説明

電気電子機器用キャビネット

【課題】扉により開閉自在とした開口枠部にラックユニットの搭載、メンテナンスを行う際に作業の障害とならないように開口枠部を開放できる筋交を設けて耐震強度に優れた電気電子機器用キャビネットを提供する。
【解決手段】扉2により開閉自在とした開口枠部11に設けた筋交を筋交用部材4を開口枠部11に取付けた状態で筋交の解除を可能なものとしたり、扉2により開閉自在とした開口枠部11に設けた筋交を着脱自在な筋交用部材4によりなるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーム構造の電気電子機器用キャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
四角枠状に組み立てたフレームの側面の開口枠部に側板、扉等を取り付けた電気電子機器用キャビネットは広く使用されている。このようなキャビネットは側板がフレームに強固に固定されているので、側板が補強部材の役割を果たし、地震の揺れに対しフレーム構造の歪みをある程度防ぐことが可能である。さらに、耐震補強のために側面の開口枠部に筋交を入れたものも知られている(例えば、特許文献1参照)。
これらはいずれも、地震によりキャビネットの側板が設けられている面と平行に揺れた場合にその効果を発揮するものである。
【0003】
ところが、キャビネットの正面や背面など扉により開閉自在とした開口枠部はこの扉を開けてラックユニットの搭載、メンテナンスを行う際に作業の障害とならないものとするため開口枠部が完全に開放されている必要があり筋交による補強ができないものとされていた。また、扉の一端側は鎖錠装置により連繋されているに過ぎないことから側板のように扉による開口枠部の補強効果を期待できないので、地震によりキャビネットが扉が設けられている面と平行に揺れた場合には、フレーム構造の歪みを防ぐことが困難であり、キャビネット全体の耐震強度が劣るものとなる問題がある。
【特許文献1】特開平9−321452公開公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記のような従来の問題点を解決して、扉により開閉自在とした開口枠部にラックユニットの搭載、メンテナンスを行う際に作業の障害とならないように開口枠部を開放できる筋交を設けて耐震強度に優れた電気電子機器用キャビネットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電気電子機器用キャビネットは、扉により開閉自在とした開口枠部に設けた筋交を筋交用部材を開口枠部に取付けた状態で筋交の解除を可能としたことを特徴とするものを第1の基本の発明とし、扉により開閉自在とした開口枠部に設けた筋交を着脱自在な筋交用部材によりなるものとしたことを特徴とするものを第2の基本の発明とする。
【0006】
また、これらの発明において、筋交用部材の少なくとも一方の端部をワンタッチ式の取付金具に形成して開口枠部に連結させることが好ましい。さらに、これらにおいて筋交用部材の一方の端部を開口枠部に軸着したものとすることが好ましいものである。
【発明の効果】
【0007】
前記した本発明の電気電子機器用キャビネットは、開口枠部に設けた筋交を筋交用部材を開口枠部に取付けた状態で筋交の解除を可能としたものにあっては、扉を開けてラックユニットの搭載、メンテナンスを行う際に該筋交用部材による筋交の解除を行えば開口枠部は開放された状態となり筋交用部材に邪魔されず作業ができるものである。この場合に筋交用部材を開口枠部に取付けた状態で筋交の解除を可能としているので、筋交用部材は開口枠部から離脱させることがないので筋交用部材の管理が容易なものとなる。そして、作業終了後は再び筋交用部材により筋交を行うものである。
【0008】
また、扉により開閉自在とした開口枠部に筋交を設けたものであるので、扉が開口枠部に蝶番、鎖錠装置により連繋されているに過ぎないものであっても筋交により開口枠部は補強されており、キャビネットの耐震強度を高めることができるものである。そして、開口枠部に設けた筋交を着脱自在な筋交用部材によりなるものとしたものにあっては、扉を開けてラックユニットの搭載、メンテナンスを行う際に該筋交用部材を取り外して作業を行うことができるものであり、作業終了後は再び筋交用部材を取り付けるものである。
【0009】
さらに、筋交用部材の少なくとも一方の端部をワンタッチ式の取付金具に形成して開口枠部に連結させたものとすると、開口枠部に設けた筋交を着脱自在な筋交用部材によりなるものとしたものにあっては、筋交用部材の着脱作業が容易である。また、開口枠部に設けた筋交を筋交用部材を開口枠部に取付けた状態で筋交の解除を可能としたものにあっては、筋交の解除及び設置作業が容易となる。また、筋交用部材の一方の端部を開口枠部に軸着したものとすると、筋交用部材の着脱或いは筋交の解除及び設置が該軸着個所を起点に筋交用部材を回動させて行うことができ作業効率の良いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図に基づき説明する。
図1に示す第1の実施形態では、1はフレームを四角箱状に組み合わせた電気電子機器用キャビネットのフレーム枠である。このフレーム枠1は前後の開口枠部11、11を扉2により開閉自在とし、左右の開口枠部12、12には側板3を取り付け、また、上下の開口枠部13、14には天板、底板を取り付けるものとしている。
【0011】
そして、前記扉2により開閉自在とし前後の開口枠部11、11には筋交が設けられている。この筋交は開口枠部11に取付けた状態で筋交の解除を可能とした筋交用部材4、4よりなるものである。
【0012】
開口枠部11に取付けた状態で筋交を解除を可能とした筋交用部材4、4は、図2―図7に示すように筋交用部材4の一方の端部をワンタッチ式の取付金具5に形成して開口枠部11の一方の縦フレーム11aに設けた係止突起6に連結し、他方の端部に形成した長孔状の軸孔7を他方の縦フレーム11aに設けた支軸8に軸着している。そして、ワンタッチ式の取付金具5を係止突起6から外して軸孔7を起点に他方の縦フレーム11aに沿うように回動して筋交を解除するものである。この場合に、開口枠部11の側部すなわち縦フレーム11aに筋交用部材4の解除状態を保持する手段としてワンタッチ式の取付金具5を係止する磁石や係止具を設けておくことが好ましい。
【0013】
なお、ワンタッチ式の取付金具5は図4―図6に示すものは、両端に補強片51、51を折曲形成した取付金具本体50に一方の補強片51から中央に達する係止凹部52を設けたうえ該係止凹部52の先端を閉塞自在とした掛け金53を該取付金具本体50に軸支したものである。そして、縦フレーム11aに取り付けた取付片6aに突設して設けた先端を拡大部61に形成した係止突起6に取付金具5の係止凹部52を嵌合したうえ係止凹部52の先端側を掛け金53により閉塞して係止凹部52が係止突起6から外れないように連結するものである。
【0014】
また、筋交用部材4は図示のように細い棒状の鉄等の金属よりなるものとしてもよいが、強靭な合成樹脂繊維からなる帯材からなるものとしてもよい。
このように構成したものは、筋交用部材4を開口枠部11に対角線を形成するように設置することとなり、地震によりキャビネットが扉が設けられている面と平行に揺れた場合に、筋交用部材4にかかる引張力により開口枠部11が左右方向に変形することを防ぐことが可能となり、キャビネットの耐震強度を高めることができるものである。
【0015】
なお、上記実施形態は2本の筋交用部材4、4を対角線を形成するように設置しているが、1本のみとしても良い。また、筋交は図1の前側の開口枠部のように下半分の箇所に設けておけば、キャビネットの上側にユニットを搭載する場合や上側のユニットをメンテナンスする時には、筋交用部材4の解除が不要となるものである。
【0016】
さらに、図8、図9に示す第2の実施形態では、筋交用部材を交差させることなく、2本の短い筋交用部材4、4を上下にそれぞれ配置し、傾斜方向を逆にして設けても良い。
このような構成とすれば、例えばキャビネットの上側にラックユニットを搭載する場合や上側のユニットをメンテナンスする時には、上側の筋交用部材4を1本のみを回動して筋交を解除するだけでよく、作業性が良くなるものである。
【0017】
図10に示す第3の実施形態では、回動保持部材9によって、2本の筋交用部材4、4を中央で回動可能に結合すると共に、筋交用部材4、4の一方の端部を右側の縦フレーム11aに軸着したものとすれば、開口枠部11に対角線を形成する様に設けた2本の筋交用部材4を同時に回動することができ、1回の動作で筋交を解除できるので、作業性が良くなるものである。なお、筋交用部材4、4の他方の端部は実施形態1と同様のワンタッチ式の取付金具とすればよい。
【0018】
図11に示す第4の実施形態では、2本の筋交用部材4、4を中央で溶接又はねじ止め等で互いに固着すると共に、筋交用部材4、4の一方の端部を右側の縦フレーム11aの上下に扉のヒンジのように回動自在に枢着したものとすれば、扉を開けるように、開口枠部11に対角線を形成する様に設けた2本の筋交用部材4を同時に回動することができ、1回の動作で筋交を解除できるので、作業性が良くなるものである。
【0019】
図12、図13に示す第5の実施形態では、開口枠部11の対角線の略半分の長さに形成した筋交用部材4、4の一方の端部を右側の縦フレーム11aの上下に扉のヒンジのように回動自在に枢着し、他方の端部は結合金具10に溶接又はねじ止めで固着しておく。同様に形成した筋交用部材4、4を左側の縦フレーム11aの上下に回動自在に枢着し、結合金具10同士を接合可能なものとしておいて、両扉を開けるような動作で筋交を解除できるものである。
【0020】
また、開口枠部11に設けた筋交を筋交用部材4を開口枠部11に取付けた状態で筋交の解除を可能としたものにあっては、該筋交用部材4による筋交の解除を行えば開口枠部11は図3、図9に示すように開放された状態となり筋交用部材4に邪魔されず前記と同様の作業ができるものである。この場合に筋交用部材4を開口枠部11に取付けた状態で筋交の解除を可能としているので、筋交用部材4は開口枠部11から離脱することがないので管理が容易なものとなものである。そして、作業終了後は再び筋交用部材4により筋交を行えばよいものである。
【0021】
図14に示す第6の実施形態では、筋交を着脱自在な筋交用部材4、4としたものである。筋交用部材4の両端部には、前述したワンタッチ式の取付金具5が設けられており、ラックユニットをキャビネットに搭載する時やメンテナンスを行う時には、このワンタッチ式の取付金具5を操作して筋交用部材4、4を取り外して行うことができるものであり、作業終了後は再び筋交用部材4を取り付ければよい。
【0022】
なお、筋交を着脱自在なものとする手段としてはワンタッチ式の取付金具に限定されるものではなく、着脱できるものであればどのような手段を採用してもよいものである。
また、筋交用部材4、4を扉に一体形成し、筋交用部材4、4の扉のヒンジ側の一端を扉と同様に開口枠部11の縦フレーム11aにヒンジにより枢着したうえ、他端を扉の鎖錠ハンドルを操作することにより、鎖錠ハンドルの鎖錠棒と連動する筋交用部材4、4の一方の先端側に設けたワンタッチ式の取付金具が、開口枠部11の縦フレーム11aに連結するようにすれば、通常の扉の開閉動作だけで、筋交の着脱を行うことができるものである。
【0023】
さらに筋交用部材4、4を扉に一体形成した場合には、上記の鎖錠ハンドルの鎖錠棒と連動する筋交用部材4、4の一方の先端側に設けたワンタッチ式の取付金具の代わりに、筋交用部材4、4の他端には扉面に垂直な突起を内向きに設けると共に、扉を閉塞した時に開口枠部11に前記突起が嵌挿する挿入孔を設けた構造としても、通常の扉の開閉動作だけで、筋交の着脱を行うことができるものである。なお、突起は筋交用部材4、4の端部だけでなく、扉自体にも垂直な突起を内向きに設け、対応する挿入孔を開口枠部11に設けたものとすれば、扉自体も側板と同様の補強部材の役割を果たし好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す斜視図。
【図2】筋交を開口枠部に取付けた状態で筋交の解除を可能とした例を示す正面図。
【図3】筋交を開口枠部に取付けた状態で筋交の解除を可能とした例の筋交解除状態を示す正面図。
【図4】ワンタッチ式の取付金具と係止突起の係合状態を示す斜視図。
【図5】ワンタッチ式の取付金具と係止突起の係合状態を解除する過程を示す斜視図。
【図6】ワンタッチ式の取付金具と係止突起の係合解除状態を示す斜視図。
【図7】筋交用部材の一方の端部を開口枠部に軸着した1例を示す斜視図。
【図8】本発明の第2の実施形態を示す正面図。
【図9】本発明の第2の実施形態を態様を異にして示す正面図。
【図10】本発明の第3の実施形態を示す正面図。
【図11】本発明の第4の実施形態を示す斜視図。
【図12】本発明の第5の実施形態を示す正面図。
【図13】本発明の第5の実施形態を態様を異にして示す斜視図。
【図14】本発明の第6の実施形態を示す正面図。
【符号の説明】
【0025】
2 扉
4 筋交用部材
5 ワンタッチ式の取付金具
11 開口枠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉により開閉自在とした開口枠部に設けた筋交を筋交用部材を開口枠部に取付けた状態で筋交の解除を可能としたことを特徴とする電気電子機器用キャビネット。
【請求項2】
扉により開閉自在とした開口枠部に設けた筋交を着脱自在な筋交用部材によりなるものとしたことを特徴とする電気電子機器用キャビネット。
【請求項3】
筋交用部材の少なくとも一方の端部をワンタッチ式の取付金具に形成して開口枠部に連結させた請求項1又は2に記載の電気電子機器用キャビネット。
【請求項4】
筋交用部材の一方の端部を開口枠部に軸着した請求項1又は2又は3に記載の電気電子機器用キャビネット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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