説明

電気泳動表示装置の駆動方法、電気泳動表示装置、及び電子機器

【課題】表示装置単体での線幅調整を可能とし、表現力を向上させることができる電気泳動表示装置の駆動方法を提供する。
【解決手段】本発明の電気泳動表示装置の駆動方法は、画素電極に第1又は第2の電位を入力する一方、共通電極に前記第1の電位と前記第2の電位とを周期的に繰り返すパルス波を入力し、特定階調からなる画像要素と隣り合う前記画素の前記電気泳動素子に電圧印加する期間に前記パルス波の入力を停止することで、特定階調からなる画像要素の輪郭が縮小された画像を表示部に表示することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置の駆動方法、電気泳動表示装置、及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶液中に電気泳動粒子を分散させてなる分散液に電界を印加した際に、クーロン力によって電気泳動粒子が泳動する現象(電気泳動現象)が知られており、当該現象を利用した電気泳動表示装置が開発されている。このような電気泳動表示装置は、例えば、下記特許文献1,2に開示されている。電気泳動表示装置は、共通電極と複数に分割された画素電極との間に電位差を生じさせることにより、表示色を所望の色に変化させることが可能となる。特許文献1記載の駆動方法では、共通電極に周期的にローレベルとハイレベルとを繰り返すパルス波を入力する駆動方法(コモン振り駆動)を採用していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭52−70791号公報
【特許文献2】特開2003−140199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気泳動表示装置に限らず、表示装置一般においては、その表示解像度は画素サイズ及び画素ピッチにより規定され、表示される線幅は1画素単位の幅に固定されている。近年では、アンチエイリアス処理などの画像処理を施すことで擬似的に線幅を調整することが成されているが、表示装置単体で画素サイズに制限されない線幅調整を可能にすることは検討されていなかった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み成されたものであって、表示装置単体での線幅調整を可能とし、表現力を向上させることができる電気泳動表示装置の駆動方法、及び電気泳動表示装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気泳動表示装置の駆動方法は、第1基板と第2基板との間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を挟持してなり、複数の画素を配列してなる表示部を備え、各々の前記画素に対応して前記第1基板の前記電気泳動素子側に形成された画素電極と、前記第2基板の前記電気泳動素子側に形成され、複数の前記第1電極と対向する共通電極とを有する電気泳動表示装置の駆動方法であって、前記画素電極に第1又は第2の電位を入力する一方、前記共通電極に前記第1の電位と前記第2の電位とを周期的に繰り返すパルス波を入力し、前記共通電極への前記パルス波の入力を、特定階調からなる画像要素と隣り合う前記画素の前記電気泳動素子に電圧を印加する期間に停止することで、前記表示部に、前記特定階調からなる画像要素の輪郭が縮小された画像を表示することを特徴とする。
【0007】
この駆動方法では、共通電極に第1の電位と第2の電位とを周期的に繰り返すパルス波を入力することで電気泳動素子を駆動する、いわゆるコモン振り駆動を採用している。そして、コモン振り駆動における共通電極への電位入力停止のタイミングを、特定階調からなる画像要素と隣り合う画素を駆動する期間とすることで、特定階調からなる画像要素の輪郭を縮小することを可能にしたものである。
【0008】
コモン振り駆動では、共通電極が第1の電位である期間に、第2の電位に保持された画素電極との間の電気泳動素子を駆動し、共通電極が第2の電位である期間に、第1の電位に保持された画素電極との間の電気泳動素子を駆動する。したがって、共通電極が第1の電位である期間には、第2の電位に保持された画素電極が属する画素は実質的に動作せず、共通電極が第2の電位である期間には、第1の電位に保持された画素電極が属する画素は実質的に動作しない。
【0009】
また、共通電極は画素電極よりも大きい平面領域を有し、複数の画素電極と対向しているため、動作時に画素電極と共通電極との間に形成される電界は、画素電極側で狭く、共通電極に近づくに従って広がった電界となる。
【0010】
以上から、電気泳動表示装置をコモン振り駆動した場合には、第1の電位に保持された画素電極(以下第1画素電極とする)と、第2の電位に保持された画素電極(以下第2画素電極とする)とが隣り合う領域において、共通電極の電位変化に伴って、第1画素電極から第2画素電極上にまで広がる電界が形成される期間と、第2画素電極から第1画素電極上にまで広がる電界が形成される期間とが交互に繰り返される。
【0011】
そして、電気泳動素子に含まれる電気泳動粒子は、上述した電界に沿って移動するため、第1画素電極の属する画素が動作する期間では、第1画素電極の電位に対応した表示が第1画素電極よりも広い領域に及ぶ。逆に、第2画素電極の属する画素が動作する期間では、第2画素電極の電位に対応した表示が第2画素電極よりも広い領域に及ぶ。
【0012】
本発明の駆動方法は、上の作用を利用し、共通電極への電位入力停止のタイミングを適切に制御することで、特定階調からなる画像要素の輪郭を自在に縮小させて表示できるようにしたものである。この駆動方法によれば、画素サイズに制限されない線幅の調整を表示装置単体で行うことができ、表現力に優れた表示が可能になる。
なお、本発明における画像要素は、表示部において1又は複数の画素により構成される画像成分である。
【0013】
前記パルス波の最終パルスにおける後半のパルス幅を、前記パルス波を構成する他のパルスのパルス幅よりも大きくすることが好ましい。
この駆動方法によれば、線幅を規定する最後の電圧印加期間を長くするので、より確実に輪郭が縮小された表示を得ることができる。
【0014】
前記パルス波の最終パルスの周期を、前記パルス波を構成する他のパルスの周期よりも長くすることが好ましい。
この駆動方法によれば、線幅を規定する最後の電圧印加期間を長くすることで、より確実に輪郭が縮小された表示を得ることができる。さらに、画素電極及び共通電極と電気泳動素子とに対して異なる極性の電位が入力される期間を均一化することができる。これにより、電極や電気泳動素子の劣化を抑えることができる。
【0015】
前記パルス幅又は前記周期の長さによって前記輪郭の縮小幅を調整することが好ましい。
この駆動方法によれば、パルス幅又は周期を調整するという簡便な操作で、輪郭の縮小幅を調整でき、さらに表現力に優れた表示を得ることができる。
【0016】
前記特定階調が、階調値が最大である第1の階調、又は階調値が最小である第2の階調であることが好ましい。
この駆動方法によれば、例えば黒表示された画像要素の輪郭を縮小した表示、あるいは、白表示された画像要素の輪郭を縮小した表示が可能である。
【0017】
前記特定階調が、中間階調であることも好ましい。
この駆動方法によれば、例えばグレー表示された画像要素の輪郭を縮小した表示も可能である。
【0018】
本発明の電気泳動表示装置は、第1基板と第2基板との間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を挟持してなり、複数の画素を配列してなる表示部を備え、各々の前記画素に対応して前記第1基板の前記電気泳動素子側に形成された画素電極と、前記第2基板の前記電気泳動素子側に形成され、複数の前記第1電極と対向する共通電極と、前記画素電極及び前記共通電極に入力する電位を制御する制御部と、を有する電気泳動表示装置であって、前記制御部は、前記画素電極に第1又は第2の電位を入力する一方、前記共通電極に前記第1の電位と前記第2の電位とを周期的に繰り返すパルス波を入力し、前記共通電極への前記パルス波の入力を、特定階調からなる画像要素と隣り合う前記画素の前記電気泳動素子に電圧を印加する期間に停止することで、前記表示部に、前記特定階調からなる画像要素の輪郭が縮小された画像を表示することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、共通電極への電位入力停止のタイミングを適切に制御することで、特定階調からなる画像要素の輪郭を自在に縮小させて表示することができる。したがって、線幅の調整を表示装置単体で行うことができ、表現力に優れた表示が可能な電気泳動表示装置を実現することができる。
【0020】
前記パルス波の最終パルスにおける後半のパルス幅が、前記パルス波を構成する他のパルスのパルス幅よりも大きいことが好ましい。
この構成によれば、線幅を規定する最後の電圧印加期間が長くなるので、より確実に輪郭が縮小された表示を得ることができる。
【0021】
前記パルス波の最終パルスの周期が、前記パルス波を構成する他のパルスの周期よりも長いことが好ましい。
この構成によれば、線幅を規定する最後の電圧印加期間が長くなるので、より確実に輪郭が縮小された表示を得ることができる。さらに、画素電極及び共通電極と電気泳動素子とに対して異なる極性の電位が入力される期間を均一化することができる。これにより、電極や電気泳動素子の劣化を抑えることができる。
【0022】
前記制御部は、前記パルス幅又は前記周期の長さによって前記輪郭の縮小幅を調整する構成とすることもできる。
この構成によれば、パルス幅又は周期を調整するという簡便な操作で、輪郭の縮小幅を調整でき、さらに表現力に優れた表示を得ることができる電気泳動表示装置となる。
【0023】
前記特定階調が、階調値が最大である第1の階調、又は階調値が最小である第2の階調であることが好ましい。
この構成によれば、例えば黒表示された画像要素の輪郭を縮小した表示、あるいは、白表示された画像要素の輪郭を縮小した表示が可能である。
【0024】
前記特定階調が、中間階調であることも好ましい。
この構成によれば、例えばグレー表示された画像要素の輪郭を縮小した表示も可能である。
【0025】
本発明の電子機器は、先に記載の電気泳動表示装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、表現力に優れた表示手段を具備した電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態に係る電気泳動表示装置の概略構成図。
【図2】電気泳動表示装置の断面構造とマイクロカプセルを示す図。
【図3】電気泳動素子の動作説明図。
【図4】第1の駆動方法による画素の状態遷移を示す説明図。
【図5】第1の駆動方法におけるタイミングチャート。
【図6】第2の駆動方法による画素の状態遷移を示す説明図。
【図7】第2の駆動方法におけるタイミングチャート。
【図8】第3の駆動方法による画像表示動作を示す説明図。
【図9】第3の駆動方法におけるタイミングチャート。
【図10】第4の駆動方法による画像表示動作を示す説明図。
【図11】第4の駆動方法におけるタイミングチャート。
【図12】第5の駆動方法による画像表示動作を示す説明図。
【図13】第5の駆動方法におけるタイミングチャート。
【図14】変形例に係る電気泳動表示装置の概略構成図。
【図15】変形例に係る電気泳動表示装置の画素回路を示す図。
【図16】電子機器の一例を示す図。
【図17】電子機器の一例を示す図。
【図18】電子機器の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ本発明の電気泳動表示装置について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態に係る電気泳動表示装置100の概略構成図である。図2(a)は、電気泳動表示装置100の断面構造とともに電気的構成を示した図である。
【0029】
電気泳動表示装置100は、複数の画素(セグメント)40が配置された表示部5と、コントローラー(制御部)63と、コントローラー63と接続された画素電極駆動回路60とを備えている。画素電極駆動回路60は、それぞれの画素40と画素電極配線61を介して接続されている。また、表示部5には、各々の画素40に共通の共通電極37(図2参照)が設けられている。なお、図1では共通電極37を便宜的に配線として表示している。
【0030】
電気泳動表示装置100は、コントローラー63から画素電極駆動回路60に画像データを転送し、かかる画像データに基づく電位を、個々の画素40に直接入力するセグメント駆動方式の電気泳動表示装置である。
【0031】
図2(a)に示すように、電気泳動表示装置100の表示部5は、第1基板30と第2基板31との間に、電気泳動素子32を挟持した構成である。第1基板30の電気泳動素子32側に複数の画素電極(セグメント電極)35が形成され、第2基板31の電気泳動素子32側には共通電極37が形成されている。電気泳動素子32は、電気泳動粒子を内部に封入した複数のマイクロカプセル20を平面的に配列した構成である。電気泳動表示装置100は、電気泳動素子32により形成された画像を共通電極37側に表示する。
【0032】
第1基板30は、ガラスやプラスチック等からなる基板であり、画像表示面とは反対側に配置されるため透明なものでなくてもよい。画素電極35は、Cu(銅)箔上にニッケルメッキと金メッキとをこの順番で積層したものや、Al(アルミニウム)、ITO(インジウム・スズ酸化物)などを用いて形成される。
第2基板31は、ガラスやプラスチック等からなる基板であり、画像表示側に配置されるため透明基板とされる。共通電極37は、MgAg(マグネシウム銀)、ITO、IZO(登録商標;インジウム・亜鉛酸化物)などを用いて形成される透明電極である。
【0033】
各々の画素電極35には、画素電極配線61を介して画素電極駆動回路60が接続されている。画素電極駆動回路60には、各々の画素電極配線61に対応するスイッチング素子60sが設けられており、スイッチング素子60sの動作により画素電極35に対する電位の入力と電気的切断(ハイインピーダンス化)を行う。
一方、共通電極37には、共通電極配線62を介して共通電極駆動回路64が接続されている。共通電極駆動回路64には、共通電極配線62と接続されたスイッチング素子64sが設けられており、スイッチング素子64sの動作により共通電極37に対する電位の入力と電気的切断(ハイインピーダンス化)を行う。
【0034】
なお、電気泳動素子32は、あらかじめ第2基板31側に形成され、接着剤層33までを含めた電気泳動シートとして取り扱われるのが一般的である。製造工程において、電気泳動シートは接着剤層33の表面に保護用の剥離シートが貼り付けられた状態で取り扱われる。そして、別途製造された第1基板30(画素電極35などが形成されている)に対して、剥離シートを剥がした当該電気泳動シートを貼り付けることによって、表示部5を形成する。このため、接着剤層33は画素電極35側のみに存在することになる。
【0035】
図2(b)は、マイクロカプセル20の模式断面図である。マイクロカプセル20は、例えば30〜50μm程度の粒径を有しており、内部に分散媒21と、複数の白色粒子(電気泳動粒子)27と、複数の黒色粒子(電気泳動粒子)26とを封入した球状体である。マイクロカプセル20は、図2に示したように共通電極37と画素電極35との間に挟持され、1つの画素40内に1つ又は複数のマイクロカプセル20が配置される。
【0036】
マイクロカプセル20の外殻部(壁膜)は、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチルなどのアクリル樹脂、ユリア樹脂、アラビアガムなどの透光性を持つ高分子樹脂などを用いて形成される。
分散媒21は、白色粒子27と黒色粒子26とをマイクロカプセル20内に分散させる液体である。分散媒21としては、水、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、メチルセルソルブなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、脂肪族炭化水素(ぺンタン、ヘキサン、オクタンなど)、脂環式炭化水素(シクロへキサン、メチルシクロへキサンなど)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、長鎖アルキル基を有するベンゼン類(キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼンなど))、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなど)、カルボン酸塩などを例示することができ、その他の油類であってもよい。これらの物質は単独又は混合物として用いることができ、さらに界面活性剤などを配合してもよい。
【0037】
白色粒子27は、例えば、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色顔料からなる粒子(高分子あるいはコロイド)であり、例えば負に帯電されて用いられる。黒色粒子26は、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料からなる粒子(高分子あるいはコロイド)であり、例えば正に帯電されて用いられる。
これらの顔料には、必要に応じ、電解質、界面活性剤、金属石鹸、樹脂、ゴム、油、ワニス、コンパウンドなどの粒子からなる荷電制御剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シラン系カップリング剤等の分散剤、潤滑剤、安定化剤などを添加することができる。
また、黒色粒子26及び白色粒子27に代えて、例えば赤色、緑色、青色などの顔料を用いてもよい。かかる構成によれば、表示部5に赤色、緑色、青色などを表示することができる。
【0038】
図3は、電気泳動素子の動作説明図である。図3(a)は、画素40を白表示する場合、図3(b)は、画素40を黒表示する場合をそれぞれ示している。
図3(a)に示す白表示の場合には、共通電極37が相対的に高電位、画素電極35が相対的に低電位に保持される。これにより、負に帯電した白色粒子27が共通電極37に引き寄せられる一方、正に帯電した黒色粒子26が画素電極35に引き寄せられる。その結果、表示面側となる共通電極37側からこの画素を見ると、白色(W)が認識される。
図3(b)に示す黒表示の場合、共通電極37が相対的に低電位、画素電極35が相対的に高電位に保持される。これにより、正に帯電した黒色粒子26が共通電極37に引き寄せられる一方、負に帯電した白色粒子27が画素電極35に引き寄せられる。その結果、共通電極37側からこの画素を見ると黒色(B)が認識される。
【0039】
[第1の駆動方法(細い黒線の表示方法)]
次に、上記構成を備えた電気泳動表示装置の駆動方法について説明する。
図4は、本発明に係る電気泳動表示装置の第1の駆動方法による画素40の状態遷移を示す説明図である。図4(a)及び図4(b)は、5つの画素40の初期状態を示す平面図及び断面図である。図4(c)及び図4(d)は、書き込み動作後の画素40の状態を示す平面図及び断面図である。図5は、第1の駆動方法におけるタイミングチャートである。
【0040】
本実施形態に係る第1の駆動方法は、図4(a)に示す白表示された5つの画素40のうち、画素電極SEG0(画素電極35)が属する中央の画素40のみを、図4(c)に示すように黒表示(特定階調)に移行させ、かつ、1画素の幅よりも狭い領域を黒表示させる駆動方法である。以下、かかる駆動方法について詳細に説明する。
【0041】
図4(a)及び図4(b)に示す白表示の画素40では、画素電極35(SEG0、SEG1)側に黒色粒子26が引き寄せられ、共通電極37(COM)側に白色粒子27が引き寄せられている。かかる表示状態に移行させる駆動方法としては、例えば、2つの画素電極SEG0、SEG1にローレベル(例えば0V)の電位を入力し、共通電極COMにローレベルの電位とハイレベル(例えば15V)の電位を周期的に繰り返すパルス波を入力する。これにより、5つの画素40をいずれも白表示状態とすることができる。また、共通電極COMをハイレベルの電位に保持しても同様の表示状態を得ることができる。
【0042】
なお、図4(a)に示す初期状態は、説明の簡単のために、全ての画素40が白表示されている状態を示したにすぎない。すなわち、本実施形態の駆動方法において、表示を更新する前の初期状態は任意の表示状態とすることができる。例えば、5つの画素40が全て黒表示されている状態を初期状態としてもよく、白表示の画素40と黒表示の画素40が混在した状態を初期状態としてもよい。
【0043】
次に、図4(a)に示す白表示状態から図4(c)に示す白表示と黒表示とが混在した状態とするには、図5(a)に示すように、画素電極SEG0にハイレベル(15V)の電位を入力する一方、画素電極SEG1にローレベル(例えば0V)の電位を入力する。そして、共通電極COMに、ローレベル(例えば0V)とハイレベル(例えば15V)を周期的に繰り返す矩形波状のパルス波を入力する。
【0044】
これにより、画素電極SEG0が属する画素40では、共通電極COMがローレベルである期間に、画素電極SEG0(ハイレベル)と共通電極COMとの電位差により電気泳動素子32が駆動され、画素40が黒表示動作する。
一方、画素電極SEG1が属する画素40では、共通電極COMがハイレベルである期間に画素電極SEG1と共通電極COMとの間に電位差が生じ、白表示動作する。しかし、これらの画素40は、初期状態がいずれも白表示であるため表示は変化しない。
【0045】
ここで、本実施形態の駆動方法では、図5(a)に示すように、共通電極COMに入力されるパルス波のうち最終パルスPnが、他のパルスとは異なるパルス幅のパルスとされている。より詳細には、最終パルスPn以外のパルスがデューティ比1:1、パルス幅Pw1のパルスであるのに対して、最終パルスPnは、後半のパルス幅が大きいデューティ比(例えば1:3)に設定されており、前半のパルス幅Pw1に対して、後半のパルス幅Pw2が大きくされている。
【0046】
図4(d)に示すように、画素電極SEG1の属する画素40が白表示動作する際には、画素電極SEG0よりも共通電極COMの方が広いため、共通電極COMから画素電極SEG1に向かう電界Eは、共通電極COM側の方が広くなる。すなわち、共通電極COMと同電位の画素電極SEG0と画素電極SEG1とが隣り合う領域では、画素電極SEG1の端部から画素電極SEG0上の一部まで広がる電界Eが形成される。一方、画素電極SEG0の属する画素40が黒表示動作する際には、画素電極SEG0から画素電極SEG1上の一部まで広がった電界が形成される。
【0047】
そして、電気泳動素子32に含まれる電気泳動粒子は、上記のような広がりを有する電界に沿って移動するため、画素電極SEG0が属する画素40による黒表示領域の幅は、共通電極COMの電位がハイレベルとローレベルとの間で切り替わるのに連動して変化する。つまり、画素電極SEG0の属する画素40が黒表示動作している期間に黒表示領域が広くなり、画素電極SEG1の属する画素40が白表示動作している期間には黒表示領域が狭くなる。
【0048】
そして、電気泳動素子32への電圧印加が停止されると、電気泳動素子32はその時の表示状態を保持するので、黒表示領域の広さ(線幅)は、共通電極COMへの電位入力が停止されたときの動作状態に依存して決定される。つまり、黒表示領域の線幅は、電位入力を停止したときの共通電極COMの電位により決定される。
【0049】
本実施形態では、画素電極SEG0の属する画素40により表示される線幅を縮小するために、共通電極COMへの電位入力停止のタイミングを、図5(a)に示すように、共通電極COMがハイレベルである期間に設定している。これにより、図4(d)に示したように、黒表示の領域を縮小しうる電界Eが形成されているときに電気泳動素子32への電圧印加を停止し、輪郭が縮小された黒表示が保持されるようにしている。
【0050】
さらに本実施形態の駆動方法では、共通電極COMに入力される最終パルスPnの後半部分のパルス幅Pw2が長くなっているため、パルス幅Pw1である他のパルスが入力されたときよりも、図4(d)に示す斜め方向の電界が電気泳動粒子に作用する時間が長くなる。
そのため、画素電極SEG0の端部から比較的離れた位置においても白色粒子27が共通電極COM側に引き寄せられ、図4(c)に示すように、画素電極SEG0の端部からより内側に黒表示領域が縮小された表示を得ることができる。
【0051】
さらにまた、本実施形態の駆動方法によれば、最終パルスPnの後半のパルス幅Pw2を調整することで、黒表示領域の縮小幅Wbを調整することが可能である。具体的には、パルス幅Pw2の長さを伸縮することで、縮小幅Wbを伸縮させることができる。これは、図4(d)に示すように、画素電極SEG1の端部から画素電極SEG0側へ斜め方向に延びる電界は、画素電極SEG1の法線方向に形成される電界に比して弱く、またかかる斜め電界により移動される電気泳動粒子の移動距離も長くなるためである。
【0052】
そのため、パルス幅Pw2を短くすると、画素電極SEG1から離れた位置の画素電極SEG0上では、黒色粒子26が共通電極COM近傍まで到達できなくなり、縮小幅Wbが狭くなる。逆に、パルス幅Pw2を長くすると、斜め電界により移動される白色粒子27を画素電極SEG0のより内側に位置する共通電極COM近傍に到達させることができ、縮小幅Wbを広くすることができる。
【0053】
なお、図4(d)に示す電界Eが広がる領域には限界があるため、パルス幅Pw2の長さを一定時間以上に長くすると、縮小幅Wbは変化しなくなる。縮小幅Wbを調整できる範囲は、電気泳動表示装置100の構造や電気泳動素子32の特性にも依存するが、おおよそ0.5画素分である。したがって、本実施形態の駆動方法によれば、画素ピッチの1/10以下のごく細い線から1画素分までの間で自在に線幅を調整することが可能である。
【0054】
また本実施形態では、パルス幅Pw2をパルス幅Pw1よりも大きくした場合について説明したが、先に記載のように、共通電極COMへの電位入力停止のタイミングを適切に規定すれば、線幅を縮小する効果を得ることができるため、パルス幅Pw2とパルス幅Pw1とが同等の長さとされていてもよい。したがって、パルス幅Pw2の下限値はPw1であり、上限値は縮小幅Wbが変化しなくなる長さである。
【0055】
また、本発明の駆動方法では、図5(b)に示すタイミングチャートを採用することがより好ましい。図5(b)に示すタイミングチャートでは、共通電極COMに入力される最終パルスPnが前半後半ともにパルス幅Pw2のパルスとされている。すなわち、最終パルスの前半のパルス幅も他のパルスのパルス幅よりも長くされ、デューティ比1:1に変更されている。
【0056】
図5(b)に示すタイミングチャートを採用することで、電気泳動素子32や画素電極35、共通電極37の劣化を抑えることができる。
より詳しくは、図5(a)に示した最終パルスPnでは、画素電極SEG1の属する画素40を白表示動作させる期間が、SEG0の属する画素40を黒表示させる期間よりも長くなる。このように電気泳動素子32に作用する電界に偏りを生じると、画素電極35や共通電極37が電気化学的反応により劣化するおそれがあり、また電気泳動素子32の寿命が短くなるおそれもある。
これに対して、図5(b)に示すタイミングチャートでは、最終パルスPnのデューティ比が1:1になっているため、電気泳動素子32に作用させる電界の偏りが生じることがなく、上記のような電気泳動素子32や電極の劣化が生じるのを回避し、長期間にわたって良好な表示を得ることができる。
【0057】
[第2の駆動方法(細い白線の表示方法)]
次に、本実施形態の第2の駆動方法について説明する。
図6は、本発明に係る電気泳動表示装置の第2の駆動方法による画素40の状態遷移を示す説明図である。図6(a)及び図6(b)は、5つの画素40の初期状態を示す平面図及び断面図である。図6(c)及び図6(d)は、書き込み動作後の画素40の状態を示す平面図及び断面図である。図7は、本発明の駆動方法におけるタイミングチャートである。
【0058】
本実施形態に係る第2の駆動方法は、図6(a)に示す黒表示された5つの画素40のうち、画素電極SEG1(画素電極35)が属する中央の画素40のみを、図6(c)に示すように白表示(特定階調)に移行させ、かつ、1画素の幅よりも狭い領域を白表示させる駆動方法である。以下、かかる駆動方法について詳細に説明する。
【0059】
図6(a)に示す初期状態は、先の第1の駆動方法と同様に、説明の簡単のために、全ての画素40が黒表示されている状態を示したにすぎず、任意の表示状態を初期状態とすることができる。
【0060】
図6(a)に示す黒表示状態から図6(c)に示す白表示と黒表示とが混在した状態とするには、図7(a)に示すように、画素電極SEG0にハイレベル(15V)の電位を入力する一方、画素電極SEG1にローレベル(例えば0V)の電位を入力する。そして、共通電極COMに、ローレベル(例えば0V)とハイレベル(例えば15V)を周期的に繰り返す矩形波状のパルス波を入力する。
【0061】
これにより、画素電極SEG1の属する画素40では、共通電極COMがハイレベルである期間に、画素電極SEG1と共通電極COMとの電位差により電気泳動素子32が駆動され、画素40が白表示動作する。
一方、画素電極SEG0の属する画素40では、共通電極COMがローレベルである期間に、画素電極SEG0と共通電極COMとの電位差により電気泳動素子32が駆動され、画素40が黒表示動作する。しかし、画素電極SEG0の属する画素40は初期状態が黒表示であるため、表示は変化しない。
【0062】
第2の駆動方法においても、図7(a)に示すように、共通電極COMに入力されるパルス波のうち最終パルスPnが、他のパルスとは異なるパルス幅のパルスとされている。すなわち、最終パルスPnのデューティ比が、前半のパルス幅Pw1に対して後半のパルス幅Pw2が大きいデューティ比(例えば1:3)に設定されている。
【0063】
図6(d)に示すように、画素電極SEG0の属する画素40が黒表示動作する際には、画素電極SEG0よりも共通電極COMの方が広いため、共通電極COMから画素電極SEG0に向かう電界Eは、共通電極COM側で画素電極SEG0よりも広い平面領域に広がり、画素電極SEG0の端部から画素電極SEG1上の一部にわたって形成される。かかる期間では、画素電極SEG0の端部から画素電極SEG1上に広がる斜め電界によって黒色粒子26が駆動され、画素電極SEG1上の一部が黒表示となる。
【0064】
そして、本駆動方法では、図6(d)に示す電界Eが形成される期間(共通電極COMの電位がローレベルである期間)に、共通電極COMへの電位入力を停止する。これにより、図6(c)及び図6(d)に示すように、白表示の線幅が縮小された表示が保持される。
【0065】
さらに本実施形態では、共通電極COMに入力される最終パルスPnの後半部分のパルス幅が長くなっているため、パルス幅Pw1のパルスが入力されたときよりも、図6(d)に示す斜め方向の電界が電気泳動粒子に作用する時間が長くなる。これにより、よりも広い範囲で黒色粒子26が画素電極SEG1上の共通電極COM側に引き寄せられるので、より大きい縮小幅Wwで白表示の線幅が縮小された表示を得ることができる。
【0066】
さらに、本実施形態の駆動方法においても、最終パルスPnの後半のパルス幅Pw2を調整することで、白表示領域の縮小幅Wwを調整することが可能である。すなわち、パルス幅Pw2の長さを伸縮することで、縮小幅Wwを伸縮させることができる。パルス幅Pw2を短くすると、画素電極SEG0の端部から離れた位置の共通電極COM近傍までは黒色粒子26が到達できなくなり、縮小幅Wwが狭くなる。逆に、パルス幅Pw2を長くすると、斜め電界により移動される黒色粒子26を画素電極SEG1のより内側に位置する共通電極COM近傍に到達させることができ、縮小幅Wwを広くすることができる。
【0067】
なお、図6(d)に示す電界Eが広がる領域には限界があるため、パルス幅Pw2の長さが一定時間に達すると、それ以上に縮小幅Wwを伸長させる作用は得られなくなる。縮小幅Wbを調整できる範囲は、電気泳動表示装置100の構造や電気泳動素子32の特性にも依存するが、おおよそ0.5画素分である。したがって、本実施形態の駆動方法によれば、1画素の1/10以下のごく細い線幅から1画素分の幅までの間で自在に線幅を調整することが可能である。
【0068】
また第2の駆動方法においても、第1の駆動方法と同様に、パルス幅Pw2をパルス幅Pw1と同等の長さとしてもよい。この場合にも、画像書き込みの最後に図6(d)に示す電界Eが電気泳動素子32に作用するため、一部の黒色粒子26が画素電極SEG1上の共通電極COM側へ引き寄せられ、かかる状態で電気泳動素子32への電圧印加が停止されるため、画素電極SEG1よりも狭い範囲で白表示された状態が得られる。したがって、パルス幅Pw2の下限値はPw1であり、上限値は縮小幅Wwが変化しなくなる長さである。
【0069】
また、第2の駆動方法においても、図7(b)に示すタイミングチャートを採用することがより好ましい。図7(b)に示すタイミングチャートでは、共通電極COMに入力される最終パルスPnが前半後半ともにパルス幅Pw2のパルスとされている。すなわち、パルスの前半のパルス幅も他のパルスのパルス幅よりも長くされ、デューティ比1:1に変更されている。図7(b)に示すタイミングチャートを採用することで、先に説明した第1の駆動方法と同様に、電気泳動素子32や画素電極35、共通電極37の劣化を抑えることができる。
【0070】
[第3の駆動方法(細いライトグレー線の表示方法)]
本発明の駆動方法によれば、黒表示又は白表示における線幅の縮小のみならず、中間調表示(グレー表示)における線幅の縮小も可能である。本実施形態では、線幅を縮小した中間調表示(特定階調表示)を行う駆動方法について図面を参照しつつ説明する。
【0071】
図8は、本発明に係る電気泳動表示装置の第3の駆動方法による画素40の状態遷移を示す説明図である。図8(a)及び図8(b)は、5つの画素40の初期状態を示す平面図及び断面図である。図8(c)及び図8(d)は、書き込み動作後の画素40の状態を示す平面図及び断面図である。図9は、第3の駆動方法におけるタイミングチャートである。
【0072】
本実施形態の駆動方法は、図9に示すように、白表示ステップS101と、グレー表示ステップS102とを含む。図8(a)及び図8(b)は、白表示ステップS101の実行結果に対応する表示状態を示し、図8(c)及び図8(d)は、グレー表示ステップS102の実行結果に対応する表示状態を示している。
なお、図9では、図面を見やすくするために白表示ステップS101とグレー表示ステップS102とを間隔を空けて表示している。
【0073】
白表示ステップS101は、グレー表示に先立って、グレー表示される部分を含む表示部5の一部領域又は表示部5の全体を白表示するステップである。白表示ステップS101は必要に応じて設けられ、グレー表示される領域が予め白表示されている場合には実行しなくてもよい。また、白表示ステップS101は、グレー表示される領域を白表示することが可能であればよいため、表示部5の全体を白表示させる画像消去ステップを実行してもよく、二値画像(白黒画像)を表示するモノクロ画像表示ステップを実行してもよい。
グレー表示ステップS102は、表示部5において白表示されている領域の画素140を、黒表示動作させることで白表示からグレー表示に移行させるステップである。
【0074】
以下、図8及び図9を参照しつつ、本実施形態の駆動方法について詳細に説明する。
【0075】
まず、白表示ステップS101では、図9に示すように、画素電極SEG0、SEG1の双方に、ローレベルの電位(例えば0V)を入力し、共通電極COMには、ハイレベルとローレベルを周期的に繰り返す矩形波状のパルス波を入力する。これにより、5つの画素40がいずれも白表示状態とされる。
【0076】
次に、グレー表示ステップS102に移行すると、図9に示すように、図8(a)中央の画素電極SEG0にハイレベルの電位(例えば15V)を入力し、他の画素電極SEG1にはローレベルの電位を入力する。また、共通電極COMには、ハイレベルとローレベルを周期的に繰り返す矩形波状のパルス波を入力する。
【0077】
そうすると、画素電極SEG0が属する画素40では、共通電極COMがローレベルである期間に、画素電極SEG0(ハイレベル)と共通電極COMとの電位差により電気泳動素子32が駆動され、画素40が黒表示動作する。
このとき、電気泳動素子32は黒表示動作するが、図9に示すように、グレー表示ステップS102の電圧印加期間は、白表示ステップS101よりも短いため、元が白表示であった画素電極SEG0の属する画素40は黒表示にはならず、淡いグレー表示となる。
【0078】
一方、画素電極SEG1が属する画素40では、共通電極COMがハイレベルである期間に画素電極SEG1と共通電極COMとの間に電位差が生じ、白表示動作する。しかし、これらの画素40はいずれも元が白表示であるため、表示は変化しない。
【0079】
ここで、本実施形態の駆動方法では、図9に示すように、グレー表示ステップS102における共通電極COMへの電位入力停止のタイミングを、共通電極COMに入力される最終パルスPnがハイレベルである期間に設定している。すなわち、画素電極SEG0の属する画素40は実質的に動作せず、画素電極SEG1の属する画素40が白表示動作する期間に、電気泳動素子32への電圧印加を停止する。
【0080】
かかる期間では、図8(d)に示すように、共通電極COMから画素電極SEG1に向かう電界Eが形成されており、かかる電界Eは画素電極SEG0、SEG1側よりも共通電極COM側において面方向に広がった形状である。そして、画素電極SEG0を挟む画素電極SEG1、SEG1の端部から画素電極SEG0側へ延びる斜め電界の存在により、画素電極SEG0上の一部領域においても白色粒子27が共通電極COM側に引き寄せられる。その結果、図示のように画素電極SEG0の属する画素40の一部も白表示され、グレー表示の領域が狭くなる。この状態で電位入力を停止することで、画素40よりも狭い範囲でグレー表示された状態を得ることができる。
【0081】
以上のグレー表示ステップS102により、白表示ステップS101で白表示されていた領域の一部が淡いグレーの中間調表示とされ、中間階調を含む多階調表示が実現される。
【0082】
なお、本実施形態では、最終パルスPnのパルス幅や周期を他のパルスと同等の長さとしている。これは、グレー表示ステップS102では、電圧印加開始直後の電気泳動素子32の反射率変化が大きい期間中に電圧印加を停止させるためである。つまり、かかる期間においては、電気泳動粒子が電界に敏感に応答するため、斜め電界の影響を受けやすい。そのため、最終パルスPnのパルス幅や周期を変更しなくとも、共通電極COMへの電位入力停止のタイミングを制御するのみで、線幅が十分に縮小されたグレー表示を得ることができるのである。
【0083】
ただし、本実施形態の駆動方法において、グレー表示ステップS102における最終パルスPnの後半のパルス幅、又は最終パルスPnの周期を、他のパルスのパルス幅又は周期よりも長くすることが妨げられるものではない。電気泳動素子32の応答特性により効果は異なるが、パルス幅や周期の調整により図8(d)の縮小幅Wgを伸縮させることが可能である。
【0084】
[第4の駆動方法(細いダークグレー線の表示方法)]
図10は、本発明に係る電気泳動表示装置の第4の駆動方法による画素40の状態遷移を示す説明図である。図10(a)及び図10(b)は、5つの画素40の初期状態を示す平面図及び断面図である。図10(c)及び図10(d)は、書き込み動作後の画素40の状態を示す平面図及び断面図である。図11は、本発明の駆動方法におけるタイミングチャートである。
【0085】
本実施形態の駆動方法は、図11に示すように、黒表示ステップS201と、グレー表示ステップS202とを含む。図10(a)及び図10(b)は、黒表示ステップS201の実行結果に対応する表示状態を示し、図10(c)及び図10(d)は、グレー表示ステップS202の実行結果に対応する表示状態を示している。
なお、図11では、図面を見やすくするために黒表示ステップS201とグレー表示ステップS202とを間隔を空けて表示している。
【0086】
黒表示ステップS201は、グレー表示に先立って、グレー表示される部分を含む表示部5の一部領域又は表示部5の全体を黒表示するステップである。黒表示ステップS201は必要に応じて設けられ、グレー表示される領域が予め黒表示されている場合には実行しなくてもよい。また、グレー表示される領域を黒表示することが可能であればよいため、表示部5の全体を黒表示させる画像消去ステップとすることもでき、二値画像を表示するモノクロ画像表示ステップとすることもできる。
グレー表示ステップS202は、黒表示されている領域の画素140を白表示動作させることで黒表示からグレー表示に移行させるステップである。
【0087】
以下、図10及び図11を参照しつつ、本実施形態の駆動方法について詳細に説明する。
【0088】
まず、黒表示ステップS201では、図11に示すように、画素電極SEG0及び画素電極SEG1の双方にハイレベルの電位(例えば15V)を入力し、共通電極COMには、ハイレベルとローレベルを周期的に繰り返す矩形波状のパルス波を入力する。これにより、5つの画素40がいずれも黒表示状態とされる。
【0089】
次に、グレー表示ステップS202に移行すると、図11に示すように、図10(a)中央の画素電極SEG1にローレベルの電位(例えば0V)を入力し、他の画素電極SEG0にはハイレベルの電位を入力する。また、共通電極COMには、ハイレベルとローレベルを周期的に繰り返す矩形波状のパルス波を入力する。
【0090】
そうすると、画素電極SEG1が属する画素40では、共通電極COMがハイレベルである期間に、画素電極SEG1(ローレベル)と共通電極COMとの間に生じる電位差によって電気泳動素子32が駆動され、画素40が白表示動作する。
このとき、電気泳動素子32は白表示動作するが、図11に示すように、グレー表示ステップS202の電圧印加期間は、黒表示ステップS201よりも短いため、元が黒表示であった画素電極SEG1の属する画素40は白表示にはならず、濃いグレー表示となる。
【0091】
一方、画素電極SEG0が属する画素40は、共通電極COMがローレベルである期間に、画素電極SEG0(ハイレベル)と共通電極COMとの間に生じる電位差によって黒表示動作する。しかし、元が黒表示であるこれらの画素40の表示は変化しない。
【0092】
ここで、第4の駆動方法では、図11に示すように、グレー表示ステップS202における共通電極COMへの電位入力停止のタイミングを、共通電極COMに入力される最終パルスPnがローレベルである期間に設定している。すなわち、グレー表示される画素電極SEG1の属する画素40が実質的に動作せず、他の画素電極SEG0の属する画素40が黒表示動作する期間に、電気泳動素子32への電圧印加を停止する。
【0093】
かかる期間では、図10(d)に示すように、画素電極SEG0から共通電極COMに向かう電界Eが形成されており、かかる電界Eは画素電極35側よりも共通電極COM側において面方向に広がった形状である。そして、画素電極SEG1を挟む画素電極SEG0、SEG0の端部から画素電極SEG1側へ延びる斜め電界の存在により、画素電極SEG1上においても黒色粒子26が共通電極COM側に引き寄せられる。その結果、図示のように画素電極SEG1の属する画素40の一部も黒表示され、グレー表示の領域が狭くなる。この状態で電位入力を停止することで、画素40よりも狭い範囲でグレー表示された状態を得ることができる。
【0094】
以上のグレー表示ステップS202により、黒表示ステップS201で黒表示されていた領域の一部が濃いグレーの中間調表示とされ、中間階調を含む多階調表示が実現される。
【0095】
なお、第4の駆動方法においても、先の第3の駆動方法と同様の理由により最終パルスPnのパルス幅や周期を他のパルスと同等の長さとしているが、グレー表示ステップS202における最終パルスPnの後半のパルス幅、又は最終パルスPnの周期を、他のパルスのパルス幅又は周期よりも長くすることが妨げられるものではない。
【0096】
[第5の駆動方法(2種類のグレー線の表示方法)]
図12は、本実施形態の駆動方法による画像表示動作を示す説明図である。図12(a)は、本駆動方法の各ステップにおいて表示に用いられる画像データを概念的に示す図である。図12(b)は、各ステップにおける表示部5の表示状態及び領域ごとの電位状態を示す図である。図13は、本駆動方法におけるタイミングチャートである。
【0097】
本実施形態の駆動方法は、図13に示すように、モノクロ画像表示ステップS301と、第1のグレー表示ステップS302と、第2のグレー表示ステップS303と、グレー線縮小ステップS304とを含む。
【0098】
モノクロ画像表示ステップS301は、グレー表示に先立って、黒表示の領域と白表示の領域とからなる白黒画像(モノクロ画像)を表示部5に表示させるステップである。
第1のグレー表示ステップS302は、モノクロ画像表示ステップS301において黒表示された領域の一部を白表示動作させることで、かかる一部の画素40を黒表示からグレー表示に移行させるステップである。
第2のグレー表示ステップS303は、モノクロ画像表示ステップS301において白表示された領域の一部を黒表示動作させることで、かかる一部の画素40を白表示からグレー表示に移行させるステップである。
グレー線縮小ステップS304は、第1及び第2のグレー表示ステップS302、S303でグレー表示された線の幅(画像要素の輪郭)を縮小させるステップである。
【0099】
以下、図12及び図13を参照しつつ、本実施形態の駆動方法について詳細に説明する。
【0100】
<モノクロ画像表示ステップS301>
まず、モノクロ画像表示ステップS301では、図12(a)に示す画像データD1を用いた画像表示動作が実行される。画像データD1は、表示部5の図示左半分の領域A1に対応する位置に黒表示用の画素データDbを有し、図示右半分の領域A2に対応する位置に白表示用の画素データDwを有するものである。
【0101】
コントローラー63は、画像データD1に基づいて画素電極駆動回路60を駆動し、対応する画素40の画素電極35に電圧を印加する。
図12(b)及び図13に示すように、領域A1の画素40では、画素データDbに基づいて画素電極35にハイレベルの電位(例えば15V)が入力される。また、領域A2の画素40では、画素データDwに基づいて画素電極35にローレベルの電位(例えば0V)が入力される。そして、共通電極37(COM)には、ハイレベルとローレベルを周期的に繰り返す矩形波状のパルス波が入力される。
【0102】
図12(b)に示す領域A1に属する画素40では、共通電極37がローレベルである期間に、画素電極35(ハイレベル)と共通電極37との間に生じる電位差により電気泳動素子32が駆動され、画素40が黒表示される。
一方、領域A2に属する画素40では、共通電極37がハイレベルである期間に、画素電極35(ローレベル)と共通電極37との間に生じる電位差により電気泳動素子32が駆動され、画素40が白表示される。
以上の動作により、図12(b)に示すように、黒表示された領域A1と白表示された領域A2とからなるモノクロ画像が表示部5に表示される。
【0103】
<第1のグレー表示ステップS302>
次に、第1のグレー表示ステップS302に移行すると、コントローラー63に、図12(a)に示す画像データD2が入力される。画像データD2は、黒表示の領域A1の一部に書き込まれるグレー線に対応する位置(領域G1)に白表示用の画素データDwを有し、その他の領域が非動作用の画素データDzを有する画像データである。
【0104】
コントローラー63は、画像データD2に基づいて画素電極駆動回路60を駆動し、対応する画素40の画素電極35に電圧を印加する。
図12(b)に示す領域G1に属する画素40では、画素データDwに基づいて、画素電極35にローレベルの電位が入力される。一方、領域G1以外の領域の画素40では、画素データDzに基づいて、画素電極35にハイレベルとローレベルを周期的に繰り返す矩形波状のパルス波が入力される。また共通電極37にも、ハイレベルとローレベルを周期的に繰り返す矩形波状のパルス波が入力される。
図13に示すように、画素データDzに基づき画素電極35に入力されるパルス波と共通電極37に入力されるパルス波は、同期した同一のパルス波である。
【0105】
領域G1に属する画素40では、共通電極37がハイレベルである期間に、画素電極35(ローレベル)と共通電極37との間に生じる電位差により電気泳動素子32が駆動され、画素40が白表示動作する。
このとき、電気泳動素子32は白表示動作するが、図13に示すように、第1のグレー表示ステップS302の電圧印加期間は、モノクロ画像表示ステップS301よりも短いため、元が黒表示であった画素40は白表示にはならず、濃いグレー表示となる。
【0106】
第5の駆動方法では、第1のグレー表示ステップS302において、領域G1以外の領域に属する画素40の画素電極35は共通電極37と同電位になる。そのため、領域G1と他の領域の境界部分において図10(d)に示した電界Eと同様の電界が形成されることはなく、領域G1以外の領域の表示も変化しない。したがって、第1のグレー表示ステップS302の終了時には、領域G1に表示されるグレー線は画素40よりも広い幅で表示されている。
【0107】
<第2のグレー表示ステップS303>
次に、第2のグレー表示ステップS303に移行すると、コントローラー63に、図12(a)に示す画像データD3が入力される。画像データD3は、白表示の領域A2の一部に書き込まれるグレー線に対応する位置(領域G2)に黒表示用の画素データDbを有し、その他の領域に非動作用の画素データDzを有する画像データである。
【0108】
コントローラー63は、画像データD3に基づいて画素電極駆動回路60を駆動し、対応する画素40の画素電極35に電圧を印加する。
図12(b)に示す領域G2に属する画素40では、画素データDbに基づいて、画素電極35にハイレベルの電位が入力される。一方、領域G2以外の領域の画素40では、画素データDzに基づいて、画素電極35にハイレベルとローレベルを周期的に繰り返す矩形波状のパルス波が入力される。また共通電極37にも、ハイレベルとローレベルを周期的に繰り返す矩形波状のパルス波が入力される。
図13に示すように、画素データDzに基づき画素電極35に入力されるパルス波と共通電極37に入力されるパルス波は、同期した同一のパルス波である。
【0109】
領域G2に属する画素40では、共通電極37がローレベルである期間に、画素電極35(ハイレベル)と共通電極37との間に生じる電位差により電気泳動素子32が駆動され、画素40が黒表示動作する。
このとき、電気泳動素子32は黒表示動作するが、図13に示すように、第2のグレー表示ステップS303の電圧印加期間は、モノクロ画像表示ステップS301よりも短いため、元が白表示であった画素40は黒表示にはならず、淡いグレー表示となる。
【0110】
第5の駆動方法では、第2のグレー表示ステップS303において、領域G2以外の領域に属する画素40の画素電極35は共通電極37と同電位になる。そのため、領域G2と他の領域の境界部分において図8(d)に示した電界Eと同様の電界が形成されることはなく、領域G2以外の領域の表示も変化しない。したがって、第2のグレー表示ステップS303の終了時には、領域G2に表示されるグレー線は画素40よりも広い幅で表示されている。
【0111】
<グレー線縮小ステップS304>
次に、グレー線縮小ステップS304に移行すると、コントローラー63に、図12(a)に示す画像データD4が入力される。画像データD4は、図12(b)に示す領域A1に対応する位置に黒表示用の画素データDbを有し、領域A2に対応する位置に白表示用の画素データDwを有し、領域G1、G2に対応する位置に非動作用の画素データDzを有する画像データである。
【0112】
コントローラー63は、画像データD4に基づいて画素電極駆動回路60を駆動し、対応する画素40の画素電極35に電圧を印加する。
図12(b)に示す領域A1に属する画素40では、画素データDbに基づいて、画素電極35にハイレベルの電位が入力される。領域A2に属する画素40では、画素データDwに基づいて、画素電極35にローレベルの電位が入力される。領域G1及び領域G2に属する画素40では、画素データDzに基づいて、画素電極35にハイレベルとローレベルを周期的に繰り返す矩形波状のパルス波が入力される。また共通電極37にも、ハイレベルとローレベルを周期的に繰り返す矩形波状のパルス波が入力される。
図13に示すように、画素データDzに基づき画素電極35に入力されるパルス波と共通電極37に入力されるパルス波は、同期した同一のパルス波である。
【0113】
領域A1に属する画素40では、共通電極37がローレベルである期間に、画素電極35(ハイレベル)と共通電極37との間に生じる電位差により電気泳動素子32が駆動され、画素40が黒表示動作する。
領域A2に属する画素40では、共通電極37がハイレベルである期間に、画素電極35(ローレベル)と共通電極37との間に生じる電位差により電気泳動素子32が駆動され、画素40が白表示動作する。
一方、領域G1及び領域G2に属する画素40では、画素電極35が共通電極37と同電位になるため、画素電極35と共通電極37との間に電位差は生じず、表示は変化しない。
【0114】
グレー線縮小ステップS304では、表示部5の画素40が上記のように動作するため、共通電極37がローレベルである期間には、領域A1と領域G1との境界部分において、図10(d)に示した電界Eが形成される。この電界Eの作用により、第1のグレー表示ステップS301では画素40よりも広い幅で表示されていた領域G1のグレー線の線幅が縮小される。
【0115】
また、共通電極37がハイレベルである期間には、領域A2と領域G2との境界部分において、図8(d)に示した電界Eが形成される。この電界Eの作用により、第2のグレー表示ステップS303では画素40よりも広い幅で表示されていた領域G2のグレー線の線幅が縮小される。
【0116】
以上のステップS301〜S304により、モノクロ画像上の領域G1、G2に、それぞれの線幅が縮小されたグレー線を表示することができる。
【0117】
以上の第5の駆動方法では、グレー線縮小ステップS304において、第1及び第2のグレー表示ステップS302、S303において画素40よりも広い幅で表示されていたグレー線の線幅を、領域A1、A2の電気泳動素子32に電圧を印加する際に形成される電界Eの作用によって縮小させる。したがって、電界Eの強度あるいは作用期間を変化させることで、グレー線の幅を伸縮させることができる。すなわち、図13に示すグレー線縮小ステップS304のパルス数あるいはパルス幅(周期)によって、領域G1、G2のグレー線の縮小幅を調整することが可能である。
【0118】
なお、第5の駆動方法では、領域G1、G2以外の領域の画素電極35を共通電極37と同電位とすることで領域G1、G2のグレー線を同時に縮小している。そのため、本発明に係る「最終パルス」は、先の第1〜第4の駆動方法とは異なり、グレー線縮小ステップS304において共通電極37に入力される1周期分のパルスが、作用の面で「最終パルス」に相当する。
【0119】
つまり、領域G1のグレー線を縮小させる作用は、共通電極37がローレベルである期間においてのみ得られ、領域G2のグレー線を縮小させる作用は、共通電極37がハイレベルである期間においてのみ得られる。したがって、グレー線縮小ステップS304では、共通電極37に少なくとも1周期分のパルスを入力する必要があり、かかるパルスが、先の第1〜第4の駆動方法における「最終パルス」と同様の作用を奏する。
【0120】
また、上記では、第1のグレー表示ステップS302と第2のグレー表示ステップS303とを実行することで、それぞれ領域G1、G2にグレー線を表示していたが、領域G1、G2のグレー線を1回の表示動作で表示させてもよい。
この場合には、画像データD2と画像データD3とを合成した画像データを用いる。すなわち、領域G1に対応する位置に白表示用の画素データDwを有するとともに、領域G2に対応する位置に黒表示用の画素データDbを有し、その他の領域に非動作用の画素データDzを有する画像データを用いる。
【0121】
画像データD2、D3を合成した画像データを用いて第1のグレー表示ステップS302を実行すると、領域G1、G2のそれぞれにグレー線を表示させることができる。その後、グレー線縮小ステップS304を実行すれば、モノクロ画像上の領域G1、G2に、それぞれの線幅が縮小されたグレー線を表示することができる。
【0122】
また本実施形態では、非動作用の画素データDzに基づき入力するパルス波として、共通電極37と同期したパルス波を用いることとしたが、非動作用の画素データDzに対応する画素電極35をハイインピーダンス状態(Hi−Z)としてもよい。この場合にも、画素電極35と共通電極37との間に電位差が生じないため、上記実施形態と同様に動作させることができる。
【0123】
(変形例)
先の実施形態では、セグメント方式の電気泳動表示装置に本発明に係る駆動方法を適用した場合について説明したが、本発明の駆動方法は、アクティブマトリクス方式の電気泳動表示装置にも問題なく適用することができる。
【0124】
図14は、本発明の駆動方法を好適に用いることができる電気泳動表示装置200の概略構成を示す図である。図15は、電気泳動表示装置200の画素回路を示す図である。
なお、図14及び図15において、先の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付し、それらの詳細な説明は省略することとする。
【0125】
図14に示すように、電気泳動表示装置200は、画素140がマトリクス状に配列された表示部5と、走査線駆動回路161と、データ線駆動回路162と、コントローラー163(制御部)と、共通電源変調回路164と、を備えている。コントローラー163は、上位装置から供給される画像データや同期信号に基づき、電気泳動表示装置200を総合的に制御する。
【0126】
表示部5には、走査線駆動回路161から延びる複数の走査線66と、データ線駆動回路162から延びる複数のデータ線68とが形成されており、それぞれ画素140に接続されている。
また表示部5には、共通電源変調回路164から延びる低電位電源線49、高電位電源線50、共通電極配線55、第1の制御線91、及び第2の制御線92が設けられており、それぞれの配線も画素140と接続されている。共通電源変調回路164は、コントローラー163の制御のもと、上記の配線の各々に供給すべき各種信号を生成する一方、これら各配線の電気的な接続及び切断(ハイインピーダンス化)を行う。
【0127】
走査線駆動回路161は、m本の走査線66(Y1、Y2、…、Ym)を介して各々の画素140に接続されており、コントローラー163の制御のもと、1行目からm行目までの走査線66を順次選択し、画素140に設けられた選択トランジスタ41(図15参照)のオンタイミングを規定する選択信号を、選択した走査線66を介して供給する。
【0128】
データ線駆動回路162は、n本のデータ線68(X1、X2、…、Xn)を介して各々の画素140に接続されており、コントローラー163の制御のもと、画素140の各々に対応する1ビットの画素データを規定する画像信号を画素140に供給する。
なお、本実施形態では、画素データ「0」を規定する場合にはローレベル(L)の画像信号を画素140に供給し、画素データ「1」を規定する場合はハイレベル(H)の画像信号を画素140に供給するものとする。
【0129】
画素140には、図15に示すように、選択トランジスタ41(画素スイッチング素子)と、ラッチ回路(メモリ回路)70と、スイッチ回路80と、電気泳動素子32と、画素電極35と、共通電極37とが設けられている。これらの素子を取り囲むように、走査線66、データ線68、低電位電源線49、高電位電源線50、第1の制御線91、及び第2の制御線92が配置されている。画素40は、ラッチ回路70により画像信号を電位として保持するSRAM(Static Random Access Memory)方式の構成である。
【0130】
選択トランジスタ41は、N−MOS(Negative Metal Oxide Semiconductor)トランジスタである。選択トランジスタ41のゲート端子は走査線66に接続され、ソース端子はデータ線68に接続され、ドレイン端子はラッチ回路70のデータ入力端子N1に接続されている。
【0131】
ラッチ回路70のデータ入力端子N1及びデータ出力端子N2は、スイッチ回路80と接続されている。さらにスイッチ回路80は、画素電極35と接続されるとともに第1及び第2の制御線91、92と接続されている。画素電極35と共通電極37との間に電気泳動素子32が挟持されている。
【0132】
ラッチ回路70は、転送インバータ70tと帰還インバータ70fとを備えている。転送インバータ70t及び帰還インバータ70fはいずれもC−MOSインバータである。転送インバータ70tと帰還インバータ70fとは、互いの入力端子に他方の出力端子が接続されたループ構造を成しており、それぞれのインバータには、高電位電源端子PHを介して接続された高電位電源線50と、低電位電源端子PLを介して接続された低電位電源線49とから電源電圧が供給される。
【0133】
転送インバータ70tは、それぞれのドレイン端子をデータ出力端子N2に接続されたP−MOS(Positive Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ71とN−MOSトランジスタ72とを有している。P−MOSトランジスタ71のソース端子は高電位電源端子PHに接続され、N−MOSトランジスタ72のソース端子は低電位電源端子PLに接続されている。P−MOSトランジスタ71及びN−MOSトランジスタ72のゲート端子(転送インバータ70tの入力端子)は、データ入力端子N1(帰還インバータ70fの出力端子)と接続されている。
【0134】
帰還インバータ70fは、それぞれのドレイン端子をデータ入力端子N1に接続されたP−MOSトランジスタ73とN−MOSトランジスタ74とを有している。P−MOSトランジスタ73及びN−MOSトランジスタ74のゲート端子(帰還インバータ70fの入力端子)は、データ出力端子N2(転送インバータ70tの出力端子)と接続されている。
【0135】
上記構成のラッチ回路70において、ハイレベル(H)の画像信号(画素データ「1」)が記憶されると、ラッチ回路70のデータ出力端子N2からローレベル(L)の信号が出力される。一方、ラッチ回路70にローレベル(L)の画像信号(画素データ「0」)が記憶されると、データ出力端子N2からハイレベル(H)の信号が出力される。
【0136】
スイッチ回路80は、第1のトランスミッションゲートTG1と、第2のトランスミッションゲートTG2とを備えて構成されている。
第1のトランスミッションゲートTG1は、P−MOSトランジスタ81とN−MOSトランジスタ82とからなる。P−MOSトランジスタ81及びN−MOSトランジスタ82のソース端子は第1の制御線91に接続され、P−MOSトランジスタ81及びN−MOSトランジスタ82のドレイン端子は画素電極35に接続されている。また、P−MOSトランジスタ81のゲート端子は、ラッチ回路70のデータ入力端子N1(選択トランジスタ41のドレイン端子)に接続され、N−MOSトランジスタ82のゲート端子は、ラッチ回路70のデータ出力端子N2に接続されている。
【0137】
第2のトランスミッションゲートTG2は、P−MOSトランジスタ83とN−MOSトランジスタ84とからなる。P−MOSトランジスタ83及びN−MOSトランジスタ84のソース端子は第2の制御線92に接続され、P−MOSトランジスタ83及びN−MOSトランジスタ84のドレイン端子は、画素電極35に接続されている。また、P−MOSトランジスタ83のゲート端子は、ラッチ回路70のデータ出力端子N2に接続され、N−MOSトランジスタ84のゲート端子は、ラッチ回路70のデータ入力端子N1に接続されている。
【0138】
ここで、ラッチ回路70にローレベル(L)の画像信号(画素データ「0」)が記憶され、データ出力端子N2からハイレベル(H)の信号が出力された場合、第1のトランスミッションゲートTG1がオン状態となり、第1の制御線91を介して供給される電位S1が画素電極35に入力される。
一方、ラッチ回路70にハイレベル(H)の画像信号(画素データ「1」)が記憶され、データ出力端子N2からローレベル(L)の信号が出力された場合、第2のトランスミッションゲートTG2がオン状態となり、第2の制御線92を介して供給される電位S2が画素電極35に入力される。
【0139】
以上の構成を備えた電気泳動表示装置200では、ラッチ回路70の保持電位に基づいてスイッチ回路80を動作させることで、画素電極35に第1又は第2の制御線91、92を自在に接続することができる。そして、第1の制御線91、第2の制御線92の電位は、ハイインピーダンス状態を含む任意の電位とすることができるので、画素電極35の電位を自在に制御することができる。
【0140】
電気泳動表示装置200では、先に説明した第1から第4の駆動方法を適用することができる。電気泳動表示装置200では画素電極35に入力される電位は第1の制御線91又は第2の制御線92の電位であるから、例えば、図5に示したタイミングチャートにおいて、「SEG0」を第1の制御線91の電位、「SEG1」を第2の制御線92の電位とし、表示部5に転送する画像データにより画素電極35と接続される第1又は第2の制御線91、92を制御することで、第1の駆動方法と同様の動作を実現することができる。第2から第4の駆動方法を採用する場合も同様である。
【0141】
(電子機器)
次に、上記実施形態の電気泳動表示装置を、電子機器に適用した場合について説明する。
図16は、腕時計1000の正面図である。腕時計1000は、時計ケース1002と、時計ケース1002に連結された一対のバンド1003とを備えている。
時計ケース1002の正面には、上記実施形態の電気泳動表示装置100(200)からなる表示部1005と、秒針1021と、分針1022と、時針1023とが設けられている。時計ケース1002の側面には、操作子としての竜頭1010と操作ボタン1011とが設けられている。竜頭1010は、ケース内部に設けられる巻真(図示は省略)に連結されており、巻真と一体となって多段階(例えば2段階)で押し引き自在、かつ、回転自在に設けられている。表示部1005では、背景となる画像、日付や時間などの文字列、あるいは秒針、分針、時針などを表示することができる。
【0142】
図17は電子ペーパー1100の構成を示す斜視図である。電子ペーパー1100は、上記各実施形態の電気泳動表示装置100(200)を表示領域1101に備えている。電子ペーパー1100は可撓性を有し、従来の紙と同様の質感及び柔軟性を有する書き換え可能なシートからなる本体1102を備えて構成されている。
【0143】
図18は、電子ノート1200の構成を示す斜視図である。電子ノート1200は、上記の電子ペーパー1100が複数枚束ねられ、カバー1201に挟まれているものである。カバー1201は、例えば外部の装置から送られる表示データを入力する図示は省略の表示データ入力手段を備える。これにより、その表示データに応じて、電子ペーパーが束ねられた状態のまま、表示内容の変更や更新を行うことができる。
【0144】
以上の腕時計1000、電子ペーパー1100、及び電子ノート1200によれば、表示部に本発明に係る電気泳動表示装置100(200)が採用されているので、表現力に優れた表示部を備える電子機器となっている。
なお、各図に示した電子機器は、本発明に係る電子機器を例示するものであって、本発明の技術範囲を限定するものではない。例えば、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの電子機器の表示部にも、本発明に係る電気泳動表示装置は好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0145】
100,200 電気泳動表示装置、20 マイクロカプセル、32 電気泳動素子、35 画素電極、37 共通電極、40,140 画素、60 画素電極駆動回路、61 画素電極配線、62 共通電極配線、63,163 コントローラー(制御部)、64 共通電極駆動回路、70 ラッチ回路、80 スイッチ回路、91 第1の制御線、92 第2の制御線、161 走査線駆動回路、162 データ線駆動回路、164 共通電源変調回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と第2基板との間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を挟持してなり、複数の画素を配列してなる表示部を備え、各々の前記画素に対応して前記第1基板の前記電気泳動素子側に形成された画素電極と、前記第2基板の前記電気泳動素子側に形成され、複数の前記第1電極と対向する共通電極とを有する電気泳動表示装置の駆動方法であって、
前記画素電極に第1又は第2の電位を入力する一方、前記共通電極に前記第1の電位と前記第2の電位とを周期的に繰り返すパルス波を入力し、
前記共通電極への前記パルス波の入力を、特定階調からなる画像要素と隣り合う前記画素の前記電気泳動素子に電圧を印加する期間に停止することで、前記表示部に、前記特定階調からなる画像要素の輪郭が縮小された画像を表示することを特徴とする電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項2】
前記パルス波の最終パルスにおける後半のパルス幅を、前記パルス波を構成する他のパルスのパルス幅よりも大きくすることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項3】
前記パルス波の最終パルスの周期を、前記パルス波を構成する他のパルスの周期よりも長くすることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項4】
前記パルス幅又は前記周期の長さによって前記輪郭の縮小幅を調整することを特徴とする請求項2又は3に記載の電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項5】
前記特定階調が、階調値が最大である第1の階調、又は階調値が最小である第2の階調であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項6】
前記特定階調が、中間階調であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項7】
第1基板と第2基板との間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子を挟持してなり、複数の画素を配列してなる表示部を備え、各々の前記画素に対応して前記第1基板の前記電気泳動素子側に形成された画素電極と、前記第2基板の前記電気泳動素子側に形成され、複数の前記第1電極と対向する共通電極と、前記画素電極及び前記共通電極に入力する電位を制御する制御部と、を有する電気泳動表示装置であって、
前記制御部は、
前記画素電極に第1又は第2の電位を入力する一方、前記共通電極に前記第1の電位と前記第2の電位とを周期的に繰り返すパルス波を入力し、
前記共通電極への前記パルス波の入力を、特定階調からなる画像要素と隣り合う前記画素の前記電気泳動素子に電圧を印加する期間に停止することで、前記表示部に、前記特定階調からなる画像要素の輪郭が縮小された画像を表示することを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項8】
前記パルス波の最終パルスにおける後半のパルス幅が、前記パルス波を構成する他のパルスのパルス幅よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の電気泳動表示装置。
【請求項9】
前記パルス波の最終パルスの周期が、前記パルス波を構成する他のパルスの周期よりも長いことを特徴とする請求項7に記載の電気泳動表示装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記パルス幅又は前記周期の長さによって前記輪郭の縮小幅を調整することを特徴とする請求項8又は9に記載の電気泳動表示装置。
【請求項11】
前記特定階調が、階調値が最大である第1の階調、又は階調値が最小である第2の階調であることを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項12】
前記特定階調が、中間階調であることを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項13】
請求項7から12のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−211049(P2010−211049A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58285(P2009−58285)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】