説明

電池用セパレータ

【課題】ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、ニッケル−水素電池等のアルカリ二次電池に好適で、低スルホン化条件においても十分な自己放電能を有する不織布に界面活性剤にて親水化処理を施した電池用セパレータを提供する。
【解決手段】ポリプロピレンを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維を含有するポリオレフィン系不織布をスルホン化処理した電池用セパレータにおいて、ポリプロピレンの断面積(β)とポリエチレンの断面積(α)の比(β/α)が60/40超90/10以下(60/40<β/α≦90/10)であり、かつ、セパレータの示差走査熱量分析により得られるDSC曲線で低融点側のポリエチレンに由来する融解ピーク面積(A)と高融点側のポリプロピレンに由来する融解ピーク面積(B)の比(A/B)が0.15以上1.20以下(0.15≦A/B≦1.20)であることを特徴とする電池用セパレータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、ニッケル−水素電池等のアルカリ二次電池に好適に使用できる電池用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル−カドミウム電池やニッケル−水素電池等のアルカリ二次電池は、充放電特性、過充放電特性に優れ、長寿命で繰り返し使用できるため、コードレス電話、ノートパソコン、オーディオ機器等の小型電子機器の他、電動工具、電動自転車等の小型動力用途、ハイブリッド自動車、電気自動車等の大型動力用途等にも広く使用されている。このアルカリ二次電池に用いられている電池用セパレータの役割としては、正極と負極の分離、短絡の防止、電解液(高濃度アルカリ性水溶液)の吸液及び保持、また電極反応により生じるガスの透過等が挙げられる。
【0003】
従来から、電池用セパレータとしては、一般に不織布が用いられてきた。ニッケル−カドミウム電池では、電解液に濡れやすく、その保液量が大きく、しかも電解液を含んだ状態で電気抵抗の低いポリアミド系繊維からなる不織布が使用されてきた。しかし、高温における耐酸化劣化性に劣り、アルカリ二次電池の充電時に発生する酸素ガスによって酸化劣化するという欠点があるため、急速充放電により、電池内部の温度が60〜80℃に上昇した場合、性能低下が著しいという問題があった。
【0004】
一方、ポリオレフィン系繊維を主体とする不織布は親水性が低いため、スルホン化処理、親水性単量体のグラフト処理、コロナ放電処理、界面活性剤付与処理等が施されるのが一般的である。
【0005】
このうち、スルホン化処理は発煙硫酸や濃硫酸によって不織布にスルホン酸基を導入する方法である(例えば、特許文献1〜9参照)。スルホン化処理を施した不織布は電解液の吸液性や保液性が優れると共に、電池の自己放電反応を抑制する効果が見られる。
【0006】
ここで電池の自己放電反応が促進される原因として、電池内に不純物として存在する含窒素化合物が分解され、生成したアンモニアが正極上で酸化されて硝酸イオンとなり、この硝酸イオンが移動し、負極上で還元されてアンモニアとなる繰り返し反応(シャトル機構)が生じて自己放電を加速するという説が提唱されている。スルホン化処理を施した不織布からなる電池用セパレータをこの電池内に導入することにより、繊維に導入されたスルホン酸基が生成するアンモニアを捕捉し、電池の自己放電反応を抑制すると考えられている。
【0007】
スルホン化処理に用いられる不織布としては、乾式不織布又は湿式不織布が用いられるが、電池の高容量化や内部短絡防止のため、地合の均一性に優れる不織布が求められる。地合の均一性の良さを考慮すると、一般的に乾式不織布よりも湿式不織布が優れている。ポリオレフィン系繊維は、耐アルカリ性や耐酸化性に優れるため、電池の長寿命化に有効であるが、ポリオレフィン系繊維のみからなる不織布の製造は比較的難しく、特に湿式不織布の製造においては、加熱乾燥時の面割れ等が生じやすく、地合が不均一になる問題や製造安定性に劣るという問題があった。このため、ポリオレフィン系繊維と湿熱接着性に優れたエチレン−ビニルアルコール共重合体繊維を併用し、製造安定性を改善する試みが行われてきた(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、ポリオレフィン系繊維とエチレン−ビニルアルコール共重合体繊維を併用した不織布にスルホン化処理を施した場合、エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維が優先してスルホン化されるため、強アルカリ電解液中でのセパレータの劣化が進みやすく、自己放電抑制効果の持続性が短くなるという問題を有していた。
【0008】
また、スルホン化処理は非常に激しい反応であるため、セパレータの強度が低下して、電池特性が悪化するという問題があった。電池用セパレータの強度低下を抑制するために、特許文献7には、電池用セパレータを構成するポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘繊維の質量比を90/10〜50/50にすることが記載されている。また、特許文献8には、セパレータ中のポリエチレン含有率を20質量%以下にすることが記載されている。さらに、特許文献9には、高強度ポリプロピレンに紡糸性を改良するために、特定のメルトインデックスを有するポリプロピレンを混在させたポリプロピレン樹脂を含有する繊維を含む繊維シートがスルホン化処理等を施して電池用セパレータとして使用可能なことが記載されていて、このプロピレン樹脂と他のオレフィン系樹脂とを備えた繊維の場合、そのポリプロピレン成分の強度を活かすため、(ポリプロピレン成分):(ポリオレフィン系樹脂成分)=40:60〜90:10であるのが好ましいことが記載されている。
【0009】
このように、スルホン化処理による強度低下を防ぐために、セパレータ中のポリエチレンの含有率を低くし、ポリプロピレンの含有率を高めることが検討されているが、ポリプロピレンよりも低温で熱融着するポリエチレンによる繊維同士の接着強度が十分でなくなってしまい、スルホン化処理とは関係なく、セパレータの強度が低下するという問題があった。また、ポリプロピレンの含有率を高めても、セパレータの強度が低下することや、電池特性が向上しないことがあり、更なる改良が求められていた。
【0010】
さらに、スルホン化処理においては、親水性の付与が繊維表面のみであるため、電解液の保液性が不十分であるという問題があった。そのために、スルホン化処理後の不織布に対して界面活性剤を付与する方法が従来から取られている。しかし、界面活性剤を付与すると、セパレータの強度が低下するという問題が多く発生していた(例えば、特許文献10及び11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭56−3973号公報
【特許文献2】特開昭58−175256号公報
【特許文献3】特開昭64−57568号公報
【特許文献4】特開平1−132042号公報
【特許文献5】特開平6−140018号公報
【特許文献6】特開2002−134090号公報
【特許文献7】特開平11−86826号公報
【特許文献8】特開2003−132870号公報
【特許文献9】特開2001−159026号公報
【特許文献10】特開2009−218048号公報
【特許文献11】特開2009−218047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、不織布にスルホン化処理を施した電池用セパレータに関し、セパレータの地合の均一性が良好で、スルホン化処理による強度低下が小さく、自己放電抑制効果に優れた電池用セパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、この課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ポリプロピレンを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維を含有するポリオレフィン系不織布にスルホン化処理を施した電池用セパレータにおいて、電池用セパレータの示差走査熱量分析による熱的挙動と上記課題の改善に相関性があることを見出し、本発明に至ったものである。
【0014】
即ち、本発明は、ポリプロピレンを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維を含有するポリオレフィン系不織布をスルホン化処理した電池用セパレータにおいて、ポリプロピレンの断面積(β)とポリエチレンの断面積(α)の比(β/α)が60/40超90/10以下(60/40<β/α≦90/10)であり、かつ、セパレータの示差走査熱量分析により得られるDSC曲線で低融点側のポリエチレンに由来する融解ピーク面積(A)と高融点側のポリプロピレンに由来する融解ピーク面積(B)の比(A/B)が0.15以上1.20以下(0.15≦A/B≦1.20)であることを特徴とする電池用セパレータである。
【0015】
スルホン化処理後のポリオレフィン系不織布に界面活性剤が付与されてなる電池用セパレータがより好ましい。
【0016】
界面活性剤の付与量が、スルホン化処理後のポリオレフィン系不織布に対して0.1質量%以上1.0質量%以下であることがより好ましい。
【0017】
界面活性剤がアルキルリン酸系陰イオン性界面活性剤であることがより好ましい。
【0018】
さらに、ポリオレフィン系不織布が熱板圧着方式で乾燥処理した湿式不織布であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0019】
ポリプロピレンを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維を含有するポリオレフィン系不織布をスルホン化処理した電池用セパレータにおいて、ポリプロピレンの断面積(β)とポリエチレンの断面積(α)の比(β/α)が60/40超90/10以下であり、かつ、セパレータの示差走査熱量分析により得られるDSC曲線で低融点側のポリエチレンに由来する融解ピーク面積(A)と高融点側のポリプロピレンに由来する融解ピーク面積(B)の比(A/B)が0.15以上1.20以下であることを特徴とする本発明の電池用セパレータでは、セパレータとしての均一性を確保できると共に、スルホン化処理によるセパレータの強度低下を低減し、電池の自己放電を抑制して、長期にわたって電池容量を維持することができる。また、前記ポリオレフィン系不織布がヤンキードライヤー、シリンダードライヤーに代表される熱板圧着方式で乾燥処理した湿式不織布であることで、シート強度低下をより抑制することができる。
【0020】
また、本発明の電池用セパレータは、界面活性剤が付与されていなくても使用できるが、電解液の保液性を上げるためや電池の容量維持率を上げるために、スルホン化処理後のポリオレフィン系不織布に界面活性剤を付与することも可能である。その場合、界面活性剤の付与量がスルホン化処理後のポリオレフィン系不織布に対して0.1質量%以上1.0質量%以下であること、又は、界面活性剤がアルキルリン酸系陰イオン性界面活性剤であることによって、引張強度等のシート強度低下が抑制された電池用セパレータを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明における電池用セパレータは、ポリプロピレンを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維(以下、「PP/PE芯鞘型複合繊維」と略記する場合がある)を含有するポリオレフィン系不織布をスルホン化処理した電池用セパレータ(以下、「セパレータ」と略記する場合がある)において、ポリプロピレンの断面積(β)とポリエチレンの断面積(α)の比(β/α)(以下、「断面積比(β/α)」と略記する場合がある)が60/40超90/10以下であり、かつ、セパレータの示差走査熱量分析により得られるDSC曲線で低融点側のポリエチレンに由来する融解ピーク面積(A)と高融点側のポリプロピレンに由来する融解ピーク面積(B)の比(A/B)(以下、「融解ピーク面積比(A/B)」と略記する場合がある)が0.15以上1.20以下である。
【0022】
ポリオレフィン系不織布とは、1種以上のポリオレフィン繊維を主体とする不織布のことである。ポリオレフィン系繊維の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
【0023】
PP/PE芯鞘型複合繊維において、断面積比(β/α)は60/40超90/10以下(60/40<β/α≦90/10)であり、60/40超80/20以下(60/40<β/α≦80/20)が好ましく、65/35以上75/25以下(65/35≦β/α≦75/25)がより好ましい。断面積比(β/α)が60/40超90/10以下である場合、スルホン化による強度低下を低減し、強度を維持できるという効果が得られる。断面積比(β/α)が60/40以下の場合、スルホン化処理による強度低下という問題が発生する。また、断面積比(β/α)が90/10超の場合、鞘部分の樹脂が少ないために強度低下という問題が発生する。なお、断面積比は、電子顕微鏡写真によってPP/PE芯鞘型複合繊維の断面写真を撮影し、その断面写真の芯部と鞘部の面積比率を画像解析ソフトによって算出し、測定データとすることにより、測定した。
【0024】
電池用セパレータの示差走査熱量分析(DSC)は、JIS K 7121に準じて実施し、JIS K 7122に準じて融解ピークの面積を求める。示差走査熱量分析において、ポリエチレン及びポリプロピレンそれぞれに由来する融解ピークは、単一であっても構わないし、複数のピークが重なった一連のものであっても構わない。複数のピークが重なった一連のものである場合、これを1つの融解ピークとしてピーク面積を求め、ピーク高さの大きい方を、ポリエチレン及びポリプロピレンの融点とする。
【0025】
本発明において、示差走査熱量分析により得られるDSC曲線における低融点側のポリエチレンに由来する融解ピークとは、120℃以上140℃以下の範囲に最もピーク高さの大きいピークを有する吸熱ピークであり、高融点側のポリプロピレンに由来する融解ピークとは、150℃以上180℃以下の範囲に最もピーク高さの大きいピークを有する吸熱ピークである。
【0026】
本発明において、前記電池用セパレータの示差走査熱量分析により得られるDSC曲線から求められる低融点側のポリエチレンに由来する融解ピーク面積(A)と高融点側のポリプロピレンに由来する融解ピーク面積(B)の比(A/B)は0.15以上1.20以下(0.15≦A/B≦1.20)であり、0.40以上1.10以下(0.40≦A/B≦1.10)がより好ましく、0.60以上0.80以下(0.60≦A/B≦0.80)が更に好ましい。融解ピーク面積比(A/B)が0.15未満であると、熱融着成分であるポリエチレンによる繊維同士の接着強度が十分でなく、セパレータの強度が低下する。また、密度や結晶性の低下により、繊維表面付近のスルホン化が進みやすくなり、繊維内部のスルホン酸基の含有量が相対的に低下するため、自己放電抑制効果が低下しやすくなると考えられる。一方、融解ピーク面積比(A/B)が1.20を超えると、繊維の収縮率が大きくなり、不織布製造時に割れやシワ等が発生しやすくなり、セパレータの地合の均一性が低下する。また、密度や結晶性が高くなり、スルホン酸基の含有量が低下し、自己放電抑制効果が低下すると考えられる。スルホン酸基の含有量を確保するため、スルホン化処理の条件を強くすると、スルホン化処理後のセパレータの強度低下が大きくなる。
【0027】
本発明において、前記電池用セパレータに使用されるPP/PE芯鞘型複合繊維の芯成分であるポリプロピレン及び鞘成分であるポリエチレンの分子量、密度、結晶化度、芯成分と鞘成分の構成比率、芯鞘型複合繊維の延伸倍率を適宜変化させることにより、示差走査熱量分析における熱的挙動を制御することができる。例えば、ポリプロピレンやポリエチレンの密度を高くすると、融解熱量が大きくなり、示差走査熱量分析における融解ピーク面積も大きくなる。また、結晶化度を高くすることによっても、一般的に融解熱量が大きくなり、融解ピーク面積が大きくなるため、芯成分と鞘成分の構成比率が同じでも、融解ピーク面積比(A/B)を変化させることができる。
【0028】
本発明の電池用セパレータに使用されるPP/PE芯鞘型複合繊維は、溶融紡糸機を用い、芯鞘型複合紡糸用口金を用いて溶融紡糸される。紡糸温度は、鞘成分であるポリエチレンが変質しない温度で実施され、紡糸温度200℃以上300℃以下で重合体を押し出し、所定の繊度の紡糸フィラメントを作製する。紡糸フィラメントには、必要に応じて延伸処理を実施する。延伸処理は、鞘成分であるポリエチレンが融着しない温度で実施され、例えば、延伸温度50℃以上100℃以下の範囲で、延伸倍率2倍以上で処理すると、繊維強度が向上して好ましい。得られたフィラメントには、必要に応じて繊維処理剤を付与し、親水性や分散性を制御した後、所定の長さに切断して不織布製造用の芯鞘型複合繊維として使用される。
【0029】
前記PP/PE芯鞘型複合繊維を構成する芯成分としては、ポリプロピレンを使用するが、繊維物性を調整するため、必要に応じてポリエチレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィンを混合することができる。前記ポリオレフィンの混合比率としては、芯成分の10質量%以下であることが好ましい。また、必要に応じて、通常のポリオレフィンに用いられる樹脂添加剤を添加することができる。樹脂添加剤としては、各種酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられ、添加する場合の添加量としては、樹脂に対して0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲で用いられる。
【0030】
次に、前記PP/PE芯鞘型複合繊維を構成する鞘成分としては、ポリエチレンを使用するが、繊維物性を調節するため、必要に応じてポリプロピレンやエチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィンを混合することができる。前記ポリオレフィンの混合比率としては、鞘成分の10質量%以下であることが好ましい。また、必要に応じて、通常のポリオレフィンに用いられる樹脂添加剤を添加することができる。樹脂添加剤としては、各種酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられ、添加する場合の添加量としては、樹脂に対して0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲で用いられる。
【0031】
本発明の電池用セパレータに使用されるポリオレフィン系不織布は、PP/PE芯鞘型複合繊維を少なくとも含有する。本発明の電池用セパレータに含有されるPP/PE芯鞘型複合繊維の含有量は、全繊維に対して、40質量%以上100質量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは、60質量%以上100質量%以下、更に好ましくは、80質量%以上100質量%以下の範囲である。
【0032】
前記PP/PE芯鞘型複合繊維と併用して使用することのできるポリオレフィン系繊維としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等の単一成分からなる繊維、2種類以上の異なるポリオレフィンの混合物からなる混合ポリオレフィン繊維、2種類以上の異なるオレフィンの共重合体からなる共重合ポリオレフィン繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリオレフィン等の樹脂を適宜組み合わせた、芯鞘型、サイドバイサイド型、偏芯型あるいは分割性複合繊維等が挙げられる。
【0033】
本発明においてポリオレフィン系繊維とは、1つ以上の二重結合を分子内に有し、炭素と水素を構成元素とする一種類以上の単量体を重合した単一樹脂又は共重合樹脂を溶融紡糸して繊維化したものであり、ポリビニルアルコール繊維やエチレン−ビニルアルコール共重合体繊維等のように、炭素と水素以外の構成元素を含有する単量体を重合した単一樹脂又は共重合樹脂を溶融紡糸した繊維は含まない。
【0034】
本発明の電池用セパレータに使用されるポリオレフィン系不織布において、ポリオレフィン系繊維と好適に併用することのできる繊維としては、半芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリアミド繊維が挙げられ、特に半芳香族ポリアミド繊維がより好ましい。半芳香族ポリアミド繊維は、主成分として芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンを縮合して得られる半芳香族ポリアミドからなる繊維であり、ジカルボン酸成分の60モル%以上が芳香族カルボン酸であり、ジアミン成分の60モル%以上が炭素数6から12の脂肪族アルキレンジアミンである。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシ酢酸、2,2′−ビフェニルジカルボン酸、2,4′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4′−ジカルボン酸が用いられる。脂肪族ジアミンとしては、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等が挙げられる。
【0035】
本発明の電池用セパレータに使用される繊維の繊維長及び繊維径は特に限定されないが、不織布強度と製造性等から、繊維径は1μm以上20μm以下が好ましく、繊維長は1mm以上20mm以下が好ましい。また、分割性複合繊維を水流交絡やリファイナーにより細分化して使用することもできる。繊維長が1mm未満の場合には、不織布の十分な機械的強度が得られない場合がある。繊維長が20mmを超えた場合には、地合不良となり、良好な不織布が形成できなくなる場合がある。特に、湿式不織布では、分散時の繊維同士の異常な絡みが発生し、均一な分散状態にならず、地合不良となる場合がある。
【0036】
ポリオレフィン系不織布が、ポリオレフィン系合成パルプを含有していても良い。ポリオレフィン系パルプとは、ポリオレフィンを原料として製造されたパルプ状物をいい、その製造方法として、例えば、特公昭55−10683号公報に開示された、原料の炭化水素溶媒より高温、高圧の溶液を減圧領域中にフラッシュ放出する方法、特公昭52−47049号公報に開示されている、原料のエマルジョン溶液を高温、高圧の状態で減圧領域中にフラッシュ放出する方法等に代表されるフラッシュ紡糸方法等が挙げられる。
【0037】
本発明の電池用セパレータに用いる不織布の製造方法としては、一般的な不織布の製造方法がいずれも使用でき、繊維ウェブを形成し、繊維ウェブ内の繊維を接着・融着・絡合させることにより製造することができる。繊維ウェブの製造方法としては、例えば、湿式抄造法や、カード法、エアレイド法等の乾式法等が挙げられる。しかしながら、カード法、エアレイド法等の乾式法は、繊維長の長い繊維を用いることができるが、均一な繊維ウェブの形成が困難で、湿式抄造法に比べ、一般的に地合が劣るという問題がある。
【0038】
一方、湿式抄造法は、生産速度が乾式法に比べて速く、同一装置で繊維径の異なる繊維や複数の種類の繊維を任意の割合で均一に混合できる利点がある。即ち、繊維の形態もステープル状、パルプ状等と選択の幅は広く、使用可能な繊維径も極細繊維から太い繊維まで使用可能で、他の方法に比べ、良好な地合の繊維ウェブが得られる。これらのことから、本発明の電池用セパレータに用いる不織布は湿式抄造法によって得られた湿式不織布が好ましい。
【0039】
繊維ウェブから不織布を製造する方法としては、水流交絡法、ニードルパンチ法、バインダー接着法等を使用することができる。特に、均一性を重視して前記湿式抄造法を用いる場合、熱融着繊維を不織布に含有させて、バインダー接着法により接着することが好ましく、これにより均一な不織布が形成される。
【0040】
また、湿式抄造法において、熱融着繊維の熱融着によるバインダー接着法により不織布を形成する場合、ウェット状態の繊維ウェブの加熱乾燥と同時に熱融着を生じさせる工程が用いられ、加熱乾燥方式としては、ヤンキードライヤー、シリンダードライヤーに代表される熱板圧着方式、バンド式スルードライヤー、エアスルードライヤーに代表される熱風通気方式等が挙げられるが、本発明においては熱板圧着方式による加熱乾燥がより好ましい。熱板圧着方式では、PP/PE芯鞘型複合繊維の熱融着効率が高く、地合の均一性が高く、強度が向上した不織布を得ることができる。
【0041】
本発明の電池用セパレータは、ポリオレフィン系不織布にスルホン化処理を施し、繊維の表面から内部にスルホン酸基を導入する。スルホン化処理としては、二酸化硫黄ガス、三酸化硫黄ガス等による気相処理法や熱濃硫酸、発煙硫酸、又はクロロ硫酸等による液相処理法等を使用することができる。本発明の電池用セパレータにおいては、気相処理法によるスルホン化処理が好ましい。液相処理法によるスルホン化処理は、反応条件の設定が難しく、反応時間を長くし過ぎた場合や温度を高くし過ぎた場合に、不織布が炭化、収縮、フィルム化しやすいという問題がある。また、多量の強酸性廃液が出るという問題がある。
【0042】
本発明の電池用セパレータにおいては、電解液との親和性を更に向上させるために、スルホン化処理後の不織布に界面活性剤を付与することが好ましい。用いられる界面活性剤としては、アルキルリン酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、長鎖脂肪酸塩、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、特殊芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤等の陰イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレン誘導体類、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。これらの群から、併用して使用することもできる。これらの界面活性剤は、含浸、塗布、スプレーした後、乾燥することにより不織布に付与することができる。
【0043】
界面活性剤の付与量は、スルホン化処理後の不織布に対して、0.1質量%以上1.0質量%以下が好ましく、より好ましくは0.2質量%以上0.8質量%以下であり、更に好ましくは、0.4質量%以上0.6質量%以下である。付与量が0.1質量%未満の場合、電解液との親和性が向上しない場合がある。付与量が0.1質量%以上1.0質量%以下であれば、電解液との親和性が向上し、シート強度の低下も抑制することができる。界面活性剤の付与量が1.0質量%を超えた場合、シート強度の低下する場合や過剰量の界面活性剤によって電池性能が低下する場合がある。
【0044】
上記の界面活性剤の中でも特にアルキルリン酸系陰イオン界面活性剤を用いることにより、セパレータの強度低下をより小さくすることができる。アルキルリン酸系陰イオン性界面活性剤の成分としては、アルキルリン酸エステル塩、アルキルフェニルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩及び非中和のリン酸エステル系界面活性剤等を挙げることができる。これらの群から、併用して使用することもできる。優れた吸液性の点でアルキルリン酸エステル塩が最も好ましい。
【0045】
本発明の電池用セパレータにおいては、必要に応じて、スーパーカレンダーや熱カレンダー処理により、厚みを調整して用いられる。本発明の電池用セパレータの目付は、30g/m以上100g/m以下の範囲が好ましく、厚みは、60μm以上250μm以下の範囲が好ましい。電池用セパレータの目付及び厚みは、適用する電池の特性に応じて、適宜選択できる。ここで目付は、JIS P 8124に規定されている坪量を表し、厚みはJIS P 8118に規定される厚さを表す。また本発明の電池用セパレータの最大細孔径は1μm以上50μm以下の範囲が好ましく、より好ましくは、5μm以上40μm以下、更に好ましくは、10μm以上35μm以下の範囲である。最大細孔径が50μmを超えて大きくなると、短絡しやすくなり、電池製造時の不良率が大きくなる場合がある。また、最大細孔径が1μm未満では、酸素ガス透過性やイオン導電性が低下する場合がある。ここで、最大細孔径はJIS K 3832に規定されるバブルポイント法による最大細孔径を表す。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維(断面積比(β/α)=70/30、融解ピーク面積比(A/B)=0.60、繊度0.8dtex、繊維長5mm)100質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式抄造法を用いて抄造し、135℃に設定された熱板圧着方式であるヤンキードライヤーと併設されている熱風フードにより乾燥させると共に、芯鞘型複合繊維の鞘部分を熱溶融接着させて、幅500mmの不織布を作製した。三酸化硫黄ガスを含む75℃の乾燥空気中で、この不織布に25秒間スルホン化処理を行い、2.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、イオン交換水で十分洗浄し、次いで、界面活性剤として、アルキルリン酸エステル塩を、スルホン化処理後の不織布に対して0.5質量%となるようにスプレー塗布し、乾燥後、スーパーカレンダーにて、120μmに厚み調整して、電池用セパレータを得た。
【0048】
(実施例2〜5)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維として、表1に記載されている断面積比(β/α)及び融解ピーク面積比(A/B)を有する芯鞘型複合繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)を各々使用した以外は、実施例1と同様の方法で、電池用セパレータを得た。
【0049】
(実施例6)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維(断面積比(β/α)=70/30、融解ピーク面積比(A/B)=0.75、繊度0.8dtex、繊維長5mm)100質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式抄造法を用いて抄造し、135℃に設定されたバンド式スルードライヤーにより乾燥させると共に、芯鞘型複合繊維の鞘部分を熱溶融接着させて、幅500mmの不織布を作製した。三酸化硫黄ガスを含む75℃の乾燥空気中で、この不織布に25秒間スルホン化処理を行い、2.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、イオン交換水で十分洗浄し、次いで、界面活性剤として、アルキルリン酸エステル塩を、スルホン化処理後の不織布に対して0.5質量%となるようにスプレー塗布し、乾燥後、スーパーカレンダーにて、120μmに厚み調整して、電池用セパレータを得た。
【0050】
(実施例7)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維(断面積比(β/α)=70/30、融解ピーク面積比(A/B)=0.74、繊度0.8dtex、繊維長5mm)100質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式抄造法を用いて抄造し、135℃に設定されたエアスルードライヤーにより乾燥させると共に、芯鞘型複合繊維の鞘部分を熱溶融接着させて、幅500mmの不織布を作製した。三酸化硫黄ガスを含む75℃の乾燥空気中で、この不織布に25秒間スルホン化処理を行い、2.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、イオン交換水で十分洗浄し、次いで、界面活性剤として、アルキルリン酸エステル塩を、スルホン化処理後の不織布に対して0.5質量%となるようにスプレー塗布し、乾燥後、スーパーカレンダーにて、120μmに厚み調整して、電池用セパレータを得た。
【0051】
(実施例8〜15)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維として、表1に記載されている断面積比(β/α)及び融解ピーク面積比(A/B)を有する芯鞘型複合繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)を各々使用した以外は、実施例1と同様の方法で、電池用セパレータを得た。
【0052】
(実施例16)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維(断面積比(β/α)=70/30、融解ピーク面積比(A/B)=0.71、繊度1.7dtex、繊維長10mm)90質量部、1,9−ノナンジアミンとテレフタル酸をモノマーとする半芳香族ポリアミド繊維(繊度0.7dtex、繊維長10mm)10質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式抄造法を用いて抄造し、135℃に設定された熱板圧着方式であるヤンキードライヤーと併設されている熱風フードにより乾燥させると共に、芯鞘型複合繊維の鞘部分を熱溶融接着させて、幅500mmの不織布を作製した。三酸化硫黄ガスを含む75℃の乾燥空気中で、この不織布に25秒間スルホン化処理を行い、2.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、イオン交換水で十分洗浄し、次いで、界面活性剤として、アルキルリン酸エステル塩を、スルホン化処理後の不織布に対して0.5質量%となるようにスプレー塗布し、乾燥後、スーパーカレンダーにて、120μmに厚み調整して、電池用セパレータを得た。
【0053】
(実施例17)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維(断面積比(β/α)=70/30、融解ピーク面積比(A/B)=0.88、繊度1.7dtex、繊維長10mm)75質量部を、1,9−ノナンジアミンとテレフタル酸をモノマーとする半芳香族ポリアミド繊維(繊度0.7dtex、繊維長10mm)25質量部をパルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式抄造法を用いて抄造し、135℃に設定された熱板圧着方式であるヤンキードライヤーと併設されている熱風フードにより乾燥させると共に、芯鞘型複合繊維の鞘部分を熱溶融接着させて、幅500mmの不織布を作製した。三酸化硫黄ガスを含む75℃の乾燥空気中で、この不織布に25秒間スルホン化処理を行い、2.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、イオン交換水で十分洗浄し、次いで、界面活性剤として、アルキルリン酸エステル塩を、スルホン化処理後の不織布に対して0.5質量%となるようにスプレー塗布し、乾燥後、スーパーカレンダーにて、120μmに厚み調整して、電池用セパレータを得た。
【0054】
(実施例18)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維(断面積比(β/α)=70/30、融解ピーク面積比(A/B)=0.76、繊度1.7dtex、繊維長10mm)100質量部を、湿式抄造法の代わりに、エアレイド法にてウェブを作製し、135℃設定のバンド式スルードライヤーを使用し、芯鞘型複合繊維の鞘部分を熱溶融接着させて、幅500mmの不織布を作製した。三酸化硫黄ガスを含む75℃の乾燥空気中で、この不織布に25秒間スルホン化処理を行い、2.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、イオン交換水で十分洗浄し、次いで、界面活性剤として、アルキルリン酸エステル塩を、スルホン化処理後の不織布に対して0.5質量%となるようにスプレー塗布し、乾燥後、スーパーカレンダーにて、120μmに厚み調整して、電池用セパレータを得た。
【0055】
(実施例19)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維(断面積比(β/α)=70/30、融解ピーク面積比(A/B)=0.74、繊度0.4dtex、繊維長5mm)100質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式抄造法を用いて抄造し、135℃に設定された熱板圧着方式であるヤンキードライヤーと併設されている熱風フードにより乾燥させると共に、芯鞘型複合繊維の鞘部分を熱溶融接着させて、幅500mmの不織布を作製した。三酸化硫黄ガスを含む75℃の乾燥空気中で、この不織布に25秒間スルホン化処理を行い、2.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、イオン交換水で十分洗浄し、次いで、界面活性剤として、アルキルリン酸エステル塩を、スルホン化処理後の不織布に対して0.5質量%となるようにスプレー塗布し、乾燥後、スーパーカレンダーにて、120μmに厚み調整して、電池用セパレータを得た。
【0056】
(実施例20)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維(断面積比(β/α)=70/30、融解ピーク面積比(A/B)=0.76、繊度0.8dtex、繊維長5mm)100質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式抄造法を用いて抄造し、135℃に設定された熱板圧着方式であるヤンキードライヤーと併設されている熱風フードにより乾燥させると共に、芯鞘型複合繊維の鞘部分を熱溶融接着させて、幅500mmの不織布を作製した。三酸化硫黄ガスを含む75℃の乾燥空気中で、この不織布に25秒間スルホン化処理を行い、2.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、イオン交換水で十分洗浄し、次いで、界面活性剤として、アルキルリン酸エステル塩を、スルホン化処理後の不織布に対して1.5質量%となるようにスプレー塗布し、乾燥後、スーパーカレンダーにて、120μmに厚み調整して、電池用セパレータを得た。
【0057】
(実施例21〜26)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維として、表1に記載されている断面積比(β/α)及び融解ピーク面積比(A/B)を有する芯鞘型複合繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)を各々使用し、界面活性剤であるアルキルリン酸エステル塩の付与量を表1に記載されている量に変更した以外は、実施例20と同様の方法で、電池用セパレータを得た。
【0058】
(実施例27)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維(断面積比(β/α)=70/30、融解ピーク面積比(A/B)=0.61、繊度0.8dtex、繊維長5mm)100質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式抄造法を用いて抄造し、135℃に設定された熱板圧着方式であるヤンキードライヤーと併設されている熱風フードにより乾燥させると共に、芯鞘型複合繊維の鞘部分を熱溶融接着させて、幅500mmの不織布を作製した。三酸化硫黄ガスを含む75℃の乾燥空気中で、この不織布に25秒間スルホン化処理を行い、2.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、イオン交換水で十分洗浄し、乾燥後、スーパーカレンダーにて、120μmに厚み調整して、電池用セパレータを得た。
【0059】
(実施例28〜29)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維として、表1に記載されている断面積比(β/α)及び融解ピーク面積比(A/B)を有する芯鞘型複合繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)を各々使用した以外は、実施例27と同様の方法で、電池用セパレータを得た。
【0060】
(実施例30)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維(断面積比(β/α)=70/30、融解ピーク面積比(A/B)=0.62、繊度0.8dtex、繊維長5mm)100質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式抄造法を用いて抄造し、135℃に設定された熱板圧着方式であるヤンキードライヤーと併設されている熱風フードにより乾燥させると共に、芯鞘型複合繊維の鞘部分を熱溶融接着させて、幅500mmの不織布を作製した。三酸化硫黄ガスを含む75℃の乾燥空気中で、この不織布に25秒間スルホン化処理を行い、2.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、イオン交換水で十分洗浄し、次いで、界面活性剤として、アルキルフェニルリン酸エステルを、スルホン化処理後の不織布に対して0.5質量%となるようにスプレー塗布し、乾燥後、スーパーカレンダーにて、120μmに厚み調整して、電池用セパレータを得た。
【0061】
(実施例31〜32)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維として、表1に記載されている断面積比(β/α)及び融解ピーク面積比(A/B)を有する芯鞘型複合繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)を各々使用した以外は、実施例30と同様の方法で、電池用セパレータを得た。
【0062】
(実施例33)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維(断面積比(β/α)=70/30、融解ピーク面積比(A/B)=0.61、繊度0.8dtex、繊維長5mm)100質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式抄造法を用いて抄造し、135℃に設定された熱板圧着方式であるヤンキードライヤーと併設されている熱風フードにより乾燥させると共に、芯鞘型複合繊維の鞘部分を熱溶融接着させて、幅500mmの不織布を作製した。三酸化硫黄ガスを含む75℃の乾燥空気中で、この不織布に25秒間スルホン化処理を行い、2.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、イオン交換水で十分洗浄し、次いで、界面活性剤として、アルキルフェニルリン酸エステルを、スルホン化処理後の不織布に対して0.5質量%となるようにスプレー塗布し、乾燥後、スーパーカレンダーにて、120μmに厚み調整して、電池用セパレータを得た。
【0063】
(実施例34〜35)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維として、表1に記載されている断面積比(β/α)及び融解ピーク面積比(A/B)を有する芯鞘型複合繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)を各々使用した以外は、実施例33と同様の方法で、電池用セパレータを得た。
【0064】
(比較例1)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維(断面積比(β/α)=90/10、融解ピーク面積比(A/B)=0.12、繊度0.8dtex、繊維長5mm)100質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式抄造法を用いて抄造し、135℃に設定された熱板圧着方式であるヤンキードライヤーと併設されている熱風フードにより乾燥させると共に、芯鞘型複合繊維の鞘部分を熱溶融接着させて、幅500mmの不織布を作製した。三酸化硫黄ガスを含む75℃の乾燥空気中で、この不織布に25秒間スルホン化処理を行い、2.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、イオン交換水で十分洗浄し、次いで、界面活性剤として、アルキルリン酸エステル塩を、スルホン化処理後の不織布に対して0.5質量%となるようにスプレー塗布し、乾燥後、スーパーカレンダーにて、120μmに厚み調整して、電池用セパレータを得た。
【0065】
(比較例2〜4)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維として、表1に記載されている断面積比(β/α)及び融解ピーク面積比(A/B)を有する芯鞘型複合繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)を使用した以外は、比較例1と同様の方法で、電池用セパレータを得た。
【0066】
(比較例5)
芯成分がポリプロピレン(融点165℃)で、鞘成分がポリエチレン(融点135℃)である芯鞘型複合繊維(断面積比(β/α)=70/30、融解ピーク面積比(A/B)=0.76、繊度1.7dtex、繊維長10mm)75質量部と、エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)25質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式抄造法を用いて抄造し、135℃に設定された熱板圧着方式であるヤンキードライヤーと併設されている熱風フードにより乾燥させると共に、芯鞘型複合繊維の鞘部分を熱溶融接着させて、幅500mmの不織布を作製した。三酸化硫黄ガスを含む75℃の乾燥空気中で、この不織布に25秒間スルホン化処理を行い、2.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、イオン交換水で十分洗浄し、次いで、界面活性剤として、アルキルリン酸エステル塩を、スルホン化処理後の不織布に対して0.5質量%となるようにスプレー塗布し、乾燥後、スーパーカレンダーにて、120μmに厚み調整して、電池用セパレータを得た。
【0067】
実施例及び比較例で使用する繊維及び得られた電池用セパレータについて、下記の測定及び評価を行い、結果を表1に示した。
【0068】
[断面積比(β/α)]
ポリプロピレンを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維の断面積比は、電子顕微鏡写真によって、PP/PE芯鞘型複合繊維の断面写真を撮影し、その断面写真の芯部と鞘部の面積比率を画像解析ソフトによって算出して、測定データとした。
【0069】
[融解ピーク面積比(A/B)]
ポリプロピレンを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維の融解ピーク面積比(A/B)を評価する場合、繊維をエタノールで洗浄し、80℃で30分間乾燥した後、温度23℃、湿度50%で24時間状態調節した試料10mgをAl製試料容器に封入し、JIS K 7121に規定される示差走査熱量分析を行い、DSC曲線を求め、JIS K 7122に規定される方法により、ポリエチレンに由来する低融点側の融解ピーク面積(A)とポリプロピレンに由来する高融点側の融解ピーク面積(B)を算出し、式(1)から融解ピーク面積比(A/B)を得た。
【0070】
一方、スルホン化処理された電池用セパレータの融解ピーク面積比(A/B)を評価する場合、電池用セパレータをイオン交換水で十分洗浄し、80℃で30分間乾燥した後、温度23℃、湿度50%で24時間状態調節した試料10mgをAl製試料容器に封入し、JIS K 7121に規定される示差走査熱量分析を行い、DSC曲線を求め、JIS K 7122に規定される方法により、ポリエチレンに由来する低融点側の融解ピーク面積(A)とポリプロピレンに由来する高融点側の融解ピーク面積(B)を算出し、式(1)から融解ピーク面積比(A/B)を得た。
【0071】
融解ピーク面積比(A/B)=融解ピーク面積(A)/融解ピーク面積(B) (1)
【0072】
[目付]
50mm×200mmの試料を電子天秤で小数点3桁まで測定し、1m当たりの目付質量に換算し、算出した。
【0073】
[厚み]
50mm×200mmの試料をダイヤルシックネスゲージ((株)ミツトヨ、7321、1mm/3回転〕にて0.001mmまで測定した。
【0074】
[セパレータ均一性]
厚み調整済みの電池用セパレータから縦横500mm角のシートを切り取り、ここから50mm角の通気度測定用試料100枚を作製し、JIS L 1096に規定される通気性A法(フラジール形法)に準じて、通気性試験機(装置名:KES−F8−AP1、カトーテック(株)製)で通気度を測定し、試料100枚の通気度の平均値(Q)と標準偏差(Q)を算出し、次の式(2)から変動係数を求めた。変動係数が小さいほどセパレータの均一性が高いことを示す。
【0075】
変動係数(%)=通気度の標準偏差(Q)/通気度の平均値(Q)×100 (2)
【0076】
[引張強度]
厚み調整済みの電池用セパレータから、巻き取りの流れ方向250mm、幅方向50mmの試料を10枚切り取り、JIS P 8113に準じて、卓上型材料試験機(装置名:STA−1150、(株)オリエンテック製)を用いて、引張強度を測定し、10枚の平均値を電池用セパレータの引張強度とした。
【0077】
[強度維持率]
スルホン化処理前の不織布及び厚み調整済みの電池用セパレータから、巻き取りの流れ方向250mm、幅方向50mmの試料を10枚切り取り、JIS P 8113に準じて、卓上型材料試験機(装置名:STA−1150、(株)オリエンテック製)を用いて、引張強度を測定し、10枚の平均値をスルホン化処理前の不織布及び電池用セパレータの引張強度とした。スルホン化処理前の不織布としての引張強度(P)、厚み調整済みの電池用セパレータの引張強度(P)とし、次の式(3)から強度維持率(%)を求めた。強度維持率が大きいほど、スルホン化処理による強度の低下が小さいことを示す。
【0078】
強度維持率(%)=P/P×100 (3)
【0079】
[最大細孔径]
電池用セパレータについて、JIS K 3832に規定されるバブルポイント法により最大細孔径を求めた。
【0080】
[硫黄含有率]
スルホン化処理された電池用セパレータから直径35mmの試料を採取し、イオン交換水200mL中で10分間、2回洗浄し、60℃で10分間乾燥して測定用試料を作製した。この試料をホルダーにセットして、蛍光X線装置(装置名:ZSX Primus II、Rhターゲット、50kV−50mA、(株)リガク製)で全元素測定を行った。硫黄含有率は、測定値を半定量分析法であるSQX計算することで算出し、スルホン化処理量を質量%で見積もった。
【0081】
[電池の作製]
電極の集電体として、発泡ニッケル基材を用いたペースト式水酸化ニッケル正極(40mm幅)と、ニッケルメッキパンチングメタル基材を用いた水素吸蔵合金負極(40mm幅)を1枚ずつ用い、これらの電極の間に、43mm幅の実施例及び比較例で得られた電池用セパレータを介在させて、電池構成機を用いて巻き取り、渦巻状極板群を作製した。該渦巻状極板群を円筒形の金属ケースに収納した後、1N水酸化リチウムを含む7N水酸化カリウム水溶液を主体とするアルカリ電解液を一定量注入した後、安全弁付きの封印蓋を取り付けて、公称容量が1.7Ahの単3形密閉式ニッケル水素電池を作製した。その後、正極と負極との間に240Vの電圧を印加し、電気抵抗が1kΩを超えるものを正常とした。
【0082】
[容量維持率]
上記のようにして製造した電池のうち、正常な電池を各電池用セパレータについて10個選別した。電池の化成のため、25℃において、170mA(0.1C)の電流で15時間充電し、1.7A(1C)の電流で端子電圧が0.8Vになるまで放電するという充放電を4回繰り返した。得られた化成済みの電池10個を用い、25℃で、1.7A(1C)の電流で充電し、満充電に達した後、電池電圧が10mV低下した時点で充電を1時間休止させ、次に340mA(0.2C)の電流で終止電圧が1.0Vになるまで放電させたときの放電容量を測定し、Cとする。そして、同様に1.7A(1C)の電流で充電してから、60℃の恒温槽中にて7日間保存し、その後25℃で6時間放冷し、同様に340mA(0.2C)の電流で放電させたときの放電容量を測定してCとし、次の式(4)から容量維持率を算出した。容量維持率の値が大きいほど、自己放電特性が優れることを示す。
【0083】
容量維持率(%)=C/C×100 (4)
【0084】
【表1】

【0085】
実施例1〜35の電池用セパレータは、ポリプロピレンを芯成分、ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維を含有するポリオレフィン系不織布をスルホン化処理した電池用セパレータであり、ポリプロピレンの断面積(β)とポリエチレンの断面積(α)の比(β/α)が60/40超90/10以下であり、示差走査熱量分析により得られるDSC曲線において、低融点側のポリエチレンに由来する融解ピーク面積(A)と高融点側のポリプロピレンに由来する融解ピーク面積(B)の比(A/B)が0.15以上1.20以下であるため、セパレータの地合の均一性が良好で、スルホン化処理による強度低下が小さく、自己放電抑制効果に優れている。
【0086】
実施例1〜5、実施例8〜15を比較すると、断面積の比(β/α)が60/40超80/20以下(60/40<β/α≦80/20)であり、融解ピーク面積の比(A/B)が0.40以上1.10以下(0.40≦A/B≦1.10)である実施例1〜5、実施例10〜14は、セパレータの地合の均一性に優れ、引張強度及び強度維持率が高く、より優れている。また、断面積の比(β/α)が65/35以上75/25以下(65/35≦β/α≦75/25)であり、融解ピーク面積の比(A/B)が0.60以上0.80以下(0.60≦A/B≦0.80)である実施例1〜3及び11〜12は、セパレータの地合の均一性に優れるか、又は引張強度及び強度維持率が高くなり、一層優れている。
【0087】
実施例6、実施例7及び実施例2を比較すると、シリンダードライヤーで加熱乾燥した湿式不織布である実施例2の方が、同じ湿式不織布であっても、エアスルードライヤーやバンド式スルードライヤーを使用した実施例6及び実施例7より、セパレータの地合の均一性に優れ、強度維持率が高く、最大細孔径も小さく優れている。
【0088】
実施例2と実施例18を比較すると、湿式不織布である実施例2の方が、乾式不織布を用いた実施例18より、セパレータの地合の均一性に優れ、引張強度及び強度維持率が高く、最大細孔径も小さく優れている。
【0089】
実施例2と実施例19を比較すると、細繊維径の繊維を使用した実施例19の方が、実施例2より、セパレータの地合の均一性に優れ、最大細孔径も小さく優れている。
【0090】
実施例2、20〜26を比較すると、界面活性剤の付与量が0.1質量%以上1.0質量%以下である実施例2、実施例21〜26は、引張強度、強度維持率及び容量維持率が優れている。また、界面活性剤の付与量が0.2質量%以上0.8質量%以下である実施例2、22〜25は、引張強度、強度維持率及び容量維持率がより優れている。界面活性剤の付与量が0.4質量%以上0.6質量%以下である実施例2、23及び24は、引張強度、強度維持率がさらに優れている。
【0091】
実施例1、27、30、33を比較すると、界面活性剤が付与されていない実施例27と比較して、界面活性剤が付与されてなる実施例1、30及び33は、電池の容量維持率が向上しているが、強度維持率が低下していることがわかる。しかし、実施例1、30及び33を比較すると、界面活性剤がアルキルリン酸系陰イオン性界面活性剤である実施例1及び30は、他の界面活性剤が付与されている実施例33と比較して、引張強度及び強度維持率が優れていた。
【0092】
実施例2、28、31、34を比較すると、界面活性剤が付与されていない実施例28
と比較して、界面活性剤が付与されてなる実施例2、31及び34は、電池の容量維持率が向上しているが、強度維持率が低下していることがわかる。しかし、実施例2、31及び34を比較すると、界面活性剤がアルキルリン酸系陰イオン性界面活性剤である実施例2及び31は、他の界面活性剤が付与されている実施例34と比較して、引張強度及び強度維持率が優れていた。
【0093】
実施例3、29、32、35を比較すると、界面活性剤が付与されていない実施例29と比較して、界面活性剤が付与されてなる実施例3、32及び35は、電池の容量維持率が向上しているが、強度維持率が低下していることがわかる。しかし、実施例3、32及び35を比較すると、界面活性剤がアルキルリン酸系陰イオン性界面活性剤である実施例3及び32は、他の界面活性剤が付与されている実施例35と比較して、引張強度及び強度維持率が優れていた。
【0094】
一方、比較例1及び2で得られた電池用セパレータは、融解ピーク面積比(A/B)が0.15未満又は1.20超の範囲であるため、セパレータの均一性、引張強度、強度維持率が低く、電池の容量維持率も劣っている。比較例3及び4で得られた電池用セパレータは、断面積比(β/α)が60/40以下又は90/10超であるため、セパレータの均一性、引張強度、強度維持率が低く、電池の容量維持率も劣っている。比較例5は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を併用しており、電池の容量維持率の低下が著しかった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の活用例としては、セパレータとしての地合の均一性が良好で、電池の自己放電を抑制して、長期にわたって電池容量を維持することができるアルカリ二次電池用セパレータとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維を含有するポリオレフィン系不織布をスルホン化処理した電池用セパレータにおいて、ポリプロピレンの断面積(β)とポリエチレンの断面積(α)の比(β/α)が60/40超90/10以下(60/40<β/α≦90/10)であり、かつ、セパレータの示差走査熱量分析により得られるDSC曲線で低融点側のポリエチレンに由来する融解ピーク面積(A)と高融点側のポリプロピレンに由来する融解ピーク面積(B)の比(A/B)が0.15以上1.20以下(0.15≦A/B≦1.20)であることを特徴とする電池用セパレータ。
【請求項2】
ポリプロピレンの断面積(β)とポリエチレンの断面積(α)の比(β/α)が60/40超80/20以下(60/40<β/α≦80/20)である請求項1記載の電池用セパレータ。
【請求項3】
ポリプロピレンの断面積(β)とポリエチレンの断面積(α)の比(β/α)が65/35以上75/25以下(65/35≦β/α≦75/25)である請求項1記載の電池用セパレータ。
【請求項4】
セパレータの示差走査熱量分析により得られるDSC曲線で低融点側のポリエチレンに由来する融解ピーク面積(A)と高融点側のポリプロピレンに由来する融解ピーク面積(B)の比(A/B)が0.40以上1.10以下(0.40≦A/B≦1.10)である請求項1記載の電池用セパレータ。
【請求項5】
セパレータの示差走査熱量分析により得られるDSC曲線で低融点側のポリエチレンに由来する融解ピーク面積(A)と高融点側のポリプロピレンに由来する融解ピーク面積(B)の比(A/B)が0.60以上0.80以下(0.60≦A/B≦0.80)である請求項1記載の電池用セパレータ。
【請求項6】
スルホン化処理後のポリオレフィン系不織布に界面活性剤が付与されてなる請求項1〜5のいずれか記載の電池用セパレータ。
【請求項7】
界面活性剤の付与量が、スルホン化処理後のポリオレフィン系不織布に対して0.1質量%以上1.0質量%以下である請求項6記載の電池用セパレータ。
【請求項8】
界面活性剤の付与量が、スルホン化処理後のポリオレフィン系不織布に対して0.2質量%以上0.8質量%以下である請求項6記載の電池用セパレータ。
【請求項9】
界面活性剤の付与量が、スルホン化処理後のポリオレフィン系不織布に対して0.4質量%以上0.6質量%以下である請求項6記載の電池用セパレータ。
【請求項10】
界面活性剤がアルキルリン酸系陰イオン性界面活性剤である請求項6〜9のいずれか記載の電池用セパレータ。
【請求項11】
ポリオレフィン系不織布が熱板圧着方式で乾燥処理した湿式不織布である請求項1〜10のいずれかに記載の電池用セパレータ。

【公開番号】特開2013−48081(P2013−48081A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−130071(P2012−130071)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】