説明

電池

【課題】アルミラミネートシート21,22の凹部21a,22aの底面や側面を予めドーム状にしておくことにより、電池内圧が上昇した場合に、これらの凹部21a,22aが外側に湾曲して発電要素1が膨らみ電池特性が低下するのを防止することができる電池を提供する。
【解決手段】アルミラミネートシート21,22の凹部21a,22aを対向させて重ね合わせることにより電池ケース2を構成し、これら対向する凹部21a,22a内に巻回型の発電要素1を収納した電池において、アルミラミネートシート21,22の各凹部21a,22aにおける発電要素1の巻回軸に沿う側面が円筒面状や楕円円筒面状等のドーム状に形成された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミラミネートシート等のようなフレキシブルシートからなる電池ケースに発電要素を収納した電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミラミネートシートを電池ケースに用いた電池が従来から提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このような電池ケースを用いた従来の非水電解質二次電池の構成例を図4に示す。この非水電解質二次電池は、発電要素1を収納する電池ケース2が2枚の方形のアルミラミネートシート21,22からなる。発電要素1は、帯状の正極と負極とをセパレータを介して長円筒形に巻回し、又は、円筒形に巻回したものの側面を押し潰して長円筒形に成形したものであり、前方端面からは、基部を正極に接続されたリード端子3が突出すると共に、後方端面からは、基部を負極に接続されたリード端子4が突出している。
【0003】
アルミラミネートシート21,22は、ナイロン樹脂等からなるベースフィルム層とアルミニウム箔からなる金属層とポリプロピレン等からなるシーラント層とをラミネート状に積層した方形のフレキシブルなシートである。また、これらのアルミラミネートシート21,22は、長円筒形の発電要素1の上半分と下半分を嵌め込むことができるように、事前に中央の大部分に絞り加工によってシーラント層側の面が窪んだ凹部21a,22aが形成されている。そして、これら2枚のアルミラミネートシート21,22は、シーラント層を向かい合わせにして重ね合わせ、凹部21a,22a同士によって形成された空間に発電要素1を嵌め込んで、電解液を充填した後に周縁部を熱溶着することにより、内部を密閉した電池ケース2となる。また、発電要素1の前後の端面から突出するリード端子3,4は、これら2枚のアルミラミネートシート21,22の前後の周縁部が重なり合った間を通して封止されて外部に突出するようになっている。
【0004】
ところが、上記従来の非水電解質二次電池は、図5に示すように、絞り加工によって事前に形成されたアルミラミネートシート21,22の凹部21a,22aの底面(凹部21aの上面、凹部22aの下面)が平坦面となっている。そして、アルミラミネートシート21,22のようなフレキシブルなシートが平坦であると、法線方向の力が加わることで容易に撓んで湾曲することになる。従って、例えば上記非水電解質二次電池が高温の雰囲気中で使用されること等により、電解液が分解してガスが発生し電池ケース2の内圧が上昇すると、アルミラミネートシート21,22の凹部21a,22aの平坦な底面が内側から押圧されて容易に外側(図では上下方向)に湾曲する。すると、長円筒形の発電要素1の側面も、これら凹部21a,22aの底面による規制を受けることがなくなって同様に外側に膨らむようになり、巻回されて重なり合った電極の極間距離が広がるようになる。このため、従来のアルミラミネートシート21,22を電池ケース2に用いた非水電解質二次電池は、アルミラミネートシート21,22の凹部21a,22aの平坦な底面が外側に湾曲し易いことから、発電要素1の側面も膨らみ易くなることにより、電池特性が低下するという問題が生じていた。
【0005】
なお、アルミラミネートシート21,22の凹部21a,22aの底面を平坦面とするのは、主に非水電解質二次電池を使用する際のスペース効率を高めるためである。そして、電池ケース2を隙間なく機器や外装ケースの収容スペースに嵌め込んだり、複数の非水電解質二次電池を電池ケース2が密着するように収容すれば、この電池ケース2の内圧が上昇しても、外部から押さえ込まれるために、凹部21a,22aの底面が容易に外側に撓むようなことにはならない。しかしながら、実際には、上記のような電池ケース2内部でのガスの発生を完全になくすことはできず、充放電の繰り返しにより電極の活物質が膨張することもあるので、電池ケース2を全く膨らまないように隙間なく収容することはできないために、ある程度スペースに余裕をもって収容されるのが一般的となる。そして、このスペースの余裕によって、凹部21a,22aの平坦な底面が湾曲して発電要素1が膨らむ余地を残すことになる。
【特許文献1】意匠登録第1045175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フレキシブルシートの凹部の底面やこの底面を含む側面を予めドーム状にしておくことにより、電池内圧が上昇した場合にこの凹部が湾曲して発電要素が膨らみ電池特性が低下するという問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、フレキシブルシートに形成された一対の凹部を対向させて重ね合わせることにより電池ケースを構成し、これら対向する凹部内に巻回型の発電要素を収納した電池において、フレキシブルシートの各凹部における少なくとも底面がドーム状に形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、前記凹部の底面における発電要素の巻回軸に直交する面での断面形状が円弧状であることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、前記凹部の底面における発電要素の巻回軸に直交する面での断面形状が楕円円弧状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、フレキシブルシートの凹部の底面がドーム状に形成されているので、電池内圧が上昇して内側から押圧された場合にも、この底面がそれ以上に外側に撓んで湾曲するようなことがなくなる。このため、発電要素の側面が膨らんで極間距離が広がるようなこともなくなるので、電池特性の低下を防止することができるようになる。
【0011】
なお、フレキシブルシートの凹部の底面のドーム状は、必ずしも半球状等とは限らず、一般的には、半円筒状等のように、発電要素の巻回軸に直交する面での底面の断面は、端部を除けば全体として外側に膨らんだ形状であるが、この発電要素の巻回軸に平行な面での底面の断面はほぼ直線状になるものを意味することが多い。また、この発電要素の巻回軸に直交する面での底面の断面形状は、微分可能な(連続的な)曲線のみによって構成される他、多数の折れ線状の直線によって構成されていてもよく、この折れ線状の各直線部を微分可能な曲線に替えた形状で構成されていてもよい。そして、この凹部は、底面のみならず、発電要素の巻回軸に沿う側面全体をドーム状に形成してもよい。ただし、このフレキシブルシートの凹部における発電要素の端面を覆う側の面、即ちこの発電要素の巻回軸にほぼ直交する面については、平坦面のままでよい。なぜなら、凹部のこの部分の平坦面が電池内圧により外側に湾曲したとしても、発電要素が端面側に膨れるようなことにはならないからである。また、発電要素の側面は、フレキシブルシートの凹部の側面に沿った形状とするものであるため、この側面に沿った形状に巻回したり成形したものを用いることが好ましい。
【0012】
請求項2の発明によれば、凹部の底面やこの底面を含む側面が円筒面(シリンドリカル面)となっているので、電池内圧が上昇してもほとんどその形状が変化するようなことがなくなり、発電要素の膨らみを確実に防止することができるようになる。
【0013】
請求項3の発明によれば、凹部の底面やこの底面を含む側面が楕円円筒面となっているので、発電要素の横断面形状をほぼ楕円形状とすることにより、この発電要素を無理なく凹部の曲面に沿う形状にすることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の最良の実施形態について図1〜図3を参照して説明する。なお、これら図1〜図3においても、図4〜図5に示した従来例と同様の機能を有する構成部材には同じ番号を付記する。
【0015】
本実施形態では、図1に示すように、発電要素1を2枚の方形のアルミラミネートシート21,22からなる電池ケース2に収納した非水電解質二次電池について説明する。これらのアルミラミネートシート21,22は、従来例と同様に、アルミニウム箔からなる金属層の両面に、樹脂からなるベースフィルム層とシーラント層をラミネート状に積層したフレキシブルなシートである。また、これらのアルミラミネートシート21,22は、従来例と同様に、発電要素1の上半分と下半分を嵌め込むことができるように、事前に中央の大部分に絞り加工によってシーラント層側の面が窪んだ凹部21a,22aが形成されている。ただし、従来のアルミラミネートシート21,22では、これら凹部21a,22aの底面が平坦面に形成されていたが、本実施形態では、これら凹部21a,22aにおける前後方向の端面を除く側面が円筒面状となるように成形されている。円筒面とは、円柱の側面形状をいい、ここでは双方の凹部21a,22aを向かい合わせにして発電要素1を収納するものであるため、上下左右方向に沿う面での横断面形状が角度180°未満の扇の円弧状となるものをいう。なお、これら凹部21a,22aにおける前後方向の端面は、上下左右方向に沿う面に対して僅かに傾斜した平坦面となっている。
【0016】
上記2枚のアルミラミネートシート21,22は、シーラント層を向かい合わせにして重ね合わせ、周縁部を上下から加熱圧迫して熱溶着することにより、内部を密閉した電池ケース2が構成される。しかも、この際、凹部21a,22a同士が対向することによって形成された空間に発電要素1が嵌め込まれると共に、この内部に電解液が充填される。
【0017】
発電要素1は、前後方向の巻回軸を中心に、帯状の正極と負極とをセパレータを介して巻回したものである。ただし、本実施形態では、上記アルミラミネートシート21,22の凹部21a,22aの側面形状に沿うように、この発電要素1の側面の上下面がそれぞれ円筒面状に形成されている。即ち、この発電要素1の横断面(上下左右方向に沿う面での断面)は、図2に示すように、凸レンズの断面形状に類似したものとなる。なお、このような形状の発電要素1は、最初から側面の上下面が円筒面状となるように巻回して作製してもよいし、一旦円筒形に巻回したものの側面を金型等で押し潰して成形してもよい。
【0018】
上記発電要素1は、従来例と同様に、基部を正極に接続されたリード端子3が前方端面から突出すると共に、基部を負極に接続されたリード端子4が後方端面から突出している。そして、これらのリード端子3,4は、上記2枚のアルミラミネートシート21,22の前後の周縁部が重なり合った間を通して封止されて外部に突出するようになっている。
【0019】
上記構成の非水電解質二次電池によれば、電池ケース2を構成するアルミラミネートシート21,22の各凹部21a,22aの側面が円筒面状となっているので、高温の雰囲気中で使用される等により電池ケース2の内圧が上昇したとしても、この側面がさらに外側に撓んで湾曲するようなことがなくなる。即ち、従来例のようにこの側面に平坦面が存在すると、電池内圧が上昇した場合に、この平坦面が円筒面又は球面状に撓んで湾曲することになるが、既に円筒面状となっている場合には、曲率が多少変化する他には、この側面が全体として外側に広がる他なく、アルミラミネートシート21,22は延びが生じ難い材質であるために、この円筒面状がほとんど変化することがない。このため、発電要素1の側面は、常にこれらの凹部21a,22aに沿った状態が維持されるので、この側面が膨らんで極間距離が広がり電池特性が低下するようなおそれがなくなる。
【0020】
なお、上記実施形態では、アルミラミネートシート21,22の凹部21a,22aの側面が円筒面状となる場合を示したが、図3に示すように、この側面を楕円円筒面状に形成してもよい。この場合、電池内圧が上昇すると、比較的平坦面に近い凹部21a,22aの頂部付近が多少外側に撓むおそれは生じるが、内部に収納する発電要素1の横断面形状を楕円形にすることができるので、断面形状を凸レンズのようなものによりも作製が容易となる。また、これら凹部21a,22aの側面は、円筒面状や楕円円筒面状でなくても、全体として外側に膨らんだ他の曲面でもよく、多数の平坦面や曲率半径の大きい曲面が全体として外側に膨らんだ形状に連なったドーム状になっていれば、電池内圧の上昇による外側への撓みを抑制することができる。ただし、これら凹部21a,22aの側面は、部分的に内側に膨らむ箇所があっても、全体としての外側への撓みを抑制する機能は失うことはない。
【0021】
また、上記実施形態では、凹部21a,22aにおける発電要素1の巻回軸に沿う側面全体がドーム状に形成される場合を示したが、これらの凹部21a,22aにおける底面だけがドーム状に形成されるようになっていてもよい。即ち、発電要素1の巻回軸に沿う側面のうち、アルミラミネートシート21,22の周縁部に繋がる左右の両縁部は平坦面となっていてもよい。なぜなら、長円筒形等の扁平な発電要素1は、主に凹部21a,22aの底面に向けて側面が膨らむものであり、また、凹部21a,22aの側面も、アルミラミネートシート21,22の周縁部に繋がる左右の両縁部は、撓みが生じ難い部分だからである。さらに、上記実施形態では、これら凹部21a,22aの前後の端面が平坦面である場合を示したが、この部分は、発電要素1の側面の膨らみとは無関係であるため曲面であってもよい。
【0022】
また、上記実施形態では、2枚のアルミラミネートシート21,22を重ね合わせて電池ケース2を構成する場合を示したが、このアルミラミネートシートの構成は任意であり、例えば1枚のアルミラミネートシートを二つ折りにして電池ケース2を構成することもできる。このように1枚のアルミラミネートシートを二つ折りにした場合、凹部は、折り曲げ部で仕切られる双方のシート片に1箇所ずつ形成することになる。さらに、アルミラミネートシートを重ね合わせて封止する際に、熱溶着に代えて、接着等の他の固着手段を用いることもできる。さらに、上記実施形態では、電池ケースにアルミラミネートシートを用いる場合を示したが、十分な強度とバリア性を確保し確実な封止が可能なフレキシブルシートであれば材質は任意であり、例えば樹脂のみからなるラミネートシートではないシート材を用いることもできる。
【0023】
また、上記実施形態では、発電要素1の前後の端面からリード端子3,4を引き出す場合を示したが、これらのリード端子3,4の引き出し手段も任意である。さらに、上記実施形態では、非水電解質二次電池について示したが、この電池の種類は任意であり、他の二次電池や一次電池の場合にも同様に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであって、アルミラミネートシート製の電池ケースを用いた非水電解質二次電池の構造を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すものであって、アルミラミネートシート製の電池ケースを用いた非水電解質二次電池の横断面正面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示すものであって、アルミラミネートシートの凹部の側面形状が異なる非水電解質二次電池の横断面正面図である。
【図4】従来例を示すものであって、アルミラミネートシート製の電池ケースを用いた非水電解質二次電池の構造を示す分解斜視図である。
【図5】従来例を示すものであって、アルミラミネートシート製の電池ケースを用いた非水電解質二次電池の横断面正面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 発電要素
2 電池ケース
21 アルミラミネートシート
22 アルミラミネートシート
21a 凹部
22a 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルシートに形成された一対の凹部を対向させて重ね合わせることにより電池ケースを構成し、これら対向する凹部内に巻回型の発電要素を収納した電池において、
フレキシブルシートの各凹部における少なくとも底面がドーム状に形成されたことを特徴とする電池。
【請求項2】
前記凹部の底面における発電要素の巻回軸に直交する面での断面形状が円弧状であることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記凹部の底面における発電要素の巻回軸に直交する面での断面形状が楕円円弧状であることを特徴とする請求項1に記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−12549(P2006−12549A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186695(P2004−186695)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000004282)日本電池株式会社 (48)
【Fターム(参考)】