説明

電波暗室設備

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、他の電子機器に電波障害を与える電波雑音を発生する機器の放射雑音電界強度を測定したり、電子機器に強電磁界の電波を照射して誤動作を試験する場合等に使用する電磁波シールド付き電波暗室を具備した電波暗室設備に係り、とくに前記放射雑音電界強度測定及び誤動作試験等において試験に供する機器(供試機)と有線による接続をして動作する機器(対向機)を含む試験を実施するための電波暗室設備に関する。
【0002】
【従来の技術】従来は放射雑音電界強度測定及び誤動作試験において、試験に供する機器又は機器システムのみの単体の試験が大部分であった。最近、試験に供する機器又は機器システム、即ち供試機と、対向機と呼ばれる機器又は機器システム間とを接続して、実際の動作状態と同じ条件下での試験が要求される場合がある。例えば、供試機がファクシミリ装置で、対向機となる相手側機器に接続された状態で試験を行いたい場合や、供試機がコンピュータで制御される機器であって、対向機となるコンピュータが接続状態になっていないと試験ができない場合等である。
【0003】このような対向機と接続した供試機の試験において、対向機は供試機が本来置かれる位置から離れた場所に設置し、対向機からの放射雑音電界強度、対向機の強電界に起因する誤動作等により本来試験されるべき供試機である機器又は機器システムの上記試験に影響を与えないようにする必要がある。
【0004】一般に、放射雑音電界強度測定用の電波暗室の床面は、電波吸収体の設置されない反射面となっていて、供試体を設置し回転させながら測定するためのターンテーブルの表面もこの反射面と同一となっている、いわゆる埋め込み型となっている場合が多い。小型の機器の対向機を伴った試験では、この埋め込みタイプのターンテーブルの内に対向機を設置することもあるが、大型の対向機に対する搬入方法の問題、及びターンテーブルの下側の空間であるターンテーブル収納用ピットが電波暗室の電磁波シールドと分離されていない問題がある。
【0005】また、電波暗室において前記測定、試験を行う為に、電波暗室とは独立して、試験時に人員、試験用測定器、コンピュータ等を収容するための電磁波シールド付きの計測室を設置する例も多く、この部屋に対向機を置くことが考えられるがこれらの人員、試験用測定器、コンピュータによる対向機への影響、また対向機が試験用測定器、コンピュータに及ぼす影響の問題がある。
【0006】実開平1−78099号等で、電波吸収体を貼付けた可動式衝立により電波暗室を分割し二つの目的に使う例が示されているが、これらの例では電波暗室の持つ二つの働き、即ち(1)室内を電磁波の無反射状態とする働き、(2)電磁波シールドを施し、外来又は内部で使う電磁波を外部から遮断する働きのうちの(1)のみに着目し、部屋を二つに分けているにすぎず、(2)の電磁波シールド的に分割することは考慮されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、対向機を伴った放射雑音電界強度及び誤動作試験において、対向機を接続した状態での測定、試験では、次のような解決すべき課題がある。
【0008】(1) 対向機は、試験に供する機器、即ち供試機が設置される電波暗室と別の空間に設置される必要がある。これは、一つには対向機自体が反射体になり電波暗室の無響特性を損なう問題、他は放射雑音源又は誤動作の原因となることによる。
【0009】(2) 前(1)項の放射雑音源又は誤動作の源となることを解決するについては、電波暗室を囲む電磁波シールドと分離された独立の電磁波シールド空間内に対向機が設置される必要がある。
【0010】(3) 前(2)項の対向機用電磁波シールド室は、供試機と対向機を接続する為の線路を通す接続通路を持つ必要があり、この接続通路自体も外部との電磁波シールドの為に電磁波シールド材で覆われた構造とする必要がある。
【0011】(4) 前(3)の接続通路の開口寸法(断面寸法)により電磁波が伝播しない遮断周波数があり、この周波数以下では二つの電磁波シールド空間相互の独立は保たれたが、供試機と対向機を接続するための線路を通すことにより、同軸管と同様な現象で遮断周波数以下でも電磁波が伝播し両者の独立が保たれなくなる。
【0012】(5) 供試機−対向機間を接続する線路の長さが、試験に影響する場合がある。特に実際に使用される場合より線路長が長いときは、問題を起こすことがある。
【0013】(6) 対向機用電磁波シールド室内は、当該室内に設置される他の機器や人員等の影響が考えられるので、計測室や他の目的の電磁波シールド室との併用でなく独立又は独立とできるような構造とする必要がある。
【0014】(7) 供試機と対向機の接続用線路は、供試機と対向機の組み合わせ(ペア)間で固有である。従って、供試機の種類、例えば型式や製造業者が異なる場合毎に接続用線路を供試機に合わせて交換する必要が生じ、線路を固定して設置できない場合が多い。
【0015】本発明は、上記の点に鑑み、対向機を伴った供試機の放射雑音電界試験や誤動作試験等における諸問題を解決することが可能な電波暗室設備を提供することを目的とする。
【0016】本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施例において明らかにする。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、供試機と接続された対向機を含む試験、測定を行う電磁波シールド付き電波暗室を具備する電波暗室設備において、前記対向機を収納する電磁波シールド室を、前記供試機を収納する前記電波暗室と独立して設け、前記供試機と前記対向機とを接続する線路を通す通路を少なくとも一個所持ち、該通路を外部に対し電磁波シールドした構造とし、該通路に少なくとも一個所の電磁波遮断構造を設けた構成としている。
【0018】前記電磁波遮断構造は交換自在な構成としてもよい。
【0019】前記電波暗室はターンテーブルを有していて、該ターンテーブルの下方に前記電磁波シールド室が配置されていてもよい。
【0020】
【作用】本発明の電波暗室設備は、対向機を収納する電磁波シールド室を、電波暗室から独立した電磁波シールド空間とし、電波暗室との間の線路接続用の通路を設けるとともに該通路に電磁波遮断構造を設けることにより、対向機を伴った供試機の放射雑音電界強度試験及び誤動作試験において対向機の影響を少なくし、試験の目標としている供試機の実際の動作状態における性能評価を確実に実行できる。
【0021】前記電磁波遮断構造が交換自在となっている場合、供試機と対向機との相互接続用の線路の種類に応じて最適な電磁波遮断構造を選択して前記通路に装着でき、供試機及び対向機の組の多様性に対応することが可能である。
【0022】また、前記電波暗室内のターンテーブルの下方に前記電磁波シールド室を配置した場合、ターンデーブル上に載置された供試機に対し最短距離で対向機を接続可能であり、供試機と対向機とを結ぶ線路長に制約がある場合にも、所望の線路長の範囲内で測定を実施できる。
【0023】
【実施例】以下、本発明に係る電波暗室設備の実施例を図面に従って説明する。
【0024】図1乃至図7で本発明に係る電波暗室設備の第1実施例を説明する。図1は供試機を収納するための電波暗室と対向機を収納するための電磁波シールド室とを具備した電波暗室設備の全体構成を示し、図2乃至図7は電波暗室と電磁波シールド室間に線路を通すための接続通路及びこれに付随する機構部分を示す。
【0025】図1の全体構成において、1は電磁波シール付き電波暗室であり、この電波暗室1は電磁波シールド材2で天井面、側壁面及び床面を囲むことで電磁波シールド(電磁波が侵入及び漏洩しないようなシールド)が施されており、さらに電磁波シールド材2の天井面及び側壁面の内側に電波吸収体3を貼り付けた構成となっている。
【0026】電磁波シールド材2の材料は、表面にメッキを施した鋼板、銅板等の良導体からなり、放射雑音電界強度試験及び誤動作試験が電波暗室内で実施できる電磁波シールド効果を持つものとする。
【0027】電波吸収体3は、誘電体、磁性体、両者の組み合わせ等のいずれでもよく所定の電波暗室特性(電波吸収特性)が得られるものとする。
【0028】電波暗室1の床部にも電磁波シールド材2による電磁波シールドが施されており、試験に供する機器又は機器システムである供試機4を設置するターンテーブル5を収納するターンテーブル収納用ピット6も、天井面、側壁面及び床面と同様なレベルの電磁波シールドがなされるように、電磁波シールド材2で囲まれている。なお、通常、ターンテーブル5は電磁波シールド材2と同様の金属製であり、ピット6内の支持駆動機構7により回転可能に支持されている。
【0029】この電波暗室1の外側には、電源線用フィルタ8が設置されていて、電波暗室1内の供試機4、その他の測定機器等に外部から電磁気シールド的に分離された電源を供給している。
【0030】ターンテーブル収納用ピット6の下の部分に、供試機4に有線で接続される対向機11を配置するための対向機収納用電磁波シールド室10が設けられている。この電磁波シールド室10の天井面、側壁面及び床面は、電波暗室1と同様な電磁波シールド材12で囲むことで、電磁波シールドが施されている。この電磁波シールド室10の外側にも電源線用フィルタ13が電波暗室用の電源線用フィルタ8とは別に設置されていて、電磁波シールド室10内の対向機11へ外部から電磁気シールド的に分離された電源を供給している。即ち、電波暗室1の電磁波シールドに対して、電磁波シールド室10の電源系のシールドも分離されている。
【0031】対向機収納用電磁波シールド室10の内部寸法は、使用される対向機11の最大寸法等により決められる。さらに電磁波シールド室10には、供試機4と対向機11を接続する線路(例えば多芯シールドケーブル、同軸ケーブル等)14を保持する為のケーブルラック(ラダー)15が設置されている。
【0032】電波暗室1と電磁波シールド室10間に供試機4と対向機11相互を接続する線路14を通すための接続通路20があり、この通路20も電波暗室1と同様の電磁波シールド材21で囲むことで外部に対し電磁波シールドが施されている。この電磁波シールド材21は電波暗室1側の電磁波シールド材2及び電磁波シールド室10側の電磁波シールド材12と隙間なく連結されている。さらに、電波暗室1と電磁波シールド室10との内部空間同士が接続通路20の内部を介し結合しないように、すなわち電磁波シールド的に遮蔽できるように遮蔽体30が交換自在に設置されている。
【0033】なお、電波暗室1と電磁波シールド室10にはそれぞれ機器搬入用の電磁波シールド構造を持つ開閉扉が設けられている。また、電波暗室1において測定、試験を行う為に、試験時の人員、試験用測定器、コンピュータ等を収容するための電磁波シールド付きの計測室を設置する場合、この計測室は電磁波シールド室10とは別に独立して設けるようにする。
【0034】図2に接続通路20部分の断面の詳細を示し、図3に接続通路20の対向機収納用電磁波シールド室10側の開口部分を示す。この接続通路20の長さは、ターンテーブル収納用ピット6と対向機用収納用電磁波シールド室10との距離で決まる。この通路の長さの最も短い場合は、ターンテーブル収納用ピット6の底部の電磁波シールド材2と対向機収納用電磁波シールド室10の天井部の電磁波シールド材12が兼用され、一枚のシールド材で構成される場合であり、このとき通路長はこのシールド材の厚みと同じになる。
【0035】しかし、この場合は、電波暗室1と電磁波シールド室10の遮蔽の点で問題があり、通路の実質上の長さを長くする必要が生じる場合がある。但し、本実施例の場合、接続通路20の断面に比べて通路長の方が充分大きく、接続通路20が必要な長さを有している。
【0036】前記接続通路20は、電磁波シールド材2,12の電磁波シールド材料と同様な材料の電磁波シールド材21で構成されており、例えば矩形断面の導波管形状をなしている。この通路20の断面寸法はここを通す線路の種類、数、コネクタの形状等によって決まる。そして、この接続通路20を遮断する形で、遮蔽体30が設置されている。
【0037】遮蔽体30は、図5の斜視図に示すように、六面体の一面が無いいわゆる蓋の形状をした、鉄、銅、銅合金等の良導体で構成されている。即ち、この遮蔽体30は面板部30aと4側面をなす側面板部30bとからなり、側面板部30bの先端部は尖ったナイフエッジ30cとなっている。
【0038】一方、図3、図4及び図6に示すように、接続通路20の電磁波シールド室10側開口の周囲を方形枠状に隙間なく囲むように、銅、銅合金等の良導体であるコの字断面状金物31が電磁波シールド室10の内面に固定(即ち電磁波シールド材12側に固定)されている。そして、コの字断面状金物31の内側に、銅、銅合金等の良導体で相互に圧接方向に付勢された一対のばね部材からなるフィンガーコンタクト32が配設されている。そして、接続通路20に対する電磁波遮断構造が、遮蔽体30と、フィンガーコンタクト32を有するコの字断面状金物31とで構成されることになる。
【0039】従って、遮蔽体30の側面板部30bの先端部であるナイフエッジ30cをフィンガーコンタクト32に差し込むことにより、フィンガーコンタクト32が取り付けられたコの字断面状金物31が通路開口の四周に隙間なく設置されているため、通路20の電波暗室1と対向機収納用電磁波シールド室10間の電磁波遮蔽構造ができる。
【0040】この遮蔽体30をコの字状金物31に設置されたフィンガーコンタクト32に差し込む構成は、電磁波シールド室の扉に使われているナイフエッジ差し込み方式と同様であり、遮蔽体30の側面板部30bの先端部をナイフエッジ30cとして利用している。このナイフエッジ差し込み方式は、一般にシールド室の扉という開閉操作の頻度が高い所に使用されていることにより、容易に遮蔽体30が開閉できることがわかる。このようなナイフエッジ差し込み方式は作業の容易さ、シールド性能保持の点でボルト締め等の構造よりも優れている。
【0041】なお、この遮蔽体30のフィンガーコンタクト32に対する取り付け、取り外しを補助するためのハンドル33が、接続通路20の電磁波シールド室10側開口の両側に設置されている。図7は遮蔽体30をフィンガーコンタクト32に差し込み、又は抜き出す際に補助となるハンドル33、このハンドルの先端にあるローラー部34、及びこのローラー部をキャッチして抜き差しを容易にする受け金物35を示すもので、下方よりみた斜視図である。ハンドル33は、電磁波シールド室10の天井面に固定の回転支持軸36を中心に電磁波シールド室10の天井に平行な面内(水平面内)を回転するように取り付けられている。ハンドル33の先端にはローラー部34が回転自在に取り付けられており、他の端は把手37となっている。また、受け金物35は遮蔽体30の面板部30a下面の両側に固着されている。
【0042】この把手37を握り、図7の矢印の如くハンドル33を受け金物35方向に回転させれば、ローラー部34が受け金物35のテーパー状溝35aの一端に入り、さらにハンドル33を回転させることにより、ローラー部34がテーパー状溝35aの他端に進み、受け金物35は、遮蔽体30をフィンガーコンタクト32に向けて押し出すように駆動される。このように、受け金物35を遮蔽体30の面板部30aの下面両側に取り付けておくことにより、遮蔽体30をフィンガーコンタクト32に容易に確実に差し込みできる。遮蔽体30をフィンガーコンタクト32より抜き出す場合は、ハンドル33を逆に回転させることにより受け金物35がフィンガーコンタクト32から離脱する方向に動き、抜き出しが容易にできる。このように、ナイフエッジ差し込み方式で、ハンドルとテーパー状溝を持つ金物とを組み合わせた構成により、ナイフエッジをフィンガーコンタクトに対し抜き差しする際のフィンガーコンタクトのばね圧及び摩擦に打ち勝ち、容易に操作可能である
【0043】図4は、外周が金属で覆われ電磁シールドされたシールドコネクタ(いわゆるメタルコンセント)40を遮蔽体30に取り付けた状態を示す。該シールドコネクタ40に嵌合自在なコネクタ(コンセント)線路端末40a,40bにシールド外被を持つ線路(多芯ケーブル)14が接続される。各線路14のシールド外被は、コネクタ線路端末40a,40bをシールドコネクタ40に嵌合、接続した際に、シールドコネクタ40の外周金属部分を介して遮蔽体30に接続され、さらに遮蔽体30のナイフエッジ30cをフィンガーコンタクト32に差し込んで装着した際に、電磁波シールド室10側の電磁波シールド材12にフィンガーコンタクト32及びコの字断面状金物31を介し接続される。即ち、線路14のシールド外被、シールドコネクタ40の外周金属部分、遮蔽体30、電磁波シールド室10の電磁波シールド材12は相互に導通がとられている。なお、線路14のシールド外被の内側の各信号線はシールドコネクタ40を介し相互に接続され、これにより供試機4と対向機11との間の接続が行われる。
【0044】この第1実施例によれば、次の通りの効果を得ることができる。
【0045】(1) 対向機11を収納する為の電磁波シールド空間としての電磁波シールド室10を、電磁波シールド付き電波暗室1や計測用シールド室とは別個に電磁波シールド的に独立して設置したので、対向機11が電波暗室1の無響特性を損なったり、放射雑音源や誤動作の原因となったりするのを解消でき、さらに対向機11が試験、測定用の測定機器やコンピュータに影響を及ぼすこともない。また、対向機11が測定機器やコンピュータの影響を受けることもない。従って、対向機11を伴った供試機4の放射雑音電界強度試験及び誤動作試験において対向機11の影響を少なくし、試験の目標としている供試機4の実際の動作状態における性能評価を確実に実行できる。
【0046】(2) 供試機4と対向機11とを接続する線路14を通すための接続通路20を電波暗室1と電磁波シールド室10間に設けているが、その接続通路20は外部と電磁波的に遮断されており、かつ接続通路20の開口に遮蔽体30を交換自在に設けているため、遮蔽体30で接続通路20を電磁波シールド的に遮断でき、接続通路20を通しての電波暗室1と電磁波シールド室10相互間の電波の漏洩を実質的に無くすことができる。また、シールドコネクタ40を介して遮蔽体30の両側の線路14の相互接続を行うため、線路14を通しての電波の漏洩も実質的に無くすことができる。従って、高精度の試験、測定ができる。
【0047】(3) 遮蔽体30は容易に交換可能(着脱自在な構造)であり、供試機4及び対向機11の組に合わせて最適な線路14及び線路の接続構造を選択することができる。
【0048】(4) 対向機収納用電磁波シールド室10はターンテーブル収納用ピット6の下方位置にあり、供試機4と対向機11とを結ぶ接続線路14の線路長を必要最小限とすることができる。
【0049】図8は本発明の第2実施例の要部構成であって、遮蔽体30及びこれに付随する部分を示す。この図において、遮蔽体30の両面(上面及び下面)には箱状の付加シールド体50,51が接続、固着されており、シールド体50,51で覆われた遮蔽体30を貫通するように電磁フィルタ52が複数個設置されている。各電磁フィルタ52は例えば貫通型ノイズフィルタであり、その外部金具は遮蔽体30に接続されている。付加シールド体50,51には前述の第1実施例と同様のシールドコネクタ40が設置されており、供試機側の線路のコネクタ線路端末は付加シールド体50側のシールドコネクタ40に嵌合、接続され、対向機側の線路のコネクタ線路端末は付加シールド体51側のシールドコネクタ40に嵌合、接続されるようになっている。そして、遮蔽体30上下のシールドコネクタ40同士は電磁フィルタ52が途中に挿入された信号線53で接続されている。なお、その他の構成は前述の第1実施例と同様であり、同一又は相当部分に同一符号を付した。
【0050】この第2実施例の場合、各信号線53に電磁フィルタ52を挿入しているため、信号線53に起因する電波暗室1と電磁波シールド室10相互間の電波漏洩を防止できる。この結果、いっそう高精度の試験、測定が可能である。なお、その他の作用効果は前述の第1実施例と同様である。
【0051】前述の第1及び第2実施例のように、シールドコネクタ、電磁フィルタ等を用いたのでは供試機と対向機間の接続が阻害されるような試験レベルの場合は、接続通路内に電波吸収体を充填する構造とする。この場合を、本発明の第3実施例として図9及び図10に示す。
【0052】図9及び図10は本発明の第3実施例の要部構成であって、接続通路部分を示す。これらの図において、接続通路20の内部には、供試機と対向機間を接続する線路14と接続通路20内面との隙間を埋めるように電波吸収体60が充填され、これにより金属の遮蔽体を用いることなく電磁波遮断構造を実現している。この電波吸収体60は、例えば発泡誘電体(発泡ポリエチレン等)にオーム損失体粉末(カーボン粉末等)を分散、含有させたものであり、図10のように、切断面60aで2分割し、線路14を通す溝60bを有する電波吸収体60で線路14を両側より挟む構造とすることで、接続通路20内より引き出して容易に交換できる。その他の構成は、前述の第1実施例と同様であり、同一又は相当部分に同一符号を付した。
【0053】この第3実施例の場合、接続通路20内を線路14が通ることで同軸管を擬似的に構成するが、その同軸管内を伝播する電波を電波吸収体60で吸収、除去することができ、電波暗室と電磁波シールド室間の電磁波漏洩を防止できる。なお、その他の作用効果は前述の第1実施例と同様である。
【0054】図11は本発明の第4実施例の要部構成であって、接続通路部分を示す。この第4実施例も金属の遮蔽体は用いないが、電波暗室側のターンテーブル収納用ピット6と電磁波シールド室10との距離が短く、単にターンテーブル収納用ピット6と電磁波シールド室10とを接続通路で接続したのでは充分な通路長が取れない場合である。このときは、図示のように、接続通路20の端部を電磁波シールド室10内に突出させることで必要な通路長を確保し、その接続通路20に第3実施例と同様に電波吸収体60を設ける。これにより、遮蔽効果を高めることができる。なお、その他の構成は前述の第1実施例と同様であり、同一又は相当部分に同一符号を付した。
【0055】この第4実施例によれば、接続通路20の端部を電磁波シールド室10内に突出させることで、充分な通路長を確保でき、必要な遮蔽効果が得られる。なお、その他の作用効果は、前述の第3実施例と実質的に同じである。
【0056】図12は本発明の第5実施例の要部構成であって、接続通路部分を示す。この図において、接続通路20の内部には、供試機と対向機間を接続する線路14と接続通路20内面との隙間を埋めるように電波吸収体60が充填され、さらに各線路14の周囲にリング状フェライト電波吸収体70がそれぞれ装着されている。リング状フェライト電波吸収体70は、実際には半リング状フェライトを相互に突き合わせることにより線路14を挟持するようになっており、線路14に対し容易に着脱できる構造である。
【0057】この第5実施例の場合、接続通路20内を線路14が通ることで擬似的に構成された同軸管内を伝播する電波を電波吸収体60で吸収、除去するとともに、リング状フェライト電波吸収体70で線路14のシールド外被を伝わる電波を吸収、除去でき、いっそうの電磁波遮蔽効果を得ることができる。その他の構成及び作用効果は前述の第3実施例と同様である。
【0058】図13は本発明の第6実施例の要部構成であって、接続通路部分を示す。この図において、接続通路20の電磁波シールド室10側開口の周囲には、導電ゴムや良導体金属網からなるシールドパッキング材である方形枠状ガスケット80が設けられており、このガスケット80を介して接続通路20の開口を閉塞するように良導体の遮蔽板81がビス82で取り付けられている。この第6実施例は、前述の第1実施例のナイフエッジ30cとフィンガーコンタクト32との接続構造の代わりに、良導体で多少の弾力性を持つガスケット80を用いたものであり、その他の構成は前述の第1実施例と同様でよく、同一又は相当部分に同一符号を付した。
【0059】この第6実施例の場合、電磁波シールド室10の電磁波シールド材12と遮蔽板81との間に弾力性のあるガスケット80が介在することで、ビス82による締め付け箇所を少なくすることができ、遮蔽板81の交換の容易性をあまり損なわないようにすることができる。
【0060】なお、第6実施例において、ガスケット80を省略して電磁波シールド室10の電磁波シールド材12に直接遮蔽板81をビス止めする構造も可能であるが、この場合は例えば10cm間隔でボルト止めする必要があり、遮蔽板81の交換作業は手間がかかる。
【0061】前述の第1実施例では、対向機収納用電磁波シールド室10をターンテーブル収納用ピット6の下の地下室等に設置しているが、建設コストや諸条件により地下が無理であれば、供試機4を配置する電波暗室1と同一フロアに設置することも供試機4と対向機11の接続線路14の長さが問題とならない範囲において可能である。
【0062】また、第1実施例において、フィンガーコンタクト32の代わりに弾性を持つシールドパッキング材を用いることもできるが、遮蔽体30をシールドパッキング材の弾性に打ち勝ってシールド接続するためには、図7に示したのと同様なハンドル機構を取り付ける必要がある。
【0063】なお、第4実施例においても第5実施例の如く線路14にリング状フェライト電波吸収体70を装着するようにしてもよい。
【0064】また、各実施例において、供試機を配置する電波暗室と対向機を配置する電磁波シールド室間の接続用の線路を通すための接続通路が1個である場合を例示したが、複数の接続通路が設置されている場合にも本発明は適用可能であり、また、1つの接続通路に対して電波吸収体による電磁波遮断構造と良導体の遮蔽体(又は遮蔽板)による電磁波遮断構造とを併用してもよい。
【0065】以上本発明の実施例について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。
【0066】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の電波暗室設備は、放射雑音電界強度測定及び誤動作試験等に供する供試機に接続される対向機を、供試機が配置される電波暗室から独立した電磁波シールド室に収納でき、対向機と供試機間の接続用の線路を通すための通路、及びこれを電磁波シールド的に遮断するための電磁波遮断構造を備え、必要に応じて遮断の程度を変えることにより、この種の測定、試験において対向機の影響を最小に抑え、本来必要とされる供試機のみの高精度の評価が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電波暗室設備の第1実施例であって全体構成を示す正断面図である。
【図2】第1実施例の通路部分の拡大正断面図である。
【図3】第1実施例の通路の開口部分を対向機収納用電磁波シールド室側からみた底面図である。
【図4】第1実施例において、遮蔽体及びこれに付随する機構部分を示す拡大正断面図である。
【図5】第1実施例で用いる遮蔽体の斜視図である。
【図6】第1実施例における遮蔽体側ナイフエッジ及びフィンガーコンタクトを有するコの字断面状金物を示す部分拡大断面図である。
【図7】第1実施例において遮蔽体を抜き差しするためのハンドル及び受け金物を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2実施例の要部構成を示す正断面図である。
【図9】本発明の第3実施例の要部構成を示す正断面図である。
【図10】第3実施例において線路の周囲に電波吸収体を配置した構成を示す平面図である。
【図11】本発明の第4実施例の要部構成を示す正断面図である。
【図12】本発明の第5実施例の要部構成を示す正断面図である。
【図13】本発明の第6実施例の要部構成を示す正断面図である。
【符号の説明】
1 電磁波シールド付き電波暗室
2,12,21 電磁波シールド材
3,60,70 電波吸収体
4 供試機
5 ターンテーブル
6 ターンテーブル収納用ピット
8,13 電源線用フィルタ
10 対向機収納用電磁波シールド室
11 対向機
14 線路
15 ケーブルラック
20 接続通路
30 遮蔽体
30a 面板部
30b 側面板部
30c ナイフエッジ
31 コの字断面状金物
32 フィンガーコンタクト
33 ハンドル
34 ローラー部
35 受け金物
35a テーパー状溝
36 回転支持軸
37 把手
40 シールドコネクタ
40a,40b コネクタ線路端末
50,51 付加シールド体
52 電磁フィルタ
60a 切断面
60b 溝
80 ガスケット
81 遮蔽板
82 ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】 供試機と接続された対向機を含む試験、測定を行う電磁波シールド付き電波暗室を具備する電波暗室設備において、前記対向機を収納する電磁波シールド室を、前記供試機を収納する前記電波暗室と独立して設け、前記供試機と前記対向機とを接続する線路を通す通路を少なくとも一個所持ち、該通路を外部に対し電磁波シールドした構造とし、該通路に少なくとも一個所の電磁波遮断構造を設けたことを特徴とする電波暗室設備。
【請求項2】 前記電磁波遮断構造を交換自在とした請求項1記載の電波暗室設備。
【請求項3】 前記電波暗室がターンテーブルを有し、該ターンテーブルの下方に前記電磁波シールド室が配置されている請求項1記載の電波暗室設備。

【図1】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図4】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【特許番号】第2952168号
【登録日】平成11年(1999)7月9日
【発行日】平成11年(1999)9月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−282589
【出願日】平成6年(1994)10月21日
【公開番号】特開平8−125378
【公開日】平成8年(1996)5月17日
【審査請求日】平成10年(1998)2月13日
【出願人】(000003067)ティーディーケイ株式会社 (7,238)
【参考文献】
【文献】特開 平5−149985(JP,A)
【文献】実開 平5−77782(JP,U)