説明

電気転てつ機

【課題】 より軽量化された直動式の電気転てつ機を提供する。
【解決手段】 分岐器のトングレールTを転換させる動作かんaと、そのトングレールの転換に伴って移動される鎖錠かんbと、駆動源により直線状に移動される、前記動作かんを駆動するための駆動部7とからなる直動式の電気転てつ機Sであって、前記駆動部は、軸継手機構を介して前記駆動源に接続されるとともに、その駆動部の移動終了近くに緩衝機構(弾性部材)8a,8bに当接するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の走行する線路の分岐器のトングレールを定位と反位とに転換させる電気転てつ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気転てつ機は、モータ(電動機)の動力が減速歯車機構を介して転換歯車に伝えられ、その転換歯車に設けられている転換ローラが動作かんのカム溝部に係合されるように構成されている(非特許文献1参照)。したがってその転換ローラが転換歯車軸を中心に回転運動すると、トングレールを定位と反位とに転換することができる。また転換ローラが転換歯車軸を中心に回転運動すると、カム部材が連動するように構成されているので、そのカム部材に取付けられているロックピースが鎖錠かんに係合したときは、その鎖錠かんを介してトングレールを転換不能に定位と反位とに拘束できるように構成されている。
【0003】
しかしながら、上記従来の電気転てつ機は、多段の平歯車からなる減速歯車機構及び大型の転換歯車を必要とするので、全体として大型化し、したがって、質量も大きくなり、電気転てつ機の輸送や据付作業に多大な労力を必要とする欠点があった。
【0004】
このような問題点を解決するために、転換歯車を必要としないボールねじやシリンダ等の直線的に駆動する直動式の電気転てつ機も提案されている(特許文献1参照)。しかし、この提案に係る直動式の電気転てつ機の転換鎖錠機構は、ストロークの始終端で分岐器のトングレールからの反力を受けながら動作かんを停止、かつ、保持した状態でロックピースを駆動して、解錠又は鎖錠を行うことは困難なため、外部にエスケープクランク等を必要とするなどの新たな問題点が発生してしまうという欠点があった。そこで、本出願人の一人は、外部にエスケープクランク等を必要としない、小型軽量化された直動式の電気転てつ機を提供している(特許文献2,3参照)。
【0005】
【非特許文献1】「信号」(第17版、平成3年7月20日、(株)交友社発行)の第128〜141頁
【特許文献1】特開平7−10001号公報
【特許文献2】特開2004−9872号公報
【特許文献3】特開2004−9873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記提案に係る電気転てつ機は、外部にエスケープクランク等を必要としない小型軽量化された特長を有しているが、転換終了後のオーバーランを吸収するために、ある程度の余分な形状を必要としていた。
【0007】
上述のオーバーランを吸収するためには、モータとしてサーボモータを使用して位置決め制御したり、電子制御されるダイナミックブレーキを使用することも考えられるが、過酷な環境下で使用される電気転てつ機においては、電子部品の使用は好ましくなく、また、摩擦を利用したブレーキは摩擦係数の変動や印加電圧の変動で、毎回安定した位置で停止させることが困難である。さらに、転換終了位置にクッション付ストッパを配置することも考えられるが、直動式の電気転てつ機においては、クッション付ストッパに衝突した後の反発により、トングレールが転換途中まで戻ってしまうおそれがあり、クッション付ストッパをそのまま使用することができなかった。
【0008】
そこで、本発明は、転換終了後のオーバーランを効率よく吸収でき、より小型軽量化を図ることのできる電気転てつ機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電気転てつ機は、上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、分岐器のトングレールを転換させる動作かんと、その動作かんを所定の位置で保持する動作かん保持機構と、その動作かんを駆動するため往復運動する駆動部と、その駆動部を駆動する駆動源と、上記駆動部と駆動源の間に配置され、入力軸と出力軸の回転数差に応じて伝達トルクが決定される軸継手機構と、弾性体で構成された緩衝機構とを有する電気転てつ機であって、前記動作かんは、前記駆動部の往復運動に係合して往復運動するが、その動作かんが所定の位置に到達したときに、その駆動部がその動作かんに与える駆動力を途絶して前記動作かん保持機構で保持し、その動作かんが所定位置に到達したあとで、かつその駆動部が慣性動作している状態で前記緩衝機構をその駆動部を停止させるよう力が作用するようにその緩衝機構を配置したことを特徴としている。
本発明の請求項2に記載の電気転てつ機は、分岐器のトングレールを転換させる動作かんと、そのトングレールの転換に伴って移動される鎖錠かんと、駆動源により直線状に移動される駆動部と、その駆動部の移動方向と同方向の直線移動部及びその直線移動部の両端側で、かつ、その直線移動部の方向と直交する方向の一対のエスケープ部を有する固定カム溝と、一端がその駆動部に回転自在に軸支され、他端がその固定カム溝に挿入されるとともにその動作かんに設けられたガイド溝に挿入される、その駆動部の移動方向において互いに向き合うように設けられた一対の転換アームと、そのうち一方の転換アームがその固定溝のエスケープ部を移動する間、その駆動部と共に移動するカム面を有する駆動板に沿ってバネ力により移動してその鎖錠かんを鎖錠するロックピースとからなる電気転てつ機であって、前記駆動部は、軸継手機構を介して前記駆動源に接続されるとともに、前記転換アームが前記固定溝のエスケープ部を移動する間に緩衝機構に当接するように構成されていることを特徴としている。
本発明の請求項3に記載の電気転てつ機は、前記軸継手機構と前記駆動部との間には、トルクリミッタが設けられていることを特徴としている。
本発明の請求項4に記載の電気転てつ機は、前記軸継手機構をマグネットクラッチとしていることを特徴としている。
本発明の請求項5に記載の電気転てつ機は、前記駆動部の往復運動がボールねじ機構によって実現されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載の電気転てつ機は、分岐器のトングレールを転換させる動作かんと、その動作かんを所定の位置で保持する動作かん保持機構と、その動作かんを駆動するため往復運動する駆動部と、その駆動部を駆動する駆動源と、上記駆動部と駆動源の間に配置され、入力軸と出力軸の回転数差に応じて伝達トルクが決定される軸継手機構と、弾性体で構成された緩衝機構とを有する電気転てつ機であって、前記動作かんは、前記駆動部の往復運動に係合して往復運動するが、その動作かんが所定の位置に到達したときに、その駆動部がその動作かんに与える駆動力を途絶して前記動作かん保持機構で保持し、その動作かんが所定位置に到達したあとで、かつその駆動部が慣性動作している状態で前記緩衝機構をその駆動部を停止させるよう力が作用するようにその緩衝機構を配置しているので、転換終了後のオーバーランを効果的に吸収でき、直動式の電気転てつ機をより小型軽量化することができる。
本発明の請求項2に記載の電気転てつ機は、分岐器のトングレールを転換させる動作かんと、そのトングレールの転換に伴って移動される鎖錠かんと、駆動源により直線状に移動される駆動部と、その駆動部の移動方向と同方向の直線移動部及びその直線移動部の両端側で、かつ、その直線移動部の方向と直交する方向の一対のエスケープ部を有する固定カム溝と、一端がその駆動部に回転自在に軸支され、他端がその固定カム溝に挿入されるとともにその動作かんに設けられたガイド溝に挿入される、その駆動部の移動方向において互いに向き合うように設けられた一対の転換アームと、そのうち一方の転換アームがその固定溝のエスケープ部を移動する間、その駆動部と共に移動するカム面を有する駆動板に沿ってバネ力により移動してその鎖錠かんを鎖錠するロックピースとからなる電気転てつ機であって、前記駆動部は、軸継手機構を介して前記駆動源に接続されるとともに、前記転換アームが前記固定溝のエスケープ部を移動する間に緩衝機構に当接するように構成されているので、転換終了後のオーバーランを効果的に吸収でき、直動式の電気転てつ機をより小型軽量化することができる。
本発明の請求項3に記載の電気転てつ機は、前記軸継手機構と前記駆動部との間にトルクリミッタが設けられているので、転換途中に動作が妨害されたときに電気転てつ機を効果的に保護することができる。
本発明の請求項4に記載の電気転てつ機は、前記軸継手機構が、マグネットクラッチからなるので、電気転てつ機で汎用されているマグネットクラッチを利用することができる。
本発明の請求項5に記載の電気転てつ機は、前記駆動部の往復運動がボールねじ機構によって実現されているので、より簡単な機構とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、一実施の形態に係る電気転てつ機Sを適用した分岐器Pの平面図であり、この分岐器Pは、周知の分岐器と同様に、電気転てつ機Sの動作かんaによってトングレールTが基本レールRに対して定位から反位又は反位から定位の各位置に転換できるように構成されているとともに、鎖錠かんbにより定位位置及び反位位置をそれぞれ鎖錠できるように構成されている。
【0012】
電気転てつ機Sは、その平面形状はほぼ正方形に近い長方形を呈するとともに、その高さは列車の走行に支障を来たさない十分に低いアルミ鋳物製の筐体(ケース)Hを有していて、その筐体Hの側面のうち、トングレールTの長手方向側の一方側(図1に示す例では下側)に本発明の駆動源に相当するモータMが設けられている。このモータMは、周知の電気転てつ機と同様に交流105Vの誘導電動機により構成されている。なお、本発明に係る電気転てつ機Sは、非特許文献1に示される従来の電気転てつ機の質量の約半分である。
【0013】
図2(a)は、筐体Hの内部に組込まれている機構を簡素化した平面図、同図(b)は、同図(a)のA−A線断面図である。図中1は、本発明の軸継手機構に相当するマグネットクラッチである。また、図3は、そのマグネットクラッチの詳細図である。このマグネットクラッチは、図3に示されるように、モータM側の入力軸1aと後述する傘歯車2側の出力軸1bとを有している。そして、入力軸1aの先端には、周囲に永久磁石を等間隔に配置した円柱状の磁石部1a′が設けられているとともに、出力軸1bの先端には、磁石部1a′の周囲に所定の間隔を保って設けられた、銅あるいはアルミニウム等の導電性材からなる円筒1b′が設けられている。すなわち、このマグネットクラッチ1は、アラゴの円盤の原理を応用して構成されている。したがって、入力軸1aに対する出力軸1bの伝達トルクは、図4に示されるように、入力軸回転数と出力軸回転数の差に比例した関係となる。
【0014】
図中2は傘歯車であって、モータMの回転方向を直交方向に転換することができるように構成されている。そして、この直交方向に転換された回転力は、シャフト3、平歯車群からなる減速機構4及びトルクリミッタ5を介して、本発明のボールねじ機構を形成するボールねじ6に伝達されるように構成されている。このボールねじ6は、軸心方向がシャフト3と同方向に設けられている。そして、このボールねじ6には、駆動部7が螺合されている。このボールねじ6の長さは、ボールねじ6の長手方向に沿って駆動部7を所定量移動できるように決められている。すなわち、このボールねじ6の長さは、動作かんaがトングレールTを転換するのに十分な移動量を確保できるように決められている。
【0015】
上記トルクリミッタ5は、駆動部7の移動が途中で妨害されたとき、例えばトングレールTと基本レールRとの間に異物が存在して移動が停止されたときに空転して、機構各部に過大な衝撃が生じないように構成されている。
【0016】
図中8a,8bは、本発明の緩衝機構をなす合成ゴムからなる弾性部材であり、ボールねじ6の長手方向側の駆動部7の両側にそれぞれ設けられている。これら弾性部材8a,8bは、転換終了後の機構の慣性エネルギを吸収できるように、その大きさ及び弾性係数が決められている。弾性部材8aは、駆動部7がボールねじ6の一方向(図示の例では右方向)に所定量移動したときに、筐体Hに設けられているストッパ9aに当接できるように決められているとともに、弾性部材8bは、駆動部7がボールねじ6の他の方向(図示の例では左方向)に所定量移動したときに、筐体Hに設けられているストッパ9bに当接できるように決められている。これら弾性部材8a,8b及びストッパ9a,9bの作用については、後に詳述する。なお、上記弾性部材8a,8bは、天然ゴムからなる場合でもよく、またはコイルばねで構成することもできる。
【0017】
この動作かんa及び駆動部7は、図2(b)に示されるように、一対の転換アーム10a,10bを介して間接的に接続されるように構成されている。すなわち、一対の転換アーム10a,10bは、一端が支軸11a,11bで駆動部7に回動自在に軸支され、その他端には、転換ローラ12a,12bが回動自在に設けられている。そして、これら転換ローラ12a,12bは、動作かんaに設けられているガイド溝a′内に摺動自在に挿入されている。また、転換アーム10a,10bの他端には、転換ローラ12a,12bと対をなす転換ローラ12a′,12b′がそれぞれ設けられていて、固定カム溝13に摺動自在に挿入されている。
【0018】
この固定カム溝13は、筐体Hの内側に設けられ、転換ローラ12a′,12b′が水平状態で移動できる溝幅を有し、かつ、駆動部7の移動方向と同方向の直線移動部13′と、その直線移動部13′の両端側にその直線移動部13′と直交する方向の一対のエスケープ部13a,13bが設けられている。
【0019】
したがって、ボールねじ6の回転により駆動部7がそのボールねじ6の一方向側(図2(a)において右方向側)へ移動されると、転換アーム10aが一方側の転換ローラ12aを介して動作かんaを一方向に移動させる。また、その駆動部7が他方向側(図2(a)において左方向側)へ移動されると、転換アーム10bが他方側の転換ローラ12bを介して動作かんaを他方向に移動させる。動作かんaは、このように、転換アーム10a,10bにより左右両側に移動が行われるが、その転換アームの転換ローラ12a′,12b′がエスケープ部13a,13bを移動する間は、動作かんaの移動が行われない。この動作かんaが移動しない間でも駆動部7の移動は継続されるが、このときに弾性部材8aはストッパ9aに当接し、また弾性部材8bはストッパ9bに当接される。これらストッパ9a,9bの当接については後述する。
【0020】
図中、20a,20bは一対のロックピースであって、駆動部7の長手方向と直交するように設けられ、スプリング21a,21bにより、常時、ロックピース20a,20bの先端(図2(a)では下端)に設けられているローラ22a,22bが駆動部7と一体的に設けられているカム面を有する駆動板23に当接させるように移動自在にそれぞれ設けられている(ロックピース20a,20bに設けられている矢印参照)。なお、ロックピース20a,20bは、長手方向(駆動板23の長手方向と直交する方向)にのみ移動できるようにガイド機構が設けられているが、ここではそのガイド機構は図面を簡略化するために省略されている。
【0021】
一対のロックピース20a,20bの先端に設けられているローラ22a,22bは、駆動板23の長手方向の両側に設けられているカム面を形成する一対の凹部24a,24bに挿入したとき、鎖錠かんbを鎖錠(ロック)できるように構成されている。すなわち、これら一対のロックピース20a,20bの長手方向と直交する位置に鎖錠かんbがロックピース20a,20bの一方が駆動板23のいずれか一方に設けられている凹部24a,24bに挿入したときに鎖錠かんbの移動を阻止できるように構成されている。
【0022】
ロックピース20a,20bと鎖錠かんbの鎖錠機構は、周知の電気転てつ機のロックピースと鎖錠かんの鎖錠機構と同様であるので、その詳細な説明は省略するが、鎖錠かんbに設けられている図示しない切欠溝にロックピース20a,20bの図示しない凸部が挿入すると、その鎖錠かんbの長手方向の移動が禁止されるように構成されている。
【0023】
この鎖錠かんbの一端側(図示の例では左端側)は、図1に示されるように連結金具を介してトングレールTの先端と連結されている。したがって、そのトングレールTが上述の動作かんaで移動されると、その移動に伴って鎖錠かんbも移動される。
【0024】
以下、上記構成からなる電気転てつ機の動作を図2(a)、図5及び図6を用いて説明する。図2(a)の状態において、トングレールTは、基本レールRに対して定位から反位の位置に移動する途中にあるものとして説明する。この移動途中の場合、ロックピース20a,20bのローラ22a,22bは、駆動板23の凹部24a,24bに挿入されておらず、したがって、鎖錠かんbは、ロックピース20a,20bにより鎖錠されていない状態にある。
【0025】
図5及び図6は、動作かん等の移動状態を説明するための図である。このうち図5は、モータMによりボールねじ6が駆動部7をさらに反位側に移動させてトングレールTを反位の位置に転換をさせた状態を示しており、このときに、転換ローラ12b′が固定カム溝13のエスケープ部13bに達した状態にある。この状態では、転換ローラ12b′はエスケープ部13bを移動し、このエスケープ部13bを移動する間、動作かんaの移動は行われないが、転換ローラ12b′がこのエスケープ部13bを移動中、駆動板23及び駆動部7は移動する(オーバーランする)ので、ロックピース20aは、凹部24aにより移動し、これにより、ロックピース20aによって鎖錠かんbは鎖錠される。したがって、トングレールTは鎖錠状態となる。なお、この反位の位置となった状態は、ロックピース20aに設けられた図示しない操作子がスイッチ(図示せず)をONにして、そのスイッチ信号が図示しない制御器に入力され、モータMの電源はOFFされる。さらに、この転換ローラ12b′がエスケープ部13bを移動中、弾性部材8bがストッパ9bに当接されて駆動部7の移動が徐々に停止される。
【0026】
上述の説明は、トングレールTが定位から反位の位置に転換するときの説明であるが、トングレールTが反位から定位への転換は、上述と逆の動作により行われる。すなわち、トングレールTが基本レールRに対して反位から定位に移動するときは、転換の当初の転換ローラ12b′がエスケープ部13bを移動する間、動作かんaの移動はなく、駆動板23のみの移動となる。この間、ロックピース20aは凹部24aから持ち上げられるので、そのロックピース20aによる鎖錠かんbの鎖錠は解錠されてトングレールTの移動が自由となる。したがって、動作かんaの移動が可能となり、両転換ローラ12a′,12b′が直線移動部13′を移動する間に動作かんaは定位側へ移動される。ロックピース20bが駆動板23の凹部24bに挿入して、そのロックピース20bが鎖錠かんbを鎖錠する動作は、上述したロックピース20aが鎖錠かんbを鎖錠するときと同様に行われる(図6参照)。
【0027】
図7は、マグネットクラッチ1及び弾性部材8a,8bを利用したオーバーランの吸収動作を説明するためのフローチャートである。弾性部材8a,8bは同一作用なので、ここでは弾性部材8bを用いて説明する。
【0028】
図5に示されるように、転換ローラ12b′がエスケープ部13bを移動中にモータMは制御器によりOFFとなるが、慣性によりモータMは回り続け、駆動部7は図5において左方に移動し続け、弾性部材8bはストッパ9bに当接される。すなわち、駆動部7は弾性部材8bをたわませて停止し、このときにマグネットクラッチ1の出力トルクにより発生するボールねじ6の推力と弾性部材8bの反力が釣り合った状態となる(ステップ100。以下、ステップを「S」とする。)。
【0029】
駆動部7の移動が停止した後、モータMの慣性エネルギはマグネットクラッチ1において熱エネルギに変換され消費される。これに伴い、モータMの回転数が減少する(S102)。モータMの回転数が小さくなると、マグネットクラッチ1の伝達トルクは減少し、ボールねじ6の推力が減少し、弾性部材8bのたわみ量も減少する(S104〜S106)。最終的には、モータMの回転数が0になった時点で弾性部材8bのたわみは0となり機構の動作は停止する(S108,S110)。
【0030】
上述のように、マグネットクラッチ1と弾性部材8b(図6における弾性部材8aも同じ)とで、転換終了後の駆動部7及び駆動板23のオーバーランを効率よく吸収することができる。したがって、ボールねじ6の長さも短くてすむとともに、固定カム溝13の形状も小さくてすみ、筐体Hが小型化でき、電気転てつ機Sをより小型軽量化することができる。
【0031】
なお、上述の例では、駆動部7の移動はボールねじ6を用いたが、ラックとピニオンを用いた機構、あるいは油圧や空気シリンダ機構等の他の直動機構を用いてもよい。しかし、上述のようにボールねじ6を用いたときは、減速歯車機構4の歯車数を少なくすることができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】一実施の形態に係る電気転てつ機を適用した分岐器の平面図である。
【図2】(a)は、筐体内部の転てつ機の機構を簡素化した平面図、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【図3】マグネットクラッチの詳細を示す図である。
【図4】マグネットクラッチにおける入力軸に対する出力軸の伝達トルクを示す図である。
【図5】動作かん等の定位から反位への移動状態を説明するための図である。
【図6】動作かん等の反位から定位への移動状態を説明するための図である。
【図7】マグネットクラッチ及び弾性部材を利用したオーバーランの吸収動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
S 電気転てつ機
H 筐体
T トングレール
M モータ
a 動作かん
b 鎖錠かん
1 マグネットクラッチ
1a 入力軸
1b 出力軸
1a′ 磁石部
1b′ 円筒
2 傘歯車
3 シャフト
4 減速機構
5 トルクリミッタ
6 ボールねじ
7 駆動部
8a,8b 弾性部材
9a,9b ストッパ
10a,10b 転換アーム
11a,11b 支軸
12a,12b,12a′,12b′ 転換ローラ
13 固定カム溝
13′ 直線移動部
13a,13b エスケープ部
20a,20b ロックピース
21a,21b スプリング
22a,22b ローラ
23 駆動板
24a,24b 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐器のトングレールを転換させる動作かんと、その動作かんを所定の位置で保持する動作かん保持機構と、その動作かんを駆動するため往復運動する駆動部と、その駆動部を駆動する駆動源と、上記駆動部と駆動源の間に配置され、入力軸と出力軸の回転数差に応じて伝達トルクが決定される軸継手機構と、弾性体で構成された緩衝機構とを有する電気転てつ機であって、
前記動作かんは、前記駆動部の往復運動に係合して往復運動するが、その動作かんが所定の位置に到達したときに、その駆動部がその動作かんに与える駆動力を途絶して前記動作かん保持機構で保持し、その動作かんが所定位置に到達したあとで、かつその駆動部が慣性動作している状態で前記緩衝機構をその駆動部を停止させるよう力が作用するようにその緩衝機構を配置したことを特徴とする電気転てつ機。
【請求項2】
分岐器のトングレールを転換させる動作かんと、そのトングレールの転換に伴って移動される鎖錠かんと、駆動源により直線状に移動される駆動部と、その駆動部の移動方向と同方向の直線移動部及びその直線移動部の両端側で、かつ、その直線移動部の方向と直交する方向の一対のエスケープ部を有する固定カム溝と、一端がその駆動部に回転自在に軸支され、他端がその固定カム溝に挿入されるとともにその動作かんに設けられたガイド溝に挿入される、その駆動部の移動方向において互いに向き合うように設けられた一対の転換アームと、そのうち一方の転換アームがその固定溝のエスケープ部を移動する間、その駆動部と共に移動するカム面を有する駆動板に沿ってバネ力により移動してその鎖錠かんを鎖錠するロックピースとからなる電気転てつ機であって、
前記駆動部は、軸継手機構を介して前記駆動源に接続されるとともに、前記転換アームが前記固定溝のエスケープ部を移動する間に緩衝機構に当接するように構成されていることを特徴とする電気転てつ機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気転てつ機において、前記軸継手機構と前記駆動部との間には、トルクリミッタが設けられていることを特徴とする電気転てつ機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電気転てつ機において、前記軸継手機構は、マグネットクラッチであることを特徴とする電気転てつ機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電気転てつ機において、前記駆動部の往復運動は、ボールねじ機構によって実現されていることを特徴とする電気転てつ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−265959(P2006−265959A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86448(P2005−86448)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)