説明

電気部品の製造方法、ブラシホルダの製造方法、及び電気部品の製造装置

【課題】容易に良否判定を行うことができ、ひいては低コスト化を図ることができるブラシホルダの製造方法を提供する。
【解決手段】ターミナルTがブラシホルダ樹脂体9に埋設されてなるブラシホルダ7の製造方法であって、ターミナルTを第1及び第2金型41,42内に配置する「配置工程」と、「配置工程」の後、第1及び第2金型41,42内に硬化するとブラシホルダ樹脂体9となる液体状の樹脂を充填する「充填工程」とを備える。又、ターミナルTが第1及び第2金型41,42内にある状態、詳しくは、「配置工程」後であって「充填工程」の前と、「充填工程」中と、「充填工程」後に、ブラシホルダ樹脂体9からそれぞれ露出することになるターミナルTの両端部と対応した位置に設けられた一対の通電検査用接触子41b,42b間の導通状態を検査する「検査工程」を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターミナルが樹脂体に埋設されてなる電気部品の製造方法、モータに設けられるブラシホルダの製造方法及び電気部品の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パワーウインドウ装置用モータ等の直流のモータには、給電用ブラシを保持するためのブラシホルダが備えられる。そして、ブラシホルダとしては、モータ内部で給電用ブラシを保持するホルダ本体やモータ外部に突出し外部コネクタを嵌着可能とするコネクタ部が一体成形されたブラシホルダ樹脂体に、給電用や制御信号用のターミナルが複数並んで埋設されてなるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−284292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような、ターミナルが樹脂体に埋設されてなるブラシホルダ等の電気部品は、ターミナルを金型内に配置した後、金型内に液体状の樹脂を充填するといった所謂インサート成形により成形される。
【0004】
しかしながら、上記のように成形される電気部品では、ターミナルを金型内に配置する際(型締め時等)に、樹脂体からそれぞれ露出することになるターミナルの両端部が金型と衝突するなどして設計位置からずれてしまったり、金型内に液体状の樹脂を充填する際に、その液圧によってターミナルの両端部が設計位置からずれてしまうことがある。又、ブラシホルダのように複数のターミナルが並設されるものでは、ターミナル同士が接触(短絡)してしまうことがある。
【0005】
よって、上記のような電気部品は、金型から取り出した後に、別途、ターミナルの両端部の位置や電気的接続状態の検査を行い良否判定する必要があり、これが煩雑であるという問題がある。このことは、高コスト化を招く原因となる。又、不良の場合でも、金型から取り出した後でしか良否判定できないため、金型から取り出すまでに無駄な作業を行うことがあり、そのことも高コスト化の原因となる。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、容易に良否判定を行うことができ、ひいては低コスト化を図ることができる電気部品の製造方法、ブラシホルダの製造方法、及び電気部品の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、ターミナルが樹脂体に埋設されてなる電気部品の製造方法であって、前記ターミナルを金型内に配置する配置工程と、前記配置工程の後、前記金型内に液体状の樹脂を充填する充填工程と、前記ターミナルが前記金型内にある状態で、前記樹脂体からそれぞれ露出することになる前記ターミナルの両端部と対応した位置に設けられた一対の通電検査用接触子間の導通状態を検査する検査工程とを備えたことを要旨とする。
【0008】
同発明によれば、検査工程にて、ターミナルが金型内にある状態で、樹脂体からそれぞれ露出することになるターミナルの両端部と対応した位置に設けられた一対の通電検査用接触子間の導通状態が検査されるため、金型から取り出す前に、ターミナルの両端部の位置や電気的接続状態の検査が行われ、その良否判定を行うことができる。よって、金型から取り出した後に、ターミナルの両端部の位置や電気的接続状態の検査を行う必要がなく、その別途行う煩雑な検査を回避又は簡略化することができる。又、金型から取り出す前に良否判定を行うことができるため、金型から取り出すまでに無駄な製造作業を続けてしまうといったことを回避することができる。それらの結果、低コスト化を図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電気部品の製造方法において、前記検査工程は、少なくとも前記配置工程の後であって、前記充填工程の前に行うことを要旨とする。
【0010】
同発明によれば、検査工程は、少なくともターミナルを金型内に配置する配置工程の後であって、金型内に液体状の樹脂を充填する充填工程の前に行われるため、例えば、ターミナルを金型内に配置する際(型締め時等)にターミナルの両端部が金型と衝突するなどして設計位置からずれてしまった場合等、充填工程の前に不良と判定することができる。よって、無駄な充填工程を行うことを回避することができる。その結果、その作業とともに樹脂体(材料)の無駄を無くすことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の電気部品の製造方法において、
前記検査工程は、前記充填工程中及び前記充填工程後の少なくとも一方のタイミングで行うことを要旨とする。
【0012】
同発明によれば、検査工程は、金型内に液体状の樹脂を充填する充填工程中及び充填工程後の少なくとも一方のタイミングで行われるため、例えば、金型内に充填される液体状の樹脂の液圧によってターミナルの両端部が設計位置からずれてしまった場合でも金型から取り出すまでに不良と判定することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気部品の製造方法における前記ターミナルは複数設けられ、それらの少なくとも1つはモータの給電用ブラシに接続されることになる給電用のターミナルであって、前記樹脂体は前記給電用ブラシを保持するためのホルダ本体を有したブラシホルダ樹脂体であるブラシホルダの製造方法を要旨とする。
【0014】
同発明によれば、ブラシホルダの製造方法において、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明の効果を得ることができる。尚、ブラシホルダは、ターミナルが複数設けられ、スペース的な問題等からターミナル同士が細く曲がり易いとともに接触(短絡)し易く不良が発生し易いことから、上記効果がより効果的となる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、ターミナルが樹脂体に埋設されてなる電気部品の製造装置であって、前記ターミナルを内部に配置可能な金型と、前記ターミナルが前記金型内にある状態で、前記樹脂体からそれぞれ露出することになる前記ターミナルの両端部と対応した位置に設けられた一対の通電検査用接触子とを備えたことを要旨とする。
【0016】
同構成の電気部品の製造装置を用いることで、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気部品の製造方法を実施することができ、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、容易に良否判定を行うことができ、ひいては低コスト化を図ることができる電気部品の製造方法、ブラシホルダの製造方法、及び電気部品の製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図1〜図5に従って説明する。図1に示すように、車両におけるパワーウインドウ装置用のモータ1は、モータ本体2と、該モータ本体2の回転を減速して出力するための減速部3とを備えている。
【0019】
モータ本体2は、図1及び図2に示すように、扁平の略有底筒状に形成されたヨークハウジング(以下、単にヨークという)4と、該ヨーク4内面に固定された一対のマグネット5(図2参照)と、該ヨーク4内で回転可能に支持されるアーマチャ(電機子)6と、電気部品としてのブラシホルダ7と、一対の給電用ブラシ8とを備えている。
【0020】
ブラシホルダ7は、樹脂材料よりなる樹脂体としてのブラシホルダ樹脂体9を有し、そのブラシホルダ樹脂体9は、図2に示すように、ホルダ本体9aと、フランジ部9bと、延出部9cと、コネクタ部9dと、ターミナル支持部9eとが一体形成されてなる。ホルダ本体9aは、前記ヨーク4の開口部内に略収容されるように形成されている。ホルダ本体9aの中央孔には軸受10が固定され、該軸受10にはアーマチャ6における回転軸11の先端側が回転可能に支持される。尚、回転軸11の先端はヨーク4の外部まで突出し、その突出した部分にはセンサ用マグネット11aが金属プレートを介して固定されている。又、ホルダ本体9aにおけるヨーク4の内部側には給電用ブラシ8が保持され、該給電用ブラシ8は前記回転軸11に固定された整流子12に押圧接触されている。
【0021】
フランジ部9bは、前記ホルダ本体9aにフランジ状に(回転軸11を軸中心として径方向外側に)延出されている。延出部9cは、フランジ部9bにおけるヨーク4の扁平面4a(図1参照、図1及び図2中、紙面と平行な面)に沿った一方(図1及び図2中、左方)の端部から外部方向(前記径方向外側)に突出して形成され、その先端部にコネクタ部9dが形成されている。このコネクタ部9dは、前記扁平面4aの直交方向(図1及び図2中、紙面直交方向の紙面奥側であって、図3中、紙面手前側)から図示しない外部コネクタが嵌着可能に形成されている。尚、図3は、図1及び図2に示すブラシホルダ7を紙面奥側から見た単品図である。又、ターミナル支持部9eは、延出部9cから回転軸11に沿った軸方向に延びるように形成されている。
【0022】
上記ブラシホルダ樹脂体9には、複数のターミナルT1〜T11が埋設(インサート成形)されている。ターミナルT1〜T11は、給電用のターミナルT1〜T6と、制御信号用のターミナルT7〜T11からなる(図4参照)。
【0023】
ターミナルT1,T2は、ホルダ本体9aにおけるヨーク4の内部側から延出部9cまで略軸直交方向(図2中、略左方向であって、図3中、略右方向)に延びるように配設されている。このターミナルT1,T2の基端部は、それぞれブラシ用端子T1a,T2aと、コンデンサ用端子T1b,T2bとに分岐され、ブラシ用端子T1a,T2aにはそれぞれピッグテールを介して前記給電用ブラシ8が電気的に接続され、コンデンサ用端子T1b,T2b間には図示しない雑音防止用のコンデンサが電気的に接続される。
【0024】
ターミナルT3,T4は、ターミナル支持部9eに沿って略軸方向(図2中、下方向)に延びるように配設されている。このターミナルT3,T4は、その先端部である内部接続端子T3a,T4aがターミナル支持部9eの先端から軸方向(図2中、下方向)に突出(露出)するように配設されている。又、このターミナルT3,T4の基端部にはそれぞれ前記ターミナルT1,T2の先端部が電気的に接続される。
【0025】
又、ターミナルT5〜T11は、コネクタ部9dから延出部9cまで軸直交方向(図2中、右方向であって、図3中、左方向)に延び、延出部9cで折り曲げられ、更に延出部9cから軸方向(図2中、下方向)に延びるように配設されている。このターミナルT5〜T11は、その先端部である内部接続端子T5a〜T11aがターミナル支持部9eの先端から軸方向(図2中、下方向)に突出(露出)するように配設されている。又、このターミナルT5〜T11は、その基端部である外部接続端子T5b〜T11bがコネクタ部9d内において露出するように(屈曲されて)配設され、コネクタ部9dに外部コネクタが嵌着されることで該外部コネクタのターミナルに電気的に接続されることになる。尚、図2及び図3では、内部接続端子T3a〜T11aが紙面直交方向に並んで配設されることから、1つしか図示されない。又、ブラシホルダ7は、図2に示すように、ブラシホルダ樹脂体9におけるフランジ部9b、延出部9c及びコネクタ部9dが、コネクタ部9dの外部接続端子T5b〜T11bと対応した部分等を除いて、エラストマよりなる防水部材13にて略覆われる。
【0026】
減速部3は、ギヤハウジング21と、ウォーム軸22と、ウォームホイール23と、クラッチ24(図2参照)と、回路部品25と、カバー26とを備える。
ギヤハウジング21は、樹脂材料よりなる。ギヤハウジング21は、固定部21aと、ウォーム収容部21bと、ホイール収容部21cと、回路収容部21dとを備える。
【0027】
固定部21aは、ヨーク4の開口部に形成されたフランジ部4bと対応した形状に形成されて該フランジ部4bとネジ27にて固定され、該フランジ部4bとともに前記ブラシホルダ7におけるフランジ部9bを(防水部材13を介して)挟持する。
【0028】
ウォーム収容部21bは、前記回転軸11の延長線上で筒状に延びて形成され、その内部にウォーム軸22を回転可能に支持する。又、ウォーム収容部21bの内部におけるモータ本体2側には、ウォーム軸22と回転軸11とを駆動連結するクラッチ24(図2参照)が設けられている。クラッチ24は、回転軸11からの駆動力をウォーム軸22に伝達し、逆にウォーム軸22からの駆動力が回転軸11に伝達されないようウォーム軸22の回転をロックするように作動する。つまり、このクラッチ24は、負荷側から加わる力によるモータ1の回転を防止するために設けられている。
【0029】
ホイール収容部21cは、ウォーム収容部21bと直交する方向で扁平の円盤形状に形成され、その内部にウォームホイール23を回転可能に支持する。尚、ウォーム収容部21bとホイール収容部21cとはその内部が一部で連通し、該連通部分でウォーム軸22とウォームホイール23とが歯合される。又、ホイール収容部21cは、前記ウォーム収容部21bに対して(中心として)前記コネクタ部9dの反対側(図1中、右側)に形成されている。又、ホイール収容部21cの扁平面21eは前記ヨーク4の扁平面4aに沿って形成され、ギヤハウジング21全体としては、その扁平面21eの直交方向から見た面がギヤハウジング21の扁平面ということになる。
【0030】
回路収容部21dは、前記内部接続端子T3a〜T11aと対応した位置であって、その内部に内部接続端子T3a〜T11aが配置されるように形成されている。詳しくは、回路収容部21dは、ウォーム収容部21bに対して(中心として)ホイール収容部21cの反対側であって、ウォーム収容部21bとコネクタ部9dとの間(回路部品25を除いた構成ではモータ1のデッドスペースとなる部分)に形成されている。回路収容部21dは、その内部がウォーム収容部21bの内部におけるモータ本体2側(前記センサ用マグネット11aと対応した部分)と連通している。又、回路収容部21dには、回路部品25を収容すべく回路部品25を回転軸11の軸方向に沿った方向から挿入可能とする開口部21fが形成されている。この開口部21fは、その開口方向(開口部21fと直交する方向)が回転軸11の軸方向及びその直交方向に対して傾斜するように設定されている。本実施の形態の開口部21fは、ギヤハウジング21の扁平面の直交方向から見てコネクタ部9dとウォーム収容部21bの先端側(モータ本体2の反対側)とを結ぶ傾斜した直線状に形成されている。尚、前記各内部接続端子T3a〜T11aは、開口部21fの開口方向外側から見て露出する(見える)位置に配置されている。そして、回路収容部21dには、回路部品25が略収容される。
【0031】
回路部品25は、保持部材31、保持部材31に固定されたモールドIC32、モールドIC32に固定されたヒートシンク33、保持部材31に固定されたコンデンサ34、保持部材31に固定されたチョークコイル35、及び保持部材31に固定されたホールIC36等を備える。尚、本実施の形態のモータ1は駆動回路としてのリレーを備えず、モールドIC32が搭載する半導体素子が駆動回路としてのパワーMOSFETを含んでいる。そして、モールドIC32は、ホールIC36にて検出されるセンサ用マグネット11a(回転軸11)の回転速度等に応じて車両ウインドウガラスに挟み込みが発生したと判断すると、給電用ブラシ8(モータ本体2)に逆回転電流を供給するといった、挟み込み防止制御を行うものである。
【0032】
上記のように構成される回路部品25は、モータ本体2と減速部3とが組み付けられた状態で前記開口部21fからギヤハウジング21(回路収容部21d)内に、その一部が外部に突出するようにアーマチャ6における回転軸10(に沿った)方向に組み付けられる。そして、このように組み付けられることで、回路部品25の接続端子がブラシホルダ7におけるターミナルT3〜T11の内部接続端子T3a〜T11aに対してそれぞれ電気的に接続可能に配置される。そして、開口部21fの開口方向外側から見て露出した回路部品25の接続端子は、内部接続端子T3a〜T11aにそれぞれ溶接されて電気的に接続される。
【0033】
そして、ギヤハウジング21の前記開口部21fには、回路部品25を組み付けた状態で、開口部21fを閉塞すべく金属製のカバー26がかしめられて固定される。
上記のように構成されたパワーウインドウ装置用のモータ1は、車両ドア内に配設され、ウォームホイール23に連結された出力軸23a(図1参照)が図示しないレギュレータ等を介して車両ウインドウガラスに駆動連結される。
【0034】
次に、上記のように構成されるモータ1におけるブラシホルダの製造方法について、説明する。
まず、「配置工程」において、前記ターミナルT1〜T11(ターミナルT1(T2)とターミナルT3(T4)は予め接続してあるもの)を金型としての第1及び第2金型41,42(図5参照)内に配置する。尚、図5は、ブラシホルダ7(電気部品)の製造装置を模式的に示すとともに、その製造方法を説明するための模式図であって、実際にブラシホルダ7を製造するためにはスライドコア等を含む複雑な金型が必要となるが、それらを省略し、ターミナルT1〜T11を1本のターミナルTとして模式的に図示している。第1及び第2金型41,42には、それらによるキャビティ内とそれぞれ連通する絶縁部41a,42aがそれぞれ設けられている。そして、各絶縁部41a,42aにはターミナルT(ターミナルT1〜T11)の両端部(例えば、前記コンデンサ用端子T1bと前記内部接続端子T3aや、前記外部接続端子T11bと前記内部接続端子T11a)と対応した位置であって、第1及び第2金型41,42(図5参照)内に配置されたターミナルTの両端部が当接して電気的に接続される位置に通電検査用接触子41b,42bが設けられている。即ち、「配置工程」では、ターミナルTを第1及び第2金型41,42内に配置(型締め)するとともに、ターミナルTの両端部を通電検査用接触子41b,42bと電気的に接続させる。尚、一対の通電検査用接触子41b,42bは、実際には、各ターミナルT1〜T11(ターミナルT1(T2)とターミナルT3(T4)は2つで1つ)の前記ブラシホルダ樹脂体9からそれぞれ露出することになる各端部に対応して9対設けられる。
【0035】
次に、「検査工程」において、ターミナルT(ターミナルT1〜T11)が第1及び第2金型41,42内にある状態で、一対の通電検査用接触子41b,42b間の導通状態を検査する。詳しくは、一対の通電検査用接触子41b,42bは、第1及び第2金型41,42との絶縁が図られながら、第1及び第2金型41,42の外部のセンサ本体43に電気的に接続されている。そして、センサ本体43から一方の通電検査用接触子41b、ターミナルT、他方の通電検査用接触子42bを介して電流が正常に流れるか否かの検査を行う。尚、この検査は、逆方向にも電流が流れるか否かを行う。又、この検査は、各ターミナルT1〜T11(ターミナルT1(T2)とターミナルT3(T4)は2つで1つ)毎に行う。これにより、例えば、ターミナルTを第1及び第2金型41,42内に配置する際(型締め時等)にターミナルTの端部が金型と衝突するなどして設計位置からずれてしまった場合(例えば一方の通電検査用接触子41bと非接触となった場合)等、電流が流れないことで不良と判定することができる。
【0036】
次に、「充填工程」において、第1及び第2金型41,42(それらによるキャビティ)内に、硬化すると前記ブラシホルダ樹脂体9となる液体状の樹脂である溶融樹脂を充填する。
【0037】
又、本実施の形態では、この「充填工程」中及び「充填工程」後(直後)のタイミングで前記「検査工程」と同様の検査を行う。言い換えると、本実施の形態では、前記「検査工程」を「充填工程」中及び「充填工程」後(直後)のタイミングでも行う。これにより、例えば、第1及び第2金型41,42内に充填される液体状の樹脂の液圧によってターミナルTの端部が設計位置からずれてしまった場合(例えば一方の通電検査用接触子41bと非接触となった場合)でも、電流が流れないことで不良と判定することができる。又、本実施の形態では、複数のターミナルT1〜T11が並設され、スペース的な問題等からターミナルT1〜T11同士が細く曲がり易いとともに中間部が接触(短絡)し易く不良が発生し易いが、例えば、前記液体状の樹脂の液圧によってターミナルT10,T11の中間部が接触(短絡)してしまった場合でも、正常に電流が流れない(例えば、異なる系統の通電検査用接触子41bに電流が流れる)ことで不良と判定することができる。
【0038】
次に、前記液体状の樹脂の硬化後であって、前記ブラシホルダ樹脂体9が成形された後、第1及び第2金型41,42を離間させ、ブラシホルダ7を第1及び第2金型41,42から取り出し、ブラシホルダ7の製造が終了される。
【0039】
次に、上記実施の形態(ブラシホルダ7(電気部品)の製造装置を用いたブラシホルダ7の製造方法)の特徴的な作用効果を以下に記載する。
(1)「検査工程」にて、ターミナルT(ターミナルT1〜T11)が第1及び第2金型41,42内にある状態で、ブラシホルダ樹脂体9からそれぞれ露出することになるターミナルTの両端部と対応した位置に設けられた一対の通電検査用接触子41b,42b間の導通状態が検査される。よって、ブラシホルダ7を第1及び第2金型41,42から取り出す前に、ターミナルTの両端部の位置や電気的接続状態の検査が行われ、その良否判定を行うことができる。よって、ブラシホルダ7を第1及び第2金型41,42から取り出した後に、ターミナルTの両端部の位置や電気的接続状態の検査を行う必要がなく、その別途行う煩雑な検査を回避又は簡略化することができる。又、ブラシホルダ7を第1及び第2金型41,42から取り出す前に良否判定を行うことができるため、第1及び第2金型41,42から取り出すまでに無駄な製造作業を続けてしまうといったことを回避することができる。それらの結果、低コスト化を図ることができる。
【0040】
(2)「検査工程」は、ターミナルTを第1及び第2金型41,42内に配置する「配置工程」の後であって、第1及び第2金型41,42内に液体状の樹脂を充填する「充填工程」の前に行われる。よって、例えば、ターミナルTを第1及び第2金型41,42内に配置する際(型締め時等)にターミナルTの両端部が第1及び第2金型41,42と衝突するなどして設計位置からずれてしまった場合等、「充填工程」の前に不良と判定することができる。よって、無駄な「充填工程」を行うことを回避することができる。その結果、その作業とともにブラシホルダ樹脂体9(液体状の樹脂材料)の無駄を無くすことができる。
【0041】
(3)「検査工程」は、「充填工程」中及び「充填工程」後(直後)のタイミングで行われるため、例えば、第1及び第2金型41,42内に充填される液体状の樹脂の液圧によってターミナルTの両端部が設計位置からずれてしまった場合でもブラシホルダ7を第1及び第2金型41,42から取り出すまでに不良と判定することができる。尚、前記充填工程後とは、充填が完了し冷却が終わった後の型開き直前までの間を意味する。
【0042】
(4)ブラシホルダ7は、ターミナルT1〜T11が複数設けられ、スペース的な問題等からターミナルT1〜T11同士が細く曲がり易いとともに中間部が接触(短絡)し易く不良が発生し易いことから、上記効果がより効果的となる。
【0043】
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、「検査工程」を、「配置工程」後であって「充填工程」の前と、「充填工程」中と、「充填工程」後(直後)とに行ったが、ターミナルT(ターミナルT1〜T11)が第1及び第2金型41,42内にある状態で少なくとも1回行えば、他の方法に具体化してもよい。
【0044】
例えば、特に充填される液体状の樹脂の液圧によってターミナルTが変形し難い構成のものなどでは、「検査工程」を「配置工程」後であって「充填工程」の前にのみ行うようにしてもよい。又、例えば、「検査工程」を「充填工程」中のみや「充填工程」後(直後)のみに行うようにしてもよい。
【0045】
又、例えば、「検査工程」を、ターミナルTが第1及び第2金型41,42内にある状態では常時(予め設定した一定間隔のタイミングで)行うなど、その他のタイミングで行うようにしてもよい。
【0046】
・上記実施の形態では、ブラシホルダ7の製造方法及び製造装置に具体化したが、これに限定されず、ターミナルが樹脂体に埋設されてなる他の電気部品の製造方法及び製造装置に具体化してもよい。
【0047】
又、上記実施の形態では、パワーウインドウ装置に用いられるモータ1におけるブラシホルダ7の製造方法及び製造装置に具体化したが、勿論、サンルーフモータやドアクローザモータ等、他の装置用のモータにおけるブラシホルダの製造方法及び製造装置に具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施の形態におけるモータの平面図。
【図2】本実施の形態におけるモータの一部断面図。
【図3】本実施の形態におけるブラシホルダの単品図。
【図4】本実施の形態におけるターミナルの斜視図。
【図5】本実施の形態におけるブラシホルダの製造方法を説明するための模式図。
【符号の説明】
【0049】
1…モータ、8…給電用ブラシ、9…ブラシホルダ樹脂体(樹脂体)、9a…ホルダ本体、41,42…第1及び第2金型41,42(金型)、41b,42b…通電検査用接触子、T,T1〜T11…ターミナル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターミナルが樹脂体に埋設されてなる電気部品の製造方法であって、
前記ターミナルを金型内に配置する配置工程と、
前記配置工程の後、前記金型内に液体状の樹脂を充填する充填工程と、
前記ターミナルが前記金型内にある状態で、前記樹脂体からそれぞれ露出することになる前記ターミナルの両端部と対応した位置に設けられた一対の通電検査用接触子間の導通状態を検査する検査工程と
を備えたことを特徴とする電気部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電気部品の製造方法において、
前記検査工程は、少なくとも前記配置工程の後であって、前記充填工程の前に行うことを特徴とする電気部品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気部品の製造方法において、
前記検査工程は、前記充填工程中及び前記充填工程後の少なくとも一方のタイミングで行うことを特徴とする電気部品の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気部品の製造方法における前記ターミナルは複数設けられ、それらの少なくとも1つはモータの給電用ブラシに接続されることになる給電用のターミナルであって、前記樹脂体は前記給電用ブラシを保持するためのホルダ本体を有したブラシホルダ樹脂体であることを特徴とするブラシホルダの製造方法。
【請求項5】
ターミナルが樹脂体に埋設されてなる電気部品の製造装置であって、
前記ターミナルを内部に配置可能な金型と、
前記ターミナルが前記金型内にある状態で、前記樹脂体からそれぞれ露出することになる前記ターミナルの両端部と対応した位置に設けられた一対の通電検査用接触子と
を備えたことを特徴とする電気部品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−219196(P2009−219196A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58045(P2008−58045)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】