説明

電池処理装置

【課題】電池を破砕処理するにあたり、電池内に含まれる電解液を分離し回収するとともに、フッ素やリン、ホウ素が含有された排水を少なくできる電池処理装置を提供する。
【解決手段】電池破砕物B1が投入される電解液分離槽20と、電解液分離槽20で電解液が分離された電池破砕物B2が投入される洗浄槽30とを備え、電解液分離槽20には電池破砕物B1から分離し洗浄水の液面に浮上した電解液を回収する電解液回収手段22が設けられ、洗浄槽30には洗浄水を攪拌する攪拌手段31が設けられている。洗浄水に溶け込む電解液の量が少なくなり、洗浄水に溶け込んだ電解液を処理する薬剤や熱源の量を少なくでき、排水処理負荷を低減できる。攪拌された洗浄水により電池破砕物B2を洗浄でき、電池破砕物B2に残留する電解液をさらに分離できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池処理装置に関する。さらに詳しくは、電池を破砕処理するにあたり、電池内に含まれる電解液を分離し回収する電池処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等の二次電池は、数百回程度の充放電を繰り返すと電極や電解液の劣化等が生じ、充電できる電気量が減少してくる。このような電池は寿命と判断され、廃電池として廃棄される。ここで、リチウムイオン電池には、コバルトやニッケル等の希少金属をはじめとする有価物が使用されているため、電池を解体して有価金属を回収し再資源化する処理が行なわれる。
【0003】
一般に、電池の再資源化は、電池を破砕した後に種々の方法を用いて有価金属を選別することにより行われる。
ところが、電池を破砕すると電解液が漏洩するため、有価金属が電解液に汚染され、回収した有価金属の利用価値が著しく低下するという問題がある。
また、リチウムイオン電池の電解液には、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)等の電解質が含まれおり、電解液中ではPF6イオンやBF4イオン等の形態で存在する。これらのフッ素やリン、ホウ素が排気ガスや排水として排出されると、環境を汚染するという問題がある。
そのため、電池を破砕処理するにあたり、電池内に含まれる電解液を分離し回収する必要がある。
【0004】
電池内に含まれる電解液を分離する方法として、電池を破砕した後に破砕物を水洗浄する方法が知られている。電解液が洗浄水と接触すると、電解質はPF6イオン、BF4イオン等の形態で洗浄水へ移行する。この現象を利用すれば、電池を破砕した後に破砕物を水洗浄して、電解液を分離できる。
上記の水洗浄においては、洗浄水の量を増加すれば、PF6イオン、BF4イオン等のほぼ全量を分離できる。しかし、洗浄水の量を増加すると、フッ素やリン、ホウ素が含有された排水が多くなり、排水処理のコストが増加するという問題がある。
【0005】
一方、特許文献1には、電池を破砕した後に、加熱等の手段を加えて電解液から有機溶媒等の揮発性物質を除去し、残留する六フッ化リン酸リチウム等に対して酸を添加して熱分解し、フッ素やリンをそれぞれフッ化物イオンやリン酸イオンへと変化させ、水酸化カルシウム等を添加して固定し分離する方法が記載されている。
【0006】
しかるに、特許文献1に記載の方法は化学的な分解・固定化操作であるので、対象とするPF6イオン等の分量に相応する薬剤の分量が必要であり、エネルギーも必要となる。そのため処理にかかるコストが高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−106221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、電池を破砕処理するにあたり、電池内に含まれる電解液を分離し回収するとともに、フッ素やリン、ホウ素が含有された排水を少なくできる電池処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の電池処理装置は、洗浄水を保持し、電池破砕物が投入される電解液分離槽を備え、該電解液分離槽には、前記電池破砕物から分離し前記洗浄水の液面に浮上した電解液を回収する電解液回収手段が設けられていることを特徴とする。
第2発明の電池処理装置は、第1発明において、前記電解液回収手段は、前記洗浄水の液面と同じ高さに設けられた液抜取孔であることを特徴とする。
第3発明の電池処理装置は、第1または第2発明において、前記電解液分離槽には、前記洗浄水に投入された電池破砕物に向かって気泡を噴出する気泡噴出手段が設けられていることを特徴とする。
第4発明の電池処理装置は、第2または第3発明において、前記電池破砕物が投入され、該電池破砕物を前記電解液分離槽に保持された前記洗浄水に浸漬する搬送籠を備え、該搬送籠は、該搬送籠が前記電解液分離槽に挿入された状態で、該搬送籠の上端が前記液抜取孔よりも低い位置に位置するものであることを特徴とする。
第5発明の電池処理装置は、第1、第2、第3または第4発明において、洗浄水を保持し、前記電解液分離槽で電解液が分離された電池破砕物が投入される洗浄槽を備え、該洗浄槽には、該洗浄水を攪拌する攪拌手段が設けられていることを特徴とする。
第6発明の電池処理装置は、第1、第2、第3、第4または第5発明において、前記電解液分離槽は、第1電解液分離槽と第2電解液分離槽とからなり、前記第2電解液分離槽は、前記第1電解液分離槽で電解液が分離された電池破砕物をさらに破砕した2次電池破砕物が投入されるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、洗浄水の液面に浮上した電解液を物理的に分離して回収するので、洗浄水に溶け込む電解液の量が少なくなり、洗浄水の劣化速度が遅くなる。そのため、洗浄水を廃棄する際に洗浄水に溶け込んだ電解液を処理する薬剤や熱源の量を少なくでき、排水処理負荷を低減できる。また、電解質は電解液に溶解した形態のままで回収されるので、電解液回収手段から回収される量を減容化でき、廃棄負荷を低減できる。また、電解質は電解液に溶解した形態のままで回収されるので、電解質を回収し再利用できる。さらに、電解液に含まれる有機溶媒も回収し再利用できる。
第2発明によれば、液抜取孔によって、洗浄水の液面に浮上した電解液を物理的に分離して回収できる。そのため、電解液が洗浄水に溶け込む前に電解液を回収できる。
第3発明によれば、電池破砕物に向かって気泡を噴出する気泡噴出手段が設けられているので、気泡噴出手段から噴出された気泡の気泡連行作用により、電池破砕物に付着した電解液をすばやく洗浄水の液面に浮上させることができる。そのため、電解液が洗浄水に溶け込む前に電解液を回収できる。また、気泡噴出手段から噴出された気泡の凝集効果により、洗浄水の液面で電解液の油膜形成を促進させることができる。そのため、洗浄水の液面に浮上した電解液を物理的に分離して回収しやすくなり、分離効率を向上させることができる。
第4発明によれば、搬送籠の上端が液抜取孔よりも低い位置に位置しているので、洗浄水の液面に浮上した電解液が搬送籠の上端に邪魔されることなく、液抜取孔より回収できる。
第5発明によれば、電池破砕物が攪拌手段を備えた洗浄槽に投入されるので、攪拌された洗浄水により電池破砕物を洗浄でき、電池破砕物に残留する電解液をさらに分離できる。
第6発明によれば、電解液分離槽が2段で構成されているので、電解液の分離効果を向上できる。また、第1電解液分離槽で電解液が分離された電池破砕物をさらに破砕した2次電池破砕物を第2電解液分離槽に投入するので、電池をより細かく破砕できるとともに、電池破砕物の内部に畳み込まれて残留する電解液を効果的に分離できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電池処理装置の説明図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る電池処理装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る電池処理装置1は、電池Bを破砕する破砕機10と、洗浄水を保持する電解液分離槽20および洗浄槽30と、電池破砕物を搬送する搬送籠40と、洗浄槽30に接続された脱水機50とを備えている。
【0013】
電池Bは、コバルトやニッケル等の希少金属をはじめとする有価物が使用されている電池であり、リチウムイオン電池等の単電池や、その単電池を複数個まとめてプラスチック製の容器に収容した電池パックであり、電池処理装置1の処理対象である。
【0014】
破砕機10は、電池Bを破砕して電池破砕物B1にできるものであれば、特に限定されない。例えば、二軸破砕機や、油圧プレス等の加圧装置により電池Bを加圧して破砕するもの等が挙げられる。
【0015】
破砕機10の出口側には電解液分離槽20が設けられている。
電解液分離槽20は、洗浄水を保持する槽でありその上面が開口している。電解液分離槽20に保持される洗浄水としては水が用いられる。なお、電解液分離槽20に循環水路を接続し、その循環水路に冷却手段やフィルターを設けることで、洗浄水である水を冷却したり、懸濁物を除去したりしてもよい。
電解液分離槽20の内寸は搬送籠40の外寸より大きく形成されており、上面の開口から搬送籠40を出し入れできるようになっている。
破砕機10の出口側と電解液分離槽20の上面の開口とはシュート11で接続されており、破砕機10で破砕された電池破砕物B1が電解液分離槽20に挿入された搬送籠40に投入されるようになっている。
【0016】
電解液分離槽20の底部であって、挿入された搬送籠40の下方には、散気装置21が設けられている。この散気装置21により、搬送籠40に投入された電池破砕物B1に向かって気泡を噴出することができる。
なお、散気装置21は、特許請求の範囲に記載の気泡噴出手段に相当する。気泡噴出手段としては、散気装置の他にエジェクタ式や過流ポンプ式の気液混合装置の気泡噴出管、回転式エアレータ等を用いることができる。
【0017】
電解液分離槽20の側壁には、洗浄水の液面と同じ高さに液抜取孔22が設けられている。この液抜取孔22により、液面付近の洗浄液のみを電解液分離槽20から抜き取ることができるようになっている。
【0018】
搬送籠40は、電解液分離槽20に挿入できる寸法を有しており、上面が開口しており、電池破砕物B1を投入できるようになっている。搬送籠40には水切り孔が多数形成されており、搬送籠40中の電池破砕物B1を洗浄水に浸漬でき、電解液分離槽20から引き上げて水切りできるようになっている。また、搬送籠40は、電解液分離槽20に挿入された状態で、その上端が液抜取孔22よりも低い位置に位置するように、その高さ寸法が設定されている。
なお、搬送籠40に形成された水切り孔の寸法は、電池破砕物B1が抜け落ちないように電池破砕物B1の粒径以下の寸法であり、かつ、散気装置21から噴出された気泡が搬送籠40内に進入できる寸法であることが好ましい。
さらになお、搬送籠40には、クレーン等の搬送機が取り付けられており、電解液分離槽20で電解液が分離された電池破砕物B2を電解液分離槽20から引き上げて洗浄槽30に投入できるようになっている。
【0019】
洗浄槽30は、洗浄水を保持する槽でありその上面が開口している。そのため、搬送籠40から電池破砕物B2を投入できるようになっている。また、洗浄槽30に保持される洗浄水としては、水や、温水、界面活性剤入の水等が用いられる。
洗浄槽30には、洗浄水を攪拌する攪拌手段31が設けられている。この攪拌手段31としては、例えばプロペラを回転させて洗浄水を攪拌するもののほか、洗浄槽30に循環水路を接続し、循環水路内の洗浄水をポンプ送液することで液攪拌するものでもよいし、洗浄槽30自体を回転させて洗浄水を攪拌するものでもよく、洗浄水を攪拌できるものであれば特に限定されない。
【0020】
脱水機50は、パイプ介して洗浄槽30と接続されており、そのパイプには洗浄槽30から脱水機50へ洗浄水を流すポンプ51が設けられている。このパイプとポンプ51により、洗浄槽30内の洗浄水と、洗浄槽30で洗浄された電池破砕物B3とを脱水機50へ移すことができる。
脱水機50は、遠心力で液体と固体とを分離するものが挙げられるが、洗浄水と電池破砕物B3とを分離できるものであれば、特に限定されない。また、脱水機50には、分離した洗浄水が排出される排水槽52と、分離した電池破砕物B3が排出される電池受け53とを備えられている。
【0021】
つぎに、電池処理装置1を用いた電池Bの処理方法について説明する。
まず、電解液分離槽20に搬送籠40を挿入しておく。
つぎに、電池Bを破砕機10に投入し、破砕して電池破砕物B1とする。この段階で、電池B内の電解液が漏洩し、電解液が電池破砕物B1に付着した状態となる。電池破砕物B1は破砕機10の出口側から排出され、シュート11を通じて電解液分離槽20に挿入された搬送籠40に投入される。
【0022】
電池破砕物B1は、搬送籠40に投入されると、電解液分離槽20に保持された洗浄水に浸漬される。電池破砕物B1に付着した電解液は、洗浄水より比重が軽いので、油滴状に水中分散し浮上して、洗浄水の液面で凝集して油膜を形成する。
【0023】
この際、散気装置21で電池破砕物B1に向かって気泡を噴出する。そうすると、散気装置21から噴出された気泡の気泡連行作用により、電池破砕物B1に付着した電解液をすばやく洗浄水の液面に浮上させることができる。
【0024】
洗浄水の液面に形成された電解液の油膜は、液抜取孔22を通して電解液分離槽20から抜き取られる。
より詳細には、電解液分離槽20内の洗浄液の液量を増加させる等して、水面を液抜取孔22より高くする。そうすると、液面に形成された電解液の油膜が、液抜取孔22に向かって水平に移動し、液抜取孔22から抜き取られる。このように、液抜取孔22によって、洗浄水の液面に浮上した電解液を物理的に分離して回収できる。
なお、電池パックを処理する場合には電池破砕物の中にプラスチック屑も含まれる。このプラスチック屑も液面に浮上するため、油膜とともに液抜取孔22によって分離して回収できる。
【0025】
ここで、散気装置21から噴出された気泡の凝集効果により、洗浄水の液面で電解液の油膜形成を促進させることができる。そのため、洗浄水の液面に浮上した電解液を物理的に分離して回収しやすくなり、分離効率を向上させることができる。
また、搬送籠40の上端は液抜取孔22よりも低い位置に位置しているので、液面上に搬送籠40の上端が突出しておらず、電解液の油膜の移動の妨げとならない。そのため、洗浄水の液面に浮上した電解液を、搬送籠40の上端に邪魔されることなく、液抜取孔22より回収できる。
【0026】
なお、電解液は洗浄水の液面に浮上する以外にも、洗浄水にも溶け込んでいく。具体的には、有機溶媒中でPF6イオンやBF4イオン等の形態で存在する電解質は、有機溶媒から洗浄水へとイオン単位で移っていく。また、電解質が溶解された有機溶媒(油相)は、洗浄水(水相)と接触して、相互に溶け合って同一相となる相溶化を起こしていく。
【0027】
しかし、本発明に係る電池処理装置は、洗浄水の液面に浮上した電解液を物理的に分離して回収するので、電解液が洗浄水に溶け込む前に電解液を回収できる。
したがって、洗浄水に溶け込む電解液の量が少なくなり、洗浄水の劣化速度が遅くなる。そのため、洗浄水を廃棄する際に洗浄水に溶け込んだ電解液を処理する薬剤や熱源の量を少なくでき、排水処理負荷を低減できる。
また、電解質は電解液に溶解した形態のままで回収されるので、液抜取孔22から回収される量を減容化でき、廃棄負荷を低減できる。
【0028】
また、PF6イオンやBF4イオン等は水に溶けると水との反応で除々に分解されるが、有機溶媒に溶解された状態では分解されない性質を有する。本発明に係る電池処理装置では、電解質は有機溶媒に溶解したPF6イオンやBF4イオン等の形態のままで回収されるので、電解質を回収し再利用できる。
さらに、電解液に含まれる有機溶媒も回収し再利用できる。
【0029】
電解液分離槽20における電解液の分離が完了した後には、搬送籠40が電解液分離槽20から引き上げられ、水切りした後に、洗浄槽30の上方まで移動し、搬送籠40から電池破砕物B2が洗浄槽30に投入される。
【0030】
なお、電解液分離槽20内の洗浄液は、繰り返し使用することが好ましい。
前述のごとく、電解液は洗浄水にも溶け込んでいくため、洗浄水中の電解液の濃度が高まっていく。そうすると、PF6イオンやBF4イオン等が有機溶媒から洗浄水へ移り難くなる。また、電解質が溶解された有機溶媒が洗浄水に溶け込んでいくと有機溶媒(油相)と、洗浄水(水相)の2相平衡共存域が保たれ、電池破砕物B1に付着した電解液が洗浄水へ溶け込みにくくなる。そのため、電解液が洗浄水の液面に浮上しやすくなり、電解液分離槽20における分離効率が上がるからである。
【0031】
電池破砕物B2が洗浄槽30に投入されると、洗浄槽30に保持された洗浄水は攪拌手段31により攪拌されているので、洗浄水により電池破砕物B2を攪拌して洗浄でき、電池破砕物B2に残留する電解液をさらに分離できる。
【0032】
洗浄槽30で電池破砕物B2を洗浄した後、ポンプ51を稼働し、洗浄水とともに電池破砕物B3を脱水機50へ移す。そして、脱水機50により洗浄水と電池破砕物B3とを分離し、分離した洗浄水を排水槽52に排出し、分離した電池破砕物B3を電池受け53に排出する。
これにより、電池破砕物に付着した電解液をほぼ完全に除去することができ、後続の装置で回収した有価金属の利用価値を高めることができる。
【0033】
なお、排水槽52に排出された洗浄水を再び洗浄槽30に戻し、洗浄水を繰り返し用いてもよい。
しかし、洗浄槽30で分離された電解液は、攪拌作用により洗浄水に溶け込んでいくため、洗浄水中の電解液の濃度が高まっていく。そうすると、電池破砕物B2に付着した電解液が洗浄水へ溶け込みにくくなり、洗浄槽30の洗浄効率が悪くなる。そのため、洗浄槽30ではできるだけ新しい洗浄水を用いることが好ましい。
【0034】
(第2実施形態)
図2に示すように、本発明の第2実施形態に係る電池処理装置2は、第1実施形態に係る電池処理装置1において、1槽であった電解液分離槽20を第1電解液分離槽20aと第2電解液分離槽20bの2槽にし、1台であった破砕機10を第1破砕機10aと第2破砕機10bの2台にしたものである。また、電解液分離槽20を2槽にしたことにともない、搬送籠40も第1搬送籠40aと第2搬送籠40bの2つが備えられている。
なお、第1電解液分離槽20aと第2電解液分離槽20bの構成は電解液分離槽20の構成と同様であり、第1破砕機10aと第2破砕機10bの構成は破砕機10の構成と同様であり、第1搬送籠40aと第2搬送籠40bの構成は搬送籠40の構成と同様である。
【0035】
より詳細には、第1破砕機10aの出口側と第1電解液分離槽20aの上面の開口とはシュート11aで接続されており、第1破砕機10aで破砕された電池破砕物B1が第1電解液分離槽20aに挿入された第1搬送籠40aに投入されるようになっている。
第1搬送籠40aは、第1電解液分離槽20aで電解液が分離された電池破砕物B2を第1電解液分離槽20aから引き上げて第2破砕機10bに投入できるようになっている。すなわち第2破砕機10bは、第1電解液分離槽20aで電解液が分離された電池破砕物B2をさらに破砕して2次電池破砕物B3とするものである。
第2破砕機10bの出口側と第2電解液分離槽20bの上面の開口とはシュート11bで接続されており、第2破砕機10bでさらに破砕された電池破砕物B3が第2電解液分離槽20bに挿入された第2搬送籠40bに投入されるようになっている。
【0036】
本実施形態においては、洗浄槽30の上方に設けられた振動篩61と、その振動篩61に向けて洗浄水を噴射するスプレー62とが備えられている。そして、第2搬送籠40bは、第2電解液分離槽20bで電解液が分離された電池破砕物B4を第2電解液分離槽20bから引き上げて振動篩61に投入できるようになっている。
この振動篩61とスプレー62により、粗いサイズの電池破砕物B5と細かいサイズの電池破砕物B6とに篩分けられ、粗いサイズの電池破砕物B5が排出され、細かいサイズの電池破砕物B6が洗浄槽30に投入されるようになっている。
【0037】
洗浄槽30と、洗浄槽30に接続された脱水機50とは、第1実施形態と同様の構成である。
【0038】
つぎに、電池処理装置2を用いた電池Bの処理方法について説明する。
まず、第1電解液分離槽20aに第1搬送籠40aを挿入し、第2電解液分離槽20bに第2搬送籠40bを挿入しておく。
つぎに、電池Bを第1破砕機10aに投入し、破砕して電池破砕物B1とする。電池破砕物B1は第1破砕機10aの出口側から排出され、シュート11aを通じて第1電解液分離槽20aに挿入された第1搬送籠40aに投入される。
【0039】
電池破砕物B1は、第1搬送籠40aに投入されると、第1電解液分離槽20aに保持された洗浄水に浸漬される。電池破砕物B1に付着した電解液は、油滴状に水中分散し浮上して、洗浄水の液面で凝集して油膜を形成する。この際、散気装置21aで電池破砕物B1に向かって気泡を噴出する。
洗浄水の液面に形成された電解液の油膜は、液抜取孔22aを通して第1電解液分離槽20aから抜き取られる。
【0040】
第1電解液分離槽20aにおける電解液の分離が完了した後には、第1搬送籠40aが第1電解液分離槽20aから引き上げられ、水切りした後に、第2破砕機10bの上方まで移動し、第1搬送籠40aから電池破砕物B2が第2破砕機10bに投入される。
電池破砕物B2は、第2破砕機10bでさらに破砕される。さらに細かくなった電池破砕物B3は、第2破砕機10bの出口側から排出され、シュート11bを通じて第2電解液分離槽20bに挿入された第2搬送籠40bに投入される。
【0041】
電池破砕物B3は、第2搬送籠40bに投入されると、第2電解液分離槽20bに保持された洗浄水に浸漬される。電池破砕物B3に残存する電解液は、油滴状に水中分散し浮上して、洗浄水の液面で凝集して油膜を形成する。この際、散気装置21bで電池破砕物B3に向かって気泡を噴出する。
洗浄水の液面に形成された電解液の油膜は、液抜取孔22bを通して第2電解液分離槽20bから抜き取られる。
【0042】
このように、本実施形態では、電解液分離槽20a、20bが2段で構成されているので、電解液の分離効果を向上できる。
また、第1電解液分離槽20aで電解液が分離された電池破砕物B2をさらに破砕した2次電池破砕物B3を第2電解液分離槽20bに投入するので、電池をより細かく破砕できるとともに、電池破砕物B2の内部に畳み込まれて残留する電解液を効果的に分離できる。
【0043】
第2電解液分離槽20bにおける電解液の分離が完了した後には、第2搬送籠40bが第2電解液分離槽20bから引き上げられ、水切りした後に、振動篩61の上方まで移動し、第2搬送籠40bから電池破砕物B4が振動篩61に投入される。
振動篩61では、電池破砕物B4が粗いサイズの電池破砕物B5と細かいサイズの電池破砕物B6とに篩分けられ、粗いサイズの電池破砕物B5が排出され、細かいサイズの電池破砕物B6が洗浄槽30に投入される。
【0044】
細かいサイズの電池破砕物B6が洗浄槽30に投入されると、洗浄水により電池破砕物B6を攪拌して洗浄でき、電池破砕物B6に残留する電解液をさらに分離できる。
【0045】
洗浄槽30で電池破砕物B6を洗浄した後、ポンプ51を稼働し、洗浄水とともに電池破砕物B6を脱水機50へ移す。ここで、電池破砕物B6のサイズは細かいので、洗浄水と電池破砕物B6はスラリーとなっており、ポンプ51で移しやすくなっている。
そして、脱水機50により洗浄水と電池破砕物B6とを分離し、分離した洗浄水を排水槽52に排出し、分離した電池破砕物B6を電池受け53に排出する。
これにより、電池破砕物に付着した電解液をほぼ完全に除去することができ、後続の装置で回収した有価金属の利用価値を高めることができる。
【0046】
(その他の実施形態)
前記実施形態においては、電解液分離槽20、20a、20bに散気装置21、21a、21bを設けたが、電解液と洗浄水の比重の差のみで、電解液が洗浄水に溶け込む前に回収できる場合には、散気装置21、21a、21bを設けなくともよい。
【0047】
また、前記実施形態においては、電解液分離槽20、20a、20bに液抜取孔12、12a、12bを設け、この液抜取孔12、12a、12bから電解液を抜き取るようにしたが、これに代えて、フロート式やベルト巻き取り式等の油水分離装置等を用いることができる。
【0048】
(試験)
つぎに、上記実施形態の電池処理装置を用いて、電池を処理した場合の電解液の分離効果を試験した。
(試験1)
試験1は、第1実施形態の電池処理装置1を用いて、使用済みのノートパソコン用リチウム電池パックを処理した。
試験の結果、電解液分離槽20で電解液を30%分離でき、残りの70%は洗浄槽30で分離できた。したがって、洗浄水の排水処理負荷を30%低減できることが分かった。
【0049】
また、最終的に得た電池破砕物を酸浸出処理して、ニッケル、コバルトなどの有価金属を回収した結果、再利用できるまで純度を高くできた。
【0050】
(試験2)
試験2は、第2実施形態の電池処理装置2を用いて、使用済みのノートパソコン用リチウム電池パックを処理した。
試験の結果、第1電解液分離槽20aおよび第2電解液分離槽20bで電解液を50%分離でき、残りの50%は洗浄槽30で分離できた。したがって、洗浄水の排水処理負荷を50%低減できることが分かった。
【符号の説明】
【0051】
1、2 電池処理装置
B1〜B6 電池破砕物
10 破砕機
12 液抜取孔
20 電解液分離槽
21 散気装置
22 液抜取孔
30 洗浄槽
31 攪拌手段
40 搬送籠
50 脱水機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を保持し、電池破砕物が投入される電解液分離槽を備え、
該電解液分離槽には、前記電池破砕物から分離し前記洗浄水の液面に浮上した電解液を回収する電解液回収手段が設けられている
ことを特徴とする電池処理装置。
【請求項2】
前記電解液回収手段は、前記洗浄水の液面と同じ高さに設けられた液抜取孔である
ことを特徴とする請求項1記載の電池処理装置。
【請求項3】
前記電解液分離槽には、前記洗浄水に投入された電池破砕物に向かって気泡を噴出する気泡噴出手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1または2記載の電池処理装置。
【請求項4】
前記電池破砕物が投入され、該電池破砕物を前記電解液分離槽に保持された前記洗浄水に浸漬する搬送籠を備え、
該搬送籠は、該搬送籠が前記電解液分離槽に挿入された状態で、該搬送籠の上端が前記液抜取孔よりも低い位置に位置するものである
ことを特徴とする請求項2または3記載の電池処理装置。
【請求項5】
洗浄水を保持し、前記電解液分離槽で電解液が分離された電池破砕物が投入される洗浄槽を備え、
該洗浄槽には、該洗浄水を攪拌する攪拌手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の電池処理装置。
【請求項6】
前記電解液分離槽は、第1電解液分離槽と第2電解液分離槽とからなり、
前記第2電解液分離槽は、前記第1電解液分離槽で電解液が分離された電池破砕物をさらに破砕した2次電池破砕物が投入されるものである
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の電池処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−204242(P2012−204242A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69412(P2011−69412)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】