説明

電池用電極シートの測定方法及び測定装置

【課題】電池用電極シートの測定領域の領域ごとの測定をすることが可能な電池用電極シートの測定方法及び測定装置を提供する。
【解決手段】
電池用電極シートの測定方法及び測定装置は、電極層及び絶縁層の順に積層された電極シートの測定をする電池用電極シートの測定方法及び測定装置であって、上記電極シートの測定領域を分割して上記絶縁層の静電容量を測定し、測定された上記静電容量から分割された上記測定領域それぞれの測定をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、リチウム電池等の静電容量を用いた電池用電極シートの測定方法及び測定装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電池用電極シートの測定方法として、正極及び負極の間にセパレータを配置し捲回した構造の電極群を備えた二次電池において、電池の組み立て後に電極群の静電容量の測定をする測定方法が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−345632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の電池用電極シートの測定方法では、電極群の測定領域全体としての測定を行うため、電極群の測定領域の領域ごとの測定ができないという問題点がある。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、電池用電極シートの測定領域の領域ごとに良否の判定をすることが可能な電池用電極シートの測定方法及び測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明に係る電池用電極シートの測定方法は、電極層及び絶縁層の順に積層された電極シートの測定をする電池用電極シートの測定方法であって、
上記電極シートの測定領域を分割して上記絶縁層の静電容量の測定をする。
【0007】
ここに、電極シートは、電極層、及び絶縁層がこの順番で積層されたシートを意味する。電極層は、活物質層を含む層をいう。電極層は、活物質層そのものであってもよく、集電体と活物質層が積層されたものでもよい。絶縁層は、電気的に絶縁されている層を意味する。絶縁層は、例えば、セパレータ、多孔質シート、繊維質シート、及び固体電解質層等を挙げることができる。セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるのポリオレフィン系微多孔膜等を挙げることができる。
【0008】
測定領域は、電極シートの測定をする領域を意味する。具体的には、電極シートにおいて、電極層及び絶縁層のうち少なくともいずれか1つが存在する領域を意味する。
【0009】
静電容量は、電極シートの積層方向における2点間の静電容量のことを意味する。一般的に、静電容量は絶縁された導体の電圧、又はコンデンサーの両極間の電位差を単位量だけ上げるのに必要な電気量をいう。したがって、本発明における静電容量は、絶縁層の状態を反映している。例えば、絶縁層の物性、言い換えると誘電率が変化した場合は静電容量も絶縁層の誘電率に応じて変化をする。また、絶縁層の誘電率ε及び測定端子がなす面積Sを一定と見なせる場合は、式C=εS/dから絶縁層の厚さdに応じた静電容量Cを得ることができる。即ち、静電容量を測定することで絶縁層の状態に応じた値を得ることができ、電池用電極シートの測定をすることができる。
【0010】
測定領域の分割は、例えば、測定端子を絶縁部材により複数に分割すること、及び分割して測定する測定領域毎に測定端子を走査させること等を挙げることができる。
【0011】
静電容量の測定は、例えば、測定端子を電極シートに接触させて測定すること、及び電極シートに非接触で測定すること等を挙げることができる。
【0012】
測定された電極シートは、例えば、電池として組み立てられる。ここで仮に、測定により不良と判定される電極シート、即ち欠陥のある電極シートを電池として組み立てた場合、何らかの対策を施さなければ、電池の性能悪化や内部短絡等の問題を引き起こしかねない。また、電極シートを測定するために、組み立て後の電池を測定することは効率が悪い。そして、単に電極シートの測定領域全体を測定するだけでは、不良の原因、例えば、設備の不具合等の特定が困難である。
【0013】
しかるに、本発明に係る電池用電極シートの測定方法によれば、電極シートの測定領域ごとの良否を判定することが可能となる。言い換えると、電極シートの測定領域のある区切られた領域において、区切られた領域それぞれの測定ができる。そのため、例えば、不良な電極シートを次の製造工程に送らないこと、電極シートの製造装置の製造条件を最適に制御すること、設備不具合等の電極シートの不良原因を特定すること、及び電極シートの不良部位のみ除去すること等が容易になり、電極シートを効率良く生産することが可能となる。
【0014】
電池用電極シートの測定方法であって、測定された上記静電容量から上記絶縁層の厚さの算出をする算出工程を更に備える。
【0015】
この態様によれば、測定された静電容量から絶縁層の厚さの算出をすることができる。絶縁層の厚さの算出は、例えば、静電容量の式から絶縁層の厚さを算出する方法、及び予め静電容量の値と絶縁層の厚さとの相関をとり相関関係から絶縁層の厚さを算出する方法等を挙げることができる。そして算出された絶縁層の厚さから、分割された測定領域それぞれの良否を判定することができる。
【0016】
上述したように測定された電極シートは、例えば、電池として組み立てられる。ここで仮に、絶縁層の厚さが極端に薄い場合には、電池組み付け時の拘束や、充放電時の電極層の膨張収縮に伴って正極又は負極が絶縁層を突き破り短絡が発生する可能性が考えられる。また絶縁層の厚さが極端に厚い場合には、リチウムイオンの移動が妨げられ電池性能が低下する可能性が考えられる。
【0017】
しかるに、本発明に係る電池用電極シートの測定方法の一態様では、分割された測定領域ごとに絶縁層の厚さを算出することができる。そのため、例えば、電池用電極シートの良否の判定をすることができ、短絡や電池性能の低下等を防ぐことができる。
【0018】
本発明に係る電池用電極シートの測定方法の他の態様では、上記絶縁層は、固体電解質層である。
【0019】
この態様によれば、固体電解質層を備えた電極シートの測定をすることができる。
【0020】
上述した課題を解決するため、本発明に係る電池用電極シートの測定装置は、電極層及び絶縁層の順に積層された電極シートの測定をする電池用電極シートの測定装置であって、上記電極シートの上記絶縁層に配置され複数に分割された第1の測定端子と、上記第1の測定端子に対して上記電極シートを挟んで上記電極層に配置される第2の測定端子と、を備える。
【0021】
ここに、電極シートは、電極層、及び絶縁層がこの順番で積層されたシートを意味する。電極層は、活物質層を含む層をいう。電極層は、活物質層そのものであってもよく、集電体と活物質層が積層されたものでもよい。絶縁層は、電気的に絶縁されている層を意味する。絶縁層は、例えば、セパレータ、多孔質シート、繊維質シート、及び固体電解質層等を挙げることができる。セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるのポリオレフィン系微多孔膜等を挙げることができる。
【0022】
静電容量は、電極シートの積層方向における2点間の静電容量のことを意味する。一般的に、静電容量は絶縁された導体の電圧、又はコンデンサーの両極間の電位差を単位量だけ上げるのに必要な電気量をいう。したがって、本発明における静電容量は、絶縁層の状態を反映している。例えば、絶縁層の物性、言い換えると誘電率が変化した場合は静電容量も絶縁層の誘電率に応じて変化をする。また、絶縁層の誘電率ε及び測定端子がなす面積Sを一定と見なせる場合は、式C=εS/dから絶縁層の厚さdに応じた静電容量Cを得ることができる。即ち、静電容量を測定することで絶縁層の状態に応じた値を得ることができ、電池用電極シートの測定をすることができる。
【0023】
測定装置は、第1の測定端子及び第2の測定端子を含み、電極シートの絶縁層の静電容量を測定するものを意味する。測定装置は、例えば、プロセッサやメモリ等を含んで構成される装置である。
【0024】
第1の測定端子及び第2の測定端子は、電極シートに対向し電極シートの絶縁層の静電容量を測定する端子を意味する。第1の測定端子は電極シートの絶縁層に配置される。第1の測定端子は、例えば、絶縁層に対向する面が、絶縁性の材料によって複数に分割された導電性の材料から構成される。第2の測定端子は、第1の測定端子に対して電極シートを挟んで電極層に配置される。第1の測定端子及び第2の測定端子は、電極シートに接触をしても、非接触であってもよい。電極シートに接触する場合は、例えば、電極シートに接触をすることで電極シートに圧力が加わった状態の測定をすることもできる。電極シートに非接触の場合は、例えば、絶縁層の表面に異物の付着やキズ等を発生させずに測定をすることもできる。
【0025】
測定された電極シートは、例えば、電池として組み立てられる。ここで仮に、測定により不良と判定される電極シート、即ち欠陥のある電極シートを電池として組み立てた場合、何らかの対策を施さなければ、電池の性能悪化や内部短絡等の問題を引き起こしかねない。また、電極シートを測定するために、組み立て後の電池を測定することは効率が悪い。そして、単に電極シートの測定領域全体を測定するだけでは、不良の原因、例えば、設備の不具合等の特定が困難である。
【0026】
しかるに、本発明に係る電池用電極シートの測定方法によれば、電極シートの測定領域ごとの良否を判定することが可能となる。言い換えると、電極シートの測定領域のある区切られた領域において、区切られた領域それぞれの測定ができる。そのため、例えば、不良な電極シートを次の製造工程に送らないこと、電極シートの製造装置の製造条件を最適に制御すること、設備不具合等の電極シートの不良原因を特定すること、及び電極シートの不良部位のみ除去すること等が容易になり、電極シートを効率良く生産することが可能となる。
【0027】
本発明に係る電池用電極シートの測定装置の一態様では、上記電池用電極シートの測定装置であって、測定された上記静電容量から上記絶縁層の厚さの算出をする算出手段を更に備える。
【0028】
この態様によれば、測定された静電容量から絶縁層の厚さの算出をすることができる。算出手段は、測定された静電容量に基づいて絶縁層の厚さを算出するものを意味する。算出手段は、例えば、プロセッサやメモリ等を含んで構成される装置である。算出手段は、測定手段が測定した静電容量ごとに絶縁層の厚さを算出することができる。なお、測定に用いるプロセッサやメモリ等と算出手段が用いるプロセッサやメモリ等を共通させてもよい。
【0029】
上述したように測定された電極シートは、例えば、電池として組み立てられる。ここで仮に、絶縁層の厚さが極端に薄い場合には、電池組み付け時の拘束や、充放電時の電極層の膨張収縮に伴って正極又は負極が絶縁層を突き破り短絡が発生する可能性が考えられる。また絶縁層の厚さが極端に厚い場合には、リチウムイオンの移動が妨げられ電池性能が低下する可能性が考えられる。
【0030】
しかるに、本発明に係る電池用電極シートの測定方法の一態様では、分割された測定領域ごとに絶縁層の厚さを算出することができる。そのため、例えば、電池用電極シートの良否の判定をすることができ、短絡や電池性能の低下等を防ぐことができる。
【0031】
本発明に係る電池用電極シートの測定装置の他の態様では、上記絶縁層は、固体電解質層である。
【0032】
この態様によれば、固体電解質層を備えた電極シートの測定をすることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明においては、電池用電極シートの測定領域の領域ごとの測定をすることが可能な電池用電極シートの測定方法及び測定装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態を概念的に表す斜視図である。
【図2】第1実施形態の平面図である。
【図3】第1実施形態のA−A’断面図である。
【図4】第1実施形態の検査方法を概念的に表すフローチャートである。
【図5】第2実施形態を概念的に表す斜視図である。
【図6】第2実施形態の平面図である。
【図7】第2実施形態のB−B’断面図である。
【図8】第2実施形態の検査方法を概念的に表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の電池用電極シートの測定方法及び測定装置について、詳細に説明する。
【0036】
以下、本発明の第1実施形態について、詳細に説明する。
【0037】
図1〜4を参照して、第1実形態に係る電池用電極シートの測定方法及び測定装置について説明する。図1は、測定装置30の外観を示す斜視図であり、図2は、これの第1測定端子20部分を上から見た平面図である。図3は、図2のA−A’断面図、即ち、測定装置30の一部を鉛直な一平面で切った断面を示す。なお、測定装置30は判定装置35を更に備え、全体として電池用電極シートの検査をする検査装置1000として構成される。図4は、検査装置1000の検査方法を概念的に表すフローチャートである。
【0038】
図1及び図3において、測定装置30が測定をする電極シート55が図示されている。電極シート55は、固体電解質層50、活物質層45、及び集電体40を備え、この順番で積層されている。
【0039】
固体電解質層50に用いられる材料は、例えば、硫化物系固体電解質、及び酸化物系固体電解質等を挙げることができる。硫化物系固体電解質としては、硫黄成分を含有し、イオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、LiS−P、70LiS−30P、80LiS−20P、LiS−SiS、及びLiGe0.250.75等を挙げることができる。酸化物系固体電解質としては、例えば、LiPON、Li1+XAlTi2−X(PO、Li1+XAlGe2−X(PO、LiLaZr12、及びLiLaNb12等を挙げることができる。無機固体電解質10は1種類を単独で用いる、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
集電体40の材料は、導電性を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、銅、及びカーボン等を挙げることができる。正極の集電体は、SUS箔、及びアルミ箔であることが好ましく、アルミ箔であることがより好ましい。負極の集電体は、SUS箔、及び銅箔であることが好ましく、銅箔であることがより好ましい。
【0041】
活物質層45は、正極活物質層、及び負極活物質層を挙げることができる。
【0042】
正極活物質層に用いられる材料は、既存の各種リチウム電池に用いられる材料と同様のものを用いることができる。正極活物質としては、例えば、硫化物系活物質、及び酸化物系活物質等を挙げることができる。硫化物系活物質は、例えば、TiS、MoS、FeS、FeS、CuS、及びNiS等を挙げることができる。酸化物系活物質は、例えば、Bi、BiPb、CuO、V13、LiCoO、LiCrO、LiNiO、LiMn、LiNiMn、LiNiMnCoO、LiMgMn、LiNiGe、LiNiVO、LiCoVO、LiFePO、及びLiCoPO等を挙げることができる。正極活物質は、1種類を単独で用いる、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
正極活物質層は必要に応じて、導電化材料、イオン伝導性向上材料、及び結着材料等を有する。
【0044】
導電化材料は、例えば、カーボンファイバー、ケッチェンブラック、及びアセチレンブラック等を挙げることができる。導電化材料は、1種類を単独で用いる、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
イオン伝導材料は、既存の各種リチウム電池に用いられる材料と同様のものを用いることができる。イオン伝導材料としては、例えば、上述した硫化物系固体電解質、及び酸化物系固体電解質等を挙げることができる。イオン伝導材料は、1種類を単独で用いる、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
結着材料は、、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴム、及びエチレンプロピレンジエン等の合成ゴム、並びにポリフッ化ビニリデン等の高分子材料等を挙げることができる。結着材料は、1種類を単独で用いる、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
負極活物質層に用いられる材料は、既存の各種リチウム電池に用いられる材料と同様のものを用いることができる。負極活物質としては、例えば、炭素系材料、Li金属、Li合金、酸化物材料、窒化物材料等を挙げることができる。炭素系材料は、例えば、黒鉛、カーボンナノチューブ、メソカーボンマイクロビーズ、高配向性グラファイト、ハードカーボン、及びソフトカーボン等を挙げることができる。Li合金は、例えば、Mg、Ca、Al、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Ag、Au、Zn、Cd、及びHg等とLiとの合金を挙げることができる。酸化物材料としては、例えば、Nb、TiO、LiTi12、WO、及びFe等を挙げることができる。窒化物材料としては、例えば、Li3−XCoN、Li3−XNiN、Li3−XCuN等を挙げることができる。負極活物質は、1種類を単独で用いる、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
負極活物質層は必要に応じて、導電化材料、イオン伝導性向上材料、及び結着材料等を有する。導電化材料、イオン伝導性向上材料、及び結着材料等としては、上述した正極活物質層に用いられる材料と同様のものを用いることができる。
【0049】
測定装置30は、第1測定端子20及び第2測定端子25を備える。測定装置30は、電極シート55の固体電解質層50の静電容量を測定する。
【0050】
第1測定端子20は、電極シート55の固体電解質層50に対向して配置される。第1測定端子20は固体電解質層50に対して非接触である。第1測定端子20は、固体電解質層50に対向する面に導電部10及び絶縁部15を備える。
【0051】
導電部10の材料は、導電性を有するものであれば、特に限定されるものではない。導電部10の材料は、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、銅、及びカーボン等を挙げることができる。導電部10の形状は、静電容量を測定することができるものであれば、特に限定されるものではない。導電部10の形状は、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形、及び六角形等を挙げることができる。
【0052】
絶縁部15の材料は、絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではない。絶縁部15の材料は、例えば、樹脂、セラミックス、及びゴム等を挙げることができる。絶縁部15によって、導電部10は複数に分割される。
【0053】
第1測定端子20の導電部10及び絶縁部15によって、測定装置30は、電極シート55の測定領域ごとに固体電解質層50の静電容量を測定することが可能となる。
【0054】
第2測定端子25は、電極シート55の集電体40に対向して配置される。第2測定端子40は集電体40に対して接触している。第2測定端子25は、集電体40に対向する面が導電性である。第2測定端子25の材料は、導電性を有するものであれば、特に限定されるものではない。第2測定端子25の材料は、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、銅、及びカーボン等を挙げることができる。
【0055】
判定装置35は、測定された静電容量に基づいて固体電解質層50の良否を判定する。判定装置35は、プロセッサやメモリ等を含んで構成される装置である。判定装置35は、測定装置30が測定した静電容量ごとに固体電解質層50の良否を判定することができる。
【0056】
以上のように構成された測定装置30の測定方法及び判定方法30の判定方法、即ち検査装置1000の検査方法について図4を参照して、工程ごとに説明する。
【0057】
まず、測定工程では、測定装置30によって固体電解質層50の静電容量を測定する(ステップS10)。ここでは、集電体40及び活物質層45に電気が流れる。したがって、電気の流れる第2測定端子25、集電体40、活物質層45、及び第1測定端子20の導電部20を介して、固体電解質層50と第1測定端子20との間の空間部分、及び固体電解質層50の静電容量の値を測定していることになる。即ち、導電部10ごとに静電容量を測定することができるので、電極シート55の測定領域ごとに良否を判定することが可能となる。言い換えると、電極シート55の測定領域のある区切られた領域において、区切られた領域それぞれの良否の判定ができる。また、静電容量を測定することで、直接測定することができない固体電解質層50の内部や活物質層45に接する面等の良否を判定することができる。
【0058】
そして、判定工程では、測定された静電容量に基づいて固体電解質層50の良否を判定する(ステップS20)。判定は判定装置35によって行い、ステップS10で測定した静電容量ごとに固体電解質層50の良否を判定する。判定方法は、例えば、あらかじめ設定された良否の基準となる静電容量と測定された静電容量とを比較する方法等を挙げることができる。
【0059】
ここで、固体電解質層50が不良と判定された場合は、フィードバック工程で、不良部位のフィードバックを行う(ステップS30)。フィードバックにより、例えば、不良な電極シート55を次の製造工程に送らないこと、電極シート55の製造装置の製造条件を最適に制御すること、設備不具合等の電極シート55の不良原因を特定すること、及び電極シート55の不良部位のみ除去すること等が容易になり、電極シート55を効率良く生産することができる。なお、ステップS30はステップS20に含まれていてもよい。
【0060】
一方、固体電解質層50が良と判定された場合は、検査を終了する。
【0061】
以下、本発明の第2実施形態について、詳細に説明する。
【0062】
図5〜8を参照して、第2実形態に係る電池用電極シートの測定方法及び測定装置について説明する。図5は、測定装置31の外観を示す斜視図であり、図6は、これの第1測定端子21部分を上から見た平面図である。第2測定端子26部分を下から見た平面図も図6と同様である。図7は、図6のB−B’断面図、即ち、測定装置31の一部を鉛直な一平面で切った断面を示す。なお、測定装置31は算出装置61及び判定装置35を更に備え、全体として電池用電極シートの検査をする検査装置1100として構成される。図8は、検査装置1100の検査方法を概念的に表すフローチャートである。
【0063】
図1及び図3において、測定装置31が測定をする電極シート56が図示されている。電極シート56は、固体電解質層51、活物質層46、及び集電体41を備え、この順番で積層されている。電極シート56は上述した電極シート55と同様のものを用いることができる。また、固体電解質層51、活物質層46、及び集電体41の材料についても上述した固体電解質層50、活物質層45、及び集電体40の材料とそれぞれ同様のものを用いることができる。
【0064】
測定装置31は、第1測定端子21及び第2測定端子26を備える。測定装置31は、電極シート56の固体電解質層51の静電容量を測定する。
【0065】
第1測定端子21は、電極シート56の固体電解質層51に対向して配置される。第1測定端子21は固体電解質層51に対して接触している。第1測定端子21は、固体電解質層51に対向する面に導電部11及び絶縁部16を備える。第1測定端子21は導電部11が絶縁部16に対して可動とするように構成されている。したがって、導電部11は確実に固体電解質層51に接触することができる。
【0066】
第2測定端子26は、電極シート56の集電体41に対向して配置される。第2測定端子26は集電体41に対して接触している。第2測定端子26は、集電体41に対向する面に導電部12及び絶縁部17を備える。第2測定端子26は導電部12が絶縁部17に対して可動とするように構成されている。したがって、導電部12は確実に集電体41に接触することができる。
【0067】
導電部11及び導電部12の材料は、上述した導電部10と同様のものを用いることができる。導電部11及び導電部12の形状についても、上述した導電部10と同様である。絶縁部16及び絶縁部17の材料は、上述した絶縁部15と同様のものを用いることができる。導電部11及び導電部12並びに絶縁部16及び絶縁部17はそれぞれが対向している。
【0068】
算出装置61は、測定装置31が測定した静電容量ごとに固体電解質層51の厚さを算出する。算出装置61は、プロセッサやメモリ等を含んで構成される装置である。
【0069】
判定装置36は、算出装置61により算出された固体電解質層51の厚さに基づいて固体電解質層51の良否を判定する。判定装置36は、プロセッサやメモリ等を含んで構成される装置である。判定装置36は、算出装置61が算出した固体電解質層51の厚さごとに固体電解質層51の良否を判定することができる。
【0070】
以上のように構成された測定装置31の測定方法、算出装置61の算出方法、及び判定方法30の判定方法、即ち検査装置1100の検査方法について図8を参照して、工程ごとに説明する。
【0071】
まず、測定工程では、測定装置31によって固体電解質層51の静電容量を測定する(ステップS11)。ここでは、集電体41及び活物質層46に電気が流れる。したがって、電気の流れる第1測定端子21の導電部11、活物質層46、集電体41、及び第2測定端子26の導電部12を介して、固体電解質層51の静電容量の値を測定していることになる。即ち、対向する導電部11及び導電部12ごとに静電容量を測定することができるので、電極シート56の測定領域ごとに良否を判定することが可能となる。言い換えると、電極シート56の測定領域のある区切られた領域において、区切られた領域それぞれの良否の判定ができる。また、静電容量を測定することで、直接測定することができない固体電解質層51の内部や活物質層46に接する面等の良否を判定することができる。
【0072】
次に、算出工程では、測定された静電容量から固体電解質層51の厚さを算出する(ステップS21)。固体電解質層51の厚さを算出する方法は、予め固体電解質層51の静電容量の値と固体電解質層51の厚さとの相関をとり、得られた相関関係に測定された静電容量を当てはめて算出する方法、及び静電容量の式から算出する方法等を挙げることができる。固体電解質層51の厚さを静電容量の式から算出する場合は、予め固体電解質の誘電率ε並びに導電部11及び活物質層46がなす面積Sを決定し、測定された静電容量Cから固体電解質層の厚さdを式C=εS/dに従って算出する。
【0073】
そして、判定工程では、算出された固体電解質層51の厚さに基づいて固体電解質層51の良否を判定する(ステップS31)。判定は判定装置36によって行い、ステップS21で算出した固体電解質層51の厚さごとに良否を判定する。判定方法は、例えば、予め設定された良否の基準となる厚さと算出された固体電解質層51の厚さとを比較する方法等を挙げることができる。
【0074】
ここで、固体電解質層51が不良と判定された場合は、フィードバック工程で、不良部位のフィードバックを行う(ステップS41)。フィードバックにより、例えば、不良な電極シート56を次の製造工程に送らないこと、電極シート56の製造装置の製造条件を最適に制御すること、設備不具合等の電極シート56の不良原因を特定すること、及び電極シート56の不良部位のみ除去すること等が容易になり、電極シート56を効率良く生産することができる。なお、ステップS41はステップS31に含まれていてもよい。
【0075】
一方、固体電解質層51が良と判定された場合は、検査を終了する。
【0076】
本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
10、11、12…導電部
15、16、17…絶縁部
20、21…第1測定端子
25、26…第2測定端子
30、31…測定装置
35、36…判定装置
40、41…集電体
45、46…活物質層
50、51…固体電解質層
55、56…電極シート
61…算出装置
1000、1100…検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極層及び絶縁層の順に積層された電極シートの測定をする電池用電極シートの測定方法であって、
前記電極シートの測定領域を分割して前記絶縁層の静電容量の測定をすることを特徴とする、電池用電極シートの測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電池用電極シートの測定方法であって、測定された前記静電容量から前記絶縁層の厚さの算出をする算出工程を更に備えることを特徴とする、電池用電極シートの測定方法。
【請求項3】
前記絶縁層は、固体電解質層であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電池用電極シートの測定方法。
【請求項4】
電極層及び絶縁層の順に積層された電極シートの測定をする電池用電極シートの測定装置であって、
前記電極シートの前記絶縁層に配置され複数に分割された第1の測定端子と、
前記第1の測定端子に対して前記電極シートを挟んで前記電極層に配置される第2の測定端子と、
を備えることを特徴とする、電池用電極シートの測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電池用電極シートの測定装置であって、測定された前記静電容量から前記絶縁層の厚さの算出をする算出手段を更に備えることを特徴とする、電池用電極シートの測定装置。
【請求項6】
前記絶縁層は、固体電解質層であることを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載の電池用電極シートの測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−160301(P2012−160301A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18375(P2011−18375)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】