説明

電気泳動表示装置の製造方法および電気泳動表示装置

【課題】電気泳動表示装置における表示体内部の水分量をより高い精度で調整可能とすること。
【解決手段】第1の基板の一方の面および第2の基板の一方の面の少なくとも一方に、電気泳動粒子および分散媒を含む分散液を収容する第1の収容部を有する第1の層を形成する第1の層形成工程と、第1の基板の一方の面および第2の基板の一方の面の少なくとも一方に、第1の収容部内の分散液よりも水分の多い液体を収容する複数の第2の収容部を有する第2の層を形成する第2の層形成工程と、第1の基板と第2の基板とを、第1の基板の一方の面と第2の基板の一方の面とが対向するように貼り合わせる封止工程と、複数の第2の収容部の少なくとも1つを破損させる破損工程と、を含むことを特徴とする電気泳動表示装置の製造方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置の製造方法および電気泳動表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示内容を不揮発的に保持する表示装置として、電気泳動表示装置が利用されている。
電気泳動表示装置は、表示体として電気泳動表示パネルを有しており、電気泳動表示パネルは、分散媒を含むマイクロカプセルと接着層となるバインダーとを基板間に封止した構造を有している。
【0003】
ここで、電気泳動表示装置の電気泳動表示パネルを製造する際の封止工程では、加熱・減圧環境下で加工が行われるため、封止後のパネル内部は水分が抜け、目的とする表示性能を実現するためには水分が不足した状態となる。
そこで、電気泳動表示パネル内に水分を戻すために、高温・多湿環境下で放置する処理を行っている。
なお、上述のような水分調整に関する技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−003586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高温・多湿環境下に放置する処理等を行って、電気泳動表示パネル内の水分調整を行ったとしても、必ずしも目的とする水分量とできない場合がある。そして、この場合、十分な表示性能を得られないこととなる。
即ち、電気泳動表示装置における表示体内部の水分量を調整する従来の技術においては、高い精度で水分量の調整を行うことが困難であった。
本発明の課題は、電気泳動表示装置における表示体内部の水分量をより高い精度で調整可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明の一態様に係る電気泳動表示装置の製造方法は、
第1の基板の一方の面および第2の基板の一方の面の少なくとも一方に、電気泳動粒子および分散媒を含む分散液を収容する第1の収容部を有する第1の層を形成する第1の層形成工程と、前記第1の基板の前記一方の面および前記第2の基板の前記一方の面の少なくとも一方に、前記第1の収容部内の分散液よりも水分の多い液体を収容する複数の第2の収容部を有する第2の層を形成する第2の層形成工程と、前記第1の基板と前記第2の基板とを、前記第1の基板の前記一方の面と前記第2の基板の前記一方の面とが対向するように貼り合わせる封止工程と、前記複数の第2の収容部の少なくとも1つを破損させる破損工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
このような方法により、電気泳動表示装置に第2の収容部を有する第2の層が形成され、第2の収容部が破損されることにより、封止された領域の内部に水分が放出される。
そのため、電気泳動表示装置における表示体内の水分量を目的とする状態に調整することができる。
したがって、電気泳動表示装置における表示体内部の水分量をより高い精度で調整することが可能となる。
【0008】
また、本発明の他の態様に係る電気泳動表示装置の製造方法は、
前記第2の基板には、画素を構成する複数の画素電極が形成され、前記第1の基板には、前記複数の前記画素に共通して形成される共通電極が形成され、前記第1の層形成工程では、前記第1の層を、前記画素電極が形成された範囲に配置すると共に、前記第2の層形成工程では、前記第2の層を、前記画素電極が形成された範囲の外縁と間隔を空けて配置することを特徴とする。
このような方法により、第1の基板と第2の基板とが貼り合わされ、第1の層と第2の層とが広がりを呈した場合でも、第1の層と第2の層とが接触する事態を抑制できる。そのため、第2の収容部から放出された水分が画素電極に触れることを抑制でき、回路破壊を防止できる。
【0009】
また、本発明の他の態様に係る電気泳動表示装置の製造方法は、
前記第2の層形成工程では、前記第2の層を、複数箇所に配置することを特徴とする。
このような方法により、第2の収容部が封止領域内の複数箇所に配置されるため、封止領域内により均一に水分を放出できる。
また、本発明の他の態様に係る電気泳動表示装置の製造方法は、
前記第2の層形成工程では、着色した前記複数の第2の収容部を形成し、前記破損工程では、レーザー光によって前記複数の第2の収容部の少なくとも1つを破損させることを特徴とする。
このような方法により、第2の収容部をレーザー光で破損させる際、第2の収容部にエネルギーを集中させやすくなり、レーザー光の出力を低減できる。
【0010】
また、本発明の他の態様に係る電気泳動表示装置の製造方法は、
前記破損工程では、前記第1の層と前記第2の層とを介するリーク電流によって把握された水分量を基に、前記複数の第2の収容部のうち、破損させる第2の収容部の数を決定することを特徴とする。
このような方法により、電気泳動表示装置の表示体の組み立て後に、簡単に封止領域内部の水分量を把握することが可能となる。
【0011】
また、本発明の他の態様に係る電気泳動表示装置の製造方法は、
前記第1の収容部および前記複数の第2の収容部を、マイクロカプセルによって構成することを特徴とする。
このような方法により、マイクロカプセル型の電気泳動表示装置において、表示体内部の水分量をより高い精度で調整することが可能となる。
また、本発明の他の態様に係る電気泳動表示装置の製造方法は、
前記第1の収容部および前記複数の第2の収容部を、隔壁によって構成することを特徴とする。
このような方法により、マイクロカップ(登録商標)型や隔壁型等の電気泳動表示装置において、表示体内部の水分量をより高い精度で調整することが可能となる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る電気泳層表示装置は、
第1の基板と、前記第1の基板と対向して配置された第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置され、電気泳動粒子および分散媒を含む分散液を収容する第1の収容部を有する第1の層と、前記第1の基板と前記第2の基板との間であって、前記第1の収容部が配置された範囲外に配置され、前記第1の収容部内の分散液よりも水分の多い液体を収容する複数の第2の収容部を有する第2の層と、を備え、前記第2の層には、内部と外部とが連通している第3の収容部が含まれることを特徴とする。
このような構成により、電気泳動表示装置は第2の収容部を有する第2の層を有するため、第2の収容部が破損されると、第2の収容部は、第3の収容部へと変化し、封止された領域の内部に水分が放出される。
【0013】
そのため、電気泳動表示装置における表示体内の水分量を目的とする状態に調整することができる。
したがって、電気泳動表示装置における表示体内部の水分量をより高い精度で調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態の電気泳動表示装置1の概略構成を示す図である。
【図2】水分調整用マイクロカプセル含有層8の他の設定例を示す図である。
【図3】電気泳動表示装置1の製造方法を説明するための模式図である。
【図4】電気泳動表示装置1の製造方法を説明するための模式図である。
【図5】電気泳動表示シート2内部の水分量が種々変化した場合のリーク電流を示す図である。
【図6】相対湿度と比抵抗との関係を示す図である。
【図7】相対湿度と飽和電流量との関係を示す図である。
【図8】バックプレーン側に水分調整用マイクロカプセル分散液12を塗布して電気泳動表示装置1を製造する工程を示す図である。
【図9】バックプレーン側に水分調整用マイクロカプセル分散液12を塗布して電気泳動表示装置1を製造する工程を示す図である。
【図10】第2実施形態の電気泳動表示装置1の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る電気泳動表示装置およびその製造方法の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
(構成)
まず、本実施形態の電気泳動表示装置1の構成について説明する。
図1は、第1実施形態の電気泳動表示装置1の概略構成を示す図である。図1(a)は、電気泳動表示装置1を示す斜視図であり、図1(b)は、電気泳動表示装置1を図1(a)のA−A線に沿って表示面(透明基板5の基板面)に垂直な面で切断した拡大断面図である。なお、以下の説明では、説明の都合上、図中の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」として説明を行う場合がある。
【0016】
図1に示すように、電気泳動表示装置1は、表示体として、電気泳動表示シート(いわゆるフロントプレーン)2と、封止部3と、回路基板(いわゆるバックプレーン)4とを備えている。そして、電気泳動表示装置1は、電気泳動表示シート2と回路基板4とが、後述するマイクロカプセル含有層7および水分調整用マイクロカプセル含有層8とを挟んで貼り合わされ、これらの層7、8が封止部3によって封止された構成となっている。
【0017】
電気泳動表示シート2は、透明基板5、透明電極6、マイクロカプセル含有層7、および水分調整用マイクロカプセル含有層8を有している。電気泳動表示シート2においては、電気泳動表示装置1外部側(図1上側)から透明基板5、透明電極6が配置され、透明電極6よりも電気泳動表示装置1内部側(図1下側)にマイクロカプセル含有層7および水分調整用マイクロカプセル含有層8が配置されている。
【0018】
透明基板5は、電気泳動表示装置1の表示面を構成する透明な基板であり、透明基板5の電気泳動表示シート2内部側(図1下側)を電気泳動表示シート2外部側(図1上側)から視認可能な状態となっている。透明基板5は、PET(Polyethylene Terephthalate)等、レーザー光を透過可能な部材によって構成される。なお、透明基板5の電気泳動表示シート2内部側の面は、請求項1における第1の基板の一方の面に対応する。
【0019】
透明基板5の電気泳動表示装置1内部側の面(図1下側)には、透明電極6が配設されている。透明電極6は、後述するマイクロカプセル含有層7による情報(文字、図形等)の表示を妨げない透明な電極であり、透明電極6のマイクロカプセル含有層7側(図1の下側)を透明基板5側(図1上側)から視認可能な状態となっている。透明電極6は、ITO(Indium Tin Oxide)等、レーザー光を透過可能な部材によって構成される。また、透明電極6は、接地された共通電極であり、透明電極6に対向してマトリックス状に配設された複数の画素電極14(後述)との間に電界を発生可能である。
透明電極6の透明基板5と反対側の面(図1下側)には、マイクロカプセル含有層7、および水分調整用マイクロカプセル含有層8が配設されている。
【0020】
マイクロカプセル含有層7は、電気泳動粒子と分散媒とを含む溶液をポリマー膜(例えば、ゼラチンやメラミン系樹脂等)に包んだマイクロカプセル9と、マイクロカプセル9同士、マイクロカプセル9と透明電極6、およびマイクロカプセル9と画素電極14を接着させるバインダー10とを含む層となっている。
【0021】
そして、マイクロカプセル含有層7は、透明電極6と複数の画素電極14のいずれかとの間に電界が発生すると、発生した電界に従って、マイクロカプセル9内の電気泳動粒子が透明電極6側(図1上側)または画素電極14側(図1下側)に泳動可能となっている。そして、マイクロカプセル含有層7は、透明電極6側の面(図1上側)に透明電極6と複数の画素電極14のそれぞれとで複数の画素を形成する構成となっている。これにより、マイクロカプセル含有層7は、複数の画素のうち、電気泳動粒子が透明電極6側に泳動した画素に電気泳動粒子の色を表示し、電気泳動粒子が画素電極14側(図1下側)に泳動した画素に分散媒の色を表示する。
【0022】
水分調整用マイクロカプセル含有層8は、マイクロカプセル9内の溶液より水分の多い液体(ここでは純水とする)をポリマー膜に包んだ水分調整用マイクロカプセル11と、水分調整用マイクロカプセル11同士、水分調整用マイクロカプセル11と透明電極6、および水分調整用マイクロカプセル11と画素電極14を接着させるバインダー10とを含む層となっている。
【0023】
そして、水分調整用マイクロカプセル含有層8においては、水分調整用マイクロカプセル11のポリマー膜が破損されると、破損されたポリマー膜内の純水が電気泳動表示シート2と回路基板4との間の間隙に放出される。ポリマー膜が破損された水分調整用マイクロカプセル11は、破損済みカプセル11a(第3の収容部)となる。
ポリマー膜を破損させる水分調整用マイクロカプセル11の数、即ち、電気泳動表示シート2と回路基板4との間の間隙に放出させる水分の量は、後述するように、水分調整用マイクロカプセル11を破損させる直前にバインダー10に含まれる水分量を測定し、その水分量に基づいて設定する。
【0024】
水分調整用マイクロカプセル含有層8の形成位置は、透明電極6の透明基板5と反対側の面(図1の下面)のうち、表示領域(回路基板4の画素電極14形成領域と対向する領域)の外周の領域(即ち、非表示領域)に設定される。また、水分調整用マイクロカプセル含有層8は、表示領域のマイクロカプセル11と接触しないように表示領域の外縁と間隔を空けて形成される。この間隔は、電気泳動表示シート2と回路基板4とを封止したときのマイクロカプセル含有層7および水分調整用マイクロカプセル含有層8の広がりを実験的に取得する等して設定する。
【0025】
例えば、水分調整用マイクロカプセル含有層8は、透明電極6のコンタクト部近傍に形成される。これにより、水分調整用マイクロカプセル11が電気泳動表示シート2と回路基板4との間の間隙に純水を放出したときに、回路基板4に搭載された回路等に純水がかかることを防止でき、回路基板4の回路破壊(ショート、マイグレーション等)を防止できる。
【0026】
ここで、電気泳動表示装置1では、非表示領域(いわゆる額縁)を狭くすることが求められるところ、水分調整用マイクロカプセル含有層8を形成すると額縁が広くなることが懸念される。一方、非表示領域のうち、後述するモジュール配線15やドライバー(不図示)等が接続されている部分はそれらの実装領域があるため、額縁として一定以上の広さを要する。そこで、本実施形態では、水分調整用マイクロカプセル含有層8の形成位置は、非表示領域を形成する額縁のうち、モジュール配線15が配設されている部分を含む側辺の一箇所に設定する。すなわち、額縁のうち実装領域近傍の領域を利用する。これにより、電気泳動表示装置1の額縁を広げることなく、水分調整用マイクロカプセル含有層8を形成できる。
【0027】
透明基板5の電気泳動表示シート2外部側の面(図1上面)には、防水シート13が配設されている。防水シート13は、液体を遮断する透明なシートであり、電気泳動表示装置1の表示面である透明基板5の水濡を防止する。
回路基板4は、電気泳動表示シート2側の面に画素電極14を有している。なお、回路基板4の電気泳動表示シート2側の面は、請求項1における第2の基板の一方の面に対応する。
【0028】
画素電極14は、回路基板4における表示領域を構成する範囲に複数形成されており、各画素電極14は、独立して電位を制御できる構成となっている。また、回路基板4の一端(図1では左端)は、透明基板5よりも外方に突出しており、その端部にモジュール配線15が配設されている。モジュール配線15は、回路基板4に接続された配線であり、ドライバー回路等からの画素電極14の制御指令を入力する。モジュール配線15は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuits)等、可撓性を有する部材によって構成される。
【0029】
封止部3は、電気泳動表示シート2と回路基板4との間に配設されている。そして、封止部3は、電気泳動表示シート2と回路基板4との縁部に沿って形成された封止部材(例えば紫外線硬化型の樹脂等)によって構成され、電気泳動表示シート2と回路基板4との間の間隙を気密的に封止している。
【0030】
(変形例)
図2は、水分調整用マイクロカプセル含有層8の他の設定例を示す図である。
第1実施形態の図1に示す例では、水分調整用マイクロカプセル含有層8の形成位置を、非表示領域を形成する額縁のうち、モジュール配線15が配設されている部分を含む側辺の一箇所に設定する例を示した。これに対し、図2に示すように、非表示領域(表示領域の外周)のうち、2以上の箇所に形成するようにしても良い。この場合、電気泳動表示シート2と回路基板4との間の間隙に、より均一に純水を拡散できる。
また、非表示領域にダミー画素電極(画素の表示に寄与しない電極)を有する場合には、ダミー画素電極よりも外周側に水分調整用マイクロカプセル11を配置するようにしても良い。この場合、純水によって表示用のマイクロカプセル9が機能しなくなることを防止できる。
【0031】
水分調整用マイクロカプセル11のポリマー膜の色は、黒色等、識別し易く且つレーザー光を吸収しやすい色(例えば黒色等)に着色される。これにより、後述するように、水分調整用マイクロカプセル11のポリマー膜をレーザー光で破損させる場合、水分調整用マイクロカプセル11にエネルギーを集中させやすくなり、レーザー光の出力を低減できる。ポリマー膜を着色する方法としては、例えば、スポイトでポリマー膜に染料を滴下する方法を採用できる。
なお、本実施形態では、水分調整用マイクロカプセル11のポリマー膜の色を着色する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、レーザー光を吸収する吸収剤を含んでポリマー膜を形成し、レーザー光の出力を低減できるようにしてもよい。
【0032】
(電気泳動表示装置1の製造方法)
次に、本実施形態の電気泳動表示装置1の製造方法について説明する。
図3および図4は、電気泳動表示装置1の製造方法を説明するための模式図である。
電気泳動表示装置1の製造方法は、フロントプレーン作成工程(第11工程)、およびバックプレーン組付工程(第21〜27工程)を含んでいる。
フロントプレーン形成工程は、電気泳動表示シート2を形成する工程である。
具体的には、まず、図3(a)に示すように、マイクロカプセル分散液16を透明基板5および透明電極6を有する基板に塗布する(第11工程)。マイクロカプセル分散液16は、マイクロカプセル9およびバインダー10を混合した液体である。
【0033】
マイクロカプセル分散液16を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法等の各種塗布法を採用する。なお、マイクロカプセル分散液16を塗布した後、表面の状態に応じて表面を平坦化する処理を行う。
これにより、マイクロカプセル含有層7を形成し、電気泳動表示シート(フロントプレーン)2を形成する。
バックプレーン組付工程は、電気泳動表示シート形成工程で形成した電気泳動表示シート2に回路基板4を組み付けることで、電気泳動表示装置1を形成する工程である。
具体的には、まず、製造する電気泳動表示装置1の大きさに応じて電気泳動表示シート2をカットする(第21工程)。このとき、電気泳動表示装置1の表示領域に非表示領域を付加した大きさで電気泳動表示シート2をカットする。
【0034】
次に、図3(b)に示すように、透明電極6の透明基板5と反対側の面の非表示領域のうち、モジュール配線15が配設される部分を含む側辺の一箇所からマイクロカプセル含有層7を拭き取り、拭き取った箇所に水分調整用マイクロカプセル分散液12を塗布する(第22工程)。水分調整用マイクロカプセル分散液12は、水分調整用マイクロカプセル11およびバインダー10を混合した液体である。
【0035】
水分調整用マイクロカプセル分散液12を塗布する方法としては、例えば、水分調整用マイクロカプセル分散液12をスポイトで供給し、供給した水分調整用マイクロカプセル分散液12をスキージ等で平坦にする方法を採用する。
これにより、水分調整用マイクロカプセル含有層8を形成する。なお、水分調整用マイクロカプセル含有層8は情報の表示に寄与しないので、水分調整用マイクロカプセル分散液12を完全に平坦にする必要はなく、平坦にする工程を省略することもできる。
【0036】
なお、本実施形態では、電気泳動表示シート2に水分調整用マイクロカプセル分散液12を塗布する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、後述するように、回路基板4に水分調整用マイクロカプセル分散液12を塗布する構成としてもよい。その場合、画素電極14の電気泳動表示装置1内部側の面(図3の上面)のうち、マイクロカプセル含有層7を拭き取った部分と対向する部分に水分調整用マイクロカプセル分散液12を塗布する。
【0037】
次に、図3(c)に示すように、マイクロカプセル含有層7と画素電極14とを対向させて電気泳動表示シート2と回路基板4とを重ね合わせ、重ね合わせた回路基板4と電気泳動表示シート2とがバインダー10、12で接着されるように加圧および加熱処理を行う(第23工程)。これにより、電気泳動表示シート2と回路基板4とが接合される。
次に、図4(a)に示すように、電気泳動表示シート2の透明基板5と回路基板4の画素電極14との間であって、これらの縁部に沿って封止部3を形成するための材料を供給する(第24工程)。材料を供給する方法としては、例えば、ディスペンサ等を用いる方法を採用する。これにより、電気泳動表示シート2と回路基板4との間の間隙を気密的に封止する。なお、この封止工程は、加熱・減圧環境下において行う。
【0038】
次に、図4(b)に示すように、透明基板5の電気泳動表示シート2外部側の面(図4上側)に防水シート13を配設する(第25工程)。また、回路基板4の画素電極14側の面(図4上面)の端部(図4では左側端部)にモジュール配線15を配設する。
次に、マイクロカプセル分散液16のバインダー10に含まれる水分量を算出する(第26工程)。水分量の算出は、例えば、特開2008−249791号公報の段落番号0005に記載されているように、回路基板4のリーク電流の測定結果をもとに算出する方法を採用することができる。
【0039】
次に、図4(c)に示すように、水分調整用マイクロカプセル11のポリマー膜を破損させる(第27工程)。ポリマー膜を破損させる方法としては、例えば、赤外線レーザー等のレーザー光を電気泳動表示シート2の防水シート13側から照射し、照射されたレーザー光をポリマー膜に集光させ、集光されたレーザー光によってポリマー膜を溶融させる方法を採用する。
レーザー光の強度は、水分調整用マイクロカプセル11のポリマー膜を破損できる強度以上とする。これにより、水分調整用マイクロカプセル11のポリマー膜が破損されると、破損されたポリマー膜内の純水を電気泳動表示シート2と回路基板4との間の間隙に放出される。
【0040】
また、レーザー光の強度は、回路基板4、封止部3等の他の部分が破損する強度未満とする。これにより、レーザー光によってポリマー膜を破損させる際に、他の部分が破損することを防止できる。なお、レーザー光の照射領域、つまり、水分調整用マイクロカプセル11と対向する部分に回路基板4を設けない構成とすることで、レーザー光の強度が多少強くても回路基板4が破損することを防止できる。また、レーザー光の強度は、ポリマー膜が分解する強度未満とする。これにより、水分調整用マイクロカプセル11のポリマー膜の着色に用いた着色料が拡散することを防止できる。破損させるポリマー膜の数は、直前に測定したバインダー10に含まれる水分量に基づいて設定する。バインダー10の水分量は、透明電極6と画素電極14との間におけるリーク電流(即ち、マイクロカプセル含有層7および水分調整用マイクロカプセル含有層8を介するリーク電流)を測定することによって把握できる(図5参照)。
【0041】
ここで、破損させるポリマー膜の数は、例えば、以下のような手順で算出する。
まず、透明電極6と画素電極14との間の容積Vは、表示領域の大きさがA6サイズである場合には、次式(1)に従って算出される。
V= (102mm×133mm×0.0035mm) ・・・(1)
そのため、容積Vからマイクロカプセル9、11の容積を除いた容積V´、つまり、バインダー10、11が充填された容積は、次式(2)に従って算出される。
V´=(4/3×π×0.003)×{(102/0.003)×(133/0.003) ・・・(2)
【0042】
ここで、1つのマイクロカプセル9、11内の水分は、マイクロカプセル9、11の内部直径が22μmと仮定すると、次式(3)に従って算出される。
=4/3×π×r=4/3×3.14×(0.0022) ・・・(3)
そのため、水分調整用マイクロカプセル11によって供給する水分量は、電気泳動表示シート2と回路基板4との間の雰囲気が30℃、相対湿度10%であるところ、理想的な雰囲気が20℃、相対湿度30%である場合には、次式(4)に従って算出される。
5.20045(g)−3.04206(g)=1.77985(g)(1m辺り) ・・・(4)
したがって、破損させる水分調整用マイクロカプセル11の数は、次式(5)式に従って算出される。
(V´×1.77985×10−8)/V=689(個)(ほぼ0.8mm) ・・・(5)
【0043】
なお、水分調整用マイクロカプセル11を破損する際、上述のように個数をカウントして破損するのではなく、一定範囲の面積に含まれる水分調整用マイクロカプセル11をまとめて破損させることもできる。
この場合、レーザー光の焦点をずらし、一定範囲の水分調整用マイクロカプセルに同時にレーザーを照射して、移動を伴わない1回のレーザー照射で水分調整用マイクロカプセル11の破損を行う。
【0044】
また、本実施形態では、レーザー光をポリマー膜に集光し、集光したレーザー光によってポリマー膜を溶融させることで破損させる例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、レーザー光をポリマー膜内の純水に照射し、照射したレーザー光で純水を振動させて煮沸させることでポリマー膜を破損させるようにしてもよい。
【0045】
次に、マイクロカプセル分散液16のバインダー10に含まれる水分量を測定する。これにより、バインダー10の水分量が適切なものに調整されたか否か確認する。
以上の工程を経て、電気泳動表示装置1が得られる。なお、バックプレーン形成工程は、通常、専門のアセンブリメーカーによって実施される。
以上のように、本実施形態に係る電気泳動表示装置1は、電気泳動表示シート2に水分調整用マイクロカプセル含有層8を有している。そして、水分調整用マイクロカプセル11のポリマー膜を破損させると、電気泳動表示シート2と回路基板4との間の間隙に水分を放出することができる。
【0046】
そのため、電気泳動表示装置1の製造後、表示領域内の水分量を目的とする状態に調整することができる。
したがって、電気泳動表示装置1における表示体内部の水分量をより高い精度で調整することが可能となる。
【0047】
図5は、電気泳動表示シート2内部の水分量が種々変化した場合のリーク電流を示す図である。なお、図5においては、水系のバインダーの例を示している。
図5に示すように、同一の温度(ここでは60℃)で一定時間、電気泳動表示シート2を放置すると、リーク電流量は相対湿度毎に一定値に収束する。
そのため、図5の特性を参照し、電気泳動表示シート2内部の水分量を把握することができる。
リーク電流を測定することで電気泳動表示シート2内部の水分量を把握することとした場合、電気泳動表示シート2の組み立て後に、簡単に封止領域内部の水分量を把握することができる。
【0048】
また、図6は、相対湿度と比抵抗との関係を示す図であり、図7は、相対湿度と飽和電流量との関係を示す図である。なお、図6および図7においては、温度が60℃の場合における比抵抗および飽和電流量を例として示しており、また、水系のバインダーおよびエタノール系のバインダーを例として示している。
図6および図7に示すように、電気泳動表示シート2内部における目標とする比抵抗あるいは飽和電流量を設定すると、それに対応する相対湿度が定まる。
【0049】
すると、目標とする水分量が定まり、上記手順に従って、ポリマー膜を破損させる水分調整用マイクロカプセル11の数を算出することができる。そして、一定時間放置した後に、図5の特性を参照することで、電気泳動表示シート2内部の水分量が目的とする状態となっているかを確認することができる。
なお、本実施形態において、第11工程が第1の層形成工程に対応し、第22工程が第2の層形成工程に対応する。また、第23工程および第24工程が封止工程に対応し、第27工程が破損工程に対応する。
【0050】
(電気泳動表示装置1の製造方法の他の例)
第1実施形態において、フロントプレーン側(透明基板5および透明電極6を有する基板側)に水分調整用マイクロカプセル分散液12を塗布する場合を例に挙げて説明したが、バックプレーン側に水分調整用マイクロカプセル分散液12を塗布して電気泳動表示装置1を製造することも可能である。
【0051】
図8および図9は、バックプレーン側に水分調整用マイクロカプセル分散液12を塗布して電気泳動表示装置1を製造する工程を示す図である。
図8および図9に示す電気泳動表示装置1の製造方法は、フロントプレーン作成工程(第31工程)、およびバックプレーン組付工程(第41〜48工程)を含んでいる。
具体的には、まず、図8(a)に示すように、マイクロカプセル分散液16を透明基板5および透明電極6を有する基板に塗布する(第31工程)。マイクロカプセル分散液16は、マイクロカプセル9およびバインダー10を混合した液体である。
【0052】
マイクロカプセル分散液16を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法等の各種塗布法を採用する。なお、マイクロカプセル分散液16を塗布した後、表面の状態に応じて表面を平坦化する処理を行う。
これにより、マイクロカプセル含有層7を形成し、電気泳動表示シート(フロントプレーン)2を形成する。
【0053】
バックプレーン組付工程は、電気泳動表示シート形成工程で形成した電気泳動表示シート2に回路基板4を組み付けることで、電気泳動表示装置1を形成する工程である。
具体的には、まず、製造する電気泳動表示装置1の大きさに応じて電気泳動表示シート2をカットする。このとき、電気泳動表示装置1の表示領域に非表示領域を付加した大きさで電気泳動表示シート2をカットする(第41工程)。
【0054】
次に、図8(b)に示すように、透明電極6の透明基板5と反対側の面の非表示領域(回路基板4の画素電極14形成領域以外と対向する領域)のうち、モジュール配線15が配設される部分を含む側辺の一箇所からマイクロカプセル含有層7を拭き取る(第42工程)。以下、マイクロカプセル含有層7を拭き取った領域を「マイクロカプセル除去領域」と称する。水分調整用マイクロカプセル分散液12は、水分調整用マイクロカプセル11およびバインダー10を混合した液体である。
【0055】
次に、図8(c)に示すように、回路基板4の非表示領域のうち、透明基板5側のマイクロカプセル除去領域と対向する箇所に水分調整用マイクロカプセル分散液12を塗布する(第43工程)。水分調整用マイクロカプセル分散液12は、水分調整用マイクロカプセル11およびバインダー10を混合した液体である。なお、このとき、水分調整用マイクロカプセル分散液12の広がりを防ぐために、必要に応じてテープ等で土手を形成することとしても良い。
【0056】
水分調整用マイクロカプセル分散液12を塗布する方法としては、例えば、水分調整用マイクロカプセル分散液12をスポイトで供給し、供給した水分調整用マイクロカプセル分散液12をスキージ等で平坦にする方法を採用する。
これにより、水分調整用マイクロカプセル含有層8を形成する。なお、水分調整用マイクロカプセル含有層8は情報の表示に寄与しないので、水分調整用マイクロカプセル分散液12を完全に平坦にする必要はなく、平坦にする工程を省略することもできる。
【0057】
次に、図8(d)に示すように、マイクロカプセル含有層7と画素電極14とを対向させて電気泳動表示シート2と回路基板4とを重ね合わせ、重ね合わせた回路基板4と電気泳動表示シート2とがバインダー10、12で接着されるように加圧および加熱処理を行う(第44工程)。これにより、電気泳動表示シート2と回路基板4とが接合される。
次に、図9(a)に示すように、電気泳動表示シート2の透明基板5と回路基板4の画素電極14との間であって、これらの縁部に沿って封止部3を形成するための材料を供給する(第45工程)。材料を供給する方法としては、例えば、ディスペンサ等を用いる方法を採用する。これにより、電気泳動表示シート2と回路基板4との間の間隙を気密的に封止する。なお、この封止工程は、加熱・減圧環境下において行う。
【0058】
次に、図9(b)に示すように、透明基板5の電気泳動表示シート2外部側の面(図9上側)に防水シート13を配設する(第46工程)。また、回路基板4の画素電極14側の面(図9上面)の端部(図9では左側端部)にモジュール配線15を配設する。
次に、マイクロカプセル分散液16のバインダー10に含まれる水分量を算出する(第47工程)。水分量の算出は、例えば、特開2008−249791号公報の段落番号0005に記載されているように、回路基板4のリーク電流の測定結果をもとに算出する方法を採用することができる。
【0059】
次に、図9(c)に示すように、水分調整用マイクロカプセル11のポリマー膜を破損させる(第48工程。ポリマー膜を破損させる方法としては、例えば、赤外線レーザー等のレーザー光を電気泳動表示シート2の防水シート13側から照射し、照射されたレーザー光をポリマー膜に集光させ、集光されたレーザー光によってポリマー膜を溶融させる方法を採用する。
レーザー光の強度は、水分調整用マイクロカプセル11のポリマー膜を破損できる強度以上とする。これにより、水分調整用マイクロカプセル11のポリマー膜が破損されると、破損されたポリマー膜内の純水を電気泳動表示シート2と回路基板4との間の間隙に放出される。
【0060】
また、レーザー光の強度は、回路基板4、封止部3等の他の部分が破損する強度未満とする。これにより、レーザー光によってポリマー膜を破損させる際に、他の部分が破損することを防止できる。なお、レーザー光の照射領域、つまり、水分調整用マイクロカプセル11と対向する部分に回路基板4を設けない構成とすることで、レーザー光の強度が多少強くても回路基板4が破損することを防止できる。また、レーザー光の強度は、ポリマー膜が分解する強度未満とする。これにより、水分調整用マイクロカプセル11のポリマー膜の着色に用いた着色料が拡散することを防止できる。破損させるポリマー膜の数は、上記手順と同様に、直前に測定したバインダー10に含まれる水分量に基づいて設定する。バインダー10の水分量は、透明電極6と画素電極14との間におけるリーク電流(即ち、マイクロカプセル含有層7および水分調整用マイクロカプセル含有層8を介するリーク電流)を測定することによって把握できる(図5参照)。
【0061】
なお、水分調整用マイクロカプセル11を破損する際、上述のように個数をカウントして破損するのではなく、一定範囲の面積に含まれる水分調整用マイクロカプセル11をまとめて破損させることもできる。
この場合、レーザー光の焦点をずらし、一定範囲の水分調整用マイクロカプセルに同時にレーザーを照射して、移動を伴わない1回のレーザー照射で水分調整用マイクロカプセル11の破損を行う。
また、本実施形態では、レーザー光をポリマー膜に集光し、集光したレーザー光によってポリマー膜を溶融させることで破損させる例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、レーザー光をポリマー膜内の純水に照射し、照射したレーザー光で純水を振動させて煮沸させることでポリマー膜を破損させるようにしてもよい。
【0062】
次に、マイクロカプセル分散液16のバインダー10に含まれる水分量を測定する。これにより、バインダー10の水分量が適切なものに調整されたか否か確認する。
以上の工程を経て、電気泳動表示装置1が得られる。なお、バックプレーン形成工程は、通常、専門のアセンブリメーカーによって実施される。
なお、本例において、第31工程が第1の層形成工程に対応し、第42工程および第43工程が第2の層形成工程に対応する。また、第44工程および第45工程が封止工程に対応し、第48工程が破損工程に対応する。
【0063】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る電気泳動表示装置の第2実施形態につき図面を参照して説明する。なお、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
(構成)
図10は、第2実施形態の電気泳動表示装置1の概略構成を示す図である。
本実施形態における電気泳動表示装置1は、第1実施形態ではマイクロカプセル型の表示体であったところ、隔壁によって仕切られた領域(収容部)を有する表示体とした点が異なる。なお、隔壁によって仕切られた領域を有する表示体として、隔壁型あるいはマイクロカップ型等を採用することができるが、ここでは、一例としてマイクロカップ型であるものとする。
【0064】
具体的には、図10に示すように、マイクロカプセル含有層7および水分調整用マイクロカプセル含有層8に代えてマイクロカップ含有層17および水分調整用マイクロカップ含有層18を備える。
マイクロカップ含有層17は、画素電極14側(図10下側)に開口した複数のマイクロカップ19と、マイクロカップ19同士、マイクロカップ19と透明電極6、およびマイクロカップ19と画素電極14を接合させる隔壁部20と、複数のマイクロカップ19それぞれの内面に形成され液体を遮断する膜体21と、電気泳動粒子と分散媒とを含む溶液をマイクロカップ19内に格納させた状態でマイクロカップ19の開口部を封止するシール材22とを含む層となっている。
【0065】
そして、マイクロカップ含有層17は、透明電極6と複数の画素電極14のいずれかとの間に電界が発生すると、発生した電界に従って、マイクロカップ19内の電気泳動粒子が透明電極6側(図10上側)または画素電極14側(図10下側)に泳動可能となっている。そして、マイクロカップ含有層17は、透明電極6側の面(図10上側)に透明電極6と複数の画素電極14のそれぞれとで複数の画素を形成する構成となっている。これにより、マイクロカップ含有層17は、複数の画素のうち、電気泳動粒子が透明電極6側に泳動した画素に電気泳動粒子の色を表示し、電気泳動粒子が画素電極14側(図10下側)に泳動した画素に分散媒の色を表示する。
【0066】
水分調整用マイクロカップ含有層18は、画素電極14側に開口したマイクロカップ(水分調整用マイクロカップ)23と、マイクロカップ23同士、マイクロカップ23と透明電極6、およびマイクロカップ23と画素電極14を接合させる隔壁部24と、複数のマイクロカップ23の内面に形成され液体を遮断する膜体25と、純水をマイクロカップ23内に格納させた状態でマイクロカップ23の開口部を封止するシール材26を含む層となっている。
【0067】
そして、水分調整用マイクロカップ含有層18においては、水分調整用マイクロカップ23の膜体25が破損されると、破損された膜体25内の純水が電気泳動表示シート2と回路基板4との間の間隙に放出される。ポリマー膜が破損された水分調整用マイクロカップ23は、破損済みカップ23a(第3の収容部)となる。
ポリマー膜を破損させる水分調整用マイクロカップ23の数、即ち、電気泳動表示シート2と回路基板4との間の間隙に放出させる水分の量は、第1実施形態と同様に、水分調整用マイクロカプセル11を破損させる直前にバインダー10に含まれる水分量を測定し、その水分量に基づいて設定する。バインダー10の水分量は、透明電極6と画素電極14との間におけるリーク電流(即ち、マイクロカップ含有層17および水分調整用マイクロカップ含有層18を介するリーク電流)を測定することによって把握できる(図5参照)。
【0068】
水分調整用マイクロカップ含有層18の膜体25の色は、黒色等、識別し易く且つレーザー光を吸収しやすい色に着色される。これにより、後述するように、水分調整用マイクロカップ含有層18の膜体25をレーザー光で破損させる場合、特定の水分調整用マイクロカップ含有層18にエネルギーを集中させやすくなり、レーザー光の出力を低減できる。膜体25を着色する方法としては、例えば、スポイトで膜体25に染料を滴下する方法を採用できる。
なお、本実施形態では、水分調整用マイクロカップ含有層18の膜体25の色を着色する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、レーザー光を吸収する吸収剤を含んで膜体25を形成し、レーザー光の出力を低減できるようにしてもよい。
【0069】
(電気泳動表示装置1の製造方法)
本実施形態における電気泳動表示装置1の製造方法は、第1実施形態では第22工程でマイクロカプセル含有層7を拭き取り、拭き取った箇所に水分調整用マイクロカプセル分散液12を塗布するところ、当初より水分調整用マイクロカップ含有層18の形成領域を設定している点(第62工程)が異なる。
また、本実施形態における電気泳動表示装置1の製造方法は、第1実施形態では第27工程で水分調整用マイクロカップ23のポリマー膜を破損させるところ、水分調整用マイクロカップ23の膜体25を破損させる点(第67工程)が異なる。
【0070】
具体的には、膜体25を破損させる方法としては、例えば、赤外線レーザー等、レーザー光を電気泳動表示シート2の防水シート13側から照射し、照射されたレーザー光をポリマー膜に集光させる方法を採用する。
レーザー光の強度は、水分調整用マイクロカップ23の膜体25を破損できる強度以上とする。これにより、水分調整用マイクロカップ23の膜体25が破損されると、破損された膜体25内の純水を電気泳動表示シート2と回路基板4との間の間隙に放出される。
【0071】
また、レーザー光の強度は、回路基板4、封止部3等の他の部分が破損する強度未満とする。これにより、レーザー光によってポリマー膜を破損させる際に、他の部分が破損することを防止できる。なお、レーザー光の照射領域、つまり、水分調整用マイクロカップ23と対向する部分に回路基板4を設けない構成とすることで、レーザー光の強度が多少強くても回路基板4が破損することを防止できる。また、レーザー光の強度は、膜体25が分解する強度未満とする。これにより、膜体25の着色に用いた着色料が拡散することを防止できる。破損させる膜体25の数は、第1実施形態の手順と同様に、直前に測定した隔壁部20、57に含まれる水分量に基づいて設定する。隔壁部20、57の水分量は、透明電極6と画素電極14との間におけるリーク電流(即ち、マイクロカップ含有層17および水分調整用マイクロカップ含有層18を介するリーク電流)を測定することによって把握できる(図5参照)。
【0072】
以上のように、本実施形態に係る電気泳動表示装置1は、電気泳動表示シート2に水分調整用マイクロカップ含有層18を有している。そして、水分調整用マイクロカップ23のポリマー膜を破損させると、電気泳動表示シート2と回路基板4との間の間隙に水分を放出することができる。
そのため、電気泳動表示装置1の製造後、表示領域内の水分量を目的とする状態に調整することができる。
したがって、電気泳動表示装置における表示体内部の水分量をより高い精度で調整することが可能となる。
なお、本実施形態において、第62工程が第2の層形成工程に対応し、第67工程が破損工程に対応する。その他の工程は第1実施形態の場合と同様である。
【符号の説明】
【0073】
1 電気泳動表示装置、2 電気泳動表示シート、3 封止部、4 回路基板、5 透明基板(第1の基板)、6 透明電極(共通電極)、7 マイクロカプセル含有層(第1の層)、8 水分調整用マイクロカプセル含有層(第2の層)、9 マイクロカプセル(第1の収容部)、10 バインダー、11 水分調整用マイクロカプセル(第2の収容部)、11a 破損済みカプセル(第3の収容部)、12 水分調整用マイクロカプセル分散液、13 防水シート、14 画素電極、15 モジュール配線、16 マイクロカプセル分散液、17 マイクロカップ含有層(第1の層)、18 水分調整用マイクロカップ含有層(第2の層)、19 マイクロカップ(第1の収容部)、20,24 隔壁部、21 膜体、22,26 シール材、23 水分調整用マイクロカップ(第2の収容部)、23a 破損済みカップ(第3の収容部)、25 膜体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板の一方の面および第2の基板の一方の面の少なくとも一方に、電気泳動粒子および分散媒を含む分散液を収容する第1の収容部を有する第1の層を形成する第1の層形成工程と、
前記第1の基板の前記一方の面および前記第2の基板の前記一方の面の少なくとも一方に、前記第1の収容部内の分散液よりも水分の多い液体を収容する複数の第2の収容部を有する第2の層を形成する第2の層形成工程と、
前記第1の基板と前記第2の基板とを、前記第1の基板の前記一方の面と前記第2の基板の前記一方の面とが対向するように貼り合わせる封止工程と、
前記複数の第2の収容部の少なくとも1つを破損させる破損工程と、
を含むことを特徴とする電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2の基板には、画素を構成する複数の画素電極が形成され、
前記第1の基板には、前記複数の前記画素に共通して形成される共通電極が形成され、
前記第1の層形成工程では、前記第1の層を、前記画素電極が形成された範囲に配置すると共に、
前記第2の層形成工程では、前記第2の層を、前記画素電極が形成された範囲の外縁と間隔を空けて配置することを特徴とする請求項1記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2の層形成工程では、前記第2の層を、複数箇所に配置することを特徴とする請求項2記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2の層形成工程では、着色した前記複数の第2の収容部を形成し、
前記破損工程では、レーザー光によって前記複数の第2の収容部の少なくとも1つを破損させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記破損工程では、前記第1の層と前記第2の層とを介するリーク電流によって把握された水分量を基に、前記複数の第2の収容部のうち、破損させる第2の収容部の数を決定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の収容部および前記複数の第2の収容部を、マイクロカプセルによって構成することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1の収容部および前記複数の第2の収容部を、隔壁によって構成することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項8】
第1の基板と、
前記第1の基板と対向して配置された第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置され、電気泳動粒子および分散媒を含む分散液を収容する第1の収容部を有する第1の層と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間であって、前記第1の収容部が配置された範囲外に配置され、前記第1の収容部内の分散液よりも水分の多い液体を収容する複数の第2の収容部を有する第2の層と、
を備え、
前記第2の層には、内部と外部とが連通している第3の収容部が含まれることを特徴とする電気泳動表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−215745(P2012−215745A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81645(P2011−81645)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】