説明

電気泳動装置、電子機器

【課題】文字等の入力をより高速に表示画像へ反映させることが可能な電気泳動装置とその駆動技術を提供すること。
【解決手段】複数の第1電極(111)と、複数の第1電極の各々と対向して配置された第2電極(110)と、前記複数の第1電極と前記第2電極との間に配置された電気泳動材料層(112)と、を含み、前記第2電極は、離散して配置された複数の開口部(114)を有し、前記複数の開口部の各々は、前記複数の第1電極の各々よりも平面視における面積が小さく設けられている、電気泳動装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動装置およびそれを用いた電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙と略同様に扱える程度に薄い表示デバイス(いわゆる電子ペーパー)等を実現可能な技術の一つとして電気泳動装置が注目されている(例えば、特許文献1,2参照)。このような電気泳動装置の中には、タッチペン等を用いて画面上をなぞることにより、画像中に所望の文字、図形等を書き込むことが可能に構成されたものが提案されている。例えば、表示画面上にタッチパネル等の検出手段を設けておくことにより、このような書き込み可能な電気泳動装置が実現される。
【0003】
しかし、従来の書き込み可能に構成された電気泳動装置においては、液晶装置等において同様に書き込み可能に構成された装置と比較して、書き込みされた文字等の書換速度が遅いことが指摘されていた。具体的には、タッチペンや指等で文字が書き込まれると、圧力や電磁波、超音波等の検出手段によって文字情報が検出され、画像データが生成されることにより表示画像が書き換えられるという処理手順を経る。これらの過程を経るために、文字等が入力されてから、それが表示画像に反映されるまでに処理時間がかかる。このため、ユーザーが書いた文字等がすぐさま画面上には現れずにタイムラグが生じることになり、ユーザーに違和感を生じさせてしまうのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平11−502950号公報
【特許文献2】特開2007−279296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明に係る具体的態様は、文字等の入力をより高速に表示画像へ反映させることが可能な電気泳動装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一態様の電気泳動装置は、複数の第1電極と、前記複数の第1電極の各々と対向して配置された第2電極と、前記複数の第1電極と前記第2電極との間に配置された電気泳動材料層と、を含み、前記第2電極は、離散して配置された複数の開口部を有し、前記複数の開口部の各々は、前記複数の第1電極の各々よりも平面視における面積が小さく設けられている、電気泳動装置である。
【0007】
かかる構成によれば、第2電極側に電圧を与えることにより、開口部を介して直接的に電気泳動材料層に電圧を印加し、電気泳動粒子を泳動させることができる。すなわち、入力から表示画像への変換までの段階を経ることなく直接的に画像を書き込むことが可能となる。第2電極に電圧を与えて直接的に文字等を書き込むことが可能となることにより、文字等の入力をより高速に表示画像へ反映させることが可能な電気泳動装置が実現される。
【0008】
好ましくは、前記複数の開口部は、例えば、前記複数の第1電極の各々に同数が設けられていてもよい。
【0009】
これにより、開口部を介した直接的に書き込まれる文字等の情報をより均質に表示できる効果が期待される。
【0010】
前記複数の開口部は、それぞれが前記複数の第1電極のいずれかと対向する位置に設けられていることが好ましい。
【0011】
それにより、開口部を介して書き込んだ画像を消去するのに都合がよい。すなわち、第1電極と対向しない位置に開口部を設けた場合には、その開口部に対応する領域における電気泳動材料層の画像消去が困難となることが考えられるが、そのような不都合が回避される。
【0012】
また、本発明に係る電気泳動装置は、前記複数の開口部の各々に重畳して配置された複数の第3電極、を更に備えることも好ましい。この場合における複数の第3電極の各々は、前記第2電極とは物理的に分離して設けられる。
【0013】
このような第3電極を用いることにより、第2電極側に付与した電圧によって電気泳動材料層中の粒子をより効率的に泳動させることができる。
【0014】
また、本発明に係る電気泳動装置は、前記第2電極を覆う絶縁性の保護膜、を更に備えることも好ましい。
【0015】
それにより、電気泳動装置の信頼性がより向上する。
【0016】
また、本発明に係る電気泳動装置は、前記複数の第1電極の各々と前記第2電極とに与える電圧を制御する制御手段、を更に備え、前記駆動手段は、所定タイミングにおいて前記複数の第1電極の各々と前記第2電極とを同電位にすることが好ましい。
【0017】
それにより、第2電極側に付与した電圧により電気泳動材料層中の粒子をより効率的に泳動させることができる。
【0018】
また、本発明に係る電気泳動装置は、一端側から電圧を発生する機能を有する棒状の入力手段、を更に備えることが好ましい。
【0019】
このような入力手段によれば、各開口部または各第3電極を介した直接的な情報書き込みを容易に実現できる。
【0020】
上記の入力手段が発生する電圧は、例えば直流電圧であってもよい。また、入力手段が発生する電圧は、例えばノコギリ波状電圧など周期的に電圧値が変動するものであってもよい。
【0021】
これらによれば、各開口部または各第3電極を介した直接的な情報書き込みを行うために必要な電圧を効率的に電気泳動材料層へ印加できる。
【0022】
また、本発明に係る電子機器は、上述した電気泳動装置を備える。ここで、「電子機器」は、電気泳動材料による表示を利用する表示部を備えるあらゆる機器を含むもので、ディスプレイ装置、テレビジョン装置、電子ペーパー、時計、電卓、携帯電話、携帯情報端末等を含む。また、「機器」という概念からはずれるもの、例えば可撓性のある紙状/フィルム状の物体、これら物体が貼り付けられた壁面等の不動産に属するもの、車両、飛行体、船舶等の移動体に属するものも含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態に係る電気泳動装置の構成を模式的に示す回路図である。
【図2】第1の実施形態に係る画素部の構成を示す回路図である。
【図3】第1の実施形態に係る電気泳動装置の断面を模式的に示した断面図である。
【図4】第1の実施形態に係る電気泳動装置の共通電極の構造を模式的に示した平面図である。
【図5】第1の実施形態の電気泳動装置における通常の画像表示状態の一例を模式的に示した平面図である。
【図6】第1の実施形態の電気泳動装置において、タッチペンによる直接書き込みを行った際の画像表示状態の一例を模式的に示した平面図である。
【図7】第2の実施形態に係る電気泳動装置の断面を模式的に示した断面図である。
【図8】第2の実施形態に係る電気泳動装置の共通電極の構造を模式的に示した平面図である。
【図9】第3の実施形態に係る電気泳動装置の断面を模式的に示した断面図である。
【図10】第3の実施形態に係る電気泳動装置の断面を模式的に示した断面図である。
【図11】第3の実施形態に係る電気泳動装置の断面を模式的に示した断面図である。
【図12】第3の実施形態に係る電気泳動装置の断面を模式的に示した断面図である。
【図13】電気泳動装置の駆動方法の好適な一例について説明する波形図である。
【図14】電気泳動装置の駆動方法の好適な他の例について説明する波形図である。
【図15】電気泳動装置を適用した電子機器の具体例を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。ただし、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
また、以下に説明するのは本発明を適用した実施形態の1つに過ぎず、本発明の適用範囲は以下の実施形態にのみ限定されるものではない。
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電気泳動装置の構成を模式的に示す回路図である。本実施形態における電気泳動装置は、マトリクス状に配置された複数の画素部(画素回路)100を有する。各画素部100に含まれる電気泳動素子105の状態を制御することにより、各画素部100における外部光の反射率(換言すれば階調)を制御することができる。これにより、外部から視認できる画像が形成される。
【0026】
図1に基づいて電気泳動装置の構成について更に説明する。本実施形態に係る電気泳動装置は、複数の走査線101と、これらの走査線101と交差して配置された複数のデータ線102と、これらの走査線101及びデータ線102の各交点に対応付けてそれぞれ配置された画素部100と、各走査線101を介して各画素部100と接続された走査線ドライバ(走査線駆動回路)130と、各データ線102を介して各画素部100と接続されたデータドライバ(データ線駆動回路)140と、を備える。
【0027】
図2は、第1の実施形態に係る画素部100の構成を示す回路図である。各画素部100は、それぞれ、スイッチング素子としてのトランジスタ103、容量素子104、電気泳動素子105、を含んで構成されている。トランジスタ103は、ゲートに接続された走査線101を通じて走査線ドライバ130から走査信号の供給を受け、ソースに接続されたデータ線102を通じてデータドライバからデータ信号の供給を受ける。このトランジスタ103は、例えば有機半導体膜を用いて構成されたもの(有機トランジスタ)である。また。本実施形態におけるトランジスタ103はPチャネル型トランジスタである。容量素子104は、一方端子がトランジスタ103のドレインと接続され、他方端子が容量線106に接続されている。
【0028】
電気泳動素子105は、共通電極110と、画素電極111と、共通電極110及び画素電極111の間に設けられた電気泳動層(電気泳動材料層)112と、を備える。一方端子としての画素電極(第1電極)111がトランジスタ103のドレインと接続され、他方端子としての共通電極(第2電極)110は図示しない電源回路と接続されている。なお、本実施形態では共通電極110と上述した容量線106には同電位が与えられる。共通電極110は、各画素部100に対応する各電気泳動素子105に渡って形成されており、これらの間で共有される。電気泳動層112は、多数の黒色粒子(第1粒子)及び白色粒子(第2粒子)を含有する。本実施形態においては、黒色粒子がマイナス(負)に帯電し、白色粒子がプラス(正)に帯電している。なお、図示の例ではマイクロカプセル型の電気泳動層が示されているが、電気泳動層の実施態様はこれに限定されない。電気泳動層112は、例えば隔壁型などの構成態様であってもよい。
【0029】
図3は、第1の実施形態に係る電気泳動装置の断面を模式的に示した断面図である。図3に示すように、共通電極110は、画素電極111のそれぞれと対向して配置されている。少なくとも、共通電極110はITO(インジウム錫酸化物)膜などの透明導電膜を用いて構成されている。各画素電極111は、トランジスタ103などの画素回路100やその他配線等が形成された基板120上に設けられている。電気泳動層112は、共通電極110と各画素電極111との相互間に配置されている。本実施形態においては、共通電極110の側から視認し得るよう画像形成が行われるものとする。また、共通電極110は、離散して配置された複数の開口部114を有する。開口部114の詳細については更に後述する。
【0030】
図1に示すように、第1の実施形態に係る電気泳動装置においては、上述した制御手段としての画素回路100(主としてトランジスタ103)、走査線ドライバ130及びデータドライバ140によって、共通電極110と各画素電極111のそれぞれに印加する電圧が制御される。例えば、共通電極110に対して画素電極111が相対的に低い電位となるように制御された場合には、この画素電極111に対応する領域(すなわち画素)を共通電極110側から視認した場合の表示が黒状態(暗状態)となる。また、共通電極110に対して画素電極111が相対的に高い電位となるように制御された場合には、この画素電極111に対応する領域(すなわち画素)を共通電極110側から視認した場合の表示が白状態(明状態)となる。印加される電圧を例示すると、各画素電極111には、高電位(HI;例えば+30V)または低電位(LO;例えば0V)のいずれかが印加され、共通電極110には例えば1/2(HI+LO)Vの中間電位(例えば+15V)が印加される。
【0031】
なお、電気泳動層112の分散媒や電気泳動粒子などについては、公知技術(例えば特開2007−213014号公報参照)を採用して実現可能である。なお、各粒子の色調をどのようにするかは任意であり、本実施形態における黒色と白色の組み合わせは一例に過ぎない。また、少なくとも1種類の電気泳動粒子が含まれていればよい。
【0032】
図4は、第1の実施形態に係る電気泳動装置の共通電極110の構造を模式的に示した平面図である。この図4及び上記した図3に示すように、本実施形態の電気泳動装置における共通電極110には、複数の開口部(無電極部)114が設けられている。これらの開口部114を有する共通電極110は、フォトリソグラフィ法、印刷法、マスク蒸着法等の公知技術によって電気泳動層112上に形成することが可能である。なお、図4では図面が煩雑になるのを避けるため、いくつかの画素電極111および開口部114にのみ符号を付し、そのほかについては省略している。
【0033】
図4に示すように、複数の開口部114は、それぞれ、画素電極111の各々よりも平面視における面積が小さく設けられている。画素回路ごとの画像表示(例えば明状態であるか暗状態であるか)は、共通電極110と画素電極111との間の電圧で規定される。このように開口部114の面積を限定的に形成することにより、タッチペンによる電圧が印加されないときには、共通電極110と画素電極111との間に生じる電気力線を開口部114の領域にも及ばせることが可能になり、電気泳動粒子を効果的に移動させることが可能となる。また、タッチペンによる電圧が印加されるときには、画素電極111の一部の領域、すなわち開口部114に後述する電圧を印加して部分的に電気泳動粒子を移動させ、画像表示の一部を文字等で書き換えることが可能になる。また、各開口部114は、共通電極110の全体に亘って離散的に配置されており、それぞれが何れかの画素電極111と対向する位置に設けられている。このように構成することにより、いずれの画素回路に対しても電圧印加が可能となるため画像表示面全体に文字等の書き込みが可能となる。さらに、各開口部114は、各画素電極111に対して同数ずつ(本例では4つずつ)が対応付けられている。このように構成することにより、いずれの画素についても同様の濃度で文字等が書き込み可能となる。なお、ここで説明した開口部114の構成態様は一例であり、これらにのみ限定されるものではない。また、開口部114の形状は四角形に限定されない。
【0034】
図3および図4に示したような複数の開口部114を共通電極110に設けておくことにより、ユーザーがタッチペン(棒状の入力手段)200を適宜用いて直接的に文字等を電気泳動層112に書き込むことが可能となる。具体的には、タッチペン200の一端側201から比較的に高い電圧(本例ではプラス電圧)を発生させ、このタッチペン200の一端側201を共通電極110に近づけ、任意に移動させる。このとき、各開口部114を介して電気泳動層112に直接的に電圧(プラス電圧)が印加されることになり、マイナスに帯電した黒色粒子を共通電極110側へ泳動させることができる。これにより、タッチペン200が近づいた領域において電気泳動層112に直接的に画像書き込みがなされ、当該領域が黒表示となる。すなわち、ユーザーがタッチペン200によってなぞった文字等に対応する画像が表示される。タッチペン200の一端側201から発生させる電圧については、直流電圧でもよいし周期的に変動するパルス状電圧でもよい。駆動波形の詳細については更に後述する。
【0035】
より好ましい態様としては、タッチペン200による書き込みを行う際には、上述した制御手段としての画素回路100(主としてトランジスタ103)、走査線ドライバ130及びデータドライバ140によって、共通電極110と各画素電極111のそれぞれの電圧を同じにする(同電位にする)ことが考えられる。それにより、タッチペン200によって書き込まれる画像がより鮮明になる。なお、厳密に同電位とはならなくてもよい。
【0036】
図5は、第1の実施形態の電気泳動装置における通常の画像表示状態の一例を模式的に示した平面図である。図5に示すように、通常の画像表示においては、各画素電極111ごとに表示状態が制御される。例えば図示の例では、2行目の5つの画素電極111と、3、4、5行目の各3列目の画素電極111と、に対応する領域が黒表示に制御されており、結果としてT字状の画像が形成されている。このとき、各開口部114においては共通電極110との間に電位差を与えられないため、厳密に言えば表示制御が困難とも言える。しかし、上述したように、各開口部114の周囲の画素電極111と共通電極110との間に生じる電気力線は、一般に画素電極111の直上の領域よりも膨らんで形成されるため、開口部114においても表示制御を実現できる。このため、開口部114を設けても実用上差し支えない程度の画像表示が可能である。この意味から、各開口部114のサイズについては、例えば一辺が100μm以内(開口部114の形状が四角形の場合)とすることが好ましい。
【0037】
図6は、第1の実施形態の電気泳動装置において、タッチペンによる直接書き込みを行った際の画像表示状態の一例を模式的に示した平面図である。図示のように、タッチペン200による直接書き込みがなされた場合、タッチペン200の一端側201が接近した箇所の開口部114において、上記のようにマイナス帯電した黒色粒子が引き寄せられることにより、黒表示に制御される。図示の例では、左上から右下へかけてタッチペン200によってなぞられ、それに対応した箇所の開口部114において黒表示に制御されている。
【0038】
以上のような第1の実施形態の電気泳動装置によれば、タッチペンのような入力手段を用いて直接的に文字等を書き込むことが可能となる。従って、文字等の入力をより高速に表示画像へ反映させることが可能な電気泳動装置が実現される。本実施形態並びに後述する他の実施形態においては、タッチパネル等の検出手段を別途に設ける必要がないため、従来に比べて構成を非常に簡素化できる。
【0039】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る電気泳動装置の断面を模式的に示した断面図である。なお、上記第1の実施形態の電気泳動装置と共通する要素については同符号を用いており、それらについては詳細な説明を省略する。第2の実施形態の電気泳動装置においては、共通電極110に設けられた各開口部114において、開口部114に重畳して配置された独立電極(第3電極)115が設けられている点が第1の実施形態と大きく異なっている。
【0040】
各独立電極115は、共通電極110とは物理的に分離して形成されており、電気的にも共通電極110やその他構成から独立している。各独立電極115は、共通電極110と同一層に配置されている。各独立電極115はITO(インジウム錫酸化物)膜などの透明導電膜を用いて構成されている。これらの開口部114及び独立電極115を有する共通電極110は、フォトリソグラフィ法、印刷法、マスク蒸着法等の公知技術によって電気泳動層112上に形成することが可能である。
【0041】
図8は、第2の実施形態に係る電気泳動装置の共通電極110の構造を模式的に示した平面図である。なお、図8では図面が煩雑になるのを避けるため、いくつかの画素電極111、開口部114および独立電極115にのみ符号を付し、そのほかについては省略している。図8に示すように、複数の開口部114のそれぞれに対応して各独立電極115が形成されている。これにより、各独立電極115は、共通電極110の全体に渡って離散的に配置されている。また、これらの独立電極115は、それぞれが何れかの画素電極111と対向する位置に設けられている。更に、各独立電極115は、各画素電極111に対して同数ずつ(本例では4つずつ)が対応付けられている。なお、ここで説明した独立電極115の構成態様は一例であり、これらにのみ限定されるものではない。
【0042】
以上のような、第2の実施形態の電気泳動装置によっても、ユーザーがタッチペン(棒状の入力手段)200を用いて直接的に文字等を電気泳動層112に書き込むことが可能となる。特に、第2の実施形態においては、各独立電極115を介在させることにより、タッチペン200によって発生させた電圧をより効率的に電気泳動層112へ与えることが可能となる。それにより、タッチペン200により書き込まれる画像をより鮮鋭にすることが可能となる。あるいは、タッチペン200によって発生させる電圧をより低くすることが可能となる。
【0043】
(第3の実施形態)
図9乃至図12は、第3の実施形態に係る電気泳動装置の断面を模式的に示した断面図である。なお、上記した第1又は第2の実施形態の電気泳動装置と共通する要素については同符号を用いており、それらについては詳細な説明を省略する。第3の実施形態の電気泳動装置においては、共通電極110の上側に保護膜が設けられている点が第1又は第2の実施形態と大きく異なっている。以下、詳細に説明する。
【0044】
図9に示す電気泳動装置は、上記した第1の実施形態に係る電気泳動装置に対して、更に共通電極110および各開口部114を覆う保護膜116が設けられている。図示のように、本例では各開口部114にも保護膜116が入り込んでいるが、必ずしも保護膜116が開口部114にまで入り込んでいなくてもよい。また、図10に示す電気泳動装置は、上記した第2の実施形態に係る電気泳動装置に対して、更に共通電極110、各開口部114および各独立電極115を覆う保護膜116が設けられている。このような保護膜116を設けることにより電気泳動装置の信頼性が向上する。
【0045】
ここで、保護膜116としては、低誘電率材料を用いることがより好ましい。具体的には、例えば、ポリビニルフェノール又は、フェノール樹脂(別名ノボラック樹脂)、ポリビニルフェノール、ポリスチレン、ポレオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリイミド、フッ素系樹脂、ポリパラキシリレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン66、ポリウレタン等のウレタン系樹脂、エポキシド、ABS樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸オクチル等のメタクリル酸エステル樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース系樹脂、シリコーン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合物、SIOx、SiNx、SixNyOzなどが挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
なお、図11および図12に示すような態様もとりうる。すなわち、図11に示す態様の電気泳動装置では、共通電極110を覆う保護膜116が設けられ、さらにこの保護膜116上であって各開口部114のいずれかと重畳する位置に各独立電極115が設けられている。また、図12に示す態様の電気泳動装置では、保護膜116が電気泳動層112上に設けられ、さらにこの保護膜116上に共通電極110、各開口部114および各独立電極115が設けられている。
以上のような実施形態の電気泳動装置によれば絶縁層を介せず、独立電極が露出しているので直接タッチペンの先端から電位を与えることが可能なのでより低電圧で単純な直流駆動でも書込が可能となる。
【0047】
(第4の実施形態)
次に、上記した各実施形態の電気泳動装置に適用して好適な駆動方法の一例について詳細に説明する。
【0048】
図13は、電気泳動装置の駆動方法の好適な一例について説明する波形図である。まず、図13(A)〜図13(D)に示すように、所定のタイミングにおいて、各トランジスタ103のゲート電位(GATE1,2,・・・n−1、n)をすべて低電圧とすることにより、pチャネル型トランジスタである各トランジスタ103をすべてオン状態とする。具体的には、例えば図示しない操作ボタンが押下されたことに対応して各トランジスタ103のゲート電位を低電位としてもよい。あるいは、図示しない検出手段を設けておき、タッチペン200の一端側201が電気泳動装置に触れたことを検出し、これに対応して各トランジスタ103のゲート電位を低電位としてもよい。
【0049】
各トランジスタ103がオン状態となったのに合わせて、図13(E)に示すように各トランジスタ103を介して各画素電極111に与えられる電圧(DATA[0−n])をすべて低電位に制御し、かつ図13(F)に示すように共通電極110の電圧(COM)も低電位に制御する。すなわち、共通電極110と各画素電極111とを同電位にする。そして、図13(G)に示すように一端側201から発生する電圧(PEN)が高電位となっているタッチペン200を電気泳動装置の共通電極110側に近づける。それにより、タッチペン200による直接書き込みが実現される。この図13に示す態様の駆動方法は、上記何れの態様の電気泳動装置においても適用可能であるが、独立電極115を設ける態様の電気泳動装置(図7、図10、図11、図12参照)に適用すると特に効果的である。
【0050】
図14は、電気泳動装置の駆動方法の好適な他の例について説明する波形図である。上記と同様に、図14(A)〜図14(D)に示すように、所定のタイミングにおいて、各トランジスタ103のゲート電位(GATE1,2,・・・n−1、n)をすべて低電圧とすることにより各トランジスタ103をすべてオン状態とする。また、これに合わせて図14(E)に示すように各画素電極111に与えられる電圧(DATA[0−n])をすべて低電位に制御し、かつ図14(F)に示すように共通電極110の電圧(COM)も低電位に制御する。すなわち、共通電極110と各画素電極111とを同電位にする。そして、図14(G)に示すように一端側201から発生する電圧(PEN)が高電位となっているタッチペン200を電気泳動装置の共通電極110側に近づける。本例では、タッチペン200の一端側201の電圧(PEN)がノコギリ波状電圧となっている。このような方式によっても、タッチペン200による直接書き込みが実現される。この図14に示す態様の駆動方法は、上記何れの態様の電気泳動装置においても適用可能であるが、開口部114に独立電極115が設けられない態様の電気泳動装置(図3、図9参照)に適用すると特に効果的である。
【0051】
(第5の実施形態)
図15は、電気泳動装置を適用した電子機器の具体例を説明する斜視図である。図15(A)は、電子機器の一例である電子ブックを示す斜視図である。この電子ブック1000は、ブック形状のフレーム1001と、このフレーム1001に対して回動自在に設けられた(開閉可能な)カバー1002と、操作部1003と、本実施形態に係る電気泳動装置によって構成された表示部1004と、を備えている。図15(B)は、電子機器の一例である電子ペーパーを示す斜視図である。この電子ペーパー1200は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成される本体部1201と、本実施形態に係る電気泳動装置によって構成された表示部1202と、を備えている。なお、電気泳動装置を適用可能な電子機器の範囲はこれに限定されず、電気泳動粒子の移動に伴う視覚上の色調の変化を利用した装置を広く含むものである。例えば、上記のような装置の他、電気泳動フィルムが貼り合わせられた壁面等の不動産に属するもの、車両、飛行体、船舶等の移動体に属するものも該当する。本実施形態によれば、文字等の情報を直接的に書き込む動作を高速に実行可能な電子機器を実現することができる。
【符号の説明】
【0052】
100…画素部(画素回路)、101…走査線、102…データ線、103…トランジスタ、104…容量素子、105…電気泳動素子、106…容量線、110…共通電極(第2電極)、111…画素電極(第1電極)、112…電気泳動層(電気泳動材料層)、114…開口部(無電極部)、115…独立電極(第3電極)、116…保護層、130…走査ドライバ(走査線駆動回路)、140…データドライバ(データ線駆動回路)、200…タッチペン(棒状の入力手段)、201…タッチペンの一端側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1電極と、
前記複数の第1電極の各々と対向して配置された第2電極と、
前記複数の第1電極と前記第2電極との間に配置された電気泳動材料層と、
を含み、
前記第2電極は、離散して配置された複数の開口部を有し、
前記複数の開口部の各々は、前記複数の第1電極の各々よりも平面視における面積が小さく設けられている、電気泳動装置。
【請求項2】
前記複数の開口部は、前記複数の第1電極の各々に同数が設けられている、請求項1に記載の電気泳動装置。
【請求項3】
前記複数の開口部は、それぞれが前記複数の第1電極のいずれかと対向する位置に設けられている、請求項1又は2に記載の電気泳動装置。
【請求項4】
前記複数の開口部の各々に重畳して配置された複数の第3電極、を更に備え、
前記複数の第3電極の各々は前記第2電極とは物理的に分離して設けられている、請求項1乃至3の何れか1項に記載の電気泳動装置。
【請求項5】
前記第2電極を覆う絶縁性の保護膜、を更に備える、請求項1乃至4の何れか1項に記載の電気泳動装置。
【請求項6】
前記複数の第1電極の各々と前記第2電極とに与える電圧を制御する制御手段、を更に備え、
前記駆動手段は、所定タイミングにおいて前記複数の第1電極の各々と前記第2電極とを同電位にする、請求項5に記載の電気泳動装置。
【請求項7】
一端側から電圧を発生する機能を有する棒状の入力手段、を更に備える、請求項1乃至6の何れか1項に記載の電気泳動装置。
【請求項8】
前記入力手段が発生する前記電圧が直流電圧である、請求項7に記載の電気泳動装置。
【請求項9】
前記入力手段が発生する前記電圧がノコギリ波状電圧である、請求項7に記載の電気泳動装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の電気泳動装置を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−211037(P2010−211037A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58134(P2009−58134)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】