説明

電気集塵機

【課題】塵埃を集電部の上流側から下流側にわたって一様に捕集できるようにする。
【解決手段】荷電部10と集電部20を有する電気集塵機において、集電部の高圧電極21を、低圧電極22と平行で且つ送風方向に沿って分割された複数の分割電極A、B、Cにより構成し、これら各分割電極に、該各分割電極と低圧電極間の電界強度が、送風方向の上流側で弱く、送風方向の下流側で強くなるように、分圧回路から異なる電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風方向の上流側に荷電部を配し、その下流側に高圧電極と低圧電極とからなる集塵部を配した電気集塵機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気集塵機は一般的に、図5(a)に示すように、送風方向(矢印S方向)の上流側に配された荷電部10と、下流側に配された集塵部20とから構成されており、電気集塵機内に吸い込まれた塵埃(微粒子に相当)Saは、荷電部10を通過する間に、放電線11とアース電極12との間に発生するコロナ放電によって荷電され、集塵部20を通過することで、高圧電極21(非集塵電極とも言う)と低圧電極22(集塵電極とも言う)との間に生じる電界による静電気力により低圧電極22側に吸着捕集される。集塵部20において、高圧電極21と低圧電極22は、それぞれ平板状に形成されて互いに一定の間隔を隔てて交互に配置されており、上流側から下流側まで一様な電界(矢印E)を生成している。
【0003】
ところで、荷電部10にて電荷を与えられた塵埃Saは、集塵部20に入るとすぐに低圧電極22へ引き寄せられるため、低圧電極22の上流側に集中して捕集される。その結果、図5(b)に示すように、下流側と比較すると上流側に顕著に塵埃Saが堆積する傾向が出てくる。一様な電界の下では、このように上流側に塵埃Saが多く堆積する傾向が出てくると、その部分に更に強電界が発生するようになるため更に塵埃の捕集が促進され、この状態が続くことにより集塵部20が目詰まりを起こすという問題がある。
【0004】
この問題を解消する目的で、図6に示すように、高圧電極21と低圧電極22の間隔を、上流側で広く下流側で狭くなるように設定したものが特許文献1において開示されている。
【0005】
また、それとは別に、集塵部の電極を送風方向に複数に分割したものが、特許文献2において開示されている。
【特許文献1】特開平3−232552号公報
【特許文献2】特開平11−216390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたものの場合、集塵部の電極の形状が複雑になってしまうという問題がある。また、高圧電極21と低圧電極22の間隔が狭くなった集塵部20の下流側に塵埃が付着すると、その下流側において絶縁破壊によるアーク放電Hが起こりやすくなるという問題がある。更に、流路が下流側に行くほど狭まるので送風抵抗が大きくなるという問題もある。
【0007】
また、特許文献2には、集塵部の電極を送風方向に複数に分割した点は開示されているものの、電極表面における塵埃の堆積の偏りを解消するための工夫については開示されていない。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮し、塵埃を集電部の上流側から下流側にわたって一様に捕集することができ、塵埃保持量のアップを図ることができると共に、無用なアーク放電の発生を防止することができ、更に集塵部の電極の作成が容易にでき、しかも送風抵抗が大きくならないようにすることのできる電気集塵機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明の電気集塵機は、送風方向の上流側に空気中の微粒子に電荷を与える荷電部が配設され、その下流側に、送風方向と直交する方向に高圧電極と低圧電極とを交互に配しそれら高圧電極と低圧電極の間に発生する電界の力により前記荷電部にて電荷を与えられた微粒子を吸着保持する集塵部が配設された電気集塵機において、前記高圧電極は、前記低圧電極と平行で且つ送風方向に沿って分割された複数の分割電極により構成されており、これら各分割電極に、該各分割電極と前記低圧電極間の電界強度が送風方向の上流側で弱く送風方向の下流側で強くなるように、電圧が印加されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電気集塵機であって、前記各分割電極と前記低圧電極の間隔が一定に保持されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2に記載の電気集塵機であって、単一電源の電圧を分圧抵抗で所定の電圧値に分圧する分圧回路を複数有し、各分圧回路で得られた電圧値を前記各分割電極に供給することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1に記載の電気集塵機であって、前記各分割電極と前記低圧電極の間隔が、送風方向の上流側から下流側に向かって徐々に狭くなるように設定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気集塵機であって、前記各分割電極と前記低圧電極間の集塵効率が、前記各分割電極に対応する前記低圧電極の位置における粉塵捕集量が同じになるように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、集塵部の上流側から下流側まで極力バランスよく塵埃を捕集できるようになり、高い捕集効率を長く維持できる。従って、従来の不具合、即ち、集塵部の上流側に多くの塵埃が偏って堆積し、その結果、集塵保持量が少なくなる、目詰まりしやすくなる、アーク放電がしやすくなる、等の不具合を解消できる。また、分割電極と低圧電極が平行に配置されていることにより、集塵部の電極の作成が容易にできるようになる上、送風抵抗が大きくならないようにすることができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、各分割電極と低圧電極の間隔が一定となっているので、集塵部の電極の作成が更に容易にできるようになる。
【0016】
請求項3の発明によれば、単一電源の電圧を分圧抵抗で所定の電圧値に分圧する複数の分圧回路で得られた電圧値を各分割電極に供給するので、例えば、ある1つの分割電極が塵埃等の影響で短絡しても、他の分割電極に対して、電圧値が変化するものの、電圧を供給し続けることができる。従って、万一の場合にも集塵性能を維持することができる。また、分圧抵抗の設定の仕方によって、容易に各分割電極と低圧電極間の電界強度を変えることができるので、設計上の自由度が増す。因みに、電界強度を変えるのを、電極の形状で対応しようとすると制約が出るが、電極の形状を同一にしながら抵抗値を変えるだけで対応が可能であるので、多段化が容易に可能である。また、1つの電源で対応可能なので、容積パフォーマンスやコストパフォーマンスに優れたものとすることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、各分割電極に同じ値の電圧を印加しても、各分割電極と低圧電極間の電界強度を送風方向の上流側で弱く下流側で強くなるように設定することができる。従って、電源回路の簡略化を図ることができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、低圧電極上に、送風方向の上流側から下流側にわたってほぼ均一に塵埃を堆積させることができ、塵埃保持性能の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1は第1実施形態の電気集塵機の原理構成図、図2は同電気集塵機の集塵部における電極構成および電極間の寸法を説明するための図である。
【0021】
図1に示すように、この電気集塵機は、送風方向(矢印S方向)の上流側に、空気中の微粒子Saに電荷を与える荷電部10を配設し、その下流側に、高圧電極21と低圧電極22とからなる集塵部20を配設したものである。高圧電極21と低圧電極22は送風方向Sと直交する方向に交互に配されており、集塵部20は、それら高圧電極21と低圧電極22の間に発生する電界Eの力により、荷電部10にて電荷を与えられた微粒子Saを低圧電極22の表面に吸着保持する。
【0022】
この場合、高圧電極21は、低圧電極22と平行で且つ送風方向Sに沿って分割された複数の分割電極A、B、Cにより構成されており、これら各分割電極A、B、Cには、該各分割電極A、B、Cと低圧電極22間の電界Eの強度が、送風方向Sの上流側で弱く、送風方向Sの下流側で強くなるように、電圧が印加されている。
【0023】
本実施形態の電気集塵機では、図2に示すように、各分割電極A、B、Cと低圧電極22の間隔(電極ピッチとも言う)PA、PB、PCが一定に保持されている。また、単一電源V0の電圧を分圧抵抗R1〜R6で所定の電圧値VA、VB、VC(ただし、VA<VB<VC)に分圧する複数(高圧電極21の分割数に相当する数)の分圧回路100A、100B、100Cを有し、それらの各分圧回路100A、100B、100Cで得られた電圧値VA、VB、VCが各分割電極A、B、Cに供給されている。これにより、各分割電極A、B、Cと低圧電極22間の電界Eの強度が、送風方向上流側で弱く、送風方向下流側で強くなるように設定されている。
【0024】
具体的な数値を挙げると、電源電圧V0を5.5kvとした場合、各分圧回路100A、100B、100Cの電源V0側の抵抗R1、R3、R5(抵抗1)とアース側の抵抗R1、R3、R5(抵抗2)を次表1のように設定することによって、各分割電極A、B、Cへの印加電圧と、各分極電極A、B、Cに対応する位置での集塵効率ηとを表中の数字のように設定することができる。
【表1】

【0025】
ただし、集塵効率ηは、集塵部20の入口側での微粒子の個数S1が出口側で個数S2に減少したときに、
η=1−(S2/S1)
として定義されている。また、透過率=1−ηとなる。例えば、集塵部の入口側で100個あった微粒子の数が出口側で10個に減ったとき、集塵効率ηは0.9(=90%)、透過率は0.1となる。
【0026】
また、各分割電極A、B、Cと低圧電極22間の集塵効率は、各分割電極A、B、Cに対応する低圧電極22の位置における集塵捕集量が同じになるように、例えば、表2のように設定されている。
【表2】

【0027】
なお、これらの分圧回路100A、100B、100Cを設計する際には、全ての分割電極A、B、Cが万一短絡した場合にも、各分圧回路100A、100B、100Cを流れる電流IA、IB、ICの合計が、単一電源V0の耐圧電流Iiを超えない(つまり、Ii≧IA+IB+IC)ように、各分圧回路100A、100B、100Cの電源側抵抗R1、R3、R5が設定されている。
【0028】
以上、本実施形態の電気集塵機では、各分割電極A、B、Cと低圧電極22間の電界Eの強度が、送風方向上流側で弱く、送風方向下流側で強くなるように設定してあるので、集塵部20の上流側から下流側までほぼバランスよく塵埃を捕集できるようになり、高い捕集効率を長く維持できる。従って、従来の不具合、即ち、集塵部20の上流側に多くの塵埃が偏って堆積し、その結果、集塵保持量が少なくなる、目詰まりしやすくなる、アーク放電がしやすくなる、等の不具合を解消できる。
【0029】
また、分割電極A、B、Cと低圧電極22が平行に配置されていることにより、集塵部20の電極21、22の作成が容易にできるようになる上、送風抵抗が大きくならないようにすることができる。特に、本実施形態の場合、各分割電極A、B、Cと低圧電極22の間隔PA、PB、PCが一定となっているので、集塵部20の電極21、22の作成が更に容易にできるようになる。
【0030】
また、本実施形態の電気集塵機では、単一電源V0の電圧を分圧抵抗R1〜R6で所定の電圧値に分圧する複数の分圧回路100A、100B、100Cで得られた電圧値VA、VB、VCを各分割電極A、B、Cに供給するようにしているので、例えば、ある1つの分割電極(例えばA)が塵埃等の影響で短絡しても、他の分割電極(例えばB、C)に対して、電圧値が変化するものの、電圧を供給し続けることができる。従って、万一の場合にも集塵性能を維持することができる。
【0031】
また、分圧抵抗R1〜R6の設定の仕方によって、容易に各分割電極A、B、Cと低圧電極22間の電界Eの強度を変えることができるので、設計上の自由度が増す。因みに、電界強度を変えるのを、例えば分割電極A、B、Cの形状で対応しようとすると制約が出るが、分割電極A、B、Cの形状を同一にしながら抵抗値R1〜R6を変えるだけで対応が可能であるので、多段化が容易に可能である。また、1つの電源V0で対応可能なので、容積パフォーマンスやコストパフォーマンスに優れたものとすることができる。
【0032】
また、各分割電極A、B、Cと低圧電極22間の集塵効率を、表2のように設定しているので、各分割電極A、B、Cに対応する低圧電極22の位置における粉塵捕集量を同レベルに設定することができ、低圧電極22上に、送風方向の上流側から下流側にわたってほぼ均一に塵埃を堆積させることができ、塵埃保持性能の向上が図れる。
【0033】
因みに、各分割電極A、B、Cに対応する部分の集塵効率が同じになるように設定した場合は、次の表3のように粉塵捕集量が各分割電極A、B、Cに対応する位置ごとにばらついてしまい、従来と同様の問題を生じてしまう。
【表3】

【0034】
図3は第2実施形態の電気集塵機の電気集塵機の原理構成図である。
【0035】
この第2実施形態の電気集塵機では、各分割電極A、B、Cと低圧電極22の間隔PA、PB、PCが、送風方向の上流側から下流側に向かって徐々に狭くなるように設定されている(PA>PB>PC)。そして、これら各分割電極A、B、Cには、該各分割電極A、B、Cと低圧電極22間の電界Eの強度が、送風方向Sの上流側で弱く、送風方向Sの下流側で強くなるように、電圧が印加されている。
【0036】
この場合は、各分割電極A、B、Cと低圧電極22の間隔PA、PB、PCの違いにより、各分割電極A、B、Cに同じ電圧値を印加することによっても、各分割電極A、B、Cと低圧電極22間の電界強度を、送風方向の上流側が弱く下流側が強くなるように設定することができる。従って、電源回路の簡略化を図ることができる。
【0037】
なお、図3の例では、各分割電極A、B、Cの厚みを変えることによって、各分割電極A、B、Cと低圧電極22の間隔PA、PB、PCを変化させたが、図4に示すように、厚みの同じ分割電極を間隔を開けて配置することによって、低圧電極22との距離を変化させてもよい。このとき、図4に示すように、低圧電極22を複数に分割し、それぞれ間隔を開けて配置してもよい。
【0038】
また、上記各実施形態では、各分割電極A、B、Cの送風方向における長さをほぼ等しく設定した場合を示したが、各分割電極A、B、Cの送風方向における長さを異ならせてもよい。
【0039】
また、上記各実施形態では、原理的な説明をするために、高圧電極21が3つの分割電極A、B、Cに分割されている場合を示したが、分割数は幾つでも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態の電気集塵機の原理構成図である。
【図2】同電気集塵機の集塵部における電極の構成および電極間の寸法を説明するための図である。
【図3】本発明の第2実施形態の電気集塵機の原理構成図である。
【図4】第2実施形態の電気集塵機の変形例を示す図である。
【図5】(a)は従来の電気集塵機の原理構成図、(b)はその問題点の説明図である。
【図6】従来の他の電気集塵機の原理構成図である。
【符号の説明】
【0041】
10 荷電部
20 集塵部
21 高圧電極
22 低圧電極
100A,100B,100C 分圧回路
A,B,C 分割電極
V0 単一電源
R1〜R6 分圧抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風方向の上流側に空気中の微粒子に電荷を与える荷電部が配設され、その下流側に、送風方向と直交する方向に高圧電極と低圧電極とを交互に配しそれら高圧電極と低圧電極の間に発生する電界の力により前記荷電部にて電荷を与えられた微粒子を吸着保持する集塵部が配設された電気集塵機において、
前記高圧電極は、前記低圧電極と平行で且つ送風方向に沿って分割された複数の分割電極により構成されており、
これら各分割電極に、該各分割電極と前記低圧電極間の電界強度が送風方向の上流側で弱く送風方向の下流側で強くなるように、電圧が印加されていることを特徴とする電気集塵機。
【請求項2】
請求項1に記載の電気集塵機であって、
前記各分割電極と前記低圧電極の間隔が一定に保持されていることを特徴とする電気集塵機。
【請求項3】
請求項2に記載の電気集塵機であって、
単一電源の電圧を分圧抵抗で所定の電圧値に分圧する分圧回路を複数有し、各分圧回路で得られた電圧値を前記各分割電極に供給することを特徴とする電気集塵機。
【請求項4】
請求項1に記載の電気集塵機であって、
前記各分割電極と前記低圧電極の間隔が、送風方向の上流側から下流側に向かって徐々に狭くなるように設定されていることを特徴とする電気集塵機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気集塵機であって、
前記各分割電極と前記低圧電極間の集塵効率が、前記各分割電極に対応する前記低圧電極の位置における粉塵捕集量が同じになるように設定されていることを特徴とする電気集塵機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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