説明

電気温灸装置

【課題】温熱効果を皮膚患部表面だけでなく体の深い部分に伝えることが可能な電気温灸装置を提供する。
【解決手段】本発明の電気温灸装置は、先端側に発熱部を有する電気発熱体と、発熱部の先端側をカバーする保温断熱部材と、を備える電気温灸装置であって、保温断熱部材は、 白金、金、又はパラジウムからなる体積平均粒径が1〜10nmの貴金属粒子と、貴金属粒子を表面に担持する炭化ケイ素又は炭化ジルコニウムを含むセラミックスからなる基材と、貴金属粒子及び基材の間に介設されるコロイダルシリカからなる接着層と、を有する貴金属担持材料を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気温灸装置に関し、患者が温灸療法を行う際に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来における電気温灸装置は、発熱源として電気を使用しているため、人体に不必要・不快な強刺激の発生を防止できるとともに温熱制御がしやすいため火傷を防止できるという利点があった。さらに、灰や火の粉が発生しないため、布団や床面を汚したり、焦がすことはなく、安全や火災の点からも管理しやすいという利点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−250861号公報
【特許文献2】特開平9−38173号公報
【特許文献3】特開平7−299116号公報
【特許文献4】特開平8−066457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電気温灸装置において、温熱治療効果は、皮膚患部表面だけでなく、体の深い部分にも伝わることが望まれている。
【0005】
ところで、本発明者らは従来よりナノプラチナの作用を増強する目的でセラミックスの表面にナノプラチナを担持した機能性材料について種々の開発を行っている。ナノプラチナは、抗酸化能の発現を始め、化学的・物理的に種々の作用効果を奏することが知られており、その作用効果を利用した製品が多数上市され注目を集めている。例えば、ナノプラチナを利用した製品としては、炊飯器の内釜にプラチナを配合した製品がある。この炊飯器は内釜内の水に作用して炊きあがる米飯についても非常に美味しいと評判である。また、化粧品や飲料水にもナノプラチナが配合されており、生体に対する機能性改善効果の発現が期待されている。
【0006】
本発明者らはこのように優れた作用効果を発現するナノプラチナの更なる用途を探索する過程において電気温灸装置への応用の可能性を見出した。すなわち、ナノプラチナを配合したセラミックスを電気温灸装置の発熱部と人体との間に介設させることにより人体への熱伝導がまろやかになるとの知見を得てナノプラチナを担持したセラミックス材料の新たな用途を見出した。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、人体への熱伝導をまろやかにし、体の深い部分に熱を伝えることが可能となる電気温灸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気温灸装置は、本体の先端側に発熱部を有する電気発熱体と、前記発熱部の先端側をカバーする保温断熱部材と、を備える電気温灸装置であって、前記保温断熱部材は、白金、金、又はパラジウムからなる体積平均粒径が1〜10nmの貴金属粒子と、前記貴金属粒子を表面に担持する炭化ケイ素又は炭化ジルコニウムを含むセラミックスからなる基材と、前記貴金属粒子及び前記基材の間に介設されるコロイダルシリカからなる接着層と、を有する貴金属担持材料を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の電気温灸装置によれば、保温断熱部材が貴金属担持材料を含んでいるため、遠赤外線域から近赤外線域にかけて赤外線を均一に放射することが可能になり、人体の深部から浅部に対して均一に発熱部の熱を伝導することが可能になる。そのため、人体に対する熱伝導がまろやかに感じることになる。
【0010】
ここで、保温断熱部材は、粉末状の前記貴金属担持材料が表面に展着された繊維からなるものでもよい。また、保温断熱部材は、粉末状の前記貴金属担持材料が練り込まれた繊維からなるものでもよい。また、保温断熱部材は、粉末状の前記貴金属担持材料が練り込まれた樹脂からなるものでもよい。また、貴金属担持材料の基材は、焼結セラミックスであってもよい。
【0011】
ここで、電気発熱体は、前記発熱部の温度を調節する温度調節手段を備えることが好ましい。また、発熱部は、PTCヒータを備えることが好ましい。この場合、PTCヒータは温度調節手段として機能する。
【0012】
また、本発明の電気温灸装置は、電気発熱体の先端側に、記発熱部を囲み且つ前記発熱部よりも先端方向に突出した筒状カバー体と、前記筒状カバー体を先端方向に弾性的に付勢する弾性部材と、をさらに備え、前記筒状カバーは、前記電気発熱体に進退可能に外嵌めされ、前記電気発熱体は、前記筒状カバー体に前記発熱部が押し込まれた状態において前記発熱部をONにし、当該状態から開放された際にOFFにするようにしてもよい。
【0013】
また、前記保温断熱部材と前記発熱部との間に別の断熱材を備えてもよい。また、前記保温断熱部材の先端側に、前記保温断熱部材を囲み且つ前記電気発熱体に固定されたカバーを備えてもよい。この場合、保温断熱部材は、カバーと発熱部の間に介在されるため、使用者はカバーを患部皮膚に直接押し当てるだけでよく、使用しやすくなる。また、保温断熱部材を保護することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電気温灸装置によれば、発熱部の熱の人体への熱伝導をまろやかにでき、体の深い部分に熱を伝えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第一実施形態の電気温灸装置を示す断面図である。
【図2】第一実施形態の電気温灸装置の使用状態図である。
【図3】放射試験結果を示す図である。
【図4】放射試験結果を示す図である。
【図5】第二実施形態の電気温灸装置を示す断面図である。
【図6】第三実施形態の電気温灸装置を示す正面図である。
【図7】図6におけるV−V線部分断面図である。
【図8】第三実施形態の保温断熱部材及び発熱部を説明するための分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。
【0017】
本発明は、電気発熱体の発熱部を貴金属担持材料を含む保温断熱部材でカバーし、この電気発熱体を押圧することによって保温断熱部材を介して皮膚患部及び体の深い部分に温熱刺激効果を与えるところに主要な特徴を有する。
【0018】
<第一実施形態>
第一実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、第一実施形態の電気温灸装置を示す断面図である。図2は、第一実施形態の電気温灸装置の使用状態図である。図1に示すように、電気温灸装置Mは、保温断熱部材Pと、電気発熱体10と、を備えている。
【0019】
まず、電気発熱体10について説明する。図1に示すように、電気発熱体10は、主に、筒状本体20と、円盤状発熱部22と、基板23と、電気制御回路24と、温度制御回路25と、操作スイッチ27と、電源コード28と、を備えている。
【0020】
筒状本体20は、電気発熱体10の主要部を構成し、先端(図1における下端)が開口21した有底円筒状となっている。筒状本体20の側壁部には、窓部26が形成されている。なお、先端とは、電気温灸装置において、患部皮膚Aに当接させる側の端部を意味する。
【0021】
円盤状発熱部22(本発明の「発熱部」に相当する)は、筒状本体20の開口21を塞ぐように筒状本体20の先端に固定されている。基板23は、筒状本体20内に設置されている。また、電気制御回路24及び温度制御回路25(本発明の「温度調節手段」に相当する)は、基板23に設置されている。電気制御回路25は、円盤状発熱部22を迅速に加熱するための回路であり、通常、20〜30秒で所定温度(80℃)に達するようにするためのものである。温度制御回路25は、円盤状発熱部22の温度を80℃以下にコントロールするためのものである。
【0022】
操作スイッチ27は、操作突起271を有し、筒状本体20の窓部26の裏側(内側)に、当該操作突起271を窓部26に露出した状態で設置されている。操作スイッチ27は、窓部26内において操作突起271をスライドさせることにより、円盤状発熱部22への電源をON・OFFさせる。電源のON・OFFに応じて、温度制御回路25を介して円盤状発熱部22の温度調節が行われる。なお、操作突起271は、窓部26の表面内に埋設されているため、筒状本体20がスライドしても、後述する筒状カバー体30に接触することはない。
【0023】
電源コード28は、筒状本体20内の上端部における側壁を貫通した状態で進入している。電源コード28は、電気制御回路24及び温度制御回路25を介して円盤状発熱部22に電気的に接続されている。
【0024】
次に、保温断熱部材Pについて説明する。保温断熱部材Pは、樹脂(ポリプロピレン)からなる板状部材である。この樹脂には、貴金属担持材料が練り込まれている。貴金属担持材料は、貴金属粒子と、基材と、接着層とからなっている。貴金属粒子は、体積平均粒径が1〜10nmであって、白金、金、及び、パラジウムのうち少なくとも1種の貴金属からなっている。基材は、前記貴金属粒子を表面に担持する炭化ケイ素又は炭化ジルコニウムを含むセラミックスからなっている。接着層は、前記貴金属粒子及び前記基材の間に介設されるコロイダルシリカからなっている。
【0025】
なお、貴金属粒子は、白金、金、及び、パラジウムのうち少なくとも1種の貴金属から形成されており、その他の元素を含有することもできる。貴金属微粒子の体積平均粒径は1nm〜10nm程度であり、好ましくは1nm〜5nm程度である。そして、特に質量基準で90%の粒子の粒径が0.1nm〜10nmに入るものであることが望ましい。貴金属微粒子の含有量は特に限定されず、必要に応じて適正な量だけ混合される。貴金属微粒子の製造方法は特に限定されないが、一例を後の製造方法の説明にて併せて行う。
【0026】
また、基材を形成するセラミックスとしては、炭化ケイ素又は炭化ジルコニウムの他、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、又は、粘土化合物を焼成したもの等、を含んでいてもよい。
【0027】
また、接着層であるコロイダルシリカは、一部乃至全部が融解する場合を含み、粒子間が融解などにより一部、接着している場合を含む。コロイダルシリカの含有量は特に限定されないが、全体の質量を基準として、20%〜50%程度とすることが望ましく、25%〜30%程度とすることが更に望ましい。
【0028】
(貴金属担持材料の製造方法)
本実施形態の貴金属担持材料の製造方法にて製造される貴金属担持材料は前述した貴金属担持材料である。本実施形態の貴金属担持材料の製造方法は、付着工程と、酸化除去工程と、必要に応じて噴霧乾燥工程、その他の工程を有する。
【0029】
付着工程は、貴金属ナノコロイド含有分散液にセラミックスからなる基材を接触させて基材の表面に貴金属ナノコロイドを付着させる工程である。貴金属ナノコロイドは貴金属粒子とその貴金属粒子をコロイド化するコロイド化剤とコロイダルシリカとを有し、何らかの分散媒中に分散された分散液である。分散媒としては水、アルコール(エタノールなど)などが例示できる。コロイド化剤としては特に限定されないが、いわゆる増粘剤、界面活性剤、カルボキシ基を化学構造中に含むカルボキシ基含有化合物が例示できる。コロイド化剤としては、ポリアクリル酸(塩を含む、例えばNa塩、K塩)、ポリメタクリル酸(塩を含む、例えばNa塩、K塩)、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルピロリドン(特に、ポリ−1−ビニル−2−ピロリドン)、ポリビニルアルコール、アミノペクチン、ペクチン、メチルセルロース、メチルスロース、グルタチオン、シクロデキストリン、ポリシクロデキストリン、ドデカンチオール、有機酸(クエン酸などのヒドロキシカルボン酸)、グリセリン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、カチオン性ミセル−臭化セチルトリメチルアンモニウム、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、両性、ノニオン性)、アルキル硫酸エステルのアルカリ金属塩、それらの混合物が例示できる。コロイド化剤がカルボキシ基含有化合物である場合は貴金属粒子に対して、カルボキシ基のモル数が白金のモル数を基準として80〜180程度になるように含有させることが望ましい。コロイダルシリカの含有量としては固形分の質量が全体を基準として10質量%以上50質量%以下にすることが望ましく、10質量%以上30質量%以下にすることがより望ましい。コロイダルシリカは粒径が1nm〜1μm程度のものをいう。
【0030】
貴金属ナノコロイド含有分散液は貴金属塩と保護剤(例えば有機酸)とを水及びアルコールの混合液に溶解させた溶液を還流することにより貴金属粒子を析出させることで貴金属ナノコロイド含有分散液が調製できる。その後、分散媒をアルコール(エタノールなど)に置換することもできる。置換方法としては置換前の分散媒の一部を蒸発させた後に、置換後の分散媒(アルコールなど)を添加する操作を繰り返す方法が例示できる。
【0031】
貴金属ナノコロイド含有分散液を基材に接触させることにより、基材の表面に貴金属ナノコロイドを付着させた後、何らかの方法(例えば乾燥など)にて分散媒を除去することにより付着物が得られる。
【0032】
その後、付着物に対して酸化除去工程を行う。酸化除去工程は酸化雰囲気下で、加熱することによりコロイド化剤を酸化除去する工程である。このときに特にコロイダルシリカが熔融乃至軟化して貴金属粒子と基剤との間を接着することが望ましい。酸化除去工程を行う場合の付着物の形態は特に限定されず、粉末状、塊状(例えば板状など)の状態にて行うことができる。最終的に必要な形状に成形した後に、本酸化除去工程を行うことにより、貴金属担持材料を必要な形状にて成形可能である。また、得られた貴金属担持材料を粉砕するなどの操作を加えることにより、粉末にすることもできる。加熱温度は800℃〜1300℃程度にすることが望ましく、1000℃〜1100℃にすることが更に望ましい。加熱時間はコロイド化剤が酸化除去されるために必要な時間に応じて適正に設定可能であり、例えば、1時間〜3時間程度にすることができる。
【0033】
付着物の形態を粉末状にするための望ましい方法としては噴霧乾燥工程を採用することが挙げられる。噴霧乾燥工程は基材として粉末状の形態を採用し、その基材を貴金属ナノコロイド含有分散液中に分散させた状態で噴霧乾燥を行う方法である。噴霧乾燥を行う条件は特に限定しないが、分散媒が速やかに除去できる温度にすることが望ましい。例えば、分散媒として水を採用する場合には噴霧乾燥を行う温度として、180℃〜250℃程度を採用すると速やかに分散媒を蒸発除去することができる。
【0034】
(使用方法)
電気温灸装置Mの使用方法について、図1および図2を参照して説明する。図1及び図2に示すように、まず、人体の皮膚患部Aに、保温断熱部材Pを置く。そして、電気発熱体10の操作スイッチ27をONにするとともに温度調節の設定を行う(低温、中温、高温)。その後、保温断熱部材Pの表面に、本体20の円盤状発熱体22を押し当てる。これによって、温灸効果を奏することができる。なお、保温断熱部材Pは、電気発熱体10の先端部に固定されていても良い。この場合、操作スイッチ27をONにし、電気温灸装置Mの先端を直接患部皮膚Aに押し当てることで温灸効果が発揮され、スムーズな温灸作業が可能となる。
【0035】
(保温断熱部材Pのその他の態様)
ここで、保温断熱部材Pは、上記に限られない。例えば、保温断熱部材Pは、表面に粉末状の貴金属担持材料が展着された繊維からなるものでもよい。貴金属担持材料の繊維表面への展着は、繊維(糸)の状態で行っても良いし、布、不織布などの状態で行っても良い。また、保温断熱部材Pは、粉末状の上記貴金属担持材料が練り込まれた繊維からなるものでもよく、例えば当該繊維により布、不織布、紙等を形成したものでもよい。また、貴金属担持材料の基材は、焼結セラミックスであってもよい。
【0036】
また、電気発熱体10と保温断熱部材Pの間、又は、保温断熱部材Pと皮膚患部Aの間(すなわち、保温断熱部材Pの先端側)に別の保温断熱部材を介在させてもよい。
【0037】
(試験1)
本実施形態の電気温灸装置Mと、保温断熱部材Pに換えて貴金属担持材料を含まない樹脂からなる保温断熱部材(以下、保温断熱部材Sと称する)を備えた電気温灸装置について、二重盲検法により実際に使用し、官能試験(男性6人、女性6人)を行った。その結果、男性4人と女性5人が「電気温灸装置Mのほうが気持ちが良い」と評価をした。評価時の環境は天候が雨、外気温13℃、室温21℃であった。
【0038】
(試験2)
保温断熱部材Pと、保温断熱部材Sについて放射率の測定を行った。図3は、保温断熱部材Pについての放射率を示すグラフである。図4は、金属担持材料を含まない保温断熱部材Aについての放射率を示すグラフである。
【0039】
具体的に、試験で用いた貴金属担持材料は、貴金属粒子として体積平均粒径が1〜10nmの白金を用い、基材としてシリカ及び炭化ジルコニウムを含むセラミックスを用い、接着層としてコロイダルシリカを用いて生成したものである。試験における保温断熱部材Pは、上記貴金属担持材料(粉末状)をポリプロピレンに練り込んでシート状に形成したものである。
【0040】
基材中の炭化ジルコニウムの体積割合は、およそ7.5%であって、5%〜10%であることが好ましい。また、炭化ジルコニウムの質量は、およそ25g/mであり、20g/m以上であることが好ましい。保温断熱部材Sは、単にポリプロピレンからなる樹脂シートである。
【0041】
遠赤外線の放射率が高い(反射率が低い)ほど、保温断熱部材が熱線を吸収し、人体への熱伝導がまろやかになり、体の深い部分まで熱を伝えることができると考えられる。遠赤外線の中でも、熱線として影響すると考えられる短波長域(およそ10μm以下)の放射率が高いほど、保温断熱部材が効率よく熱線を吸収し、人体への効果的な熱伝導を可能とする。
【0042】
図3及び図4に示すように、およそ10μm以下の波長において、保温断熱部材Pのほうが放射率が大きくなった。つまり、保温断熱部材に貴金属担持材料を含ませることで、短波長域における遠赤外線の放射を増大させることができる。
【0043】
<第二実施形態>
第二実施形態について図5を参照して説明する。図5は、第二実施形態の電気温灸装置を示す断面図である。図5に示すように、第二実施形態の電気温灸装置M2は、主に、電気発熱体10と、筒状カバー体30と、保温断熱部材Pと、を備えている。なお、本実施形態では、筒状本体20の先端部外周面に、鍔状の受け座29が突設されている。受け座29については後述する。
【0044】
筒状カバー体30は、筒状本体20に進退可能に外嵌めされている。筒状カバー体30は、電気温灸装置M2を使用していない状態では、先端位置が円盤状発熱部22よりも突出した(先端側に位置した)状態で円盤状発熱部22を囲んでいる。筒状カバー体30の内周面には、鍔状の受け座31が形成されている。
【0045】
ここで、受け座29と受け座31の間には、コイル状圧縮バネSが配置されている。コイル状圧縮バネSは、筒状本体20に外嵌めされた状態で筒状カバー体30との間に介在している。そして、受け座31と受け座29との間に掛け渡されることにより、筒状カバー体30を、先端方向に弾性的に付勢している。
【0046】
また、筒状カバー体30の下端縁には、耐熱ゴムリング35が固着されている。これは、皮膚患部Aを保護するためのものである。なお、窓部26の上端部と筒状カバー体30の上端との距離Bは、筒状本体20の筒状カバー体30に対するストロークCよりも小さく設計されている。このため、筒状本体20を押し込んで、温灸作業をする際には、操作スイッチ27は筒状カバー体30内に埋没し、人の手に触れることはない結果、作業中において、円盤状発熱部22の温度設定が変動したり、スイッチがOFFになったりすることはない。
【0047】
また、筒状本体20の側壁部には、リミットスイッチ50が埋設されている。このリミットスイッチ50は、筒状本体20が筒状カバー体30に対して押し込められ、円盤状発熱部22が保温断熱部材Pを介して皮膚患部Aに達した際に、その位置、移動又は変位を検出して円盤状発熱部22への電流の流れをONにさせる。このため、たとえ操作スイッチ27をONの状態にしておいても、円盤状発熱部22は、皮膚患部Aを押圧しないかぎり電源がONにならないため、電力消費の無駄を防止できる。このリミットスイッチ50としては通常マイクロスイッチが使用される。
【0048】
第二実施形態の使用方法を、図5を参照して説明する。図5に示すように、人体の皮膚患部Aに、まず、保温断熱部材Pを置く。そして、電気発熱体10の操作スイッチ27をONにするとともに温度調節の設定を行う(低温、中温、高温)。その後、保温断熱部材P の表面に、筒状カバー体30の先端を当てる。そのままの状態で、筒状本体20(電気発熱体10)をコイル状圧縮バネSに抗して押し込み、円盤状発熱部22を筒状カバー30の先端部内面に押し当てる(図5の仮想線参照)。これにより、リミットスイッチ50がONとなり、円盤状発熱部22は電気制御回路24によって約20〜30秒くらいで所定温度(80℃位)に達し、保温断熱部材Pを介して、皮膚患部Aに温熱刺激を与えることができる。
【0049】
温灸療法を終了する場合には、筒状本体20の押し込みを解除すればよい(図5の実線参照)。これにより、筒状本体20(電気発熱体10)は、コイル状圧縮バネSの弾性によって原状態(図5の実線参照)にもどり、リミットスイッチ50はOFFとなり、円盤状発熱体22への電流の流れは遮断される。なお、このとき、操作スイッチ27は未だONの状態であるため、連続して次の療法がしやすくなる。
【0050】
また、保温断熱部材Pは、筒状カバー体30と一体的に形成されていてもよい。例えば、筒状カバー体30は、貴金属担持材料を練り込んだ樹脂により形成されてもよい。
【0051】
<第三実施形態>
第三実施形態の電気温灸装置M3について、図6〜図8を参照して説明する。図6は、第三実施形態の電気温灸装置を示す正面図である。図7は、図6におけるV−V線部分断面図である。図8は、第三実施形態の保温断熱部材及び発熱部を説明するための分解図である。
【0052】
図7に示すように、電気温灸装置M3は、主に、電気発熱体10aと、保温断熱部材P3と、を備えている。電気発熱体10aは、図6に示すように、主に、先端が開口したピストル状(L字状)の本体20aと、発熱部22aと、ACアダプタ70と、を備えている。
【0053】
発熱部22aは、本体20aの先端内部に設置されている。発熱部22aは、主に、マウント用プレート80と、支持筒81と、発熱用プレート83と、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ85と、下部電極86と、上部電極87と、筒状スペーサ88と、を備えている。
【0054】
マウント用プレート80は、アルミニウムからなり、本体20a内先端側に固定されている。支持筒81は、マウント用プレート80にビス82、82止めされている。支持筒81は、耐熱性部材であり、ベークライトによって形成されている。
【0055】
発熱用プレート83は、アルミニウムからなり、支持筒81の上端縁にビス84、84止めされている。後述するPTCヒータ85の熱を受けた発熱用プレート83が伝熱対象に押しつけられることによって温灸効果が発揮される。
【0056】
PTCヒータ85は、高温になると急激に抵抗値が増加する性質を有し、所定温度(85℃程度)に発熱を制御する。PTCヒータ85は、その下面(末端側)に下部電極86が、上面(先端側)に上部電極87が重ねられた状態で、発熱用プレート83の裏側(末端側)に配置されている。PTCヒータ85は、耐熱性の筒状スペーサ(ベークライト製)88を介して、マウント用プレート80にビス89止めされている。
【0057】
本体20aには、第一実施形態同様、操作スイッチ27が設けられている。本実施形態では、操作スイッチ27をスライドさせることで、パワーON/OFF、高温モード(85℃)、及び、低温モード(75℃)を切り替えることができる。各モードは、発熱温度を調整するためのものである。
【0058】
図7及び図8に示すように、保温断熱部材P3は、複数の綿布及び耐熱紙を含み、マウント用プレート80の上面に重ねられ、且つ、その端縁を本体20aの先端部に沿って折り曲げられて、固定筒90によって挟持固定されている。保温断熱部材P3は、図8に示すように、2枚の綿布91、91の間に4〜8枚の耐熱紙92を重ねて挟み、テフロン(登録商標)シート93で覆ったものである。
【0059】
ここで、綿布91、91は、粉末状の貴金属担持材料を表面に展着させた繊維からなっている。これにより、遠赤外線の放射が増大し、第一実施形態と同様の効果が発揮される。さらに、本実施形態のように、保温断熱部材P3を複数枚の布及び断熱紙を有する構成すると、保温・断熱の効果が極めて向上し、棒もぐさによる温圧灸と同じ効能、即ち、身体の深部にじわっとえぐり込むような温熱感が得られる。貴金属担持材料を含まない上記構成の保温断熱部材に対する官能試験では、30人(20〜80歳代の女性21人、同男性9人)中29人(同女性21人、同男性8人)が「上記効能がある」と答えた。また、本体20aがピストル状であるため、使用者が本体20aを把持しやすく、目的の部位(患部皮膚)に当該先端部を当接させやすくなる。
【0060】
なお、保温断熱部材P3において、耐熱紙92は、粉末状の貴金属担持材料を練り込んだ繊維からなるものでもよい。また、保温断熱部材P3は、複数の綿布91及び耐熱紙92のうち少なくとも1つが貴金属担持材料を含んでいればよい。また、テフロン(登録商標)シート93に代わり、樹脂製のカバー部材やプラスチックフィルム等を採用してもよく、テフロン(登録商標)シート93上に前記カバー部材等を設けてもよい。
【0061】
また、PTCヒータ25は、通常の電気ヒータであってもよく、この場合、電気ヒータと共に温度調節手段(電気制御回路及び温度制御回路など)を備えることが好ましい。また、各プレート80、83は、アルミニウムに限らず、鉄や銅であってもよい。また、発熱部22、22aと人体(患部皮膚)との間にビワの葉を介在させた場合、または、発熱部22、22aが先端部にビワの葉を備えている場合には、ビワ葉温灸同等の効果が発揮される。
【符号の説明】
【0062】
A:皮膚患部、 F:温灸シート、
M、M2、M3:電気温灸療装置、
S:コイル状圧縮バネ、 P、P3:保温断熱部材、
10:電気発熱体、 20:筒状本体、 20a:本体、 22:円盤状発熱部、
22a:発熱部、 23:基板、 24:電気制御回路、 25温度制御回路、
27:操作スイッチ、 271:操作突起、 28:電源コード、
29、31:受け座、 30:筒状カバー体、 70:ACアダプタ、
80:マウント用プレート、 81:支持筒、 83:発熱用プレート、
85:PTCヒータ、 86:下部電極、 87:上部電極、 88:筒状スペーサ、
91:綿布、 92:断熱紙、 93:テフロン(登録商標)シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に発熱部を有する電気発熱体と、前記発熱部の先端側をカバーする保温断熱部材と、を備える電気温灸装置であって、
前記保温断熱部材は、
白金、金、又はパラジウムからなる体積平均粒径が1〜10nmの貴金属粒子と、
前記貴金属粒子を表面に担持する炭化ケイ素又は炭化ジルコニウムを含むセラミックスからなる基材と、
前記貴金属粒子及び前記基材の間に介設されるコロイダルシリカからなる接着層と、
を有する貴金属担持材料を含むことを特徴とする電気温灸装置。
【請求項2】
前記保温断熱部材は、粉末状の前記貴金属担持材料が表面に展着された繊維からなる請求項1に記載の電気温灸装置。
【請求項3】
前記保温断熱部材は、粉末状の前記貴金属担持材料が練り込まれた繊維からなる請求項1に記載の電気温灸装置。
【請求項4】
前記保温断熱部材は、粉末状の前記貴金属担持材料が練り込まれた樹脂からなる請求項1に記載の電気温灸装置。
【請求項5】
前記基材は、焼結セラミックスである請求項1に記載の電気温灸装置。
【請求項6】
前記電気発熱体は、前記発熱部の温度を調節する温度調節手段を備える請求項1〜5の何れか一項に記載の電気温灸装置。
【請求項7】
前記発熱部は、PTCヒータを備える請求項1〜6の何れか一項に記載の電気温灸装置。
【請求項8】
前記電気発熱体の先端側に、前記発熱部を囲み且つ前記発熱部よりも先端方向に突出した筒状カバー体と、
前記筒状カバー体を先端方向に弾性的に付勢する弾性部材と、
をさらに備え、
前記筒状カバーは、前記電気発熱体に進退可能に外嵌めされ、
前記電気発熱体は、前記筒状カバー体に前記発熱部が押し込まれた状態において前記発熱部をONにし、当該状態から開放された際にOFFにする請求項1〜7の何れか一項に記載の電気温灸装置。
【請求項9】
前記保温断熱部材と前記発熱部との間に断熱材を備える請求項1〜8の何れか一項に記載の電気温灸装置。
【請求項10】
前記保温断熱部材の先端側に、前記保温断熱部材を囲み且つ前記電気発熱体に固定されたカバーを備える請求項1〜9の何れか一項に記載の電気温灸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−234881(P2011−234881A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108651(P2010−108651)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(596087812)株式会社エルブ (15)
【出願人】(507325150)有限会社サービス経営研究所 (1)
【Fターム(参考)】