説明

電気系ユニットのカバー構造

【課題】電気系ユニットのカバー構造に係り、メンテナンスや緊急時において電気系ユニットの強電安全性を確実かつ容易に確保できるようにする。
【解決手段】本発明の電気系ユニットのカバー構造1は、二次バッテリ5と、この二次バッテリ5を覆うユニットカバー2と、二次バッテリ5の電気的な絶縁を確保する絶縁スイッチ3とを備え、絶縁スイッチ3はユニットカバー2の側面に設けた開口部4を貫通して外部に突出した状態で、ユニットカバー2の外部から脱着可能に取り付けられている。そして、絶縁スイッチ3を取り外すことによって二次バッテリ5の絶縁が確保されるとともに、絶縁スイッチ3を取り外さないとユニットカバー2が外れないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気系ユニットのカバー構造に係り、特に電気系ユニットの強電安全性を容易かつ確実に確保できる絶縁スイッチを備えた電気系ユニットのカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車などの電気自動車では、車体のリアシートの後部に二次バッテリを配置した構造が広く採用されている。この二次バッテリには、電気的な安全性を確保するために、絶縁スイッチが取り付けられており、バッテリカバーに収容されている。このバッテリカバーは箱枠形(ボックス形)に形成され、例えばリアフロア上に複数本のボルトによって止められている。
【0003】
このような電気自動車に搭載されている蓄電池のメンテナンス時における強電安全性を確保するための従来技術として、特開平10−334870号公報(特許文献1)が開示されている。この特許文献1に開示された従来の蓄電池収容装置では、複数のコネクタをカバーの外部に露出させ、このコネクタを外さないとカバーが外れない構造となっている。そして、このコネクタは内部で蓄電池の端子間を接続しており、コネクタを外すと内部で直列の接続が数箇所で分断されて電圧が下がった状態となり、強電安全性を確保した状態にしてカバーが外れるようにしたものである。
【0004】
また、高電圧で動作する家電製品において、メンテナンス時の強電安全性を確保するための従来技術として、特開平9−196386号公報(特許文献2)が開示されている。この特許文献2で開示されている電源遮断装置では、カバーについているすべてのボルトを外すと、自動的にヒューズも外れるようになっている。
【特許文献1】特開平10−334870号公報
【特許文献2】特開平9−196386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の電気自動車の二次バッテリにおいて、絶縁スイッチを外す場合には、二次バッテリを覆っているバッテリカバーを外すため、まずバッテリカバーを止めているボルトを外し、バッテリカバーを外して二次バッテリを露出させてから絶縁スイッチを外すようになっていた。したがって、このときに高電位の端子に手が触れられてしまう可能性があった。
【0006】
そこで、二次バッテリの構造を上述した特許文献1のような構造にすると、メンテナンス時にバッテリカバーを外す場合に、強電安全性を確保するために複数のコネクタを外す必要があり、バッテリカバーを外すために時間を要してしまうことになる。
【0007】
また、バッテリカバーを外してもすべての端子が絶縁されているわけではないので、絶縁されていない端子に手が触れられてしまうおそれがある。この場合に確実な強電安全性を確保するには、すべてのコネクタを外す必要があるため、さらに時間を要することになる。
【0008】
さらに、特許文献2のような構造を採用すると、緊急時に強電安全性を確保したい場合にはすべてのボルトを外してカバーを完全に外す必要がある。しかし、強電安全性だけを確保すればよい状況において、すべてのボルトを外してカバーを外すことは余分な作業となるため、強電安全性を確保するまでに時間を要してしまうことになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の電気系ユニットのカバー構造は、車両に搭載された電気系ユニットと、この電気系ユニットを覆うユニットカバーと、前記電気系ユニットの電気的な絶縁を確保する絶縁スイッチとを備えた電気系ユニットのカバー構造であって、前記絶縁スイッチは前記ユニットカバーの取り外し方向への移動を制限する位置に設置され、且つ前記ユニットカバーの外部から前記電気系ユニットに脱着可能に取り付けられ、前記絶縁スイッチを取り外すことによって前記電気系ユニットの絶縁が確保されるとともに、前記ユニットカバーの取り外し方向への移動が可能となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電気系ユニットのカバー構造では、絶縁スイッチをユニットカバーの取り外し方向への移動を制限する位置に設置したので、メンテナンス時などにユニットカバーを外すときには絶縁スイッチを外してからでないとユニットカバーを外すことができない。したがって、ユニットカバーを外してメンテナンスをするときには確実に強電安全性を確保することができる。また、絶縁スイッチがユニットカバーの外部から着脱可能に取り付けられているので、緊急時にはユニットカバーを外すことなく外部から絶縁スイッチを外すことによって容易に強電安全性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係わる電気系ユニットのカバー構造を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。ただし、各図においては適宜に車体構造を省略または簡略化しており、ハッチング等を省略している。また、発明の主要な部分の構成についてのみ説明するものとし、その他の部分については詳細な説明を省略する。
【実施例1】
【0012】
図1は、実施例1に係る電気系ユニットのカバー構造の構成を示す斜視図である。図1に示すように、本実施例の電気系ユニットのカバー構造1は、電気系ユニットである二次バッテリを覆うユニットカバー2と、電気系ユニットの電気的な絶縁を確保する絶縁スイッチ3とを備えて構成されている。
【0013】
ユニットカバー2は、二次バッテリを覆うように箱枠型をしており、車両のリアフロアに固定されている。そして、ユニットカバー2の側面には絶縁スイッチ3を挿入するための開口部4が設けられている。
【0014】
ここで、ユニットカバー2を外した状態の斜視図を図2に示す。図2に示すように、ユニットカバー2を取り外すと、二次バッテリ5が車両のリアフロアに固定して設置されている。
【0015】
絶縁スイッチ3は、取り外すことによって二次バッテリ5の絶縁を確保するように構成されており、図1に示すように、ユニットカバー2の開口部4から挿入されて装着されている。この絶縁スイッチ3は、ユニットカバー2の外部から着脱可能に取り付けられており、ユニットカバー2の開口部4を貫通して外部に突出した状態で取り付けられている。したがって、ユニットカバー2の取り外し方向である上方向へユニットカバー2を取り外そうとすると、絶縁スイッチ3がユニットカバー2の上方向への移動を制限することになる。
【0016】
このように構成された本実施例の電気系ユニットのカバー構造1において、ユニットカバー2を取り外すには、まず絶縁スイッチ3を取り外す必要がある。ここで、図3〜図5に基づいて絶縁スイッチ3の構成及びその取り外し手順について説明する。図3〜図5は図1のA−A線に対応する断面図である。
【0017】
図3に示すように、絶縁スイッチ3は二次バッテリ5側に固定された絶縁スイッチ本体31と、この絶縁スイッチ本体31に嵌合されて電気的な接続を行うスイッチ部32と、スイッチ部32の取り付け/取り外し時に操作されるレバー33とから構成されている。
【0018】
このように、絶縁スイッチ3のスイッチ部32は、ユニットカバー2の開口部4を貫通して設置されているとともに、外部に突出した状態で取り付けられている。したがって、ユニットカバー2の取り外し方向である上方向へユニットカバー2を取り外そうとすると、スイッチ部32がユニットカバー2の上方向への移動を制限することになる。このように、スイッチ部32を取り外さなければ、ユニットカバー2を取り外すことができない構造となっている。
【0019】
また、絶縁スイッチ3のレバー33は、開口部4の外周部21と水平方向で重複しているため、ユニットカバー2を水平方向、とくに車両後方(リア)へ移動させようとすると、開口部4の外周部21がレバー33と干渉して移動が制限されることになる。このように、スイッチ部32を取り外さなければ、ユニットカバー2を水平方向、とくに車両後方へ移動させて取り外すことができない構造となっている。なお、本実施例ではユニットカバー2を取り外す際に、ユニットカバー2を車両前方(フロント)側へは移動させないものとする。
【0020】
さらに、図3のB−Bにおける断面図を図4に示す。図4に示すように、スイッチ部32はユニットカバー2の開口部4から外部に突出した状態で絶縁スイッチ本体31に接続されているので、ユニットカバー2の左右(車幅)方向への移動を制限している。このように、スイッチ部32を取り外さなければ、ユニットカバー2を左右方向へ移動させて取り外すことができない構造となっている。
【0021】
次に、スイッチ部32の取り外し方法について説明する。スイッチ部32を取り外して二次バッテリ5を絶縁状態にするときには、まず図3に示すように、レバー33を上方向に持ち上げてから矢印方向に90°倒す。すると、図5に示す状態となり、この状態でさらにレバー33を水平に矢印方向へ引き抜くと、スイッチ部32が絶縁スイッチ本体31から取り外されて図6に示す状態となる。こうしてスイッチ部32が絶縁スイッチ本体31から取り外された状態になると、二次バッテリ5は内部で電気的に絶縁された状態になり強電安全性が確保される。このように、スイッチ部32はユニットカバー2の外部から簡単に脱着することが可能なので、緊急時にはユニットカバー2を外すことなく迅速に二次バッテリ5の強電安全性を確保することができる。
【0022】
こうして図6に示すように、絶縁スイッチ3のスイッチ部32が取り外されて、電気的な絶縁が確保されたら、次にユニットカバー2を固定している取り付けナットを取り外す。
【0023】
ここで、ユニットカバー2及び二次バッテリ5の断面図を図7に示す。図7に示すように、ユニットカバー2はスタッドボルト71によって上方向のみへ移動可能に設置されており、取り付けナット72によって車体に固定されている。
【0024】
このようにしてユニットカバー2はその周囲をスタッドボルト71と取り付けナット72によって複数箇所で固定されており、これら取り付けナット72をすべて取り外すことによってユニットカバー2を上方に取り外すことができる。
【0025】
以上説明したように、本実施例に係る電気系ユニットのカバー構造1では、絶縁スイッチ3をユニットカバー2の取り外し方向への移動を制限する位置に設置してユニットカバー2の外部から脱着可能に取り付ける構造とし、絶縁スイッチ3を取り外すことによって二次バッテリ5の絶縁を確保するようにしたので、緊急時には絶縁スイッチ3を外部から取り外すだけで二次バッテリ5の絶縁を確保することができ、これによってユニットカバー2を外すことなく短時間で容易に二次バッテリ5の強電安全性を確保することができる。そして、絶縁スイッチ3を取り外すことによってユニットカバー2の取り外し方向への移動が可能となるので、メンテナンス時に、ユニットカバー2を固定しているナット72を取り外しても、絶縁スイッチ3を取り外さなければユニットカバー2が外れることがなく、ユニットカバー2を外してメンテナンスをするときには確実に二次バッテリ5の強電安全性を確保することができる。
【0026】
また、本実施例に係る電気系ユニットのカバー構造1では、ユニットカバー2をスタッドボルト71によって上方向へのみ移動可能に固定するとともに、ユニットカバー2の側面に開口部4を設け、絶縁スイッチ3がこの開口部4を貫通して外部に突出した状態で取り付けられているので、絶縁スイッチ3が装着されている状態では、ユニットカバー2を固定しているナット72を取り外しても、ユニットカバー2を上方向や左右方向に外すことができない。したがって、絶縁スイッチ3を取り外さなければユニットカバー2が外れない仕組みを簡単な構造で得ることができ、これによってメンテナンス時にユニットカバー2を外したときに確実に二次バッテリ5の強電安全性を確保することができる。
【0027】
さらに、本実施例に係る電気系ユニットのカバー構造1では、絶縁スイッチ3がユニットカバー2の水平方向への移動を制限する部分を備えているため、絶縁スイッチ3が装着されている状態では、ユニットカバー2を固定しているナット72を取り外しても、ユニットカバー2を水平方向、とくに車両後方に外すことができない。したがって、絶縁スイッチ3を取り外さなければユニットカバー2が外れない仕組みを簡単な構造で得ることができ、これによってメンテナンス時にユニットカバー2を外したときには確実に二次バッテリ5の強電安全性を確保することができる。
【0028】
なお、上記実施例のように、絶縁スイッチ3の一部がユニットカバー2の水平方向への移動を制限するように構成した場合、ユニットカバー72の固定はスタッドボルト71に限定されるものではなく、他の固定手段(例えばボルトなど)で固定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1に係る電気系ユニットのカバー構造の構成を示す斜視図である。
【図2】実施例1に係る電気系ユニットのカバー構造におけるユニットカバーを外した状態を示す斜視図である。
【図3】実施例1に係る絶縁スイッチの構造を説明するための断面図である。
【図4】実施例1に係る絶縁スイッチ及びユニットカバーの構造を示す断面図である。
【図5】実施例1に係る絶縁スイッチの取り外し方法を説明するための断面図である。
【図6】実施例1に係る絶縁スイッチの取り外し方法を説明するための断面図である。
【図7】実施例1に係る二次バッテリ及びユニットカバーの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 電気系ユニットのカバー構造
2 ユニットカバー
3 絶縁スイッチ
4 開口部
5 二次バッテリ
31 絶縁スイッチ本体
32 スイッチ部
33 レバー
71 スタッドボルト
72 取り付けナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された電気系ユニットと、この電気系ユニットを覆うユニットカバーと、前記電気系ユニットの電気的な絶縁を確保する絶縁スイッチとを備えた電気系ユニットのカバー構造であって、
前記絶縁スイッチは前記ユニットカバーの取り外し方向への移動を制限する位置に設置され、且つ前記ユニットカバーの外部から前記電気系ユニットに脱着可能に取り付けられ、
前記絶縁スイッチを取り外すことによって前記電気系ユニットの絶縁が確保されるとともに、前記ユニットカバーの取り外し方向への移動が可能となることを特徴とする電気系ユニットのカバー構造。
【請求項2】
前記ユニットカバーは車両側に取り付けられたスタッドボルトによって上方向へのみ移動可能に固定されるとともに、側面に開口部が設けられ、前記絶縁スイッチが前記開口部を貫通して外部に突出した状態で前記電気系ユニットに取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の電気系ユニットのカバー構造。
【請求項3】
前記絶縁スイッチは、前記ユニットカバーと水平方向で重複する部分を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電気系ユニットのカバー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−228627(P2006−228627A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42939(P2005−42939)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】