説明

電波遮蔽体

【課題】ある厚みをもって、一定の誘電率に設計した調整層で、電波の速度、波長を所望の設計通りに調整保持し、それによって得た電波的環境で、空気中で選択された特定周波数の電波に相当する設計周波数の電波を安定してシールドできる電波遮蔽体を提供する。
【解決手段】無機質系充填材を主材とした発泡体を調整層1とし、調整層1の上に選択される特定周波数の電波に共振するところの、線状などの導体を樹脂シート、強化プラスチック板、不織布、紙などに配列した共振層2を装着し、該共振層2の上に調整層1と同じ材質よりなる調整層1’を設け、共振層2を調整層1、1’で挟むようにした構成からなる電波遮蔽体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電波遮蔽体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特定周波数を遮蔽(シールド)する技術として、特定周波数において共振するように、フィルム状の樹脂シート、布あるいは紙などに、金属導電性の材料を印刷方式でパターン(模様状)として装着し、これを遮蔽する建造物の壁などに貼ったり、上方より吊り下げたりすることは広く行われていることである。しかしそのようなシートなどを壁に貼った場合に、壁材の電波的影響を受けて、共振周波数が変わってしまい、必要とするシールドの効果にマイナスの影響を与える、すなわち本来とは異なる周波数で、最大のシールド効果が働いてしまう。また貼った壁との間や、表面側を覆った物体、材料との間の空気が入ったりして遮蔽特性にマイナスの影響を生じる。さらにまた前述のパターンに他の物体が接近した場合も同様の現象が生じる。このような現象の原因としては、電波が誘電率の異なる物体中を通るときに、電波の速度、波長が変わり、前記パターンの共振周波数が変化することから起こるものと説明される。ここにおいて、特定周波数において共振する前記パターンを、安定した電波的環境下に保ち、設計周波数でシールドすることが望ましく必要なことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、ある厚みをもって、一定の誘電率に設計した調整層で、電波の速度、波長を所望の設計通りに調整保持し、それによって得た電波的環境で、空気中で選択された特定周波数の電波に相当する設計周波数の電波を安定してシールドできる電波遮蔽体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
無機質系充填材を主材とした発泡体を調整層とし、該調整層の上に選択される特定周波数の電波に共振するところの、線状などの導体などを樹脂シート、強化プラスチック板、不織布、紙などに配列した共振層を装着し、該共振層の上に前記調整層と同じ材質からなる調整層を設け、共振層を調整層で挟むようにした構成からなることを特徴とする電波遮蔽体、調整層を形成する発泡体が、ニトリルブタジエンゴムなどのエラストマー樹脂、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機質充填材に、イソシアネートを混合して得た混合物を、混練し、加圧、加熱して得られるコンパウンドに、水を浸透させるることにより、成分中のイソシアネートが加水分解し、炭酸ガス、窒素からなるガス体が発生して発泡現象が生じて前記コンパウンドが膨張し、成形された不燃性・難燃性を有する独立気泡の発泡体からなることを特徴とする前記記載の電波遮蔽体、調整層を形成する発泡体が、無機質系充填材を主材とし、それに塩化ビニール樹脂、適宜の添加剤などを加えて混練してコンパウンドを作成し、金型内において加熱発泡させて形成する発泡体からなることを特徴とする前記記載の電波遮蔽体、調整層の表面に導電性物質を印刷手法または金属溶射などにより付着させて共振層を形成したことを特徴とする前記記載の電波遮蔽体、無機質系充填材を主材とした発泡体にカーボンを加えて調整層としたことを特徴とする前記記載の電波遮蔽体、および調整層として各種の物質・材質を使用し、該調整層の上に選択される特定周波数の電波に共振するところの、線状の導体などを樹脂シート、強化プラスチック板、不織布、紙などに配列した共振層を装着し、該共振層の上に前記調整層と同じ材質からなる調整層を設け、共振層を調整層で挟むようにした構成からなることを特徴とする電波遮蔽体、調整層の表面に導電性物質を印刷手法または金属溶射などにより付着させて共振層を形成したことを特徴とする前記記載の電波遮蔽体の構成とする。
【発明の効果】
【0005】
この発明は、無機質系充填材を主材とした発泡体を調整層とし、該調整層の上に選択される特定周波数の電波に共振するところの、線状の導体などを樹脂シート、強化プラスチック板、不織布、紙などに配列した共振層を装着し、該共振層の上に前記調整層と同じ材質よりなる調整層を設け、共振層を調整層で挟むようにした構成からなることを特徴とする電波遮蔽体として、それはある厚みをもって、一定の誘電率に設計した調整層で、電波の速度を所望の設計通りに調整保持し、それによって得た電波的環境で、線状導体などの共振周波数に相当する特定周波数の電波を、安定してシールドできる電波遮蔽体となる。それは表裏を同じ誘電率で充分な厚みを持った調整層で挟むことにより、この発明の電波遮蔽材を対象とする壁などに貼ったときに、その壁材の材質とか、また周囲の物質、物体の影響が線状導体などの共振周波数に直接には及ばす、これら周囲物体の影響を極力小さくすることができることによる。またこれら調整層は共振層と密着させることにより、空気、水分などによる不測の影響を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
無機質系充填材を主材とした発泡体を調整層とし、該調整層の上に選択される特定周波数の電波に共振するところの、線状の導体などを樹脂シート、強化プラスチック板、不織布、紙などに配列した共振層を装着し、該共振層の上に前記調整層と同じ材質からなる調整層を設け、共振層を調整層で挟むようにした構成からなることを特徴とする電波遮蔽体。
【実施例1】
【0007】
図1に示すように、無機質系充填材を主材とした発泡体を調整層1とし、該調整層1の上に選択される特定周波数の電波に共振するところの、線状の導体などのパターン(導体によるパターンは直線、曲線、円、直線状の組み合わせ、曲線状の組み合わせなどによる種々のパターンの各種の配列がある)を樹脂シート、強化プラスチック板、不織布、紙などに配列した共振層2を装着し、該共振層2の上に前記調整層1と同様の材料からなる調整層1’を設け、共振層2を調整層1,1’で挟むようにして接着などで一体化した構成からなることを特徴とする電波遮蔽体Aとする。これによって共振層2の保護、全体の補強、特定周波数検知の向上などにも役立つこととなる。調整層1,1’の厚みとしては10mm(場合により2〜50mm)、共振層2の厚みとして0.1mm(場合により0.1〜0.5mm)である。
【0008】
前記調整層1、1’の製法、組成としては、ニトリルブタジエンゴム、水酸化マグネシウム、イソシアネートを混合したものであり、カーボンを加える場合もある。一例としてニトリルブタジエンゴム、水酸化マグネシウム、イソシアネートを1:2.5:3.3、カーボンを加える場合は前記において0.7の割合(重量部)とする。これらを混合した後、ニーダーによって混練し、その後、加圧、加熱して得られたコンパウンドを、金型(適宜、小孔が設けてある)に充填し、それを用意した水槽内に投じる。水槽内では、漸次、前記のコンパウンドに水が浸透することにより、成分中のイソシアネートが分解し、ガス(主として炭酸ガスと窒素からなるガス体)が発生し、発泡現象が起きる。この際の気泡は独立気泡である。これによりコンパウンドが膨張し、成形された発泡体を得る。その後、常温による養生と加熱後処理を行う。なお、上記において、水酸化マグネシウムに代えて、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムそれぞれを、または双方を用いることもできる。その場合、一例として、ニトリルブタジエンゴム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、イソシアネートを、1:1:3.7:1.8の割合(重量部)とする。
【0009】
調整層1の表面に、導電性物質を印刷手法または金属溶射(例として電気を用いたアーク溶射、ガスを用いたフレーム溶射)などにより、前記した各線状形に付着させて共振層2を形成することもできる。
【0010】
調整層1、1’を形成する発泡体は加工性がよいので、容易にスライスすることができ、適宜の寸法の裁断片を得ることが簡易にできる。なお前記したエラストマー樹脂と無機質系充填材の比率を適宜変えることにより、不燃性または難燃性の度合を高めることができる。
【実施例2】
【0011】
上記実施例1のケースにおいて、調整層1、1’の形成として、無機質系充填材を主材とし、それに塩化ビニール樹脂、適宜の添加剤を加えて混練してコンパウンドを作成し、金型内において加熱発泡させて形成する発泡体を調整層の材質とすることもできる。
【0012】
実施例1、2の調整層を形成する材質に、前記したようにカーボンなどを入れたり、あるいは発泡体の材料、配合、発泡率などを変えることで、誘電率を変化、調節することにより、同じパターンを使用しても、シールドする最大効果の特定周波数を変えることができ、また同じパターンを用い、異なる特定周波数の電波遮蔽体を作ることができる。
【0013】
さらに調整層の材質は各種の物質・材質の使用が可能であり、前記した無機質系の材質に限らず、また発泡体でなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0014】
この発明は、調整層によって、共振層を挟むようにしたことを特徴とする電波遮蔽体として、共振層は選択する特定周波数に対して電波吸収性能が安定し、一方、調整層は軽量で、耐久性を有し、不燃、難燃性の材質であり、工業的に量産・製作し実用化して提供することができる。この発明の電波遮蔽体の用途としては、昨今、事業などの事務所間に無線LANなどの専用通信が多用されるが、その情報を交信するとき、それらの部屋、工場などで、内部から、また外部からの同じ周波数の電波をシールドすることができる。それは外部からの不要電波(ノイズまたは侵入)の防止と、外部への情報の漏洩防止などにおいて、オフィス空間の壁面、天井面、床面などに施すことによって、それらの障害を防止することができ、オフィス内の電波環境を整えるための好環境を作ることができる。
【0015】
携帯電話などの使用において、特定周波数(LANなど)以外は遮蔽または吸収されないようにして、使用できる環境を作ることができる。他に例示すれば病院、各種研究所などの建築物におけるコンピュータルームの周辺部に用いたり、地下駐車場、トンネル内などで、自動車用電波の情報交換エリヤにおける電波シールド材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の電波遮蔽体の拡大断面図。
【図2】この発明の電波遮蔽体の斜視図。
【符号の説明】
【0017】
A 電波遮蔽体
1.1’ 調整層
2 共振層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質系充填材を主材とした発泡体を調整層とし、該調整層の上に選択される特定周波数の電波に共振するところの、線状などの導体を樹脂シート、強化プラスチック板、不織布、紙などに配列した共振層を装着し、該共振層の上に前記調整屠と同じ材質よりなる調整層を設け、共振層を調整層で挟むようにした構成からなることを特徴とする電波遮蔽体。
【請求項2】
調整層を形成する発泡体が、ニトリルブタジエンゴムなどのエラストマー樹脂、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機質充填材に、イソシアネートを混合して得た混合物を、混練し、加圧、加熱して得られるコンパウンドに、水を浸透させるることにより、成分中のイソシアネートが加水分解し、炭酸ガス、窒素からなるガス体が発生して発泡現象が生じて前記コンパウンドが膨張し、成形された不燃性・難燃性を有する独立気泡の発泡体からなることを特徴とする請求項1記載の電波遮蔽体。
【請求項3】
調整層を形成する発泡体が、無機質系充填材を主材とし、それに塩化ビニール樹脂、適宜の添加剤などを加えて混練してコンパウンドを作成し、金型内において加熱発泡させて形成する発泡体からなることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の電波遮蔽体。
【請求項4】
調整層の表面に導電性物質を印刷手法または金属溶射などにより付着させて共振層を形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電波遮蔽体。
【請求項5】
無機質系充填材を主材とした発泡体にカーボンを加えて調整層としたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電波遮蔽体。
【請求項6】
調整層として各種の物質・材質を使用し、該調整層の上に選択される特定周波数の電波に共振するところの、線状などの導体を樹脂シート、強化プラスチック板、不織布、紙などに配列した共振層を装着し、該共振層の上に前記調整層と同じ材質からなる調整層を設け、共振層を調整層で挟むようにした構成からなることを特徴とする電波遮蔽体。
【請求項7】
調整層の表面に導電性物質を印刷手法または金属溶射などにより付着させて共振層を形成したことを特徴とする請求項6記載の電波遮蔽体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−194570(P2007−194570A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38618(P2006−38618)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(394015383)東洋オートメーション株式会社 (7)
【出願人】(305012197)
【Fターム(参考)】