説明

電池の内圧測定方法

【課題】電池ケースの変位量に基づいて電池の内圧を精度良く測定することができる電池の内圧測定方法を提供すること。
【解決手段】電池ケース12内に捲回電極体11及び電解液を収容して密閉したリチウムイオン二次電池10の内圧を測定する方法において、電池ケース12に所定の外部圧力を加えた後、その電池10を真空チャンバ20内に配置して減圧雰囲気下にて電池ケース12の変位量及び真空チャンバ20内の圧力変化を検出し、それら検出した変位量及び圧力変化に基づいて電池10の内圧を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池ケース内に電池要素を収容した電池の内圧を測定する内圧測定方法に関する。より詳細には、減圧雰囲気下における電池ケースの変位量に基づいて電池の内圧を測定(推定)する内圧測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ポータブル機器や携帯機器などの電源として、また、電気自動車やハイブリッド自動車などの電源として、様々な二次電池が開発されている。このような二次電池の中には、正極集電体に正極活物質を塗布してなる正極と、負極集電体に負極活物質を塗布してなる負極とを、セパレータを介して捲回してなる捲回体(電池要素)、電解液、及びこれらを収容する電池ケースを有しているものがある。
【0003】
この種の二次電池では、集電体と活物質とのコンタクト、活物質とセパレータのコンタクトを如何にして確保するかが、内部抵抗、充放電サイクル性能などの諸性能を高める上で重要となっている。そこで、電極とセパレータとを密着させるために、捲回体を収容した電池ケースの注入口から電解液を内部に充填した後、電池ケース内を減圧して注入口を封止している。また、電池ケース内を減圧することにより、充電時における電池ケースの寸法変化を抑えることができ、また、電解液をセパレータに短時間で含浸させることができる等という効果もある。
【0004】
このとき、電池ケース内が所定圧まで減圧されていないと、電池の性能が低下してしまう。そのため、減圧封止後に電池の内圧を測定(推定)して、電池ケース内が所定圧まで減圧されているか否かを検査している。
ここで、電池の内圧を測定する方法としては、例えば、真空チャンバ内に電池を配置して減圧雰囲気下における電池ケースの変位量、及び真空チャンバ内の圧力変化を検出し、それら検出された変位量及び圧力変化に基づき電池の内圧を推定するものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−327097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の内圧測定方法では、精度良く電池の内圧を測定(推定)することができないという問題があった。
なぜなら、従来の内圧測定方法では、電池ケース内外の圧力差によって生じる電池ケースの変位量を検出しなければ、電池の内圧を正確に推定することができない。ところが、真空チャンバ内に電池を配置したときに圧力差によって電池ケースに作用する荷重と比べると、電池要素の膨張によって電池要素から電池ケースに伝わる荷重が無視できないほどに大きい。そのため、検出される電池ケースの変位量には、電池要素の膨張によって生じる電池ケースの変位量も含まれてしまうので、電池の内圧を正確に測定することができないのである。
【0007】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、電池ケースの変位量に基づいて電池の内圧を精度良く測定することができる電池の内圧測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、電池ケース内に電池要素及び電解液を収容して密閉した電池の内圧を測定する方法において、前記電池ケースに所定の外部圧力を加えた後、その電池を真空チャンバ内に配置して減圧雰囲気下にて前記電池ケースの変位量及び前記真空チャンバ内の圧力変化を検出し、それら検出した変位量及び圧力変化に基づいて前記電池の内圧を推定することを特徴とする。
【0009】
この電池の内圧測定方法では、電池を真空チャンバ内に配置する前に、電池ケースに所定の外部圧力を加える。このとき、外部圧力は、電池ケースの対向する幅広面に対して加える。これにより、電池要素の形状や電解液の含浸などによる電池要素の膨らみが抑えられ、電池要素の形状が固定される。そのため、真空チャンバ内で減圧雰囲気下にて電池ケースの変位量を検出する際に、電池要素から電池ケースに伝わる荷重を除去することができる。
【0010】
そして、真空チャンバ内に配置した電池について、減圧雰囲気下にて電池ケースの変位量及び真空チャンバ内の圧力変化を検出し、それら検出した変位量及び圧力変化に基づいて電池の内圧を推定する。
なお、変位量及び圧力変化から電池の内圧を推定する方法は、真空チャンバ内の圧力変化に従って電池ケースの変位がない区間と変位がある区間の傾きに対して、それぞれ接線(圧力変化に対する変位量の割合を表す直線)を引き、それらの交点を変位開始点とし、その変化開始点における真空チャンバ内の圧力を電池の内圧であると推定すれば良い(特開平9−166510号公報参照)。
【0011】
このとき、電池要素の形状が固定されているため、電池ケースの内側と外側との圧力差によって生じる電池ケースの変位のみが検出される。そして、このようにして検出された変位量に基づいて電池の内圧を推定するので、精度良く電池の内圧を測定することができる。
【0012】
ここで、上記した電池の内圧測定方法において、前記外部圧力として、前記電池要素の膨らみによって前記電池要素から前記電池ケースに伝わる荷重と釣り合うように前記電池要素を変形させられる圧力を前記電池ケースに加えれば良い。
【0013】
このようにすることにより、真空チャンバ内で減圧雰囲気下にて電池ケースの変位量を検出する際に、電池要素から電池ケースに伝わる荷重を確実に除去することができる。その結果、精度良く電池の内圧を測定することができる。
【0014】
そして、上記した電池の内圧測定方法において、前記外部圧力を、0.2MPa〜3.0MPaの範囲内で設定することが望ましい。
【0015】
電池ケースに加える外部圧力が0.2MPa未満であると、電池要素の膨らみを抑えて形状を固定することができない一方、電池ケースに加える外部圧力が3MPaを超えると、電池ケースや電池要素が必要以上に変形してしまって損傷するおそれがある。
従って、上記した範囲内の圧力を外部圧力として電池ケースに加えることにより、電池要素を損傷させることなく、電池要素の膨らみを抑えて形状を固定することができる。これにより、真空チャンバ内で減圧雰囲気下にて電池ケースの変位量を検出する際に、電池要素から電池ケースに伝わる荷重が除去されているため、精度良く電池の内圧を測定することができる。
【0016】
ここで、電池ケースの封口が完了した後に、電池ケースに外部圧力を加えると、電池ケースが内側に変形して内容積が減少し電池内圧が増加するおそれがある。そして、このような現象が発生してしまうと、電池の内圧を精度良く測定することができない。
【0017】
そこで、上記したいずれか1つの電池の内圧測定方法において、前記電池ケース内に前記電池要素を収容した後、前記電池ケースの封口が完了するまでに、前記電池ケースに前記外部圧力を加えることが望ましい。
【0018】
このように、電池要素を収容した電池ケースの封口が完了するまでに電池ケースに外部圧力を加える、つまり、電池ケースに外部圧力を加えた後に電池ケースの封口を行う、あるいは電池ケースに外部圧力を加えた状態で電池ケースの封口を行うことにより、外部圧力を加えることによって電池内圧が増加することを確実に防止することができる。従って、精度良く電池の内圧を測定することができる。
【0019】
そして、上記したいずれか1つの電池の内圧測定方法を用いるのは、前記電池要素が、正極集電体に正極活物質を塗布してなる正極と、負極集電体に負極活物質を塗布してなる負極とを、セパレータを介して捲回して形成した捲回体である場合が好適である。
【0020】
捲回体は膨らみやすい形状であるため、捲回体から電池ケースに荷重が伝わりやすい。そのため、電池ケースに外部圧力を加えることにより得られる効果が、電池要素が正極、負極、セパレータを積層した積層体である場合に比べて大きいからである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る電池の内圧測定方法によれば、上記した通り、減圧雰囲気下にて圧力差により生じる電池ケースの変位量を正確に検知することができるので、電池の内圧を精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】リチウムイオン二次電池を示した外観斜視図である。
【図2】電池ケースに対して外部圧力を加えている様子を示す図である。
【図3】外部圧力と捲回電極体の厚み変化量との関係を示す図である。
【図4】リチウムイオン二次電池を真空チャンバ内に配置して真空チャンバ内を減圧する様子を示す図である。
【図5】真空チャンバ内の圧力と電池ケースの変位量との関係を示す図である。
【図6】比較例及び実施例の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の電池の内圧測定方法を具体化した実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。ここでは、電池要素が捲回体であるリチウムイオン二次電池の内圧を測定する場合について例示する。
【0024】
そこで、まず、内圧を測定するリチウムイオン二次電池について、図1を参照しながら簡単に説明する。図1は、リチウムイオン二次電池を示した外観斜視図である。図1に示すように、リチウムイオン二次電池10は、電池要素である扁平形状の捲回電極体11と、捲回電極体11を内部に収容する直方体形状の電池ケース12とを備えている。電池ケース12は、有底矩形筒状の角型缶12aに蓋体12bがレーザシーム溶接によって接合された密閉容器になっている。そして、こうした電池ケース12の蓋体12bに、捲回電極体11の正極と電気的に接続する正極端子13と、捲回電極体11の負極と電気的に接続する負極端子14が突出して設けられている。
【0025】
捲回電極体11は、巻芯に対して正極活物質が塗布された正極シートと負極活物質が塗布された負極シートとの間にセパレータを挟み、積層された状態で捲かれたものである。なお、正極活物質としては、充電時にLiイオンを吸蔵し、放電時にLiイオンを放出するものであれば良く、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。また、負極活物質としては、放電時にLiイオンを吸蔵し、充電時にLiイオンを放出するものであれば良く、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素や、ソフトカーボン、ハードカーボン等の非晶質のアモルファス系炭素が挙げられる。
【0026】
このような捲回電極体11は、次のようにして形成されている。まず、厚さ0.1mm程度の電極シートやセパレータがそれぞれ100層ほど巻芯に捲かれて円筒形状の電極捲回体が形成される。そして、巻芯に捲回された正極シートやセパレータがカットされ、その切断箇所が巻止めテープによって止められて電極捲回体となる。その後、円筒形状であったものがプレスによる押し潰しによって扁平形状に変形されて扁平形状の捲回電極体11が形成される。
【0027】
電池ケース12には、端子13,14の間に注入口が形成されており、その注入口から電解液が注入される。そして、注入口は、電池ケース12内が減圧された後、栓15によって封止される。なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボイト(PC)、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート類とジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネート類との混合有機溶媒中に、LiPF、LiCIO、LiBF等の支持電解質を溶解させた溶液を使用することができる。
【0028】
ここで、電池ケース12内が所定圧まで減圧されていないと、電池性能に悪影響を及ぼしてしまうため、減圧封止後にリチウムイオン二次電池10の内圧を測定(推定)して、電池ケース12内が所定圧まで減圧されているか否かを検査する必要がある。そのため、本実施の形態では、以下に述べるようにしてリチウムイオン二次電池10の内圧を測定している。
【0029】
この電池内圧を測定方法について、図2〜図6を参照しながら説明する。図2は、電池ケースに対して外部圧力を加えている様子を示す図である。図3は、外部圧力と捲回電極体の厚み変化量との関係を示す図である。図4は、リチウムイオン二次電池を真空チャンバ内に配置して真空チャンバ内を減圧する様子を示す図である。図5は、真空チャンバ内の圧力と電池ケースの変位量との関係を示す図である。図6は、比較例及び実施例の測定結果を示す図である。
【0030】
本実施の形態に係る内圧測定方法では、まず、図2に示すように、リチウムイオン二次電池10の電池ケース12に所定の外部圧力を加える。外部圧力は、電池ケース12の幅広面12mの両側から押圧部材を介して均一に加えられる。これにより、捲回電極体11の膨らみ(厚み)が抑えられて形状が固定される。
【0031】
ここで、電池ケース12に加える外部圧力の大きさは、0.2MPa〜3.0MPaの範囲内で設定すれば良い。
なぜなら、図3に示すように、外部圧力が0.2MPa未満では、捲回電極体11の厚み変化量が大きくなっている。これは、外部圧力が0.2MPa未満の領域では、捲回電極体11の正極シート、セパレータ、負極シートの間に存在する隙間がなくなって厚みが変化しているため、外部圧力の変化に対する厚みの変化量が大きいと考えられる。従って、外部圧力が0.2MPa未満では、捲回電極体11の膨らみを抑えて形状を固定することができないと考えられるからである。
一方、外部圧力が3.0MPaを超えると、角型缶12aと蓋体12bとの接合部に応力がかかり、漏れが発生するおそれがあり、また、電極体中の部材としてイオン透過性と電子伝導の絶縁性を有するセパレータの強度を超えて、開回路状態の電圧保持性が失われてしまうおそれもあるからである。
【0032】
このような理由から、電池ケース12に加える外部圧力の大きさを、0.2MPa〜3.0MPaの範囲内で設定することにより、電池ケース12や捲回電極体11を損傷させることなく、捲回電極体11の膨らみを抑えて形状を固定することができる。
【0033】
そして、電池ケース12に外部圧力を加えるのは、電池ケース12内に捲回電極体11を収容した後から電池ケース12の封口が完了するまでに行うことが好ましい。つまり、電池ケース12に外部圧力を加えた後に電池ケース12の封口を行う、あるいは電池ケース12に外部圧力を加えた状態で電池ケース12の封口を行うと良い。
【0034】
なぜなら、電池ケース12の封口(注入口の封止)が完了した後に、電池ケース12に外部圧力を加えると、電池ケース12が内側に変形して内容積が減少し電池内圧が増加するおそれがある。そして、このような現象が発生してしまうと、この後に行う内圧の測定を精度良く行うことができないからである。
【0035】
次に、上記のようにして外部圧力を電池ケース12に加え、捲回電極体11の膨らみを抑えて形状を固定したリチウムイオン二次電池10を、図4に示すように、真空チャンバ20内に配置する。そして、真空チャンバ20に接続された不図示の真空ポンプを作動させて真空チャンバ20内を排気して減圧雰囲気下にする。
【0036】
ここで、大気中ではリチウムイオン二次電池10には、全周囲にわたって大気圧がかかっている。真空チャンバ20内にリチウムイオン二次電池10を配置して徐々に圧力を低下させていくと、電池ケース12内の圧力(電池内圧)に周囲の圧力が近づいていく。そして、真空チャンバ20内の圧力が低くなると、電池ケース12が全周囲から押圧され、均一に圧力を受けている状態(均圧状態)が解除される。そうすると、電池ケース12は外向きに膨張(変位)していく。このときの電池ケース12の変位量をマイクロメータ等により検出するとともに、真空チャンバ20内の圧力を検出する。
【0037】
この検出結果を図5に示す。図5において、実線で示すものが本実施の形態に係る測定方法による検出結果であり、破線で示すものが従来の測定方法による検出結果である。
図5から、真空チャンバ20内の圧力が−40kPa〜−50kPa程度を境にして、電池ケース12に変位が生じる変位領域Aと変位が生じない無変位領域Bとに分かれていることが判る。そして、変位領域Aにおいて、本実施の形態に係る測定方法では、圧力変化に伴う変位量の割合(傾き)が一定であるのに対し、従来の測定方法では、圧力変化に伴う変位量の割合(傾き)が一定でないことが判る。
【0038】
これは、本実施の形態に係る測定方法では、電池ケース12内外の圧力差によって生じる電池ケース12の変位量が検出されているのに対し、従来の測定方法では、電池要素の膨張によって生じる電池ケースの変位量も検出されているからである。このことから、本実施の形態に係る測定方法によれば、上記したように所定の外部圧力を加えることにより、捲回電極体11の膨らみが抑えられて形状が固定されていることが確認された。
【0039】
そして、図5に示す特性を利用し次のようにして、リチウムイオン二次電池10の内圧を推定する。
すなわち、まず、変位領域Aと無変位領域Bのそれぞれの傾きに対して、それぞれ接線(圧力変化に対する変位量の割合を表す直線)La,Lbを引く。次に、接線Laと接線Lbとの交点である変位開始点Cを求める。
【0040】
ここで、本実施の形態に係る測定方法では、圧力変化に伴う変位量の割合(傾き)が一定であるため、接線Laを正確に引くことができるので、変位開始点Cを正確に求めることができる。これに対して、従来の測定方法では、圧力変化に伴う変位量の割合(傾き)が一定でないため、接線Laを正確に引くことができないので、変位開始点Cを正確に求めることができない。
【0041】
その後、上記のようにして正確に求められた変位開始点Cにおける真空チャンバ20内の圧力Pを、リチウムイオン二次電池10の内圧であると推定する。このようにして、本実施の形態に係る測定方法によれば、リチウムイオン二次電池10の内圧を精度良く測定することができる。
【0042】
そして、リチウムイオン二次電池の内圧を実測可能な試作電池を製作し、電池ケースに加える外部圧力を変化させて電池内圧を測定したので、その結果を図6に示す。図6には、電池内圧の実測値と測定(推定)値の差と、電池内圧の実測値と測定(推定)値の差の標準偏差σを示している。
ここで、比較例は、電池ケースに加える外部圧力が0MPaで従来の測定方法に相当する。また、実施例1は電池ケースに加える外部圧力が0.1MPaの場合、実施例2は電池ケースに加える外部圧力が0.2MPaの場合、実施例3は電池ケースに加える外部圧力が1.1MPaの場合についてそれぞれ示している。
【0043】
図6に示すように、比較例では、電池内圧の実測値と測定(推定)値の差が9.6kPaであり、誤差が10%以上もあった。また、電池内圧の実測値と測定(推定)値の差の標準偏差σは3.85であった。
これに対して、実施例1では、電池内圧の実測値と測定(推定)値の差が7.47kPaとなるが、依然として誤差が大きい。また、電池内圧の実測値と測定(推定)値の差の標準偏差σは3.87であり、比較例とほとんど変わらない。この実施例1の結果から、電池ケースに加える外部圧力が弱いと、電池内圧を精度良く測定することができないことが確認された。
【0044】
次に、実施例2では、電池内圧の実測値と測定(推定)値の差が0.23kPaとなり、誤差がほとんどなくなった。また、電池内圧の実測値と測定(推定)値の差の標準偏差σは0.451となり、比較例と比べて大幅に小さくなった。この実施例2の結果から、電池ケースに加える外部圧力が0.2MPaであれば、電池内圧を精度良く測定することができることが確認された。
同様に、実施例3では、電池内圧の実測値と測定(推定)値の差が−0.164kPaとなり、誤差がほとんどなくなった。また、電池内圧の実測値と測定(推定)値の差の標準偏差σは0.408となり、比較例と比べて大幅に小さくなった。この実施例3の結果から、電池ケースに加える外部圧力を0.2MPa以上に設定すれば、電池内圧を精度良く測定することができることが確認された。
【0045】
以上、詳細に説明したように本実施の形態に係る電池の内圧測定方法によれば、リチウムイオン二次電池10を真空チャンバ20内に配置する前に、電池ケース12に所定の外部圧力を加えるので、捲回電極体11の膨らみが抑えられて形状が固定される。そのため、真空チャンバ20内で減圧雰囲気下にて電池ケース12の変位量を検出する際に、捲回電極体11から電池ケース12に伝わる荷重を除去することができる。
【0046】
これにより、電池ケース12の内側と外側との圧力差によって生じる電池ケース12の変位のみを検出することができる。そして、このようにして検出された変位量に基づいてリチウムイオン二次電池10の内圧を推定するので、リチウムイオン二次電池10の内圧を精度良く測定することができる。
【0047】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記した実施の形態では、電池要素が捲回電極体11である電池の内圧を測定する場合について例示したが、本発明は、正極集電体に正極活物質を塗布してなる正極と、負極集電体に負極活物質を塗布してなる負極とを、セパレータを介して積層して形成した積層電極体を電池要素とする電池にも適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 リチウムイオン二次電池
11 捲回電極体
12 電池ケース
12a 角型缶
12b 蓋体
12m 幅広面
13 正極端子
14 負極端子
15 栓
20 真空チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池ケース内に電池要素及び電解液を収容して密閉した電池の内圧を測定する方法において、
前記電池ケースに所定の外部圧力を加えた後、その電池を真空チャンバ内に配置して減圧雰囲気下にて前記電池ケースの変位量及び前記真空チャンバ内の圧力変化を検出し、それら検出した変位量及び圧力変化に基づいて前記電池の内圧を推定する
ことを特徴とする電池の内圧測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載する電池の内圧測定方法において、
前記外部圧力として、前記電池要素の膨らみによって前記電池要素から前記電池ケースに伝わる荷重と釣り合うように前記電池要素を変形させられる圧力を前記電池ケースに加える
ことを特徴とする電池の内圧測定方法。
【請求項3】
請求項2に記載する電池の内圧測定方法において、
前記外部圧力を、0.2MPa〜3.0MPaの範囲内で設定する
ことを特徴とする電池の内圧測定方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載するいずれか1つの電池の内圧測定方法において、
前記電池ケース内に前記電池要素を収容した後、前記電池ケースの封口が完了するまでに、前記電池ケースに前記外部圧力を加える
ことを特徴とする電池の内圧測定方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載するいずれか1つの電池の内圧測定方法において、
前記電池要素が、正極集電体に正極活物質を塗布してなる正極と、負極集電体に負極活物質を塗布してなる負極とを、セパレータを介して捲回して形成した捲回体である
ことを特徴とする電池の内圧測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−114987(P2013−114987A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262077(P2011−262077)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】