説明

電波吸収粒子およびその製造方法、電波吸収体

【課題】粒子の分散工程や非導電性材料との融着工程を経ることなく、電波吸収特性を発現する電波吸収体の構成粒子である電波吸収粒子およびその製造方法、電波吸収体を提供することを目的とする。
【解決手段】電波吸収粒子1は、誘電体である無機粒子2と、導電性フィラー4により形成され、無機粒子2の表面2aを被覆する導電性被膜3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波吸収粒子およびその製造方法、電波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信技術の進歩と無線通信システムの基盤整備が進み、携帯電話、無線ローカルエリアネットワーク(LAN)や自動料金収集システム(ETC)などの電波利用が急速に進んでいる。
【0003】
電波利用下では、機器を外部電波に影響されずに正常に作動させること(イミュニティ問題)と機器から他に影響する電波を出さないこと(エミッション問題)とを両立させることが求められており、不要な電波を吸収し、反射波を抑制する電波吸収体が注目されている。
【0004】
この電波吸収体は、一般にフェライト焼結体、フェライト等の磁性粉体やカーボンブラック等の導電性粉体を、合成樹脂やゴム等に分散した成形体が知られており、導電損失、誘電損失、磁性損失により電波エネルギーを熱エネルギーに変換して吸収するものである。
【0005】
誘電損失と導電損失を利用した電波吸収体としては、例えば、塩化ビニリデン系樹脂等により形成された導電性発泡粒子と、熱可塑性有機高分子(例えば、塩化ビニリデン系樹脂)からなる非導電性発泡粒子とが互いに融着された電波吸収粒子が提案されている。この導電性発泡粒子は、熱可塑性有機高分子の発泡粒子の表面に導電性粉体を有する導電性層および導電性層内の導電性粉体の脱落を防止する有機高分子のオーバーコート薄層を有している。そして、このような構成により、機械強度に優れ、長期間、安定した形状保持性を有する電波吸収粒子を提供することができると記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、導電性材料であるカーボンブラックとカーボン繊維を樹脂に配合した電波吸収体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。これらの電波吸収体は、電界により生じる誘電分散と、導電電流により電波を吸収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−209505号公報
【特許文献2】特開平10−27986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1,2に記載の電波吸収体においては、誘電損失を利用しているため、導電性材料単体では電波吸収特性が発現しない。即ち、上記特許文献1においては、導電性発泡粒子と非導電性発泡粒子とを混合し、この混合物を成形金型内で加熱して、導電性発泡粒子と非導電性発泡粒子とを融着させる必要がある。また、上記特許文献2においては、導電性材料であるカーボンブラックとカーボン繊維を樹脂に配合して分散させる必要があるため、製造工程が複雑になるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、粒子の分散工程や非導電性材料との融着工程を経ることなく、電波吸収特性を発現する電波吸収体の構成粒子である電波吸収粒子およびその製造方法、電波吸収体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、誘電体である無機粒子と、導電性フィラーにより形成され、無機粒子の表面を被覆する導電性被膜とを備えることを特徴とする電波吸収粒子である。
【0011】
同構成によれば、電波吸収粒子を容器に充填して集積させるだけで、導電性の三次元ネットワークが形成された電波吸収特性に優れた電波吸収体を得ることができる。従って、粒子の分散工程や非導電性材料との融着工程を経ることなく、電波吸収特性を発現する電波吸収体を得ることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電波吸収粒子であって、無機粒子がアルミナ粒子またはムライト粒子であり、導電性フィラーがカーボン粒子であることを特徴とする。
【0013】
同構成によれば、アルミナ粒子、及びムライト粒子は適度な重量があるため、電波吸収粒子を容器に充填して電波吸収体を形成する際に、電波吸収粒子の自重により、粒子同士の接触点を維持することが可能になる。従って、安定した導電ネットワークを形成することができ、結果として、電波吸収特性を向上させることが可能になる。
【0014】
また、導電性フィラーとして、導電性に優れたカーボン粒子を使用することにより、少量の導電性フィラーにより導電性を向上させて、電波吸収特性に優れた電波吸収体を得ることがが可能になる。
【0015】
さらに、カーボン粒子を使用することにより、アルミナ粒子、及びムライト粒子の表面に強固な導電性被膜を形成することができるため、無機粒子の表面から導電性被膜が脱落することを防止することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電波吸収粒子であって、無機粒子100質量部に対して、カーボン粒子を0.2〜2.0質量部含有することを特徴とする。
【0017】
同構成によれば、電波吸収特性が低下してしまうという不都合を生じることなく、安定した導電ネットワークを形成することが可能になる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の電波吸収粒子であって、無機粒子が、ガラス粒子、アルミナ粒子、及びムライト粒子からなる群より選ばれる1種であり、導電性フィラーがインジウム−スズ酸化物であることを特徴とする。
【0019】
同構成によれば、ガラス粒子、アルミナ粒子、及びムライト粒子は適度な重量があるため、電波吸収粒子を容器に充填して電波吸収体を形成する際に、電波吸収粒子の自重により、粒子同士の接触点を維持することが可能になる。従って、安定した導電ネットワークを形成することができ、結果として、電波吸収特性を向上させることが可能になる。
【0020】
また、導電性フィラーとして、インジウム−スズ酸化物を使用することにより、耐熱性に優れた導電性被膜を形成して、電波吸収体の耐熱性を向上させることができる。
【0021】
さらに、インジウム−スズ酸化物を使用することにより、ガラス粒子、アルミナ粒子、及びムライト粒子の表面に強固な導電性被膜を形成することができるため、無機粒子の表面から導電性被膜が脱落することを防止することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の電波吸収粒子であって、無機粒子100質量部に対して、インジウム−スズ酸化物を1.0〜4.0質量部含有することを特徴とする。
【0023】
同構成によれば、電波吸収特性が低下してしまうという不都合を生じることなく、安定した導電ネットワークを形成することが可能になる。
【0024】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載された電波吸収粒子を集積した電波吸収体である。
【0025】
同構成によれば、電波吸収粒子を集積させるだけで、導電性の三次元ネットワークが形成された電波吸収特性に優れた電波吸収体を提供することができる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、誘電体である無機粒子と、無機粒子の表面を被覆する導電層とを備える電波吸収粒子の製造方法であって、粉砕媒体を有しない遊星ミルを用いて、無機粒子と導電層を形成する導電性フィラーとを混合して、無機粒子の表面に導電性フィラーを付着させることにより、無機粒子の表面に導電層を形成することを特徴とする。
【0027】
同構成によれば、容器に充填して集積させるだけで、導電性の三次元ネットワークが形成された電波吸収特性に優れた電波吸収体を得ることができる電波吸収粒子を提供することが可能になる。従って、粒子の分散工程や非導電性材料との融着工程を経ることなく、電波吸収特性を発現する電波吸収体を得ることができる電波吸収粒子を提供することが可能になる。
【0028】
また、多くの工程が不要になり、粉砕媒体を有しない遊星ミルを用いて無機粒子と導電性フィラーとを混合するだけで、無機粒子の表面に導電性フィラーを均一に付着させることができる。従って、安価かつ簡易に、無機粒子の表面全体において均一に導電層が形成された電波吸収粒子を得ることができる。
【0029】
また、粉砕媒体を使用しないため、原料である無機粒子と導電性フィラーが粉砕されない。従って、無機粒子と導電性フィラーの粒子径の制御が容易になるため、結果として、電波吸収粒子の粒子径の制御を容易に行うことが可能になる。また、無機粒子が粉砕されないため、無機粒子と導電性フィラーとを混合する際に、無機粒子の表面における粉砕面の発生を防止することができる。従って、無機粒子に均一な導電層を形成することが可能になる。
【0030】
さらに、粉砕媒体を使用しないため、粉砕媒体と原料である無機粒子及び導電性フィラーの接触を回避することができる。従って、粉砕媒体に起因する無機粒子及び導電性フィラーの汚染を防止することができるとともに、無機粒子及び導電性フィラーが粉砕媒体の表面に付着するという不都合を防止することができる。
【0031】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の電波吸収粒子の製造方法であって、導電性フィラーとしてカーボン粒子を使用し、遊星ミルを用いて、無機粒子とカーボン粒子に対して104G〜150G(ただし、Gは重力加速度)の力を付与し、無機粒子とカーボン粒子との混合時間が15分以上60分以下であることを特徴とする。
【0032】
同構成によれば、導電性フィラーとしてカーボン粒子を使用する場合に、無機粒子の表面全体に導電性フィラーを十分かつ確実に付着させて、無機粒子の表面全体においていっそう均一に導電層を形成させることが可能になる。
【0033】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の電波吸収粒子の製造方法であって、導電性フィラーとしてインジウム−スズ酸化物を使用し、遊星ミルを用いて、無機粒子とインジウム−スズ酸化物に対して38G〜51G(ただし、Gは重力加速度)の力を付与し、無機粒子とインジウム−スズ酸化物との混合時間が15分以上60分以下であることを特徴とする。
【0034】
同構成によれば、導電性フィラーとしてインジウム−スズ酸化物を使用する場合に、無機粒子の表面全体に導電性フィラーを十分かつ確実に付着させて、無機粒子の表面全体においていっそう均一に導電層を形成させることが可能になる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、電波吸収粒子を容器に充填して集積させるだけで、導電性の三次元ネットワークが形成された電波吸収特性に優れた電波吸収体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係る電波吸収粒子の構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電波吸収粒子の製造方法において使用する遊星ミルの全体構成を示す断面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2に示す遊星ミルが備えるミルポットの内部における無機粒子と導電性フィラーの動作を説明するための図である。
【図5】実施例1で得られた電波吸収粒子を示す顕微鏡写真(SEM写真)である。
【図6】実施例1〜3で得られた電波吸収粒子の電波吸収特性を示す図である。
【図7】実施例4〜5で得られた電波吸収粒子の電波吸収特性を示す図である。
【図8】実施例6〜8で得られた電波吸収粒子の電波吸収特性を示す図である。
【図9】実施例9〜12で得られた電波吸収粒子の電波吸収特性を示す図である。
【図10】実施例13〜15で得られた電波吸収粒子の電波吸収特性を示す図である。
【図11】実施例16〜19で得られた電波吸収粒子の電波吸収特性を示す図である。
【図12】実施例20〜23で得られた電波吸収粒子の電波吸収特性を示す図である。
【図13】実施例24〜26で得られた電波吸収粒子の電波吸収特性を示す図である。
【図14】比較例で得られた導電性発泡粒子の電波吸収特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0038】
図1は、本発明の実施形態に係る電波吸収粒子の構造を示す断面図である。
【0039】
図1に示すように、電波吸収粒子1は、誘電体である無機粒子(コア粒子)2と、当該無機粒子2の表面2a上に形成され、無機粒子2の表面2aを被覆する導電性被膜3とを有している。
【0040】
この電波吸収粒子1は、例えば、電子機器を構成する電子部品から発生するノイズ等の不要な電磁波を吸収するものであり、電波吸収粒子1は、電子機器を外部の電磁波やノイズから保護する作用や、電子機器から発生するノイズが外部へ漏洩することを防止する作用を有する。また、この電波吸収粒子1を、容器等の収納部材に充填することにより、例えば、無線LANやETC(Electronic Toll Collection)、電波暗室等において使用される電波吸収体として使用することができ、電波吸収粒子1は、電波吸収体を形成する材料として使用されるものである。
【0041】
即ち、誘電体である無機粒子2と、当該無機粒子2の表面2a上に形成され、無機粒子2の表面2aを被覆する導電性被膜3とを有する電波吸収粒子1を容器に充填して集積させることにより、導電性の三次元ネットワークと、導電体と誘電体との複合構造からなる電波吸収体を容易に製造することができる。
【0042】
また、この電波吸収体は、上述のごとく、様々な用途に使用できるが、上述の室内無線やETC等において使用される周波数帯域が4〜8GHzであるため、特に、4〜8GHzの周波数帯域の電磁波を吸収する電波吸収体として好適に使用できる。
【0043】
また、図1に示すように、導電性被膜3は、無機粒子2の表面2aに付着した複数の導電性フィラー4により形成されている。
【0044】
無機粒子2としては、特に限定されないが、安定した導電ネットワークを形成して、電波吸収特性を向上させるとの観点から、セラミック粒子を使用することが好ましい。このセラミック粒子としては、ガラス粒子や、アルミナ粒子、ムライト粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、ジルコン粒子、及びマグネシア粒子等の耐熱性のあるセラミック粒子が好適に使用され、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0045】
即ち、無機粒子2として、上述のセラミック粒子(ガラス粒子や、アルミナ粒子、ムライト粒子等)を使用することにより、セラミック粒子は適度な重量があるため、電波吸収粒子1を容器に充填して電波吸収体を形成する際に、電波吸収粒子1の自重により、粒子同士の接触を維持することが可能になる。従って、安定した導電ネットワークを形成することができ、結果として、電波吸収特性を向上させることが可能になる。
【0046】
なお、ここで言う「導電ネットワーク」とは、電波吸収粒子1を容器に充填して集積することにより、複数の電波吸収粒子1が互いに接触したり、近接することにより形成される導電性の三次元ネットワークのことを言う。
【0047】
また、無機粒子2の形状は、特に限定されず、球状、粒状、針状、フレーク状、板状等のいずれの形状であってもよいが、導電性被膜3を均一に形成するの観点から、無機粒子2の形状は球状が好ましい。
【0048】
また、無機粒子2としては、平均粒子径が、100μm以上500μm以下のものを使用することが好ましい。
【0049】
なお、ここで言う「平均粒子径」とは、50%粒径(D50)を指し、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置(日機装(株)製、ナノトラック(登録商標)粒度分布測定装置UPA−EX150)等により測定できる。
【0050】
導電性フィラー4としては、特に限定はされないが、本実施形態においては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等のカーボン粒子や、金、銀、銅等の金属粒子、インジウム−スズ酸化物(ITO)、スズ−アンチモン酸化物(ATO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、ガリウム−亜鉛酸化物(GZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化チタン(TiO)等の金属酸化物系の導電性セラミック粒子が使用が好適に使用され、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0051】
このうち、耐熱性に優れた導電性被膜3を形成して、電波吸収体の耐熱性を向上させるとの観点から、インジウム−スズ酸化物等の導電性セラミック粒子を使用することが好ましい。なお、インジウム−スズ酸化物を使用することにより、ガラス粒子、アルミナ粒子、及びムライト粒子の表面に強固な導電性被膜3を形成することができるため、無機粒子2の表面から導電性被膜3が脱落することを防止することができる。
【0052】
また、少量の導電性フィラーにより導電性を向上させて、電波吸収特性に優れた電波吸収体を得るとの観点から、導電性に優れたカーボン粒子を使うこともできる。なお、このカーボン粒子を使用することにより、アルミナ粒子、及びムライト粒子の表面に強固な導電性被膜3を形成することができるため、無機粒子2の表面から導電性被膜3が脱落することを防止することができる。
【0053】
また、導電性フィラー4の形状やサイズは、無機粒子2の形状やサイズに依存し、導電性フィラー4は、無機粒子2に相似する粒子形態を有している。導電性フィラー4の形状は、特に限定されず、球状、粒状、針状、フレーク状、板状等のいずれの形状であってもよいが、導電性被膜3を均一に形成するとの観点から、導電性フィラー4の形状は球状が好ましい。
【0054】
また、導電性フィラー4としては、平均粒子径が、0.03μm以上0.0395μm以下のものを使用することが好ましい。
【0055】
また、無機粒子2の平均粒子径をD、導電性フィラー4の平均粒子径をDとした場合に、DとDの比(D/D)は3333以上12658以下であることが好ましい。これは、DとDの比が3333未満の場合は、無機粒子2に対する導電性フィラー4のサイズが大きくなるため、無機粒子2に対する導電性フィラー4の密着強度が低下する場合があるためである。また、DとDの比が3333未満、または12658よりも大きい場合は、無機粒子2と導電性フィラー4の取り扱いが困難になるという不都合が生じる場合があるためである。
【0056】
次に、本発明の実施形態に係る電波吸収粒子の製造方法について説明する。
【0057】
本実施形態における電波吸収粒子は、無機粒子の粉末と導電性フィラーとを混合することによって得ることができる。
【0058】
そして、本実施形態においては、導電性フィラーと無機粒子の粉末とを攪拌混合するための機器として、遊星ミルを使用する点に特徴がある。
【0059】
一般に、遊星ボールミルは、テーブルに支持した複数個のミルポットを公転させながら自転させ、各ミルポットに被砕物である原料と粉砕媒体である鋼球等のボールを装入して、被砕物をボールに衝突させて粉砕するものである。
【0060】
一方、本実施形態においては、ミルポットに原料である無機粒子の粉末と導電性フィラーのみを充填し、遊星運動により、無機粒子の粉末と導電性フィラーを混合して攪拌することにより、電波吸収粒子を製造する構成としている。
【0061】
即ち、本実施形態においては、遊星ボールミルにおいて使用される上述の粉砕媒体である鋼球等のボールを使用しないで、原料である無機粒子2と導電性フィラー4を粉砕することなく、遊星ミルを用いて無機粒子2と導電性フィラー4とを混合するだけで、無機粒子の粉末の表面に導電性フィラーを均一に付着させて、無機粒子2の表面2aが導電性被膜3により被覆された電波吸収粒子1を製造する点に特徴がある。
【0062】
このような方法により、上記従来技術とは異なり、多くの工程が不要になり、製造工程を簡素化することができる。従って、安価かつ簡易に、無機粒子2の表面2a全体において均一に導電性被膜3が形成された電波吸収粒子1を得ることができる。
【0063】
図2は本発明の実施形態に係る電波吸収粒子の製造方法において使用する遊星ミルの全体構成を示す断面図であり、図3は、図2のA−A断面図である。また、図4は、図2に示す遊星ミルが備えるミルポットの内部における無機粒子と導電性フィラーの動作を説明するための図である。
【0064】
図2に示すように、遊星ミル10は、回転駆動される垂直な中心軸11と、中心軸11と一体に回転する上下のテーブル12a,12bと、上下のテーブル12a,12bにケーシング13を介して軸受14で回転自在に支持された4個のミルポット15により構成されている。より具体的には、上下のテーブル12a,12bは、4個のミルポット15を回転自在に支持した状態で回転可能な支持部材として機能する。
【0065】
そして、中心軸11に取り付けられた太陽歯車16と各ケーシング13に取り付けられた遊星歯車17との噛み合いによって、各ミルポット15が中心軸11の回りを公転しながら自転する。
【0066】
なお、遊星ミル10全体は防音カバー18で覆われ、基台19に軸受20で支持された中心軸11は、プーリ21に巻き掛けられるベルト(図示省略)で回転駆動されるようになっている。
【0067】
ミルポット15は、ケーシング13に上方から挿入して固定される筒状の本体に上蓋と下蓋を設けたものであり、上蓋を開けて原料である無機粒子2及び導電性フィラー4が装入され、製造された電波吸収粒子1は下蓋を開けて取り出される構成となっている。なお、ケーシング13とミルポット15は鋼鉄系材料で形成されている。
【0068】
そして、図4に示すように、各ミルポット15内に、粉末状の無機粒子2と導電性フィラー4を装入(投入)した後、ミルポット15を上下の回転台であるテーブル12a,12bに支持する。そして、中心軸11に取り付けられた太陽歯車16と各ケーシング13に取り付けられた遊星歯車17の噛み合いによって、各ミルポット15が、中心軸11の回りを図中の矢印Aの方向に公転しながらミルポット15自身の回転軸の回りを図中の矢印Bの方向に自転する。
【0069】
そうすると、各ミルポット15において、図4に示すように、無機粒子2と導電性フィラー4が、公転と自転による遠心力を受けて混合され、混合の際の無機粒子2と導電性フィラー4との間の摩擦的作用により、無機粒子2の表面2aに導電性フィラー4が均一に付着し、無機粒子2の表面2aに付着した複数の導電性フィラー4により、無機粒子2の表面2aを被覆する導電性被膜3が均一に形成されることにより、電波吸収粒子1が形成される。
【0070】
このように、本実施形態においては、粉砕媒体であるボールを有しない遊星ミル10を用いて、無機粒子2と導電性被膜3を形成する導電性フィラー4とを混合して、無機粒子2の表面に導電性フィラー4を付着させて、無機粒子2の表面に導電性被膜3を形成する構成としている。
【0071】
この際、本実施形態における遊星ミル10では、上述のごとく、遊星ボールミルにおいて使用される上述のボールを使用しないため、ミルポット15に投入された原料である無機粒子2と導電性フィラー4が粉砕されない。従って、無機粒子2と導電性フィラー4の粒子径の制御が容易になるため、結果として、電波吸収粒子1の粒子径の制御を容易に行うことが可能になる。また、無機粒子2が粉砕されないため、無機粒子2と導電性フィラー4とを混合する際に、無機粒子2の表面における粉砕面の発生を防止することができる。従って、無機粒子2に均一な導電性被膜3を形成することが可能になる。
【0072】
さらに、遊星ボールミルにおいて使用される上述のボールを使用しないため、ボールと原料である無機粒子2及び導電性フィラー4の接触を回避することができる。従って、ボールに起因する無機粒子2及び導電性フィラー4の汚染を防止することができるとともに、無機粒子2及び導電性フィラー4がボールの表面に付着するという不都合を防止することができる。
【0073】
なお、本実施形態においては、無機粒子2の表面2a全体に導電性フィラー4を十分かつ確実に付着させて、無機粒子2の表面2a全体においていっそう均一に導電性被膜3を形成させるとの観点から、導電性フィラー4としてカーボン粒子を使用する場合は、遊星ミル10を用いて、無機粒子2と導電性フィラー4に対して104G〜150G(ただし、Gは重力加速度)の力(遠心加速度)を付与することが好ましい。また、導電性フィラー4として導電性セラミック粒子を使用する場合は、遊星ミル10を用いて、無機粒子2と導電性フィラー4に対して38G〜51Gの力(遠心加速度)を付与することが好ましい。
【0074】
また、本実施形態においては、無機粒子2と導電性フィラー4が装入されたミルポット15を、上述のごとく、公転させながら自転させることにより、無機粒子2と導電性フィラー4に対して、上述の重力加速度の力を付与する。
【0075】
また、遊星ミル10を用いて、無機粒子2と導電性フィラー4に対して付与する力(遠心加速度)は、遊星ミルの運転条件から、下記の式(1)に従って算出することができる。
【0076】
(式1)
g*=ω×(H+D×(1+R))/(g×2) (1)
(g*:遠心加速度(G)、ω:公転角速度(rad/s)、H:公転直径(m)=0.38m、D:ミルポット内径(m)=0.1m、R:自転/公転比、g:重力加速度(m/s)=9.8m/s
【0077】
本実施形態では、公転直径H、ミルポット内径Dを、上述の数値に固定し、自転/公転比Rと公転角速度ωを制御することにより、無機粒子2と導電性フィラー4に対して付与する遠心加速度を制御する構成としている。
【0078】
また、自転/公転比Rは、太陽歯車16と遊星歯車17を組み替えることにより、変更することができる。また、公転角速度ωは、インバーター制御することにより、自在に変更することができる。
【0079】
また、無機粒子2の表面2a全体に導電性フィラー4を十分かつ確実に付着させて、無機粒子2の表面2a全体においてよりいっそう均一に導電性被膜を形成させるとの観点から、遊星ミル10における無機粒子2と導電性フィラー4との攪拌混合時間は15〜60分であることが好ましい。
【0080】
なお、上述のミルポット15の回転速度、中心軸11の回転速度、及び攪拌時間は、使用する無機粒子2及び導電性フィラー4の種類に応じて、上記範囲内において、適宜、設定することができる。
【0081】
また、ミルポット15に投入される無機粒子2と導電性フィラー4の投入量は、導電性フィラー4としてカーボン粒子を使用する場合は、無機粒子100質量部に対してカーボン粒子の投入量が0.2〜2.0質量部の割合となるように設定する。即ち、電波吸収粒子1において、無機粒子100質量部に対して、カーボン粒子を0.2〜2.0質量部含有するように設定する。
【0082】
これは、カーボン粒子の含有量(混合量)が0.2質量部未満の場合には、導電性フィラー4の量が少ないため、安定した導電ネットワークを形成させることが困難になる場合があるためであり、また、カーボン粒子の含有量が2.0質量部よりも多い場合は、電波吸収粒子1の抵抗値が、最適な抵抗値の範囲からズレてしまい、電波吸収特性が低下してしまう場合があるためである。より具体的には、抵抗値が高くなりすぎると、電流が流れなくなり、逆に、抵抗値が低くなりすぎると、電波吸収粒子1に電界を作用させた場合に、そのエネルギーの一部が電波吸収粒子1内部の分子の熱エネルギーに変換されにくくなるため、電波吸収特性が低下してしまう場合があるためである。
【0083】
また、導電性フィラー4として導電性セラミック粒子を使用する場合は、無機粒子100質量部に対して導電性セラミック粒子の投入量が1.0〜4.0質量部の割合となるように設定する。即ち、無機粒子2に対する導電性セラミック粒子の混合量を、無機粒子100質量部に対して1.0〜4.0質量部に設定する。即ち、電波吸収粒子1において、無機粒子100質量部に対して、導電性セラミック粒子を1.0〜4.0質量部含有するように設定する。
【0084】
これは、上述のカーボン粒子の場合と同様に、導電性セラミック粒子の含有量(混合量)が1.0質量部未満の場合には、導電性フィラー4の量が少ないため、安定した導電ネットワークを形成させることが困難になる場合があるためであり、また、導電性セラミック粒子の含有量が4.0質量部よりも多い場合は、電波吸収粒子1の抵抗値が、最適な抵抗値の範囲からズレてしまい、電波吸収特性が低下してしまう場合があるためである。
【0085】
即ち、カーボン粒子やITO等を利用する場合、所定の抵抗値を有する電波吸収粒子1を使用して、導電ネットワークを構築する必要があるが、本実施形態においては、導電性フィラーの投入量を、導電性フィラーとしてカーボン粒子を使用する場合は、0.2〜2.0質量部の割合(導電性セラミック粒子を使用する場合は、1.0〜4.0質量部の割合)となるように設定することにより、電波吸収特性が低下してしまうという不都合を生じることなく、安定した導電ネットワークを形成することが可能になる。
【0086】
そして、このようにして形成された電波吸収粒子1を容器に充填して積層させることにより、導電性の三次元ネットワークと、導電体と誘電体との複合構造からなる電波吸収体を容易に製造することができる。
【0087】
即ち、電波吸収粒子1を容器に充填して集積させるだけで、導電性の三次元ネットワークが形成された電波吸収特性に優れた電波吸収体を得ることができる。従って、粒子の分散工程や非導電性材料との融着工程を経ることなく、電波吸収特性を発現する電波吸収体を得ることができる。
【実施例】
【0088】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0089】
(実施例1)
(電波吸収粒子の作製)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてアルミナ(平均粒子径:500μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、カーボンブラック(平均粒子径:0.0395μm)を使用した。そして、ミルポットに、アルミナを100g投入するとともに、カーボンブラックを0.2g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して150Gの力を付与して、15分間、アルミナとカーボンブラックの混合を行い、アルミナの表面が、カーボンブラックにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。
【0090】
なお、図5に、本実施例で得られた電波吸収粒子の顕微鏡写真(SEM写真)を示す。図5に示すように、無機粒子であるアルミナの表面全体において均一に導電性被膜が形成されていることが判る。
【0091】
(電波吸収特性評価)
次に、作製した電波吸収粒子を、アクリル製の容器(長さ:150mm、幅:150mm、高さ:10mm)に充填して電波吸収体を作製した後、測定周波数帯域を4〜8GHz(室内無線やETCに使用される周波数帯域)に設定して、反射減衰量〔dB〕を測定することにより、電波吸収特性を評価した。
【0092】
なお、電波吸収特性の測定は、JIS R 1679(電波吸収体のミリ波帯における電波吸収特性測定方法)に準拠して行った。また、電波吸収粒子として幅広い用途に適用することが可能であるとの観点から、上述の測定周波数帯域(4〜8GHz)のいずれかの周波数において、反射減衰量が5dB以上の周波数を有するものを電波吸収特性が良好なものとして評価した。以上の結果を、図6に示す。
【0093】
(実施例2)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてアルミナ(平均粒子径:300μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、カーボンブラック(平均粒子径:0.0395μm)を使用した。そして、ミルポットに、アルミナを100g投入するとともに、カーボンブラックを0.3g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して150Gの力を付与して、15分間、アルミナとカーボンブラックの混合を行い、アルミナの表面が、カーボンブラックにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図6に示す。
【0094】
(実施例3)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてアルミナ(平均粒子径:200μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、カーボンブラック(平均粒子径:0.0395μm)を使用した。そして、ミルポットに、アルミナを100g投入するとともに、カーボンブラックを0.5g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して150Gの力を付与して、15分間、アルミナとカーボンブラックの混合を行い、アルミナの表面が、カーボンブラックにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図6に示す。
【0095】
(実施例4)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてアルミナ(平均粒子径:200μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、カーボンブラック(平均粒子径:0.0395μm)を使用した。そして、ミルポットに、アルミナを100g投入するとともに、カーボンブラックを0.8g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して150Gの力を付与して、45分間、アルミナとカーボンブラックの混合を行い、アルミナの表面が、カーボンブラックにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図7に示す。
【0096】
(実施例5)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてアルミナ(平均粒子径:200μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、カーボンブラック(平均粒子径:0.0395μm)を使用した。そして、ミルポットに、アルミナを100g投入するとともに、カーボンブラックを1.0g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して150Gの力を付与して、60分間、アルミナとカーボンブラックの混合を行い、アルミナの表面が、カーボンブラックにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図7に示す。
【0097】
(実施例6)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてアルミナ(平均粒子径:500μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、カーボンブラック(平均粒子径:0.0395μm)を使用した。そして、ミルポットに、アルミナを100g投入するとともに、カーボンブラックを0.3g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して150Gの力を付与して、20分間、アルミナとカーボンブラックの混合を行い、アルミナの表面が、カーボンブラックにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図8に示す。
【0098】
(実施例7)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてアルミナ(平均粒子径:500μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、カーボンブラック(平均粒子径:0.0395μm)を使用した。そして、ミルポットに、アルミナを100g投入するとともに、カーボンブラックを0.7g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して150Gの力を付与して、40分間、アルミナとカーボンブラックの混合を行い、アルミナの表面が、カーボンブラックにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図8に示す。
【0099】
(実施例8)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてアルミナ(平均粒子径:500μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、カーボンブラック(平均粒子径:0.0395μm)を使用した。そして、ミルポットに、アルミナを100g投入するとともに、カーボンブラックを1.0g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して150Gの力を付与して、60分間、アルミナとカーボンブラックの混合を行い、アルミナの表面が、カーボンブラックにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図8に示す。
【0100】
(実施例9)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてアルミナ(平均粒子径:200μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、ITO(平均粒子径:0.03μm)を使用した。そして、ミルポットに、アルミナを100g投入するとともに、ITOを1.0g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して38Gの力を付与して、15分間、アルミナとITOの混合を行い、アルミナの表面が、ITOにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図9に示す。
【0101】
(実施例10)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてアルミナ(平均粒子径:200μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、ITO(平均粒子径:0.03μm)を使用した。そして、ミルポットに、アルミナを100g投入するとともに、ITOを1.5g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して38Gの力を付与して、15分間、アルミナとITOの混合を行い、アルミナの表面が、ITOにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図9に示す。
【0102】
(実施例11)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてアルミナ(平均粒子径:200μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、ITO(平均粒子径:0.03μm)を使用した。そして、ミルポットに、アルミナを100g投入するとともに、ITOを1.8g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して38Gの力を付与して、25分間、アルミナとITOの混合を行い、アルミナの表面が、ITOにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図9に示す。
【0103】
(実施例12)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてアルミナ(平均粒子径:200μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、ITO(平均粒子径:0.03μm)を使用した。そして、ミルポットに、アルミナを100g投入するとともに、ITOを2.0g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して38Gの力を付与して、25分間、アルミナとITOの混合を行い、アルミナの表面が、ITOにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図9に示す。
【0104】
(実施例13)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてムライト(平均粒子径:350μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、カーボンブラック(平均粒子径:0.0395μm)を使用した。そして、ミルポットに、ムライトを100g投入するとともに、カーボンブラックを1.0g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して150Gの力を付与して、15分間、ムライトとカーボンブラックの混合を行い、ムライトの表面が、カーボンブラックにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図10に示す。
【0105】
(実施例14)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてムライト(平均粒子径:350μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、カーボンブラック(平均粒子径:0.0395μm)を使用した。そして、ミルポットに、ムライトを100g投入するとともに、カーボンブラックを1.5g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して150Gの力を付与して、60分間、ムライトとカーボンブラックの混合を行い、ムライトの表面が、カーボンブラックにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図10に示す。
【0106】
(実施例15)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてムライト(平均粒子径:350μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、カーボンブラック(平均粒子径:0.0395μm)を使用した。そして、ミルポットに、ムライトを100g投入するとともに、カーボンブラックを2.0g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して150Gの力を付与して、60分間、ムライトとカーボンブラックの混合を行い、ムライトの表面が、カーボンブラックにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図10に示す。
【0107】
(実施例16)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてムライト(平均粒子径:200μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、カーボンブラック(平均粒子径:0.0395μm)を使用した。そして、ミルポットに、ムライトを100g投入するとともに、カーボンブラックを0.8g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して104Gの力を付与して、50分間、ムライトとカーボンブラックの混合を行い、ムライトの表面が、カーボンブラックにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図11に示す。
【0108】
(実施例17)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてムライト(平均粒子径:200μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、カーボンブラック(平均粒子径:0.0395μm)を使用した。そして、ミルポットに、ムライトを100g投入するとともに、カーボンブラックを0.9g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して104Gの力を付与して、50分間、ムライトとカーボンブラックの混合を行い、ムライトの表面が、カーボンブラックにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図11に示す。
【0109】
(実施例18)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてムライト(平均粒子径:200μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、カーボンブラック(平均粒子径:0.0395μm)を使用した。そして、ミルポットに、ムライトを100g投入するとともに、カーボンブラックを1.0g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して104Gの力を付与して、50分間、ムライトとカーボンブラックの混合を行い、ムライトの表面が、カーボンブラックにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図11に示す。
【0110】
(実施例19)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてムライト(平均粒子径:200μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、カーボンブラック(平均粒子径:0.0395μm)を使用した。そして、ミルポットに、ムライトを100g投入するとともに、カーボンブラックを1.2g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して104Gの力を付与して、50分間、ムライトとカーボンブラックの混合を行い、ムライトの表面が、カーボンブラックにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図11に示す。
【0111】
(実施例20)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてムライト(平均粒子径:200μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、ITO(平均粒子径:0.03μm)を使用した。そして、ミルポットに、ムライトを100g投入するとともに、ITOを2.0g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して38Gの力を付与して、15分間、ムライトとITOの混合を行い、ムライトの表面が、ITOにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図12に示す。
【0112】
(実施例21)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてムライト(平均粒子径:200μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、ITO(平均粒子径:0.03μm)を使用した。そして、ミルポットに、ムライトを100g投入するとともに、ITOを2.5g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して38Gの力を付与して、15分間、ムライトとITOの混合を行い、ムライトの表面が、ITOにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図12に示す。
【0113】
(実施例22)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてムライト(平均粒子径:200μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、ITO(平均粒子径:0.03μm)を使用した。そして、ミルポットに、ムライトを100g投入するとともに、ITOを3.0g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して38Gの力を付与して、15分間、ムライトとITOの混合を行い、ムライトの表面が、ITOにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図12に示す。
【0114】
(実施例23)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてムライト(平均粒子径:200μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、ITO(平均粒子径:0.03μm)を使用した。そして、ミルポットに、ムライトを100g投入するとともに、ITOを3.5g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して38Gの力を付与して、15分間、ムライトとITOの混合を行い、ムライトの表面が、ITOにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図12に示す。
【0115】
(実施例24)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてガラス(平均粒子径:200μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、ITO(平均粒子径:0.03μm)を使用した。そして、ミルポットに、ガラスを100g投入するとともに、ITOを3.0g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して51Gの力を付与して、45分間、ガラスとITOの混合を行い、ガラスの表面が、ITOにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図13に示す。
【0116】
(実施例25)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてガラス(平均粒子径:200μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、ITO(平均粒子径:0.03μm)を使用した。そして、ミルポットに、ガラスを100g投入するとともに、ITOを4.0g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して51Gの力を付与して、45分間、ガラスとITOの混合を行い、ガラスの表面が、ITOにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図13に示す。
【0117】
(実施例26)
遊星ミル(栗本鐵工所(株)製、商品名:ハイジー)を使用して、無機粒子と導電性フィラーの混合を行い、電波吸収粒子を作製した。より具体的には、無機粒子としてガラス(平均粒子径:100μm)を使用するとともに、導電性フィラーとして、ITO(平均粒子径:0.03μm)を使用した。そして、ミルポットに、ガラスを100g投入するとともに、ITOを4.0g投入し、無機粒子と導電性フィラーに対して51Gの力を付与して、55分間、ガラスとITOの混合を行い、ガラスの表面が、ITOにより形成された導電性被膜により被覆された電波吸収粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図13に示す。
【0118】
(比較例)
ポリスチレンの予備発泡ビーズ(積水化成品工業製、商品名:エスレンビーズFDL」、平均粒子径:0.5〜1.2mm)を用い、これの100gに対してグラファイト系導電塗料(ヘンケルテクノロジーズジャパン製、商品名:Aquadag(登録商標)22%)を100g加えてヘンシェルミキサーにて100℃で約30分間混合し、乾燥させて導電性発泡粒子を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、電波吸収特性の評価を行った。以上の結果を図14に示す。
【0119】
図6〜図13に示すように、実施例1〜26のいすれの電波吸収粒子も、測定周波数帯域(4〜8GHz)のいずれかの周波数において、反射減衰量が5dB以上の周波数を有しており、電波吸収特性が良好であることが判る。即ち、遊星ミルのミルポットに原料である無機粒子と導電性フィラーのみを充填して、遊星運動により、無機粒子の粉末と導電性フィラーを混合して攪拌するという簡単な方法により、無機粒子の表面全体において均一に導電性被膜が形成された電波吸収粒子を得ることができることが判る。また、作成した電波吸収粒子を容器に充填して集積させるだけで、導電性の三次元ネットワークが形成された電波吸収特性に優れた電波吸収体を得ることができることが判る。
【0120】
一方、比較例における導電性発泡粒子においては、測定周波数帯域(4〜8GHz)において、反射減衰量が5dB未満となっており、電波吸収特性を殆ど示していないことが判る。これは、粒子が軽量であるため、粒子同士の接触が不十分になり、導電ネットワークが構築されなかったためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
以上説明したように、本発明は、無機粒子の表面に導電性被膜が被覆された電波吸収粒子の製造方法、その方法により製造された電波吸収粒子、及び電波吸収体に適している。
【符号の説明】
【0122】
1 電波吸収粒子
2 無機粒子
2a 無機粒子の表面
3 導電性被膜
4 導電性フィラー
10 遊星ミル
12a、12b テーブル(支持部材)
15 ミルポット
無機粒子の平均粒子径
導電性フィラーの平均粒子径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体である無機粒子と、導電性フィラーにより形成され、前記無機粒子の表面を被覆する導電性被膜とを備えることを特徴とする電波吸収粒子。
【請求項2】
前記無機粒子がアルミナ粒子またはムライト粒子であり、前記導電性フィラーがカーボン粒子であることを特徴とする請求項1に記載の電波吸収粒子。
【請求項3】
前記無機粒子100質量部に対して、前記カーボン粒子を0.2〜2.0質量部含有することを特徴とする請求項2に記載の電波吸収粒子。
【請求項4】
前記無機粒子が、ガラス粒子、アルミナ粒子、及びムライト粒子からなる群より選ばれる1種であり、前記導電性フィラーがインジウム−スズ酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の電波吸収粒子。
【請求項5】
前記無機粒子100質量部に対して、前記インジウム−スズ酸化物を1.0〜4.0質量部含有することを特徴とする請求項4に記載の電波吸収粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電波吸収粒子を集積した電波吸収体。
【請求項7】
誘電体である無機粒子と、前記無機粒子の表面を被覆する導電性被膜とを備える電波吸収粒子の製造方法であって、
粉砕媒体を有しない遊星ミルを用いて、前記無機粒子と前記導電性被膜を形成する導電性フィラーとを混合して、前記無機粒子の表面に前記導電性フィラーを付着させることにより、前記無機粒子の表面に前記導電性被膜を形成することを特徴とする電波吸収粒子の製造方法。
【請求項8】
前記導電性フィラーとしてカーボン粒子を使用し、前記遊星ミルを用いて、前記無機粒子と前記カーボン粒子に対して104G〜150G(ただし、Gは重力加速度)の力を付与し、前記無機粒子と前記カーボン粒子との混合時間が15分以上60分以下であることを特徴とする請求項7に記載の電波吸収粒子の製造方法。
【請求項9】
前記導電性フィラーとしてインジウム−スズ酸化物を使用し、前記遊星ミルを用いて、前記無機粒子と前記インジウム−スズ酸化物に対して38G〜51G(ただし、Gは重力加速度)の力を付与し、前記無機粒子と前記インジウム−スズ酸化物との混合時間が15分以上60分以下であることを特徴とする請求項7に記載の電波吸収粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−129707(P2011−129707A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286702(P2009−286702)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】