説明

電気生理学電極および電気生理学電極を含む装置

少なくとも実質的に平坦な遠位端、および/あるいは遠位端において、または遠位端に隣接して複数の表面不連続部分を含む電気生理学電極が開示される。一実施形態において、この電気生理学電極は、遠位端を規定し、少なくとも一つの流体開口部を含む管状の側壁と、少なくとも実質的に平坦な遠位壁であって、この遠位壁は、この遠位壁を通って延びる開口部がなく上記管状の側壁の遠位端に関連づけられた、少なくとも実質的に平坦な遠位壁とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、概して、例えば、組織に損傷を形成するために用いられ得る電極と、そのような電極を含む装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
電極が身体に挿入される多くの例がある。一つの例は、心房細動、心房粗動および心室頻拍のような心臓の状態の治療を含み、これらは、不整脈と呼ばれる不快で不規則な心拍を引き起こす。心臓における解剖学的障害が、心房において電気インパルスの通常均一な伝搬を中断させるとき、心房細動、心房粗動および心室頻拍が発生する。これらの解剖学的障害(「伝導ブロック」と呼ばれる)は、電気インパルスが、障害の周りを回るいくつかの循環する小波に縮重することをもたらし得る。「リエントリー回路」と呼ばれるこれらの小波は、心臓内の複数の室の通常は均一な作動を中断させる。
【0003】
軟らかい組織(すなわち、血液、骨および結合組織以外の組織)を切除することによって身体内の状態を治療するために、カテーテルおよび他の装置を使用するさまざまな最小侵襲性の電気生理学的処置が開発されてきた。心臓に関しては、心臓組織内に治療のための損傷を形成することによって、心房細動、心房粗動および心室頻拍を治療するために、最小侵襲性の電気生理学的処置が開発されてきた。最小侵襲性の外科処置中の軟らかい組織の凝塊による損傷の形成(「切除」とも呼ばれる)は、特定の侵襲性開放性心臓外科処置によって提供されるものと同じ治療上の利益を提供し得る。例えば、心房細動は、心臓組織内での一つまたは二つ以上の長く薄い損傷の形成によって治療されてきた。逆に、心房粗動および心室頻拍の治療は、心臓組織内における比較的大きな損傷の形成を必要とする。
【0004】
本発明の発明者らは、損傷、特に、比較的大きな損傷を形成するための従来の方法および装置が、改善の余地があることを決定した。例えば、本発明の発明者らは、従来の装置による大きな損傷の作成が、組織が焦げることおよび凝塊形成のリスクを包含することを決定した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(概要)
本発明の一実施形態に従った電極は、側壁および少なくとも実質的に平坦な遠位壁を含む。本発明の別の実施形態に従った電極は、管状の側壁と、端の壁と、この管状の側壁の遠位端に隣接した複数の表面不連続部分とを含む。
【0006】
そのような電極は、従来の電極に対して複数の利点を提供する。例えば、電極がまた、管状の側壁の中に流体開口部も含む場合には、平坦な遠位の壁および/または表面不連続部分は、開口部を通って流れる流体によって冷却される組織において、高い流体密度の領域を作る。
【0007】
添付の図面と関連して考慮されるとき、以下の詳細な説明を参照して本発明がより良く理解されるので、上記の説明ならびに本発明の多くの他の特徴および付随する利点は、明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
例示的な実施形態の詳細な説明が、添付の図面を参照して行われる。
【図1】図1は、本発明の実施形態に従ったカテーテル装置の平面図である。
【図2】図2は、図1のライン2−2に沿ってとられた断面図である。
【図3】図3は、図1のライン3−3に沿ってとられた断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に従った電気生理学電極の斜視図である。
【図5】図5は、図4に例示される電気生理学電極の立面図である。
【図6】図6は、図1のライン6−6に沿ってとられた断面図である。
【図7】図7は、図4に例示される電気生理学電極の遠位部分の一部分の拡大図である。
【図8】図8は、図4に例示される電気生理学電極の端面図である。
【図9】図9は、図4に例示される電気生理学電極によって形成される損傷を示す部分断面図である。
【図10】図10は、半球状の遠位端を有する電気生理学電極の端面図である。
【図11】図11は、図10に例示される電極によって形成される損傷を示す部分断面図である。
【図12】図12は、本発明の一実施形態に従った電気生理学電極の部分立面図である。
【図13】図13は、本発明の一実施形態に従った電気生理学電極の立面図である。
【図14】図14は、図13に例示される電気生理学電極の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(例示的な実施形態の詳細な説明)
以下は、本発明を実行する現在公知の最良の方式の詳細な説明である。この説明は、限定する意味において理解されるべきではなく、本発明の一般的な原理を例示する目的でのみ行われる。
【0010】
本発明は、内部の身体領域へのアクセスが、例えば、脈管系または消化管を通して、および/または最小侵襲性処置で得られる場合に、診断目的または治療目的で身体の管腔、室または空洞の中で用いられ得る。例えば、本明細書における発明は、心臓内の不整脈状態の診断および治療において用途を有する。本明細書における発明はまた、胃腸管、前立腺、脳、胆嚢、子宮および身体の他の領域の病気の診断または治療においても用途を有する。心臓内の状態の治療に関して、本発明は、損傷を作り、心房細動、心房粗動および心室頻拍を治療するために用いられ得る。
【0011】
例えば、図1に例示されるように、本発明の一実施形態に従ったカテーテル装置100は、中空の柔軟なカテーテル102、複数のリング電極104、先端電極106およびハンドル108を含む。カテーテル102は、操作可能であり得、二つの管状部分または二つの部材から形成され得、二つの管状部分または二つの部材の両方は、非電導性である。近位部材110は、比較的長く、ハンドル108に取り付けられ、比較的短い遠位部材112は、電極104および電極106を保持する。近位部材110は、生体適合性熱可塑性材料から形成され得、生体適合性熱可塑性材料は、例えば、Pebax(登録商標)材料(ポリエーテルブロックアミド)とステンレス鋼編組複合材、または良好なトルク伝達特性を有する、ポリエチレンとステンレス鋼編組複合材がある。細長いガイドコイル(図示せず)は、近位部材110の中に提供され得る。遠位部材112は、より軟らかい、より柔軟な生体適合性熱可塑性材料(例えば、非編組Pebax(登録商標)材料、ポリエチレンまたはポリウレタン)から形成され得る。近位部材110および遠位部材112は、重なり合う熱接合によって一緒に接合されるか、または「突き合せ接合(butt bond)」と呼ばれる仕方でスリーブにわたって端と端とが一緒に接着的に接合されるか、のいずれかであり得る。
【0012】
本発明はそのように限定されてはいないが、例示的なカテーテル102は、心臓内での使用のために構成され、したがって、直径が約6フレンチから約10フレンチである。患者の中に挿入されるカテーテル102の一部分は、典型的には、長さが約60cmから160cmである。カテーテル102の長さおよび柔軟性は、カテーテルが主要な静脈または動脈(典型的には、大腿部の静脈)の中に挿入され、心臓の内部に向けられ、次いで、所望の電極104および/または電極106が標的組織に接触するように操作されることを可能にする。蛍光造影法が、医師にカテーテル102の位置の視覚的表示を提供するために用いられ得る。
【0013】
操作に関して、図1〜3に例示される例示的なカテーテル装置100は、従来の操作センターサポートおよび操作ワイヤーの配列を提供され得る。例示的な操作センターサポート114の近位端は、近位部材110の遠位端の近くに据え付けられ、操作センターサポートの遠位端は、操作センターサポートの遠位端は、以下に説明される態様で先端電極106に固定される(しかし、電気的には先端電極106から絶縁されている)。一対の操作ワイヤー116は、操作センターサポート114の両側に固定され、カテーテル本体102を通ってハンドル108まで延び、ハンドル108もまた、操作のために構成されている。より具体的には、例示的なハンドル108は、ハンドル本体118およびレバー120を含み、レバー120は、ハンドル本体に対して回転可能である。カテーテル102の近位端は、ハンドル本体118に固定され、操作ワイヤー116の複数の近位端は、レバー120に固定される。レバー120の回転は、カテーテルの遠位部材112が近位部材110に対して偏向することをもたらす。このタイプの操作配列に関するさらなる詳細は、例えば、米国特許第5,871,525号および米国特許第6,287,301号に見出され得る。他の適切な操作配列は、米国特許第6,013,052号および米国特許第6,287,301号において開示されている。それにもかかわらず、本発明は、操作可能なカテーテル装置、または操作可能なカテーテル装置の中の任意の特定のタイプの操作配列に限定されないことが、留意されるべきである。
【0014】
例示的なリング電極104は、電気的感知または組織切除のために用いられ得、信号ワイヤー124によってハンドル108上の電気コネクター122に接続される。電導性物質(例えば、銀、白金、金、ステンレス鋼、真鍮めっき、プラチナイリジウムおよびそれらの組み合わせ)が、電極104を形成するために用いられ得る。例示的な電極104の直径は、典型的には、約5フレンチから約11フレンチにわたり、その長さは、典型的には、約1mmから約4mm、隣接する電極間の間隔は、約1mmから約10mmである。例えば、リング電極104はまた、伝導コイルによって置き換えられるか、何らかの他の組織加熱デバイスによって置き換えられるか、または単に省略され得る。温度センサー(図示せず)はまた、リング電極104に関連づけられ得、信号ワイヤーによって電気コネクター122に接続され得る。
【0015】
図4〜7に目を向けると、例示的な先端電極106は、管状側壁126、平坦な端の壁128、および側壁から端の壁に延びる湾曲した壁130を含む。先端電極106の遠位領域134は、複数の表面不連続部分136を有し得る。例示された実施形態において、複数の表面不連続部分136は、概して、形状が半球状であり、湾曲した壁130上に配置される。平坦な端の壁128および複数の表面不連続部分136の形状に関連したそれぞれの利点(例えば、比較的大きな組織接触エリアにわたって電流を広げ、有利な位置に電流を集中すること)は、以下で図8〜11を参照して論じられる。
【0016】
図4〜7に例示された例示的な先端電極106は、カテーテルの遠位部分112(または他の電気生理学装置)の遠位端の中に挿入され、接着剤または何らかの他の適切な手段あるいは方法によって、カテーテルに固定されるように構成される。その目的のために、管状の側壁126は、低減された幅の近位領域138を含み、低減された幅の近位領域138は、カテーテルの管腔140の中に嵌合するように構成される。例として、しかし、限定としてではなく、先端電極は、他の実施形態において、突き合せ接続のために構成されるか、またはカテーテルの遠位端を越えて延びるように構成される。先端電極106に対する電力は、電力ワイヤー142(図2、図3および図6)によって提供され、先端電極の一部分にはんだ付けされ、カテーテル管腔140を通してハンドル108上の電気コネクター122まで延びる。温度センサー144は、電極106内に据え付けられ得、例示される実施形態において、温度センサーは、熱伝対である。熱伝対ワイヤー146は、管148(図2、図3および図6)を通って電気コネクター122まで延びる。
【0017】
図6に例示されるように、アンカー部材150は、例示的な電極106の近位領域138内に据え付けられ得る。アンカー部材150は、ステンレス鋼のような電導材料、あるいはナイロンまたはポリイミドのような非電導材料から形成され得、管腔152および管腔154の対を含む。操作センターサポート114は、管腔152の中に位置し、アンカー部材150に固定される。アンカー部材150が電導性である例において、アンカー部材150に固定された操作センターサポート114の一部分は、非電導材料で覆われ得る。電力ワイヤー142は、管腔152を通って延び、熱伝対管148は、管腔154を通って延びる。加えて、操作センターサポートが使用されない例において、単一の操作ワイヤーが、アンカー部材150に固定され得る。
【0018】
例示的なカテーテル装置100はまた、先端電極106を冷却するために、そして、先端電極の特定の部分に隣接した組織を冷却するために、流体を使用することができる。まず図1〜3を参照すると、流体注入管156がハンドル108の中に延び、ハンドル内の弁(図示せず)に接続される。流体管158は、弁から先端電極106まで延びる。ハンドル本体118上の制御ノブ160は、弁に接続され、臨床医が弁を通る流体流速を制御することを可能にする。コネクター162は、冷却流体の供給源に接続され得、流体管156の近位端上に据え付けられる。図6に目を向けると、流体管158の遠位端は、例示された実施形態におけるアンカー部材の管腔154の中に据え付けられる。
【0019】
先端電極106は、冷却流体が送達される一つまたは二つ以上の冷却チャンバーがあるように構成され得る。例示された実施形態において、図6を参照して、先端電極106は、一対の冷却チャンバー164と166とを含み、一対の冷却チャンバー164と166とは、熱質量168によって分離される。冷却流体Fは、流体管158を介して冷却チャンバー164に入る。熱質量168の中の流体管腔170は、流体が冷却チャンバー164から冷却チャンバー166に流れることを可能にする。流体は、複数の流体排出口172を介して冷却チャンバー166(および電極106)から出、複数の流体排出口172は、チャンバー166に整列され、管状の側壁を通って延びる。複数の流体排出口172は、遠位領域134のすぐ近位に位置し得、例示された実施形態において、先端電極106の遠位端から約1mmから約3mmである。
【0020】
冷却流体は、先端電極106と先端電極の周囲に隣接した組織との両方を冷却する。例えば、冷却流体は、先端電極106(熱質量168を含む)から熱を吸い、電極の温度を低減する。冷却チャンバー164と166との存在は、流体冷却を増大させ、その理由は、冷却チャンバー166に入るよりも前に冷却チャンバー164内で循環し、流体排出口172を介して先端電極106から出るよりも前に冷却チャンバー166内で循環するからである。電極および組織の温度の低下は、先端電極106に接触している組織が黒焦げになり、そして/または凝塊が先端電極の表面上で形成される可能性を低減する。そのようなものとして、組織に供給されるエネルギーの量が増加され得、流体冷却のために構成されない電極に比べて、エネルギーは、より効率的に組織に伝達される。このことは、より大きく、より深い損傷の形成をもたらす。先端電極106に隣接した組織を冷却することに加えて、先端電極から出る流体は、血液および組織のような生物由来物質を一掃し、凝塊形成の可能性をさらに低減する。
【0021】
上記で示唆されたように、平坦な端の壁128と表面不連続部分136に関連したさまざまな利点がある。その利点の少なくとも一部は、例示的な先端電極を、半球状の端の壁を有し、表面不連続部分を有さない、他の点では同一の電極(以下では「半球状電極」)と比べることによって説明され得る。したがって、図8と図10とは、例示的な先端電極106と、半球状の端の壁228を有する半球状電極200との端の見え方であり、図9と図11とは、例示的な先端電極106と半球状電極200とによって形成される損傷を示す部分断面図である。
【0022】
組織と接触している例示的な先端電極106と、組織と接触している半球状電極206との両方が組織表面TSの中に同じ距離Xだけ押し込まれるとき、組織と接触している例示的な先端電極106の表面積は、組織と接触している半球状電極206の表面積よりも大きい。そのようなものとして、例示的な先端電極106に関連した流体密度は、半球状電極206の流体密度よりも小さく、それゆえに、例示的な先端電極106は、半球状電極206よりも組織の焦げることと凝塊形成とをもたらす可能性が小さい。また、側壁126と、組織に接触している先端電極106の一部分との間に、半球状電極206におけるよりも急な移行部もある。例示された実施形態において、急な移行部は、湾曲した壁130の湾曲の比較的小さい半径、および湾曲した壁と平坦な端の壁128との交差部分によって提供される。例示的な先端電極106に関連づけられた急な移行部はまた、電極の外周、すなわち長手方向軸LA(図4)に垂直な平面内に取り入れられる管状の壁126の外周の近くに配置される。急な移行部に関連した「縁効果」は、平坦な端の壁128の中心により近い組織よりも多くの電流を電極106の外周に引き込み、このことは、流体排出口172から流れる流体によって冷却される組織に、より多くの電流が組織に送達されることをもたらす。電流のうちのより多くを、冷却されている組織に向けることは、半球状電極206に比べて、切除措置が組織の焦げることと凝塊形成とをもたらす可能性をさらに低減する。
【0023】
電極が組織表面TSの中に押されるとき、複数の表面不連続部分136は、その各々が縁174(図7)を含み、複数の表面不連続部分136が、流体排出口172に隣接した組織に接触するように、平坦な端の壁128に隣接して配置される。その目的のために、例示された実施形態における複数の表面不連続部分136は、湾曲した壁130の上に配置される。複数の縁174は、各々、「縁効果」を作り出し、「縁効果」は、複数の縁がない場合よりも多くの電流を引き込む。不連続部分によって作られる「縁効果」の配置は、より多くの電流が、流体排出口172から流れる流体によって冷却される電極106の外周にある組織に、平坦な端の壁128の中心により近い組織よりも多い電流が送達されることをもたらす。ここでもまた、電流のうちのより多くを、冷却されている組織に向けることは、半球状電極206のような不連続部分のない電極に比べて、切除措置が組織の焦げることと凝塊形成とをもたらす可能性を低減する。
【0024】
図9および図11に提示される比較において、例示的な先端電極106と半球状電極とは、組織表面TSの中に同じ距離Xだけ押され、同じ量の電流がこれらの電極に供給され、同じレートで冷却流体が供給される。電流の大きさは、先端電極106によって切除される組織の焦げおよび/または組織上の実質的な凝塊の形成をもたらす電流の大きさよりも、わずかに小さい。例示的な先端電極106によって生成される損傷Lは、半球状電極206によって生成される損傷Lよりも、幅が広く深い。深さに関しては、例示的な先端電極106はまた、より均一な損傷(図9における均一な着色によって強調されているような)も作り、半球状電極206に関連した組織は、焦げCの形成に起因して、損傷を作るように十分に加熱されない領域NSHを含むことに留意されたい。
【0025】
ここで、例示的な先端電極106は、上述の有利な効果を実現するために組織表面に垂直(図9)である必要がないこともまた、留意されるべきである。組織表面に対して任意の向きにおいて、すなわち、垂直から平行までの向きにおいて、管状の壁126から平坦な端の壁128への急な移行部に関連した「縁効果」、および/または表面不連続部分136に関連した「縁効果」は、より多い電流が、流体排出口172から流れる流体によって冷却される組織に送達されることをもたらす。上記で留意されたように、電流のうちのより多くを冷却される組織に向けることは、切除処置が組織内に焦げと凝塊形成とをもたらす可能性を低減する。
【0026】
材料に関して、例示的な先端電極106は、任意の適切な電導材料から形成され得る。例として、しかし、限定としてではなく、先端電極106の主要部分(すなわち、管状の側壁126、平坦な端の壁128および湾曲した壁130)に対して適切な材料は、銀、白金、金、ステンレス鋼、真鍮めっき、プラチナイリジウムおよびそれらの組み合わせを含む。熱質量168は、任意の適切な電導性材料および熱伝導性材料、例えば、銅およびステンレスから形成され得る。あるいは、熱質量168は、熱伝導性材料および非電導性材料で作られ得る。ここで、電力ワイヤー142は、先端電極106の別の部分、すなわち、管状の側壁126に取り付けられ得る。
【0027】
形状および寸法に目を向けると、例示的な先端電極106は、概して、形状が円筒状で、心臓内での使用に対して大きさを設定される。その目的のために、管状の側壁126の外径D1(図4)は、約5フレンチから約11フレンチ(約1.67mmから約3.67mm)であり得、管状の側壁126の長さは、約2mmから約6mmで、約30%が近位領域138によって占められる。しかしながら、この先端電極は、円形の断面に限定されないことは留意されるべきである。例示的な先端電極106の壁の厚さWT(図6)は、約0.05mmから約0.3mmであり得る。
【0028】
湾曲した壁130(または他の移行壁または表面)が存在するとき、平坦な端の壁128の直径D2は、管状の側壁126の外径D1の直径の約30%から約95%であり得、一部の実装において、約60%から約90%であり得る。端の壁128は、図4〜9に示されるように平坦、すなわち平らであり得るか、または少なくとも実質的に平坦であり得る。図12を参照すると、本明細書で用いられているように、「少なくとも実質的に平坦」な壁(例えば、他の点では電極106と同一な電極106a上の端の壁128aは、端の壁であり、端の壁は、半径R2が延びる管状の側壁の半径R1の少なくとも3倍である湾曲R2の半径を有し、一部の実装において、半径R1の約3倍から半径R1の約6倍にわたり得る。平らな壁の湾曲の半径は、無数にあるが、比較のために、半球状の端(例えば、半球状の端の壁228(図10および図11))の湾曲の半径は、湾曲の半径が延びる管状の側壁の半径に等しい。湾曲した壁130(図4)の半径R3は、例示された実施形態において90度の弧であり、管状の側壁126の半径R1の約20%から約60%であり得る。
【0029】
湾曲した壁130はまた、図4〜9および図12を参照して上記で説明された複数の実施形態と他の点では同一の複数の実施形態を含むがそれらに限定されない複数の実施形態から、除外され得る。先端電極106と他の点では同一である、図13および図14に例示された例示的な先端電極106bにおいて、湾曲した壁130は、管状の側壁126と平坦な端の壁128bの交差部分におけるコーナー130bによって置き換えられ得る。ここで、平坦な端の壁128bの外径D2は、管状の側壁126の外径D1の直径に等しい。表面不連続部分136は、管状の側壁126か、平坦な端の壁128bか、または両方(図示せず)の上に配置され得る。さらに別の代替案は、湾曲した壁130および/またはコーナー130bを、食いつき部のような壁または他の移行部(図示せず)で置き換えることであり、食いつき部のような壁または他の移行部は、管状の側壁から平坦な端の壁まで延びる。表面不連続部分は、そのような移行部の上に提供され得る。
【0030】
先端電極106の遠位領域134(すなわち、流体排出口の遠位である領域)の軸方向の長さは、約0.2mmから約1mmであり得る。遠位領域134は、コーナー130bが存在する場合には、湾曲した壁130か、食いつき部か、または他の移行部か、存在する場合には、あるいは管状の側壁126の一部分か、の一部または全部を含み得る。損傷形成処置の間に、流体排出口172が組織表面に近くなるように意図される実装において、流体排出口の遠位端は、端の壁128〜128bから約0.5mmから約2mmであることが、留意されるべきである。
【0031】
表面不連続部分に目を向けると、本発明は任意の特定の形状または大きさに限定されないが、例示された実施形態における表面不連続部分136は、深さおよび直径が約0.1mmから約0.5mmである先端電極の中の半球状の形状のくぼみである。大きさおよび製造方法に依存して、表面不連続部分136は、電極の内部表面上の対応する不連続部分(図6)をもたらし得る。表面不連続部分136は、組織と接するように遠位領域134上に位置決定され得、意図された効果に依存して、電極表面の関連した部分の約30%から約70%を覆い得る。任意の特定の先端電極またはその一部分の中の表面不連続部分136は、均一な大きさおよび密度であり得るか、または大きさおよび/または密度がさまざまであり得る。例えば、図7〜9を参照すると、例示的な先端電極106上の表面不連続部分136は、湾曲した壁130および遠位領域134の中の二つのグループにおいて排列され得る。一方のグループは、管状の側壁126のやや遠位であり、もう一方のグループは、平坦な端の壁128のすぐ近位である。表面不連続部分136のすべては、同じ大きさであり、各グループの密度は、本質的に同じである。図13および図14に例示された例示的な先端電極に目を向けると、遠位領域134の中の管状の側壁126上に比較的小さい表面不連続部分136の比較的高い密度のグループ135があり、平坦な端の壁128bの外周の近くに比較的小さい表面不連続部分の比較的高い密度のグループ137がある。比較的高い密度のグループ135および137は、遠位領域134の外周の近くに、例えば、図7〜9に例示された密度のより低いグループよりも高い流体密度を生成し得る。また、平坦な端の壁128bの高い密度のグループ137の半径方向に内向きに、比較的大きい表面不連続部分136の比較的低い密度のグループ139もある。先端電極106bのこの部分における電流密度は、平坦な端の壁128bの中心の近くよりも大きくなるが、電流密度は、より密度の高いグループ137によって占められる半径方向に外向きの部分よりも低くなる。
【0032】
表面不連続部分はまた、限定されたくぼみではない。例として、しかし、限定としてではなく、一部の実施形態に従った先端電極の遠位領域134は、例えば、半球状の表面の隆起部のような表面の隆起部を提供され得る。
【0033】
また、流体の冷却および/または電極の外周に整列された温度センサーの通過のために、例示的な106〜106bの端の壁に穴がないことも、留意されるべきである。そのような穴は、表面不連続部分136のように、高い流体密度の領域を作り、先端電極の中心に近い高い流体密度の領域は、上述の作用力に対して作用し、流体を先端電極の外周に移し得る。
【0034】
本発明は上記の好適な実施形態に関して説明されているが、上記の好適な実施形態に対する多数の修正および/または追加は、当業者に容易に明白であり得る。例として、しかし、限定としてではなく、カテーテル装置は、冷却流体の一部が第二の流体管を介して流体供給源に戻されるように構成され得る。本発明はまた、比較的短いシャフトを有する外科用プローブにも適用可能である。本発明の範囲は、すべてのそのような修正および/または追加にまで広がり、本発明の範囲は、以下で述べられる特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気生理学電極であって、該電気生理学電極は、
遠位端を規定し、少なくとも一つの流体開口部を含む管状の側壁と、
少なくとも実質的に平坦な遠位壁であって、該遠位壁は、該遠位壁を通って延びる開口部がなく、該管状の側壁の該遠位端に関連づけられた、少なくとも実質的に平坦な遠位壁と
を備えている、電気生理学電極。
【請求項2】
前記少なくとも一つの流体開口部は、複数の流体開口部を含む、請求項1に記載の電気生理学電極。
【請求項3】
前記管状の側壁は、環状の断面を規定する、請求項1に記載の電気生理学電極。
【請求項4】
前記管状の側壁と前記少なくとも実質的に平坦な遠位壁とは、一緒に遠位コーナーを規定する、請求項1に記載の電気生理学電極。
【請求項5】
前記遠位コーナーに隣接した複数の表面不連続部分をさらに備えている、請求項4に記載の電気生理学電極。
【請求項6】
前記複数の表面不連続部分は、前記側壁および/または前記少なくとも実質的に平坦な遠位壁に関連づけられている、請求項5に記載の電気生理学電極。
【請求項7】
前記複数の表面不連続部分は、複数の部分的に球状のくぼみを含む、請求項5に記載の電気生理学電極。
【請求項8】
前記管状の側壁と前記少なくとも実質的に平坦な遠位壁との間に配置された湾曲した表面をさらに備えている、請求項1に記載の電気生理学電極。
【請求項9】
前記湾曲した表面に関連づけられた複数の表面不連続部分をさらに含む、請求項8に記載の電気生理学電極。
【請求項10】
前記複数の表面不連続部分は、複数の部分的に球状のくぼみを含む、請求項9に記載の電気生理学電極。
【請求項11】
前記少なくとも実質的に平坦な遠位壁は、平らな遠位壁を含む、請求項1に記載の電気生理学電極。
【請求項12】
電気生理学電極であって、該電気生理学電極は、
遠位端を規定する管状の側壁と、
該管状の側壁の該遠位端に関連づけられた遠位壁と、
該管状の側壁の該遠位端に隣接した複数の表面不連続部分と
を備えている、電気生理学電極。
【請求項13】
前記複数の表面不連続部分は、複数の部分的に球状のくぼみを含む、請求項12に記載の電気生理学電極。
【請求項14】
前記複数の表面不連続部分は、前記管状の側壁上にある、請求項12に記載の電気生理学電極。
【請求項15】
前記複数の表面不連続部分は、前記端の壁上にある、請求項12に記載の電気生理学電極。
【請求項16】
前記複数の表面不連続部分は、前記管状の側壁上と前記端の壁上にある、請求項12に記載の電気生理学電極。
【請求項17】
前記管状の側壁と前記遠位壁との間に配置された湾曲した表面をさらに備え、前記複数の表面不連続部分は、該湾曲した表面上にある、請求項12に記載の電気生理学電極。
【請求項18】
前記遠位壁は、前記電気生理学電極の前記遠位端を規定し、
前記表面不連続部分は、該電気生理学電極の該遠位端から1mm以内に配置される、請求項12に記載の電気生理学電極。
【請求項19】
前記複数の表面不連続部分は、第一の密度を有する第一のグループと、該第一の密度より大きい第二の密度を有する第二のグループとに配列される、請求項12に記載の電気生理学電極。
【請求項20】
前記第二のグループは、前記第一のグループと前記管状の側壁の前記長手方向の端との間に配置される、請求項19に記載の電気生理学電極。
【請求項21】
前記管状の側壁の中に複数の流体開口部をさらに備えている、請求項12に記載の電気生理学電極。
【請求項22】
軟らかい組織と共に使用する電気生理学電極であって、該電気生理学電極は、
遠位端を規定する管状の側壁と、
該管状の側壁の該遠位端に関連づけられた遠位壁であって、該遠位壁は、中心領域と該中心領域の周りに延びる外周とを規定する、遠位壁と
該管状の側壁および/または該遠位壁に関連づけられた手段であって、該手段は、電流が該電気生理学電極を通って、該電気生理学電極に接触している軟らかい組織に流れるとき、該遠位壁の該中心領域に隣接した軟らかい組織ではなく、該遠位壁の該外周に隣接した軟らかい組織の中により高い電流密度を作る、手段と
を備えている、電気生理学電極。
【請求項23】
前記管状の側壁に複数の流体開口部をさらに備えている、請求項22に記載の電気生理学電極。
【請求項24】
遠位端を規定する管状の部材と、
請求項1〜23のいずれか1項に記載され、該管状の部材の該遠位端によって保持される電気生理学電極と
を備えている、電気生理学装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2011−500156(P2011−500156A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528962(P2010−528962)
【出願日】平成20年10月4日(2008.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/078879
【国際公開番号】WO2009/048824
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】