説明

電気泳動表示装置及び電気泳動表示装置の駆動方法、並びに電子機器

【課題】電気泳動表示装置の駆動制御回路を共有可能とする。
【解決手段】電気泳動表示装置(1)は、互いに交差するように設けられた複数の走査線(40)及び複数のデータ線(50)の交差に対応して夫々規定された複数の画素(20)からなる表示部(3)を備える。複数の画素の各々は、互いに対向して配置された画素電極(21)及び共通電極(22)と、前記画素電極及び前記共通電極間に配置され、前記画素電極と前記共通電極との間の電位差に応じて分極が与えられる、電気泳動粒子を含む電気泳動素子(23)と、画素スイッチング素子(24)と、分極を与えられた電気泳動素子の分極状態を読み出す分極読出手段(26)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置及び、該電気泳動表示装置の駆動方法、並びに該電気泳動表示装置を備える電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気泳動表示装置では、複数の画素によって次のように表示を行う表示部を有する。各画素では、画素スイッチング素子を介してメモリー回路に画像信号を書き込んだ後、書き込まれた画像信号に応じた画素電位により画素電極が駆動され、共通電極との間に電圧が印加される。これによって画素電極及び共通電極間の電気泳動素子を駆動することにより表示を行う。
【0003】
例えば特許文献1には、表示部に表示される画像を第1画像から第2画像に書き換える際に、第1画像を表示している期間に、例えば白表示であった領域に対応する画素電極及び共通電極間には電圧を印加せず、黒表示であった領域に対応する画素電極及び共通電極間にのみ電圧を印加して、全白表示にする期間を設けた電気泳動表示装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、次の画像データがロードされる際に、画素の現在の光学状態及び前の光学状態を記憶する画像メモリーを備える電気泳動表示装置の一例としての電気泳動ディスプレイが開示されている。ここでは特に、次の画像データがロードされる際には、画素の現在の光学状態及び前の光学状態に従って、電気泳動ディスプレイを駆動するための波形が選択されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−206267号公報
【特許文献2】特開2007−531000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の背景技術によれば、電気泳動表示装置の表示部に現在表示されている画像を規定するデータにアクセスしなければ、表示部の全面が初期化されるリセット状態に移行できない。このため、電気泳動表示装置は、現在表示されている画像を規定するデータを記憶する、例えば不揮発性メモリー等を備えなければならない。すると、電気泳動表示装置の駆動制御回路を共有化して、駆動制御回路を有しない電気泳動表示装置を夫々含む複数の表示体を、該共有化された駆動制御回路に付け替えることで、複数の表示体の各々に表示される画像を書き換えることは、極めて困難であるという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、電気泳動表示装置の駆動制御回路を共有可能とすることができる電気泳動表示装置及び電気泳動表示装置の駆動方法、並びに電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気泳動表示装置は、上記課題を解決するために、互いに交差するように設けられた複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応して夫々規定された複数の画素からなる表示部を備え、前記複数の画素の各々は、互いに対向して配置された画素電極及び共通電極と、前記画素電極及び前記共通電極間に配置され、前記画素電極と前記共通電極との間の電位差に応じて分極が与えられる、電気泳動粒子を含む電気泳動素子と、画素スイッチング素子と、前記分極を与えられた電気泳動素子の分極状態を読み出し可能な分極読出手段とを有する。
【0009】
本発明の電気泳動表示装置によれば、その動作時に、画素信号に基づいて、複数の画素の各々における画素電極及び共通電極間に駆動電圧が印加されることによって、画素電極及び共通電極間に設けられた電気泳動素子が駆動されることで(即ち、電気泳動素子に含まれる電気泳動粒子が画素電極及び共通電極間において移動することで)、表示部に画像信号に対応する画像が表示される。
【0010】
分極読出手段は、画素電極と共通電極との間の電位差に応じて分極が与えられた電気泳動素子の分極状態を読み出すことができる。ここで、「画素電極と共通電極との間の電位差に応じて分極が与えられた」とは、画素電極と共通電極との間に生じる電界に起因して、正又は負に帯電した電気泳動粒子が、画素電極側又は共通電極側に動かされたことを意味する。また、「電気泳動素子の分極状態」とは、画素電極及び共通電極間において電気泳動粒子が移動した結果としての分極の程度を意味する。
【0011】
本願発明者の研究によれば、電気泳動表示装置をリセット状態に移行させるためには、現在表示部に表示されている画像を規定するデータを取得しなければならない。このため、電気泳動表示装置の大多数では、現在表示部に表示されている画像を規定するデータを記憶する不揮発性メモリー等を備えている。
【0012】
ところで、駆動制御回路を有しない電気泳動表示装置を夫々含む複数の表示体で、一つの電気泳動表示装置の駆動制御回路を共有しようとする場合、該駆動制御回路は、複数の表示体の各々を識別し、更に、該複数の表示体の各々に現在表示されている画像を規定するデータを記憶していなければならない。しかしながら、複数の表示体の上限は無いため、全ての表示体の各々に現在表示されている画像を規定するデータを記憶することは、極めて困難である。他方、駆動制御回路にデータを記憶せずに、表示体に表示されている画像を書き換える際に、先ず画素の状態(即ち、電気泳動素子の状態)を検出するために、画素電極及び共通電極間に電圧を印加してしまうと、表示画像が乱れてしまうことが判明している。
【0013】
しかるに本発明の電気泳動表示装置では、複数の画素の各々に、画素電極と共通電極との間の電位差に応じて分極が与えられた電気泳動素子の分極状態を読み出し可能な分極読出手段が設けられている。このため、表示部に表示されている画像を書き換える際に、先ず、分極読出手段から分極状態を取得することにより、表示部に現在表示されている画像を規定するデータを取得することができる。従って、当該電気泳動表示装置の駆動制御回路は、表示部に現在表示されている画像を規定するデータを記憶するための、例えば不揮発性メモリー等を備える必要はない。加えて、分極状態を取得する際に画素電極及び共通電極間には電圧が印加されないので、表示されている画像には何らの影響も与えない。
【0014】
このように、本発明に係る電気泳動表示装置は、各画素の電気泳動素子の分極状態を読み出し可能な分極読出手段が各画素に設けられているため、駆動制御回路と表示部とを分離して所有し、画像の書き換えが必要な場合に駆動制御回路と表示部とを接続すれば、表示部に表示されている画像を書き換えることができる。従って、電気泳動表示装置の駆動制御回路を共有可能とすることができる。
【0015】
本発明の電気泳動表示装置の一態様では、前記画素スイッチング素子を介して画像信号を書き込み可能なメモリー回路を更に備える。
【0016】
この態様によれば、メモリー回路は、画素スイッチング素子を介して画像信号を書き込み可能である。即ち、メモリー回路の出力に応じて画素電極及び共通電極間の電位差が決定される。
【0017】
本発明の電気泳動表示装置の他の態様では、前記分極読出手段は、スタティックメモリー回路を含む。
【0018】
この態様によれば、比較的容易にして、電気泳動素子の分極状態の読み出し及び保持が可能であり、実用上非常に有利である。
【0019】
或いは、本発明の電気泳動表示装置の他の態様では、前記分極読出手段は、強誘電体メモリーを含む。
【0020】
この態様によれば、比較的容易にして、電気泳動素子の分極状態の読み出し及び保持が可能であり、実用上非常に有利である。加えて、回路構造を比較的簡素にすることができると共に、当該電気泳動表示装置の小型化を図ることができる。
【0021】
本発明の電気泳動表示装置の駆動方法は、上記課題を解決するために、互いに交差するように設けられた複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応して夫々規定された複数の画素からなる表示部を備え、前記複数の画素の各々は、互いに対向して配置された画素電極及び共通電極と、前記画素電極及び前記共通電極間に配置され、前記画素電極と前記共通電極との間の電位差に応じて分極が与えられる、電気泳動粒子を含む電気泳動素子と、画素スイッチング素子と、前記分極を与えられた電気泳動素子の分極状態を読み出し可能な分極読出手段とを有する電気泳動表示装置の駆動方法であって、前記分極読出手段に、前記分極を与えられた電気泳動素子の分極状態を読み出させる分極読出工程と、前記複数の走査線のうち一の走査線を選択して、前記複数の画素のうち前記選択された一の走査線に対応する画素の分極読出手段により読み出された分極状態を、前記複数のデータ線を介して取得する分極状態取得工程とを備える。
【0022】
本発明の電気泳動表示装置の駆動方法によれば、上述した本発明の電気泳動表示装置と同様に、電気泳動表示装置の駆動制御回路を共有可能とすることができる。
【0023】
分極読出工程において、分極読出手段により、分極を与えられた電気泳動素子の分極状態が読み出される。この際、分極読出手段には、例えば1V等の分極状態を読み出すための電圧が印加される。
【0024】
続いて、分極状態取得工程において、複数の走査線のうち一の走査線を選択して、複数の画素のうち選択された一の走査線に対応する画素の分極読出手段により読み出された分極状態が複数のデータ線を介して取得される。この際、分極読出手段には、例えば15V等の分極読出手段により読み出された分極状態を取得するための電圧が印加される。
【0025】
尚、表示部に表示される画像が3階調以上の階調画像である場合には、分極読出工程において分極読出手段に印加される電圧を、例えば0.25V、0.5V、0.75V、1V等と変化させながら、分極読出工程と分極状態取得工程とを繰り返し行えばよい。
【0026】
尚、本発明の電気泳動表示装置の駆動方法においても、上述した本発明の電気泳動表示装置と同様の各種態様を採ることが可能である。
【0027】
本発明の電気泳動表示装置の駆動方法の一態様では、前記表示部に表示される画像の階調数に応じて、前記分極読出工程及び前記分極状態取得工程の各々を交互に繰り返す。
【0028】
この態様によれば、表示部に表示されている画像が3階調以上の階調画像であったとしても、比較的容易に電気泳動素子の分極状態を取得して、表示部に表示されている画像を規定するデータを取得することができる。
【0029】
尚、分極読出工程及び分極状態取得工程を繰り返す回数は、階調画像の階調数をn(nは3以上の自然数)とすると、少なくとも(n−1)回となる。
【0030】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気泳動表示装置(但し、その各種態様も含む)を備える。
【0031】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明の電気泳動表示装置を具備してなるので、駆動制御回路を共有可能な、例えば、腕時計、電子ペーパー、電子ノート、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの各種電子機器を実現できる。
【0032】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る画素の構成を概念的に示す概念図である。
【図3】第1実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【図4】第2実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【図5】第3実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【図6】第3実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【図7】電気泳動表示装置を適用した電子機器の一例としての電子ペーパーの構成を示す斜視図である。
【図8】電気泳動表示装置を適用した電子機器の他の例としての電子ノートの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下図面を参照しながら、本発明に係る電気泳動表示装置、及び該電気泳動表示装置を備える電子機器の各実施形態を説明する。
【0035】
<電気泳動表示装置>
本発明に係る電気泳動表示装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0036】
<第1実施形態>
本発明に係る電気泳動表示装置の第1実施形態について、図1乃至図3を参照して説明する。
【0037】
(電気泳動表示装置の構成)
先ず、本実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成について、図1を参照して説明する。ここに、図1は、本実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【0038】
図1において、電気泳動表示装置1は、表示部3と、走査線駆動回路60と、データ線駆動回路70と、データ線読出し回路80と、コントローラー10と、電源回路200とを備えている。
【0039】
表示部3には、m行×n列分の画素20がマトリクス状(二次元平面的)に配列されている。また、表示部3には、m本の走査線40(即ち、走査線Y1、Y2、…、Ym)と、n本のデータ線50(即ち、データ線X1、X2、…、Xn)とが互いに交差するように設けられている。具体的には、m本の走査線40は、行方向(即ち、X方向)に延在し、n本のデータ線50は、列方向(即ち、Y方向)に延在している。m本の走査線40とn本のデータ線50との交差に対応して画素20が配置されている。
【0040】
コントローラー10は、走査線駆動回路60、データ線駆動回路70、データ線読出し回路80及び電源回路200の動作を制御する。
【0041】
走査線駆動回路60は、タイミング信号に基づいて、走査線Y1、Y2、…、Ymの各々に走査信号をパルス的に順次供給する。データ線駆動回路70は、タイミング信号に基づいて、データ線X1、X2、…、Xnに画像信号を供給する。画像信号は、高電位レベル(以下「ハイレベル」という。例えば5V)又は低電位レベル(以下「ローレベル」という。例えば0V)の2値的なレベルをとる。
【0042】
電源回路200は、高電位電源線91に高電位電源電位VDD及び電位Vrefの一方を供給し、低電位電源線92に低電位電源電位Vssを供給し、共通電位線93に共通電位Vcomを供給する。ここで、電位Vrefは、電気泳動素子23の分極状態を記憶するための、又は該記憶された分極状態を出力するための電位である。
【0043】
尚、ここでは図示を省略するが、高電位電源線91、低電位電源線92及び共通電位線93の各々は、電気的なスイッチを介して電源回路200に電気的に接続されている。また、各画素20は、高電位電源線91、低電位電源線92及び共通電位線93に電気的に接続されている。高電位電源線91、低電位電源線92及び共通電位線93は夫々、典型的には図1中に示すように行方向(X方向)に沿って配列する画素20からなる画素列毎に、画素列に属する画素20に共通に配線される。
【0044】
また、電源回路200は、グランドに電気的に接続されることにより低電位VLとされた接地端子(図示省略)を備えており、この接地端子から低電位電源線92に低電位VLを低電位電源電位Vssとして出力している。
【0045】
次に、電気泳動表示装置1の画素20の構成について、図2を参照して説明する。ここに、図2は、本実施形態に係る画素の構成を概念的に示す概念図である。
【0046】
図2おいて、画素20は、画素スイッチング用トランジスター24と、画素電極21と、共通電極23と、電気泳動素子23と、分極読出手段とを備えている。即ち、本実施形態に係る画素20は、1トランジスター・1キャパシタ(1T1C)型の画素に分極読出手段が付加されて構成されている。
【0047】
次に、電気泳動表示装置1の画素20における原理的構成について、図3を参照して説明する。ここに、図3は、本実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0048】
図3において、画素20は、画素スイッチング用トランジスター24と、メモリー回路25と、画素電極21と、共通電極22と、電気泳動素子23とを備えている。ここに、本実施形態に係る「画素スイッチング用トランジスター24」及び「メモリー回路25」は、夫々、本発明に係る「スイッチング素子」及び「分極読出手段」の一例である。
【0049】
画素スイッチング用トランジスター24は、例えばN型トランジスターで構成されている。画素スイッチング用トランジスター24は、そのゲートが走査線40に電気的に接続されており、そのソースがデータ線50に電気的に接続されており、そのドレインがメモリー回路25の端子N1及びスイッチ23sを介して画素電極21に電気的に接続されている。画素スイッチング用トランジスター24は、データ線駆動回路70(図1参照)からデータ線50を介して供給される画像信号を、走査線駆動回路60(図1参照)から走査線40を介してパルス的に供給される走査信号に応じたタイミングで、メモリー回路25の端子N1に出力する。尚、この際、高電位電源線91には高電位電源電位VDDが供給される。
【0050】
メモリー回路25は、インバータ回路25a及び25bを有しており、SRAM(Static Random Access Memory)として構成されている。
【0051】
インバータ回路25a及び25bは、互いの入力端子に他方の出力端子が電気的に接続されたループ構造を有している。即ち、インバータ回路25aの入力端子とインバータ回路25bの出力端子とが互いに電気的に接続され、インバータ回路25bの入力端子とインバータ回路25aの出力端子とが互いに電気的に接続されている。インバータ回路25aの入力端子が、メモリー回路25の端子N1として構成されており、インバータ回路25aの出力端子が、メモリー回路25の端子N2として構成されている。
【0052】
インバータ回路25aは、N型トランジスター25a1及びP型トランジスター25a2を有している。N型トランジスター25a1及びP型トランジスター25a2のゲートは、メモリー回路25の端子N1に電気的に接続されている。N型トランジスター25a1のソースは、低電位電源線92に電気的に接続されている。P型トランジスター25a2のソースは、高電位電源線91に電気的に接続されている。N型トランジスター25a1及びP型トランジスター25a2のドレインは、メモリー回路25の端子N2に電気的に接続されている。
【0053】
インバータ回路25bは、N型トランジスター25b1及びP型トランジスター25b2を有している。N型トランジスター25b1及びP型トランジスター25b2のゲートは、メモリー回路25の端子N2に電気的に接続されている。N型トランジスター25b1のソースは、低電位電源線92に電気的に接続されている。P型トランジスター25b2のソースは、高電位電源線91に電気的に接続されている。N型トランジスター25b1及びP型トランジスター25b2のドレインは、メモリー回路25の端子N1に電気的に接続されている。
【0054】
メモリー回路25は、その端子N1にハイレベルの画像信号が入力されると、その端子N2の電位は低電位電源電位Vssとなり、その端子N1にローレベルの画像信号が入力されると、その端子N2の電位は高電位電源電位VDDとなる。即ち、メモリー回路25では、入力された画像信号がハイレベルであるかローレベルであるかに応じて、端子N2の電位が低電位電源電位Vss又は高電位電源電位VDDとなる。言い換えれば、メモリー回路25は、入力された画像信号を、低電位電源電位Vss又は高電位電源電位VDDとして記憶可能に構成されている。
【0055】
メモリー回路25の端子N1は、画素電極21に、スイッチ23sを介して電気的に接続されている。よって、画素電極21には、メモリー回路25に記憶された(言い換えれば、書き込まれた)画像信号に応じて、メモリー回路25から低電位電源電位Vss又は高電位電源電位VDDが供給される。即ち、メモリー回路25は、画素スイッチング用トランジスター24を介して画像信号を書き込む(言い換えれば、画像スイッチング用トランジスター24を介して供給される画像信号を記憶する)ことが可能であると共に、この書き込まれた(或いは記憶された)画像信号に応じて所定の画素電位としての低電位電源電位Vss又は高電位電源電位VDDを画素電極21に供給可能に構成されている。
【0056】
画素電極21は、電気泳動素子23を介して共通電極22と互いに対向するように配置されている。共通電極22は、共通電位線93に電気的に接続されている。電気泳動素子23は、電気泳動粒子をそれぞれ含んでなる複数のマイクロカプセルから構成されている。
【0057】
(電気泳動表示装置の動作)
次に、以上のように構成された電気泳動表示装置1の動作について説明する。
【0058】
((分極状態読出しシーケンス))
先ず、表示部3に何らかの画像が表示されている際に、各画素20の電気泳動素子23の分極状態を読み出して、表示部3に表示されている画像を規定するデータを取得する際の動作について説明する。尚、本実施形態では、表示部3に表示されている画像は2階調の階調画像であるとする。
【0059】
電気泳動素子23の分極状態を読み出す場合、コントローラー10(図1参照)は、高電位電源線91に電位Vrefとして、例えば1Vを供給するように、電源回路200(図1参照)を制御する。すると、メモリー回路25は、画素電極21と供給された電位Vrefとの電位差に応じた状態となる(即ち、メモリー回路25により電気泳動素子23の分極状態が読み出されて記憶される)。
【0060】
尚、電気泳動素子23の分極状態を読み出す場合に高電位電源線91に供給される電位Vrefは、電気泳動素子23における分極の程度(例えば1.2V)に応じて設定すればよい。
【0061】
次に、メモリー回路25に読み出された分極状態を取得する場合、コントローラー10は、複数の走査線40の各々に、走査信号をパルス的に順次供給するように走査線駆動回路60(図1参照)を制御しつつ、高電位電源線91に電位Vrefとして、例えば15Vを供給するように電源回路200を制御する。この結果、コントローラー10は、複数のデータ線50及びデータ線読出し回路80(図1参照)を介して、各画素20の電気泳動素子23の分極状態を取得する(即ち、表示部3に表示されている画像を規定するデータを取得する)。
【0062】
尚、電気泳動素子23の分極状態を取得する場合、スイッチ23sは、オン状態とオフ状態とのいずれの状態であってもよい。
【0063】
このように、本実施形態に係る電気泳動表示装置1では、表示部3に表示されている画像を規定するデータが必要な場合、コントローラー10は、各画素20に設けられているメモリー回路25から、各画素20の電気泳動素子23の分極状態を取得して、表示部3に表示されている画像を規定するデータを取得することができる。従って、コントローラー10と、表示部3を含む他の部分とを分離して、画像の書き換えが必要な場合に、該他の部分をコントローラー10に再び接続すれば、表示部3に表示されている画像を書き換えることができる。
【0064】
<変形例>
次に、本実施形態の電気泳動表示装置1に係る変形例について説明する。尚、本変形例では、表示部3に表示されている画像は、3階調以上の階調画像であるとする。
【0065】
((分極状態読出しシーケンス))
電気泳動素子23の分極状態を読み出す場合、コントローラー10(図1参照)は、スイッチ23sをオン状態にして(即ち、画素電極21とメモリー回路25とを電気的に接続し)、高電位電源線91に電位Vrefとして、例えば0.5Vを供給するように、電源回路200(図1参照)を制御する。
【0066】
続いて、コントローラー10は、スイッチ23sをオフ状態にして(即ち、画素電極21とメモリー回路25との電気的な接続を切断し)、複数の走査線40の各々に、走査信号をパルス的に順次供給するように走査線駆動回路60(図1参照)を制御しつつ、高電位電源線91に電位Vrefとして、例えば15Vを供給するように電源回路200を制御して、複数のデータ線50及びデータ線読出し回路80を介して、各画素20の分極読出回路26の状態を取得する。
【0067】
尚、取得された各画素20のメモリー回路25の状態は、例えばコントローラー10のメモリー(図示省略)に一時的に記憶される。
【0068】
次に、コントローラー10は、再びスイッチ23sをオン状態にして、高電位電源線91に電位Vrefとして、例えば1Vを供給するように、電源回路200を制御して、電気泳動素子23の分極状態を読み出す。
【0069】
続いて、コントローラー10は、スイッチ23sをオフ状態にして、複数の走査線40の各々に、走査信号をパルス的に順次供給するように走査線駆動回路60(図1参照)を制御しつつ、高電位電源線91に電位Vrefとして、例えば15Vを供給するように電源回路200を制御して、複数のデータ線50及びデータ線読出し回路80を介して、各画素20の分極読出回路26の状態を取得する。
【0070】
上述したような動作を、表示部3に表示されている階調画像の階調数に応じた回数だけ繰り返し行うことで、複数セットの各画素20のメモリー回路25の状態が取得される。次に、コントローラー10は、取得された複数セットの各画素20のメモリー回路25の状態と、電気泳動素子23の分極状態を読み出す際に高電位電源線91に供給した電位Vref(ここでは、0.5V及び1V)とを比較することにより、電気泳動素子23の分極状態を特定又は算出して、表示部3に表示されている画像を規定するデータを取得する。
【0071】
このように本変形例によれば、表示部3に表示されている画像が3階調以上の階調画像であったとしても、適切に、電気泳動素子23の分極状態を取得して、表示部3に表示されている画像を規定するデータを取得することができる。
【0072】
<第2実施形態>
本発明の電気泳動表示装置に係る第2実施形態を、図4を参照して説明する。第2実施形態では、画素の構成が一部異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第2実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図4を参照して説明する。ここに、図4は、図3と同趣旨の、本実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0073】
図4において、画素20は、画素スイッチング用トランジスター24と、画素電極21と、共通電極22と、電気泳動素子23と、メモリー回路25と、保持容量27とを備えている。尚、本実施形態では、典型的には、高電位電源線91に電位Vrefのみが供給される。
【0074】
保持容量27は、誘電体膜を介して対向配置された一対の電極からなる。保持容量27の一方の電極が画素電極21、並びにスイッチ23sを介して画素スイッチング用トランジスター24及びメモリー回路25に電気的に接続されている。保持容量27の他方の電極は低電位電源線92に電気的に接続されている。
【0075】
画素スイッチング用トランジスター24は、データ線駆動回路70(図1参照)からデータ線50を介して供給される画素信号を、走査線駆動回路60(図1参照)から走査線40を介してパルス的に供給される走査信号に応じたタイミングで、画素電極21及び保持容量27に出力する。保持容量27は、供給された画像信号を一定期間だけ維持することができる。
【0076】
本実施形態では、メモリー回路25は、典型的には、電気泳動素子23の分極状態を読み出す場合のみ使用され、画像信号を書き込む際には使用されない。
【0077】
<第3実施形態>
本発明の電気泳動表示装置に係る第3実施形態を、図5及び図6を参照して説明する。第3実施形態では、画素等の構成が一部異なる以外は、第2実施形態の構成と同様である。よって、第3実施形態について、第2実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図5及び図6を参照して説明する。ここに、図5は、図1と同趣旨の、本実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成を示すブロック図であり、図6は、図4と同趣旨の、本実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0078】
(電気泳動表示装置の構成)
図5において、本実施形態に係る電気泳動表示装置2は、表示部3と、走査線駆動回路60と、データ線駆動回路70と、データ線読出し回路80と、読出し選択回路90と、コントローラー10と、電源回路200とを備えている。コントローラー10は、走査線駆動回路60、データ線駆動回路70、データ線読出し回路80、読出し選択回路90及び電源回路200の動作を制御する。
【0079】
図6において、本実施形態に係る画素20は、メモリー回路25(図4参照)に代えて、本発明に係る「分極読出手段」の他の例としての強誘電体メモリー26を備えている。
【0080】
強誘電体メモリー26の一端は、電位Vrefが供給される信号線94に電気的に接続されている。該信号線94は、読出し選択回路90(図5参照)に電気的に接続されている。
【0081】
(電気泳動表示装置の動作)
((分極状態読出しシーケンス))
次に、以上のように構成された電気泳動表示装置2の表示部3に何らかの画像が表示されている際に、各画素20の電気泳動素子23の分極状態を読み出して、表示部3に表示されている画像を規定するデータを取得する際の動作について説明する。
【0082】
電気泳動素子23の分極状態を読み出す場合、コントローラー10(図5参照)は、スイッチ23sをオン状態にして、信号線94に電位Vrefとして、例えば1Vを供給するように、読出し選択回路90(図5参照)を制御する。すると、強誘電体メモリー26は、画素電極21と供給された電位Vrefとの電位差に応じた分極状態となる(即ち、強誘電体メモリー26により電気泳動素子23の分極状態が読み出されて記憶される)。
【0083】
次に、強誘電体メモリー26に読み出された分極状態を取得する場合、コントローラー10は、スイッチ23sをオフ状態にして、複数の走査線40の各々に、走査信号をパルス的に順次供給するように走査線駆動回路60(図5参照)を制御しつつ、信号線94に電位Vrefとして、例えば15Vのパルス電圧を供給するように読出し選択回路90を制御する。この結果、コントローラー10は、複数のデータ線50及びデータ線読出し回路80(図5参照)を介して、各画素20の電気泳動素子23の分極状態を取得する(即ち、表示部3に表示されている画像を規定するデータを取得する)。
【0084】
<電子機器>
次に、上述した電気泳動表示装置を適用した電子機器について、図7及び図8を参照して説明する。以下では、上述した電気泳動表示装置を電子ペーパー及び電子ノートに適用した場合を例にとる。
【0085】
図7は、電子ペーパー1400の構成を示す斜視図である。
【0086】
図7に示すように、電子ペーパー1400は、上述した実施形態に係る電気泳動表示装置を表示部1401として備えている。電子ペーパー1400は可撓性を有し、従来の紙と同様の質感及び柔軟性を有する書き換え可能なシートからなる本体1402を備えて構成されている。
【0087】
図8は、電子ノート1500の構成を示す斜視図である。
【0088】
図8に示すように、電子ノート1500は、図7で示した電子ペーパー1400が複数枚束ねられ、カバー1501に挟まれているものである。カバー1501は、例えば外部の装置から送られる表示データを入力するための表示データ入力手段(図示省略)を備える。これにより、その表示データに応じて、電子ペーパーが束ねられた状態のまま、表示内容の変更や更新を行うことができる。
【0089】
上述した電子ペーパー1400及び電子ノート1500は、上述した実施形態に係る電気泳動表示装置を備えるので、駆動制御回路を共有可能としつつ、高品質な画像表示を行うことが可能である。
【0090】
尚、これらの他に、腕時計、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの電子機器の表示部に、上述した本実施形態に係る電気泳動表示装置を適用することができる。
【0091】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気泳動表示装置及び電気泳動表示装置の駆動方法、並びに電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0092】
1…電気泳動表示装置、3…表示部、10…コントローラー、20…画素、21…画素電極、22…共通電極、23…電気泳動素子、25…メモリー回路、26…強誘電体メモリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差するように設けられた複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応して夫々規定された複数の画素からなる表示部を備え、
前記複数の画素の各々は、
互いに対向して配置された画素電極及び共通電極と、
前記画素電極及び前記共通電極間に配置され、前記画素電極と前記共通電極との間の電位差に応じて分極が与えられる、電気泳動粒子を含む電気泳動素子と、
画素スイッチング素子と、
前記分極を与えられた電気泳動素子の分極状態を読み出し可能な分極読出手段と
を有する
ことを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項2】
前記画素スイッチング素子を介して画像信号を書き込み可能なメモリー回路を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示装置。
【請求項3】
前記分極読出手段は、スタティックメモリー回路を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気泳動表示装置。
【請求項4】
前記分極読出手段は、強誘電体メモリーを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気泳動表示装置。
【請求項5】
互いに交差するように設けられた複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応して夫々規定された複数の画素からなる表示部を備え、前記複数の画素の各々は、互いに対向して配置された画素電極及び共通電極と、前記画素電極及び前記共通電極間に配置され、前記画素電極と前記共通電極との間の電位差に応じて分極が与えられる、電気泳動粒子を含む電気泳動素子と、画素スイッチング素子と、前記分極を与えられた電気泳動素子の分極状態を読み出し可能な分極読出手段とを有する電気泳動表示装置の駆動方法であって、
前記分極読出手段に、前記分極を与えられた電気泳動素子の分極状態を読み出させる分極読出工程と、
前記複数の走査線のうち一の走査線を選択して、前記複数の画素のうち前記選択された一の走査線に対応する画素の分極読出手段により読み出された分極状態を、前記複数のデータ線を介して取得する分極状態取得工程と
を備えることを特徴とする電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項6】
前記表示部に表示される画像の階調数に応じて、前記分極読出工程及び前記分極状態取得工程の各々を交互に繰り返すことを特徴とする請求項5に記載の電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−211034(P2010−211034A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58073(P2009−58073)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】