説明

電気泳動表示装置及び電子機器

【課題】電気泳動表示装置の電源投入時に、ラッチ回路に保持されている論理値を固有の値とする。
【解決手段】電気泳動表示装置(1)は、互いに対向する画素電極(21)及び共通電極(22)間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子(23)が夫々設けられると共に、ラッチ回路(25)を有する複数の画素(20)からなる表示部(3)を備え、ラッチ回路は、第1導電型トランジスター及び第2導電型トランジスターを夫々含んでなる一対のインバーター(25a、25b)と、一対のインバーターのうち一方のインバーターの第1導電型トランジスター(25a2)と電気的に直列接続された第1トランジスター(25a3)と、他方のインバーターの第2導電型トランジスター(25b1)と電気的に直列接続された第2トランジスター(25b3)とを有し、第1トランジスター及び第2トランジスターを夫々制御する制御回路(10)を更に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置及び、該電気泳動表示装置を備える電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気泳動表示装置では、複数の画素によって次のように表示を行う表示部を有する。各画素では、画素スイッチング素子を介してメモリー回路に画像信号を書き込んだ後、書き込まれた画像信号に応じた画素電位により画素電極が駆動され、共通電極との間に電圧が印加される。これによって画素電極及び共通電極間の電気泳動素子を駆動することにより表示を行う。
【0003】
また、この種の電気泳動表示装置では、表示部に表示されている画像を書き換える際、画像が部分的にしか変化しない場合には、変化する部分に対応する画素のみにおける画素電極及び共通電極間に電圧を印加することにより、画像を部分的に書き換える駆動方法(所謂、部分書き換え駆動)が採用されることがある。
【0004】
例えば特許文献1及び2には、メモリー回路としてSRAM(Static Random Access Memory)を含むラッチ回路を備える電気泳動表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−268853号公報
【特許文献2】特開2003−84314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の背景技術によれば、電気泳動表示装置におけるメモリー回路にデータを書き込む前の電源を投入しただけの段階では、ラッチ回路に保持されている論理値は不定であるため、表示される内容がランダムで無意味なものになってしまうという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、電気泳動表示装置に電源が投入された場合に、ラッチ回路に保持されている論理値を固有の値とすることができる電気泳動表示装置及び電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気泳動表示装置は、上記課題を解決するために、互いに対向する画素電極及び共通電極間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子が夫々設けられると共に、ラッチ回路を有する複数の画素からなる表示部を備え、前記ラッチ回路は、第1導電型トランジスター及び第2導電型トランジスターを夫々含んでなる一対のインバーターと、前記一対のインバーターのうち一方のインバーターの第1導電型トランジスターと電気的に直列接続された第1トランジスターと、前記一対のインバーターのうち他方のインバーターの第2導電型トランジスターと電気的に直列接続された第2トランジスターとを有し、前記第1トランジスター及び前記第2トランジスターを夫々制御する制御回路を更に備える。
【0009】
本発明の電気泳動表示装置によれば、その動作時には、例えば画像信号に基づいて、複数の画素の各々における画素電極及び共通電極間に駆動電圧が印加されることによって、画素電極及び共通電極間に設けられた電気泳動素子が駆動されることで(即ち、電気泳動素子に含まれる電気泳動粒子が画素電極及び共通電極間で移動することで)、表示部に画像が表示される。ここで、複数の画素の各々が有するラッチ回路は、画像信号の電位レベル(例えば、ハイレベル又はローレベル)を記憶可能に構成されている。
【0010】
ラッチ回路は、第1導電型トランジスター及び第2導電型トランジスターを夫々含んでなる一対のインバーターを有している。即ち、本発明に係るラッチ回路は、インバーター2段のラッチ回路である。ここで、「一対のインバーター」は、典型的には、帰還インバーター及び転送インバーターを意味する。
【0011】
ラッチ回路は、更に、一対のインバーターのうち一方のインバーターの第1導電型トランジスターと電気的に直列接続された第1トランジスターと、一対のインバーターのうち他方のインバーターの第2導電型トランジスターと電気的に直列接続された第2トランジスターとを有している。
【0012】
制御回路は、第1トランジスター及び第2トランジスターの各々のゲートと電気的に接続されており、該ゲートに制御信号を送信することで、第1トランジスター及び第2トランジスターを夫々制御する。具体的には例えば、制御回路は、当該電気泳動表示装置の電源投入後、ラッチ回路に電源が投入される前に、第1トランジスター及び第2トランジスターがオフ状態となるような制御信号を送信する。従って、ラッチ回路に電源が投入された場合、第1トランジスター及び第2トランジスターが配置された電流経路は電荷が移動せず、第1トランジスター及び第2トランジスターが配置されていない電流経路のみ電荷が移動する。この結果、ラッチ回路の状態が定められる。
【0013】
より具体的には例えば、「一方のインバーター」、「他方のインバーター」、「第1導電型トランジスター」及び「第2導電型トランジスター」を夫々、「帰還インバーター」、「転送インバーター」、「Pチャネル型トランジスター」及び「Nチャネル型トランジスター」とすると、制御回路により、第1トランジスター及び第2トランジスターが夫々オフ状態とされることで、帰還インバーターのPチャネル型トランジスターと転送インバーターのNチャネル型トランジスターとが夫々オフ状態となる。この場合に、ラッチ回路に電源が投入されると、正電源側からもたらされる正電荷は、転送インバーターのPチャネル型トランジスターを介して、転送インバーターの出力端に蓄えられる。他方、負電源側からもたらされる負電荷は、帰還インバーターのNチャネル型トランジスターを介して、帰還インバーターの出力端に蓄えられる。この結果、帰還インバーターのNチャネル型トランジスターと、転送インバーターのPチャネル型トランジスターとがオン状態となり、ラッチ回路の状態が定められる。
【0014】
以上の結果、本発明に係る電気泳動表示装置によれば、当該電気泳動表示装置に電源が投入された場合に、ラッチ回路に保持されている論理値を固有の値とすることができる。このため、当該電気泳動表示装置の電源投入時(即ち、起動時)に、例えば、表示部全体を白表示又は黒表示とすることができる、或いは任意の画像(例えば当該電気泳動表示装置の製造者のロゴ等)を、表示部に表示することができる。
【0015】
加えて、当該電気泳動表示装置の電源投入時のラッチ回路の状態を定めることができるので、画像信号に基づいた画像を表示部に表示させる際に、書き換える必要のない画素に係るデータ書込を省略することができる。この結果、表示切替時間の短縮や電力消費量の低減を図ることができ、実用上非常に有利である。
【0016】
仮に、上述した第1トランジスター及び第2トランジスターが、ラッチ回路に設けられていないとすると、電気泳動表示装置の電源投入時に表示部に表示される内容がランダムで無意味なものになってしまう。すると、画像信号に基づいた画像を表示部に表示させる際に、全ての画素を書き換えなければならず、表示切替時間が長くなったり、電力消費量が増加したりする可能性があることが、本願発明者の研究により判明している。
【0017】
本発明の電気泳動表示装置の一態様では、前記第1トランジスターは、前記一方のインバーターの第1導電型トランジスターと同一導電型のトランジスターであり、前記第2トランジスターは、前記他方のインバーターの第2導電型トランジスターと同一導電型のトランジスターである。
【0018】
この態様によれば、第1導電型トランジスター及び第2導電型トランジスターを夫々、Pチャネル型トランジスター及びNチャネル型トランジスターとすると、第1トランジスターは、Pチャネル型トランジスターであり、第2トランジスターは、Nチャネル型トランジスターとなる。他方、第1導電型トランジスター及び第2導電型トランジスターを夫々、Nチャネル型トランジスター及びPチャネル型トランジスとすると、第1トランジスターは、Nチャネル型トランジスターであり、第2トランジスターは、Pチャネル型トランジスターとなる。
【0019】
本発明の電気泳動表示装置の他の態様では、前記第1導電型トランジスターは、Pチャネル型トランジスターであり、前記第2導電型トランジスターは、Nチャネル型トランジスターである。
【0020】
この態様によれば、例えば、「一方のインバーター」及び「他方のインバーター」を夫々、「帰還インバーター」及び「転送インバーター」とすると、制御回路により、第1トランジスター及び第2トランジスターが夫々オフ状態とされることで、帰還インバーターのPチャネル型トランジスターと転送インバーターのNチャネル型トランジスターとが夫々オフ状態となる。この場合に、ラッチ回路に電源が投入されると、正電源側からもたらされる正電荷は、転送インバーターのPチャネル型トランジスターを介して、転送インバーターの出力端に蓄えられる。他方、負電源側からもたらされる負電荷は、帰還インバーターのNチャネル型トランジスターを介して、帰還インバーターの出力端に蓄えられる。この結果、帰還インバーターのNチャネル型トランジスターと、転送インバーターのPチャネル型トランジスターとがオン状態となり、ラッチ回路の状態が定められる。
【0021】
或いは、本発明の電気泳動表示装置の他の態様では、前記第1導電型トランジスターは、Nチャネル型トランジスターであり、前記第2導電型トランジスターは、Pチャネル型トランジスターである。
【0022】
この態様によれば、例えば、「一方のインバーター」及び「他方のインバーター」を夫々、「帰還インバーター」及び「転送インバーター」とすると、制御回路により、第1トランジスター及び第2トランジスターが夫々オフ状態とされることで、帰還インバーターのNチャネル型トランジスターと転送インバーターのPチャネル型トランジスターとが夫々オフ状態となる。この場合に、ラッチ回路に電源が投入されると、正電源側からもたらされる正電荷は、帰還インバーターのPチャネル型トランジスターを介して、帰還インバーターの出力端に蓄えられる。他方、負電源側からもたらされる負電荷は、転送インバーターのNチャネル型トランジスターを介して、転送インバーターの出力端に蓄えられる。この結果、帰還インバーターのPチャネル型トランジスターと、転送インバーターのNチャネル型トランジスターとがオン状態となり、ラッチ回路の状態が定められる。
【0023】
本発明の電気泳動表示装置の他の態様では、前記ラッチ回路は、前記一方のインバーターの第2導電型トランジスターと電気的に直列接続された第3トランジスターと、前記他方のインバーターの第1導電型トランジスターと電気的に直列接続された第4トランジスターとを更に有し、前記制御回路は、更に、前記第3トランジスター及び前記第4トランジスターを夫々制御する。
【0024】
この態様によれば、ラッチ回路は、更に、一方のインバーターの第2導電型トランジスターと電気的に直列接続された第3トランジスターと、他方のインバーターの第1導電型トランジスターと電気的に直列接続された第4トランジスターとを有している。
【0025】
制御回路により、例えば、第1トランジスター及び第2トランジスターがオフ状態とされると共に、第3トランジスター及び第4トランジスターがオン状態とされることで、当該電気泳動表示装置の電源投入時のラッチ回路の状態を定めることができる。或いは、制御回路により、第1トランジスター及び第2トランジスターがオン状態とされると共に、第3トランジスター及び第4トランジスターがオフ状態とされることで、当該電気泳動表示装置の電源投入時のラッチ回路の状態を定めることができる。
【0026】
この態様では、前記制御回路は、前記第1トランジスター及び前記第2トランジスター、又は前記第3トランジスター及び前記第4トランジスターが、同時にオンとなるように、前記第1トランジスター、前記第2トランジスター、前記第3トランジスター及び前記第4トランジスターを夫々制御してよい。
【0027】
このように構成すれば、比較的容易にして、当該電気泳動表示装置の電源投入時のラッチ回路の状態を定めることができ、実用上非常に有利である。
【0028】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気泳動表示装置(但し、その各種態様も含む)を備える。
【0029】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明の電気泳動表示装置を具備してなるので、表示切替時間の短縮や電力消費量の低減が可能な、例えば、腕時計、電子ペーパー、電子ノート、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの各種電子機器を実現できる。
【0030】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【図3】第1実施形態に係る画素の駆動方法を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【図5】第3実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【図6】第3実施形態に係る画素の駆動方法を示すフローチャートである。
【図7】電気泳動表示装置を適用した電子機器の一例としての電子ペーパーの構成を示す斜視図である。
【図8】電気泳動表示装置を適用した電子機器の他の例としての電子ノートの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下図面を参照しながら、本発明に係る電気泳動表示装置、及び該電気泳動表示装置を備える電子機器の各実施形態を説明する。
【0033】
<電気泳動表示装置>
<第1実施形態>
本発明に係る電気泳動表示装置の第1実施形態について、図1乃至図3を参照して説明する。
【0034】
(電気泳動表示装置の構成)
先ず、本実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成について、図1を参照して説明する。ここに、図1は、本実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【0035】
図1において、電気泳動表示装置1は、表示部3と、走査線駆動回路60と、データ線駆動回路70と、コントローラー10と、電源回路200とを備えている。
【0036】
表示部3には、m行×n列分の画素20がマトリックス状(二次元平面的)に配列されている。また、表示部3には、m本の走査線40(即ち、走査線Y1、Y2、…、Ym)と、n本のデータ線50(即ち、データ線X1、X2、…、Xn)とが互いに交差するように設けられている。具体的には、m本の走査線40は、行方向(即ち、X方向)に延在し、n本のデータ線50は、列方向(即ち、Y方向)に延在している。m本の走査線40とn本のデータ線50との交差に対応して画素20が配置されている。
【0037】
本発明に係る「制御回路」の一例としてのコントローラー10は、走査線駆動回路60、データ線駆動回路70及び電源回路200の動作を制御する。コントローラー10は、外部から入力される画像データをメモリーに保持し、この画像データに基づいて、各種回路の動作を制御する。コントローラー
走査線駆動回路60は、タイミング信号に基づいて、走査線Y1、Y2、…、Ymの各々に走査信号をパルス的に順次供給する。データ線駆動回路70は、タイミング信号に基づいて、データ線X1、X2、…、Xnに画像信号を供給する。画像信号は、高電位レベル(以下「ハイレベル」という。例えば5V)又は低電位レベル(以下「ローレベル」という。例えば0V)の2値的なレベルをとる。
【0038】
電源回路200は、高電位電源線91に高電位電源電位VDDを供給し、低電位電源線92に低電位電源電位Vssを供給し、共通電位線93に共通電位Vcomを供給する。信号線94は、第1の信号線94a及び第2の信号線94bを含んでなる(図2参照)。電源回路200は、第1の信号線94aに第1の電位S1を供給し、第2の信号線94bに第2の電位S2を供給する。制御線95は、第1の制御線95a及び第2の制御線95bを含んでなる(図2参照)。電源回路200は、第1の制御線95aに第1の制御電位C1を供給し、第2の制御線に第2の制御電位C2を供給する。
【0039】
尚、ここでは図示を省略するが、高電位電源線91、低電位電源線92、共通電位線93及び信号線94の各々は、電気的なスイッチを介して電源回路200に電気的に接続されている。また、各画素20は、高電位電源線91、低電位電源線92、共通電位線93、信号線94及び制御線95に電気的に接続されている。
【0040】
高電位電源線91、低電位電源線92、共通電位線93、信号線94及び制御線95は夫々、典型的には図1中に示すように行方向(X方向)に沿って配列する画素20からなる画素列毎に、画素列に属する画素20に共通に配線される。
【0041】
電源回路200は、電源部210と、共通電位供給回路220と、DC−DCコンバータ230と、発振回路240とを備えている。
【0042】
電源部210は、1次電池或いは2次電池であり、共通電位供給回路220、DC−DCコンバータ230及び発振回路240に電力を供給している。電源部210は、電源電圧Vdc(例えば3V)を出力する。尚、本実施形態では、電源部210は、共通電位供給回路220、DC−DCコンバータ230及び発振回路240にのみ電力を供給しているが、これに限定されず、他の回路、例えばコントローラー10等に電力を供給してもよい。
【0043】
共通電位供給回路220は、共通電位線93にスイッチ93s(図2参照)を介して電気的に接続されており、DC−DCコンバータ230から印加される電圧に基づいて、共通電位Vcomを出力する。本実施形態では、共通電位供給回路220は、第1の信号線94aにスイッチ94as(図2参照)を介して電気的に接続されており、共通電位Vcomを第1の電位S1として第1の信号線94aに出力する。
【0044】
DC−DCコンバータ230は、高電位電源線91にスイッチ91s(図2参照)を介して電気的に接続されており、電源部210から印加された電源電圧Vdc(例えば3V)に基づいて、高電位VH(例えば12V)を生成して高電位電源電位VDDとして出力する。
【0045】
発振回路240は、例えばリングオシレーター等を含んでなる発振回路であり、DC−DCコンバータ230にクロック信号を供給する。発振回路240は、コントローラー10の制御下で、その出力するクロック信号の周波数を変更可能に構成されている。
【0046】
また、電源回路200は、グランドに電気的に接続されることにより低電位VLとされた接地端子(図示省略)を備えており、この接地端子から低電位電源線92に低電位VLを低電位電源電位Vssとして出力している。
【0047】
尚、本実施形態では、第2の信号線94bは、スイッチ94bs(図2参照)を介して、DC−DCコンバータ230及び上述した接地電位と電気的に接続可能に構成されており、第2の信号線94bには、DC−DCコンバータ230から出力される高電位VHと接地端子から出力される低電位VLとが切り替えられて第2の電位S2として出力される。
【0048】
次に、電気泳動表示装置1の画素20における原理的構成について、図2を参照して説明する。ここに、図2は、画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0049】
図2において、画素20は、画素スイッチング用トランジスター24と、本発明に係る「ラッチ回路」の一例としてのメモリー回路25と、スイッチ回路110と、画素電極21と、共通電極22と、電気泳動素子23とを備えている。
【0050】
画素スイッチング用トランジスター24は、例えばNチャネル型トランジスターで構成されている。画素スイッチング用トランジスター24は、そのゲートが走査線40に電気的に接続されており、そのソースがデータ線50に電気的に接続されており、そのドレインがメモリー回路25の入力端子N1に電気的に接続されている。画素スイッチング用トランジスター24は、データ線駆動回路70(図1参照)からデータ線50を介して供給される画像信号を、走査線駆動回路60(図1参照)から走査線40を介してパルス的に供給される走査信号に応じたタイミングで、メモリー回路25の入力端子N1に出力する。
【0051】
メモリー回路25は、本発明に係る「一対のインバーター」の一例としてのインバーター回路25a及び25bを有しており、SRAMとして構成されている。尚、本実施形態に係る「インバーター回路25a」及び「インバーター回路25b」は、夫々、「帰還インバーター」及び「転送インバーター」である。
【0052】
インバーター回路25a及び25bは、互いの入力端子に他方の出力端子が電気的に接続されたループ構造を有している。即ち、インバーター回路25aの入力端子とインバーター回路25bの出力端子とが互いに電気的に接続され、インバーター回路25bの入力端子とインバーター回路25aの出力端子とが互いに電気的に接続されている。インバーター回路25aの入力端子が、メモリー回路25の入力端子N1として構成されており、インバーター回路25aの出力端子が、メモリー回路25の出力端子N2として構成されている。
【0053】
インバーター回路25aは、Nチャネル型トランジスター25a1及びPチャネル型トランジスター25a2を有している。Nチャネル型トランジスター25a1及びPチャネル型トランジスター25a2のゲートは、メモリー回路25の入力端子N1に電気的に接続されている。Nチャネル型トランジスター25a1のソースは、低電位電源電位Vssが供給される低電位電源線92に電気的に接続されている。Pチャネル型トランジスター25a2のソースは、高電位電源電位VDDが供給される高電位電源線91に電気的に接続されている。Nチャネル型トランジスター25a1及びPチャネル型トランジスター25a2のドレインは、メモリー回路25の出力端子N2に電気的に接続されている。
【0054】
インバーター回路25bは、Nチャネル型トランジスター25b1及びPチャネル型トランジスター25b2を有している。Nチャネル型トランジスター25b1及びPチャネル型トランジスター25b2のゲートは、メモリー回路25の出力端子N2に電気的に接続されている。Nチャネル型トランジスター25b1のソースは、低電位電源電位Vssが供給される低電位電源線92に電気的に接続されている。Pチャネル型トランジスター25b2のソースは、高電位電源電位VDDが供給される高電位電源線91に電気的に接続されている。Nチャネル型トランジスター25b1及びPチャネル型トランジスター25b2のドレインは、メモリー回路25の入力端子N1に電気的に接続されている。
【0055】
メモリー回路25は、その入力端子N1にハイレベルの画像信号が入力されると、その出力端子N2から低電位電源電位Vssを出力し、その入力端子N1にローレベルの画像信号が入力されると、その出力端子N2から高電位電源電位VDDを出力する。即ち、メモリー回路25は、入力された画像信号がハイレベルであるかローレベルであるかに応じて、低電位電源電位Vss又は高電位電源電位VDDを出力する。言い換えれば、メモリー回路25は、入力された画像信号を、低電位電源電位Vss又は高電位電源電位VDDとして記憶可能に構成されている。
【0056】
本実施形態では特に、メモリー回路25は、インバーター回路25aのPチャネル型トランジスター25a2と電気的に直列接続されたPチャネル型トランジスター25a3と、インバーター回路25bのNチャネル型トランジスター25b1と電気的に直列接続されたNチャネル型トランジスター25b3とを有している。
【0057】
Pチャネル型トランジスター25a3のゲートは、第1の制御線95aに電気的に接続されており、Nチャネル型トランジスター25b3のゲートは、第2の制御線95bに電気的に接続されている。当該電気泳動表示装置1の動作時に、第1の制御線95a及び第2の制御線95bに、夫々入力された信号がハイレベルであるかローレベルであるかに応じて、Pチャネル型トランジスター25a3及びNチャネル型トランジスター25b3が夫々オンオフされる。
【0058】
尚、本実施形態に係る「Pチャネル型トランジスター25a3」、「Nチャネル型トランジスター25b3」、「Pチャネル型トランジスター」及び「Nチャネル型トランジスター」は、夫々、本発明に係る「第1トランジスター」、「第2トランジスター」、「第1導電型トランジスター」及び「第2導電型トランジスター」の一例である。
【0059】
スイッチ回路110は、第1のトランスミッションゲート111及び第2のトランスミッションゲート112を備えている。
【0060】
第1のトランスミッションゲート111は、Pチャネル型トランジスター111p及びNチャネル型トランジスター111nを備えている。Pチャネル型トランジスター111p及びNチャネル型トランジスター111nのソースは、第1の信号線94aに電気的に接続されている。Pチャネル型トランジスター111p及びNチャネル型トランジスター111nのドレインは、画素電極21に電気的に接続されている。Pチャネル型トランジスター111pのゲートは、メモリー回路25の入力端子N1に電気的に接続されており、Nチャネル型トランジスター111nのゲートは、メモリー回路25の出力端子N2に電気的に接続されている。
【0061】
第2のトランスミッションゲート112は、Pチャネル型トランジスター112p及びNチャネル型トランジスター112nを備えている。Pチャネル型トランジスター112p及びNチャネル型トランジスター112nのソースは、第2の信号線94bに電気的に接続されている。Pチャネル型トランジスター112p及びNチャネル型トランジスター112nのドレインは、画素電極21に電気的に接続されている。Pチャネル型トランジスター112pのゲートは、メモリー回路25の出力端子N2に電気的に接続されており、Nチャネル型トランジスター112nのゲートは、メモリー回路25の入力端子N1に電気的に接続されている。
【0062】
スイッチ回路110は、メモリー回路25に入力される画像信号に応じて、第1の信号線94a及び第2の信号線94bのいずれか一方の制御線を択一的に選択して、その一方の制御線を画素電極21に電気的に接続する。
【0063】
具体的には、メモリー回路25の入力端子N1にハイレベルの画像信号が入力されると、メモリー回路25からNチャネル型トランジスター111n及びPチャネル型トランジスター112pのゲートに低電位電源電位Vssが出力されると共に、Pチャネル型トランジスター111p及びNチャネル型トランジスター112nのゲートに高電位電源電位VDDが出力されることにより、第2のトランスミッションゲート112を構成するPチャネル型トランジスター112p及びNチャネル型トランジスター112nのみがオン状態となり、第1のトランスミッションゲート111を構成するPチャネル型トランジスター111p及びNチャネル型トランジスター111nはオフ状態となる。
【0064】
一方、メモリー回路25の入力端子N1にローレベルの画像信号が入力されると、メモリー回路25からNチャネル型トランジスター111n及びPチャネル型トランジスター112pのゲートに高電位電源電位VDDが出力されると共に、Pチャネル型トランジスター111p及びNチャネル型トランジスター112nのゲートに低電位電源電位Vssが出力されることにより、第1のトランスミッションゲート111を構成するPチャネル型トランジスター111p及びNチャネル型トランジスター111nのみがオン状態となり、第2のトランスミッションゲート112を構成するPチャネル型トランジスター112p及びNチャネル型トランジスター112nはオフ状態となる。つまり、メモリー回路25の入力端子N1にハイレベルの画像信号が入力された場合には、第2のトランスミッションゲート112のみがオン状態となり、一方、メモリー回路25の入力端子N1にローレベルの画像信号が入力された場合には、第1のトランスミッションゲート111のみがオン状態となる。
【0065】
複数の画素20の各々の画素電極21は、スイッチ回路110によって画像信号に応じて択一的に選択された第1の信号線94a又は第2の信号線94bに電気的に接続される。その際、複数の画素20の各々の画素電極21は、スイッチ94s又は95sのオンオフ状態に応じて、第1の電位S1又は第2の電位S2が供給される、或いはハイインピーダンス状態とされる。
【0066】
より具体的には、ローレベルの画像信号が供給される画素20については、第1のトランスミッションゲート111のみがオン状態となり、その画素20の画素電極21は、第1の信号線94aに電気的に接続され、スイッチ94sのオンオフ状態に応じて電源回路200から第1の電位S1が供給され、又は、ハイインピーダンス状態とされる。一方、ハイレベルの画像信号が供給される画素20については、第2のトランスミッションゲート112のみがオン状態となり、その画素20の画素電極21は、第2の信号線94bに電気的に接続され、スイッチ95sのオンオフ状態に応じて電源回路200から第2の電位S2が供給され、又は、ハイインピーダンス状態とされる。
【0067】
画素電極21は、電気泳動素子23を介して共通電極22と互いに対向するように配置されている。共通電極22は、共通電位Vcomが供給される共通電位線93に電気的に接続されている。
【0068】
電気泳動素子23は、電気泳動粒子をそれぞれ含んでなる複数のマイクロカプセルから構成されている。
【0069】
(電気泳動表示装置の動作)
以上のように構成された電気泳動表示装置1に電源が投入されると、メモリー回路25に電源が供給される前に(即ち、高電位電源線91及び低電位電源線92の各々に、高電位電源電位VDD及び低電位電源電位Vssが供給される前に)、第1の制御線95a及び第2の制御線95bの各々に、Pチャネル型トランジスター25a3及びNチャネル型トランジスター25b3を夫々オフ状態とするような制御電位C1及びC2が供給される。
【0070】
このため、メモリー回路25に電源が供給されると、Pチャネル型トランジスター25a3及びNチャネル型トランジスター25b3が配置された電流経路では電荷が移動せず、Pチャネル型トランジスター25a3及びNチャネル型トランジスター25b3が配置されていない電流経路のみ電荷が移動する。すると、高電位電源線91側からもたらされる正電荷は、インバーター回路25bのPチャネル型トランジスター25b2を介して、インバーター回路25bの出力端に蓄えられる。他方、低電位電源線92側からもたらされる負電荷は、インバーター回路25aのNチャネル型トランジスター25a1を介して、インバーター回路25aの出力端に蓄えられる。この結果、インバーター回路25aのNチャネル型トランジスター25a1と、インバーター回路25bのPチャネル型トランジスター25b2とがオン状態となり、メモリー回路25の初期状態が決定される。
【0071】
メモリー回路25の初期状態が決定され、例えば100マイクロ秒等の所定時間が経過した後に、Pチャネル型トランジスター25a3及びNチャネル型トランジスター25b3を夫々オン状態とするような制御電位C1及びC2が供給される。そして、画像信号に基づいて、複数の画素の各々における画素電極21及び共通電極22間に駆動電圧が印加されることによって、画素電極21及び共通電極22間に設けられた電気泳動素子23が駆動されることで、表示部3に画像が表示される。
【0072】
次に、電気泳動表示装置1の駆動方法を図3のフローチャートを参照して説明する。尚、図3は、電気泳動表示装置1の起動シーケンスの一部を構成するものである。
【0073】
図3において、先ず、電気泳動表示装置1に電源が投入されると、第1の制御線95a及び第2の制御線95bの各々に、Pチャネル型トランジスター25a3及びNチャネル型トランジスター25b3(以下、適宜「初期化トランジスター」と称する)を夫々オフ状態とするような制御電位C1及びC2が供給される(ステップS101)。
【0074】
次に、メモリー回路25を含む各回路に電源が供給される(ステップS102)。この際、上述の如く、Nチャネル型トランジスター25a1及びPチャネル型トランジスター25b2がオン状態となり、メモリー回路25の初期状態が決定される。次に、初期化トランジスターをオン状態とするような制御電位C1及びC2が供給される(ステップS103)。
【0075】
次に、データ線50を介してメモリー回路25の入力端子N1に画像信号が入力されると、メモリー回路25は、入力された画像信号に応じた電位状態となる(ステップS104)。続いて、第1の信号線94a及び第2の信号線94bの各々に、第1の電位S1及び第2の電位S2が供給される。そして、画素電極21が、スイッチ回路110によりメモリー回路25に入力された画像信号に応じて択一的に選択された第1の信号線94a又は第2の信号線94bに電気的に接続される(ステップS105)。
【0076】
続いて、共通電極22に、共通電位線93を介して、矩形波状のパルスが入力される(ステップS106)。このパルスはハイレベルとローレベルとを周期的に繰り返すものであり、そのパルス幅は、例えば10〜500ミリ秒程度である。その後、画素20に接続された各配線がハイインピーダンス状態とされることにより、電力を消費することなく表示部3に表示された画像が保持される(ステップS107)。
【0077】
本実施形態では、上記ステップS102において、全ての画素20のメモリー回路25の入力端子N1がハイレベルとなる。従って、上記ステップS104では、メモリー回路25の入力端子N1にローレベルの画像信号を入力する画素20のみにデータを書き込むだけでよい(即ち、部分書き換え駆動すればよい)。言い換えれば、メモリー回路25の入力端子N1にハイレベルの画像信号を入力する画素20については、データを書き込まずにスキップすることができる。従って、全ての画素20にデータを書き込む場合に比べて、電力消費量を低減することができる。
【0078】
<第2実施形態>
本発明の電気泳動表示装置に係る第2実施形態を、図4を参照して説明する。第2実施形態では、メモリー回路の構成が一部異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第2実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図4を参照して説明する。ここに図4は、図2と同趣旨の、本実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0079】
(電気泳動表示装置の構成)
図4において、メモリー回路25は、インバーター回路25aのNチャネル型トランジスター25a1と電気的に直列接続されたNチャネル型トランジスター25a4と、インバーター回路25bのPチャネル型トランジスター25b2と電気的に直列接続されたPチャネル型トランジスター25b4とを有している。
【0080】
Nチャネル型トランジスター25a4のゲートは、第2の制御線95bに電気的に接続されており、Pチャネル型トランジスター25b4のゲートは、第1の制御線95aに電気的に接続されている。当該電気泳動表示装置1の動作時に、第1の制御線95a及び第2の制御線95bに、夫々入力された信号がハイレベルであるかローレベルであるかに応じて、Nチャネル型トランジスター25a4及びPチャネル型トランジスター25b4が夫々オンオフされる。
【0081】
尚、本実施形態に係る「Nチャネル型トランジスター25a4」及び「Pチャネル型トランジスター25b4」は、夫々、本発明に係る「第1トランジスター」及び「第2トランジスター」の他の例である。
【0082】
(電気泳動表示装置の動作)
以上のように構成された電気泳動表示装置1に電源が投入されると、メモリー回路25に電源が供給される前に、第1の制御線95a及び第2の制御線95bの各々に、Nチャネル型トランジスター25a4及びPチャネル型トランジスター25b4を夫々オフ状態とするような制御電位C1及びC2が供給される。
【0083】
このため、メモリー回路25に電源が供給されると、Nチャネル型トランジスター25a4及びPチャネル型トランジスター25b4が配置された電流経路では電荷が移動せず、Nチャネル型トランジスター25a4及びPチャネル型トランジスター25b4が配置されていない電流経路のみ電荷が移動する。すると、高電位電源線91側からもたらされる正電荷は、インバーター回路25aのPチャネル型トランジスター25a2を介して、インバーター回路25aの出力端に蓄えられる。他方、低電位電源線92側からもたらされる負電荷は、インバーター回路25bのNチャネル型トランジスター25b1を介して、インバーター回路25bの出力端に蓄えられる。この結果、インバーター回路25aのPチャネル型トランジスター25a2と、インバーター回路25bのNチャネル型トランジスター25b1とがオン状態となり、メモリー回路25の初期状態が決定される。
【0084】
本実施形態では、上述したステップS102(図3参照)において、全ての画素20のメモリー回路25の入力端子N1がローレベルとなる。従って、上述したステップS104(図3参照)では、メモリー回路25の入力端子N1にハイレベルの画像信号を入力する画素20のみにデータを書き込むだけでよい。言い換えれば、メモリー回路25の入力端子N1にローレベルの画像信号を入力する画素20については、データを書き込まずにスキップすることができる。
【0085】
<第3実施形態>
本発明の電気泳動表示装置に係る第3実施形態を、図5及び図6を参照して説明する。第3実施形態では、メモリー回路の構成が一部異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第3実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図5及び図6を参照して説明する。ここに図5は、図2と同趣旨の、本実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0086】
(電気泳動表示装置の構成)
図5において、メモリー回路25は、インバーター回路25aのPチャネル型トランジスター25a2と電気的に直列接続されたPチャネル型トランジスター25a3と、インバーター回路25aのNチャネル型トランジスター25a1と電気的に直列接続されたNチャネル型トランジスター25a4と、インバーター回路25bのNチャネル型トランジスター25b1と電気的に直列接続されたNチャネル型トランジスター25b3と、インバーター回路25bのPチャネル型トランジスター25b2と電気的に直列接続されたPチャネル型トランジスター25b4とを有している。
【0087】
Pチャネル型トランジスター25a3のゲートは、第1の制御線95aに電気的に接続されており、Nチャネル型トランジスター25a4のゲートは、第3の制御線95cに電気的に接続されており、Nチャネル型トランジスター25b3のゲートは、第4の制御線95dに電気的に接続されており、Pチャネル型トランジスター25b4のゲートは、第2の制御線95bに電気的に接続されている。
【0088】
尚、第3の制御線95c及び第4の制御線95dは、電源回路200(図1参照)に電気的に接続されている。電源回路200は、第3の制御線95cに第3の制御電位C3を供給し、第4の制御線に第4の制御電位C4を供給する。
【0089】
当該電気泳動表示装置1の動作時に、第1の制御線95a、第2の制御線95b、第3の制御線95c及び第4の制御線95dに、夫々入力された信号がハイレベルであるかローレベルであるかに応じて、Pチャネル型トランジスター25a3、Nチャネル型トランジスター25a4、Nチャネル型トランジスター25b3及びPチャネル型トランジスター25b4が夫々オンオフされる。
【0090】
本実施形態では、Pチャネル型トランジスター25a3及びNチャネル型トランジスター25b3が同時にオン状態となり、Nチャネル型トランジスター25a4及びPチャネル型トランジスター25b4が同時にオフ状態となるように、第1の制御線95a、第2の制御線95b、第3の制御線95c及び第4の制御線95dに信号が入力される。或いは、Pチャネル型トランジスター25a3及びNチャネル型トランジスター25b3が同時にオフ状態となり、Nチャネル型トランジスター25a4及びPチャネル型トランジスター25b4が同時にオン状態となるように、第1の制御線95a、第2の制御線95b、第3の制御線95c及び第4の制御線95dに信号が入力される。
【0091】
尚、本実施形態に係る「Nチャネル型トランジスター25a4」及び「Pチャネル型トランジスター25b4」は、夫々、本発明に係る「第3トランジスター」及び「第4トランジスター」の一例である。
【0092】
(電気泳動表示装置の動作)
以上のように構成された電気泳動表示装置1に電源が投入されると、メモリー回路25に電源が供給される前に、第1の制御線95a、第2の制御線95b、第3の制御線95c及び第4の制御線95dの各々に、Pチャネル型トランジスター25a3及びNチャネル型トランジスター25b3を夫々オン状態とし、Nチャネル型トランジスター25a4及びPチャネル型トランジスター25b4を夫々オフ状態とするような制御電位C1、C2、C3及びC4が供給される。
【0093】
この場合、メモリー回路25に電源が供給されると、Nチャネル型トランジスター25a4及びPチャネル型トランジスター25b4が配置された電流経路では電荷が移動せず、Pチャネル型トランジスター25a3及びNチャネル型トランジスター25b3が配置された電流経路のみ電荷が移動する。すると、高電位電源線91側からもたらされる正電荷は、インバーター回路25aのPチャネル型トランジスター25a3及びPチャネル型トランジスター25a2を介して、インバーター回路25aの出力端に蓄えられる。他方、低電位電源線92側からもたらされる負電荷は、インバーター回路25bのNチャネル型トランジスター25b3及びNチャネル型トランジスター25b1を介して、インバーター回路25bの出力端に蓄えられる。この結果、インバーター回路25aのPチャネル型トランジスター25a2と、インバーター回路25bのNチャネル型トランジスター25b1とがオン状態となり、メモリー回路25の初期状態が決定される。
【0094】
或いは、電気泳動表示装置1に電源が投入されると、メモリー回路25に電源が供給される前に、第1の制御線95a、第2の制御線95b、第3の制御線95c及び第4の制御線95dの各々に、Pチャネル型トランジスター25a3及びNチャネル型トランジスター25b3を夫々オフ状態とし、Nチャネル型トランジスター25a4及びPチャネル型トランジスター25b4を夫々オン状態とするような制御電位C1、C2、C3及びC4が供給される。
【0095】
この場合、メモリー回路25に電源が供給されると、Pチャネル型トランジスター25a3及びNチャネル型トランジスター25b3が配置された電流経路では電荷が移動せず、Nチャネル型トランジスター25a4及びPチャネル型トランジスター25b4が配置された電流経路のみ電荷が移動する。すると、高電位電源線91側からもたらされる正電荷は、インバーター回路25bのPチャネル型トランジスター25b4及びPチャネル型トランジスター25b2を介して、インバーター回路25bの出力端に蓄えられる。他方、低電位電源線92側からもたらされる負電荷は、インバーター回路25aのNチャネル型トランジスター25a4及びNチャネル型トランジスター25a1を介して、インバーター回路25aの出力端に蓄えられる。この結果、インバーター回路25aのNチャネル型トランジスター25a1と、インバーター回路25bのPチャネル型トランジスター25b2とがオン状態となり、メモリー回路25の初期状態が決定される。
【0096】
次に、電気泳動表示装置1の駆動方法を図6のフローチャートを参照して説明する。尚、図6は、図3と同様に、電気泳動表示装置1の起動シーケンスの一部を構成するものである。
【0097】
図6において、先ず、電気泳動表示装置1に電源が投入されると、第1の制御線95a、第2の制御線95b、第3の制御線95c及び第4の制御線95dの各々に、(i)Pチャネル型トランジスター25a3及びNチャネル型トランジスター25b3を夫々オン状態とし、Nチャネル型トランジスター25a4及びPチャネル型トランジスター25b4を夫々オフ状態とするような、或いは、(ii)Pチャネル型トランジスター25a3及びNチャネル型トランジスター25b3を夫々オフ状態とし、Nチャネル型トランジスター25a4及びPチャネル型トランジスター25b4を夫々オン状態とするような、制御電位C1、C2、C3及びC4が供給される(ステップS201)。
【0098】
次に、メモリー回路25を含む各回路に電源が供給される(ステップS202)。この際、上述の如く、(i)Pチャネル型トランジスター25a2及びNチャネル型トランジスター25b1がオン状態となり、或いは、(ii)Nチャネル型トランジスター25a1及びPチャネル型トランジスター25b2がオン状態となり、メモリー回路25の初期状態が決定される。
【0099】
次に、初期化トランジスター(即ち、Pチャネル型トランジスター25a3、Nチャネル型トランジスター25a4、Nチャネル型トランジスター25b3及びPチャネル型トランジスター25b4)を全てオン状態とするような制御電位C1、C2、C3及びC4が供給される(ステップS203)。次に、データ線50を介してメモリー回路25の入力端子N1に画像信号が入力されると、メモリー回路25は、入力された画像信号に応じた電位状態となる(ステップS204)。
【0100】
続いて、第1の信号線94a及び第2の信号線94bの各々に、第1の電位S1及び第2の電位S2が供給される。そして、画素電極21が、スイッチ回路110によりメモリー回路25に入力された画像信号に応じて択一的に選択された第1の信号線94a又は第2の信号線94bに電気的に接続される(ステップS205)。
【0101】
続いて、共通電極22に、共通電位線93を介して、矩形波状のパルスが入力される(ステップS206)。その後、画素20に接続された各配線がハイインピーダンス状態とされることにより、電力を消費することなく表示部3に表示された画像が保持される(ステップS207)。
【0102】
本実施形態では、上記ステップS202において、(i)全ての画素20のメモリー回路25の入力端子N1をローレベルとすること、(ii)全ての画素20のメモリー回路25の入力端子N1をハイレベルとすること、或いは(iii)メモリー回路25の入力端子N1がハイレベルである画素20と、メモリー回路25の入力端子N1がローレベルである画素20とを混在させること、が可能である。
【0103】
全ての画素20のメモリー回路25の入力端子N1をローレベルとした場合には、上記ステップS204において、メモリー回路25の入力端子N1にローレベルの画像信号を入力する画素20については、データを書き込まずにスキップすることができる。或いは、全ての画素20のメモリー回路25の入力端子N1をハイレベルとした場合には、上記ステップS204において、メモリー回路25の入力端子N1にハイレベルの画像信号を入力する画素20については、データを書き込まずにスキップすることができる。
【0104】
メモリー回路25の入力端子N1がハイレベルである画素20と、メモリー回路25の入力端子N1がローレベルである画素20とを混在させる場合、典型的には、当該電気泳動表示装置1の設計時に、メモリー回路25の入力端子N1がハイレベルである画素20とメモリー回路25の入力端子N1がローレベルである画素20とが定められる。
【0105】
このため、上記ステップS204において、メモリー回路25の入力端子N1の電位が変化する画素20のみにデータを書き込むだけでよい。言い換えれば、メモリー回路25の入力端子N1の電位が変化しない画素20については、データを書き込まずにスキップすることができる。
【0106】
尚、当該電気泳動表示装置1の設計時に、例えばタイトルロゴが表示部3(図1参照)に表示されるように、メモリー回路25の入力端子N1がハイレベルである画素20とメモリー回路25の入力端子N1がローレベルである画素20とを定めれば、当該電気泳動表示装置1の起動時に、即時タイトルロゴを表示することができる。
【0107】
また、当該電気泳動表示装置1が電池駆動である場合に、例えば電源残量低下の警告表示が表示部3に表示されるように、メモリー回路25の入力端子N1がハイレベルである画素20とメモリー回路25の入力端子N1がローレベルである画素20とを定め、電源電圧が規定電圧を下回った際に、表示部3の電源を止めると共に、各種駆動回路やメモリー11等の主要でない回路をスタンバイ化する。その後、表示部3の電源を入れ、メモリー回路25の初期データ(ここでは、電源残量低下の警告表示)を発生させれば、ユーザに警告を与えることができる。このように構成すれば、例えば無線による電力駆動や太陽電池等の、使用環境によっては電源の供給が突然停止してしまう装置であっても、比較的少ない電力量で警告表示を表示可能とすることができる。
【0108】
<電子機器>
次に、上述した電気泳動表示装置を適用した電子機器について、図7及び図8を参照して説明する。以下では、上述した電気泳動表示装置を電子ペーパー及び電子ノートに適用した場合を例にとる。
【0109】
図7は、電子ペーパー1400の構成を示す斜視図である。
【0110】
図7に示すように、電子ペーパー1400は、上述した実施形態に係る電気泳動表示装置を表示部1401として備えている。電子ペーパー1400は可撓性を有し、従来の紙と同様の質感及び柔軟性を有する書き換え可能なシートからなる本体1402を備えて構成されている。
【0111】
図8は、電子ノート1500の構成を示す斜視図である。
【0112】
図8に示すように、電子ノート1500は、図7で示した電子ペーパー1400が複数枚束ねられ、カバー1501に挟まれているものである。カバー1501は、例えば外部の装置から送られる表示データを入力するための表示データ入力手段(図示せず)を備える。これにより、その表示データに応じて、電子ペーパーが束ねられた状態のまま、表示内容の変更や更新を行うことができる。
【0113】
上述した電子ペーパー1400及び電子ノート1500は、上述した実施形態に係る電気泳動表示装置を備えるので、消費電力を低減しつつ、高品質な画像表示を行うことが可能である。
【0114】
尚、これらの他に、腕時計、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの電子機器の表示部に、上述した本実施形態に係る電気泳動表示装置を適用することができる。
【0115】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気泳動表示装置及び電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0116】
1…電気泳動表示装置、3…表示部、10…コントローラー、20…画素、21…画素電極、22…共通電極、23…電気泳動素子、25…メモリー回路、25a、25b…インバーター回路、25a2、25a3、25b2、25b4…Pチャネル型トランジスター、25a1、25a4、25b1、25b4…Nチャネル型トランジスター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する画素電極及び共通電極間に電気泳動粒子を含む電気泳動素子が夫々設けられると共に、ラッチ回路を有する複数の画素からなる表示部を備え、
前記ラッチ回路は、
第1導電型トランジスター及び第2導電型トランジスターを夫々含んでなる一対のインバーターと、
前記一対のインバーターのうち一方のインバーターの第1導電型トランジスターと電気的に直列接続された第1トランジスターと、
前記一対のインバーターのうち他方のインバーターの第2導電型トランジスターと電気的に直列接続された第2トランジスターと
を有し、
前記第1トランジスター及び前記第2トランジスターを夫々制御する制御回路を更に備える
ことを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項2】
前記第1トランジスターは、前記一方のインバーターの第1導電型トランジスターと同一導電型のトランジスターであり、
前記第2トランジスターは、前記他方のインバーターの第2導電型トランジスターと同一導電型のトランジスターである
ことを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示装置。
【請求項3】
前記第1導電型トランジスターは、Pチャネル型トランジスターであり、
前記第2導電型トランジスターは、Nチャネル型トランジスターである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気泳動表示装置。
【請求項4】
前記第1導電型トランジスターは、Nチャネル型トランジスターであり、
前記第2導電型トランジスターは、Pチャネル型トランジスターである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気泳動表示装置。
【請求項5】
前記ラッチ回路は、
前記一方のインバーターの第2導電型トランジスターと電気的に直列接続された第3トランジスターと、
前記他方のインバーターの第1導電型トランジスターと電気的に直列接続された第4トランジスターと
を更に有し、
前記制御回路は、更に、前記第3トランジスター及び前記第4トランジスターを夫々制御する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記第1トランジスター及び前記第2トランジスター、又は前記第3トランジスター及び前記第4トランジスターが、同時にオンとなるように、前記第1トランジスター、前記第2トランジスター、前記第3トランジスター及び前記第4トランジスターを夫々制御することを特徴とする請求項5に記載の電気泳動表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−204550(P2010−204550A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52226(P2009−52226)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】