説明

電池用セパレータ材料、電池用セパレータの製造方法、電池用セパレータ、及び二次電池

【課題】機械的強度(突刺強度)に富み、イオン透過性に優れ、電池の出力特性、安全性、生産性に優れたセパレータを提供する。
【解決手段】電池用セパレータの材料であって、前記材料はポリウレタン多孔質膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、電池用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は正極と負極とセパレータとで構成されている。前記セパレータは、これまで、ポリエチレン微多孔質膜またはポリプロピレン微多孔質膜を用いて構成されて来た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−104736号公報
【特許文献2】特開平5−222236号公報
【特許文献3】特開平5−222237号公報
【特許文献4】特開平4−261441号公報
【特許文献5】特開平8−12799号公報
【特許文献6】特開平11−279324公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セパレータとして要求される物性としては、下記の如きの物性が挙げられる。
【0005】
機械的強度(突刺強度)が、電池の組立特性の観点から、必要である。特に、リチウムイオン二次電池用セパレータの場合には、高い機械的強度(突刺強度)が必要と言われている。
【0006】
高いイオン透過性が、電池の出力特性の観点から、必要である。尚、電池の出力特性とは、電流特性(例えば、大電流での放電性能や低温での放電性能)や、寿命特性(例えば、サイクル性や高温保存特性)である。このような特性は、セパレータのイオン透過性が高い程、良好である。
【0007】
二次電池は、高出力、大容量化して来ている。この為、二次電池には、安全性に富むことが要求されるようになった。この安全性の観点から、セパレータには、次の特性が求められる。すなわち、電池内部が過熱した際、セパレータが溶融し、これにより電極が覆われるようになる特性である。つまり、セパレータの溶融によって電極が覆われたならば、電流が遮断される。従って、発熱が抑制され、安全性が確保される。
【0008】
電気自動車、特にハイブリッド型電気自動車の電池には、高出力が求められる。高出力化の為には、イオン透過性が高いことが望まれる。その為には、セパレータ(微多孔質膜)の孔径が大きなこと、空隙率が大きなことが望まれる。しかしながら、孔径を大きくしたり、空隙率を大きくすることは、自己放電によって容量低下が起きたり、上記の発熱時における電流遮断性能が低下する欠点が生じる。
【0009】
電池製造の電解液注入は困難な工程である。なぜならば、電池缶内に空隙が殆ど無い為、電解液を均一・迅速に注入することが難しい。しかしながら、電解液の均一・迅速な注入も大事な要件である。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は上記要件を満足するセパレータを提供することである。すなわち、機械的強度(突刺強度)に富み、イオン透過性に優れ、電池の出力特性、安全性、生産性に優れたセパレータを低廉なコストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決する為の研究を鋭意推し進めて行く中に、即ち、数々の樹脂膜で作製したセパレータを非水二次電池に組み込んで前記特性を調べて行く中に、ポリウレタン多孔質膜製のセパレータはポリエチレン多孔質膜製のセパレータやポリプロピレン多孔質膜製のセパレータに比べて、遥かに優れた特長を奏するものであることを見出すに至った。
【0012】
上記知見を基にして本発明が達成されたものである。
【0013】
すなわち、前記の課題は、
電池用セパレータの材料であって、
前記材料はポリウレタン多孔質膜である
ことを特徴とする電池用セパレータ材料によって解決される。
【0014】
上記の電池用セパレータ材料であって、好ましくは、平均孔径が5μm以下であることを特徴とする電池用セパレータ材料によって解決される。
【0015】
上記の電池用セパレータ材料であって、好ましくは、透水量が0〜2000L/m・hr・atmであることを特徴とする電池用セパレータ材料によって解決される。
【0016】
上記の電池用セパレータ材料であって、好ましくは、透気度が50〜400secであることを特徴とする電池用セパレータ材料によって解決される。
【0017】
上記の電池用セパレータ材料であって、好ましくは、気孔率が5〜60%であることを特徴とする電池用セパレータ材料によって解決される。
【0018】
上記の電池用セパレータ材料であって、好ましくは、突刺強度が300g以上であることを特徴とする電池用セパレータ材料によって解決される。
【0019】
前記の課題は、
電池用セパレータの製造方法であって、
上記のポリウレタン多孔質膜を用いて電池用セパレータを製造する
ことを特徴とする電池用セパレータの製造方法によって解決される。
【0020】
前記の課題は、
電池用セパレータであって、
上記のポリウレタン多孔質膜を用いて構成されてなる
ことを特徴とする電池用セパレータによって解決される。
【0021】
前記の課題は、
正極と、
負極と、
上記の電池用セパレータ
とを具備してなることを特徴とする二次電池によって解決される。
【0022】
上記の二次電池であって、好ましくは、非水二次電池であることを特徴とする二次電池によって解決される。
【発明の効果】
【0023】
機械的強度(突刺強度)に富み、イオン透過性に優れ、電池の出力特性、安全性、生産性に優れたセパレータであって、高性能な二次電池が低廉なコストで得られる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
第1の本発明は電池用セパレータの材料である。この材料はポリウレタン多孔質膜である。
【0025】
好ましいポリウレタン多孔質膜は、平均孔径が5μm以下(より好ましくは3μm以下。更に好ましくは2μm以下。特に好ましくは1μm以下。そして、より好ましくは0.01μm以上。更に好ましくは0.1μm以上。特に好ましくは0.3μm以上。)のポリウレタン多孔質膜であった。ここで、平均孔径は、水銀圧入法によって測定された値である。得られた細孔分布データから、10μm以下で 圧入体積の最も大きい点(モード径)を平均孔径とした。尚、特許文献6は、平均孔径が0.25μmよりも大きい場合には、例えばリチウムイオン二次電池用セパレータとして用いた場合、電流集中による金属リチウムの析出が起こり易いことを指摘している。ところが、驚くべきことに、ポリウレタン多孔質膜を用いた場合、0.25μmを越えるような値であっても、好ましかった。この差は、ポリウレタン多孔質膜特有の化学結合の構造や細孔構造に起因すると考えられた。
【0026】
好ましいポリウレタン多孔質膜は、気孔率が5〜60%(より好ましくは55%以下。更に好ましくは40%以下。15%以上。)のポリウレタン多孔質膜であった。ここで、気孔率は、20cm角のサンプルを用意し、その体積と重量から式[気孔率(%)=(体積(cm)−重量(g)/膜の密度)/体積(cm)×100]を用いて計算した。気孔率が小さ過ぎると、イオン等の透過性が十分ではなく、電池セパレータとしての機能が奏され難い。逆に、気孔率が大き過ぎると、機械的強度が弱いものとなってしまい、電池セパレータとしての安全性が低下した。このようなことから、上記値の気孔率のポリウレタン多孔質膜が好ましかった。
【0027】
好ましいポリウレタン多孔質膜は、透水量が0〜2000L/m・hr・atm(より好ましくは900L/m・hr・atm以下。更に好ましくは500L/m・hr・atm以下。もっと好ましくは200L/m・hr・atm以下。特に、50L/m・hr・atm以下。)のポリウレタン多孔質膜であった。透水量は、微多孔質膜の単位時間、単位圧力、単位面積、厚み25μm当たりの透水量である。ここで、透水量は、直径42mmのステンレス製の透液セルに多孔質膜をセットし、0.5atmの差圧で水
を濾過させ、120秒間経過した際の透水量(cm)から単位時間、単位圧力、単位面積当たりの透水量を計算し、
これに膜厚(μm)/25(μm)を乗じることによって25μm換算透水量(L/m・hr・atm)とし た。透水量が大き過ぎると、電解液の保液性が悪化し、電池の出力性能が低下した。そして、透水量が小さい程、大電流時における放電容量が大きなものであった。このようなことから、上記値の透水量のポリウレタン多孔質膜が好ましかった。
【0028】
好ましいポリウレタン多孔質膜は、透気度が50〜400sec(より好ましくは60sec以上。更に好ましくは70sec以上。より好ましくは200sec以下。更に好ましくは150sec以下。)のポリウレタン多孔質膜であった。ここで、透気度は、JIS P−8117準拠のガーレー式透気度計にて測定された値であって、厚み25μm当たりに換算した値である。すなわち、透気度が小さ過ぎた場合、正極と負極との間で短絡が起こり易かった。逆に、透気度が大き過ぎた場合、低温における放電容量が低下する傾向があった。このようなことから、上記値の透気度のポリウレタン多孔質膜が好ましかった。
【0029】
好ましいポリウレタン多孔質膜は、透過性指数が0〜20(より好ましくは15以下。更に好ましくは5以下。)のポリウレタン多孔質膜であった。透過性指数は、透水量(L/m・hr・atm)/透気度(sec)で表される指数である。透過性指数が大き過ぎた場合、過充電時の温度上昇が急激であり、好ましくなかった。
【0030】
好ましいポリウレタン多孔質膜は、突刺強度が300g以上(上限値に格別な制約は無いが、現実的には、1000g以下。より好ましくは600g以下。)のポリウレタン多孔質膜であった。突刺強度が小さ過ぎた場合、ポリウレタン多孔質膜(セパレータ)が破れ易い。破れた場合、短絡が起きる恐れが有る。従って、安全性の点から、上記値の突刺強度のポリウレタン多孔質膜が好ましかった。
【0031】
第2の本発明は電池用セパレータの製造方法である。電池用セパレータはポリウレタンを用いることによって製造される。特に、上記特徴のポリウレタンを用いることによって製造される。このようにして得られた電池用セパレータを構成するポリウレタン多孔質膜は上記特徴のものである。
【0032】
第3の本発明は電池用セパレータである。本電池用セパレータは上記ポリウレタン多孔質膜を用いて構成されたものである。
【0033】
第4の本発明は電池である。本電池は正極と負極と上記の電池用セパレータとを具備する。この電池は、例えば非水二次電池である。
【0034】
本発明の電池用セパレータ(多孔質膜)はポリウレタンで構成される。前記ポリウレタンは、好ましくは、2官能以上のイソシアネート成分と、2以上の活性水素をもつポリオール成分と、鎖伸長成分とを具備する。
【0035】
前記イソシアネート成分(化合物)としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4―シクロヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラエチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。この他にも、3官能以上の多官能ポリイソシアネート化合物であっても良い。
【0036】
前記ポリオール成分(化合物)としては、例えばポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、アクリルポリオール類などが挙げられる。
【0037】
ポリエーテルポリオール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセンリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールの1種又は2種以上にプロピレンオキサイドを付加して得られるポリオキシプロピレンポリオール類、エチレンオキサイドを付加して得られるポリオキシエチレンポリオール類、スチレンオキサイド又はブチレンオキサイド等を付加して得られるポリオール類、或いは前記多価アルコールにテトラヒドロフランを開環重合させて得られるポリオキシテトラメチレンポリオール類、若しくは上記の環状エーテルを2種以上を使用した共重合体などが挙げられる。
【0038】
前記ポリエステルポリオール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエスリトール、その他の低分子量多価アルコールの1種以上と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、その他の低分子量ジカルボン酸またはオリゴマー酸の1種以上との縮合重合体、プロピオンラクトン、カプロラクトン、バレロラクトン等の環状エステル類の開環重合体等のポリオール類が挙げられる。
【0039】
前記アクリルポリオール類としては、フェノールレジンポリオール、エポキシポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリエステルーポリエーテルポリオール、アクロロニトリル系ポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0040】
前記鎖伸長成分、特に、活性水素を有する鎖伸長成分(鎖伸長剤)としては、分子量が500程度以下の化合物が挙げられる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン等に代表される脂肪族系低分子ジオール、トリオール類、メチレンビス−o−クロロアニリン、シクロへキシルメタン−4,4’−ジアミン等の芳香族ジアミン類、1,4−ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族ジオール等が挙げられる。
【0041】
上記ポリウレタンを用いて本発明の電池用セパレータ(多孔質膜)を製造する手法としては、各種の手法を採用できる。例えば、公知な湿式成形法を用いて多孔質膜を得ることが出来る。或いは、発泡剤を添加した手法を用いて多孔質膜を得ることが出来る。ポリウレタン多孔質膜製の電池用セパレータを得る手法として前記湿式成形法は好適である。すなわち、上記ポリウレタン組成物を水中で凝固させ、洗浄・乾燥を経ることによって、ポリウレタン微多孔質膜が簡単に得られる。
【0042】
電池用セパレータを構成するポリウレタン多孔質膜はポリウレタン組成物の形態からなるものでも良い。すなわち、ポリウレタン多孔質膜は各種の添加剤を含有するものでも良い。添加剤としては、例えば架橋剤、撥水剤、顔料、濡れ性向上剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線防止剤などが挙げられる。
【0043】
前記架橋剤としては、例えばポリイソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、エポキシ系架橋剤、エチレンイミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤などが挙げられる。カルシウムやマグネシウムなどの多価金属塩であっても良い。
【0044】
前記撥水剤としては、例えばフッ素系撥水剤が挙げられる。撥水剤の含有は、ポリウレタン多孔質膜(電池用セパレータ)における透水量を少なくすることから、好ましい。前記フッ素系撥水剤の代表例としてパーフルオロアルキル基を有する化合物が挙げられる。例えば、パーフルオロアルキル基を有するアクリル酸(メタアクリル酸)の如きのフルオロアルキル基含有の重合性化合物と、エチレン、酢酸ビニル、弗化ビニル、スチレン、アクリル酸(メタクリル酸)や、そのアルキルエステル、無水マレイン酸、クロロプレン、ブタジエン、ビニルアルキルケトン、ビニルアルキルエーテル、アクリルアミド、メタアクリルアミド、グリシジルアクリレート等の一種または二種以上との共重合体などが挙げられる。
【0045】
前記ポリウレタン組成物は、無機系もしくは有機系の微粒子を含有しても良い。例えば、シリカ、シリカゾル、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、酸化亜鉛、硼素、酸化硼素、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム等の無機系微粒子を含有していても良い。或いは、ポリエチレン、アクリル系ポリマー、ポリスチレン、シリコーンポリマー等の有機系微粒子を含有していても良い。
【0046】
電池セパレータは、正極と負極とを隔離するだけでは無く、電解液を保持して正極と負極との間のイオン伝導性を確保する機能を有する。前記電解液は、一般に、支持塩と溶媒とから構成される。リチウム二次電池における支持塩はリチウム塩が主として用いられる。このリチウム塩としては、例えば、LiClO,LiBF,LiPF,LiCFSO,LiCFCO,LiAsF,LiSbF,LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiAlCl,LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム等が挙げられる。勿論、一種のみならず、二種以上のものが混合されても良い。尚、LiBF,LiPFは特に好ましいリチウム塩である。支持塩の濃度は、特に限定されないが、電解液1L当たり0.2〜3モルが好ましい。電解液を構成する溶媒は、例えばプロピレンカ−ボネ−ト、エチレンカーボネ−ト、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル、酢酸メチル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、ジオキサン、アセトニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトンなどの非プロトン性有機溶媒が挙げられる。勿論、一種のみならず、二種以上のものが混合されても良い。尚、カーボネート系の溶媒は特に好ましい。中でも、環状カーボネートと非環状カーボネートの混合物は特に好ましい。環状カーボネートとしては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートが好ましい例である。非環状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネートが好ましい例である。電解液は、全量を1回で注入してもよいが、2回以上に分けて注入することは好ましい。2回以上に分けて注入する場合、各々の液は同じ組成でも、違う組成(例えば、非水溶媒あるいは非水溶媒にリチウム塩を溶解した溶液を注入した後、前記溶媒より粘度の高い非水溶媒あるいは非水溶媒にリチウム塩を溶解した溶液を注入)でも良い。電解液の注入時間の短縮等の為に、電池缶を減圧したり、電池缶に遠心力や超音波を掛ける等を行ってもよい。
【0047】
上記電池用セパレータを用いて電池(二次電池。特に、非水型二次電池。中でも、リチウムイオン二次電池。)が構成される。本電池は、上記の電池用セパレータの他にも、正極と負極とを具備する。前記正極は正極活物質を用いて構成される。前記正極活物質は、リチウム含有遷移金属酸化物が好ましい。リチウム含有遷移金属酸化物は、Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Mo,W等の群の中から選ばれる少なくとも一種の遷移金属元素とリチウムとを主として含有する酸化物である。リチウム化合物と遷移金属化合物とを混合・焼成する方法や溶液反応により合成できる。負極はリチウムイオンを吸蔵・放出できる化合物(負極材料)を用いて構成される。このような負極材料としては、例えば金属リチウム、リチウム合金、炭素質化合物、無機酸化物、無機カルコゲン化合物、金属錯体、有機高分子化合物などが挙げられる。単独あるいは複数のものを組み合わせて用いることが出来る。本発明の合剤に使用される導電剤は、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でもよい。具体例としては、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、石油コークス、石炭コークス、セルロース類、糖類、メソフェーズピッチ等の高温焼成体、気相成長黒鉛等の人工黒鉛等のグラファイト類、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、アスファルトピッチ、コールタール、活性炭、メソフューズピッチ、ポリアセン等の炭素材料、金属繊維等の導電性繊維類、銅、ニッケル、アルミニウム、銀等の金属粉類、酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物などを挙げることが出来る。本発明では、電極合剤を保持する為、結着剤が用いられる。結着剤としては、多糖類、熱可塑性樹脂、或いはゴム弾性を有するポリマー等が挙げられる。
【0048】
以下、具体的な実施例を挙げて具体的に説明する。
【0049】
[実施例1]
〔電解液の調製〕
EC(エチレンカーボネート):DEC(ジエチルカーボネート)=50:50(重量比)の非水溶媒を調製した。この溶媒にLiPFを溶解させた。そして、電解液(LiPF濃度:1M)が得られた。
〔リチウム二次電池〕
80重量部のLiCoO(正極活物質)と、10重量部のアセチレンブラック(導電剤)と、10重量部のポリフッ化ビニリデン(結着剤)とを混合した。これに、1−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリー状にした。このスラリー状物をアルミ箔上に塗布した。この後、乾燥し、加圧成型して正極を構成した。
90重量部の天然黒鉛(負極活物質)と、10重量部のポリフッ化ビニリデン(結着剤)とを混合した。これに、1−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリー状にした。このスラリー状物を銅箔上に塗布した。この後、乾燥し、加圧成型して負極を構成した。
セパレータとして微多孔質ポリウレタンフィルム(平松産業株式会社製のルストレFGX:ルストレは登録商標)を用意した。これに上記電解液を注入し、コイン型電池(直径20mm、厚さ3.2mm)を作製した。
【0050】
[比較例1]
上記実施例1において、微多孔質ポリウレタンフィルムの代わりに、微多孔質ポリプロピレン(CELGARD Inc.製のセルガード)を用いた以外は同様に行い、コイン型電池(直径20mm、厚さ3.2mm)を作製した。
【0051】
[特性]
上記各例のコイン電池を用いて、室温(20℃)下、0.8mAの定電流定電圧で、終止電圧4.2Vまで5時間充電し、次いで0.8mAの定電流下、終止電圧2.7Vまで放電した。その後、同一条件で、充放電し、放電容量を測定した後、放電電流のみ4.0mAとして放電容量を測定した。その結果が表−1に示される。
表−1
実施例1 比較例1
多孔質フィルム 多孔質ポリウレタンフィルム 多孔質ポリプロピレンフィルム
膜厚(μm) 25 25
突刺強度(g) 350 340
平均孔径(μm) 0.8 0.15
気孔率(%) 30 44
透気度(sec) 120 130
透水量(L/m・hr・atm) 0 920
透過性指数 0 8.4
相対放電容量(0.8mA) 100 100
相対放電容量(4.0mA) 80 60

この表−1から判る通り、本発明になるものは、ハイレート時の相対放電容量が大きい。
【0052】
[実施例2]
EC(エチレンカーボネート):DEC(ジエチルカーボネート)=50:50(重量比)の非水溶媒を調製した。
セパレータ材料である微多孔質ポリウレタンフィルム(平松産業株式会社製のルストレFGX:ルストレは登録商標)を用意した。該フィルムを5×50mmの短冊状に切断し、上記溶媒の液面に対して垂直に先端から10mmを浸漬した。浸漬直後からキャピラリー効果によって上記溶媒がフィルムを伝って5mm上昇するまでの時間を測定した。
【0053】
[比較例2]
上記実施例2において、微多孔質ポリウレタンフィルムの代わりに、微多孔質ポリプロピレン(CELGARD Inc.製のセルガード)を用いた以外は同様に行い、溶剤の上昇時間を測定した。
【0054】
[特性]
表−2
実施例2 比較例2
溶媒上昇時間(sec) 487 1200以上

この表−2から判る通り、本発明になるものは、溶媒との親和性が高く、電解液の注入が迅速である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池用セパレータの材料であって、
前記材料はポリウレタン多孔質膜である
ことを特徴とする電池用セパレータ材料。
【請求項2】
平均孔径が5μm以下である
ことを特徴とする請求項1の電池用セパレータ材料。
【請求項3】
透水量が0〜2000L/m・hr・atmである
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の電池用セパレータ材料。
【請求項4】
透気度が50〜400secである
ことを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかの電池用セパレータ材料。
【請求項5】
気孔率が5〜60%である
ことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかの電池用セパレータ材料。
【請求項6】
突刺強度が300g以上である
ことを特徴とする請求項1〜請求項5いずれかの電池用セパレータ材料。
【請求項7】
電池用セパレータの製造方法であって、
請求項1〜請求項6いずれかのポリウレタン多孔質膜を用いて電池用セパレータを製造する
ことを特徴とする電池用セパレータの製造方法。
【請求項8】
電池用セパレータであって、
請求項1〜請求項6いずれかのポリウレタン多孔質膜を用いて構成されてなる
ことを特徴とする電池用セパレータ。
【請求項9】
正極と、
負極と、
請求項8の電池用セパレータ
とを具備してなることを特徴とする二次電池。
【請求項10】
非水二次電池である
ことを特徴とする請求項9の二次電池。