説明

電波時計

【課題】標準電波の受信中にデジタル表示部の駆動を継続可能な電子時計を提供する。
【解決手段】現在時刻のデジタル表示が可能な表示手段と、設定された駆動波形周波数の駆動信号で表示手段を駆動制御する表示駆動制御手段と、時刻情報を含む標準電波の受信周波数に同調して標準電波を受信する受信手段と、を備え、表示駆動制御手段は、受信手段による標準電波の受信中に、駆動波形周波数の高調波周波数が標準電波の受信周波数と異なるように駆動波形周波数を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、デジタル表示を行う電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、電子時計において、所定のフォーマット(タイムコード)で表された時刻情報を含む標準電波を受信して時刻データを取得し、内部時計の時刻を修正する機能を備えた電波時計がある。
【0003】
このような機能を備えた電波時計のうち、液晶などによるデジタル表示機能を備えたデジタル電波時計では、液晶の駆動信号に係る電流、電圧の変化により電磁ノイズが生ずる。この電磁ノイズが標準電波を受信する際に混入し、復調されるタイムコード信号の質を劣化させるという問題があった。
【0004】
そこで、従来、デジタル電波時計において、標準電波の受信中には、液晶の駆動を中断させる技術や、タイムコード信号を離散的にサンプリングするタイミングと液晶の駆動タイミングとが異なるように動作制御を行う技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−215929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、標準電波の受信期間にデジタル表示部の駆動を停止するといった機能の制限を加えると、その期間中には、ユーザが時刻を確認できないなどの不便を強いられることになるという課題がある。
【0007】
この発明の目的は、標準電波の受信中にデジタル表示部の駆動を継続可能な電波時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、
現在時刻のデジタル表示が可能な表示手段と、
設定された駆動波形周波数の駆動信号で前記表示手段を駆動制御する表示駆動制御手段と、
時刻情報を含む標準電波の受信周波数に同調して当該標準電波を受信する受信手段と、
を備え、
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段による標準電波の受信中に、前記駆動波形周波数の高調波周波数が前記標準電波の受信周波数と異なるように前記駆動波形周波数を設定する
ことを特徴とする電波時計である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従うと、電波時計において、標準電波の受信中にデジタル表示部の駆動を継続的に行わせることが出来るという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の電波時計の全体構造を示すブロック図である。
【図2】電波受信部の内部構成を示すブロック図である。
【図3】表示ドライバに記憶されたCOM波形、SEG波形、及び、COM波形とSEG波形とを組み合わせた出力波形の例を示す図である。
【図4】表示ドライバによる表示部の駆動の際に発生するノイズのスペクトルを示した図である。
【図5】電波受信部による受信信号、復調信号、及び、TCOの波形をそれぞれ示す図である。
【図6】標準電波受信処理を行う際にCPUが実行する制御動作の手順を示すフローチャートである。
【図7】標準電波受信処理中における表示部への表示例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態の電波時計の全体構造を示すブロック図である。
本発明の実施形態の電波時計1は、液晶表示により時刻をデジタル表示可能なデジタル電波時計である。この電波時計1は、腕時計であっても良いし、置時計であっても良い。或いは、電波時計の機能を備えたデジタル表示装置であっても良い。
電波時計1は、受信手段としてのアンテナANT及び電波受信部41と、CPU42と、RAM(Random Access Memory)43と、ROM(Read Only Memory)44と、表示部45(表示手段)と、表示ドライバ46と、発振回路47と、分周回路48と、計時回路49と、電源部50と、操作部51などを備えている。
【0013】
図2は、電波受信部の内部構成を示すブロック図である。
電波受信部41は、長波帯の電波を受信するアンテナANTを用いて受信した標準電波からタイムコード信号を復調する。標準電波は、長波帯の振幅変調波(AM波)であり、本実施形態の電波受信部41では、特に限られないが、例えば、スーパーヘテロダイン方式により復調を行う。電波受信部41は、LNA(低雑音増幅器)411、局部発振器412、ミキサ413、BPF(狭帯域フィルタ)414(狭帯域透過手段)、IF(中間周波数)アンプ415、検波回路416などを備える。電波受信部41は、アンテナANTの同調周波数に対応する標準電波(例えば、日本の標準電波送信局であるJJYからの40kHz、又は、60kHzのもの)の受信信号をLNA411で増幅し、ミキサ413で中間周波数の信号に変換した後、BPF414において所定の周波数範囲(例えば、±10Hz程度の幅)の信号を選択的に通過させる。それから、BPF414の出力信号をIFアンプ415で増幅した後に検波回路416でタイムコード信号を復調する。この電波受信部41は、CPU42からの指令により、標準電波を受信する際にのみ電源がオンされる構成となっている。また、アンテナANTによる同調周波数は、電波受信部41における同調回路の設定を微調整することによって変更することが可能となっている。
【0014】
また、この電波受信部41は、更に、図示略のADC(アナログ/デジタル変換器)を備え、復調されたタイムコード信号を所定のサンプリング周波数でデジタル二値化してTCO(タイムコード出力)としてCPU42へ出力する。
なお、CPU42においてタイムコード信号から時刻データを復号する方法によっては、多値データを出力することとしても良い。また、コンパレータを用いてアナログ信号を直接二値化することとしても良い。また、TCOの出力は、特には限られないが、ADCにおいて設定された所定の閾値電圧より大きい場合にはローレベル電圧信号となり、この閾値電圧より小さい場合には、ハイレベル電圧信号となるように構成されている。
【0015】
CPU42は、電波時計1の動作全体を制御統括する。また、CPU42は、電波受信部41からTCOが入力されると、このタイムコードから時刻データを復号して取得する。時刻データの復号方法及び復号時における感度の向上方法については、種々の従来技術を利用可能である。また、CPU42は、この取得された時刻データに基づいて計時回路49に信号を送り、計時回路49が保持する現在時刻データを修正する。
【0016】
RAM43は、CPU42に作業用のメモリ空間を提供する。また、RAM43は、標準電波の受信時刻や最初に受信を試みる標準電波送信局に関する設定データを記憶する。
【0017】
ROM44には、電波時計1が各種動作を行うための種々のプログラムや初期設定データが格納されている。ROM44に格納されているプログラムには、標準電波を受信して時刻を修正するためのプログラム44aが含まれている。RAM43に記憶された設定時刻、または、操作部51からの操作入力に基づいてプログラム44aの実行が指示されると、CPU42は、プログラム44aをRAM43上に展開して実行する。また、ROM44には、電波時計1が受信可能な世界各地における標準電波送信局の送信周波数、タイムコードのフォーマット、各符号パターン、及び、当該標準電波送信局の電波を受信する期間中に表示部45を駆動するフレーム周波数が関連付けられて記憶された標準電波受信設定テーブル44b(記憶手段)が含まれている。
【0018】
表示部45は、時刻データのデジタル表示が可能な構成であり、例えば、数字や文字のセグメント表示が可能なLCD(液晶ディスプレイ)である。表示部は、他の方式のディスプレイ、例えば、ドットマトリックス方式のディスプレイでもよいし、有機EL(Electro Luminescent)ディスプレイであってもよい。
【0019】
表示ドライバ46は、CPU42からの制御信号に基づいて表示部45のLCDに時刻や他の情報を表示させるための電圧信号を出力するLCDドライバである。表示ドライバ46には、予め所定数(例えば4個)のCOM(Common)電圧信号波形と、所定数(例えば8個)のSEG(Segment)電圧信号波形とが記憶されている。表示部45の各セグメントは、COM電圧信号波形と、表示部45により選択的に出力されたSEG電圧信号波形とを組み合わせることで、COM電圧とSEG電圧の電位差により各々点灯、消灯が制御される。
CPU42と表示ドライバ46とにより、表示駆動制御手段が構成される。
【0020】
発振回路47は、例えば、32kHzの発振信号を出力する。分周回路48は、この発振信号を分周し、必要な周波数信号を生成して出力する。この分周回路48から出力される周波数信号のうち1Hz信号は、計時回路49に入力されて現在時刻の計数に用いられる。また、分周回路48は、CPU42からの指令により、適宜に分周比を切り替えて異なる周波数の信号を出力させることが可能となっている。
【0021】
計時回路49は、カウンタであり、分周回路48から毎秒入力される信号をカウントして初期設定時刻に加算していくことにより現在時刻を計数する。また、この計時回路49に記憶されている現在時刻データは、CPU42からの制御命令により修正可能となっている。
【0022】
電源部50は、CPU42に所定の駆動電圧を供給すると共に、表示部45を駆動するために必要な各電圧を表示ドライバ46に供給する。例えば、表示部45を1/3B(バイアス)で駆動するには、電源部50は、接地電圧(V0)、及び、3種類の駆動電圧(V3、V2=V3×2/3、V1=V3×1/3)を表示ドライバ46に供給する。
【0023】
操作部51は、複数のキーやボタンを備え、これらのキーやボタンが操作されると、操作内容を電気信号に変換して入力信号としてCPU42へ出力する。
【0024】
次に、表示部45の各セグメントに対する点灯制御について説明する。
図3は、表示ドライバ46に設定された4通りのCOM電圧信号波形(a)〜(d)、SEG電圧信号波形のうちの1パターン(e)、及び、これらのCOM電圧信号波形とSEG電圧信号波形とが組み合わされたセグメントにおける出力電圧信号波形の例(f)〜(i)を示す図である。各図の下部に表記された0〜3の数字は、横軸が示す各タイミングにおける電圧値V0〜V3の数値部分を示す。本実施形態の表示ドライバ46は、通常状態では、それぞれ1/4D(デューティ)のCOM電圧信号波形とSEG電圧信号波形とをフレーム周波数f1=100Hz(フレーム周期10ms)で出力する。出力電圧信号波形では、このフレーム周期の波形と当該波形を正負反転させた波形とが続けて現れるので、出力電圧信号は、図3(f)〜(i)に示されているように、フレーム周波数f1の半分である50Hzの周期信号となり、この周波数(駆動波形周波数)で表示部45が駆動される。
【0025】
ここで図3(f)〜(h)に示すように、COM電圧信号波形(a)〜(c)とSEG電圧信号波形(e)との組み合わせでは、正負の電圧V1のみが出力されて、当該電圧が供給されるセグメントは、何れも消灯状態となる。一方、図3(i)に示すように、COM電圧信号波形(d)とSEG電圧信号波形(e)との組み合わせでは、フレーム周期内の所定のタイミングで正負の電圧V3が出力されて、当該電圧が供給されるセグメントが点灯される。このように、COM電圧信号波形(a)〜(d)との組み合わせにより任意の0〜4個のセグメントを点灯可能となるようにSEG電圧信号波形を複数設定、記憶しておき、CPU42からの制御信号に基づいてSEG電圧信号波形を選択することで、4個のセグメントの点灯状態又は消灯状態を制御することが可能となる。また、複数のSEG電圧信号波形を並列的に選択、出力することで、より多くのセグメントの点灯、消灯を制御することが出来る。
【0026】
次に、この電圧信号波形の出力により生ずる電磁ノイズについて説明する。
図4は、表示ドライバにより表示部を駆動する際に発生する電磁ノイズ強度のスペクトルを示した図である。図4(a)には、0Hz(直流成分)から500Hzまでの電磁ノイズのスペクトル強度を示している。また、図4(b)には、39.75kHzから40.25kHzまでの電磁ノイズのスペクトル強度を示している。
【0027】
フレーム周波数f1=100Hz、即ち、駆動波形周波数50Hzの矩形波電圧信号により生ずる電磁ノイズは、50Hzの整数倍の周波数にパルス状に現れる。この各周波数の電磁ノイズのうち、アンテナANTによる受信周波数範囲内のものが標準電波と共に受信される。
【0028】
このとき、図4(b)に示すように、電磁ノイズの発生周波数が電波受信部41におけるBPF414の通過周波数帯域R1に含まれる場合には、電磁ノイズがタイムコード信号に上乗せされて受信感度(C/N比)が低下する。一方、電磁パルスの高調波の周波数間隔である50Hzは、BPF414の通過周波数帯域幅である10Hz程度に比して十分広い。従って、電磁ノイズの発生周波数がBPF414の通過周波数帯域に含まれない場合があり得る。このときの電磁ノイズは、BPF414によりカットされてタイムコード信号の受信感度に対して影響を及ぼさない。
【0029】
そこで、本実施形態の電波時計1では、標準電波の受信時にフレーム周波数を適宜に変更して、電磁ノイズの発生周波数が何れもBPF414による通過周波数帯域から外れるようにする。即ち、標準電波の受信周波数に応じて、電磁ノイズの発生周波数がBPF414の通過周波数帯域R1と重ならないようにフレーム周波数が設定される。
【0030】
図5は、電波受信部により40kHzの標準電波を受信した際のBPFの出力信号、復調信号、及び、TCOの電圧波形をそれぞれ示す図である。図5(a)には、BPFの通過周波数帯域に電磁ノイズが含まれる場合の信号を示す。また、図5(b)には、BPFの通過周波数帯域に電磁ノイズが含まれない場合の信号を示す。
【0031】
BPF414の通過周波数帯域に電磁ノイズが含まれる場合には、BPFの出力信号(a2)、復調信号(a1)、及び、TCO(a3)には、ノイズ成分が混入する。ここで、電磁ノイズの発生源である液晶駆動信号のフレーム周波数には、発振回路47から出力される32kHzの発振信号の出力精度や分周回路48の設定などにより、微小な周波数誤差や端数が含まれ得る。従って、図5(a)に示すように、駆動波形周波数の高調波周波数と標準電波の受信周波数とが完全に一致せず、ズレが存在することにより、復調信号(a1)にビートが生じている。このビートによる信号強度の変動により復調信号の電圧が低下した期間では、TCO(a3)がしばしば誤ってハイレベルに変換されて出力されている。
【0032】
一方、図5(b)に示すように、BPFの通過周波数帯域に電磁ノイズが含まれない場合には、BPFの出力信号(b2)、及び、復調信号(b1)に電磁ノイズの成分が含まれない。従って、正しいTCO(b3)が取得されて出力される。
【0033】
ここで、実際の電圧波形では、矩形波において有限の立ち上がり時間及び立ち下がり時間を含むことなどにより、図5に示したように、各スペクトル強度のピークには、パルス幅が存在する。従って、通過周波数帯域R1の中心周波数と、上下に隣接する二つの電磁ノイズの発生周波数の中間値とが等しくなるようにフレーム周波数を設定することで、最も効果的に電磁ノイズの影響を抑えることが出来る。
【0034】
また、電磁ノイズの発生周波数の間隔は、フレーム周波数が大きくなるに従って広くなる。従って、フレーム周波数を上昇させることによって電磁ノイズの発生周波数を通過周波数帯域R1からより隔離させることが出来る。一方、フレーム周波数が上昇するに従って消費電力が増大する。これらの長所及び短所を踏まえて、標準電波の受信時におけるフレーム周波数の上昇幅が適宜に設定される。CPU42からの指令により分周回路48における分周比の設定が変更されて、変更されたフレーム周波数信号が出力されて表示ドライバ46に入力される。
【0035】
又は、表示ドライバ46には、分周回路48から高周波数信号が入力されて、当該高周波数信号をカウントすることで所望のフレーム周期長を計数し、SEG電圧信号波形の出力を制御することとしても良いし、CPU42により実行されるプログラムに基づき、分周回路48から出力された高周波数信号をCPU42においてカウントし、所望のフレーム周期長ごとに周期信号を表示ドライバ46へ送ることとしても良い。
【0036】
なお、標準電波の受信時におけるフレーム周波数は、その高調波の周波数がBPF414の通過周波数帯域だけではなく、イメージ周波数や、局部発振器のスプリアス周波数とも異なる値となるように設定されることが望ましい。
【0037】
次に、本実施形態の電波時計1における標準電波受信時の動作手順について説明する。
【0038】
図6は、標準電波受信処理を行う際にCPU42が実行する制御動作の手順を示すフローチャートである。
【0039】
この標準電波受信処理は、計時回路49が計時する現在時刻が予め設定された時刻になった場合、又は、操作部51へのユーザの操作入力により標準電波受信処理の実行命令が入力された場合に、ROM44からプログラム44aを読み出してRAM43に展開した後に実行される。
【0040】
標準電波受信処理が開始されると、CPU42は、先ず、電波受信部41をオンする(ステップS11)。続いて、CPU42は、RAM43に記憶された設定情報に基づき、必要に応じて同調回路の設定を変更し、標準電波の受信周波数を設定する(ステップS12)。この設定情報は、例えば、ユーザ操作により入力された都市情報や、前回の標準電波受信処理の際に受信された標準電波送信局の情報である。
【0041】
次に、CPU42は、設定された受信周波数に対応付けられてROM44に格納された標準電波受信設定テーブル44bを読み出して、表示部45を駆動する表示ドライバ46の出力信号に係るフレーム周波数を変更させる(ステップS13)。変更後のフレーム周波数は、その1/2の周波数の高調波が何れも電波受信部41におけるBPF414の通過周波数帯域に含まれない値である。CPU42は、電波受信部41から入力されるTCOを用いて時刻データの解読処理を実行する(ステップS14)。具体的には、CPU42は、タイムコードを復号し、日付や時分秒の値を取得すると共に、毎秒の先頭のタイミングを示す秒同期点を同定する。
【0042】
それから、CPU42は、時刻データの取得に成功したか否かを判別する(ステップS15)。時刻データの取得に失敗したと判別された場合には、CPU42の処理は、ステップS12に戻り、CPU42は、受信周波数を他の標準電波の周波数に変更して時刻を取得するための各処理を繰り返す(ステップS12〜S15)。
【0043】
ステップS15の判別処理において、時刻データの取得に成功したと判別された場合には、CPU42は、表示ドライバ46から出力する表示部45の駆動信号のフレーム周波数を元の値に戻す(ステップS16)。また、CPU42は、取得された時刻データに基づいて計時回路49の時刻データを修正して(ステップS17)、電波受信部41をオフする(ステップS18)。そして、標準電波受信処理を終了する。
【0044】
なお、上記の標準電波受信処理では、時刻の取得が成功するまで受信周波数を変更しながら処理を繰り返すが、ROM44に設定登録された受信周波数の標準電波を全て受信した時点で時刻の取得が成功しなかった場合には、時刻の修正を行わずにその時点で標準電波受信処理を終了する。
【0045】
図7には、標準電波受信処理中における表示部への表示例を示す。
【0046】
本実施形態の電波時計1では、標準電波受信処理中であっても表示部45に継続的に表示を行わせることが可能である。例えば、図7(a)に示すように、標準電波受信処理中には、表示部45に当該処理中であることを示す「RC」(Radio Control)の表示を行わせると共に、受信中の標準電波送信局や受信周波数(例えば、JJY局40kHz)を表示させることとしても良い。或いは、図7(b)に示すように、表示部45には、通常の日時の表示を継続させると共に、受信処理中であることを示すマーク451「RC」を表示させることとしてもよい。
【0047】
以上のように、本実施形態の電波時計1によれば、LCDなどにより現在時刻のデジタル表示が可能な表示部45と、CPU42からの制御命令に基づいて設定されたフレーム周波数に基づく、駆動波形周波数の駆動信号でこの表示部45を駆動する表示ドライバ46と、標準電波の受信周波数に同調して標準電波を受信するアンテナANT及び電波受信部41と、を備え、標準電波を受信すべく標準電波の受信周波数に電波受信部41が同調している際に、この電波受信部41の同調周波数と、表示ドライバ46による表示部45の駆動波形周波数の高調波周波数とが異なる値となるように駆動波形周波数を設定することで、表示部45を駆動することにより発生する電磁ノイズが電波受信部41で受信されることによる標準電波の受信感度に対する悪影響を低減させることができる。
【0048】
また、電波受信部41による標準電波の受信中に、受信対象の標準電波の受信周波数が表示ドライバ46による表示部45の駆動波形周波数に対する高調波周波数のうち、この高調波周波数の上下に隣接した二つの周波数の中間値と等しくなるように設定されるので、受信対象の標準電波から電磁ノイズの周波数を最も遠くへ離すことで、電波受信部41により受信される電磁ノイズの影響を低減させることが出来る。
【0049】
また、電波受信部41には、駆動波形周波数の高調波における周波数間隔よりも狭い周波数範囲の信号を選択的に通過させるBPF414が設けられおり、電波受信部41による標準電波の受信時に、表示ドライバ46による表示部45の駆動波形周波数の高調波周波数がBPF414の通過周波数帯域に入らないようにフレーム周波数、即ち、駆動波形周波数が設定されるので、表示部45を駆動する際の駆動信号によって生じる電磁ノイズがBPF414によってカットされ、標準電波からタイムコードを復号する際の受信感度を維持することが出来る。
【0050】
また、電波受信部41による標準電波の受信中に、BPF414の通過周波数帯域の中心値と、表示ドライバ46による表示部45の駆動波形周波数に対する高調波周波数のうち、高調波周波数の上下に隣接した二つの周波数の中間値とが等しくなるように設定されるので、BPF414の通過周波数帯域から電磁ノイズの周波数を最も遠くへ離すことで、電波受信部41が受信する電波に電磁ノイズが混入する影響を最小限に抑えることが出来る。
【0051】
また、電波受信部41による標準電波の受信時に、表示部45のフレーム周波数、即ち、駆動波形周波数を通常時の周波数から変更して表示部の表示をさせることで、受信中及び受信外の場合にそれぞれ適した駆動波形周波数を設定することが出来る。
【0052】
特に、電波受信部41による標準電波の受信時に、表示部45の駆動波形周波数を通常時より高くなるように設定することで、標準電波の受信外の場合には必要以上に駆動波形周波数を高くせずに電力消費を抑える一方、標準電波の受信時には、通常より高めの駆動波形周波数により高調波間の周波数間隔を広げることで、より確実にBPF414の通過周波数帯域から高調波周波数を外すことが出来る。
【0053】
また、標準電波受信時に変更するフレーム周波数、即ち、駆動波形周波数を標準電波の受信周波数と関連付けてROM44の標準電波受信設定テーブル44bに予め記憶させておくことで、複数の標準電波の受信周波数を切り替えて受信を行う場合でも表示ドライバ46による駆動波形周波数を容易に適切な値に変更することができる。
【0054】
また、駆動波形周波数の高調波周波数をBPF414の通過周波数帯域に含まれないようにするだけではなく、イメージ周波数や局部発振器412のスプリアス周波数といった電波受信の感度を低下させ得る周波数にも重ならないように標準電波受信時の駆動波形周波数を設定することで、標準電波の受信感度をより安定的に維持することが出来る。
【0055】
また、標準電波の受信時に、時刻情報を表示させながら、同時に標準電波を受信中である表示を行わせることが出来るので、ユーザが時刻情報を取得することを妨げないと共に、ユーザに電波状態の悪い位置に移動しないように知らせることが出来る。
【0056】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、標準電波の受信時にフレーム周波数を通常の値から変更して電磁ノイズの混入を防いだが、初めからタイムコード信号に電磁ノイズが混入しないフレーム周波数によって表示部45を常に駆動することとしても良い。
【0057】
また、上記実施の形態では、標準電波受信設定テーブル44bを用いて標準電波の受信周波数毎にフレーム周波数を個別に設定したが、全ての受信可能な標準電波の受信周波数に対するBPF414の通過周波数帯域に高調波周波数が含まれない一のフレーム周波数を設定することとしても良い。このような周波数を設定することで、表示部45の構成を簡略化しながら継続的に表示を行わせることが出来る。
【0058】
また、上記実施の形態では、標準電波の受信時に表示部45に受信中である旨の表示を行わせる処理を行ったが、一切そのような処理を行わずに通常通りの時刻表示を行わせることとしても良い。
【0059】
また、上記実施の形態ではデジタル表示を行う表示部45のみを備えたデジタル電波時計について説明したが、デジタル表示部と指針によるアナログ表示部とを兼ね備えた電波時計についても同様に本発明を適用可能である。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構造、配置や制御の順番などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0061】
[付記]
<請求項1>
現在時刻のデジタル表示が可能な表示手段と、
設定された駆動波形周波数の駆動信号で前記表示手段を駆動制御する表示駆動制御手段と、
時刻情報を含む標準電波の受信周波数に同調して当該標準電波を受信する受信手段と、
を備え、
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段による標準電波の受信中に、前記駆動波形周波数の高調波周波数が前記標準電波の受信周波数と異なるように前記駆動波形周波数を設定する
ことを特徴とする電波時計。
<請求項2>
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段による標準電波の受信中に、当該標準電波の受信周波数が隣接する二つの前記高調波周波数の中間値と等しくなるように前記駆動波形周波数を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の電波時計。
<請求項3>
前記受信手段は、前記駆動波形周波数の高調波周波数における周波数間隔よりも狭い所定の周波数範囲の信号を選択的に通過させることで抽出する狭帯域透過手段を備え、
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段による標準電波の受信中に、前記駆動波形周波数の高調波周波数が前記所定の周波数範囲内に含まれないように前記駆動波形周波数を設定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電波時計。
<請求項4>
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段による標準電波の受信中に、前記所定の周波数範囲の中心周波数が隣接する二つの前記高調波周波数の中間値と等しくなるように前記駆動波形周波数を設定する
ことを特徴とする請求項3に記載の電波時計。
<請求項5>
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段による標準電波の受信中には、前記駆動波形周波数を当該標準電波の非受信時における周波数とは異なる周波数に変更する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の電波時計。
<請求項6>
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段による標準電波の受信中には、前記駆動波形周波数を当該標準電波の非受信時における周波数より高い周波数に変更する
ことを特徴とする請求項5に記載の電波時計。
<請求項7>
受信可能な前記標準電波の受信周波数と、当該受信周波数毎に設定された前記駆動波形周波数とを対応付けて記憶する記憶手段を備え、
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段により標準電波を受信する際には、前記受信手段において設定された前記受信周波数に応じた前記駆動波形周波数を前記記憶手段から取得して当該駆動波形周波数を変更する
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の電波時計。
<請求項8>
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段により標準電波を受信する際には、前記受信手段が受信可能な標準電波のうちの何れの標準電波を受信する場合にも、前記駆動波形周波数の高調波周波数が当該標準電波の受信周波数に対する前記所定の周波数範囲内に含まれない値に前記駆動波形周波数を変更する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の電波時計。
<請求項9>
前記受信手段は、ヘテロダイン方式を用いた受信回路を備え、
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段による標準電波の受信中には、前記駆動波形周波数の高調波周波数が当該受信手段におけるイメージ周波数と異なるように前記駆動波形周波数を設定する
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の電波時計。
<請求項10>
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段による標準電波の受信中には、前記表示手段に標準電波の受信中であることを示す表示を行わせる
ことを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の電波時計。
【符号の説明】
【0062】
1 電波時計
41 電波受信部
411 LNA
412 局部発振器
413 ミキサ
414 BPF
415 IFアンプ
416 検波回路
42 CPU
43 RAM
44 ROM
44a プログラム
44b 標準電波受信設定テーブル
45 表示部
46 表示ドライバ
47 発振回路
48 分周回路
49 計時回路
50 電源部
51 操作部
ANT アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在時刻のデジタル表示が可能な表示手段と、
設定された駆動波形周波数の駆動信号で前記表示手段を駆動制御する表示駆動制御手段と、
時刻情報を含む標準電波の受信周波数に同調して当該標準電波を受信する受信手段と、
を備え、
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段による標準電波の受信中に、前記駆動波形周波数の高調波周波数が前記標準電波の受信周波数と異なるように前記駆動波形周波数を設定する
ことを特徴とする電波時計。
【請求項2】
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段による標準電波の受信中に、当該標準電波の受信周波数が隣接する二つの前記高調波周波数の中間値と等しくなるように前記駆動波形周波数を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の電波時計。
【請求項3】
前記受信手段は、前記駆動波形周波数の高調波周波数における周波数間隔よりも狭い所定の周波数範囲の信号を選択的に通過させることで抽出する狭帯域透過手段を備え、
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段による標準電波の受信中に、前記駆動波形周波数の高調波周波数が前記所定の周波数範囲内に含まれないように前記駆動波形周波数を設定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電波時計。
【請求項4】
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段による標準電波の受信中に、前記所定の周波数範囲の中心周波数が隣接する二つの前記高調波周波数の中間値と等しくなるように前記駆動波形周波数を設定する
ことを特徴とする請求項3に記載の電波時計。
【請求項5】
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段による標準電波の受信中には、前記駆動波形周波数を当該標準電波の非受信時における周波数とは異なる周波数に変更する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の電波時計。
【請求項6】
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段による標準電波の受信中には、前記駆動波形周波数を当該標準電波の非受信時における周波数より高い周波数に変更する
ことを特徴とする請求項5に記載の電波時計。
【請求項7】
受信可能な前記標準電波の受信周波数と、当該受信周波数毎に設定された前記駆動波形周波数とを対応付けて記憶する記憶手段を備え、
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段により標準電波を受信する際には、前記受信手段において設定された前記受信周波数に応じた前記駆動波形周波数を前記記憶手段から取得して当該駆動波形周波数を変更する
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の電波時計。
【請求項8】
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段により標準電波を受信する際には、前記受信手段が受信可能な標準電波のうちの何れの標準電波を受信する場合にも、前記駆動波形周波数の高調波周波数が当該標準電波の受信周波数に対する前記所定の周波数範囲内に含まれない値に前記駆動波形周波数を変更する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の電波時計。
【請求項9】
前記受信手段は、ヘテロダイン方式を用いた受信回路を備え、
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段による標準電波の受信中には、前記駆動波形周波数の高調波周波数が当該受信手段におけるイメージ周波数と異なるように前記駆動波形周波数を設定する
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の電波時計。
【請求項10】
前記表示駆動制御手段は、前記受信手段による標準電波の受信中には、前記表示手段に標準電波の受信中であることを示す表示を行わせる
ことを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の電波時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−242194(P2012−242194A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111017(P2011−111017)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】