説明

電気蓄熱暖房器

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、蓄熱量の上限値を任意に設定できるようにした電気蓄熱暖房器に関する。
【0002】
【従来の技術】深夜電力、融雪電力等の安価な電力を利用してヒータを加熱し蓄熱体に熱を蓄え、その熱で暖房運転時間帯に温風を生じさせて暖房を行なう電気蓄熱暖房器が知られている。この電気蓄熱暖房器は、安い夜間電力料金時間帯等を利用して電気エネルギを熱エネルギに変換する方式であるため、寒冷地などで広く普及している。
【0003】電気蓄熱暖房器は、蓄熱量が過多であれば残った残存する熱量が無駄になり、過少であれば取出す熱量が不足して暖房が中断するため、一般に蓄熱量制御装置を設けて蓄熱量が設定上限に達すると蓄熱用ヒータの通電を止め、設定下限になると再び蓄熱用ヒータに通電して蓄熱量を設定範囲に保つようにしている。
【0004】このような電気蓄熱暖房器の一例を図7に示す。この電気蓄熱暖房器は、暖房器本体の上方に設けられた蓄熱部1とその下方に設けられた送風部2とを備えている。蓄熱部1は蓄熱体3の周囲を断熱材4で囲み、蓄熱体3を加熱するヒータ5を設けて成り、送風部2は暖房器本体の前後面に対向して設けられた吹出口8と吸込口9と送風ファン10とを有している。蓄熱体3は複数個の蓄熱用煉瓦6を多段状に積み重ねられたものから成る。
【0005】送風ファン10により吸込口9から吸込まれた空気はダンパ11により風量を調節して送風路7へ送られ、蓄熱体3と接触して暖められ出口側へ送られダンパ11から直接送られて来る空気と混合して温度調節されて、必要な場合は補助ヒータ13により加熱され吹出口8から温風を供給する。12は送風ファン10に設けられた障壁であり、空気の送る方向を変えるためのものである。
【0006】上記蓄熱暖房器による蓄熱は、図8の電源回路をコントローラ14により制御して行なわれる。蓄熱ヒータ5への通電によりヒータ5が蓄熱体3を加熱し温度上昇すると蓄熱コントロール用の温度センサ18により温度が検出され、その温度が動作しきい値温度T0 を越えるとコントローラ14からの信号により蓄熱リレー17が動作してヒータ5への通電を遮断する。なお、16は電源部であり、商用電源が用いられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記蓄熱暖房器は冬季の最も条件が厳しい状態で最大限の熱量を蓄熱できるよう設計されるのが一般的である。蓄熱体の温度は設定温度が、例えば700℃まで上昇するとその時の温度センサは300℃となり、この温度で蓄熱用ヒータの通電を遮断し、自然放熱で蓄熱体温度が下がれば再びヒータを通電加熱するが、このような蓄熱体と温度センサの温度特性関係は、各個々の蓄熱暖房器によって一定の状態に定められている。
【0008】しかし、上記蓄熱暖房器を使用する場合、季節によっては暖房は必要であるが外気温度は真冬の時より温かいという場合がある。このような場合でも上記蓄熱暖房器では温度センサの設定温度で決まる最大の蓄熱を行うから、暖房器に貯えられる蓄熱量は既に必要がない時でも常に最大の蓄熱を行うため、高い外気温に見合う必要量だけ蓄熱することができない。これは蓄熱体と温度センサの温度特性関係が一定であり、その関係を変えることができないためである。
【0009】このような温度特性関係を変えるためには、温度センサの取付方法として蓄熱体温度がより低い時に温度センサの設定温度となるような場所に移動できるような取付構造とするか、温度センサ自体の動作設定温度を可変とすることができるような特殊な温度センサを使用するしかなかった、しかし、前者は構造が複雑となり可動部も存在するため、その時々によって状態も変化すると考えられ、信頼性に乏しく、かつ高価となる。後者も特殊なものであるためセンサ自体のコストが高価となる。
【0010】又、上記蓄熱暖房器は全ての機能が本体内に一体に収納されているため、例えば床下暖房などに用いる際本体を居室外の床下に設置すると、仮りに蓄熱量を電源を遮断することにより真冬時より少し高い外気温に見合う蓄熱量として手動操作により電力が必要以上に蓄熱されるのを回避しようとすれば、その都度床下にその操作のため下りる必要があり、極めて煩わしい。従って、結局上記のような中間的な蓄熱量を得ることは実生活の中では仲々実現しない。
【0011】この発明は、上記の課題を簡単な回路を付設することにより解決した電気蓄熱暖房器を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題を解決する手段として、蓄熱ヒータに接して蓄熱体を設け、蓄熱体の温度を検出するように蓄熱体の周辺に設けた温度センサで蓄熱ヒータへの通電を制御して加熱した蓄熱体に接する空気流を介して暖房する電気蓄熱暖房器において、上記温度センサの周辺にこの温度センサを加的に加熱するセンサ用ヒータを設し、このセンサ用ヒータの付加的な加熱により蓄熱体の蓄熱温度の設定を可変とし、上記センサ用ヒータにその加熱量を調整する温度設定手段を接続し、蓄熱ヒータの設定温度を任意に設定するようにした電気蓄熱暖房器の構成としたものである。
【0013】かかる電気蓄熱暖房器によれば、センサ用ヒータによる加熱をしない場合は、従来と同様に最大蓄熱量が得られる設定温度まで蓄熱体に夜間電力を利用して蓄熱される。しかし、暖房負荷が減少し、最大蓄熱量が不要な場合は、センサ用ヒータを作動させ温度センサを付加的に加熱すると蓄熱体の蓄熱量を任意の状態に設定できる。温度センサは蓄熱ヒータの温度を設定しているが、蓄熱ヒータとは別のセンサ用ヒータにより付加的加熱されるとその周辺温度が早く上昇し、温度センサに対して決められている設定温度に早く達するからである。この場合温度設定手段により蓄熱ヒータの設定温度は任意に設定される。
【0014】
【実施の形態】以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は実施形態の蓄熱暖房器の電源回路を示す。この実施形態の蓄熱暖房器もその基本構造は図7に示した従来例と同じであり説明は省略する。ここでは図8の従来例の電源回路と異なる部分を中心に説明する。図1において温度センサ18は液膨センサが用いられている。15は駆動回路、10Mは送風ファン10用のモータであり、その他従来例と同じ部材には同じ符号を付している。
【0015】この温度センサ18は、測定温度を電気信号に変換する一般的な温度センサではなく、図2に示すように、一端を閉じた管の内部に封入された液体18aの膨張、収縮により小径管の端に設けたピストン18bを移動させてピストン18bの機械的な動作によりスイッチ17を直接ON、OFFする形式のものである。なお、この温度センサ18は、図示していないが、通風路7の外側に設けられている断熱材中に挿入される。
【0016】このため、温度センサ18の感熱温度は、例えば蓄熱体温度が700℃の時300℃というように、蓄熱体温度よりはるかに低く、従って耐熱温度の低いもので高精度のものを用いることができる。この場合、蓄熱体温度が蓄熱ヒータ5により変化する温度特性に対し、温度センサ18の温度特性を予め測定して所望の関係になるように相互の特性を選定しておく。
【0017】この実施形態の蓄熱暖房器は、上記温度センサ18の周辺に蓄熱ヒータ5による加熱とは別に加熱するためのセンサ用ヒータ20を設け、そのセンサ用ヒータ20による加熱温度を温度設定手段22であるつまみによって任意に設定できるようにしている。なお、図示の例では、温度設定手段22は蓄熱暖房器を床下暖房などのように居室外に設けた場合に、遠隔操作できるように遠隔配線により接続されている。
【0018】上記センサ用ヒータ20による加熱は、後で説明するように、蓄熱ヒータ5による加熱で上昇する温度センサの測定温度を付加的に加熱させることによって蓄熱ヒータ5による蓄熱量を任意に設定できるようにするためである。従って、図示の例では温度設定手段22は居室内に遠隔操作できるように設けているが、蓄熱暖房器も居室内に置き、コントローラ14内に温度設定手段22を設けて居室内で直接蓄熱量を任意に設定するのに用いてもよい。
【0019】上記センサ用ヒータ20は温度センサ18の周辺に設置するものとしているが、その設置形式として図3の(a)、(b)に示すようにセンサ用ヒータ20を紐状にして温度センサ18の外周に巻き付けるようにしてもよいし、あるいは筒体23内にコイルヒータを設けた筒状ヒータ20’を用いてその内側に温度センサ18を設けるようにしてもよい。又、筒状ヒータの代りに筒状の抵抗器を用いると安価に実現可能となる。
【0020】上記のように構成した蓄熱暖房器の作用は次の通りである。コントローラ14により電源を投入した後の基本動作は従来例と同じであるから、この実施形態特有の作用を中心に説明する。図4の(b)に示すように、従来例の蓄熱暖房器では、例えば電源投入された後安い夜間電力で蓄熱体に蓄熱し、その設定温度が700℃であれば、その設定温度に達した状態で8時間(Hr)を経過すると温度センサ18の測定温度が300℃に達していなくても蓄熱が停止される。
【0021】このように、従来の場合は電源を投入した後は必らず設定温度まで温度上昇しその設定温度に対応する蓄熱が行われるが、この実施形態では上記設定温度を必要に応じて任意の温度に設定することができる。蓄熱ヒータ5の加熱による温度上昇特性は設計時に所定の特性を定められているため、その特性自体を変えることはできない。しかし、センサ用ヒータ20の加熱により蓄熱ヒータ5のみによる加熱時よりも温度センサ18の周辺温度の上昇が早くなる。
【0022】従って、センサ用ヒータ20による加熱の度合いを種々に設定すれば、図4(a)に示すように、温度センサ18の測定温度が300℃に達するまでの時間が早くなり、その温度になれば蓄熱ヒータ5の加熱は温度センサ18の作用により停止され、700℃の設定温度以下の任意の温度で蓄熱ヒータ5による加熱は停止される。
【0023】このような任意の温度で蓄熱ヒータ5による加熱を停止させようとする場合、予めセンサ用ヒータ20による加熱で温度センサの測定温度の上昇特性が、例えば図4の(a)の(イ)、(ロ)、(ハ)のいずれになるかを測定し、温度設定手段22のつまみによる調整をすることにより(イ)、(ロ)、(ハ)のいずれかの特性を選択して設定温度を所望の温度とすることができる。
【0024】以上のように設定温度を最高蓄熱温度でなくそれ以下の任意の温度に設定できれば、例えば暖房は必要であるが最高蓄熱温度という程蓄熱温度が高くなくても十分暖房できるような時期には、不必要な蓄熱をすることなく中間の蓄熱温度を設定して暖房することが可能となり、省エネルギ化を図ることができる。
【0025】図5は実施形態の蓄熱暖房器による実測データである。上述した実施形態のセンサ用ヒータ20で加熱して温度センサ18を加熱した場合に蓄熱ヒータ5が4時間弱で通電を遮断され、温度下降する状態変化が示されている。この実測例では温度センサ18の設定温度は約380℃に設定されている。
【0026】図6は比較例としてセンサ用ヒータによる加熱をしない従来例での実測データである。この実測例では蓄熱ヒータ5の設定温度は約800℃、温度センサ18の設定温度は約350℃に設定されている。
【0027】なお、上記実施形態では遠隔操作できるよう温度設定手段22を設けているが、居室内に設定される蓄熱暖房器に設けてもよく、その場合は居室内で設定温度を任意に設定できる。又、温度センサ18は液膨形式を用いたが、従来のように測定温度情報を電気信号に変換し、その信号で電源回路のON、OFFを制御する形式のものであってもよい。
【0028】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、この発明の電気蓄熱暖房器は蓄熱体の蓄熱ヒータの周辺温度に応動する温度センサの周辺にこのセンサを付加的に加熱するセンサ用ヒータを設けて蓄熱ヒータのみによる加熱に加えてセンサ用ヒータでも付加的に加熱できるようにし、温度センサの設定温度への到達を早くして蓄熱体の蓄熱温度の設定を温度設定手段により任意に設定できるようにしたから、暖房は必要であるが暖房負荷は小さくてよい場合に蓄熱体への蓄熱量をその少し高い外気温に見合う蓄熱量となるように設定でき、不必要な蓄熱をしない省エネルギ化を図ることができる電気蓄熱暖房器が得られ、経済的効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の電気蓄熱暖房器の電源回路図
【図2】温度センサの構成図
【図3】温度センサの他の実施形態を示す図
【図4】作用の説明図
【図5】実施形態の蓄熱暖房器の測定データを示す図
【図6】従来例の蓄熱暖房器の測定データを示す図
【図7】従来例の電気蓄熱暖房器の構成図
【図8】従来例の電気蓄熱暖房器の電源回路図
【符号の説明】
1 蓄熱部
2 送風部
3 蓄熱体
5 蓄熱ヒータ
8 吹出口
9 吸込口
10 送風ファン
14 コントローラ
17 リレー
18 温度センサ
20 センサ用ヒータ
22 温度設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 蓄熱用ヒータに接して蓄熱体を設け、熱体の温度を検出するように蓄熱体の周辺に設けた温度センサで蓄熱ヒータへの通電を制御して加熱した蓄熱体に接する空気流を介して暖房する電気蓄熱暖房器において、上記温度センサの周辺にこの温度センサを付加的に加熱するセンサ用ヒータを設置し、このセンサ用ヒータの付加的な加熱により蓄熱体の蓄熱温度の設定を可変とし、上記センサ用ヒータにその加熱量を調整する温度設定手段を接続し、蓄熱ヒータの設定温度を任意に設定するようにしたことを特徴とする電気蓄熱暖房器。

【請求項2】
前記センサ用ヒータとして温度センサの周囲にコード状のヒータを巻き付けたことを特徴とする請求項1に記載の電気蓄熱暖房器。

【請求項3】
前記センサ用ヒータとして筒体の中にヒータを設けた筒状ヒータを用い、温度センサをこの筒状ヒータ内に設けたことを特徴とする請求項1に記載の電気蓄熱暖房器。

【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図6】
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【特許番号】特許第3143615号(P3143615)
【登録日】平成12年12月22日(2000.12.22)
【発行日】平成13年3月7日(2001.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−175824
【出願日】平成11年6月22日(1999.6.22)
【公開番号】特開2001−4160(P2001−4160A)
【公開日】平成13年1月12日(2001.1.12)
【審査請求日】平成11年9月20日(1999.9.20)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000241957)北海道電力株式会社 (78)
【出願人】(592048040)北海道電機株式会社 (5)
【参考文献】
【文献】特開 平6−193896(JP,A)