説明

電気的に加熱し得る車輌窓

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は電気的に加熱し得る車輌のガラス板又は窓に関し、該窓には加熱抵抗体として役立つ透明な導電性の表面層並びに上記窓の向き合う両側縁辺に沿って配置された電流供給用導電部材並びに枠縁を構成する不透明なエナメル特に焼成エナメルから形成された装飾層を具備する車輌窓に関する。
〔従来の技術〕
透明な表面層により形成された加熱抵抗体又は抵抗器を具えた加熱し得る車輌窓は公知であり、これには種々の形式のものが多数存在する。金属的導電層を有する一般的には多数枚積層系に属する透明加熱層は外界からの機械的な影響に対し有利に保護されるという事実に鑑みて、それは一般的には積層されたガラス板内部に挿入される。例えば特に効果のある態様においては積層されたガラス板又は窓を構成する二枚のガラス板の一方の表面上に直接に配置されると共に他方のガラス板に対してはポリビニルブチラール樹脂の如く透明プラスチック材から成る中間挿入層を介して結合される。
ガラス板が粘結剤処理により車体に取付けられたとき、それらのガラス板にはまた不透明なエナメルの枠から成る一つの層によって形成される。この層の粘着剤被覆部分は外部から見ることは不可能である。同時に不透明な枠はその粘着剤被覆部を紫外線から保護している。
このような積層ガラスをもつ車輌窓の製造に対する公知方法において不透明な焼成エナメル枠を形成する周辺部帯条部材は初めに各ガラス板の内面に向いた表面部分上に施こされ、仕上げられかつ組立てられた積層ガラス窓において、その外側に位置決めされ乾燥される。この処理に続いて、電流供給棒を形成するために導電性印刷ペーストを使用する第二印加操作又は印刷方式が適当され、この方式には銀を含む金属性焼成エナメルが使用される。上記両側エナメルの焼成処理に続いて透明な導電被覆層の形成処理が実施される。これは例えば上記不透明枠及び電流供給棒を有するガラス板に対し磁界維持の陰極スパッタリング方法が適用される。この方式の処理過程は例えば米国特許第4,744,844号及び同第4,654,067号に詳細に述べられている。
上記の従来技術にはまた、表面層に対する印刷目的に適合する導電性銀ペーストの帯条形態を執る電流供給棒を使用する場合と同様に客室側に反転した個々のガラス板に対する第一層として導電性表面層を外部的な個々のガラス板に向いた表面上に使用することもまた含まれている。この実施例においては枠を構成する不透明な周囲縁辺の帯条部材は外部の個々のガラス板の内側に配置しなければならない、何故ならその電流供給棒を目に見えないように処理しなければならないからである。また従来の技術として装飾枠と稱する枠部材を構成する帯条部材の印刷体に対して導電性エナメルの適用が行なわれる場合と同様に導電性黒色焼成エナメルが適用される。上記前者の一部は加熱導電部材として直接使用される(DE3,724,014AL)。このようにして風防窓ワイパの使用区域に形成された装飾枠の下方部分は例えばこの区域を加熱するために利用可能である。
〔発明が解決しようとする課題〕
前述した形式の表面加熱作用を有する凡ての公知車輌窓に対しては装飾帯条部材の使用及び電流供給棒の適用のために二重の印刷操作が必要となる許りでなく、印刷操作又は印加処理によって施こされた2個の層が独立した別工程において二重に乾燥処理工程を施こさなければならない。また上記印刷処理を受けた電流供給棒は該印刷被覆層が非常に薄くて、導電性部材の断面が小さいため大なる加熱電力を要する場合に上記電流供給棒は望ましくない範囲にまで加熱されるという事態が生じ不都合な特性を示すにいたる。
本発明は表面層、電流供給導電部材、装飾枠を具備する加熱可能な車輌窓を提供することを意図する。これによって、製造工程が減少すると同時に電流供給導電部材の電気的導電性が増大化される利点を有する。
〔課題を解決するための手段〕
本発明によれば上記の目的は次のようにして達成される。即ち上記枠を形成する装飾層は上記表面層と導電的に接触する導電性エナメルにより形成されると共に上記電流供給導電部材は薄い金属製帯条部材又は金属帯条部材から形成される。これらの帯条部材は上記装飾層と電気的に接触するか又は枠を形成する装飾層区域内の表面層と電気的に接触する。
薄い金属部材又は金属帯条部材をもつ表面層の接触作用はしばしばこれらの区域に生ずる過大な電圧又は電流値のために公知構成部分に悪影響を及ぼすか乃至は上記金属帯条部材の直近側部に沿って表面層が完全に破壊される。そのような場合において、本発明による構成配置はその製造工程を簡略化しうる許りでなく、同時にその欠陥を解消できる。上記導電性装飾枠はその全体幅に亘って表面層と緊密な接触作用をしているという事実に鑑みて、即ち一般的に通常の電流供給導電部材の幅よりもより一そう大きく形成されているから、接触表面全体に及ぶ表面層に対し非常に均一な加熱電流の投射作用が得られる。それ故上記接触表面には如何なる突出電流又は突出的電圧も現われない。この均一な電流の流れは上記装飾枠がその表面層と供給導電部材間に配置されるときばかりでなく上記装飾層が表面層の一方側に配置されかつその電流供給導電部材がその装飾枠に対し表面層の他方側に配置されるときもまた生じる。上記枠を形成する飾付け層の表面導電性が上記表面層の導電性より大なるときは即ち装飾層の表面抵抗が被覆表面の表面抵抗より小なるときには上記枠を形成する装飾層の電流供給導電部材間の区域は小さな分離通路により効果的に遮断されるからこれらの区域に対する望ましくない加熱作用は防止される。
しかしながら、本発明はまた枠を形成する装飾層の使用により実現されるものであり、その表面抵抗は表面層の抵抗と略同一程度の大きさである。この場合に、上記枠を形成する装飾層は連続枠の形態をとって設けることができる。即ちこの場合その対応枠区域には著しい加熱作用が全く生じないので電流を中断されない。
枠を形成する装飾層がエナメル又は焼成エナメルであるから市販の利用可能な組成物を使用することも可能であり、又は例えば西独特許DE3724014ALに記載された形式のものを使用することができる。上記エナメル又は焼成エナメルの組成物を選定し又は変更することにより、従って使用する層の厚みを変更することによって、必要なとき又は希望に応じてその表面抵抗を容易に調整することが可能になる。以下に示す、これに限定されない実施例並びに添付図面を参照して、本発明をより一そう詳細に説明する。
〔実施例〕
加熱し得る車輌窓の透明な表面被覆体又は表面層は加熱作用を有する抵抗体として使用し得るものでありかつ一般的にいえば略3乃至12オーム/m2(0hm2)の比較的に低い表面抵抗を示す。そして上記被覆体又は層はインジウムと錫の酸化物から形成されるか又は金属コーティングによる被膜方式により形成され特に被膜酸化物間に銀の金属被膜層を挿入したものが利用される。第1図に図示した実施例においては積層された風防ガラスの下部区域の断面が示されている。上記積層ガラス板又はガラス窓は珪酸塩ガラス板1から成り、これは該風防ガラスが組付けられるとき外側に配置され他側の珪酸塩ガラス板2は組付状態において、客室内側に向けて配置される。そしてこれら2枚の珪酸塩ガラス板1と2とを相互に継ぎ合せるために中間挿入層3が介在するが、これはポリビニルブチラール熱可塑性樹脂により製造される。外部珪酸塩ガラス板1には中間挿入層3に面する表面上に加熱抵抗体又は抵抗器として機能する表面層4がその端部縁辺にいたるまで中断することなく形成される。表面層4上には不透明で導電性を有するエナメルから成る装飾枠5が押入されるか又は印刷される。詳細にいえば、上記装飾枠5は焼成エナメルにより形成される。即ち網目スクリーン印刷方式により印刷され高温度で焼成仕上げ処理が行なわれる。装飾枠5の全体的導電性は重要なものではないが、しかし金属製帯条部材6と加熱層4との間に電圧降下を生じないようにすることは充分効果的である。上記金属製帯条部材6から加熱層4に流れる加熱電流の供給作用は装飾枠5の全抵抗によって結果的には全く妨げられない。
装飾枠5の表面抵抗が加熱層4の抵抗よりも低いときには、装飾枠5の側部区域即ち裏付け又は表付け加熱層4を具備する下側金属帯条部材6及び図示されていない上側金属帯条部材の間に配置された装飾枠5の部分は各場合において1個所又はいくつかの個所に上記枠部分を通し電流の直通を阻止する狹い遮断部が設けられねばならない。
金属帯条部材6は薄い銅製の帯材又は偏平な銅製の帯索から作られ、そして好ましくは錫で被覆できる。これらの帯条部材6は装飾枠5に取付けられかつ導電性接着剤により適当に固着される。しかしながら装飾枠5に対する金属製帯条部材6の機械的接触状態は加熱電流を該装飾帯条部材5に向けて射出するに充分であり、かつ金属製帯条部材6と装飾枠5との間の中間表面に不均一な接触作用に起因して生ずべき突出した電圧及び電流は上記装飾枠5の内部に肉眼で認めうる程の損傷を全く生じさせない。上記表面全体に亘って生ずる狹小な接触作用の結果としての過剰な電流及び電圧の発生は全くみられずそのため傷つき易い加熱層の損傷は上記装飾枠5と加熱層4との間の境界的な中間表面には全くみられない。
第1図に示す加熱し得る積層ガラス板の製造に関しては、先づ大なる平面状ガラス板が表面層4を有して製作され、この被覆ガラス板から希望の大きさ寸法にガラス板1が截断される。そして網目スクリーン方式により装飾枠5の印刷が被覆ガラス板1上に施こされる。印刷エナメルを乾燥した後、該エナメルはガラス板1を加熱することにより焼成される。次いでガラス板1はガラス板2上に置かれかつ両ガラス板は約600℃の温度において希望する形状に反りが付与される。上記反りを付与された両ガラス板の冷却後に、金属製帯条部材6が上記装飾枠5にガラス板の上辺及び下辺の端部縁辺に沿って適切には導電性接着剤を使用して固着される。金属製帯条部材6はガラス板1の一側面上に突出して形成され電流供給用の導電部材として使用される。次いでガラス板1と2はポリビニルブチラール樹脂のフィルム3と共に組合されそして加熱窯内において公知の手法に従がい加熱と圧力作用の下で継ぎ合される。
第2図に図示した実施例の場合において、積層ガラス板を形成する一方のガラス板11は前掲の場合と同じく外部に面した風防窓ガラス板を示すと共に他のガラス板12は客室内部に面したガラス板を示している。この2枚のガラス板11と12はそれらの中間に挿入された熱可塑性樹脂層13によって継ぎ合される。挿入された樹脂層側に面するガラス板11の表面には導電性を有する焼成エナメルから成る装飾枠15が形成されている。この装飾枠15は公知の方法により製造され、この焼成エナメルは平面状のガラス板1に網目スクリーン印刷方式により形成されそして焼成処理が施こされる。この焼成された装飾枠15を設けたガラス板11は第2のガラス板12上に置かれて両者共同時に反りが付与される。こうして両ガラス板に対する反り付け操作が行なわれた後、装飾枠15をもつガラス板11の表面に加熱層14が形成される。この場合には加熱層14が装飾枠15の表面上に載置される。上記金属製帯条部材16は装飾枠15の区域内の加熱層14上に置かれる。そして任意に導電性接着剤の塗着作用により固着化される。加熱層14に向って流される加熱電流の射出作用は有害な超過電圧及び電圧を生じない。これは主として装飾枠15と加熱層14間の中間面に形成した狹小でかつ均一な接合面を介して導電作用が行なわれるからである。
上記加熱層に対する電流の供給作用を分ち合う装飾枠部分が風防ガラス窓の視界方向に向って拡大されるとき、一定の大なる加熱電力の場合には特定の加熱電力が風防ガラス窓の中央区域において増大しうることが可能であり、又は視界内において一定加熱電力の場合には全加熱電力を減少することができる。装飾層は視界方向において網目スクリーン方式で以って有効に形成され、それによって風防窓ガラスの透明度は段々に減少し、又は中央の視界から不透明な装飾枠に向って漸次に減少せしめることができる。
第3図は加熱層20により加熱される透視部分と不透明な枠部分21,22との間に遷移区域をもつ如き風防窓ガラスの基本的構成を図示する。上記遷移区域において装飾枠23は透視部分に向って次第に細まり行く表面区域24,25を具備する。明らかにその遷移領域においては上記枠の有効部分を透視部分に向けて動かす装飾枠の形成のためにどのような任意の網目スクリーン方式をも採用することができる。更に風防窓ガラスは前に記載した実施例に従って形成することもできる。側部区域において、装飾枠23は電流遮断部材26を設けて各側に取付けられ、該遮断部材26はこれらの側部区域に電流が直接導通することを防止するものである。しかしながらこれらの遮断部材は上記装飾枠を形成する層の表面抵抗が透明な加熱層の表面抵抗と同一程度の大きさであるときはこれらの遮断部材は設置する必要はない。しかしながら装飾枠の表面抵抗が加熱層20の表面抵抗より低いときには、上記加熱層20は上記装飾枠の側部区域の境界において限界線27の前で終るのが有効である。これは第3B図と第4B図に示す如く、レーザー光線を線27に沿って照射して加熱層と区切ることにより実施される。また第3A図及び第4A図に示す如く加熱層20が形成過程において上記装飾枠の側部区域の上方又は下方の限界線27の他の側部に位置する区域にマスクを施こすことも可能である。これは電流遮断部26の形成ばかりでなく、ガラス板又は窓の端部縁辺区域に望ましくない加熱作用が及ばないためである。上記金属製の帯条部材28,29は積層窓を越えて横方向に延在し電流供給の接続部材として使用される。
【図面の簡単な説明】
第1図は加熱し得る積層ガラス板又は窓の第1実施例を示し、かつその下部電流供給導電区域の断面図が描かれ、
第2図は加熱し得る積層ガラス板又は窓の第2実施例を示し、かつその下部電流供給導電区域の断面図が描かれ、
第3A図及び第3B図は広げられた電流供給導電部を具備する本発明に係る加熱し得る積層ガラス板又は窓の正面図を示し、
第4A図および第4B図は第3A図及び第3B図におけるIV A−IV A及び線IV B−IV Bに沿う各断面図を示す。
1,2;11,12……珪酸塩ガラス板、
3,13……挿入中間層、4,14……加熱層、
5,15……装飾枠、
6,16……金属製帯条部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】加熱抵抗体として作用する透明な導電性表面層(4,14,20)を有するガラス板と、ガラス板の2つの対向側縁に沿って配置された薄い金属帯によって形成された電流供給導電体(6,16,28,29)と、ガラス板の不透明なエナメルの周縁枠部分を形成する装飾層(5,15,21,22)とを具備する電気加熱可能な車輛窓において、ガラス板の周縁枠部分を形成する装飾層(5,15,21,22)が導電性エナメルから形成され、また電流供給導電体(6,16,28,29)が装飾層(5,15,21,22)又は装飾層(5,15,21,22)の領域の導電性表面層(4,14,20)と電気接触し、さらに枠部分を形成する装飾層(5,15,21,22)が該装飾層の全幅にわたって透明な導電性表面層(4,14,20)と導電接触し、装飾層(5,15,21,22)の幅は電流供給導電体(6,16,28,29)の幅より大きく形成されていることを特徴とする電気加熱可能な車輛窓。
【請求項2】前記枠(23)を構成する装飾層は電流供給導電部材(6,16,28,29)間に配置されたその枠部分において電流の通路を遮断する遮断部(26)が設けられている請求の範囲1に記載の電気加熱可能の車輛窓。
【請求項3】導電性表面層の加熱層(20)が側部区域において、該加熱層(20)が前記装飾枠の側部区域の前で終わるか又は加熱層(20)に前記装飾枠の側部区域に沿って分離線を設けることにより、装飾枠(23)の側部区域と電気的に接触しないようにしていることを特徴とする請求の範囲1又は2に記載の加熱可能な車輛窓。
【請求項4】前記枠(5,15,23)を形成する装飾層の表面抵抗は表面層(4,14,20)の表面抵抗と同一程度の大きさに形成されていることを特徴とする請求の範囲1から3のうちの1項に記載の電気加熱可能な車輛窓。
【請求項5】前記装飾層(5,15)はそれ自体が閉鎖された枠の形態をとって設置されていることを特徴とする請求の範囲4に記載の電気加熱可能な車輛窓。
【請求項6】前記電流供給導電部材を形成する薄い金属製帯条部材(28,29)は窓の上部縁辺と下部縁辺に沿って配置され、また枠(23)を形成する装飾層の表面区域のうち少くとも一方の表面区域は、薄い金属帯条部材又は金属を含む帯条部材(28,29)と接触して前記表面層(20)が設けられた透視部分を減少することにより、その区域が広く形成されていることを特徴とする請求の範囲1から5のうちの1項に記載の電気加熱可能な車輛窓。
【請求項7】前記枠を形成する装飾層の表面区域は薄い金属帯条部材又は金属を含む帯条部材と接触状態に保持されかつその透視部分にまで延びる遷移区域が形成され、その透明度が前記透視部分に向って増大するように網目スクリーン印刷が施こされていることを特徴とする請求の範囲6に記載の電気加熱可能の車輛窓。

【第4A図】
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【第4B図】
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【第1図】
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【第2図】
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【第3A図】
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【第3B図】
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【特許番号】特許第3113663号(P3113663)
【登録日】平成12年9月22日(2000.9.22)
【発行日】平成12年12月4日(2000.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−97793
【出願日】平成2年4月16日(1990.4.16)
【公開番号】特開平3−74240
【公開日】平成3年3月28日(1991.3.28)
【審査請求日】平成9年4月15日(1997.4.15)
【審判番号】平10−20051
【審判請求日】平成10年12月25日(1998.12.25)
【出願人】(999999999)サン―ゴバン ビトラージュ アンテルナショナル
【合議体】
【参考文献】
【文献】特開 昭49−58110(JP,A)
【文献】特公 昭63−15176(JP,B2)