説明

電気計器用自動結線装置

【課題】電気計器の突起物と移動体とが干渉することを防止し、様々な種類の電気計器の性能試験を効率よく実施可能な電気計器用自動結線装置を提供する。
【解決手段】電気計器用自動結線装置100は、各々が平行に配置された一対の端子板26a〜26dからなる電流測定端子12a〜12dを有する装置本体10と、装置本体10に対して電気計器50の装着方向に移動自在に設けられ、一対のスプリング体32a〜32dを有する移動体30とを備えている。移動体30の一対のスプリング体32a〜32dは、係合位置において一対の端子板26a〜26d外方に嵌め込まれて押圧し、待機位置において一対の端子板26a〜26dから外れる。移動体30が待機位置から係合位置に移動する際、一対のスプリング体32a〜32dは、一対の端子板26a〜26dの本体部29b側方を通過した後、当接部29aに達してこれを押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボックスと、ボックスの一面から外方へ突出する電流端子および電圧端子とを有する電気計器が装着され、当該電気計器を試験装置に接続することにより性能試験を行なう電気計器用自動結線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、試験装置を用いて、電力量計が所定の規格を満たしているかを検査する性能試験が行なわれている。このような性能試験を行なう場合、測定する電力量計毎に、試験装置の電源側の接続導線と電力量計の各外部端子とを結線する必要がある。この場合、試験装置の電源側の接続導線と電力量計の各外部端子とは、例えば検定試験台に設けられた結線器を介して互いに接続される。
【0003】
ボックスと、ボックスの一面から外方へ突出する外部端子を有する電力量計と、試験装置の電源側とを自動で結線する自動結線器として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−38767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された自動結線器においては、移動体が電気計器の背面に対して平行に移動し、これにより、移動体の一対のスプリング体が、電流測定端子の一対の端子板の外方に嵌め込まれるようになっている。しかしながら、電気計器の種類によっては、例えば背面の周囲に囲い等の突起物が設けられているものがあり、このような電気計器を上記自動結線器に装着した場合、電気計器の背面に平行に移動してきた移動体と、電気計器の突起物とが干渉してしまうという問題がある。
【0006】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、電気計器の突起物と移動体とが干渉することを防止し、様々な種類の電気計器の性能試験を効率よく実施することが可能な電気計器用自動結線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ボックスと、ボックスの一面から外方へ突出する電流端子および電圧端子とを有する電気計器が装着され、当該電気計器を試験装置に接続することにより性能試験を行なう電気計器用自動結線装置において、各々が平行に配置された一対の端子板からなり、電流端子に接続される電流測定端子を有する装置本体と、装置本体に対して電気計器の装着方向に移動自在に設けられ、各電流測定端子の一対の端子板外方に嵌め込まれる一対のスプリング体を有する移動体とを備え、移動体は、装置本体に対して係合位置と待機位置とをとり、移動体の一対のスプリング体は、係合位置において、対応する電流測定端子の一対の端子板外方に嵌め込まれて一対の端子板を電気計器の電流端子に対して押圧し、待機位置において、移動体の一対のスプリング体は、対応する電流測定端子の一対の端子板から外れ、一対の端子板は、各々基端側から先端側へ延びる本体部と、先端側において本体部から側方に突出する当接部とを有し、移動体が待機位置から係合位置に移動する際、一対のスプリング体は、一対の端子板の本体部側方を通過した後、一対の端子板の先端側に位置する当接部に達して当該当接部を押圧することを特徴とする電気計器用自動結線装置である。
【0008】
本発明は、移動体に、電圧端子に接続される電圧測定端子が設けられていることを特徴とする電気計器用自動結線装置である。
【0009】
本発明は、装置本体は、固定板と、固定板に固定され、移動体を電気計器の装着方向に移動させる進退部材とを有し、進退部材は、移動体を前方に移動することにより移動体が係合位置をとるようにし、移動体を後方に移動することにより移動体が待機位置をとるようにすることを特徴とする電気計器用自動結線装置である。
【0010】
本発明は、移動体は、スプリング体を保持するスプリングホルダを有し、スプリング体は、両端がスプリングホルダに取り付けられた湾曲した板バネからなることを特徴とする電気計器用自動結線装置である。
【0011】
本発明は、板バネからなるスプリング体は、電気計器の電流端子に接触する頂部を有し、この頂部は、スプリング体が電気計器の電流端子に接触していない状態で、スプリング体の側方から見てスプリング体の中心より前方に位置していることを特徴とする電気計器用自動結線装置である。
【0012】
本発明は、電気計器は、単相2線式、単相3線式、三相3線式、または三相4線式の電気計器からなることを特徴とする電気計器用自動結線装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一対の端子板は、各々基端側から先端側へ延びる本体部と、先端側において本体部から側方に突出する当接部とを有し、移動体が待機位置から係合位置に移動する際、一対のスプリング体は、一対の端子板の本体部側方を通過した後、一対の端子板の先端側に位置する当接部に達して当該当接部を押圧する。このことにより、電気計器の性能試験を行なう際、電気計器の突起物と移動体とが干渉することがなく、電気計器と試験装置の電源側とを自動で結線することができる。また、自動結線装置の内部空間を効率的に用いることができるので、装置全体の大きさをコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】性能試験を行なう電気計器を背面側から見た斜視図。
【図2】移動体が待機位置にある場合における、本発明の一実施の形態による電気計器用自動結線装置を示す斜視図。
【図3】移動体が待機位置にある場合における、本発明の一実施の形態による電気計器用自動結線装置を示す正面図(図2のIII方向矢視図)。
【図4】移動体が待機位置にある場合における、本発明の一実施の形態による電気計器用自動結線装置を示す平面図(図2のIV方向矢視図)。
【図5】移動体が待機位置にある場合における、本発明の一実施の形態による電気計器用自動結線装置を示す側面図(図2のV方向矢視図)。
【図6】移動体が係合位置にある場合における、本発明の一実施の形態による電気計器用自動結線装置を示す正面図(図3に対応する図)。
【図7】移動体が係合位置にある場合における、本発明の一実施の形態による電気計器用自動結線装置を示す平面図(図4に対応する図)。
【図8】移動体が係合位置にある場合における、本発明の一実施の形態による電気計器用自動結線装置を示す側面図(図5に対応する図)。
【図9】電流測定端子の一対の端子板を示す斜視図。
【図10】移動体の一対のスプリング体を示す側面図。
【図11】電流測定端子の一対の端子板の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、図1乃至図11を参照して説明する。なお、以下においては、図1乃至図11に示すようにZ軸正方向が鉛直方向上方を向いているものとして説明するが、これに限られるものではない。例えば、Y軸負方向が鉛直方向上方を向いていても良い。
【0016】
電気計器の構成
まず、図1により、本実施の形態による電気計器用自動結線装置を用いて性能試験を行なう電気計器の概略について説明する。
【0017】
図1に示す電気計器50は、例えば電力を積算して計量する電力量計からなっている。この電気計器50は、略直方体形状のボックス51と、ボックス51の一面(背面)51aから外方へ突出する4本の平面略U字形状からなる電流端子52a〜52dと、ボックス51の背面51aに設けられた3個の電圧端子53a〜53cとを有している。
【0018】
このうち4本の電流端子52a〜52dは、それぞれ、1S端子52a、3S端子52b、3L端子52c、および1L端子52dから構成されており、横方向に一直線状に並んで配置されている。
【0019】
また3個の電圧端子53a〜53cは、それぞれ、P1端子53a、P3端子53b、およびP2端子53cから構成されており、電流端子52a〜52dより下方の位置において、横方向に並んで配置されている。なお、ボックス51の背面51aであって、電流端子52a〜52dより上方の位置には、2本の嵌合端子54が突設されている。
【0020】
ボックス51の背面51aの下部外周には、囲い部材55が設けられている。囲い部材55は、底面55aと、底面55aの両側に位置する一対の側面55b、55cとを有している。
【0021】
電気計器用自動結線装置の構成
次に、図2乃至図8により、本実施の形態による電気計器用自動結線装置の概略について説明する。なお、図2乃至図8のうち、図2乃至図5は、それぞれ移動体30が待機位置にあり、電気計器50が装着されていない状態を示しており、図6乃至図8は、それぞれ移動体30が係合位置にあり、電気計器50が装着された状態を示している。
【0022】
図2乃至図8に示す電気計器用自動結線装置100は、上述した電気計器50が装着され、当該電気計器50を図示しない試験装置に接続することにより、電気計器50の性能試験を行なうものである。このような電気計器用自動結線装置100は、固定された装置本体10と、装置本体10に対して電気計器50の装着方向(Y軸方向)に移動自在に設けられた移動体30とを備えている。
【0023】
このうち装置本体10は、水平方向に延びる固定板15と、固定板15の前方(Y軸負方向)に連結された底面板41とを有している。また、固定板15上には、移動体30を電気計器50の装着方向(Y軸方向)に移動させる、例えばエアシリンダからなる進退部材19が固定されている。さらに、底面板41上に、移動体30を電気計器50の装着方向(Y軸方向)に沿って案内する一対のガイドレール(案内部材)42が設けられている。
【0024】
ところで、装置本体10は、電気計器50の電流端子52a〜52dにそれぞれ接続される電流測定端子12a〜12dを有している。電流測定端子12a〜12dは、各々が平行に配置されたL字状の一対の端子板26a〜26dからなっている。各電流測定端子12a〜12dの端子板26a〜26dは、それぞれ水平面(XY平面)に対して平行に配置されている。また、各電流測定端子12a〜12dは、それぞれ電気計器50側(Y軸負方向側)を向いて配置されている。
【0025】
電流測定端子12a〜12dは、電気計器50の1S端子52aに接続される1S用測定端子12aと、3S端子52bに接続される3S用測定端子12bと、3L端子52cに接続される3L用測定端子12cと、1L端子52dに接続される1L用測定端子12dとからなっている。これら電流測定端子12a〜12dは、それぞれ対応する金属製の接点ベース21a〜21dに連結されており、各接点ベース21a〜21dは、上述した固定板15上に連結されている。
【0026】
さらに接点ベース21a〜21dに、それぞれ電流用接続導線23a〜23dが接続されている(図4参照)。そして各電流測定端子12a〜12dは、対応する接点ベース21a〜21dおよび電流用接続導線23a〜23dを順次介して、図示しない試験装置に電気的に接続されている。
【0027】
本実施の形態において、一対の端子板26a〜26dは、各々基端側から先端側へ延びる本体部29bと、先端側において本体部から側方に突出する当接部29aとを有している。各端子板26a〜26dは、平板状であり、それぞれ平面L字形状をなしている(図2、図4および図7参照)。なお、端子板26a〜26dの詳細については後述する。
【0028】
一方、移動体30は、水平方向に延びる押圧ブロック45と、押圧ブロック45の前面側に設けられたスプリングホルダ33a〜33fとを有している。このうち押圧ブロック45は、一対のバー43および基端ブロック44を介して進退部材19の軸19aに連結されている。
【0029】
また、各スプリングホルダ33a〜33fには、スプリング体32a〜32dが保持されている。各スプリング体32a〜32dは、それぞれ対をなしており、一対のスプリング体32a〜32dは各々互いに平行に配置されている。この一対のスプリング体32a〜32dは、移動体30が係合位置をとる際、それぞれ各電流測定端子12a〜12dの一対の端子板26a〜26d外方に嵌め込まれるようになっている(図6および図8参照)。
【0030】
なお、図3および図6に示すように、スプリング体32a〜32dのうち、一対のスプリング体32aは、スプリングホルダ33a、33bにそれぞれ保持され、一対のスプリング体32bは、スプリングホルダ33c、33dにそれぞれ保持され、一対のスプリング体32cは、スプリングホルダ33c、33dにそれぞれ保持され、かつ、一対のスプリング体32dは、スプリングホルダ33e、33fにそれぞれ保持されている。
【0031】
また押圧ブロック45の下側両端部には、それぞれ端部ブロック47が設けられており、各端部ブロック47は、それぞれ摺動体46を介してガイドレール42に摺動自在に取り付けられている。
【0032】
また、スプリングホルダ33b、33dおよび端子ホルダ48には、それぞれ電圧測定端子13a〜13cが設けられている。各電圧測定端子13a〜13cは、移動体30が係合位置をとる際、電気計器50の対応する電圧端子53a〜53cに当接して接続される(図8参照)。これら電圧測定端子13a〜13cは、それぞれ電気計器50側(Y軸負方向側)を向いて配置されている。なお、端子ホルダ48は、スプリングホルダ33d、33f間において、押圧ブロック45前面側に設けられている。
【0033】
これら電圧測定端子13a〜13cは、電気計器50のP1端子53aに接続されるP1用測定端子13aと、P3端子53bに接続されるP3用測定端子13bと、P2端子53cに接続されるP2用測定端子13cとからなっている。各電圧測定端子13a〜13cは、バネ力等によって電気計器50側(Y軸負方向側)に付勢されており、それぞれスプリングホルダ33b、33dおよび端子ホルダ48から電気計器50側に向けてわずかに突出している。
【0034】
また図4および図7に示すように、電圧測定端子13a〜13cには、それぞれ電圧用接続導線24a〜24cが接続されている。そして電圧測定端子13a〜13cは、電圧用接続導線24a〜24cを介して、図示しない試験装置に電気的に接続されている。
【0035】
このような構成からなる移動体30は、進退部材19の伸縮動作により、一体となって移動し、装置本体10に対して係合位置(図6乃至図8参照)と待機位置(図2乃至図5参照)とをとるようになっている。
【0036】
すなわち進退部材19が縮退している場合、移動体30は後方(Y軸正方向)に位置しており、移動体30は待機位置をとる(図2乃至図5)。この待機位置において、移動体30の一対のスプリング体32a〜32dは、対応する電流測定端子12a〜12dの一対の端子板26a〜26dから外れている。同様に、移動体30の電圧測定端子13a〜13cは、対応する電圧端子53a〜53cから外れている。
【0037】
これに対して、進退部材19を伸長させた場合、移動体30が前方(Y軸負方向)に移動し、移動体30が係合位置に移動する(図6乃至図8)。この際、一対のスプリング体32a〜32dは、一対の端子板26a〜26dの本体部29b側方を通過し、一対の端子板26a〜26dの先端側に位置する当接部29aに達する。この係合位置において、移動体30の一対のスプリング体32a〜32dは、対応する電流測定端子12a〜12dの一対の端子板26a〜26d外方に嵌め込まれ、一対の端子板26a〜26dの当接部29aを電流端子52a〜52dに対して上下から押圧する。
【0038】
なお、移動体30を構成する、スプリングホルダ33a〜33f、押圧ブロック45、端部ブロック47および端子ホルダ48は、一体化した部材から構成されていても良い。この場合、スプリングホルダ33a〜33f、押圧ブロック45、端部ブロック47および端子ホルダ48は、合成樹脂などの非導電性材料からなっていることが好ましい。
【0039】
次に、図9により、電流測定端子の一対の端子板の構成について詳細に説明する。図9は、一対の端子板を示す斜視図である。以下、1S端子52aに対応する電流測定端子12aについて説明するが、他の電流測定端子12b〜12dについても、その構成は略同様である。
【0040】
上述したように、各端子板26aは、それぞれ基端側(Y軸正方向側)から先端側(Y軸負方向側)へ延びる細長い本体部29bと、本体部29bに連結され、先端側において本体部29bから側方に突出する当接部29aとを有するL字形状をなしている。このように各端子板26aの形状をL字状としたことにより、本体部29bの基端側の側方(図9においては本体部29bの手前側)に、スプリング体32aが通過するための空間が形成される。
【0041】
また、当接部29aの先端側(Y軸負方向側)には、当接部29aの幅方向に沿って第1傾斜面61が形成されている。この第1傾斜面61は、電気計器50を電気計器用自動結線装置100に装着する際、一対の端子板26a間に1S端子52aを挿入しやすくするためのものである。
【0042】
さらに、当接部29aの基端側(Y軸正方向側)には、当接部29aの幅方向に沿って第2傾斜面62が形成されている。この第2傾斜面62は、移動体30が待機位置から係合位置に移動する際、その上をスプリング体32aが摺動するものである。また、本体部29bには、接点ベース21aに取り付けるためのねじを挿入する孔64が穿設されている。
【0043】
このような端子板26aは、例えば銅または銅合金等の金属からなっていても良く、さらにその表面に金めっき等の表面処理が施されていても良い。
【0044】
なお、図9において、各端子板26aは平面L字形状からなっているが、これに限られるものではない。例えば、図11に示すように、各端子板26aは平面クランク形状からなっていても良い。図11において、各端子板26aは、それぞれ基端側(Y軸正方向側)から先端側(Y軸負方向側)へ延びる細長い本体部29bと、本体部29bに連結され、先端側において本体部29bから側方に突出する当接部29aとを有し、本体部29bの先端側には切欠部65が形成されている。装着する電気計器50によっては電流端子52aの近傍に突起が設けられているものがあり、このような切欠部65を設けることにより、電気計器50の突起が各端子板26aと干渉することを防止することができる。
【0045】
次に、図10により、スプリング体の構成について詳細に説明する。図10は、スプリング体を示す側面図である。以下、1S端子52aに対応するスプリング体32aについて説明するが、他のスプリング体32b〜32dについてもその構成は同様である。
【0046】
図10に示すように、スプリング体32aは、湾曲したステンレス鋼等の板バネからなるとともに、その両端がそれぞれスプリングホルダ33a、33bの取付溝35内に取り付けられている。
【0047】
また、板バネからなるスプリング体32aは、それぞれ取付溝35内に挿入される平坦部67aと、平坦部67a間に位置するバネ本体部67bとを有している。このうちバネ本体部67bの頂点に、電気計器50の電流端子52aに接触する頂部67cが形成されている。この頂部67cは、スプリング体32aが電流端子52aに接触していない状態で(すなわち待機位置において)、スプリング体32aの側方から見てスプリング体32aの中心線CLより前方(Y軸負方向側)に位置している。
【0048】
このように構成することにより、移動体30が待機位置から係合位置まで移動する際、スプリング体32aの広い部分を端子板26aの当接部29aに摺接させることができる。これにより、スプリング体32aと電流端子52aとをより確実に接触させることができる。
【0049】
本実施の形態の作用
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0050】
まず、図示しないスイッチを予め待機位置側に切り換えることにより、進退部材19を縮退させ、移動体30を後方(Y軸正方向)に移動させて待機位置としておく(図2乃至図5)。
【0051】
次に、性能試験を行なう電気計器50を電気計器用自動結線装置100に対して装着し、囲い部材55が底面板41に当接するまで、電気計器50を装置本体10に対して後方に押し込む。
【0052】
この際、電気計器50の各電流端子52a〜52dは、それぞれ対応する電流測定端子12a〜12dの一対の端子板26a〜26d間に配置される。この場合、電流端子52a〜52dと一対の端子板26a〜26dとは、それぞれ互いに上下方向にわずかに離間しているので、電流端子52a〜52dと各一対の端子板26a〜26dとの間は、まだ電気的に接続されていない。
【0053】
次に、図示しないスイッチを係合位置側に切り換えることにより、進退部材19を伸長させる。このとき移動体30は、ガイドレール42に案内されて、後方(Y軸正方向)から前方(Y軸負方向)に向けて移動して係合位置をとる(図6乃至図8)。
【0054】
この間、移動体30のスプリングホルダ33a〜33fおよび一対のスプリング体32a〜32dは、一体となって装置本体10に対して前方に移動する。このとき、一対のスプリング体32a〜32dは、対応する電流測定端子12a〜12dの一対の端子板26a〜26dの本体部29b側方を通過し、その後、一対の端子板26a〜26dの当接部29aに達する。さらに、一対のスプリング体32a〜32dは、当接部29aの第2傾斜面62(図9参照)に案内されて、当接部29a上を摺動しながらこの当接部29aを押圧する。
【0055】
その後、一対のスプリング体32a〜32dは、各一対の端子板26a〜26dの当接部29a外方にしっかりと嵌め込まれ、一対の端子板26a〜26dを、電流端子52a〜52dを挟んだ状態で上下から押圧する。これにより、一対の端子板26a〜26dと、対応する電流端子52a〜52dとが確実に接続される。
【0056】
同時に、移動体30の電圧測定端子13a〜13cも装置本体10に対して前方(Y軸負方向)に移動し、対応する電気計器50の各電圧端子53a〜53cに対して当接して接触する(図8参照)。これにより、各電圧端子53a〜53cと各電圧測定端子13a〜13cとが互いに電気的に接続される。
【0057】
なお、一般に電気計器50の電圧測定端子13a〜13cを流れる電流は、電流測定端子12a〜12dを流れる電流と比べて小さい。このため、各電圧測定端子13a〜13cを各電圧端子53a〜53cに当接させるだけで、各電圧測定端子13a〜13cと各電圧端子53a〜53cとを十分に電気的に接続することができる。
【0058】
このようにして、電気計器用自動結線装置100を介して、電気計器50と図示しない試験装置の電源側とが結線される。その後、電流測定端子12a〜12dおよび電圧測定端子13a〜13cを介して、試験装置から電気計器50に電流を流すことにより、電気計器50の性能試験を行なう。
【0059】
電気計器50の性能試験が終了した後、図示しないスイッチを待機位置側に切り換える。これにより、進退部材19を縮退させ、移動体30を後方(Y軸正方向)に移動する。次に、電気計器用自動結線装置100から電気計器50を取り外す。その後、性能試験を行なう他の電気計器50を、上述した方法と同様にして電気計器用自動結線装置100に装着し(電気計器50を掛け替える)、次の性能試験を行なう。
【0060】
このように、本実施の形態によれば、ボックス51と、ボックス51の背面51aから外方へ突出する電流端子52a〜52dおよび電圧端子53a〜53cとを有する電気計器50の性能試験を行なう際、複数の電気計器50を順番に容易に掛け替えることができ、効率よく性能試験を実施することができる。
【0061】
とりわけ本実施の形態によれば、一対の端子板26a〜26dは、各々基端側から先端側へ延びる本体部29bと、先端側において本体部29bから側方に突出する当接部29aとを有している。また、移動体30が待機位置から係合位置に移動する際、一対のスプリング体32a〜32dは、一対の端子板26a〜26dの本体部29b側方を通過した後、一対の端子板26a〜26dの先端側に位置する当接部29aに達して当該当接部29aを押圧する。
【0062】
このことにより、電気計器50の性能試験を行なう際、電気計器50の突起物(例えば囲い部材55)と移動体30とが干渉することがなく、電気計器50と試験装置の電源側とを自動で結線することができる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、電気計器用自動結線装置100の内部空間(例えば底面板41上の空間)を効率的に利用することができるので、装置全体の大きさをコンパクトに構成することができる。
【0064】
さらに、本実施の形態によれば、電気計器50を掛け替える際には、移動体30を待機位置とし、一対の端子板26a〜26d同士の間を広げることにより、電気計器50の各電流端子52a〜52dを一対の端子板26a〜26d間に容易に挿入したり、一対の端子板26a〜26d間から容易に取り外したりすることができる。したがって、電気計器50の掛け替え作業が容易となる。
【0065】
一方、電気計器50の性能試験を行なう際には、移動体30を係合位置とし、各一対の端子板26a〜26dを電気計器50の各電流端子52a〜52dに対して押圧することにより、各一対の端子板26a〜26dと各電流端子52a〜52dとを確実に接続することができる。
【0066】
さらに、本実施の形態によれば、一対の端子板26a〜26dにより電気計器50の各電流端子52a〜52dを両側から挟み込む構造であるため、性能試験中に電気計器50に対して負荷が加わることがない。
【0067】
なお、電気計器50は、図1に示すような三相3線式の電力量計の他、単相2線式、単相3線式、または三相4線式の電力量計であっても良い。すなわち電気計器50は、2本、4本、または6本の電流端子を有するとともに、2本、3本、または4本の電圧端子を有していてもよい。これに対応して、装置本体10は、各電流端子に接続される2本、4本、または6本の電流測定端子と、各電圧端子に接続される2本、3本、または4本の電圧測定端子とを有していても良い。
【符号の説明】
【0068】
10 装置本体
12a〜12d 電流測定端子
13a〜13c 電圧測定端子
15 固定板
19 進退部材
19a 軸
21a〜21d 接点ベース
23a〜23d 電流用接続導線
24a〜24c 電圧用接続導線
26a〜26d 一対の端子板
29a 当接部
29b 本体部
30 移動体
32a〜32d スプリング体
33a〜33f スプリングホルダ
35 取付溝
41 底面板
42 ガイドレール(案内部材)
43 バー
44 基端ブロック
45 押圧ブロック
46 摺動体
47 端部ブロック
48 端子ホルダ
50 電気計器
51 ボックス
51a 背面
52a〜52d 電流端子
53a〜53c 電圧端子
54 嵌合端子
55 囲い部材
55a 底面
55b、55c 側面
61 第1傾斜面
62 第2傾斜面
64 孔
65 切欠部
67a 平坦部
67b バネ本体部
67c 接触部
100 電気計器用自動結線装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックスと、ボックスの一面から外方へ突出する電流端子および電圧端子とを有する電気計器が装着され、当該電気計器を試験装置に接続することにより性能試験を行なう電気計器用自動結線装置において、
各々が平行に配置された一対の端子板からなり、電流端子に接続される電流測定端子を有する装置本体と、
装置本体に対して電気計器の装着方向に移動自在に設けられ、各電流測定端子の一対の端子板外方に嵌め込まれる一対のスプリング体を有する移動体とを備え、
移動体は、装置本体に対して係合位置と待機位置とをとり、移動体の一対のスプリング体は、係合位置において、対応する電流測定端子の一対の端子板外方に嵌め込まれて一対の端子板を電気計器の電流端子に対して押圧し、待機位置において、移動体の一対のスプリング体は、対応する電流測定端子の一対の端子板から外れ、
一対の端子板は、各々基端側から先端側へ延びる本体部と、先端側において本体部から側方に突出する当接部とを有し、
移動体が待機位置から係合位置に移動する際、一対のスプリング体は、一対の端子板の本体部側方を通過した後、一対の端子板の先端側に位置する当接部に達して当該当接部を押圧することを特徴とする電気計器用自動結線装置。
【請求項2】
移動体に、電圧端子に接続される電圧測定端子が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電気計器用自動結線装置。
【請求項3】
装置本体は、固定板と、固定板に固定され、移動体を電気計器の装着方向に移動させる進退部材とを有し、
進退部材は、移動体を前方に移動することにより移動体が係合位置をとるようにし、移動体を後方に移動することにより移動体が待機位置をとるようにすることを特徴とする請求項1または2記載の電気計器用自動結線装置。
【請求項4】
移動体は、スプリング体を保持するスプリングホルダを有し、スプリング体は、両端がスプリングホルダに取り付けられた湾曲した板バネからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の電気計器用自動結線装置。
【請求項5】
板バネからなるスプリング体は、電気計器の電流端子に接触する頂部を有し、この頂部は、スプリング体が電気計器の電流端子に接触していない状態で、スプリング体の側方から見てスプリング体の中心より前方に位置していることを特徴とする請求項4記載の電気計器用自動結線装置。
【請求項6】
電気計器は、単相2線式、単相3線式、三相3線式、または三相4線式の電気計器からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の電気計器用自動結線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−167992(P2012−167992A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28588(P2011−28588)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(390031196)日本電気計器検定所 (17)