説明

電気洗濯機

【課題】酸化力が強く漂白作用のある過酸化水素水を薬剤等の投入や補充の必要が無く、電気洗濯機内で自動的に作製することを目的とする。
【解決手段】水と貴金属触媒3とを混合させた混合水に、酸素混合ガス発生装置1から発生させた酸素を接触させることによって、触媒作用により過酸化水素水を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等の漂白洗浄や殺菌洗浄、及び洗濯槽内のカビの剥離洗浄を可能とする漂白剤の自動製造手段を有した電気洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洗濯機によって衣類等の黄ばみを防止又は漂白するために、さらし粉や次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系漂白剤、又は過酸化水素や過炭酸ナトリウム等の酸素系漂白剤を洗剤と共に洗濯水に溶解させて洗濯したり、水に溶解させて浸漬したりしていた。
【0003】
さらに、前記塩素系漂白剤を洗濯機内で生成し、自動投入する方法も提案されていた(例えば、特許文献1、2参照)。これらは洗濯槽内に洗濯水を電気分解する電極を設けたものであり、食塩を加えた洗濯水を電気分解して次亜塩素酸イオンを発生させるものである。
【特許文献1】特開平5−123488号公報
【特許文献2】特開平5−123489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の洗濯槽内で塩素系漂白剤を生成させる方法は、食塩の投入が必要であり、食塩の補充等のメンテナンスが必要である。なお、食塩を投入せずに水道水を電気分解しても次亜塩素酸イオンは発生するが、微量であり、効果は期待できない。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、水道水と貴金属触媒とを混合させた混合水に、酸素混合ガスを接触させることで漂白作用のある過酸化水素水を生成させる電気洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、洗濯水と貴金属触媒とを混合させた混合水に、酸素混合ガス発生装置から発生させた酸素を接触させるようにしたものである。
【0007】
この接触による触媒作用によって、水と酸素から漂白作用のある過酸化水素水が生成されるため、薬剤等の投入や補充の必要が無く、漂白効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電気洗濯機は、薬剤の投入や補充の必要が無く、漂白洗浄をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、酸素混合ガスを発生させる酸素混合ガス発生装置と貴金属触媒とを有し、水と前記貴金属触媒とを混合させた混合水と、前記酸素混合ガス発生装置から発生させた酸素とを接触させる構成を備えたことを特徴とするものである。洗濯用の水に貴金属触媒を入れた混合水に酸素を吹き込むことにより、触媒作用によって酸化力の強い過酸化水素水が生成されるため、薬剤等の投入や補充の必要が無く、漂白剤を生成することができる。
【0010】
第2の発明は、特に、第1の発明の貴金属触媒が、金属酸化物の粒子表面に支持された金触媒である。一般に触媒は水分が多いと機能が低下するが、金触媒ではむしろ水分があると反応が進む利点がある。そして数十度程度の温度範囲で反応が進むので、加熱がほとんどいらず効率的である。また、金は微粒子として使用する方が高い効果が得られるため、使用量は微量でよく、白金と比較してもコストがかからない。すなわち、金触媒を使用することで、常温の水中で、効率的に過酸化水素水の生成を得ることができる。
【0011】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の金属酸化物が、ゼオライトとしたものである。電気洗濯機の中で乾燥機能を併せ持ついわゆる洗濯乾燥機では、水分をゼオライトに吸着させているものもある。そこで、ゼオライトの一部の表面に金微粒子を担持させることで、水分の吸着と同時にその吸着水を利用した過酸化水素水の発生を行うことができる。
【0012】
第4の発明は、特に、第1の発明の酸素混合ガス発生装置が、電磁式エアーポンプであるものである。もっとも簡便で、低コストの酸素供給手段であるからである。
【0013】
第5の発明は、特に、第1の発明の酸素混合ガス発生装置が、酸素イオン導電性を有する固体電解質と、前記固体電解質の両面に形成された電極と、前記固体電解質及び前記電極を加熱するヒータとを有し、前記電極間に電圧を印加することで酸素を電気化学的に分離する構成である。第4の発明のエアーポンプで発生する酸素混合ガスの酸素濃度は約21%であるが、本発明では、原理的に約100%まで高めることができる。したがって、原料である酸素濃度を増加させることができ、過酸化水素水の生成効率を向上させることができる。
【0014】
第6の発明は、第5の発明の固体電解質として、ランタンガレートを使用するものである。ランタンガレートはランタンとガリウムを主成分としたペロブスカイト型複合金属酸化物であり、400℃以上で高い酸素イオン導電性を有す。したがって従来高温でしか動作しない第5発明の構成の動作温度を抑えることができ、効率的に酸素を発生させることができる。
【0015】
第7の発明は、特に、第5の発明の電極が、固体電解質に接した金属酸化物と金属酸化物に接した貴金属との2層で構成されたものである。イオン導電性の金属酸化物を使用することで、酸素の解離吸着、イオン化の反応性を高めることができる。また、貴金属を金属酸化物の層上に配置することで、電極面上を等電位化、均熱化することができ、反応効率を向上させることができる。
【0016】
第8の発明は、特に、第7の発明の金属酸化物が、イオン導電性に優れたサマリウムとコバルトを主成分とする複合酸化物であり、かつ貴金属が金であり、安定性と接着性の点で優れている。
【0017】
以下、本発明の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における酸素混合ガス発生装置1と貴金属触媒3を封入させた封入容器2の断面図、図2は、図1の装置を配置したときの電気洗濯機の概略断面図である。
【0019】
本実施の形態1における貴金属触媒3は、ゼオライトの金属酸化物4の粒子表面に金5が支持された金触媒である。これは以下の製法によって調整されたものである。
【0020】
先ず、塩化金酸イオン水溶液と有機溶媒の二相系に四級アンモニウム塩を加えて塩化金酸イオンを有機溶媒相に移動させ、アルカンチオールを加えた後、塩化金酸イオンを還元し、溶媒を除去する。これによって得られた固形物は、金粒子の群、疎水性基を有する有機配位子及び四級アンモニウム塩からなる。
【0021】
次に、その固形物を熱処理することで、四級アンモニウム塩が溶媒として作用し、金粒子の周囲に有機配位子が均等に配位する。続いて、固形物を有機溶媒に再溶解し、アルコール等を加える。これにより金粒子及び有機配位子からなる沈殿が生じ、四級アンモニウム塩が分離される。そしてゼオライトの粒子と溶媒とともに混合して焼成することによって、金触媒を生成する。ここで金の粒子径は、ナノメートルオーダーが良い。なお、本発明の金属酸化物は、ゼオライトに限定されるものでなく、シリカ、アルミナ、チタニア又はこれらの複合酸化物でも良い。
【0022】
次に、過酸化水素水の発生のための動作、作用を説明する。まず、封入容器2には、上記方法によって作製された金触媒が8g封入されている。その中に流入管6を通って水道水300mlが注がれる。続いて、電磁式エアーポンプである酸素混合ガス発生装置1から逆止弁7を通って酸素濃度約21%の酸素混合ガスが吹き込まれて、室温で12時間曝気する。その後、静置させて触媒を沈殿させて、ネット8の上部の流出管9からポンプ10によって上澄みを吸い上げる。流出口11からは、過酸化水素水が流れ出て、洗濯槽12の中に注ぎ込まれる。
【0023】
本実施の形態1による電気洗濯機と通常の電気洗濯機によって、黄ばんだ衣類の洗浄後の黄ばみ状態を色彩色差計(ミノルタ株式会社製CR−300)と目視観察によって評価した。その結果、本実施の形態1による電気洗濯機では、色差が大きく変化し、また目視観察でも黄ばみが少なくなった。
【0024】
(実施の形態2)
図3、図4は本実施の第2の実施の形態における酸素混合ガス発生装置27と貴金属触媒を封入させた封入容器13の断面図、図5は、図4の装置を配置したときの電気洗濯機の概略断面図である。
【0025】
実施の形態1と異なる点は、酸素混合ガス発生装置27が、固体電解質20に形成された電極間に電圧を印加することで酸素を電気化学的に分離する構成となることである。本構成は、高濃度の酸素を発生させるものである。
【0026】
固体電解質20は、酸素イオン導電性を有する金属酸化物であり、イットリア安定化ジルコニア等の汎用的な固体電解質でも良いが、ランタンとガリウムを組成に持つランタンガレート系のペロブスカイト型酸化物がより好ましい。特に輸率がほぼ1.0となるよう他の金属を添加したものが好ましい。本実施の形態ではストロンチウムとマグネシウムを添加して焼結させたランタンガレート(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2O3)を、直径45mm、厚み0.2mmに加工して用いる。
【0027】
アノード電極21とカソード電極22には、白金や銀などの貴金属、サマリウムとコバルトから成る金属酸化物などを用いる。これらの電極は、スクリーン印刷による塗布や蒸着、スパッタリング等によって形成できる。本実施の形態では、スクリーン印刷によって、サマリウムとコバルトを組成とした複合酸化物(Sm0.5Sr0.5CoO3)を10〜20μmの厚みで成形し、さらにその上に金の電極を5〜10μmの厚みで積層させた。
【0028】
そして、固体電解質20を上下に挟むように、断熱材23、24が配置されている。ここで断熱材は、シリカの粉末を充填して形成された多孔体で、通気性と断熱性を併せ持つものである。また、断熱材24にはヒータ25が埋め込まれて、電源(図示せず)によって通電することにより発熱する。断熱材の厚みは約15mmとした。
【0029】
以上のように構成された電気洗濯機で、特に、過酸化水素水の発生のための動作、作用を説明する。
【0030】
まず、酸素濃度約100%のガス発生動作について説明する。ヒータ25の電源(図示せず)を入力することによって、固体電解質20が加熱される。そして所定の温度になったとき、電源26によってアノード電極21とカソード電極22の間に電圧を印加する。するとカソード電極側の外部空間の酸素分子は、カソード電極22から酸素イオンとして固体電解質20に取り込まれ、アノード電極21まで移動する。
【0031】
アノード電極21に到達した酸素イオンは酸素分子になり、アノード電極側の外部空間に放出される。カソード電極側の外部空間とアノード電極側の外部空間とは固体電解質20によって仕切られているため、アノード電極側の外部空間からカソード電極側の外部空間への酸素の逆移動はない。以上のような構成で、固体電解質20に電流を約27アンペア流すことができ、毎分当たりの100%濃度の酸素を約100ml発生させることができた。
【0032】
次に、過酸化水素水の発生動作について説明する。封入容器13には、実施の形態1と同様な方法で作製された金触媒が8g封入されている。その中に流入管6を通って水道水300mlが注がれる。続いて逆止弁7を通って上記方法で作製された酸素濃度約100%の酸素ガスが吹き込まれて、室温で3時間曝気される。その後、静置させて触媒を沈殿させて、ネット8の上部の流出管9からポンプ10によって上澄みを吸い上げる。流出口11からは、過酸化水素水が流れ出て、洗濯槽12の中に注ぎ込まれる。
【0033】
なお、実施の形態2における酸素混合ガスの発生装置27は、酸素濃度100%を発生させるものであるが、発生させた酸素と外気とを混合させて、酸素濃度を21〜99%にしても良い。この場合、濃度は下がるが、流量は上がる利点がある。外気と混合させる方法として、ファン等の送風機やポンプ等の送風機、吸引機が使用できる。
【0034】
以上の構成による電気洗濯機と、通常の電気洗濯機によって、黄ばんだ衣類の洗浄後の黄ばみ状態を色彩色差計(ミノルタ株式会社製CR−300)と目視観察によって評価した。その結果、本実施の形態2による電気洗濯機では、色差が大きく変化し、また目視観察でも黄ばみが少なくなり、白さが目立った。なお、実施の形態1よりも、短時間で過酸化水素水が生成でき、電気洗濯機の漂白洗浄能力としてより高い効果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明にかかる電気洗濯機は、酸化力の強い過酸化水素水を発生させることができるため、衣類の洗浄や漂白だけでなく、洗濯槽の洗浄、漂白も可能であり、民生品や業務用の衣類乾燥機、洗濯乾燥機等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態1における電気洗濯機の酸素混合ガス発生装置及び封入容器の断面図
【図2】同電気洗濯機の概略断面図
【図3】本発明の実施の形態2における電気洗濯機の酸素混合ガス発生装置及び封入容器の断面図
【図4】同電気洗濯機の酸素混合ガス発生装置及び封入容器の他の例の断面図
【図5】本発明の実施の形態2における電気洗濯機の概略断面図
【符号の説明】
【0037】
1 酸素混合ガス発生装置
2 封入容器
3 貴金属触媒
4 金属酸化物
5 金
20 固体電解質
25 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素混合ガスを発生させる酸素混合ガス発生装置と貴金属触媒とを有し、水と前記貴金属触媒とを混合させた混合水に、前記酸素混合ガス発生装置から発生させた酸素混合ガスを接触させる構成を備えたことを特徴とする電気洗濯機。
【請求項2】
貴金属触媒が、金属酸化物の粒子表面に支持された金触媒である請求項1記載の電気洗濯機。
【請求項3】
金属酸化物が、ゼオライトである請求項1または2記載の電気洗濯機。
【請求項4】
酸素混合ガス発生装置が、電磁式エアーポンプである請求項1記載の電気洗濯機。
【請求項5】
酸素混合ガス発生装置は、酸素イオン導電性を有する固体電解質と、前記固体電解質の両面に形成された電極と、前記固体電解質及び前記電極を加熱するヒータとを有し、前記電極間に電圧を印加することで酸素を電気化学的に分離する構成であることを特徴とした請求項1記載の電気洗濯機。
【請求項6】
固体電解質がランタンガレート系の金属酸化物である請求項5記載の電気洗濯機。
【請求項7】
電極が、固体電解質に接した金属酸化物と前記金属酸化物に接した貴金属との2層で構成された請求項5記載の電気洗濯機。
【請求項8】
金属酸化物がサマリウムとコバルトを主成分とする複合酸化物であり、かつ貴金属が金である請求項7記載の電気洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−130044(P2007−130044A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323204(P2005−323204)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】