を有して画像を表示する。時刻t2から時刻t3までの間隔はなくすことができる。
【0024】
前記部分集合の画素毎の前記最大リセット持続時間、即ち完全なリセット期間は、それぞれの画素の粒子6の位置を一方の極限位置から他方の極限位置まで変化させるための継続時間にほぼ等しいかそれ以上である。この例の画素については、この継続時間は例えば300msである。
【0025】
別な例として、図5Bに、画素の電位差を時間の関数として示す。リセット電位差を印加する前の画素の外見はダークグレー(G1)である。さらに、この画素の、画像情報に対応する画像としての外見はライトグレー(G2)である。前記リセット電位差は、例えば15Vの値を有し、時刻t1から時刻t2まで存在する。前記リセット持続時間は例えば150msである。その結果、画素は、リセット電位差を印加した後に、ほぼ白色(W)の外見を有する。前記グレースケール電位差は、時刻t3から時刻t4まで存在し、例えば−15Vの値及び例えば50msの持続時間を有する。その結果、前記グレースケール電位差を印加した後に、画素はライトグレー(G2)の外見を有して画像を表示する。
【0026】
他の変形の実施例では、駆動手段100はさらに、各画素の前記リセット電位差を、粒子6が、画像情報に対応する粒子6の位置に最寄りの極限位置を占めることができるように制御すべく構成されている。例として、前記リセット電位差を印加する前には画素がライトグレー(G2)である。さらに、この画素の画像情報に対応する画像としての外見はダークグレー(G1)である。この例について、図6Aに、画素の電位差を時間の関数として示す。前記リセット電位差は、例えば−15Vの値を有し、時刻t1から時刻t2まで存在する。前記リセット持続時間は例えば150msである。その結果、粒子6は第2の極限位置を占め、画素はほぼ黒色の外見を有し、これをBで表わし、この極限位置は、画像情報に対応する粒子6の位置、即ち画素2がダークグレー(G1)の外見を有する位置に最寄りである。前記グレースケール電位差は、時刻t3から時刻t4まで存在し、例えば15Vの値及び例えば50msの持続時間を有する。その結果、画素2はダークグレー(G1)の外見を有して画像を表示する。他の例として、他の画素の外見は、前記リセット電位差を印加する前にはライトグレー(G2)である。さらに、この画素の画像情報に対応する外見はほぼ白色である。この例について、図6Bに、画素の電位差を時間の関数として示す。前記リセット電位差は例えば15Vの値を有し、時刻t1から時刻t2まで存在する。前記リセット持続時間は例えば50msである。その結果、粒子6は前記第1極限位置を占め、画素はほぼ白色(W)の外見を有し、この極限位置は、画像情報に対応する粒子6の位置、即ち画素2がほぼ白色の外見を有する位置に最寄りである。前記グレースケール電位差は、時刻t3から時刻t4まで存在し、値0を有する、というのは、画素の外見は既にほぼ白色であり、画像を表示しているからである。
【0027】
図7では、画素がほぼ直線70に沿って配列されている。粒子6が前記極限位置の一方、例えば前記第1極限位置を占める場合には、これらの画素はほぼ第1の外見、例えば白色を有する。粒子6が前記極限位置の他方、例えば前記第2極限位置を占める場合には、これらの画素はほぼ第2の外見、例えば黒色を有する。駆動手段100はさらに、各直線70上に順に続く画素2の前記リセット電位差を、粒子6が実質的に互いに異なる極限位置を占めることができるように制御すべく構成されている。図7に、第1及び第2の外見の平均を表わす画像を、前記リセット電位差の結果として示す。この画像はほぼミドルグレーを表わす。
【0028】
図8では、画素2が、二次元構造中の直線行71、及びこの行にほぼ直交する直線列72にほぼ沿って配列され、各行71は第1の所定数、例えば図8では4個の画素を有し、各列72は第2の所定数、例えば図8では3個の画素を有する。粒子6が一方の極限位置、例えば前記第1極限位置を占める場合には、これらの画素はほぼ等しい前記第1の外見、例えば白色を有する。粒子6が他方の極限位置、例えば前記第2極限位置を占める場合には、これらの画素はほぼ等しい前記第2の外見、例えば黒色を有する。駆動手段100はさらに、各行71上に順に続く画素2の前記リセット電位差を、粒子6が実質的に互いに異なる極限位置を占めることができるように制御し、前記制御手段はさらに、各列72上に順に続く画素2の前記リセット電位差を、粒子6が実質的に互いに異なる極限位置を占めることができるように制御すべく構成されている。図8に、第1及び第2の外見の平均を表わす画像を、前記リセット電位差の結果として示す。この画像はほぼミドルグレーを表わし、前の実施例(図7)に比べればいく分平滑化されている。
【0029】
以上で説明したように、電気泳動ディスプレイにおけるグレースケールの精度は画像履歴、休止時間、温度、湿度、電気泳動箔(フォイル)の横方向の不均一性、等に強く影響される。リセットパルスを用いれば正確なグレーレベルを達成することができる、というのは、基準のブラック(B:黒色)状態からでも基準のホワイト(W:白色)状態からでも(2つの極限状態)常にグレーレベルが達成されるからである。
【0030】
このディスプレイの欠点は、不正確なグレースケールの再生に至らせるアンダードライブ効果を示すことにある。このアンダードライブ効果は、例えば、表示デバイスの初期状態がブラックであり、ディスプレイがホワイトとブラックとの間で周期的に切り換えられる際に発生する。例えば、数秒の休止時間後に、表示デバイスが200msの期間中負電界を印加されることによってホワイトに切り換えられる。次の期間中には、200msの間電界が印加されず、ディスプレイはブラックに切り換えられる。このパルス列の最初のパルスの応答として、ディスプレイの輝度(ブライトネス)は所望の最大輝度を下回り、このことは数パルス後に再現され得る。このアンダードライブ効果は、特に、このアンダードライブ効果がその後の画像遷移中に積分されると、所望のグレーレベルからの大幅な乖離または誤差を生じさせる。
【0031】
この効果を低減する1つの方法は、各画素の電位差を、前記リセット電位差及び/または前記グレースケール電位差になる前にプリセット電位差列にすべく制御するように、前記制御手段を構成することである。単純な方法では、前記プリセット電位差列がプリセット値及びこれらに関連するプリセット持続時間を有し、この列中のこれらのプリセット値は符号が交番し、各プリセット電位差は、一方の極限位置に存在する粒子6をその位置から解放するのに十分であるが、これらの粒子6が他方の極限位置に到達可能にするには不十分なエネルギーを表わす。例として、前記プリセット電位差列を印加する前には、画素の外見がライトグレーである。さらに、この画素の画像情報に対応する画像としての外見はダークグレーである。この例について、図9に、画素の電位差を時間の関数として示す。この例では、前記プリセット電位差列が4つのプリセット値を有し、順に15V、−15V、15V、及び−15Vであり、時刻t0から時刻t0までの間に印加される。各プリセット値は例えば20msの間印加される。t0とt1との間の時間間隔は比較的小さいことが好ましい。これに続く前記リセット電位差は、例えば−15Vの値を有し、時刻t1から時刻t2まで存在する。このリセット持続時間は例えば150msである。その結果、粒子6は前記第2極限位置を占め、画素はほぼ黒色の外見を有する。前記グレースケール電位差は、時刻t3から時刻t4まで存在し、例えば15Vの値及び例えば50msの持続時間を有する。その結果、画素2はダークグレーの外見を有して画像を表示する。プリセットパルスの印加の好影響の基になるメカニズムの特定の説明には縛られず、プリセットパルスの印加は電気泳動粒子のモーメントを増加させ、これにより切り換え時間、即ち転換即ち外見の変化を達成するのに必要な時間を短縮する。表示デバイスが所定状態、例えばブラック状態に切り換えられた後に、電気泳動粒子を包囲する逆イオンによって電気泳動粒子を「凍結」させることも可能である。これに続く切り換えがホワイト状態への切り換えである際には、これらの逆イオンが適時に解放されなければならず、このことは追加的な時間を必要とする。プリセットパルスの印加は、これらの逆イオンの解放を加速し、これにより電気泳動粒子を「解凍」し、従って切り換え時間を短縮する。
【0032】
プリセットパルスの印加が好影響を有することを発明者は見出しているが、プリセットパルスが前記リセットパルスと前記グレースケールパルスとの間に印加される際には悪影響も存在する(図10の上部に「シェーク(動揺、振動)2」として示す)。この(駆動前の)第2のシェーキングパルスは、明らかな光学的効果は示さないが、知覚される画像更新に悪影響を与える、というのは、リセットと駆動との間の遅延として見えるからである。このことは更新時間全体を増加させるだけでなく、変化する画像の急な停止を導入することによって画像更新の自然な流れを悪化させる。シェーキングが長くなる(画像の保持はさらに低減される)と共に、これらの問題は一層深刻になる。
【0033】
本発明は、この影響なしに、あるいは少なくともこの影響を低減して画像再生を改善することを目的とする。
【0034】
この目的のために、本発明によるデバイスは、前記駆動手段がさらに、画素毎に、前記グレースケール電位差を電位差の列にし、この列中の電位値は符号が交番し、一方の符号の電位差のエネルギー(V×t)は、他方の符号の電位差のエネルギーよりも実質的に大きいように制御することができることを特徴とする。
【0035】
本発明による方法は、画素毎に、前記グレースケール電位差を電位差の列として印加し、この列中の電位値は符号が交番し、一方の符号の電位差のエネルギー(V×t)は、他方の符号の電位差のエネルギーよりも実質的に大きいことを特徴とする。
【0036】
本発明によるデバイス及び方法では、プリセット信号(ほぼ0の平均電位を有する、即ち0Vを中心にほぼ対称で粒子を「シェークアップ」するための比較的小さいエネルギーの交番信号)及び前記グレースケール電位差パルス(粒子を特定位置(グレースケール)にもっていくための実質的に正または負の符号のパルス)とを織り交ぜ、即ち交番パルス列中に組み込み、ここに非対称性が存在し、即ち、一方の符号のパルスのエネルギーは、逆符号のパルスのエネルギーよりも実質的に大きい(ここでエネルギーは、電位差と時間との積として定義される)。前記パルス列の交番特性は、画像保持を低減する「シェーキング効果」を提供し、前記非対称性は、前記粒子が所望の位置に移動すること、即ちグレースケールを達成することを可能にし、前記信号の組み込みは、画像の転換が即座に、あるいはリセットのすぐ後に始まることを可能にし、上述した転換の長引き、及び突発的な動きの画像遷移という負の光学的効果を低減する。
【0037】
本発明を、図10及び11を参照しながらさらに説明する。
本発明の開示では、一連の駆動方法、及びこれらの駆動方法を組み込んだデバイスが提供され、これにより、画像更新におけるリセットと駆動との間の遅延(=グレースケールの導入)が解消されるか、あるいは少なくとも大幅に低減され、さらに、シェーキングパルス(プリセットパルス)を使用して画像保持の問題を軽減することが可能になる。このことは、(分散した)駆動パルスを前記シェーキングパルス中に統合することによって達成され、これにより、非対称のシェーキングパルスが結果的に形成される。このようにして、リセット後にグレースケールが直接、画像中に導入される。
【実施例1】
【0038】
いくつかの例を、図10及び11を参照しながら説明する。
実施例1:シェーキングパルスと周期的に分散した駆動パルスとの統合。
図10の上部に、プリセットパルス列が単一のグレースケールパルスに先行する方式を示す。こうした方式は、本発明の範囲外になる、というのは、これらのプリセットパルス及び単一のグレースケールパルスを別個に連続して、即ち前後して印加するからである。実施例1(図10の下部)では、固定の振幅及び時間を有する規則的な間隔の駆動パルス列を前記シェーキングパルス中に含める。図10(の下半分)には、ホワイトからダークグレーへの遷移についての例を示す。以上で説明したように、図10の上半分は、比較のために、プリセット(シェーキング)パルスが単一の駆動パルスから先行分離された方式を示し、従って、本発明の範囲外の駆動方式を示す。ホワイトからダークグレーへの遷移のために、正のリセットパルスを用いてディスプレイをブラック状態に設定し、この状態から、前記シェーキングパルス上に重畳された短周期の負のパルスを用いてダークグレーレベルを直ちに加える。結果として、駆動/シェーキングの組合せパルスが非対称の交番パルス列[(V, t)drive/shake]の形で現われる。
【0039】
理想的なインク材料について、このパルス列の後に実現されるグレースケールは従来技術のものと同等である、というのは、駆動パルス全体についての積(電圧×時間)は両方の場合について等しいからである。この理由で、画像更新時間全体は同じであるが、図の「シェーク2」の期間中の遅延が解消されたので、画像更新はより自然に見える。(休止時間の問題等を伴う)非理想的なインクについては、要求されるグレースケールを実現するために駆動時間を微妙に調整する(即ち、追加的な数の負電圧パルスを調整する)ことが必要になり得る。
【実施例2】
【0040】
実施例2:シェーキングパルスと周期的に分散した駆動パルスとの統合パルスを用いたより低速の更新。
特定状況では、駆動周期を意図的に増加させることが好ましいことがある(例えば、このことがより自然な画像更新の状況を生じさせる場合)。しかし、このことは、リセットパルスと駆動パルスとの間に長い遅延が存在しない場合のみに許容される。実施例2では、規則的な間隔の駆動パルス列及び固定の振幅及び時間の短い遅延パルス(V=0)を前記シェーキングパルス中に含めることによって、意図的に遅くした更新を実現する。図11の上段に、ホワイトからダークグレーへの遷移についての例を示す。ホワイトからダークグレーへの遷移のために、正のリセットパルスを用いてディスプレイをブラック状態に設定し、この状態から、ここでも、前記シェーキングパルス上に重畳された短周期の負のパルスを用いてダークグレーレベルを直ちに加える。この画像更新は、V=0なる2フレームを各非対称のシェーキングパルス間に追加することによって意図的に遅延される。ここでも、(休止時間の問題等を伴う)非理想的なインクについては、要求されるグレースケールを実現するために駆動時間を微妙に調整する(即ち、追加的な数の負電圧パルスを調整する)ことが必要になり得る。連続する2つのシェーキングパルス間の時間間隔(期間)中は、電圧レベルがほぼ0である。しかし、この非0の電圧レベルがディスプレイ材料のしきい値電圧を下回る限り、即ち、この電圧レベルの影響下で粒子が移動する限りは、この期間中にこうした非0の電圧レベルを印加することを排除するものではない。このことは、ソースドライバの出力が理想的な0でない際、あるいはこの期間を、DCブランキング(直流点滅)のような他の目的に利用したい際に生じ得る。
【0041】
シェーキングの合計量が増加すると共に画像保持が低減することが判明している。この場合には、意図的に遅くした更新を実現するならば、好適な実現方法は、前記短い遅延パルスを別なシェーキングパルスに置き換えて、図11(中段の曲線、実施例2aとする)のシェーク/駆動の組合せの波形を生じさせる。このことは、さらに低度の画像保持を生じさせ、かつ実施例2と同様に自然な画像更新効果を生じさせる。なお実施例2は図11の上段に示し、実施例2aは図11の中段に示す。
【実施例3】
【0042】
実施例3:シェーキングパルスと不規則な持続時間で分散した駆動パルスとの統合パルス。
実施例3では、固定振幅で不規則な持続時間の駆動パルス列を前記シェーキングパルス中に含めることによって本発明を実現する。図11(の下段)に、ホワイトからダークグレーへの遷移についての例を示す。ここでも、ホワイトからダークグレーへの遷移のために、正のリセットパルスを用いてディスプレイをブラック状態に設定する。実際のインク(休止時間の問題等を伴う)については、画素に駆動パルスを印加する前に、まず画素をシェークすることによって、グレースケールの精度及び画像保持が改善されることが判明している。このことを許容範囲外の遅延なしで達成するために、前記シェーキングパルス上に重畳された不規則な持続時間を有する負パルス列を用いることによるリセットのほぼ直後にダークグレーレベルを導入することを発明者は提案する。結果として、駆動/シェーキングの組合せパルスが非対称の交番パルス列[(V, t)drive/shake]の形で現われる。このようにして、パルス形状が波形の終端に向かって「シェーキング」型から「駆動」型へ次第に変化する。
【0043】
実施例2a及び実施例3の各々が、駆動−シェーキングを統合した電位差パルス列を具え、この列中の電位値は符号が交番し、一方の符号の電位差のエネルギー(V×t)は他方の符号の電位差のエネルギーとほぼ同じであり、実施例2aは、中間的な副列(サブシーケンス)を具え、即ち、この副列は上記駆動−シェーキングを統合したパルスの持続時間中のどこかで発生し、実施例3ではこの副列が初期の副列である。
【0044】
強度(即ち電圧×印加時間)で表現すれば、図10の上部は次のように記述することができる:
1,−1,1,−1,1,−1,−3、即ち、対称のパルス列(1,−1,1,−1,1,−1)に単一符号、即ち非交番のパルス(−3)が続く。こうした列、即ち対称のパルス列、及びそれに後続する単一符号のパルスまたはパルス列から成る列は、本発明の範囲に入らない。
【0045】
図10の下部の列は、1,−2,1,−2,1,−2と記述することができ、即ち非対称列であり、負の値の合計は正の値の合計より例えば3フレーム時間分だけ重みが大きい。
【0046】
図11の列は次のように記述することができる:
上段:1,−2,0,1,−2,0,1,−2、即ち、非対称列である。
中段:1,−2,1,−1,1,−2,1,−1,1,−2、即ち、中間的な対称副列を有する非対称列である。
下段:1,−1,1,−2,1,−1、即ち、初期対称副列を有する非対称列である。
【0047】
なお、図11の上段に示すように、シェーキング/グレースケールの組合せパルスは、特に好適な実施例では、印加電圧がほぼ0であるかしきい値電圧未満の電圧値にすることのできる期間を具え、このしきい値電圧未満では粒子がほぼそのままの位置に留まる。
【0048】
なお、本発明の概念の範囲内では、リセット電位差の印加はオーバーセット(過大設定)の印加を含むことができる。「オーバーセット」とはリセット電位の印加方法を意味し、この方法では、少なくとも一部のグレースケール状態(中間状態)の遷移について、関係する画素を所望の光学的極限状態に駆動するのに必要な時間×電圧差より大きい時間×電圧差を有するリセットパルスを意図的に印加する。こうしたオーバーセットは、光学的極限状態に達することを保証するために有用なことがあり、あるいは、例えば、同じ長さのリセットパルスを用いて異なるグレースケールを光学的極限状態にリセットすることができるように印加方法を簡略化するために用いることができる。
【0049】
なお、前記シェーキングパルスの振幅は、同じ振幅を有する必要はない。例えば、振幅またはエネルギー(電圧×時間)が時間と共に低減する非対称のシェーキングパルスを使用しても、正確かつ円滑なグレースケール画像の更新に至る。また電極構造は、上部及び下部電極を有する構造に限定されず、ハニカム電極構造を用いることもできる。
【0050】
簡単に言えば、本発明は、電気泳動表示パネル、及び電気泳動表示パネルを駆動する方法として説明することができ、このパネルまたは方法では、画素を先行する光学的状態から画像情報に応じたグレースケールにもっていくために、プリセットパルスと駆動(グレースケール)パルスとを統合して、(V=0について)非対称の統合パルス列にしている。これにより、よりゆるやかなグレースケールの導入が達成可能になり、1つの画像から他の画像への遷移の突発性を低減する。
【0051】
本発明は、以上で説明及び図示したことに限定されないことは、当業者にとって明らかである。
【0052】
例えば、以上で挙げたすべての例では、先行する光学的状態が光学的極限状態であり、前記プリセット−グレースケールの組合せ電位差を印加する前にリセットパルスを印加することにより、画素は光学的極限状態(黒色または白色)にもっていかれる。
【0053】
本発明はこうしたデバイスに特に適しているが、リセットパルスを利用するデバイス、方法、及び駆動方式に限定されない。本発明は、時間間隔によって2つ以上のサブ(副)パルスに分けられたグレースケールパルスの印加に関するものである。
【0054】
リセットパルスを用いないデバイス、方法、及び駆動方式の例として、図12に、グレースケールから他のグレースケールへの遷移のための駆動方式を示す。初期(始動時)の光学的位置(即ちグレースケール、例えばホワイト、ブラック、ライトグレー、ダークグレー)は図の左側に示す。駆動パルスは図式的に示し、図の右側には結果的なグレースケールを示す。
【0055】
図12の例では、プリセットパルスが先行する単純なグレースケールパルスを印加し、従って、この図は本発明の範囲外の駆動方式を示す。プリセットパルスとグレースケールパルスとは非対称のパルス列に組み合わされず、プリセットパルスは短いパルスの列であり、単一の連続したグレースケールパルスがこれに続く。
【0056】
図13に、本発明の範囲内の駆動方式を示す。図12のように、図の左側には初期の光学的状態を示し、図の右側には最終的な光学的状態を示し、そして駆動パルスは左側と右側の中間に示す。これらの例では、グレースケールパルス(V, t)driveが非対称のパルス列中に印加され、一方の符号(この場合には正の符号)のパルスのエネルギーは他方の符号のパルスのエネルギーよりも大きい。図の最下段には、以上で既に説明した状況を示し、この状況では、1つの光学的状態(ブラック)からこれに近い光学的状態(ダークグレー)への遷移のために、駆動パルスは単一の短いパルスのままである。グレースケールの小さい変化、この例ではブラックからダークグレーへの変化しか行われない際には、本発明の好影響は比較的小さく、例えばホワイトからダークグレーのように外見の大きな相違がもたらされる際には、図13の最上段に示すように、本発明の好影響は比較的大きい。
【0057】
図12及び13に示す方式では、先行する光学的状態、即ちグレースケール電位差の印加の直前の、画素の光学的状態は、あらゆる光学的状態(ブラック、ホワイト、ダークグレーまたはライトグレー)とすることができ、必ずしも図10及び11のような光学的極限状態ではない。
【0058】
本発明は、あらゆる新規の特徴、及びあらゆる特徴の組合せ中に存在する。「具えている」という動詞及びその活用形の使用は、それ以外の要素の存在を排除するものではない。特に「複数の」等の記載がなくても、複数の要素の存在を排除するものではない。
【0059】
本発明は、コンピュータ上での実行時に本発明の方法を実行するためのプログラムコード手段を具えたあらゆるコンピュータプログラム、並びにコンピュータ読取可能媒体上に記憶され、コンピュータ上での実行時に本発明の方法を実行するためのプログラムコード手段を具えたあらゆるコンピュータプログラム製品、並びに本発明による表示パネルにおいて使用され、本発明に特有の動作を実行するためのプログラムコード手段を具えたあらゆるプログラム製品でも具現される。
【0060】
本発明は特定実施例について説明してきたが、これらは本発明を例示するものであって限定を意図するものではない。本発明は、ハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェア、あるいはこれらの組合せで実現することができる。本発明の特許請求の範囲には他の実施例も入る。
【0061】
本願の特許請求の範囲を逸脱することなしに、本発明の範囲内で多くの変形が可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】表示パネルの実施例の正面図である。
【図2】図1において、線分II−IIに沿って切断した断面図である。
【図3】電気泳動表示装置の別な例の一部分の断面図である。
【図4】図3の画像表示デバイスの等価回路を示す図である。
【図5】図5A及び5Bは、画素の電位差を時間の関数として示す図である。
【図6】図6A及び6Bは、画素の電位差を時間の関数として示す図である。
【図7】リセット電位差の結果としての、第1の外見と第2の外見の平均を表わす画像である。
【図8】他の方式における、リセット電位差の結果としての、第1の外見と第2の外見の平均を表わす画像である。
【図9】画素の電位差を時間の関数として示す図である。
【図10】本発明による駆動方式を示す図である。
【図11】本発明による別な駆動方式を示す図である。
【図12】リセットパルスを使用しない、本発明の範囲外の駆動方式を示す図である。
【図13】リセットパルスを使用しない、本発明による駆動方式を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電粒子を具えた電気泳動媒体と;
複数の画素と;
前記画素の各々に関連し、電位差を受ける電極と;
駆動手段とを具え、
前記駆動手段が、前記画素の各々の電位差を、前記粒子が画像情報に対応する位置を占めることを可能にするグレースケール電位差にすべく制御するように構成された電気泳動表示パネルにおいて、
前記駆動手段がさらに、前記画素毎に、駆動波形全体の少なくとも部分集合について、前記グレースケール電位差を、列中の電位値の符号が交番する電位差列にすべく制御するように構成され、前記交番の一方の符号の電位差のエネルギーは、他方の符号の電位差のエネルギーよりも実質的に大きいことを特徴とする電気泳動表示パネル。
【請求項2】
前記駆動手段が、前記画素の各々の電位差を、前記グレースケール電位差にする前に、リセット値及びリセット持続時間を有し、前記粒子がほぼ1つの極限位置を占めることを可能にするリセット電位差にすべく制御するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示パネル。
【請求項3】
前記グレースケール電位差が、列中の電位値の符号が交番する対称な電位差の副列を具え、前記交番の一方の符号の電位差のエネルギーは、他方の符号の電位差のエネルギーとほぼ同じであることを特徴とする請求項1または2に記載の電気泳動表示パネル。
【請求項4】
前記対称な副列が中間的な副列であることを特徴とする請求項3に記載の電気泳動表示パネル。
【請求項5】
前記対称な副列が初期の副列であることを特徴とする請求項3に記載の電気泳動表示パネル。
【請求項6】
前記電位差列が、当該期間中に印加される電圧がしきい値電圧未満である期間を少なくとも1つ具え、前記しきい値電圧未満では、前記粒子がほぼそのままの位置に留まることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示パネル。
【請求項7】
帯電粒子を具えた電気泳動媒体と;
複数の画素と
を具えた電気泳動表示デバイスを駆動する方法において、
前記画素をグレースケールの光学的状態に設定するための駆動波形全体の少なくとも部分集合について、列中の電位値の符号が交番する電位差列中にグレースケール電位差を印加し、前記交番の一方の符号の電位差のエネルギーは、他方の符号の電位差のエネルギーよりも実質的に大きいことを特徴とする電気泳動表示デバイスの駆動方法。
【請求項8】
前記グレースケール電位差を印加する前に、リセット値及びリセット持続時間を有し、前記粒子がほぼ1つの極限位置を占めることを可能にするリセット電位差を印加することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記グレースケール電位差が、列中の電位値の符号が交番する対称な電位差の副列を具え、前記交番の一方の符号の電位差のエネルギーは、他方の符号の電位差のエネルギーとほぼ同じであることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記対称な副列が中間的な副列であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記対称な副列が初期の副列であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記電位差列が、当該期間中に印加される電圧がしきい値電圧未満である期間を少なくとも1つ具え、前記しきい値電圧未満では、前記粒子がほぼそのままの位置に留まることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータ上での実行時に請求項7〜12のいずれかに記載の方法を実行するためのプログラムコード手段を具えたコンピュータプログラム。
【請求項14】
コンピュータ読取可能媒体上に記憶され、コンピュータ上での実行時に請求項7〜12のいずれかに記載の方法を実行するためのプログラムコード手段を具えたコンピュータプログラム製品。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれかに記載の表示パネルにおいて使用され、請求項1〜7に記載の表示パネルに特有の動作を実行するためのプログラムコード手段を具えたコンピュータプログラム製品。
【請求項16】
帯電粒子を具えた電気泳動媒体と;
複数の画素と;
前記画素の各々に関連し、電位差を受ける電極と
を具えた電気泳動表示パネルを駆動する駆動手段において、
前記駆動手段が、前記画素の各々の電位差を、前記粒子が画像情報に対応する位置を占めることを可能にするグレースケール電位差にすべく制御するように構成され、
前記駆動手段がさらに、前記画素毎に、駆動波形全体の少なくとも部分集合について、前記グレースケール電位差を、列中の電位値の符号が交番する電位差列にすべく制御するように構成され、前記交番の一方の符号の電位差のエネルギーは、他方の符号の電位差のエネルギーよりも実質的に大きいことを特徴とする電気泳動表示パネルの駆動手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−503601(P2007−503601A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523727(P2006−523727)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051407
【国際公開番号】WO2005/020202
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】