電気経路を有する導電性ウェブ及びその製造方法
本発明によれば、導電性不織ウェブを利用した様々な製品及び装置が提供される。そのような製品及び装置には、RFIDシステム、高周波遮蔽システム、フレキシブル電子回路部品、発熱要素、アンテナ、電磁エネルギーシールド、薄膜スイッチ、キーパッド、包装システムなどが含まれる。一実施形態では、前記導電性不織ウェブは、導電性炭素繊維と、パルプ繊維及び/または合成繊維とを含む。超音波エネルギーを使用して、前記導電性材料中に電気経路が形成される。前記電気経路は、様々な電気デバイスを作製するのに使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気経路を有する導電性ウェブ及びその製造方法に関する。
【0002】
(関連出願)
本出願は、2008年5月29日に出願された米国特許仮出願第61/130,220号に基づくものであり、かつその優先権を主張するものである。
【0003】
近年、電気デバイスを様々なタイプの製品に組み込むための様々な試みがなされている。例えば、より強い消費者アピールを有するユニークな製品を創出するために、単純な電気デバイスが様々な衣類に設置されている。電気デバイスはまた、特定の機能を提供するために製品に組み込まれる。例えば、在庫管理または他の目的のために、RFIDなどの電気デバイスを様々なパッケージに組み込むことが当業者によって提案されている。
【0004】
電気デバイスはまた、医療業界において、携帯型監視装置として使用することが提案されている。例えば、一実施形態では、携帯型監視装置は、病院着または同様の衣類に設置され、患者が病院を動き回るまたは病院内を移動することを可能にしながら、患者の少なくとも1つの状態をモニタするように構成される。
【0005】
上述した様々な電気デバイスは、軽量、かつ、できるだけ安価に製造されている。そのため、電気デバイスは、紙材、織布、不織布、高分子フィルムなどの柔軟な基材を使用して作製されている。従来は、導電性インクを柔軟基材上に印刷することにより、電気回路を電気デバイスに組み込んでいた。
【0006】
しかし、従来の導電性インクを使用する手法には、様々な問題がある。例えば、導電性インクは、比較的高価なだけでなく、例えば織物材料などの多孔質基体に印刷した場合に問題が生じる。導電性インクを多孔質基体に印刷した場合、例えば、導電率が大幅に低下する。さらに、印刷工程は、通常はオフラインで行われるので、製造工程が複雑化されると共に、製品全体の製造コストが高くなる。
【0007】
上記に鑑みて、様々な電気デバイスに組み込むための電気回路を、比較的安価に構成及び製造することができる方法が現在求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許仮出願第61/130,220号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一般的に、本発明は、電気デバイスを構成するための1または複数の不織ウェブの使用に関する。より詳細には、本発明に従って作製した不織ウェブは、例えば炭素繊維などの導電性繊維を含むことにより導電性を有する。非導電性領域を形成することにより、導電性不織ウェブに電気経路が形成される。本発明によれば、非導電性領域は、導電性ウェブに超音波エネルギーを適用することにより形成される。超音波エネルギーは、導電性繊維を破壊及び分解することができ、それにより非導電性領域が形成されることが分かっている。
【0010】
不織ウェブに形成された電気経路は、特定の用途に応じて様々であり得る。例えば一実施形態では、電気回路は、不織材に形成することができる。電気回路には、例えば、閉回路や開回路が含まれる。
【0011】
導電性ウェブ材料は、本発明に従って、比較的高速度かつ比較的低コストで製造することができる。実際、導電性不織ウェブは、吸収性物品や医療製品などの使い捨て式の製品に組む込まれるように設計することができる。
【0012】
例えば、一実施形態では、本発明は、電気デバイスを構成するために使用される製品に関する。本発明の製品は、導電性繊維及び非導電性繊維を含有する導電性不織ウェブを含む。導電性繊維は、例えば炭素繊維などの非金属製繊維を含む。一例では、炭素繊維は、約85%を超える、例えば88%を超える、例えば90%を超える、さらには例えば92%を超える純度を有し得る。炭素繊維は、例えば約1〜6mmなどの適切な長さを有し得る。
【0013】
導電性繊維は、不織ウェブ中に、一般的に、約5〜50重量%の量で存在し得る。例えば一実施形態では、導電性繊維は、不織ウェブ中に約5〜25重量%の量で存在し得る。
【0014】
上述したように、不織ウェブは炭素繊維に加えて、非導電性繊維も含有することができる。非導電性繊維は、例えば、パルプ繊維、合成繊維、またはそれらの混合物であり得る。合成繊維は、熱可塑性ポリマーから作製することができる。
【0015】
非導電性領域を形成するために、例えば超音波ボンディングホーンを使用して、不織ウェブに超音波エネルギーが適用される。超音波エネルギーは、例えば、約20〜40kHzの周波数を有し得る。一実施形態では、超音波エネルギーは不織ウェブに、非導電性領域が前記ウェブに含まれている導電性領域の抵抗値よりも少なくとも4倍大きい抵抗値を有するようにするため十分な量で適用される。
【0016】
非導電性領域の形成に加えて、超音波エネルギーは、他の目的にも使用することができる。例えば、超音波エネルギーを不織ウェブに適用することにより、不織ウェブを隣接するウェブに接合させることができる。
【0017】
実際、一実施形態では、互いに隣接する2つのウェブを互いに接合させる及び/または1以上の非導電性領域を形成することに加えて、超音波エネルギーは、互いに対向配置された2つのウェブ間の電気的接続を確立するためも使用することができる。例えば、電気的接続は、非導電性領域に隣接する位置に確立することができる。
【0018】
様々な電気デバイスを構成するのに、例えば、多層製品を使用することができる。例えば一実施形態では、本発明に従って製造された導電性不織ウェブからスイッチを作製することができる。この電気的スイッチは、例えば、上述したような導電性不織ウェブと、同じく上述したような導電性不織ウェブを含み得る導電性層とを互いに離間させて対向配置することにより構成することができる。この2つの導電性層は互いに離間配置されているが、両導電性層を互いに押し付けて接触させたときに、両導電性荘は電気的接続される。一実施形態では、前記2つの導電性層の間に非導電性層を配置することができる。非導電性層は、例えば、互いに対向配置された導電性不織ウェブと導電性層との間の電気的接続がそれを通じてなされる開口部を有することができる。
【0019】
本発明に従って作製することができる他の電気デバイスには、キーボードが含まれる。キーボードは、例えば、複数のキーが配された外面を画定することができる。キーには、文字を指定するもの、数字を指定するもの、及びそれらの組み合わせが含まれる。キーの下側に第1の導電性層が配置され、第1の導電性層と互いに離間するようにして第2の導電性層が配置される。第1及び第2の導電性層の少なくとも一方は、本発明に従って作製された不織ウェブから構成される。前記複数のキーのうちの1つのキーを押したときに、第1の導電性層と第2の導電性層との間に電気的接続が形成される。加えて、第1及び第2の導電性層は互いに接続されたときに、押されたキーを特定する電気経路を形成することができる。本発明では、前記電気経路は、超音波処理領域を利用して形成することができる。
【0020】
様々な層を含むキーボードを製造することができる。例えば、一実施形態では、キーボードは、本発明に従って製造された2つの導電性不織ウェブと、前記両導電性ウェブを互いに隔てるための1つの非導電性層とを含む3つの層から構成することができる。この実施形態では、キーボードは、外側となる不織ウェブ上に直接的に印刷することができる。非導電性層は、任意の適切な非導電性材料から製造することができる。また、非導電性層は、キーボードの外面に配された各キーの位置とそれぞれ対応付けられた複数の開口部を有し得る。
【0021】
代替的な実施形態では、キーボードは、5つの層から構成され得る。この実施形態では、キーボードは、上述した前記3つの層に加えて、カバー層及び裏当て層をさらに含む。第1の導電性層、非導電性層、及び第2の導電性層は、カバー層と裏当て層との間に配置される。カバー層は、キーを表示する外面を有し得る。
【0022】
本発明の他の特徴及び態様は、以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の上記及び他の特徴及び利点、並びにこれらを達成する態様は、以下の説明、添付した特許請求の範囲、及び添付の図面を参照することによってより一層明らかとなり、また、本発明自体も、これらを参照することにより、より一層良く理解できるであろう。
【0024】
【図1】本発明に従って多層ウェブを作製する方法の一態様の側面図。
【図2】本発明に従って非捲縮通気乾燥ウェブを作製する工程の一態様の側面図。
【図3】本発明に従って作製された、導電性領域と非導電性領域とを有する導電性不織ウェブの一態様の切断平面図。
【図4】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図5】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図6】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図7】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図8】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図9】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図10】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図11】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図12】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図13】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図14】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図15】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図16】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図17】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図18】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図19】本発明に従って導電性不織ウェブを作製する方法の他の態様の側面図。
【0025】
本明細書及び図面において繰り返し用いられている参照符号は、本発明の同一または類似の機構または要素を表すことを意図している。図面は表象的なものであり、必ずしも縮尺通りではない。ある特定の部分を誇張し他を縮小した場合もある。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書中の記述が本発明の例示的な態様の説明に過ぎず、本発明のより広範な態様を制限するものではないことは、当業者であれば理解されよう。
【0027】
本発明は、一般的に、導電性要素を有する製品に関する。本明細書に記載された製品のいくつかは使い捨て式の製品である。使い捨て式とは、再使用のために洗浄または他の方法によって製品の状態を回復させるのではなく、限られた回数だけ使用した後に廃棄するように設計されていることを意味する。
【0028】
一般的に、本発明は、導電性領域及び非導電性領域を有する導電性不織材に関する。導電性不織材は、導電性繊維と共に少なくとも1つの他の種類の繊維を含む。前記他の種類の繊維には、例えば、パルプ繊維、合成繊維、またはそれらの混合物が含まれる。導電性繊維は、導電性不織材中に、導電性不織材が少なくとも一方向に導電性を持つようになるのに十分な量で存在する。
【0029】
本発明によれば、導電性不織材の特定の位置に超音波エネルギーを適用することにより、非導電性領域が形成される。超音波エネルギーは導電性繊維を破壊し、それにより、前記ウェブに電気的断絶部が形成されると考えられている。特に有利なことに、超音波エネルギーは、例えば、超音波エネルギーを前記ウェブの指定位置に接触させることを可能にする回転ホーンを使用して、導電性不織材に適用することができる。このようにして、電気経路を作成するために、非導電性領域のパターンを前記ウェブに形成することができる。電気経路はその後、電気デバイスの電気回路を完成させるために使用することができる。このようにして、本発明によれば、軽量かつ柔軟性を有するのみならず比較的低コストで作成可能な電気回路を含む電気デバイスを作製することができる。加えて、単純な回路及びスイッチを不織材中に比較的高速度(例えば、その工程を電気デバイスまたは他の物品の製造ラインに組み込むことが可能な61メートル/分(200フィート/分)を超える速度)で形成することができる。
【0030】
本発明に従って作製される導電性ウェブは、様々な技術及び方法を用いて作製することができる。例えば、一実施形態では、導電性不織ウェブは、相当量のパルプ繊維を含むことができ、抄紙法または他の同様のウエットレイ法を用いて作製することができる。他の実施形態では、導電性不織ウェブは、相当量の合成繊維を含むように作製することができる。相当量の合成繊維を含める場合、前記ウェブは、ウエットレイド法または他のウェブ作製技術を用いて作製することができる。例えば一実施形態では、導電性繊維を単独でまたはパルプ繊維と共に、コフォームウェブを形成するための方法を用いて、溶融した合成繊維と組み合わせることができる。さらなる他の実施形態では、導電性繊維を単独でまたはパルプ繊維と共に、スパンボンドウェブなどの事前に作製した不織ウェブと水流交絡させることもできる。
【0031】
本発明に従って使用され得る導電性繊維は、特定の用途及び所望の結果に応じて様々であり得る。不織ウェブを形成するために使用され得る導電性繊維には、炭素繊維、金属繊維、導電性高分子から作製された繊維を含む導電性高分子繊維、導電性材料を含む高分子繊維、及びこれらの混合物が含まれる。使用可能な金属繊維には、例えば、銅繊維、アルミニウム繊維、及び同様のものが含まれる。導電性材料を含む高分子繊維には、導電性材料でコーティングされた熱可塑性繊維や、導電性材料を含浸または混合させた熱可塑性繊維が含まれる。例えば、一態様では、銀でコーティングされた熱可塑性繊維が使用され得る。
【0032】
本発明に使用され得る炭素繊維には、炭素のみから作製した繊維や、導電性となるのに十分な量の炭素を含んだ繊維が含まれる。一態様では、例えば、ポリアクリロニトリル高分子から作製した炭素繊維が使用され得る。具体的には、前記炭素繊維は、ポリアクリロニトリル高分子繊維を加熱、酸化及び炭化させることによって作製される。前記炭素記繊維は典型的には、高純度を有しかつ比較的高分子量の分子を含む。例えば、前記炭素繊維は、約85重量%以上の量の、例えば約88重量%以上、例えば約90重量%以上、例えば約92重量%以上または例えば約95重量%以上の量の炭素を含み得る。
【0033】
ポリアクリロニトリル高分子繊維から炭素繊維を作製するために、まずポリアクリロニトリル繊維を空気などの酸素雰囲気中で加熱する。加熱中、ポリアクリロニトリル高分子中のシアノ部位により、テトラヒドロピリジン環の繰返し単位が形成される。加熱を続けるにつれて、高分子の酸化が開始される。酸化中、水素が放出され、それにより炭素が芳香環を形成する。
【0034】
酸化後、前記繊維を酸素欠乏雰囲気中でさらに加熱する。例えば、前記繊維は、約1300℃以上の温度まで、例えば1400℃以上、例えば約1300〜1800℃の温度まで加熱され得る。加熱中に、前記繊維は炭化される。そして、炭化中に、隣接する高分子鎖が互いに結合し、ほぼ純粋な炭素の薄板状の平面基礎構造が形成される。
【0035】
ポリアクリロニトリルベースの炭素繊維は、様々な商業的供給源から入手可能である。例えば、前記繊維は、米国テネシー州ロックウッド所在のトーホウ・テナックス・アメリカ社(Toho Tenax America, Inc.)から入手可能である。
【0036】
炭素繊維の作製に使用される他の原材料は、レーヨンや石油ピッチである。
【0037】
特に有利なことに、作製された炭素繊維は任意の適当な長さに切断することができる。本発明の一実施形態では、約1〜12mmの長さ、例えば約3〜6mmの長さに切断された炭素繊維を基体ウェブに組み込むことができる。炭素繊維は、約3〜15ミクロンの平均径、例えば約5〜10ミクロンの平均径を有し得る。一実施形態では、例えば、炭素繊維は、約3mmの長さ、及び約7ミクロンの平均径を有し得る。
【0038】
一態様では、不織基体ウェブに組み込まれる炭素繊維は、水溶性のサイズ剤を含有する。サイズ剤は、0.1〜10重量%の量で含まれ得る。水溶性サイズ剤は、これらに限定されるものではないが、ポリアミド化合物、エポキシ樹脂エステル、グリセリン、及びポリビニルピロリドンであり得る。サイズ剤は、不織ウェブの形成前に炭素繊維を良好に分散させるべく炭素繊維を水と混合させるときに、前記水に溶解させられる。
【0039】
本発明に従って導電性不織ウェブを形成する際に、上記の導電性繊維は、ティッシュ製造工程での使用に適した他の繊維と組み合わされる。導電性繊維と組み合わされる繊維には、任意の天然または合成セルロース繊維が含まれ得、そのようなものとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、非木質繊維(例えば、綿、アバカ、ケナフ、サバイグラス、亜麻、アフリカハネガヤ、わら、ジュート麻、バガス、トウワタフロス繊維、パイナップルの葉の繊維)や、針葉樹及び落葉樹から得られる木質繊維またはパルプ繊維(例えば、北方針葉樹クラフトまたは南方針葉樹クラフトから得られる針葉樹繊維や、ユーカリ、カエデ、樺の木、ポプラなどから得られる広葉樹繊維)が挙げられる。パルプ繊維は、高収率または低収率の形態で作製することができ、かつ、クラフトパルプ化法、サルファイト法、高収率パルプ化法及び他の既知のパルプ化法などの任意の既知の方法でパルプ化することができる。また、1988年12月27日にLaamanenらに付与された米国特許第4,793,898号、1986年6月10日にChangらに付与された米国特許第4,594,130号、及び1971年6月15日にKleinertらに付与された米国特許第3,585,104号に開示されている繊維及び方法を含む、オルガノソルブパルプ化法によって作製した繊維を使用することもできる。また、1997年1月21日にGordonらに付与された米国特許第5,595,628号に例示されているアントラキノンパルプ化法によって作製した繊維を使用することもできる。
【0040】
一実施形態では、針葉樹繊維が、不織材の作製に使用される。針葉樹繊維はより長い傾向にあり、製造及び加工中の粒子の放出が少ない。より長いパルプ繊維も、炭素繊維などの導電性繊維とより良好に交絡する傾向を有する。
【0041】
また、不織材に組み込まれたパルプ繊維(針葉樹繊維など)は、各繊維の結合部位の量を増加させるために叩解され得る。結合部位を増加させると、完成材料における、パルプ繊維と導電性繊維との物理的な交絡度が増大する。このことにより、処理中の炭素繊維の脱落を少なくした、非常に平坦かつ一様な紙材を作製することができる。また、叩解作業により、不織材の全体強度も増加する。例えば、一実施形態では、パルプ繊維は、約300mL以上、例えば約375mL以上のカナダ標準ろ水度を有し得る。例えば、パルプ繊維は、約350〜600mLのカナダ標準ろ水度を有することとなるように叩解される。
【0042】
繊維の一部、例えば乾燥重量で100%以下は合成繊維であり得、例えば、レーヨン、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、2成分鞘芯型繊維、多成分バインダー繊維及び同様のものなどであり得る。例示的なポリエチレン繊維は、米国デラウエア州ウィルミントン所在のヘラクレス社(Hercules, Inc.)製のPulpex(登録商標)である。合成セルロース繊維の種類には、あらゆる種類のレーヨン及び、ビスコースまたは化学修飾セルロース由来の他の繊維が含まれる。
【0043】
不織ウェブに熱可塑性繊維を組み入れると、様々な利点及び恩恵が得られる。例えば、不織ウェブに熱可塑性繊維を組み入れると、不織ウェブをそれの隣接する構造体に対して、熱結合または超音波結合させることが可能となる。例えば、不織ウェブは、おむつのライナなどの他の不織材(例えばスパンボンドウェブやメルトブローンウェブ)に熱結合され得る。
【0044】
また、マーセライズ加工されたパルプ、化学的に補強または架橋された繊維、あるいはスルホン化された繊維などの、化学的に処理された天然セルロース系繊維も使用することができる。製紙繊維を使用する際の良好な物理的特性に関しては、繊維が比較的無傷であり、繊維の大部分が未叩解または軽く叩解されただけであることが望ましくあり得る。マーセライズ加工された繊維、再生セルロース系繊維、微生物により生成されたセルロース、レーヨン、及び他のセルロース系材料またはセルロース誘導体を使用することもできる。また、適切な繊維には、再生繊維、バージン繊維、またはこれらの混合物が含まれ得る。ある特定の態様では、前記繊維は、少なくとも200の、より具体的には少なくとも300、より具体的には少なくとも400、最も具体的には少なくとも500のカナダ標準ろ水度を有し得る。
【0045】
本発明において使用することができる他の製紙繊維には、損紙繊維、再生繊維及び高収率繊維が含まれる。高収率パルプ繊維は、約65%以上の歩留り、より具体的には約75%以上、さらに具体的には約75〜95%の歩留りを提供するパルプ化工程によって製造された製紙繊維である。歩留りは、最初の木材質量に対するパーセントとして表される最終的に得られた被処理繊維の量である。そのようなパルプ化工程には、漂白ケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、圧力/圧力サーモメカニカルパルプ(PTMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、サーモメカニカルケミカルパルプ(TMCP)、高収率亜硫酸パルプ、高収率クラフトパルプが含まれ、これらは全て、最終的に得られた繊維にリグニンが高レベルで存在する。高収率繊維は、乾燥及び湿潤の両状態において、典型的な化学的にパルプ化された繊維よりも剛性が高いことがよく知られている。
【0046】
また、導電性シートに耐炎性を付与するために、米国ミズーリ州ブリッジトン所在のゾルテック社(Zoltek Corporation)から販売されているPANEX(登録商標)などの難燃繊維も本発明に使用することができる。
【0047】
一般的に、導電性ウェブは、ティッシュウェブを形成可能な任意のウエットレイド法を用いて形成することができる。例えば、本発明の製紙工程は、エンボス加工、湿式加圧、空気加圧、通気乾燥、非捲縮通気乾燥、水流絡合、空気堆積、及び当業者に既知の他の方法を用いることができる。ティッシュウェブは、最大で96重量%のパルプ繊維を含有する繊維完成紙料から形成することができる。繊維完成紙料はまた、熱可塑性繊維を最大で96重量%の量で含有し得る。
【0048】
また、不織ウェブは、次の特許文献に開示されているような、パターンが緻密化または刻印(インプリント)されたティッシュシートであり得る。1985年4月30日にJohnsonらに付与された米国特許第4,514,345号、1985年7月9日にTrakhanに付与された米国特許第4,528,239号、1992年3月24日にSmurkoskiら付与された米国特許第5,098,522号、1993年11月9日にSmurkoskiらに付与された米国特許第5,260,171号、1994年1月4日にTrokhanに付与された米国特許第5,275,700号、1994年7月12日にRaschらに付与された米国特許5,328,565号、1994年8月2日にTrokhanらに付与された米国特許第5,334,289号、1995年7月11日にRaschらに付与された米国特許第5,431,786号、1996年3月5日にSteltjes, Jr.らに付与された米国特許第5,496,624号、1996年3月19日にTrokhanらに付与された米国特許第5,500,277号、1996年5月7日にTrokhanらに付与された米国特許第5,514,523号、1996年9月10日にTrokhanらに付与された米国特許第5,554,467号、1996年10月22日にTrokhanらに付与された米国特許第5,566,724号、1997年4月29日にTrokhanらに付与された米国特許第5,624,790号、1997年5月13日にAyersらに付与された米国特許第5,628,876号。これらの特許文献は、本明細書と矛盾しない限りにおいて、この参照により本明細書に組み込まれるものとする。このようなインプリントされたティッシュシートは、インプリンティングファブリック(imprinting fabric)によってドラムドライヤに押し付けられインプリントされた密度の高い領域と、インプリンティングファブリックのたわみ溝(deflection conduit)に対応する比較的低密度の領域(例えばティッシュシートの「ドーム」状部分)とを有する網状構造を有し得る。たわみ溝上に位置するティッシュシートが、たわみ溝を横切る空気圧の差によってたわむことにより、より密度の低い枕様領域すなわちドームがティッシュシートに形成される。
【0049】
また、ティッシュウェブは、相当量の内部繊維間結合強度を持たないように形成することができる。この点に関し、基体ウェブを形成するために使用される繊維完成紙料を、化学剥離剤で処理することができる。化学剥離剤は、パルプ化工程中に繊維スラリーに加えるか、またはヘッドボックスに直接加えることができる。本発明で使用することができる適切な剥離剤には、脂肪ジアルキル四級アミン塩、モノ脂肪アルキル三級アミン塩、一級アミン塩、イミダゾリン四級塩、シリコン四級塩、及び不飽和脂肪アルキルアミン塩などのカチオン性剥離剤が含まれる。
【0050】
他の好適な剥離剤は、1996年6月25日にKaunに付与された米国特許第5,529,665号に開示されている(この特許文献は、この参照により本明細書に組み込まれるものとする)。この特許文献では、特に、剥離剤としてのカチオン性シリコン組成物の使用が開示されている。一態様では、本発明の方法に使用される剥離剤は、有機四級塩化アンモニウム、特に四級塩化アンモニウムのシリコーンベースのアミン塩である。例えば、剥離剤は、ヘラクレス社(Hercules Corporation)から発売されているPROSOFT(登録商標)TQ1003であり得る。剥離剤は、スラリー内に存在する繊維1メートルトン当たり約1〜10kgの量で繊維スラリーに加えることができる。
【0051】
代替的な態様では、剥離剤は、イミダゾリンベースの物質であり得る。イミダゾリンベースの剥離剤は、例えばウイトコ社(Witco Corporation)から入手可能である。イミダゾリンベースの剥離剤は、1メートルトン当たり2.0kgないし約15kgの量で加えられ得る。
【0052】
一態様では、剥離剤は、1998年12月17日に出願された国際公開番号第WO 99/34057号または2000年4月28日に出願された国際公開番号第WO 00/66835号に開示されている方法に従って繊維完成紙料に加えることができる(両文献は、この参照により本明細書に組み込まれるものとする)。上記の特許文献には、剥離剤などの化学添加物をセルロース系製紙繊維に高レベルで吸着させる方法が開示されている。この方法は、繊維スラリーを過剰な化学添加物で処理するステップと、吸着が生じるのに十分な滞留時間を与えるステップと、未吸着化学添加物を除去すべくスラリーをろ過するステップと、不織ウェブを形成する前に、ろ過したパルプを新鮮な水に再分散させるステップとを含んでいる。
【0053】
また、乾燥紙力増強剤及び湿潤紙力増強剤もベースシートに塗布するまたは組み込むことができる。本明細書では、「湿潤紙力増強剤」は、湿潤状態における繊維間結合を固定するために使用される材料を意味する。通常、紙製品及びティッシュ製品において繊維同士を互いに結合させるための手段には、水素結合、場合によっては水素結合と共有結合及び/またはイオン結合との組み合わせが含まれる。本発明では、繊維間結合点を固定することにより湿潤状態での破壊に耐えられるようにした繊維結合材料を提供することは有用であり得る。
【0054】
本発明の目的のために、ティッシュシートに加えたときに、幾何学的な湿潤引張り強度の幾何学的な乾燥引張り強度に対する比の平均が約0.1を超える任意の材料を湿潤紙力増強剤と称することとする。通常、これらの材料は、恒久的タイプの湿潤紙力増強剤または「一時的タイプの」紙力増強剤と称される。恒久的タイプの湿潤紙力増強剤を一時的タイプの湿潤紙力増強剤から区別することを目的として、恒久的タイプの湿潤紙力増強剤は、紙またはティッシュ製品に組み込んだときに、少なくとも5分間水に曝した後の湿潤強度が元の湿潤強度の50%を超える値に維持される樹脂と定義される。一時的タイプの湿潤紙力増強剤は、5分間水を飽和させた後の湿潤強度が元の湿潤強度の50%以下となるものである。両タイプの湿潤紙力増強剤が本発明に使用される。パルプ繊維に加えられる湿潤紙力増強剤の量は、パルプ繊維の乾燥重量に基づいて、少なくとも約0.1乾燥重量%であり、より具体的には約0.2乾燥重量%以上、さらに具体的には約0.1〜3乾燥重量%である。
【0055】
恒久的タイプの湿潤紙力増強剤は一般的に、ティッシュシート構造に、実質的に長期間の湿潤耐性を付与する。対照的に、一時的タイプの湿潤紙力増強剤は一般的に、低密度かつ高耐性のティッシュシート構造を提供するが、水または体液への暴露への長期間の耐性を有する構造は提供しない。
【0056】
一時的タイプの湿潤紙力増強剤は、カチオン性、非イオン性、またはアニオン性であり得る。そのような化合物には、米国(ニュージャージー州ウェストパターソン所在のサイテック・インダストリーズ(Cytec Industries)社から入手可能なPAREZ(登録商標)631NC及びPAREZ(登録商標)725が含まれる(カチオン性グリオキシル化ポリアクリルアミドである一時的タイプの湿潤紙力増強樹脂)。この樹脂及び類似の樹脂は、1971年1月19日にCosciaらに付与された米国特許第3,556,932号、及び1971年1月19日にWilliamsらに付与された米国特許第3,556,933号に記載されている。米国デラウェア州ウィルミントン所在のヘラクレス社(Hercules)製のHercobond 1366は、本発明に従って使用することができる他の市販されているカチオン性グリオキシル化ポリアクリルアミドである。一時的タイプの湿潤紙力増強剤のさらなる例としては、ナショナルスターチ・アンド・ケミカル社(National Starch and Chemical Company)から販売されているCobond(登録商標)1000などの酸化でんぷんや、2001年5月1日にSchroederらに付与された米国特許第6,224,714号、2001年8月14日にShannonらに付与された米国特許第6,274,667号、2001年9月11日にSchroederらに付与された米国特許第6,287,418号、及び2002年4月2日にShannonらに付与された米国特許第6,365,667号に記載されているようなアルデヒド含有高分子がある。これらの特許文献は、本明細書と矛盾しない限りにおいて、この参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0057】
カチオン性のオリゴマー樹脂または高分子樹脂を含む恒久的タイプの湿潤紙力増強剤も本発明に使用することができる。米国デラウェア州ウィルミントン所在のヘラクレス社(Hercules)から販売されているKYMENE 557Hなどのポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリンタイプの樹脂は最も広く使用されている恒久的タイプの紙力増強剤であり、本発明での使用に適している。このような材料は、次の米国特許に記載されている。1972年10月24日にKeimに付与された米国特許第3,700,623号、1973年11月13日にKeimに付与された米国特許第3,772,076号、1974年12月17日にPetrovichらに付与された米国特許第3,855,158号、1975年8月12日にPetrovichらに付与された米国特許第3,899,388号、1978年12月12日にPetrovichらに付与された米国特許第4,129,528号、1979年4月3日にPetrovichらに付与された米国特許第4,147,586号、及び1980年9月16日にvan Eenamに付与された米国特許第4,222,921号。他のカチオン性樹脂としては、ポリエチレンイミン樹脂や、ホルムアルデヒドとメラミン若しくは尿素との反応により得られるアミノプラスト樹脂がある。ティッシュ製品の製造においては、一時的タイプの湿潤紙力増強樹脂及び恒久的タイプの湿潤紙力増強樹脂の両方を使用することが好適である。
【0058】
一実施形態では、比較的大量の湿潤紙力増強剤が不織材に組み込まれる。湿潤紙力増強剤に加えて、乾燥紙力増強剤も製品に加えられる。加えて、湿潤紙力増強剤は、導電性繊維の保持力を向上させるべく、不織材中での繊維の化学的交絡を助ける役割を果たす。不織材に加えられる湿潤紙力増強剤の量は、様々な因子に依存する。一般的に、湿潤紙力増強剤は、約1〜12kg/mtonの量で、例えば約5〜10kg/mtonの量で加えられる。特定の実施形態では、湿潤紙力増強剤は、できるだけ多い量加えることが望ましい。これらの実施形態では、例えば、湿潤紙力増強剤は、約7kg/mtonを超える量で、例えば約8kg/mtonの量で加えられる。
【0059】
乾燥紙力増強剤は従来技術で公知であり、乾燥紙力増強剤には、これらに限定されるものではないが、改変でんぷん及び他の多糖(例えば、カチオン性、両性、アニオン性のでんぷん、グアー及びローカストビーンガム)、修飾ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、糖類、ポリビニルアルコール、キトサンなどが含まれる。このような乾燥紙力増強剤は、通常、ティッシュシートの形成前に繊維スラリに加えられるか、またはクレーピングパッケージ(creping package)の一部として加えられる。
【0060】
不織ウェブに加えることができる化学薬品のさらなる種類には、これらに限定されるものではないが、吸収助剤(通常はカチオン性、アニオン性または非イオン性の界面活性剤の形態である)、保湿剤及び可塑剤(例えば、低分子量ポリエチレングリコール)、及びポリヒドロキシ化合物(例えば、グリセリン、プロピレングリコール)が含まれる。例えば鉱油、アロエエキス、ビタミンE、シリコーン、ローション全般などの皮膚に対する健康上の効用がある物質も最終製品に組み込むことができる。
【0061】
一般的に、本発明の製品は、その使用目的に反しない任意の既知の物質及び化学薬品と共に用いることができる。そのような物質の例には、これらに限定されるものではないが、ベビーパウダー、重曹、キレート剤、ゼオライト、香料または他の臭気マスキング剤、シクロデキストリン化合物、酸化剤などが含まれる。特に有利なことに、炭素繊維は、導電性繊維として使用した際に、臭気吸収剤としても作用する。また、超吸収性粒子、合成繊維またはフィルムも使用することができる。追加的な選択肢には、染料、蛍光漂白剤、保湿剤、軟化剤などが含まれる。
【0062】
本発明に従って形成される不織ウェブは、単一の同質的な繊維層、または、層状若しくは積層状の構造を含み得る。例えば、不織ウェブ層(プライ)は、2層または3層の繊維層を含み得る。各層は、異なる繊維組成物を有し得る。例えば、図1を参照すると、複数層を積層させた層状パルプ紙料を形成する装置の一態様が示されている。図示するように、3層ヘッドボックス10は、一般的に、上部ヘッドボックス壁12及び下部ヘッドボックス壁14を有している。ヘッドボックス10は、3つの繊維ストック層を互いに分離させるための第1の仕切部16及び第2の仕切部18をさらに有している。
【0063】
各繊維層は、繊維の希釈水性懸濁液を含む。各層に含まれる特定の繊維の種類は、一般的に、形成される製品及び所望の結果に依存する。一態様では、例えば、中間層20は、導電性繊維と共にパルプ繊維を含んでいる。他方、外層22、24は、針葉樹繊維及び/または広葉樹繊維などのパルプ繊維のみを含み得る。
【0064】
中間層20中に導電性繊維を配することにより、様々な利点及び恩恵が得られる。例えば、ウェブの中心に導電性繊維を配することで、表面の手触りが柔らかい導電性材料を作製することができる。また、導電性繊維をウェブのある1層に集中させることで、多量の導電性繊維を加えることなく導電性材料の導電性を向上させることもできる。一態様では、例えば、各層がウェブの約15〜40重量%を占める3層ウェブが形成される。外層は、パルプ繊維のみでまたはパルプ繊維と熱可塑性繊維とを組み合わせて作製することができる。他方、中間層は、導電性繊維と共にパルプ繊維を含み得る。導電性繊維は、中間層に、約30〜70重量%の量で、例えば約40〜約60重量%、例えば約45〜55重量%の量で含まれ得る。
【0065】
ロール28及び30によって適切に支持されて走行するエンドレス型の形成用ファブリック26が、ヘッドボックス10から供給される積層製紙ストックを受け取る。ファブリック26上に積層繊維懸濁液が保持されると、矢印32によって示されるように、懸濁液に含まれている水がファブリックを通過する。水の除去は、形成構造に応じて、重力、遠心力及び真空吸引の組み合わせによって達成される。
【0066】
多層紙ウェブの形成はまた、1992年7月14日にFarrington,Jr.に付与された米国特許第5,129,988号に記載され開示されている(この特許文献は、この参照により本明細書に組み込まれるものとする)。
【0067】
上述したように、他の実施形態では、不織ウェブは、単一の同質的な繊維層から構成することができる。一実施形態では、同質的な繊維層を作製する際は、まず、パルプ繊維及び/または合成繊維を含有する水性懸濁液を調製する。そして、形成面上に水性懸濁液を堆積させる前に、水性懸濁液に炭素繊維などの導電性繊維を注入する。例えば、導電性繊維は、繊維水性懸濁液を形成面上に堆積させる直前に、ヘッドボックス内の繊維水性懸濁液に注入される。パルプ繊維及び/または合成繊維の水性懸濁液は、例えば、水を99重量%を超える量で含有し得る。例えば、一実施形態では、パルプ繊維及び/または合成繊維の水性懸濁液は、パルプ繊維及び/または合成繊維を、1重量%未満の量で、例えば約0.5重量%の量で含有する。導電性繊維は、その後、同様の希釈率で水性懸濁液に注入される。例えば、炭素繊維を約0.5重量%の量で含む炭素繊維水性懸濁液が、パルプ繊維及び/または合成繊維の水性懸濁液に注入される。
【0068】
導電性繊維をパルプ繊維及び/または合成繊維の水性懸濁液に注入することで、導電性繊維のフロック(flock)の形成を低減できることが分かっている。繊維が互いに混合される時間が長くなると、フロックが形成される傾向がより高まることが分かっている。フロックが形成されると、例えば、作製された材料に弱い部分が生じ、それにより、不織材を後で処理する際にウェブ破断が発生し得る。
【0069】
繊維水性懸濁液から形成されたティッシュウェブは、様々な技術及び方法を用いて処理され得る。例えば、図2を参照して、通気乾燥させられたティッシュシートを製造する方法が示されている。一態様では、非捲縮/通気乾燥法を用いて不織ウェブを形成することが望ましい。形成中に不織ウェブを捲縮(クレーピング)すると、不織ウェブ中の導電性繊維の網構造が破壊され、導電性繊維が損傷することが分かっている。その場合、不織ウェブは、非導電性となる。
【0070】
簡単にするために、いくつかのファブリックの走行を画定するために様々なテンションロールを概略的に示すが、符号は付さない。当然のことながら、一般的な工程から逸脱することなく、図2に示した装置及び方法からの変形形態を作り出すことができる。積層ヘッドボックスなどの製紙ヘッドボックス34を有するツインワイヤ式フォーマーが示されており、これは、フォーミングロール39上に位置する形成用ファブリック38上へ製紙繊維の水性懸濁液のストリーム36を注入するかまたは堆積させる。形成用ファブリックは、新たに形成された湿潤ウェブを支持し、ウェブが約10乾燥重量パーセントの濃度まで部分的に脱水されたときに、ウェブを工程の下流へ搬送する役割を果たす。湿潤ウェブのさらなる脱水は、湿潤ウェブが形成用ファブリックによって支持されている間に、例えば真空吸引によって行うことができる。
【0071】
湿潤ウェブは、その後、形成用ファブリックから搬送用ファブリック40へ移送される。随意的な一態様では、ウェブの伸縮性を高めるために、搬送用ファブリックは形成用ファブリックよりも低速で走行する。このことは一般的に「ラッシュ(rush)」搬送)と呼ばれる。2つのファブリック間の相対速度差は、0〜15パーセント、より具体的には約0〜8パーセントであり得る。
【0072】
形成用ファブリック及び搬送用ファブリックが真空スロットの前縁で同時に集中及び分散するように、搬送は真空シュー(vacuum shoe)42に補助されて行われることが好ましい。ウェブは、その後、真空搬送ロール46または真空搬送シューの助けを借りて、及び随意的に前述したような固定間隔移送を再び使用して、搬送ファブリックから通気乾燥ファブリック44へ搬送される。通気乾燥ファブリックは、搬送用ファブリックに対して同じ速度または異なる速度で走行させることができる。所望であれば、伸縮性をさらに向上させるために、通気乾燥ファブリックをより低速で走行させることもできる。必要に応じて、シートが通気乾燥ファブリックになじむように確実に変形し、それにより所望のバルク及び外見を生じさせるように、搬送を真空補助により行うことができる。適切な通気乾燥ファブリックは、1995年7月4日にKai F. Chiuらに付与された米国特許第5,429,686号及び1997年9月30日にWendtらに付与された米国特許第5,672,248号に記載されている(これらの特許文献は、この参照により本明細書に組み込まれるものとする)。
【0073】
一態様では、通気乾燥ファブリックは、比較的滑らかな表面を提供する。代替的に、通気乾燥ファブリックは、高くかつ長い押圧用ナックル(impression knuckle)を有することができる。
【0074】
不織ウェブにおける通気乾燥ファブリックと接する側は、一般的に、不織ウェブの「ファブリックサイド」と呼ばれる。不織ウェブのファブリックサイドは、上述したように、ファブリックを通気ドライヤで乾燥させた後は、通気乾燥ファブリックの表面と一致する形状を有し得る。他方では、紙ウェブの反対側は、一般的に、「エアサイド」と呼ばれる。ウェブのエアサイドは、典型的には、通常の通気乾燥工程中はファブリックサイドよりも滑らかである。
【0075】
ウェブ搬送に用いられる真空のレベルは、約3〜15水銀柱インチ(約75〜380水銀柱ミリメータ)、好ましくは約5水銀柱インチ(125水銀柱ミリメータ)であり得る。真空を用いてウェブを次のファブリック上へ吸引するのに加えてまたはその代用として、ウェブを次のファブリック上へ吹き飛ばすためにウェブの反対側の面から正圧を用いる代わりに真空シュー(負圧)を追加するかまたは置き換えることができる。また、真空シューの代わりに、1または複数の真空ロールを使用することもできる。
【0076】
通気乾燥ファブリックによって支持されている間に、ウェブは、通気乾燥ドライヤ48によって最終的に約94パーセント以上の濃度まで乾燥させられ、その後、キャリヤファブリック50へ搬送される。乾燥させたベースシート52は、キャリヤファブリック50及び随意的なキャリヤファブリック56を使用してリール54へ搬送される。随意的な加圧回転ロール58を用いて、キャリヤファブリック50からファブリック56へのウェブの移送を促進することができる。この目的に適したキャリヤファブリックは、アルバニー・インターナショナル社(Albany International)製の84Mまたは94M及びアステン(Asten)959または937であり、これらは全て、微細パターンを有する比較的滑らかなファブリックである。図示していないが、リールカレンダリングまたは後に続くオフラインカレンダリングを使用してベースシートの滑らかさ及び柔らかさを向上させることができる。また、ウェブをカレンダリングすると、導電性繊維をある特定の平面またはある特定の方向に配向させることができる。例えば、一態様では、導電性繊維の全てを主にX−Y平面に配向させ、Z方向に配向させないために、ウェブをカレンダリングすることができる。このようにして、ウェブの柔らかさを向上させると共に、ウェブの導電性を向上させることができる。
【0077】
一実施形態では、不織ウェブ52は、平坦な状態で乾燥させられたウェブである。例えば、ウェブは、滑らかな通気乾燥用ファブリック上に位置する間に形成することができる。非捲縮/通気か乾燥ファブリックの製造工程は、例えば、1992年7月14日にWendtらに付与された米国特許第5,672,248号、1997年8月12日にFarringtonらに付与された米国特許第5,656,132号、2000年9月19日にLindsay及びBurazinに付与された米国特許第6,120,642号、2000年8月1日にHermansらに付与された米国特許6,096,169号、2001年3月6日にChenらに付与された米国特許第6,197,154号、及び2000年11月7日にHadaらに付与された米国特許6,143,135号に開示されている(これらの特許文献は、この参照により本明細書に組み込まれるものとする)。
【0078】
図2には、非捲縮/通気乾燥ウェブを製造する工程が示されている。しかし、導電性の不織ウェブは、クレーピングを行わない任意の適切な工程及または技術を用いて形成可能であることを理解されたい。
【0079】
例えば、図19を参照すると、本発明に従って不織ウェブを形成するために用いることができる他の工程が示されている。図19に示す実施形態では、新しく形成されたウェブは、工程中に湿式加圧される。
【0080】
この実施形態では、ヘッドボックス60が、複数のガイドロール64によって支持されて走行している形成用ファブリック62上へ繊維の水性懸濁液を放出する。ヘッドボックス60は、図1に示したヘッドボックス34と同様のものであり得る。加えて、上述したように、繊維の水性懸濁液は導電性繊維を含み得る。真空ボックス66が形成用ファブリック62の真下に配置され、ウェブの形成を補助するために繊維完成紙料から水を除去するように構成されている。形成されたウェブ68は、形成用ファブリック62から第2のファブリック70に搬送される。第2のファブリックは、ワイヤまたはフェルトのいずれかであり得る。ファブリック70は、連続的な円軌道を描いて走行するように、複数のガイドロール72によって支持されている。また、ファブリック62からファブリック70へのウェブ68の移送を容易にするように設計されたピックアップロール74も設けられている。
【0081】
この実施形態では、ウェブ68は、ファブリック70から、ヤンキードライヤなどの回転可能な加熱ドライヤドラム76の表面へ搬送される。図示するように、ウェブ68がドライヤ表面の回転経路の一部を通って搬送されるときに、ウェブに熱が与えられ、ウェブ中に含まれている水分の大部分が蒸発する。ウェブ68は、その後、クレーピングされることなく、ドライヤドラム76から除去される。
【0082】
ウェブ68をドライヤドラム76から剥離させるために、一実施形態では、ドライヤドラムの表面またはドライヤドラムと接するウェブの表面に離型剤が塗布される。一般的に、ウェブがクレーピングされないように、ドラムからのウェブの剥離を容易にする任意の適切な離型剤が使用され得る。
【0083】
使用可能な離型剤としては、例えば、ヘラクレス・ケミカル社(Hercules Chemical Company)からREZOSOLの商標名で販売されているポリアミドアミンエピクロルヒドリン高分子がある。本発明で使用することができる具体的な離型剤には、ヘラクレス・ケミカル社(Hercules Chemical Company)から入手可能なRelease Agent 247、Rezosol 1095、Crepetrol 874、Rezosol 974、ProSoft TQ-1003、ブックマン・ラボラトリース社(Buckman Laboratories)から入手可能なBusperse 2032、Busperse 2098、Busperse 2091、Buckman 699、及びナルコ社(Nalco)から入手可能な640Crelease、640D release、64575 release、DVP4V005 release、DVP4V008 releaseが含まれる。
【0084】
図2または図19に示すような不織材作製工程中に、ウェブを平坦化及び高密度化させることができる。ウェブを平坦化及び高密度化させる技術の1つは、対向するカレンダロールのニップ部の間にウェブを通すことである。シートを平坦化及び高密度化させることにより、その後の工程中におけるシートからの炭素繊維の脱落を減少させることができる。また、ウェブを平坦化することにより、材料のキャリパ厚さまたは厚さを減少させることができ、また、導電性繊維の網構造の密度及び均一性を高めることにより導電性を向上させることができる。また、材料の厚さを減少させることにより、製造工程中の材料ロールの実行時間を長くし、それにより、無駄や遅延を無くし、効率を高めることができる。導電性を高めることにより、完成材料に含まれる導電性繊維の量を減らすことができる。
【0085】
ウェブをカレンダ加工する場合、ウェブは乾燥状態または湿潤状態でカレンダ加工される。例えば、一実施形態では、カレンダロールにより、少なくとも900PLIの圧力、例えば約900〜1100PLIの圧力が加えられる。例えば、特定の一実施形態では、カレンダロールにより加えられる圧力は、約950〜1100PLI,例えば約980PLIである。
【0086】
代替的な実施形態では、図6に示すように、ウェブを乾燥させるだけではなく平坦化及び高密度化も行う複数の乾燥シリンダに対してウェブを押圧することができる。例えば、図6を参照すると、複数の連続する乾燥シリンダ80が示されている。この実施形態では、6個の連続した乾燥シリンダが示されている。しかし、他の実施形態ではより多くの数またはより少ない数の乾燥シリンダを使用できることを理解されたい。例えば、一実施形態では、8〜12個の連続した乾燥シリンダが工程中に組み込まれ得る。
【0087】
図示するように、任意の適切な方法に従って形成された湿潤ウェブ82が第1の乾燥シリンダ80に対して押し付けられ係合させられている。例えば、一実施形態では、ファブリックまたは適切なコンベアを使用して、ウェブを乾燥シリンダの表面に押し付けることができる。ウェブは、第2の乾燥シリンダに押し付けられ係合させられるまで、第1の乾燥シリンダの外面に少なくとも約150°、例えば約180°巻回される。工程中に、乾燥シリンダを、ウェブを乾燥させるための最適な温度まで加熱することができる。
【0088】
引張強度を高めるためにまたは他の機能(絶縁層としての機能)を付与するために、不織ウェブの一方の面または両方の面をラッテクスやでんぷんなどの添加剤によって被覆することもできる。
【0089】
本発明に従って作製された不織ウェブは、その用途及び所望の結果に応じて様々な性質及び特徴を有し得る。例えば、不織ウェブは、約15〜200gsmまたはそれ以上の秤量を有し得る。例えば、不織ウェブの秤量は、約15〜100gsm、例えば約15〜50gsmであり得る。
【0090】
所望に応じて、不織ウェブは、比較的大きい嵩を有するようにまたは比較的小さい嵩を有するように形成することができる。例えば、嵩は、約2〜20cc/g、例えば約3〜10cc/gであり得る。
【0091】
不織ウェブを比較的小さい嵩を有するように形成する場合は、嵩は、一般的に、約2cc/g未満、例えば約1cc/g未満、または例えば0.5cc/g未満であり得る。
【0092】
シートの「嵩(バルク)」は、ミクロン単位で表した乾燥ティッシュ紙のキャリパ厚さを、平方メートル当たりグラムで表した乾燥秤量で除した商として計算される。求められたシートの嵩は、立方センチメートル/グラムの単位で表される。より具体的には、キャリパ厚さは、10枚の代表的なシートを積層させて構成した積層体の厚みを10で除することにより求める。この場合、各シートは同じ面が上側(同じ側)になるようにして積層させる。キャリパ厚さは、積層させたシートのための注釈3(Note 3)付きのTAPPI試験法T411 om-89「紙、板紙及び合紙の厚さ(キャリパ)(Thickness (caliper) of Paper, Paperboard, and Combined Board)」に従って測定する。T411 om-89を実施するために使用されるマイクロメータは、米国オレゴン州ニューバーグ所在のエンベコ社(Emveco, Inc.)から入手可能なEmveco 200-Aティッシュキャリパー試験機である。このマイクロメータは、2.00キロパスカル(1平方インチ当たり132グラム)の荷重、2500平方ミリメータの圧力脚部面積、56.42ミリメータの圧力脚部直径、3秒のドウェル時間、毎秒0.8ミリメートルの落下速度を有する。
【0093】
本発明に従って作製された不織ウェブは、取り扱いが容易となるのに十分な強度を有することができる。例えば、一実施形態では、マシン方向または長さ方向に5000グラムを超える強度(最大負荷)、例えば5500グラムを超える強度、または例えば6000グラムを超える強度を有し得る。不織材の引張試験は、例えば、幅1インチの試料に対して、300mm/分及び75mmゲージ長さで実施することができる。
【0094】
不織ウェブの導電率もまた、ウェブに組み込まれた導電性繊維の種類、ウェブに組み込まれた導電性繊維の量と、及び、ウェブ中における導電性繊維の位置、密度または配向の様態に応じて異なり得る。例えば、一態様では、不織ウェブは、約1500Ω/sq未満、例えば約100Ω/sq未満、または例えば約10Ω/sq未満の抵抗を有し得る。
【0095】
シートの導電率は、オーム単位で表したシートの抵抗測定値を、シートの長さの幅に対する比で除した商として計算される。求められたシートの抵抗値は、オーム/スクエア(単位面積当たりの抵抗値)で表される。より具体的には、抵抗値の測定は、ASTM F1896-98「プリント導電材料の電気抵抗率を求めるための試験方法(Test Method for Determining the Electrical Resistivity of a Printed Conductive Material)」に従って行われる。ASTM F1896-98を実施するために使用される抵抗値測定装置(すなわちオームメータ)は、米国ワシントン州エバレット所在のフルーク・コーポレーション社(Fluke Corporation)から入手可能な、Flukeワニ口クリップ(型番AC120)を備えたFlukeマルチメータ(型番189)である。
【0096】
本発明に従って製造された導電性ウェブは、1プライ(層)の製品として単独で使用することができ、あるいは、他のウェブと組み合わせてマルチプライ(多層)の製品を形成することができる。一態様では、導電性不織ウェブを他のテイッシュウェブと組み合わせて、2プライの製品または3プライの製品を形成することができる。前記他のテイッシュウェブは、例えば、パルプ繊維のみから製造することができ、かつ上述した方法のうちの任意のものに従って製造することができる。
【0097】
別の態様では、本発明に従って製造された導電性不織ウェブは、接着剤または別の方法を用いて、他の不織材または高分子フィルム材料に積層させることができる。例えば、一態様では、導電性不織ウェブは、ポリプロピレン繊維などの高分子繊維から作製されたメルトブローンウェブ及び/またはスパンボンドウェブに積層され得る。上述したように、一態様では、導電性不織ウェブは、合成繊維を含むことができる。このようにして、不織ウェブは、メルトブローンウェブやスパンボンドウェブなどの合成繊維を含む対向ウェブと互いに接合される。
【0098】
導電性不織ウェブをマルチプライ製品に組み込むと、様々な利点及び恩恵が得られる。例えば、導電性不織ウェブが組み込まれたマルチプライ製品は、より優れた強度を有し得、より柔軟であり得、及び/またはより優れた液吸収特性を有し得る。
【0099】
本発明に従って製造される不織材は、ウエットレイドウェブ法に加えて、様々な他の技術及び方法を用いて製造することができる。例えば、代替的な実施形態では、不織材は、水流交絡法によって作製され得る。水流交絡法は、高圧のジェット水流を利用して繊維及び/またはフィラメント(長細繊)を交絡させ、高度に交絡された繊維連結構造を形成する。具体的には、ジェット水流を用いて、導電性繊維及び/またはパルプ繊維を、事前に作製した不織ウェブと結合させることができる。事前に作製した不織ウェブには、例えば、合成繊維から作製されたスパンボンドウェブが含まれる。
【0100】
水流交絡された不織繊維は、例えば、Evansによる米国特許第3,494,821号及びBouoltonによる米国特許第4,144,370号に開示されている(これらの特許文献は、この参照により本明細書に組み込まれるものとする)。水流交絡された不織繊維はまた、Everhartによる米国特許第5,284,703号及びAndersonによる米国特許第6,315,864号にも開示されている(これら特許文献は、この参照により本明細書に組み込まれるものとする)。
【0101】
代替的実施形態では、導電性不織ウェブは、コフォーム法を用いて作製される。コフォームウェブは、一般的に、熱可塑性繊維と非熱可塑性材料との混合物または安定化されたマトリクスを含む複合材料を指す。例えば、コフォーム材料は、ウェブ形成中にウェブに他の材料を添加するためのシュート部の近傍に、少なくとも1つのメルトブローンダイヘッドを配置した工程によって製造される。前記他の材料には、単独のまたは他の繊維と組み合わされた導電性繊維が含まれる。導電性繊維と組み合わされる前記他の繊維には、例えば、パルプ繊維、綿繊維、レーヨン繊維、合成ステープル繊維などが含まれる。コフォーム材料のいくつかの例は、Andersonによる米国特許第4,100,324号、Everhartによる米国特許第5,284,703号、及びGeorgerによる米国特許第5,350,624号に記載されている(これらの特許文献は、本明細書と矛盾しない限りにおいて、この参照により本明細書に組み込まれるものとする)。
【0102】
コフォーム法によって作製されたウェブは、一般的に、コフォーム材料と呼ばれる。より具体的には、コフォーム不織ウェブを作製するための1つの方法は、ダイヘッドから溶融した高分子材料を押し出して微細なストリームにするステップと、ノズルから供給される高速の加熱気体の流れを集中させて、高分子ストリームを小径の不連続のマイクロファイバーに分断するステップとを含んでいる。ダイヘッドは、例えば、少なくとも1列の直線的に並んだ押出開口を含み得る。一般的に、マイクロファイバーは、最大で約10ミクロンの平均繊維径を有し得る。マイクロファイバーの平均径は、一般的に約1ミクロン以上、例えば約2〜5ミクロンであり得る。マイクロファイバーはその大部分が不連続であるが、一般的に、ステープル繊維の通常の長さを超える長さを有する。
【0103】
溶融した高分子繊維を、導電性繊維及び/またはパルプ繊維などの別の材料と組み合わせるために、第1のガス流を、個別の導電性繊維を含む第2のガス流と混合させる。このことにより、単一のステップで、導電性繊維が高分子繊維に一体化される。1つになったガス流は、その後、形成面上に導かれ、不織布が形成される。必要に応じて、2つの互いに異なる材料をさらに一体化させるために、1対の真空ロールのニップ部に前記不織布を通過させる。
【0104】
コフォームウェブを作製する場合、導電性繊維及び/または他の繊維は、コフォーム材料中に、約10〜80重量%、例えば約30〜70重量%の量で含まれ得る。
【0105】
一態様では、導電性繊維は、導電率が互いに異なる複数の領域が形成されるようにして不織ウェブ中に含まれ得る。例えば、一態様では、複数の繊維を鉛直方向(ウェブ厚さ方向)に互いに区分することに代えてまたはそれに加えて、ヘッドボックスが用いられ得る。図1に示すように、ヘッドボックスは、複数の繊維をウェブの水平方向に互いに隔てることができるように設計されている。このようにして、ウェブの長さ方向(マシン方向)の特定の領域のみに、導電性繊維が含まれるようにすることができる。この導電性領域は、パルプ繊維などの非導電性材料のみを含む非導電性領域と互いに区分される。
【0106】
本発明によれば、導電性不織材が形成された後、導電性不織材に超音波エネルギーを照射することによって、導電性不織材中に非導電性領域が形成される。導電性不織材に超音波エネルギーを照射すると、非導電性領域を形成すると共に、不織材の仕上がりや導電性不織材に照射される超音波エネルギーの量などの様々な因子に依存して結合ラインを形成することができる。
【0107】
例えば、図3には、本発明に従って作製された導電性不織ウェブ152が示されている。このようにして、ウェブの長さ方向に、非導電性領域または結合ライン266,268が形成されている。結合ライン266,268は、超音波ボンディング法を用いて形成される。不織ウェブに結合ラインを形成することにより、導電性繊維が電流を流すためのネットワークとしての役割を果たすことができない領域を形成することができる。つまり、結合ラインは、基体ウェブに非導電性領域を形成する。図3に示すように、結合ライン266,268は、非導電性領域260,262,264を互いに隔てることができる。
【0108】
本発明に従って作製された製品は、処理技術及び添加技術によりフレキシブル回路を形成するのに使用することができる。フレキシブル回路は、成長市場である使い捨て式または非使い捨て式印刷エレクトロニクスの分野への参入を可能にする。従来のフレキシブルエレクトロニクスは、印刷回路に導電性配線を形成するのに、金属インクまたは炭素インクを使用していた。金属インクは非常に高価であり、特殊な取り扱いを必要とし、印刷する者が適応するための調整を必要とする場合が多い。さらに、印刷エレクトロニックを使い捨て式として用いるのに実際に十分に費用効率的であるか否かに関わらず、処理量及びコストに関する懸念もある。本発明は、従来のフレキシブルエレクトロニクス技術と比べて、費用対効果が高く、取り扱いが容易であるという明白な利点を提供する。本方法による最終製品は、硬質基板に接着または塗布されることができ、かつ、機能的なコスト効果的な使い捨て式の電気回路を形成するために接続される印刷または複合された電子素子を有する、導電回路を有するウェブを形成する。
【0109】
導電性ウェブから回路を作成するためには、繊維の炭素‐炭素結合の一部を破壊、除去または改変して導電性ウェブ内に高抵抗値の領域を形成することが必須である。このことは、製造工程中にウェブに超音波ボンディング技術または加圧ボンディング技術を適用することによって実現することができる。ボンディング技術は当該業界で公知であり、回路を画定する高抵抗または低抵抗の特定の経路を形成するために、多数のパターンで構成することができる。この回路経路は短時間で効率的に形成することができ、様々な健康製品、衛生製品またはその他の消費製品に低価格の使い捨て式回路を形成することを可能にする。前記結合の幅及び塗布時における前記結合の圧力または強度により、抵抗増加の程度を決定することができる。ボンディング処理の影響を受けない領域は、互いに同一の導電性レベルに保たれる。この種の処理は、不織材に組み込まれる高生産性回路を作製するための現在の産業用途に容易に適応することができる。
【0110】
一実施形態では、例えば、不織材に非導電性領域を形成するのに、超音波回転結合装置が使用される。超音波回転結合装置は、例えば、高周波数の電気エネルギーを高周波数の力学的エネルギーに変換するコンバーターと、コンバーターに接続される電源とを含み得る。コンバーターは、力学的エネルギーの振幅を変更するブースターに接続され得る。ブースターは、振幅を微調整し、エネルギーを不織材に適用する回転ホーンに接続される。一実施形態では、この超音波装置は、約20〜40kHzの周波数で作動する。
【0111】
不織材に適用される超音波エネルギーは、導電性繊維を破壊して、電気的断絶部を形成する。例えば、非導電性領域の抵抗率は、導電性領域の抵抗率よりも4倍大きくあり得る。例えば、非導電性領域の抵抗率は、導電性領域の抵抗率の5倍、6倍、さらには最大で10倍の大きさとなり得る。
【0112】
特に有利なことに、前記超音波装置は、不織材にパターンを形成することが可能である。前記パターンは非導電性領域の形状を呈しており、単一層にまたは複数の材料層間に回路パターンまたは接続部を構成または形成するのに使用される。
【0113】
導電性不織材に形成される非導電性領域は、特定の用途及び所望の結果に応じて様々であり得る。例えば、一実施形態では、不織ウェブには平面パターンが形成される。あるいは、ドットの不連続パターンが用いられ得る。
【0114】
超音波エネルギーは、不織ウェブに含まれる材料に対して様々に作用する。上述したように、例えば、超音波エネルギーは、炭素繊維を破壊及び粉砕することが知られている。セルロース繊維は、超音波エネルギーが適用されたときに、平坦化されると共に、非導電性領域内の水素結合が増加する傾向がある。一方、合成繊維は、超音波エネルギーが適用されたときに、溶融し他の基材と結合することができる。
【0115】
一実施形態では、導電性不織ウェブが、相当量のパルプ繊維を含む紙材ウェブを含む場合、材料全体の強度を高めるために、前記不織ウェブに他のウェブが組み合わせられる。例えば、一実施形態では、前記導電性ウェブには、メルトブローンウェブやスパンボンドウェブなどの合成ウェブが積層される。2つのウェブ(導電性ウェブと合成ウェブ)は、超音波エネルギーを用いて互いに接合される。このようにして、超音波エネルギーは、導電性ウェブ内に非導電性領域を形成するだけでなく、2つのウェブを互いに接合させる働きもする。
【0116】
代替的な実施形態では、導電性不織ウェブは、相当量の合成繊維を含むウェブから構成され得る。前記ウェブには、例えば、熱可塑性ステープル繊維から作製された、水流交絡ウェブ、コフォームウェブ、またはウエットレイドウェブが含まれ得る。いくつかの実施形態では、互いに接合された複数の導電性ウェブを使用することが望ましい。超音波エネルギーは、各ウェブに、非導電性領域を形成するのに使用することができる。加えて、超音波エネルギーは、前記ウェブを互いに接合させるのに使用することができる。例えば、特定の一実施形態では、超音波エネルギーは、2つの互いに対向する導電性ウェブに非導電性領域を同時に形成するのと、非導電性領域が形成された前記2つのウェブを互いに接合させるのとに使用することができる。一実施形態では、製造工程中に、前記2つのウェブの間に電気的接続を形成することができる。例えば、前記2つのウェブは、繊維の交絡が生じ得る非導電性領域の近傍において、互いに電気的に接続され得る。実際には、超音波エネルギーに曝されると、各ウェブ中の導電性繊維はウェブ表面に移動する。このようにして、導電性繊維は、繊維が破壊または粉砕された非導電性領域に隣接する領域において、前記2つの層間の繊維間の電気的接続を形成することができる。
【0117】
一実施形態では、超音波エネルギーは、2つのウェブを互いに接合すると共に、非導電性領域を形成することなく両ウェブ間の電気的接続を形成するのにも使用することができる。この実施形態では、例えば、前記ウェブは、導電性繊維を破壊することなくウェブに電気的不連続部を形成することができるような少量のエネルギーに曝される。
【0118】
超音波エネルギーを用いる方法以外にも、様々な他の方法を用いて非導電性領域を形成することができる。そのような他の技術及び方法は、超音波エネルギーを用いる方法と併用することができる。例えば、回路経路を形成する他の方法には、高抵抗が要求される領域において導電性ティッシュを切断または除去すべく、フレックスナイフ及びダイを使用して導電性ティッシュまたは材料を切断する機械的方法が含まれる。この方法では、標準的な加工技術を用いて、回路パターンを実質的に切り取る。回路パターンを最も効果的に作製するために、機械的切断技術、加圧ボンディング技術及び超音波ボンディング技術の全てを同時に用いることができ、回転機械技術またはプランジ機械技術を用いて仕上げを行うことができる。さらに、別の方法としては、加熱されたローラ上での導電性ティッシュのスロットコーティングが含まれ得る。この加熱により、はんだが濡れた管継手に引き寄せられるように、導電性ウェブ内の高分子がロールに引き寄せられる。他の選択肢は、ウェブ表面のポリマーコーティングや、当業者に用いられる他のホット・メルト・コーティング技術の使用である。必要に応じて、加熱したニップ部も使用することができる。最適なコーティング技術は、使用されるポリマー及び様々な工程速度及び制限に依存する。
【0119】
導電性不織ウェブが形成され、非導電性領域を形成する処理がなされたら、その製品は、様々な電気デバイスとして使用することができる。
【0120】
例えば、本発明の一実施形態では、薄膜スイッチなどの電子スイッチが構成される。スイッチは、ボタンまたはキーパッドインターフェース(すなわち、キーボード、携帯電話など)を必要とする消費者製品において最も普及している電子部品の1つである。この技術は、スマートインターフェースを必要とする装着可能なコンピューティング・プラットフォーム、またはアプリケーション(すなわち、パッケージング、広告、及びプロモーション)にも用いられ、このようなスイッチの製造時間及びコストを減少させる手段を創出することは好都合であり得る。印刷される導体のための基板として頑丈な基板(プラスチックなど)が必要とされており、かつ、導電性インクのコストは比較的高いため、多くの用途が、使い捨て式と半耐久性型との境界線に位置する。少なくとも5%の炭素繊維から作製される導電性ウェブは、機能的薄膜スイッチに必要とされる回路パターンをより少ない処理で形成することができる低コストの代替的な導電性材料であることが証明されており、完全に使い捨て式の製品を可能にする。
【0121】
現在の膜スイッチ技術は、外側層、導電層、絶縁層、導電層、外側層の5層システムを使用している。同じようにして、導電性ウェブは、5層または3層システムを使用することもできる。5層システムは、より頑強なスイッチを必要とするが、3層システムでは、紙材が、導電層のみならず、単一の絶縁層によって区切られた2つの外側層としての役割を果たすことができる。
【0122】
図15Aを参照して、例として、本発明により製造された5層スイッチ110の一実施形態が示されている。図示のように、スイッチ110は、2つの外側保護層、すなわち、外側カバー層112及びバッキング層114を含む。外側カバー層112とバッキング層114との間には、一対の互いに対向する導電層116及び118が配置されている。両導電層は、本発明に従って作製された不織導電性ウェブから構成され得る。導電層116と導電層118との間には、誘電性材料からなる非導電層120が配置される。図示のように、非導電層120は、開口部(aperture)122を有する。このようにして、スイッチ110の外側カバー112に圧力が加えたときに、第1の導電層116が第2の導電層118と接触して両層間が電気的に接続される。
【0123】
本発明によれば、導電性不織材116及び/または118は、導電層に超音波エネルギーを照射することにより形成した非導電性領域をさらに含むことができる。非導電性領域は、電気エネルギーを特定の位置に導くために使用されることができる。例えば、非導電性領域は、スイッチを、該スイッチを押圧したときに作動する電気デバイスに取り付けるための電気回路を形成するために使用され得る。
【0124】
図15Bを参照して、本発明に従って作製された3層スイッチ110が示されている。同様の参照番号は、同様の要素を示すのに使用される。図示のように、この実施形態では、スイッチ110は、2つの互いに対向する導電層116、118を含む。導電層116、118は、開口部122を画定する非導電層120によって互いに隔てられている。図15Bに示された実施形態では、導電性ウェブ116及び118は、スイッチの作動時に電気的接続を形成する役割を果たすだけでなく、外側カバー層としての役割も果たす。一実施形態では、例えば、画像や印刷物を、導電性不織ウェブの一方または両方に適用することができる。このようにして、様々な電気デバイスと共に使用されるスイッチを、比較的安価に製造することができる。
【0125】
図16、17及び18を参照して、本発明に従って構成され得るキーボード130の一実施形態が示されている。キーボード(キーパッド)130は、図15A及び図15Bに示したスイッチ10と同様の手法により構成することができ、同様の参照番号は、同様の要素を示すのに使用される。
【0126】
図16には、例として、5層のキーボード130が示されている。キーボード130は、本発明に従って作製された2層の導電性不織ウェブ116及び118を含んでいる。2層の導電性不織ウェブ116及び118は、誘電材料から作製された非導電性層120によって互いに隔てられている。非導電層120は、キーボード130の外側カバー112上に表示されている複数のキー124に各々対応する複数の開口部122を有する。
【0127】
図示のように、各導電性不織材は、各キーを押圧したときの電気経路の形成を可能にする複数の非導電性領域をさらに含む。例えば、導電性不織ウェブ116は、超音波エネルギーを利用して形成した、複数の垂直非導電性領域126を有する。同様に、導電性ウェブ118は、複数の水平非導電性領域128を有する。このようにして、或るキー124を押したときに2つの導電性ウェブが電気的に接続される。非導電性領域は、押圧されたキーを特定するために、2つの互いに異なる電気経路を接続しアクティブにする。
【0128】
図17には、使い捨てキーパッド130の試作品が示されている。キーパッドの右側と上側には、2つの互いに異なる導電性ウェブ層が突出している。図18は、既存のキーボード回路に接続された使い捨てキーパッドを示す。
【0129】
キーボード及びマウスは、殺菌した手術室における、感染の一因となっている。抗殺菌性の使い捨てキーボード/キーパッドを病院で使用することにより、院内感染の可能性を減少させることができる。キーボードの現在のデザインは、全て、ユーザーインターフェースの各ボタンの機能を制御するために頑強な電子部品を必要とするが、頑強な電子部品の代わりに導電性ウェブを使用すれば、コストを使い捨て可能な程度まで低下させることができる。
【0130】
さらなる、例示的な用途としては、使い捨て式のスイッチは、ユーザインターフェースを有する使い捨て式のガウンを創出するのに使用することができる。着用者に有用な機能を付与するために、あらゆる使い捨て式ガウン(手術用、クリーンルーム用、有害作業用など)に不織ウェブを使用したスイッチを含めることができる。例えば、手術着に、医療処置中に使用される器具の記号を含めることができる。このスイッチインターフェースは、その器具を使用したことや、その器具を患者から取り出したか否かを示すのに使用することができる。前記インターフェースデバイスの出力デバイスは、状況をディスプレイ上に表示する有線または無線デバイスであり得る。
【0131】
本発明に従って製造された電気デバイスを衣類に組み込む際は、導電性不織材は、衣類に取り付けられるか、または、衣類に直接的に組み込まれる。例えば、一実施形態では、導電性ウェブ自体が衣料品を構成するのに使用され、任意の所望の目的のためにその衣料品に電気回路を形成するために、超音波処理された領域が使用される。例えば、特定の一実施形態では、衣料品には、濡れ検出デバイスを備えた吸収性物品(おむつやトレーニングパンツなど)が含まれる。
【0132】
さらなる例示目的のために、本発明に従って製造される製品は、温熱療法及び他の低コストの発熱用途のための携帯型デバイスとして使用するために製造された発熱要素であり得る。温熱療法は、痛み、特に筋肉の緊張またはけいれんによる痛みを軽減する。さらに、その他の種類の痛みを伴う患者に対しても役立つ。温熱療法は次のように作用する。(1)皮膚への血流を増加させる。(2)血管を拡張し、局部組織への酸素及び栄養素の搬送量を増加させる。(3)筋弾性を増加させることによって関節の硬さを低減させる。この携帯型デバイスは、使い捨て式の発熱要素と、再使用可能な電池式制御ユニットと、前記発熱要素(パッド)を前記制御ユニットへ接続するための機械的及び/または電気的手段とを含む。
【0133】
本発明に従って発熱製品を作製する際は、適切な抵抗を有する発熱要素を形成及び成形するだけでなく、発熱要素を電源に電気的に接続する電気回路を形成及び作製するのに、超音波エネルギーを使用することができる。
【0134】
少なくとも約5%の炭素繊維、例えば少なくとも約20%の炭素繊維を使用して導電性ウェブを作製するという本発明の技術を用いて作製された発熱要素は、現在市販されている発熱化学反応を利用する製品よりも優れた点が数多くある。本発明の使い捨て式の発熱デバイスの利点は次の通りである。(1)本発明の技術を使用すると、使い捨て式の発熱要素を、化学的に活性化される製品よりも安価に製造することができる。(2)熱量を調節することができる。(3)電池を再充電式または交換式とすることができる。(4)身体の反対側に反射性材料を配置することにより、熱効率を高めることができる。(5)ヒューズリンクを使用することにより、着用者を過熱から保護することができる。
【0135】
加えて、導電性不織材発熱要素を使用し、前記不織材にポリフィルムを積層させることにより、携帯型発熱デバイスを安価に作製すること、及び、携帯型発熱デバイスを様々なサイズ及び形状に容易にカスタマイズすることが可能となる。このような発熱デバイスは、温熱治療や、悪天候下または寒冷気象条件下で人間または動物に熱を与えるために使用することができる。そのような特注製品は、腕、脚、胴、首、毛布に適合するように設計することができ、馬、牛、ウサギ、種々の爬虫類、犬及び猫などの動物のためにも使用することもできる。この技術は、ダイバー用のドライスーツや海難事故のためのレスキュースーツなどの極限環境や、極寒環境での自動車事故などの他の極限状況に用いることができる。また、このコンセプトは、家庭用、医療用、またはホテル用の使い捨て式の発熱バスタオル(heated bath towel)として用いられることもできる。また、この技術は、コート、スキーウエアまたは他の衣類用の使い捨て式の発熱裏地に使用することができる。この導電性不織材ヒーターは、複数層の導電性紙材から構成することにより、低全体抵抗かつ高熱質量のヒーターを作製することができる。さらに、飲料容器などの日常的な商品を加温するための他の低コストな発熱用途が有効である。ユーザは、半耐久性または再使用可能な電源をこれらの態様のうちの任意のものに取り付けて、製品を使用することができる。
【0136】
発熱要素に電力を供給するためには高電流が必要とされるため、電池は充電式であることが理想的である。電力方程式の基礎的検討により、発熱要素の機能性を最適化するための電流、電圧及び抵抗の要件が決定される。電池の理想的な用途は、製造中により多くの処理を必要とすることとなる高価な小型コネクタを最低限しか有さないことである。小型コネクタの代わりに、充電式電池パックを導電性フック材料で包み、発熱要素にループ材料を配置することが推奨される。導電性フックアンドループの表面積をより大きくすると、電源と発熱要素との接続抵抗をより小さくすることができる。
【0137】
図14及び図14Bには、発熱要素の一実施形態がより詳細に示されている。図14Aに示すように、内部では発熱要素は、2つの端子102、104によって電源に接続される巻線コイル状の導電性ウェブ100であり得る。コイル状の構成にする理由は、発熱要素の全域に渡って発熱作用を集中及び分散させるためである。
【0138】
図14Bに示すように、2つの端子102、104は、電源106に適合する取り付け領域を含み得る。必要に応じて、電源の取り付けを容易にするために、端子102及び104を含む取り付け領域を電源106に適合するようにラベル表示することもできる。
【0139】
図14A及び図14Bに示す発熱デバイスを構成する場合、様々な機能のために、不織ウェブ100への超音波エネルギーの適用が使用され得る。例えば、発熱要素の抵抗を増加させるために、電気的発熱要素の製造に少量の超音波エネルギーが使用され得る。抵抗を増加させると、発熱要素をより素早く発熱させることができる。
【0140】
加えて、電源に取り付けるための電気回路を不織ウェブに形成するために非導電性領域を形成するのにも、超音波エネルギーを使用することができる。
【0141】
さらなる別の実施形態では、本発明の技術に従って製造される製品は、放射要素として使用され得る。放射要素は、単純な半波長ダイポールアンテナとして使用することができ、それにより、低コストのデータ伝送システムが可能となる。さらなる態様では、放射要素は、図4に示すユニークな低コストRFIDタグを構成するのに利用可能である。加えて、放射要素は、ユーザ固有データを伝送するために、上述したようなスマートクロージング(smart clothing)に組み込むことができる。導電性ウェブは、放射要素として使用した場合、従来の放射要素として使用される従来の導体と同等の電気特性を提供する。さらに、本発明の技術は、非常に安価な製造を可能にするので、従来の放射要素の代わりに導電性ウェブ素子を使用することにより、現行製品の全体製造コストを減少させることができる。
【0142】
本発明の技術を、紙材、不織材または合成材などの既存の基材に組み込む方法は様々ある。重要なことは、放射要素として機能するのに必要とされる適切な形状/長さの導電性ウェブを作製することである。例えば、導電性材料の適切なサイズ及び形状は、上述したような超音波ボンディング技術を用いて得ることができる。図5を参照して、このツールは、脆弱な導電性繊維材料を破壊するが、裏側の基材は残すような十分なエネルギーをウェブに提供する。このようにして、本発明に従って製造された導電性不織ウェブを超音波ボンディング装置で処理することにより、精密に制御されたサイズ及び形状を有する放射要素を高速度で製造することができる。
【0143】
さらに、導電性材料の細長い一片を基材に「帯状に取り付ける(zoning)」ことにより、必要とされる適切な形状/長さに形成することができる。このことは、ウエット法を用いて導電性材料を基材に接合させることにより実現される。本発明の技術は、湿潤時にも強度が維持されることが知られている。導電性材料は、形成及び圧縮工程中に基材と水素結合を形成することにより、最終的には、乾燥時に基材と結合する。
【0144】
図7に示す半波長ダイポールアンテナの試作品は、信号生成器への接続に必要な既存のアンテナ基材に、2つの同一の導電性不織ウェブ材のストリップを取り付けることにより作製した。導電性材料の形状及びサイズは重要であり、動作周波数帯を適切に選択する必要がある。上述したように、超音波エネルギーを利用して、高速工程において、アンテナのサイズ及び形状を精密に制御することができる。この場合、ダイポールアンテナは、915MHz(中央周波数が902〜928MHzのISMバンド)で放射するように適切に設計される。半波長ダイポールアンテナの有効長さは、915MHzで164mmである。導電性材料から構成した半波長ダイポールアンテナの放射電力を測定するために簡単な試験を実施した。この試験装置は、図8に示すように、アンテナから10dBmの信号を900MHzで伝送するのに使用される信号生成器を含む。スペクトラムアナライザーに接続された900MHzで較正済みのアンテナを使用して、導電性ウェブアンテナから1m離れた位置での受信信号の電力を測定した。較正済みのアンテナで受信した電力は、−29.5dBmと測定され、機能性を示した。900MHzで較正済みの標準的なダイポールアンテナと比較すると、結果は同程度であった。
【0145】
図10を参照して、2つの同一の導電性材料ストリップを既存のRFIDチップに取り付けることにより、機能的なUHF RFIDタグを作製した。上述した実験を一段階進めて、導電性ウェブを使用して作製したRFIDタグの感度を試験した。この導電性ウェブRFIDタグの感度を、正確に1m離間して配置したRFIDリーダアンテナに応答するに必要とされるRFIDタグの最小電力をモニタリングすることにより測定した。導電性ウェブRFIDタグの感度は、−5.1dBmと推定される。これは、市販のRFIDタグと同程度の値である。本発明の技術の導電特性は、アンテナの放射特性の決定において重要な役割を果たす。図9を参照して、UHF RFIDタグとして効果的に使用するためには、導電性材料の導電率は約1000S/mである必要がある。このことは、ウェブに導電性材料を25〜30%の量で組み込むことによって、効果的に達成することができる。このRFIDタグの放射パターンを図10に示す。この特殊なRFIDタグ構造の適切な寸法は、長さ144mm、幅8mmである。
【0146】
本発明の技術を用いて放射要素を作製し、作製した放射要素をスマート繊維に組み込むことにより、スマート繊維から外部受信機へのデータ伝送が可能となる。上述したように、そのようなスマート繊維は、人間や動物から測定した生理学的データを伝送可能なスマート衣類の作製を可能にする。例えば、人間に着用されるスマートシャツは、ユーザの心拍数や体温などを外部受信機へ伝送することができる。導電性ウェブを使用して作製された放射要素(アンテナ)は、ユーザの身体に快適に適合するという柔軟な繊維の有利な点を有するだけでなく、安価かつ耐性を有するので、そのような用途は商業的に実現可能である。加えて、本発明の導電性ウェブは、放射要素としてだけではなく、RFID装置に直接的に組み込むことが可能な電気回路を含むように構成することもできる。前記電気回路は、超音波エネルギーを利用して非導電性領域を形成することにより作製することができる。電気回路は、放射要素として使用される導電性ウェブの一部に形成するか、あるいは、別の材料片として構成することができる。このようにして、電気デバイスを衣類により容易に組み込むことが可能となる。
【0147】
本発明の技術を用いて、特定の周波数で放射される電磁エネルギー(EMI)に対するバリアとしてのユニークな用途が開発された。この製品は、使い捨て式または非使い捨て式であり得る。EMI遮蔽要素は、市販の壁紙と一体化させることができる。さらに、前記遮蔽要素は、デュポン社製のTyvek homewrapなどの建築用断熱材料に組み込むこともできる。前記遮蔽要素は、放射線防護に効果的な衣服の作製にも使用可能である。機能性を確実にするために、現在のEMI遮断技術は高価な開発及び製造過程を必要とするので、前記遮蔽要素は、防護対象の特定タイプの信号に対応するように開発すべきである。本発明の技術は、従来のEMI遮断技術とは異なり、特定の信号を対象とする、低コストで大量に製造可能なユニークな用途を提供する。
【0148】
図11を参照して、用途を実証するために、遮蔽要素の効果を調べるための試験装置が示されている。この試験装置は、一方は受信器として使用され他方は送信機として使用される2つの較正済みのダイポールアンテナからなる。送信アンテナは、900MHz及び10dBmに設定された信号生成器に接続されている。受信アンテナは、送信アンテナから1メートル離間して配置される。アンテナ間にEMI遮蔽要素を配置せずに試験を行い、その後、EMI遮蔽要素を配置してもう一度試験を行った。導電性ウェブは、壁に電気的に接地されており、受信アンテナを伝達信号から遮蔽する。図12及び13には、EMI遮蔽要素を配置しない場合とEMI遮蔽要素を配置した場合の、受信アンテナで測定された電力がそれぞれ示されている。EMI遮蔽要素を配置した場合は、EMI遮蔽要素を配置しない場合よりも、信号が20dB減少した。この値は、EMI遮蔽要素を配置しない場合よりも千倍低い値である。このように、この簡単な実験により、本発明の技術が、EMIシールドとして使用できることが実証された。
【0149】
本発明のさらなる別の実施形態では、導電性不織材料は、スマートパッケージング要素を製造するのに使用され得る。
【0150】
スマートパッケージング要素は、小荷物の取り扱いの全体を通じての状況及び取り扱いをモニタリングするのに使用することができる。さらなる用途では、スマートパッケージング要素は、RFIDアンテナ機能として使用されるように、ダンボール紙などの包装材料に組み込むことができる。導電性ウェブは、従来は不可能または非常に高コストであったパッケージングにおいて良い機会を提供する。スマートパッケージング要素の大部分は、出荷製品の賞味期限を確認するために、食品及び飲料業界で実施されている。しかし、現在のスマートパッケージング要素は、高コストであり、大規模に実施することは非現実的であった。だが、導電性ウェブを使用したスマートパッケージング要素は、使用が容易でありかつ非常に低コストなので、大規模なスマートパッケージングのいくつかの用途を可能にする。
【0151】
本発明の技術に従って製造されたスマートパッケージング要素は、取り扱いの全体を通じて対象物の様々な状態をモニタするために使用するすることができる。例えば、導電性ウェブは、保存中の対象物が、製品の機能またはパッケージング自体の構造的完全体性を損なう可能性のある過湿状態となったか否かを判断するために使用することができる。さらに、導電性ウェブは、パッケージが規定された日まで開封されないことを確認するためのパッケージ保護的シールを作成するために使用することができる。従来の技術は、パッケージの未開封を保障するために特殊な接着テープを用いていたが、RFIDなどの技術を一体的に用いることにより、導電性ウェブは、特定の荷物が開封されたこと及びその時期をその荷物のオーナーに警報することができる。このような技術は、幅広く販売する前の製品配送時に有益であろう。
【0152】
本発明の導電性ウェブ技術を、荷物の梱包材に組み込み、既存のPFIDタグと接続させると、非常に頑強なアンテナとして使用することができる。導電性ウェブを梱包材に一体化させると、PFIDを利用可能な荷物を作成する過程を単純化することができる。従来は、既存のRFIDタグは内臓型アンテナを備える必要があるため、タグのサイズ及び製造コストが増大してしまう。しかし、アンテナとしての役割を果たす導電性ウェブを梱包材に一体化することにより、RFIDタグを内臓型アンテナを備えない簡略な構造にすることができ、かつ、前記RFIDタグを導電性ウェブに接続するだけで機能的RFIDタグを形成することができる。本発明の技術を使用すると、従来のRFID技術と比べて、製造時間、工程及びコストを低減することができる。さらに、少なくとも3%の炭素繊維を含有する導電性ウェブを使用することにより、導電性ウェブが一体化された梱包材は、電気装置を出荷する際に発生する静電気を逐電するのに使用することができる。
【0153】
本発明の上記の及び他の変更形態及び変形形態は、添付の特許請求の範囲により詳細に記載されている本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなしに、当業者によって実行され得る。加えて、本発明の様々な態様は、全体または一部が相互互換的であることを理解されたい。さらに、上述の説明は例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲にさらに記載されている本発明を限定するものではないことは当業者には明らかであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気経路を有する導電性ウェブ及びその製造方法に関する。
【0002】
(関連出願)
本出願は、2008年5月29日に出願された米国特許仮出願第61/130,220号に基づくものであり、かつその優先権を主張するものである。
【0003】
近年、電気デバイスを様々なタイプの製品に組み込むための様々な試みがなされている。例えば、より強い消費者アピールを有するユニークな製品を創出するために、単純な電気デバイスが様々な衣類に設置されている。電気デバイスはまた、特定の機能を提供するために製品に組み込まれる。例えば、在庫管理または他の目的のために、RFIDなどの電気デバイスを様々なパッケージに組み込むことが当業者によって提案されている。
【0004】
電気デバイスはまた、医療業界において、携帯型監視装置として使用することが提案されている。例えば、一実施形態では、携帯型監視装置は、病院着または同様の衣類に設置され、患者が病院を動き回るまたは病院内を移動することを可能にしながら、患者の少なくとも1つの状態をモニタするように構成される。
【0005】
上述した様々な電気デバイスは、軽量、かつ、できるだけ安価に製造されている。そのため、電気デバイスは、紙材、織布、不織布、高分子フィルムなどの柔軟な基材を使用して作製されている。従来は、導電性インクを柔軟基材上に印刷することにより、電気回路を電気デバイスに組み込んでいた。
【0006】
しかし、従来の導電性インクを使用する手法には、様々な問題がある。例えば、導電性インクは、比較的高価なだけでなく、例えば織物材料などの多孔質基体に印刷した場合に問題が生じる。導電性インクを多孔質基体に印刷した場合、例えば、導電率が大幅に低下する。さらに、印刷工程は、通常はオフラインで行われるので、製造工程が複雑化されると共に、製品全体の製造コストが高くなる。
【0007】
上記に鑑みて、様々な電気デバイスに組み込むための電気回路を、比較的安価に構成及び製造することができる方法が現在求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許仮出願第61/130,220号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一般的に、本発明は、電気デバイスを構成するための1または複数の不織ウェブの使用に関する。より詳細には、本発明に従って作製した不織ウェブは、例えば炭素繊維などの導電性繊維を含むことにより導電性を有する。非導電性領域を形成することにより、導電性不織ウェブに電気経路が形成される。本発明によれば、非導電性領域は、導電性ウェブに超音波エネルギーを適用することにより形成される。超音波エネルギーは、導電性繊維を破壊及び分解することができ、それにより非導電性領域が形成されることが分かっている。
【0010】
不織ウェブに形成された電気経路は、特定の用途に応じて様々であり得る。例えば一実施形態では、電気回路は、不織材に形成することができる。電気回路には、例えば、閉回路や開回路が含まれる。
【0011】
導電性ウェブ材料は、本発明に従って、比較的高速度かつ比較的低コストで製造することができる。実際、導電性不織ウェブは、吸収性物品や医療製品などの使い捨て式の製品に組む込まれるように設計することができる。
【0012】
例えば、一実施形態では、本発明は、電気デバイスを構成するために使用される製品に関する。本発明の製品は、導電性繊維及び非導電性繊維を含有する導電性不織ウェブを含む。導電性繊維は、例えば炭素繊維などの非金属製繊維を含む。一例では、炭素繊維は、約85%を超える、例えば88%を超える、例えば90%を超える、さらには例えば92%を超える純度を有し得る。炭素繊維は、例えば約1〜6mmなどの適切な長さを有し得る。
【0013】
導電性繊維は、不織ウェブ中に、一般的に、約5〜50重量%の量で存在し得る。例えば一実施形態では、導電性繊維は、不織ウェブ中に約5〜25重量%の量で存在し得る。
【0014】
上述したように、不織ウェブは炭素繊維に加えて、非導電性繊維も含有することができる。非導電性繊維は、例えば、パルプ繊維、合成繊維、またはそれらの混合物であり得る。合成繊維は、熱可塑性ポリマーから作製することができる。
【0015】
非導電性領域を形成するために、例えば超音波ボンディングホーンを使用して、不織ウェブに超音波エネルギーが適用される。超音波エネルギーは、例えば、約20〜40kHzの周波数を有し得る。一実施形態では、超音波エネルギーは不織ウェブに、非導電性領域が前記ウェブに含まれている導電性領域の抵抗値よりも少なくとも4倍大きい抵抗値を有するようにするため十分な量で適用される。
【0016】
非導電性領域の形成に加えて、超音波エネルギーは、他の目的にも使用することができる。例えば、超音波エネルギーを不織ウェブに適用することにより、不織ウェブを隣接するウェブに接合させることができる。
【0017】
実際、一実施形態では、互いに隣接する2つのウェブを互いに接合させる及び/または1以上の非導電性領域を形成することに加えて、超音波エネルギーは、互いに対向配置された2つのウェブ間の電気的接続を確立するためも使用することができる。例えば、電気的接続は、非導電性領域に隣接する位置に確立することができる。
【0018】
様々な電気デバイスを構成するのに、例えば、多層製品を使用することができる。例えば一実施形態では、本発明に従って製造された導電性不織ウェブからスイッチを作製することができる。この電気的スイッチは、例えば、上述したような導電性不織ウェブと、同じく上述したような導電性不織ウェブを含み得る導電性層とを互いに離間させて対向配置することにより構成することができる。この2つの導電性層は互いに離間配置されているが、両導電性層を互いに押し付けて接触させたときに、両導電性荘は電気的接続される。一実施形態では、前記2つの導電性層の間に非導電性層を配置することができる。非導電性層は、例えば、互いに対向配置された導電性不織ウェブと導電性層との間の電気的接続がそれを通じてなされる開口部を有することができる。
【0019】
本発明に従って作製することができる他の電気デバイスには、キーボードが含まれる。キーボードは、例えば、複数のキーが配された外面を画定することができる。キーには、文字を指定するもの、数字を指定するもの、及びそれらの組み合わせが含まれる。キーの下側に第1の導電性層が配置され、第1の導電性層と互いに離間するようにして第2の導電性層が配置される。第1及び第2の導電性層の少なくとも一方は、本発明に従って作製された不織ウェブから構成される。前記複数のキーのうちの1つのキーを押したときに、第1の導電性層と第2の導電性層との間に電気的接続が形成される。加えて、第1及び第2の導電性層は互いに接続されたときに、押されたキーを特定する電気経路を形成することができる。本発明では、前記電気経路は、超音波処理領域を利用して形成することができる。
【0020】
様々な層を含むキーボードを製造することができる。例えば、一実施形態では、キーボードは、本発明に従って製造された2つの導電性不織ウェブと、前記両導電性ウェブを互いに隔てるための1つの非導電性層とを含む3つの層から構成することができる。この実施形態では、キーボードは、外側となる不織ウェブ上に直接的に印刷することができる。非導電性層は、任意の適切な非導電性材料から製造することができる。また、非導電性層は、キーボードの外面に配された各キーの位置とそれぞれ対応付けられた複数の開口部を有し得る。
【0021】
代替的な実施形態では、キーボードは、5つの層から構成され得る。この実施形態では、キーボードは、上述した前記3つの層に加えて、カバー層及び裏当て層をさらに含む。第1の導電性層、非導電性層、及び第2の導電性層は、カバー層と裏当て層との間に配置される。カバー層は、キーを表示する外面を有し得る。
【0022】
本発明の他の特徴及び態様は、以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の上記及び他の特徴及び利点、並びにこれらを達成する態様は、以下の説明、添付した特許請求の範囲、及び添付の図面を参照することによってより一層明らかとなり、また、本発明自体も、これらを参照することにより、より一層良く理解できるであろう。
【0024】
【図1】本発明に従って多層ウェブを作製する方法の一態様の側面図。
【図2】本発明に従って非捲縮通気乾燥ウェブを作製する工程の一態様の側面図。
【図3】本発明に従って作製された、導電性領域と非導電性領域とを有する導電性不織ウェブの一態様の切断平面図。
【図4】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図5】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図6】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図7】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図8】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図9】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図10】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図11】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図12】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図13】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図14】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図15】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図16】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図17】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図18】本明細書中で説明される様々な製品及び方法を示す図。
【図19】本発明に従って導電性不織ウェブを作製する方法の他の態様の側面図。
【0025】
本明細書及び図面において繰り返し用いられている参照符号は、本発明の同一または類似の機構または要素を表すことを意図している。図面は表象的なものであり、必ずしも縮尺通りではない。ある特定の部分を誇張し他を縮小した場合もある。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書中の記述が本発明の例示的な態様の説明に過ぎず、本発明のより広範な態様を制限するものではないことは、当業者であれば理解されよう。
【0027】
本発明は、一般的に、導電性要素を有する製品に関する。本明細書に記載された製品のいくつかは使い捨て式の製品である。使い捨て式とは、再使用のために洗浄または他の方法によって製品の状態を回復させるのではなく、限られた回数だけ使用した後に廃棄するように設計されていることを意味する。
【0028】
一般的に、本発明は、導電性領域及び非導電性領域を有する導電性不織材に関する。導電性不織材は、導電性繊維と共に少なくとも1つの他の種類の繊維を含む。前記他の種類の繊維には、例えば、パルプ繊維、合成繊維、またはそれらの混合物が含まれる。導電性繊維は、導電性不織材中に、導電性不織材が少なくとも一方向に導電性を持つようになるのに十分な量で存在する。
【0029】
本発明によれば、導電性不織材の特定の位置に超音波エネルギーを適用することにより、非導電性領域が形成される。超音波エネルギーは導電性繊維を破壊し、それにより、前記ウェブに電気的断絶部が形成されると考えられている。特に有利なことに、超音波エネルギーは、例えば、超音波エネルギーを前記ウェブの指定位置に接触させることを可能にする回転ホーンを使用して、導電性不織材に適用することができる。このようにして、電気経路を作成するために、非導電性領域のパターンを前記ウェブに形成することができる。電気経路はその後、電気デバイスの電気回路を完成させるために使用することができる。このようにして、本発明によれば、軽量かつ柔軟性を有するのみならず比較的低コストで作成可能な電気回路を含む電気デバイスを作製することができる。加えて、単純な回路及びスイッチを不織材中に比較的高速度(例えば、その工程を電気デバイスまたは他の物品の製造ラインに組み込むことが可能な61メートル/分(200フィート/分)を超える速度)で形成することができる。
【0030】
本発明に従って作製される導電性ウェブは、様々な技術及び方法を用いて作製することができる。例えば、一実施形態では、導電性不織ウェブは、相当量のパルプ繊維を含むことができ、抄紙法または他の同様のウエットレイ法を用いて作製することができる。他の実施形態では、導電性不織ウェブは、相当量の合成繊維を含むように作製することができる。相当量の合成繊維を含める場合、前記ウェブは、ウエットレイド法または他のウェブ作製技術を用いて作製することができる。例えば一実施形態では、導電性繊維を単独でまたはパルプ繊維と共に、コフォームウェブを形成するための方法を用いて、溶融した合成繊維と組み合わせることができる。さらなる他の実施形態では、導電性繊維を単独でまたはパルプ繊維と共に、スパンボンドウェブなどの事前に作製した不織ウェブと水流交絡させることもできる。
【0031】
本発明に従って使用され得る導電性繊維は、特定の用途及び所望の結果に応じて様々であり得る。不織ウェブを形成するために使用され得る導電性繊維には、炭素繊維、金属繊維、導電性高分子から作製された繊維を含む導電性高分子繊維、導電性材料を含む高分子繊維、及びこれらの混合物が含まれる。使用可能な金属繊維には、例えば、銅繊維、アルミニウム繊維、及び同様のものが含まれる。導電性材料を含む高分子繊維には、導電性材料でコーティングされた熱可塑性繊維や、導電性材料を含浸または混合させた熱可塑性繊維が含まれる。例えば、一態様では、銀でコーティングされた熱可塑性繊維が使用され得る。
【0032】
本発明に使用され得る炭素繊維には、炭素のみから作製した繊維や、導電性となるのに十分な量の炭素を含んだ繊維が含まれる。一態様では、例えば、ポリアクリロニトリル高分子から作製した炭素繊維が使用され得る。具体的には、前記炭素繊維は、ポリアクリロニトリル高分子繊維を加熱、酸化及び炭化させることによって作製される。前記炭素記繊維は典型的には、高純度を有しかつ比較的高分子量の分子を含む。例えば、前記炭素繊維は、約85重量%以上の量の、例えば約88重量%以上、例えば約90重量%以上、例えば約92重量%以上または例えば約95重量%以上の量の炭素を含み得る。
【0033】
ポリアクリロニトリル高分子繊維から炭素繊維を作製するために、まずポリアクリロニトリル繊維を空気などの酸素雰囲気中で加熱する。加熱中、ポリアクリロニトリル高分子中のシアノ部位により、テトラヒドロピリジン環の繰返し単位が形成される。加熱を続けるにつれて、高分子の酸化が開始される。酸化中、水素が放出され、それにより炭素が芳香環を形成する。
【0034】
酸化後、前記繊維を酸素欠乏雰囲気中でさらに加熱する。例えば、前記繊維は、約1300℃以上の温度まで、例えば1400℃以上、例えば約1300〜1800℃の温度まで加熱され得る。加熱中に、前記繊維は炭化される。そして、炭化中に、隣接する高分子鎖が互いに結合し、ほぼ純粋な炭素の薄板状の平面基礎構造が形成される。
【0035】
ポリアクリロニトリルベースの炭素繊維は、様々な商業的供給源から入手可能である。例えば、前記繊維は、米国テネシー州ロックウッド所在のトーホウ・テナックス・アメリカ社(Toho Tenax America, Inc.)から入手可能である。
【0036】
炭素繊維の作製に使用される他の原材料は、レーヨンや石油ピッチである。
【0037】
特に有利なことに、作製された炭素繊維は任意の適当な長さに切断することができる。本発明の一実施形態では、約1〜12mmの長さ、例えば約3〜6mmの長さに切断された炭素繊維を基体ウェブに組み込むことができる。炭素繊維は、約3〜15ミクロンの平均径、例えば約5〜10ミクロンの平均径を有し得る。一実施形態では、例えば、炭素繊維は、約3mmの長さ、及び約7ミクロンの平均径を有し得る。
【0038】
一態様では、不織基体ウェブに組み込まれる炭素繊維は、水溶性のサイズ剤を含有する。サイズ剤は、0.1〜10重量%の量で含まれ得る。水溶性サイズ剤は、これらに限定されるものではないが、ポリアミド化合物、エポキシ樹脂エステル、グリセリン、及びポリビニルピロリドンであり得る。サイズ剤は、不織ウェブの形成前に炭素繊維を良好に分散させるべく炭素繊維を水と混合させるときに、前記水に溶解させられる。
【0039】
本発明に従って導電性不織ウェブを形成する際に、上記の導電性繊維は、ティッシュ製造工程での使用に適した他の繊維と組み合わされる。導電性繊維と組み合わされる繊維には、任意の天然または合成セルロース繊維が含まれ得、そのようなものとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、非木質繊維(例えば、綿、アバカ、ケナフ、サバイグラス、亜麻、アフリカハネガヤ、わら、ジュート麻、バガス、トウワタフロス繊維、パイナップルの葉の繊維)や、針葉樹及び落葉樹から得られる木質繊維またはパルプ繊維(例えば、北方針葉樹クラフトまたは南方針葉樹クラフトから得られる針葉樹繊維や、ユーカリ、カエデ、樺の木、ポプラなどから得られる広葉樹繊維)が挙げられる。パルプ繊維は、高収率または低収率の形態で作製することができ、かつ、クラフトパルプ化法、サルファイト法、高収率パルプ化法及び他の既知のパルプ化法などの任意の既知の方法でパルプ化することができる。また、1988年12月27日にLaamanenらに付与された米国特許第4,793,898号、1986年6月10日にChangらに付与された米国特許第4,594,130号、及び1971年6月15日にKleinertらに付与された米国特許第3,585,104号に開示されている繊維及び方法を含む、オルガノソルブパルプ化法によって作製した繊維を使用することもできる。また、1997年1月21日にGordonらに付与された米国特許第5,595,628号に例示されているアントラキノンパルプ化法によって作製した繊維を使用することもできる。
【0040】
一実施形態では、針葉樹繊維が、不織材の作製に使用される。針葉樹繊維はより長い傾向にあり、製造及び加工中の粒子の放出が少ない。より長いパルプ繊維も、炭素繊維などの導電性繊維とより良好に交絡する傾向を有する。
【0041】
また、不織材に組み込まれたパルプ繊維(針葉樹繊維など)は、各繊維の結合部位の量を増加させるために叩解され得る。結合部位を増加させると、完成材料における、パルプ繊維と導電性繊維との物理的な交絡度が増大する。このことにより、処理中の炭素繊維の脱落を少なくした、非常に平坦かつ一様な紙材を作製することができる。また、叩解作業により、不織材の全体強度も増加する。例えば、一実施形態では、パルプ繊維は、約300mL以上、例えば約375mL以上のカナダ標準ろ水度を有し得る。例えば、パルプ繊維は、約350〜600mLのカナダ標準ろ水度を有することとなるように叩解される。
【0042】
繊維の一部、例えば乾燥重量で100%以下は合成繊維であり得、例えば、レーヨン、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、2成分鞘芯型繊維、多成分バインダー繊維及び同様のものなどであり得る。例示的なポリエチレン繊維は、米国デラウエア州ウィルミントン所在のヘラクレス社(Hercules, Inc.)製のPulpex(登録商標)である。合成セルロース繊維の種類には、あらゆる種類のレーヨン及び、ビスコースまたは化学修飾セルロース由来の他の繊維が含まれる。
【0043】
不織ウェブに熱可塑性繊維を組み入れると、様々な利点及び恩恵が得られる。例えば、不織ウェブに熱可塑性繊維を組み入れると、不織ウェブをそれの隣接する構造体に対して、熱結合または超音波結合させることが可能となる。例えば、不織ウェブは、おむつのライナなどの他の不織材(例えばスパンボンドウェブやメルトブローンウェブ)に熱結合され得る。
【0044】
また、マーセライズ加工されたパルプ、化学的に補強または架橋された繊維、あるいはスルホン化された繊維などの、化学的に処理された天然セルロース系繊維も使用することができる。製紙繊維を使用する際の良好な物理的特性に関しては、繊維が比較的無傷であり、繊維の大部分が未叩解または軽く叩解されただけであることが望ましくあり得る。マーセライズ加工された繊維、再生セルロース系繊維、微生物により生成されたセルロース、レーヨン、及び他のセルロース系材料またはセルロース誘導体を使用することもできる。また、適切な繊維には、再生繊維、バージン繊維、またはこれらの混合物が含まれ得る。ある特定の態様では、前記繊維は、少なくとも200の、より具体的には少なくとも300、より具体的には少なくとも400、最も具体的には少なくとも500のカナダ標準ろ水度を有し得る。
【0045】
本発明において使用することができる他の製紙繊維には、損紙繊維、再生繊維及び高収率繊維が含まれる。高収率パルプ繊維は、約65%以上の歩留り、より具体的には約75%以上、さらに具体的には約75〜95%の歩留りを提供するパルプ化工程によって製造された製紙繊維である。歩留りは、最初の木材質量に対するパーセントとして表される最終的に得られた被処理繊維の量である。そのようなパルプ化工程には、漂白ケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、圧力/圧力サーモメカニカルパルプ(PTMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、サーモメカニカルケミカルパルプ(TMCP)、高収率亜硫酸パルプ、高収率クラフトパルプが含まれ、これらは全て、最終的に得られた繊維にリグニンが高レベルで存在する。高収率繊維は、乾燥及び湿潤の両状態において、典型的な化学的にパルプ化された繊維よりも剛性が高いことがよく知られている。
【0046】
また、導電性シートに耐炎性を付与するために、米国ミズーリ州ブリッジトン所在のゾルテック社(Zoltek Corporation)から販売されているPANEX(登録商標)などの難燃繊維も本発明に使用することができる。
【0047】
一般的に、導電性ウェブは、ティッシュウェブを形成可能な任意のウエットレイド法を用いて形成することができる。例えば、本発明の製紙工程は、エンボス加工、湿式加圧、空気加圧、通気乾燥、非捲縮通気乾燥、水流絡合、空気堆積、及び当業者に既知の他の方法を用いることができる。ティッシュウェブは、最大で96重量%のパルプ繊維を含有する繊維完成紙料から形成することができる。繊維完成紙料はまた、熱可塑性繊維を最大で96重量%の量で含有し得る。
【0048】
また、不織ウェブは、次の特許文献に開示されているような、パターンが緻密化または刻印(インプリント)されたティッシュシートであり得る。1985年4月30日にJohnsonらに付与された米国特許第4,514,345号、1985年7月9日にTrakhanに付与された米国特許第4,528,239号、1992年3月24日にSmurkoskiら付与された米国特許第5,098,522号、1993年11月9日にSmurkoskiらに付与された米国特許第5,260,171号、1994年1月4日にTrokhanに付与された米国特許第5,275,700号、1994年7月12日にRaschらに付与された米国特許5,328,565号、1994年8月2日にTrokhanらに付与された米国特許第5,334,289号、1995年7月11日にRaschらに付与された米国特許第5,431,786号、1996年3月5日にSteltjes, Jr.らに付与された米国特許第5,496,624号、1996年3月19日にTrokhanらに付与された米国特許第5,500,277号、1996年5月7日にTrokhanらに付与された米国特許第5,514,523号、1996年9月10日にTrokhanらに付与された米国特許第5,554,467号、1996年10月22日にTrokhanらに付与された米国特許第5,566,724号、1997年4月29日にTrokhanらに付与された米国特許第5,624,790号、1997年5月13日にAyersらに付与された米国特許第5,628,876号。これらの特許文献は、本明細書と矛盾しない限りにおいて、この参照により本明細書に組み込まれるものとする。このようなインプリントされたティッシュシートは、インプリンティングファブリック(imprinting fabric)によってドラムドライヤに押し付けられインプリントされた密度の高い領域と、インプリンティングファブリックのたわみ溝(deflection conduit)に対応する比較的低密度の領域(例えばティッシュシートの「ドーム」状部分)とを有する網状構造を有し得る。たわみ溝上に位置するティッシュシートが、たわみ溝を横切る空気圧の差によってたわむことにより、より密度の低い枕様領域すなわちドームがティッシュシートに形成される。
【0049】
また、ティッシュウェブは、相当量の内部繊維間結合強度を持たないように形成することができる。この点に関し、基体ウェブを形成するために使用される繊維完成紙料を、化学剥離剤で処理することができる。化学剥離剤は、パルプ化工程中に繊維スラリーに加えるか、またはヘッドボックスに直接加えることができる。本発明で使用することができる適切な剥離剤には、脂肪ジアルキル四級アミン塩、モノ脂肪アルキル三級アミン塩、一級アミン塩、イミダゾリン四級塩、シリコン四級塩、及び不飽和脂肪アルキルアミン塩などのカチオン性剥離剤が含まれる。
【0050】
他の好適な剥離剤は、1996年6月25日にKaunに付与された米国特許第5,529,665号に開示されている(この特許文献は、この参照により本明細書に組み込まれるものとする)。この特許文献では、特に、剥離剤としてのカチオン性シリコン組成物の使用が開示されている。一態様では、本発明の方法に使用される剥離剤は、有機四級塩化アンモニウム、特に四級塩化アンモニウムのシリコーンベースのアミン塩である。例えば、剥離剤は、ヘラクレス社(Hercules Corporation)から発売されているPROSOFT(登録商標)TQ1003であり得る。剥離剤は、スラリー内に存在する繊維1メートルトン当たり約1〜10kgの量で繊維スラリーに加えることができる。
【0051】
代替的な態様では、剥離剤は、イミダゾリンベースの物質であり得る。イミダゾリンベースの剥離剤は、例えばウイトコ社(Witco Corporation)から入手可能である。イミダゾリンベースの剥離剤は、1メートルトン当たり2.0kgないし約15kgの量で加えられ得る。
【0052】
一態様では、剥離剤は、1998年12月17日に出願された国際公開番号第WO 99/34057号または2000年4月28日に出願された国際公開番号第WO 00/66835号に開示されている方法に従って繊維完成紙料に加えることができる(両文献は、この参照により本明細書に組み込まれるものとする)。上記の特許文献には、剥離剤などの化学添加物をセルロース系製紙繊維に高レベルで吸着させる方法が開示されている。この方法は、繊維スラリーを過剰な化学添加物で処理するステップと、吸着が生じるのに十分な滞留時間を与えるステップと、未吸着化学添加物を除去すべくスラリーをろ過するステップと、不織ウェブを形成する前に、ろ過したパルプを新鮮な水に再分散させるステップとを含んでいる。
【0053】
また、乾燥紙力増強剤及び湿潤紙力増強剤もベースシートに塗布するまたは組み込むことができる。本明細書では、「湿潤紙力増強剤」は、湿潤状態における繊維間結合を固定するために使用される材料を意味する。通常、紙製品及びティッシュ製品において繊維同士を互いに結合させるための手段には、水素結合、場合によっては水素結合と共有結合及び/またはイオン結合との組み合わせが含まれる。本発明では、繊維間結合点を固定することにより湿潤状態での破壊に耐えられるようにした繊維結合材料を提供することは有用であり得る。
【0054】
本発明の目的のために、ティッシュシートに加えたときに、幾何学的な湿潤引張り強度の幾何学的な乾燥引張り強度に対する比の平均が約0.1を超える任意の材料を湿潤紙力増強剤と称することとする。通常、これらの材料は、恒久的タイプの湿潤紙力増強剤または「一時的タイプの」紙力増強剤と称される。恒久的タイプの湿潤紙力増強剤を一時的タイプの湿潤紙力増強剤から区別することを目的として、恒久的タイプの湿潤紙力増強剤は、紙またはティッシュ製品に組み込んだときに、少なくとも5分間水に曝した後の湿潤強度が元の湿潤強度の50%を超える値に維持される樹脂と定義される。一時的タイプの湿潤紙力増強剤は、5分間水を飽和させた後の湿潤強度が元の湿潤強度の50%以下となるものである。両タイプの湿潤紙力増強剤が本発明に使用される。パルプ繊維に加えられる湿潤紙力増強剤の量は、パルプ繊維の乾燥重量に基づいて、少なくとも約0.1乾燥重量%であり、より具体的には約0.2乾燥重量%以上、さらに具体的には約0.1〜3乾燥重量%である。
【0055】
恒久的タイプの湿潤紙力増強剤は一般的に、ティッシュシート構造に、実質的に長期間の湿潤耐性を付与する。対照的に、一時的タイプの湿潤紙力増強剤は一般的に、低密度かつ高耐性のティッシュシート構造を提供するが、水または体液への暴露への長期間の耐性を有する構造は提供しない。
【0056】
一時的タイプの湿潤紙力増強剤は、カチオン性、非イオン性、またはアニオン性であり得る。そのような化合物には、米国(ニュージャージー州ウェストパターソン所在のサイテック・インダストリーズ(Cytec Industries)社から入手可能なPAREZ(登録商標)631NC及びPAREZ(登録商標)725が含まれる(カチオン性グリオキシル化ポリアクリルアミドである一時的タイプの湿潤紙力増強樹脂)。この樹脂及び類似の樹脂は、1971年1月19日にCosciaらに付与された米国特許第3,556,932号、及び1971年1月19日にWilliamsらに付与された米国特許第3,556,933号に記載されている。米国デラウェア州ウィルミントン所在のヘラクレス社(Hercules)製のHercobond 1366は、本発明に従って使用することができる他の市販されているカチオン性グリオキシル化ポリアクリルアミドである。一時的タイプの湿潤紙力増強剤のさらなる例としては、ナショナルスターチ・アンド・ケミカル社(National Starch and Chemical Company)から販売されているCobond(登録商標)1000などの酸化でんぷんや、2001年5月1日にSchroederらに付与された米国特許第6,224,714号、2001年8月14日にShannonらに付与された米国特許第6,274,667号、2001年9月11日にSchroederらに付与された米国特許第6,287,418号、及び2002年4月2日にShannonらに付与された米国特許第6,365,667号に記載されているようなアルデヒド含有高分子がある。これらの特許文献は、本明細書と矛盾しない限りにおいて、この参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0057】
カチオン性のオリゴマー樹脂または高分子樹脂を含む恒久的タイプの湿潤紙力増強剤も本発明に使用することができる。米国デラウェア州ウィルミントン所在のヘラクレス社(Hercules)から販売されているKYMENE 557Hなどのポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリンタイプの樹脂は最も広く使用されている恒久的タイプの紙力増強剤であり、本発明での使用に適している。このような材料は、次の米国特許に記載されている。1972年10月24日にKeimに付与された米国特許第3,700,623号、1973年11月13日にKeimに付与された米国特許第3,772,076号、1974年12月17日にPetrovichらに付与された米国特許第3,855,158号、1975年8月12日にPetrovichらに付与された米国特許第3,899,388号、1978年12月12日にPetrovichらに付与された米国特許第4,129,528号、1979年4月3日にPetrovichらに付与された米国特許第4,147,586号、及び1980年9月16日にvan Eenamに付与された米国特許第4,222,921号。他のカチオン性樹脂としては、ポリエチレンイミン樹脂や、ホルムアルデヒドとメラミン若しくは尿素との反応により得られるアミノプラスト樹脂がある。ティッシュ製品の製造においては、一時的タイプの湿潤紙力増強樹脂及び恒久的タイプの湿潤紙力増強樹脂の両方を使用することが好適である。
【0058】
一実施形態では、比較的大量の湿潤紙力増強剤が不織材に組み込まれる。湿潤紙力増強剤に加えて、乾燥紙力増強剤も製品に加えられる。加えて、湿潤紙力増強剤は、導電性繊維の保持力を向上させるべく、不織材中での繊維の化学的交絡を助ける役割を果たす。不織材に加えられる湿潤紙力増強剤の量は、様々な因子に依存する。一般的に、湿潤紙力増強剤は、約1〜12kg/mtonの量で、例えば約5〜10kg/mtonの量で加えられる。特定の実施形態では、湿潤紙力増強剤は、できるだけ多い量加えることが望ましい。これらの実施形態では、例えば、湿潤紙力増強剤は、約7kg/mtonを超える量で、例えば約8kg/mtonの量で加えられる。
【0059】
乾燥紙力増強剤は従来技術で公知であり、乾燥紙力増強剤には、これらに限定されるものではないが、改変でんぷん及び他の多糖(例えば、カチオン性、両性、アニオン性のでんぷん、グアー及びローカストビーンガム)、修飾ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、糖類、ポリビニルアルコール、キトサンなどが含まれる。このような乾燥紙力増強剤は、通常、ティッシュシートの形成前に繊維スラリに加えられるか、またはクレーピングパッケージ(creping package)の一部として加えられる。
【0060】
不織ウェブに加えることができる化学薬品のさらなる種類には、これらに限定されるものではないが、吸収助剤(通常はカチオン性、アニオン性または非イオン性の界面活性剤の形態である)、保湿剤及び可塑剤(例えば、低分子量ポリエチレングリコール)、及びポリヒドロキシ化合物(例えば、グリセリン、プロピレングリコール)が含まれる。例えば鉱油、アロエエキス、ビタミンE、シリコーン、ローション全般などの皮膚に対する健康上の効用がある物質も最終製品に組み込むことができる。
【0061】
一般的に、本発明の製品は、その使用目的に反しない任意の既知の物質及び化学薬品と共に用いることができる。そのような物質の例には、これらに限定されるものではないが、ベビーパウダー、重曹、キレート剤、ゼオライト、香料または他の臭気マスキング剤、シクロデキストリン化合物、酸化剤などが含まれる。特に有利なことに、炭素繊維は、導電性繊維として使用した際に、臭気吸収剤としても作用する。また、超吸収性粒子、合成繊維またはフィルムも使用することができる。追加的な選択肢には、染料、蛍光漂白剤、保湿剤、軟化剤などが含まれる。
【0062】
本発明に従って形成される不織ウェブは、単一の同質的な繊維層、または、層状若しくは積層状の構造を含み得る。例えば、不織ウェブ層(プライ)は、2層または3層の繊維層を含み得る。各層は、異なる繊維組成物を有し得る。例えば、図1を参照すると、複数層を積層させた層状パルプ紙料を形成する装置の一態様が示されている。図示するように、3層ヘッドボックス10は、一般的に、上部ヘッドボックス壁12及び下部ヘッドボックス壁14を有している。ヘッドボックス10は、3つの繊維ストック層を互いに分離させるための第1の仕切部16及び第2の仕切部18をさらに有している。
【0063】
各繊維層は、繊維の希釈水性懸濁液を含む。各層に含まれる特定の繊維の種類は、一般的に、形成される製品及び所望の結果に依存する。一態様では、例えば、中間層20は、導電性繊維と共にパルプ繊維を含んでいる。他方、外層22、24は、針葉樹繊維及び/または広葉樹繊維などのパルプ繊維のみを含み得る。
【0064】
中間層20中に導電性繊維を配することにより、様々な利点及び恩恵が得られる。例えば、ウェブの中心に導電性繊維を配することで、表面の手触りが柔らかい導電性材料を作製することができる。また、導電性繊維をウェブのある1層に集中させることで、多量の導電性繊維を加えることなく導電性材料の導電性を向上させることもできる。一態様では、例えば、各層がウェブの約15〜40重量%を占める3層ウェブが形成される。外層は、パルプ繊維のみでまたはパルプ繊維と熱可塑性繊維とを組み合わせて作製することができる。他方、中間層は、導電性繊維と共にパルプ繊維を含み得る。導電性繊維は、中間層に、約30〜70重量%の量で、例えば約40〜約60重量%、例えば約45〜55重量%の量で含まれ得る。
【0065】
ロール28及び30によって適切に支持されて走行するエンドレス型の形成用ファブリック26が、ヘッドボックス10から供給される積層製紙ストックを受け取る。ファブリック26上に積層繊維懸濁液が保持されると、矢印32によって示されるように、懸濁液に含まれている水がファブリックを通過する。水の除去は、形成構造に応じて、重力、遠心力及び真空吸引の組み合わせによって達成される。
【0066】
多層紙ウェブの形成はまた、1992年7月14日にFarrington,Jr.に付与された米国特許第5,129,988号に記載され開示されている(この特許文献は、この参照により本明細書に組み込まれるものとする)。
【0067】
上述したように、他の実施形態では、不織ウェブは、単一の同質的な繊維層から構成することができる。一実施形態では、同質的な繊維層を作製する際は、まず、パルプ繊維及び/または合成繊維を含有する水性懸濁液を調製する。そして、形成面上に水性懸濁液を堆積させる前に、水性懸濁液に炭素繊維などの導電性繊維を注入する。例えば、導電性繊維は、繊維水性懸濁液を形成面上に堆積させる直前に、ヘッドボックス内の繊維水性懸濁液に注入される。パルプ繊維及び/または合成繊維の水性懸濁液は、例えば、水を99重量%を超える量で含有し得る。例えば、一実施形態では、パルプ繊維及び/または合成繊維の水性懸濁液は、パルプ繊維及び/または合成繊維を、1重量%未満の量で、例えば約0.5重量%の量で含有する。導電性繊維は、その後、同様の希釈率で水性懸濁液に注入される。例えば、炭素繊維を約0.5重量%の量で含む炭素繊維水性懸濁液が、パルプ繊維及び/または合成繊維の水性懸濁液に注入される。
【0068】
導電性繊維をパルプ繊維及び/または合成繊維の水性懸濁液に注入することで、導電性繊維のフロック(flock)の形成を低減できることが分かっている。繊維が互いに混合される時間が長くなると、フロックが形成される傾向がより高まることが分かっている。フロックが形成されると、例えば、作製された材料に弱い部分が生じ、それにより、不織材を後で処理する際にウェブ破断が発生し得る。
【0069】
繊維水性懸濁液から形成されたティッシュウェブは、様々な技術及び方法を用いて処理され得る。例えば、図2を参照して、通気乾燥させられたティッシュシートを製造する方法が示されている。一態様では、非捲縮/通気乾燥法を用いて不織ウェブを形成することが望ましい。形成中に不織ウェブを捲縮(クレーピング)すると、不織ウェブ中の導電性繊維の網構造が破壊され、導電性繊維が損傷することが分かっている。その場合、不織ウェブは、非導電性となる。
【0070】
簡単にするために、いくつかのファブリックの走行を画定するために様々なテンションロールを概略的に示すが、符号は付さない。当然のことながら、一般的な工程から逸脱することなく、図2に示した装置及び方法からの変形形態を作り出すことができる。積層ヘッドボックスなどの製紙ヘッドボックス34を有するツインワイヤ式フォーマーが示されており、これは、フォーミングロール39上に位置する形成用ファブリック38上へ製紙繊維の水性懸濁液のストリーム36を注入するかまたは堆積させる。形成用ファブリックは、新たに形成された湿潤ウェブを支持し、ウェブが約10乾燥重量パーセントの濃度まで部分的に脱水されたときに、ウェブを工程の下流へ搬送する役割を果たす。湿潤ウェブのさらなる脱水は、湿潤ウェブが形成用ファブリックによって支持されている間に、例えば真空吸引によって行うことができる。
【0071】
湿潤ウェブは、その後、形成用ファブリックから搬送用ファブリック40へ移送される。随意的な一態様では、ウェブの伸縮性を高めるために、搬送用ファブリックは形成用ファブリックよりも低速で走行する。このことは一般的に「ラッシュ(rush)」搬送)と呼ばれる。2つのファブリック間の相対速度差は、0〜15パーセント、より具体的には約0〜8パーセントであり得る。
【0072】
形成用ファブリック及び搬送用ファブリックが真空スロットの前縁で同時に集中及び分散するように、搬送は真空シュー(vacuum shoe)42に補助されて行われることが好ましい。ウェブは、その後、真空搬送ロール46または真空搬送シューの助けを借りて、及び随意的に前述したような固定間隔移送を再び使用して、搬送ファブリックから通気乾燥ファブリック44へ搬送される。通気乾燥ファブリックは、搬送用ファブリックに対して同じ速度または異なる速度で走行させることができる。所望であれば、伸縮性をさらに向上させるために、通気乾燥ファブリックをより低速で走行させることもできる。必要に応じて、シートが通気乾燥ファブリックになじむように確実に変形し、それにより所望のバルク及び外見を生じさせるように、搬送を真空補助により行うことができる。適切な通気乾燥ファブリックは、1995年7月4日にKai F. Chiuらに付与された米国特許第5,429,686号及び1997年9月30日にWendtらに付与された米国特許第5,672,248号に記載されている(これらの特許文献は、この参照により本明細書に組み込まれるものとする)。
【0073】
一態様では、通気乾燥ファブリックは、比較的滑らかな表面を提供する。代替的に、通気乾燥ファブリックは、高くかつ長い押圧用ナックル(impression knuckle)を有することができる。
【0074】
不織ウェブにおける通気乾燥ファブリックと接する側は、一般的に、不織ウェブの「ファブリックサイド」と呼ばれる。不織ウェブのファブリックサイドは、上述したように、ファブリックを通気ドライヤで乾燥させた後は、通気乾燥ファブリックの表面と一致する形状を有し得る。他方では、紙ウェブの反対側は、一般的に、「エアサイド」と呼ばれる。ウェブのエアサイドは、典型的には、通常の通気乾燥工程中はファブリックサイドよりも滑らかである。
【0075】
ウェブ搬送に用いられる真空のレベルは、約3〜15水銀柱インチ(約75〜380水銀柱ミリメータ)、好ましくは約5水銀柱インチ(125水銀柱ミリメータ)であり得る。真空を用いてウェブを次のファブリック上へ吸引するのに加えてまたはその代用として、ウェブを次のファブリック上へ吹き飛ばすためにウェブの反対側の面から正圧を用いる代わりに真空シュー(負圧)を追加するかまたは置き換えることができる。また、真空シューの代わりに、1または複数の真空ロールを使用することもできる。
【0076】
通気乾燥ファブリックによって支持されている間に、ウェブは、通気乾燥ドライヤ48によって最終的に約94パーセント以上の濃度まで乾燥させられ、その後、キャリヤファブリック50へ搬送される。乾燥させたベースシート52は、キャリヤファブリック50及び随意的なキャリヤファブリック56を使用してリール54へ搬送される。随意的な加圧回転ロール58を用いて、キャリヤファブリック50からファブリック56へのウェブの移送を促進することができる。この目的に適したキャリヤファブリックは、アルバニー・インターナショナル社(Albany International)製の84Mまたは94M及びアステン(Asten)959または937であり、これらは全て、微細パターンを有する比較的滑らかなファブリックである。図示していないが、リールカレンダリングまたは後に続くオフラインカレンダリングを使用してベースシートの滑らかさ及び柔らかさを向上させることができる。また、ウェブをカレンダリングすると、導電性繊維をある特定の平面またはある特定の方向に配向させることができる。例えば、一態様では、導電性繊維の全てを主にX−Y平面に配向させ、Z方向に配向させないために、ウェブをカレンダリングすることができる。このようにして、ウェブの柔らかさを向上させると共に、ウェブの導電性を向上させることができる。
【0077】
一実施形態では、不織ウェブ52は、平坦な状態で乾燥させられたウェブである。例えば、ウェブは、滑らかな通気乾燥用ファブリック上に位置する間に形成することができる。非捲縮/通気か乾燥ファブリックの製造工程は、例えば、1992年7月14日にWendtらに付与された米国特許第5,672,248号、1997年8月12日にFarringtonらに付与された米国特許第5,656,132号、2000年9月19日にLindsay及びBurazinに付与された米国特許第6,120,642号、2000年8月1日にHermansらに付与された米国特許6,096,169号、2001年3月6日にChenらに付与された米国特許第6,197,154号、及び2000年11月7日にHadaらに付与された米国特許6,143,135号に開示されている(これらの特許文献は、この参照により本明細書に組み込まれるものとする)。
【0078】
図2には、非捲縮/通気乾燥ウェブを製造する工程が示されている。しかし、導電性の不織ウェブは、クレーピングを行わない任意の適切な工程及または技術を用いて形成可能であることを理解されたい。
【0079】
例えば、図19を参照すると、本発明に従って不織ウェブを形成するために用いることができる他の工程が示されている。図19に示す実施形態では、新しく形成されたウェブは、工程中に湿式加圧される。
【0080】
この実施形態では、ヘッドボックス60が、複数のガイドロール64によって支持されて走行している形成用ファブリック62上へ繊維の水性懸濁液を放出する。ヘッドボックス60は、図1に示したヘッドボックス34と同様のものであり得る。加えて、上述したように、繊維の水性懸濁液は導電性繊維を含み得る。真空ボックス66が形成用ファブリック62の真下に配置され、ウェブの形成を補助するために繊維完成紙料から水を除去するように構成されている。形成されたウェブ68は、形成用ファブリック62から第2のファブリック70に搬送される。第2のファブリックは、ワイヤまたはフェルトのいずれかであり得る。ファブリック70は、連続的な円軌道を描いて走行するように、複数のガイドロール72によって支持されている。また、ファブリック62からファブリック70へのウェブ68の移送を容易にするように設計されたピックアップロール74も設けられている。
【0081】
この実施形態では、ウェブ68は、ファブリック70から、ヤンキードライヤなどの回転可能な加熱ドライヤドラム76の表面へ搬送される。図示するように、ウェブ68がドライヤ表面の回転経路の一部を通って搬送されるときに、ウェブに熱が与えられ、ウェブ中に含まれている水分の大部分が蒸発する。ウェブ68は、その後、クレーピングされることなく、ドライヤドラム76から除去される。
【0082】
ウェブ68をドライヤドラム76から剥離させるために、一実施形態では、ドライヤドラムの表面またはドライヤドラムと接するウェブの表面に離型剤が塗布される。一般的に、ウェブがクレーピングされないように、ドラムからのウェブの剥離を容易にする任意の適切な離型剤が使用され得る。
【0083】
使用可能な離型剤としては、例えば、ヘラクレス・ケミカル社(Hercules Chemical Company)からREZOSOLの商標名で販売されているポリアミドアミンエピクロルヒドリン高分子がある。本発明で使用することができる具体的な離型剤には、ヘラクレス・ケミカル社(Hercules Chemical Company)から入手可能なRelease Agent 247、Rezosol 1095、Crepetrol 874、Rezosol 974、ProSoft TQ-1003、ブックマン・ラボラトリース社(Buckman Laboratories)から入手可能なBusperse 2032、Busperse 2098、Busperse 2091、Buckman 699、及びナルコ社(Nalco)から入手可能な640Crelease、640D release、64575 release、DVP4V005 release、DVP4V008 releaseが含まれる。
【0084】
図2または図19に示すような不織材作製工程中に、ウェブを平坦化及び高密度化させることができる。ウェブを平坦化及び高密度化させる技術の1つは、対向するカレンダロールのニップ部の間にウェブを通すことである。シートを平坦化及び高密度化させることにより、その後の工程中におけるシートからの炭素繊維の脱落を減少させることができる。また、ウェブを平坦化することにより、材料のキャリパ厚さまたは厚さを減少させることができ、また、導電性繊維の網構造の密度及び均一性を高めることにより導電性を向上させることができる。また、材料の厚さを減少させることにより、製造工程中の材料ロールの実行時間を長くし、それにより、無駄や遅延を無くし、効率を高めることができる。導電性を高めることにより、完成材料に含まれる導電性繊維の量を減らすことができる。
【0085】
ウェブをカレンダ加工する場合、ウェブは乾燥状態または湿潤状態でカレンダ加工される。例えば、一実施形態では、カレンダロールにより、少なくとも900PLIの圧力、例えば約900〜1100PLIの圧力が加えられる。例えば、特定の一実施形態では、カレンダロールにより加えられる圧力は、約950〜1100PLI,例えば約980PLIである。
【0086】
代替的な実施形態では、図6に示すように、ウェブを乾燥させるだけではなく平坦化及び高密度化も行う複数の乾燥シリンダに対してウェブを押圧することができる。例えば、図6を参照すると、複数の連続する乾燥シリンダ80が示されている。この実施形態では、6個の連続した乾燥シリンダが示されている。しかし、他の実施形態ではより多くの数またはより少ない数の乾燥シリンダを使用できることを理解されたい。例えば、一実施形態では、8〜12個の連続した乾燥シリンダが工程中に組み込まれ得る。
【0087】
図示するように、任意の適切な方法に従って形成された湿潤ウェブ82が第1の乾燥シリンダ80に対して押し付けられ係合させられている。例えば、一実施形態では、ファブリックまたは適切なコンベアを使用して、ウェブを乾燥シリンダの表面に押し付けることができる。ウェブは、第2の乾燥シリンダに押し付けられ係合させられるまで、第1の乾燥シリンダの外面に少なくとも約150°、例えば約180°巻回される。工程中に、乾燥シリンダを、ウェブを乾燥させるための最適な温度まで加熱することができる。
【0088】
引張強度を高めるためにまたは他の機能(絶縁層としての機能)を付与するために、不織ウェブの一方の面または両方の面をラッテクスやでんぷんなどの添加剤によって被覆することもできる。
【0089】
本発明に従って作製された不織ウェブは、その用途及び所望の結果に応じて様々な性質及び特徴を有し得る。例えば、不織ウェブは、約15〜200gsmまたはそれ以上の秤量を有し得る。例えば、不織ウェブの秤量は、約15〜100gsm、例えば約15〜50gsmであり得る。
【0090】
所望に応じて、不織ウェブは、比較的大きい嵩を有するようにまたは比較的小さい嵩を有するように形成することができる。例えば、嵩は、約2〜20cc/g、例えば約3〜10cc/gであり得る。
【0091】
不織ウェブを比較的小さい嵩を有するように形成する場合は、嵩は、一般的に、約2cc/g未満、例えば約1cc/g未満、または例えば0.5cc/g未満であり得る。
【0092】
シートの「嵩(バルク)」は、ミクロン単位で表した乾燥ティッシュ紙のキャリパ厚さを、平方メートル当たりグラムで表した乾燥秤量で除した商として計算される。求められたシートの嵩は、立方センチメートル/グラムの単位で表される。より具体的には、キャリパ厚さは、10枚の代表的なシートを積層させて構成した積層体の厚みを10で除することにより求める。この場合、各シートは同じ面が上側(同じ側)になるようにして積層させる。キャリパ厚さは、積層させたシートのための注釈3(Note 3)付きのTAPPI試験法T411 om-89「紙、板紙及び合紙の厚さ(キャリパ)(Thickness (caliper) of Paper, Paperboard, and Combined Board)」に従って測定する。T411 om-89を実施するために使用されるマイクロメータは、米国オレゴン州ニューバーグ所在のエンベコ社(Emveco, Inc.)から入手可能なEmveco 200-Aティッシュキャリパー試験機である。このマイクロメータは、2.00キロパスカル(1平方インチ当たり132グラム)の荷重、2500平方ミリメータの圧力脚部面積、56.42ミリメータの圧力脚部直径、3秒のドウェル時間、毎秒0.8ミリメートルの落下速度を有する。
【0093】
本発明に従って作製された不織ウェブは、取り扱いが容易となるのに十分な強度を有することができる。例えば、一実施形態では、マシン方向または長さ方向に5000グラムを超える強度(最大負荷)、例えば5500グラムを超える強度、または例えば6000グラムを超える強度を有し得る。不織材の引張試験は、例えば、幅1インチの試料に対して、300mm/分及び75mmゲージ長さで実施することができる。
【0094】
不織ウェブの導電率もまた、ウェブに組み込まれた導電性繊維の種類、ウェブに組み込まれた導電性繊維の量と、及び、ウェブ中における導電性繊維の位置、密度または配向の様態に応じて異なり得る。例えば、一態様では、不織ウェブは、約1500Ω/sq未満、例えば約100Ω/sq未満、または例えば約10Ω/sq未満の抵抗を有し得る。
【0095】
シートの導電率は、オーム単位で表したシートの抵抗測定値を、シートの長さの幅に対する比で除した商として計算される。求められたシートの抵抗値は、オーム/スクエア(単位面積当たりの抵抗値)で表される。より具体的には、抵抗値の測定は、ASTM F1896-98「プリント導電材料の電気抵抗率を求めるための試験方法(Test Method for Determining the Electrical Resistivity of a Printed Conductive Material)」に従って行われる。ASTM F1896-98を実施するために使用される抵抗値測定装置(すなわちオームメータ)は、米国ワシントン州エバレット所在のフルーク・コーポレーション社(Fluke Corporation)から入手可能な、Flukeワニ口クリップ(型番AC120)を備えたFlukeマルチメータ(型番189)である。
【0096】
本発明に従って製造された導電性ウェブは、1プライ(層)の製品として単独で使用することができ、あるいは、他のウェブと組み合わせてマルチプライ(多層)の製品を形成することができる。一態様では、導電性不織ウェブを他のテイッシュウェブと組み合わせて、2プライの製品または3プライの製品を形成することができる。前記他のテイッシュウェブは、例えば、パルプ繊維のみから製造することができ、かつ上述した方法のうちの任意のものに従って製造することができる。
【0097】
別の態様では、本発明に従って製造された導電性不織ウェブは、接着剤または別の方法を用いて、他の不織材または高分子フィルム材料に積層させることができる。例えば、一態様では、導電性不織ウェブは、ポリプロピレン繊維などの高分子繊維から作製されたメルトブローンウェブ及び/またはスパンボンドウェブに積層され得る。上述したように、一態様では、導電性不織ウェブは、合成繊維を含むことができる。このようにして、不織ウェブは、メルトブローンウェブやスパンボンドウェブなどの合成繊維を含む対向ウェブと互いに接合される。
【0098】
導電性不織ウェブをマルチプライ製品に組み込むと、様々な利点及び恩恵が得られる。例えば、導電性不織ウェブが組み込まれたマルチプライ製品は、より優れた強度を有し得、より柔軟であり得、及び/またはより優れた液吸収特性を有し得る。
【0099】
本発明に従って製造される不織材は、ウエットレイドウェブ法に加えて、様々な他の技術及び方法を用いて製造することができる。例えば、代替的な実施形態では、不織材は、水流交絡法によって作製され得る。水流交絡法は、高圧のジェット水流を利用して繊維及び/またはフィラメント(長細繊)を交絡させ、高度に交絡された繊維連結構造を形成する。具体的には、ジェット水流を用いて、導電性繊維及び/またはパルプ繊維を、事前に作製した不織ウェブと結合させることができる。事前に作製した不織ウェブには、例えば、合成繊維から作製されたスパンボンドウェブが含まれる。
【0100】
水流交絡された不織繊維は、例えば、Evansによる米国特許第3,494,821号及びBouoltonによる米国特許第4,144,370号に開示されている(これらの特許文献は、この参照により本明細書に組み込まれるものとする)。水流交絡された不織繊維はまた、Everhartによる米国特許第5,284,703号及びAndersonによる米国特許第6,315,864号にも開示されている(これら特許文献は、この参照により本明細書に組み込まれるものとする)。
【0101】
代替的実施形態では、導電性不織ウェブは、コフォーム法を用いて作製される。コフォームウェブは、一般的に、熱可塑性繊維と非熱可塑性材料との混合物または安定化されたマトリクスを含む複合材料を指す。例えば、コフォーム材料は、ウェブ形成中にウェブに他の材料を添加するためのシュート部の近傍に、少なくとも1つのメルトブローンダイヘッドを配置した工程によって製造される。前記他の材料には、単独のまたは他の繊維と組み合わされた導電性繊維が含まれる。導電性繊維と組み合わされる前記他の繊維には、例えば、パルプ繊維、綿繊維、レーヨン繊維、合成ステープル繊維などが含まれる。コフォーム材料のいくつかの例は、Andersonによる米国特許第4,100,324号、Everhartによる米国特許第5,284,703号、及びGeorgerによる米国特許第5,350,624号に記載されている(これらの特許文献は、本明細書と矛盾しない限りにおいて、この参照により本明細書に組み込まれるものとする)。
【0102】
コフォーム法によって作製されたウェブは、一般的に、コフォーム材料と呼ばれる。より具体的には、コフォーム不織ウェブを作製するための1つの方法は、ダイヘッドから溶融した高分子材料を押し出して微細なストリームにするステップと、ノズルから供給される高速の加熱気体の流れを集中させて、高分子ストリームを小径の不連続のマイクロファイバーに分断するステップとを含んでいる。ダイヘッドは、例えば、少なくとも1列の直線的に並んだ押出開口を含み得る。一般的に、マイクロファイバーは、最大で約10ミクロンの平均繊維径を有し得る。マイクロファイバーの平均径は、一般的に約1ミクロン以上、例えば約2〜5ミクロンであり得る。マイクロファイバーはその大部分が不連続であるが、一般的に、ステープル繊維の通常の長さを超える長さを有する。
【0103】
溶融した高分子繊維を、導電性繊維及び/またはパルプ繊維などの別の材料と組み合わせるために、第1のガス流を、個別の導電性繊維を含む第2のガス流と混合させる。このことにより、単一のステップで、導電性繊維が高分子繊維に一体化される。1つになったガス流は、その後、形成面上に導かれ、不織布が形成される。必要に応じて、2つの互いに異なる材料をさらに一体化させるために、1対の真空ロールのニップ部に前記不織布を通過させる。
【0104】
コフォームウェブを作製する場合、導電性繊維及び/または他の繊維は、コフォーム材料中に、約10〜80重量%、例えば約30〜70重量%の量で含まれ得る。
【0105】
一態様では、導電性繊維は、導電率が互いに異なる複数の領域が形成されるようにして不織ウェブ中に含まれ得る。例えば、一態様では、複数の繊維を鉛直方向(ウェブ厚さ方向)に互いに区分することに代えてまたはそれに加えて、ヘッドボックスが用いられ得る。図1に示すように、ヘッドボックスは、複数の繊維をウェブの水平方向に互いに隔てることができるように設計されている。このようにして、ウェブの長さ方向(マシン方向)の特定の領域のみに、導電性繊維が含まれるようにすることができる。この導電性領域は、パルプ繊維などの非導電性材料のみを含む非導電性領域と互いに区分される。
【0106】
本発明によれば、導電性不織材が形成された後、導電性不織材に超音波エネルギーを照射することによって、導電性不織材中に非導電性領域が形成される。導電性不織材に超音波エネルギーを照射すると、非導電性領域を形成すると共に、不織材の仕上がりや導電性不織材に照射される超音波エネルギーの量などの様々な因子に依存して結合ラインを形成することができる。
【0107】
例えば、図3には、本発明に従って作製された導電性不織ウェブ152が示されている。このようにして、ウェブの長さ方向に、非導電性領域または結合ライン266,268が形成されている。結合ライン266,268は、超音波ボンディング法を用いて形成される。不織ウェブに結合ラインを形成することにより、導電性繊維が電流を流すためのネットワークとしての役割を果たすことができない領域を形成することができる。つまり、結合ラインは、基体ウェブに非導電性領域を形成する。図3に示すように、結合ライン266,268は、非導電性領域260,262,264を互いに隔てることができる。
【0108】
本発明に従って作製された製品は、処理技術及び添加技術によりフレキシブル回路を形成するのに使用することができる。フレキシブル回路は、成長市場である使い捨て式または非使い捨て式印刷エレクトロニクスの分野への参入を可能にする。従来のフレキシブルエレクトロニクスは、印刷回路に導電性配線を形成するのに、金属インクまたは炭素インクを使用していた。金属インクは非常に高価であり、特殊な取り扱いを必要とし、印刷する者が適応するための調整を必要とする場合が多い。さらに、印刷エレクトロニックを使い捨て式として用いるのに実際に十分に費用効率的であるか否かに関わらず、処理量及びコストに関する懸念もある。本発明は、従来のフレキシブルエレクトロニクス技術と比べて、費用対効果が高く、取り扱いが容易であるという明白な利点を提供する。本方法による最終製品は、硬質基板に接着または塗布されることができ、かつ、機能的なコスト効果的な使い捨て式の電気回路を形成するために接続される印刷または複合された電子素子を有する、導電回路を有するウェブを形成する。
【0109】
導電性ウェブから回路を作成するためには、繊維の炭素‐炭素結合の一部を破壊、除去または改変して導電性ウェブ内に高抵抗値の領域を形成することが必須である。このことは、製造工程中にウェブに超音波ボンディング技術または加圧ボンディング技術を適用することによって実現することができる。ボンディング技術は当該業界で公知であり、回路を画定する高抵抗または低抵抗の特定の経路を形成するために、多数のパターンで構成することができる。この回路経路は短時間で効率的に形成することができ、様々な健康製品、衛生製品またはその他の消費製品に低価格の使い捨て式回路を形成することを可能にする。前記結合の幅及び塗布時における前記結合の圧力または強度により、抵抗増加の程度を決定することができる。ボンディング処理の影響を受けない領域は、互いに同一の導電性レベルに保たれる。この種の処理は、不織材に組み込まれる高生産性回路を作製するための現在の産業用途に容易に適応することができる。
【0110】
一実施形態では、例えば、不織材に非導電性領域を形成するのに、超音波回転結合装置が使用される。超音波回転結合装置は、例えば、高周波数の電気エネルギーを高周波数の力学的エネルギーに変換するコンバーターと、コンバーターに接続される電源とを含み得る。コンバーターは、力学的エネルギーの振幅を変更するブースターに接続され得る。ブースターは、振幅を微調整し、エネルギーを不織材に適用する回転ホーンに接続される。一実施形態では、この超音波装置は、約20〜40kHzの周波数で作動する。
【0111】
不織材に適用される超音波エネルギーは、導電性繊維を破壊して、電気的断絶部を形成する。例えば、非導電性領域の抵抗率は、導電性領域の抵抗率よりも4倍大きくあり得る。例えば、非導電性領域の抵抗率は、導電性領域の抵抗率の5倍、6倍、さらには最大で10倍の大きさとなり得る。
【0112】
特に有利なことに、前記超音波装置は、不織材にパターンを形成することが可能である。前記パターンは非導電性領域の形状を呈しており、単一層にまたは複数の材料層間に回路パターンまたは接続部を構成または形成するのに使用される。
【0113】
導電性不織材に形成される非導電性領域は、特定の用途及び所望の結果に応じて様々であり得る。例えば、一実施形態では、不織ウェブには平面パターンが形成される。あるいは、ドットの不連続パターンが用いられ得る。
【0114】
超音波エネルギーは、不織ウェブに含まれる材料に対して様々に作用する。上述したように、例えば、超音波エネルギーは、炭素繊維を破壊及び粉砕することが知られている。セルロース繊維は、超音波エネルギーが適用されたときに、平坦化されると共に、非導電性領域内の水素結合が増加する傾向がある。一方、合成繊維は、超音波エネルギーが適用されたときに、溶融し他の基材と結合することができる。
【0115】
一実施形態では、導電性不織ウェブが、相当量のパルプ繊維を含む紙材ウェブを含む場合、材料全体の強度を高めるために、前記不織ウェブに他のウェブが組み合わせられる。例えば、一実施形態では、前記導電性ウェブには、メルトブローンウェブやスパンボンドウェブなどの合成ウェブが積層される。2つのウェブ(導電性ウェブと合成ウェブ)は、超音波エネルギーを用いて互いに接合される。このようにして、超音波エネルギーは、導電性ウェブ内に非導電性領域を形成するだけでなく、2つのウェブを互いに接合させる働きもする。
【0116】
代替的な実施形態では、導電性不織ウェブは、相当量の合成繊維を含むウェブから構成され得る。前記ウェブには、例えば、熱可塑性ステープル繊維から作製された、水流交絡ウェブ、コフォームウェブ、またはウエットレイドウェブが含まれ得る。いくつかの実施形態では、互いに接合された複数の導電性ウェブを使用することが望ましい。超音波エネルギーは、各ウェブに、非導電性領域を形成するのに使用することができる。加えて、超音波エネルギーは、前記ウェブを互いに接合させるのに使用することができる。例えば、特定の一実施形態では、超音波エネルギーは、2つの互いに対向する導電性ウェブに非導電性領域を同時に形成するのと、非導電性領域が形成された前記2つのウェブを互いに接合させるのとに使用することができる。一実施形態では、製造工程中に、前記2つのウェブの間に電気的接続を形成することができる。例えば、前記2つのウェブは、繊維の交絡が生じ得る非導電性領域の近傍において、互いに電気的に接続され得る。実際には、超音波エネルギーに曝されると、各ウェブ中の導電性繊維はウェブ表面に移動する。このようにして、導電性繊維は、繊維が破壊または粉砕された非導電性領域に隣接する領域において、前記2つの層間の繊維間の電気的接続を形成することができる。
【0117】
一実施形態では、超音波エネルギーは、2つのウェブを互いに接合すると共に、非導電性領域を形成することなく両ウェブ間の電気的接続を形成するのにも使用することができる。この実施形態では、例えば、前記ウェブは、導電性繊維を破壊することなくウェブに電気的不連続部を形成することができるような少量のエネルギーに曝される。
【0118】
超音波エネルギーを用いる方法以外にも、様々な他の方法を用いて非導電性領域を形成することができる。そのような他の技術及び方法は、超音波エネルギーを用いる方法と併用することができる。例えば、回路経路を形成する他の方法には、高抵抗が要求される領域において導電性ティッシュを切断または除去すべく、フレックスナイフ及びダイを使用して導電性ティッシュまたは材料を切断する機械的方法が含まれる。この方法では、標準的な加工技術を用いて、回路パターンを実質的に切り取る。回路パターンを最も効果的に作製するために、機械的切断技術、加圧ボンディング技術及び超音波ボンディング技術の全てを同時に用いることができ、回転機械技術またはプランジ機械技術を用いて仕上げを行うことができる。さらに、別の方法としては、加熱されたローラ上での導電性ティッシュのスロットコーティングが含まれ得る。この加熱により、はんだが濡れた管継手に引き寄せられるように、導電性ウェブ内の高分子がロールに引き寄せられる。他の選択肢は、ウェブ表面のポリマーコーティングや、当業者に用いられる他のホット・メルト・コーティング技術の使用である。必要に応じて、加熱したニップ部も使用することができる。最適なコーティング技術は、使用されるポリマー及び様々な工程速度及び制限に依存する。
【0119】
導電性不織ウェブが形成され、非導電性領域を形成する処理がなされたら、その製品は、様々な電気デバイスとして使用することができる。
【0120】
例えば、本発明の一実施形態では、薄膜スイッチなどの電子スイッチが構成される。スイッチは、ボタンまたはキーパッドインターフェース(すなわち、キーボード、携帯電話など)を必要とする消費者製品において最も普及している電子部品の1つである。この技術は、スマートインターフェースを必要とする装着可能なコンピューティング・プラットフォーム、またはアプリケーション(すなわち、パッケージング、広告、及びプロモーション)にも用いられ、このようなスイッチの製造時間及びコストを減少させる手段を創出することは好都合であり得る。印刷される導体のための基板として頑丈な基板(プラスチックなど)が必要とされており、かつ、導電性インクのコストは比較的高いため、多くの用途が、使い捨て式と半耐久性型との境界線に位置する。少なくとも5%の炭素繊維から作製される導電性ウェブは、機能的薄膜スイッチに必要とされる回路パターンをより少ない処理で形成することができる低コストの代替的な導電性材料であることが証明されており、完全に使い捨て式の製品を可能にする。
【0121】
現在の膜スイッチ技術は、外側層、導電層、絶縁層、導電層、外側層の5層システムを使用している。同じようにして、導電性ウェブは、5層または3層システムを使用することもできる。5層システムは、より頑強なスイッチを必要とするが、3層システムでは、紙材が、導電層のみならず、単一の絶縁層によって区切られた2つの外側層としての役割を果たすことができる。
【0122】
図15Aを参照して、例として、本発明により製造された5層スイッチ110の一実施形態が示されている。図示のように、スイッチ110は、2つの外側保護層、すなわち、外側カバー層112及びバッキング層114を含む。外側カバー層112とバッキング層114との間には、一対の互いに対向する導電層116及び118が配置されている。両導電層は、本発明に従って作製された不織導電性ウェブから構成され得る。導電層116と導電層118との間には、誘電性材料からなる非導電層120が配置される。図示のように、非導電層120は、開口部(aperture)122を有する。このようにして、スイッチ110の外側カバー112に圧力が加えたときに、第1の導電層116が第2の導電層118と接触して両層間が電気的に接続される。
【0123】
本発明によれば、導電性不織材116及び/または118は、導電層に超音波エネルギーを照射することにより形成した非導電性領域をさらに含むことができる。非導電性領域は、電気エネルギーを特定の位置に導くために使用されることができる。例えば、非導電性領域は、スイッチを、該スイッチを押圧したときに作動する電気デバイスに取り付けるための電気回路を形成するために使用され得る。
【0124】
図15Bを参照して、本発明に従って作製された3層スイッチ110が示されている。同様の参照番号は、同様の要素を示すのに使用される。図示のように、この実施形態では、スイッチ110は、2つの互いに対向する導電層116、118を含む。導電層116、118は、開口部122を画定する非導電層120によって互いに隔てられている。図15Bに示された実施形態では、導電性ウェブ116及び118は、スイッチの作動時に電気的接続を形成する役割を果たすだけでなく、外側カバー層としての役割も果たす。一実施形態では、例えば、画像や印刷物を、導電性不織ウェブの一方または両方に適用することができる。このようにして、様々な電気デバイスと共に使用されるスイッチを、比較的安価に製造することができる。
【0125】
図16、17及び18を参照して、本発明に従って構成され得るキーボード130の一実施形態が示されている。キーボード(キーパッド)130は、図15A及び図15Bに示したスイッチ10と同様の手法により構成することができ、同様の参照番号は、同様の要素を示すのに使用される。
【0126】
図16には、例として、5層のキーボード130が示されている。キーボード130は、本発明に従って作製された2層の導電性不織ウェブ116及び118を含んでいる。2層の導電性不織ウェブ116及び118は、誘電材料から作製された非導電性層120によって互いに隔てられている。非導電層120は、キーボード130の外側カバー112上に表示されている複数のキー124に各々対応する複数の開口部122を有する。
【0127】
図示のように、各導電性不織材は、各キーを押圧したときの電気経路の形成を可能にする複数の非導電性領域をさらに含む。例えば、導電性不織ウェブ116は、超音波エネルギーを利用して形成した、複数の垂直非導電性領域126を有する。同様に、導電性ウェブ118は、複数の水平非導電性領域128を有する。このようにして、或るキー124を押したときに2つの導電性ウェブが電気的に接続される。非導電性領域は、押圧されたキーを特定するために、2つの互いに異なる電気経路を接続しアクティブにする。
【0128】
図17には、使い捨てキーパッド130の試作品が示されている。キーパッドの右側と上側には、2つの互いに異なる導電性ウェブ層が突出している。図18は、既存のキーボード回路に接続された使い捨てキーパッドを示す。
【0129】
キーボード及びマウスは、殺菌した手術室における、感染の一因となっている。抗殺菌性の使い捨てキーボード/キーパッドを病院で使用することにより、院内感染の可能性を減少させることができる。キーボードの現在のデザインは、全て、ユーザーインターフェースの各ボタンの機能を制御するために頑強な電子部品を必要とするが、頑強な電子部品の代わりに導電性ウェブを使用すれば、コストを使い捨て可能な程度まで低下させることができる。
【0130】
さらなる、例示的な用途としては、使い捨て式のスイッチは、ユーザインターフェースを有する使い捨て式のガウンを創出するのに使用することができる。着用者に有用な機能を付与するために、あらゆる使い捨て式ガウン(手術用、クリーンルーム用、有害作業用など)に不織ウェブを使用したスイッチを含めることができる。例えば、手術着に、医療処置中に使用される器具の記号を含めることができる。このスイッチインターフェースは、その器具を使用したことや、その器具を患者から取り出したか否かを示すのに使用することができる。前記インターフェースデバイスの出力デバイスは、状況をディスプレイ上に表示する有線または無線デバイスであり得る。
【0131】
本発明に従って製造された電気デバイスを衣類に組み込む際は、導電性不織材は、衣類に取り付けられるか、または、衣類に直接的に組み込まれる。例えば、一実施形態では、導電性ウェブ自体が衣料品を構成するのに使用され、任意の所望の目的のためにその衣料品に電気回路を形成するために、超音波処理された領域が使用される。例えば、特定の一実施形態では、衣料品には、濡れ検出デバイスを備えた吸収性物品(おむつやトレーニングパンツなど)が含まれる。
【0132】
さらなる例示目的のために、本発明に従って製造される製品は、温熱療法及び他の低コストの発熱用途のための携帯型デバイスとして使用するために製造された発熱要素であり得る。温熱療法は、痛み、特に筋肉の緊張またはけいれんによる痛みを軽減する。さらに、その他の種類の痛みを伴う患者に対しても役立つ。温熱療法は次のように作用する。(1)皮膚への血流を増加させる。(2)血管を拡張し、局部組織への酸素及び栄養素の搬送量を増加させる。(3)筋弾性を増加させることによって関節の硬さを低減させる。この携帯型デバイスは、使い捨て式の発熱要素と、再使用可能な電池式制御ユニットと、前記発熱要素(パッド)を前記制御ユニットへ接続するための機械的及び/または電気的手段とを含む。
【0133】
本発明に従って発熱製品を作製する際は、適切な抵抗を有する発熱要素を形成及び成形するだけでなく、発熱要素を電源に電気的に接続する電気回路を形成及び作製するのに、超音波エネルギーを使用することができる。
【0134】
少なくとも約5%の炭素繊維、例えば少なくとも約20%の炭素繊維を使用して導電性ウェブを作製するという本発明の技術を用いて作製された発熱要素は、現在市販されている発熱化学反応を利用する製品よりも優れた点が数多くある。本発明の使い捨て式の発熱デバイスの利点は次の通りである。(1)本発明の技術を使用すると、使い捨て式の発熱要素を、化学的に活性化される製品よりも安価に製造することができる。(2)熱量を調節することができる。(3)電池を再充電式または交換式とすることができる。(4)身体の反対側に反射性材料を配置することにより、熱効率を高めることができる。(5)ヒューズリンクを使用することにより、着用者を過熱から保護することができる。
【0135】
加えて、導電性不織材発熱要素を使用し、前記不織材にポリフィルムを積層させることにより、携帯型発熱デバイスを安価に作製すること、及び、携帯型発熱デバイスを様々なサイズ及び形状に容易にカスタマイズすることが可能となる。このような発熱デバイスは、温熱治療や、悪天候下または寒冷気象条件下で人間または動物に熱を与えるために使用することができる。そのような特注製品は、腕、脚、胴、首、毛布に適合するように設計することができ、馬、牛、ウサギ、種々の爬虫類、犬及び猫などの動物のためにも使用することもできる。この技術は、ダイバー用のドライスーツや海難事故のためのレスキュースーツなどの極限環境や、極寒環境での自動車事故などの他の極限状況に用いることができる。また、このコンセプトは、家庭用、医療用、またはホテル用の使い捨て式の発熱バスタオル(heated bath towel)として用いられることもできる。また、この技術は、コート、スキーウエアまたは他の衣類用の使い捨て式の発熱裏地に使用することができる。この導電性不織材ヒーターは、複数層の導電性紙材から構成することにより、低全体抵抗かつ高熱質量のヒーターを作製することができる。さらに、飲料容器などの日常的な商品を加温するための他の低コストな発熱用途が有効である。ユーザは、半耐久性または再使用可能な電源をこれらの態様のうちの任意のものに取り付けて、製品を使用することができる。
【0136】
発熱要素に電力を供給するためには高電流が必要とされるため、電池は充電式であることが理想的である。電力方程式の基礎的検討により、発熱要素の機能性を最適化するための電流、電圧及び抵抗の要件が決定される。電池の理想的な用途は、製造中により多くの処理を必要とすることとなる高価な小型コネクタを最低限しか有さないことである。小型コネクタの代わりに、充電式電池パックを導電性フック材料で包み、発熱要素にループ材料を配置することが推奨される。導電性フックアンドループの表面積をより大きくすると、電源と発熱要素との接続抵抗をより小さくすることができる。
【0137】
図14及び図14Bには、発熱要素の一実施形態がより詳細に示されている。図14Aに示すように、内部では発熱要素は、2つの端子102、104によって電源に接続される巻線コイル状の導電性ウェブ100であり得る。コイル状の構成にする理由は、発熱要素の全域に渡って発熱作用を集中及び分散させるためである。
【0138】
図14Bに示すように、2つの端子102、104は、電源106に適合する取り付け領域を含み得る。必要に応じて、電源の取り付けを容易にするために、端子102及び104を含む取り付け領域を電源106に適合するようにラベル表示することもできる。
【0139】
図14A及び図14Bに示す発熱デバイスを構成する場合、様々な機能のために、不織ウェブ100への超音波エネルギーの適用が使用され得る。例えば、発熱要素の抵抗を増加させるために、電気的発熱要素の製造に少量の超音波エネルギーが使用され得る。抵抗を増加させると、発熱要素をより素早く発熱させることができる。
【0140】
加えて、電源に取り付けるための電気回路を不織ウェブに形成するために非導電性領域を形成するのにも、超音波エネルギーを使用することができる。
【0141】
さらなる別の実施形態では、本発明の技術に従って製造される製品は、放射要素として使用され得る。放射要素は、単純な半波長ダイポールアンテナとして使用することができ、それにより、低コストのデータ伝送システムが可能となる。さらなる態様では、放射要素は、図4に示すユニークな低コストRFIDタグを構成するのに利用可能である。加えて、放射要素は、ユーザ固有データを伝送するために、上述したようなスマートクロージング(smart clothing)に組み込むことができる。導電性ウェブは、放射要素として使用した場合、従来の放射要素として使用される従来の導体と同等の電気特性を提供する。さらに、本発明の技術は、非常に安価な製造を可能にするので、従来の放射要素の代わりに導電性ウェブ素子を使用することにより、現行製品の全体製造コストを減少させることができる。
【0142】
本発明の技術を、紙材、不織材または合成材などの既存の基材に組み込む方法は様々ある。重要なことは、放射要素として機能するのに必要とされる適切な形状/長さの導電性ウェブを作製することである。例えば、導電性材料の適切なサイズ及び形状は、上述したような超音波ボンディング技術を用いて得ることができる。図5を参照して、このツールは、脆弱な導電性繊維材料を破壊するが、裏側の基材は残すような十分なエネルギーをウェブに提供する。このようにして、本発明に従って製造された導電性不織ウェブを超音波ボンディング装置で処理することにより、精密に制御されたサイズ及び形状を有する放射要素を高速度で製造することができる。
【0143】
さらに、導電性材料の細長い一片を基材に「帯状に取り付ける(zoning)」ことにより、必要とされる適切な形状/長さに形成することができる。このことは、ウエット法を用いて導電性材料を基材に接合させることにより実現される。本発明の技術は、湿潤時にも強度が維持されることが知られている。導電性材料は、形成及び圧縮工程中に基材と水素結合を形成することにより、最終的には、乾燥時に基材と結合する。
【0144】
図7に示す半波長ダイポールアンテナの試作品は、信号生成器への接続に必要な既存のアンテナ基材に、2つの同一の導電性不織ウェブ材のストリップを取り付けることにより作製した。導電性材料の形状及びサイズは重要であり、動作周波数帯を適切に選択する必要がある。上述したように、超音波エネルギーを利用して、高速工程において、アンテナのサイズ及び形状を精密に制御することができる。この場合、ダイポールアンテナは、915MHz(中央周波数が902〜928MHzのISMバンド)で放射するように適切に設計される。半波長ダイポールアンテナの有効長さは、915MHzで164mmである。導電性材料から構成した半波長ダイポールアンテナの放射電力を測定するために簡単な試験を実施した。この試験装置は、図8に示すように、アンテナから10dBmの信号を900MHzで伝送するのに使用される信号生成器を含む。スペクトラムアナライザーに接続された900MHzで較正済みのアンテナを使用して、導電性ウェブアンテナから1m離れた位置での受信信号の電力を測定した。較正済みのアンテナで受信した電力は、−29.5dBmと測定され、機能性を示した。900MHzで較正済みの標準的なダイポールアンテナと比較すると、結果は同程度であった。
【0145】
図10を参照して、2つの同一の導電性材料ストリップを既存のRFIDチップに取り付けることにより、機能的なUHF RFIDタグを作製した。上述した実験を一段階進めて、導電性ウェブを使用して作製したRFIDタグの感度を試験した。この導電性ウェブRFIDタグの感度を、正確に1m離間して配置したRFIDリーダアンテナに応答するに必要とされるRFIDタグの最小電力をモニタリングすることにより測定した。導電性ウェブRFIDタグの感度は、−5.1dBmと推定される。これは、市販のRFIDタグと同程度の値である。本発明の技術の導電特性は、アンテナの放射特性の決定において重要な役割を果たす。図9を参照して、UHF RFIDタグとして効果的に使用するためには、導電性材料の導電率は約1000S/mである必要がある。このことは、ウェブに導電性材料を25〜30%の量で組み込むことによって、効果的に達成することができる。このRFIDタグの放射パターンを図10に示す。この特殊なRFIDタグ構造の適切な寸法は、長さ144mm、幅8mmである。
【0146】
本発明の技術を用いて放射要素を作製し、作製した放射要素をスマート繊維に組み込むことにより、スマート繊維から外部受信機へのデータ伝送が可能となる。上述したように、そのようなスマート繊維は、人間や動物から測定した生理学的データを伝送可能なスマート衣類の作製を可能にする。例えば、人間に着用されるスマートシャツは、ユーザの心拍数や体温などを外部受信機へ伝送することができる。導電性ウェブを使用して作製された放射要素(アンテナ)は、ユーザの身体に快適に適合するという柔軟な繊維の有利な点を有するだけでなく、安価かつ耐性を有するので、そのような用途は商業的に実現可能である。加えて、本発明の導電性ウェブは、放射要素としてだけではなく、RFID装置に直接的に組み込むことが可能な電気回路を含むように構成することもできる。前記電気回路は、超音波エネルギーを利用して非導電性領域を形成することにより作製することができる。電気回路は、放射要素として使用される導電性ウェブの一部に形成するか、あるいは、別の材料片として構成することができる。このようにして、電気デバイスを衣類により容易に組み込むことが可能となる。
【0147】
本発明の技術を用いて、特定の周波数で放射される電磁エネルギー(EMI)に対するバリアとしてのユニークな用途が開発された。この製品は、使い捨て式または非使い捨て式であり得る。EMI遮蔽要素は、市販の壁紙と一体化させることができる。さらに、前記遮蔽要素は、デュポン社製のTyvek homewrapなどの建築用断熱材料に組み込むこともできる。前記遮蔽要素は、放射線防護に効果的な衣服の作製にも使用可能である。機能性を確実にするために、現在のEMI遮断技術は高価な開発及び製造過程を必要とするので、前記遮蔽要素は、防護対象の特定タイプの信号に対応するように開発すべきである。本発明の技術は、従来のEMI遮断技術とは異なり、特定の信号を対象とする、低コストで大量に製造可能なユニークな用途を提供する。
【0148】
図11を参照して、用途を実証するために、遮蔽要素の効果を調べるための試験装置が示されている。この試験装置は、一方は受信器として使用され他方は送信機として使用される2つの較正済みのダイポールアンテナからなる。送信アンテナは、900MHz及び10dBmに設定された信号生成器に接続されている。受信アンテナは、送信アンテナから1メートル離間して配置される。アンテナ間にEMI遮蔽要素を配置せずに試験を行い、その後、EMI遮蔽要素を配置してもう一度試験を行った。導電性ウェブは、壁に電気的に接地されており、受信アンテナを伝達信号から遮蔽する。図12及び13には、EMI遮蔽要素を配置しない場合とEMI遮蔽要素を配置した場合の、受信アンテナで測定された電力がそれぞれ示されている。EMI遮蔽要素を配置した場合は、EMI遮蔽要素を配置しない場合よりも、信号が20dB減少した。この値は、EMI遮蔽要素を配置しない場合よりも千倍低い値である。このように、この簡単な実験により、本発明の技術が、EMIシールドとして使用できることが実証された。
【0149】
本発明のさらなる別の実施形態では、導電性不織材料は、スマートパッケージング要素を製造するのに使用され得る。
【0150】
スマートパッケージング要素は、小荷物の取り扱いの全体を通じての状況及び取り扱いをモニタリングするのに使用することができる。さらなる用途では、スマートパッケージング要素は、RFIDアンテナ機能として使用されるように、ダンボール紙などの包装材料に組み込むことができる。導電性ウェブは、従来は不可能または非常に高コストであったパッケージングにおいて良い機会を提供する。スマートパッケージング要素の大部分は、出荷製品の賞味期限を確認するために、食品及び飲料業界で実施されている。しかし、現在のスマートパッケージング要素は、高コストであり、大規模に実施することは非現実的であった。だが、導電性ウェブを使用したスマートパッケージング要素は、使用が容易でありかつ非常に低コストなので、大規模なスマートパッケージングのいくつかの用途を可能にする。
【0151】
本発明の技術に従って製造されたスマートパッケージング要素は、取り扱いの全体を通じて対象物の様々な状態をモニタするために使用するすることができる。例えば、導電性ウェブは、保存中の対象物が、製品の機能またはパッケージング自体の構造的完全体性を損なう可能性のある過湿状態となったか否かを判断するために使用することができる。さらに、導電性ウェブは、パッケージが規定された日まで開封されないことを確認するためのパッケージ保護的シールを作成するために使用することができる。従来の技術は、パッケージの未開封を保障するために特殊な接着テープを用いていたが、RFIDなどの技術を一体的に用いることにより、導電性ウェブは、特定の荷物が開封されたこと及びその時期をその荷物のオーナーに警報することができる。このような技術は、幅広く販売する前の製品配送時に有益であろう。
【0152】
本発明の導電性ウェブ技術を、荷物の梱包材に組み込み、既存のPFIDタグと接続させると、非常に頑強なアンテナとして使用することができる。導電性ウェブを梱包材に一体化させると、PFIDを利用可能な荷物を作成する過程を単純化することができる。従来は、既存のRFIDタグは内臓型アンテナを備える必要があるため、タグのサイズ及び製造コストが増大してしまう。しかし、アンテナとしての役割を果たす導電性ウェブを梱包材に一体化することにより、RFIDタグを内臓型アンテナを備えない簡略な構造にすることができ、かつ、前記RFIDタグを導電性ウェブに接続するだけで機能的RFIDタグを形成することができる。本発明の技術を使用すると、従来のRFID技術と比べて、製造時間、工程及びコストを低減することができる。さらに、少なくとも3%の炭素繊維を含有する導電性ウェブを使用することにより、導電性ウェブが一体化された梱包材は、電気装置を出荷する際に発生する静電気を逐電するのに使用することができる。
【0153】
本発明の上記の及び他の変更形態及び変形形態は、添付の特許請求の範囲により詳細に記載されている本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなしに、当業者によって実行され得る。加えて、本発明の様々な態様は、全体または一部が相互互換的であることを理解されたい。さらに、上述の説明は例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲にさらに記載されている本発明を限定するものではないことは当業者には明らかであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料であって、
炭素繊維を含む導電性繊維を含む第1の繊維と、パルプ繊維、合成繊維またはそれらの混合物を含む第2の繊維とを含有する導電性不織ウェブを含み、
前記導電性繊維が、前記導電性不織ウェブ中に約5重量%ないし約50重量%の量で存在し、かつ
前記導電性不織ウェブが、導電性領域と、超音波処理により形成された非導電性領域とを有することを特徴とする導電性材料。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性材料であって、
前記非導電性領域が、前記導電性領域の抵抗値よりも少なくとも4倍大きい抵抗値を有することを特徴とする導電性材料。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の導電性材料であって、
前記第2の繊維が、パルプ繊維を含むことを特徴とする導電性材料。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載の導電性材料であって、
前記第2の繊維が、熱可塑性高分子から作製された合成繊維を含むことを特徴とする導電性材料。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4に記載の導電性材料であって、
前記導電性領域と前記非導電性領域とによって前記ウェブ中に電気回路が形成されたことを特徴とする導電性材料。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5に記載の導電性材料であって、
第1の導電性ウェブと第2の導電性ウェブとを含み、
前記第1及び第2の導電性ウェブを、前記超音波処理された領域を介して互いに接合させたことを特徴とする導電性材料。
【請求項7】
請求項6に記載の導電性材料であって、
前記超音波処理された領域が、前記非導電性領域の近傍において、前記第1及び第2のウェブの電気的接続を形成することを特徴とする導電性材料。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の導電性材料から構成される電気的スイッチであって、
前記導電性不織ウェブと、該ウェブに対して互いに離間して対向配置された導電性層とを含み、
前記導電性不織ウェブと前記導電性層とを互いに押し付けて接触させたときに、前記導電性不織ウェブと前記導電性層とが互いに電気的接続されるように構成したことを特徴とする電気的スイッチ。
【請求項9】
請求項8に記載の電気的スイッチであって、
前記導電性層が、第2の導電性不織ウェブを含むことを特徴とする電気的スイッチ。
【請求項10】
請求項8に記載の電気的スイッチであって、
前記導電性不織ウェブと前記導電性層との間に非導電性層が配置され、
前記非導電性層が開口部を有し、
前記導電性不織ウェブと前記導電性層とを互いに押し付けて接触させたときに、前記開口部を介して前記導電性不織ウェブと前記導電性層とが互いに電気的接続されるように構成したことを特徴とする電気的スイッチ。
【請求項11】
電気的物品であって、
複数のキーが配された外面と、
前記キーの下側に配置された第1の導電性層と
前記複数のキーのうちの1つのキーを押したときに前記第1の導電性層との間で電気的接続が形成されるようにして、前記第1の導電層に対して離間して配置された第2の導電性層とを含み、
前記第1の導電性層及び前記第2の導電性層を、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の導電性材料から構成したことを特徴とする電気的物品。
【請求項12】
請求項11に記載の電気的物品であって、
前記第1の導電性層と前記第2の導電性層との間に配置される非導電性層をさらに含み、
前記非導電性層が、前記外面に配された前記各キーの位置とそれぞれ対応付けられた複数の開口部を画定することを特徴とする電気的物品。
【請求項13】
請求項12に記載の電気的物品であって、
前記第1の導電性層が導電性不織ウェブからなり、
前記第1の導電性層の表面によって前記外面が画定され、かつ
前記複数のキーを前記第1の導電性層の前記表面に印刷したことを特徴とする電気的物品。
【請求項14】
請求項11に記載の電気的物品であって、
カバー層及び裏当て層をさらに含み、
前記第1の導電性層及び前記第2の導電性層が、前記カバー層と前記裏当て層との間に配置され、
前記カバー層によって、前記複数のキーが配された外面が画定されることを特徴とする電気的物品。
【請求項15】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の導電性材料であって、
前記導電性不織ウェブが炭素繊維及び合成繊維を含有し、
前記導電性不織ウェブがコフォームウェブまたは水流交絡ウェブを含むことを特徴とする導電性材料。
【請求項16】
請求項8に記載の電気的スイッチを備えた衣類。
【請求項17】
請求項8に記載の電気的スイッチを備えた電光表示装置。
【請求項18】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の導電性材料から構成されたダイアポールアンテナを備えたRFID装置。
【請求項19】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の導電性材料を備えた暖房装置。
【請求項1】
導電性材料であって、
炭素繊維を含む導電性繊維を含む第1の繊維と、パルプ繊維、合成繊維またはそれらの混合物を含む第2の繊維とを含有する導電性不織ウェブを含み、
前記導電性繊維が、前記導電性不織ウェブ中に約5重量%ないし約50重量%の量で存在し、かつ
前記導電性不織ウェブが、導電性領域と、超音波処理により形成された非導電性領域とを有することを特徴とする導電性材料。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性材料であって、
前記非導電性領域が、前記導電性領域の抵抗値よりも少なくとも4倍大きい抵抗値を有することを特徴とする導電性材料。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の導電性材料であって、
前記第2の繊維が、パルプ繊維を含むことを特徴とする導電性材料。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載の導電性材料であって、
前記第2の繊維が、熱可塑性高分子から作製された合成繊維を含むことを特徴とする導電性材料。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4に記載の導電性材料であって、
前記導電性領域と前記非導電性領域とによって前記ウェブ中に電気回路が形成されたことを特徴とする導電性材料。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5に記載の導電性材料であって、
第1の導電性ウェブと第2の導電性ウェブとを含み、
前記第1及び第2の導電性ウェブを、前記超音波処理された領域を介して互いに接合させたことを特徴とする導電性材料。
【請求項7】
請求項6に記載の導電性材料であって、
前記超音波処理された領域が、前記非導電性領域の近傍において、前記第1及び第2のウェブの電気的接続を形成することを特徴とする導電性材料。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の導電性材料から構成される電気的スイッチであって、
前記導電性不織ウェブと、該ウェブに対して互いに離間して対向配置された導電性層とを含み、
前記導電性不織ウェブと前記導電性層とを互いに押し付けて接触させたときに、前記導電性不織ウェブと前記導電性層とが互いに電気的接続されるように構成したことを特徴とする電気的スイッチ。
【請求項9】
請求項8に記載の電気的スイッチであって、
前記導電性層が、第2の導電性不織ウェブを含むことを特徴とする電気的スイッチ。
【請求項10】
請求項8に記載の電気的スイッチであって、
前記導電性不織ウェブと前記導電性層との間に非導電性層が配置され、
前記非導電性層が開口部を有し、
前記導電性不織ウェブと前記導電性層とを互いに押し付けて接触させたときに、前記開口部を介して前記導電性不織ウェブと前記導電性層とが互いに電気的接続されるように構成したことを特徴とする電気的スイッチ。
【請求項11】
電気的物品であって、
複数のキーが配された外面と、
前記キーの下側に配置された第1の導電性層と
前記複数のキーのうちの1つのキーを押したときに前記第1の導電性層との間で電気的接続が形成されるようにして、前記第1の導電層に対して離間して配置された第2の導電性層とを含み、
前記第1の導電性層及び前記第2の導電性層を、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の導電性材料から構成したことを特徴とする電気的物品。
【請求項12】
請求項11に記載の電気的物品であって、
前記第1の導電性層と前記第2の導電性層との間に配置される非導電性層をさらに含み、
前記非導電性層が、前記外面に配された前記各キーの位置とそれぞれ対応付けられた複数の開口部を画定することを特徴とする電気的物品。
【請求項13】
請求項12に記載の電気的物品であって、
前記第1の導電性層が導電性不織ウェブからなり、
前記第1の導電性層の表面によって前記外面が画定され、かつ
前記複数のキーを前記第1の導電性層の前記表面に印刷したことを特徴とする電気的物品。
【請求項14】
請求項11に記載の電気的物品であって、
カバー層及び裏当て層をさらに含み、
前記第1の導電性層及び前記第2の導電性層が、前記カバー層と前記裏当て層との間に配置され、
前記カバー層によって、前記複数のキーが配された外面が画定されることを特徴とする電気的物品。
【請求項15】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の導電性材料であって、
前記導電性不織ウェブが炭素繊維及び合成繊維を含有し、
前記導電性不織ウェブがコフォームウェブまたは水流交絡ウェブを含むことを特徴とする導電性材料。
【請求項16】
請求項8に記載の電気的スイッチを備えた衣類。
【請求項17】
請求項8に記載の電気的スイッチを備えた電光表示装置。
【請求項18】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の導電性材料から構成されたダイアポールアンテナを備えたRFID装置。
【請求項19】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の導電性材料を備えた暖房装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2011−522134(P2011−522134A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511154(P2011−511154)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052260
【国際公開番号】WO2009/144678
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(310007106)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052260
【国際公開番号】WO2009/144678
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(310007106)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】
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