説明

電流を通す埋込み受動導体を使用するインプラント、システムおよび方法に対する改良

【課題】本発明は、外部デバイスかまたは埋込み電気デバイスのいずれかに、複数の標的体内組織に、そして選択的な標的体内組織に電流を通す受動導体を使用する、インプラント、システムおよび方法に対する改良を提供する。
【解決手段】受動導体は、表面陰極電極かまたは表面陽極電極のいずれかの下方に位置する皮下組織から、a)電気信号を標的体内組織から体外のデバイスまで通すために、標的組織まで、b)電流を埋込み電気デバイスに送達するために、かかるデバイスまで、もしくはc)標的体内組織を刺激するために、複数の標的体内組織までかまたは選択的な標的体内組織まで、延在する。導体は、かかる目的を達成するための専用の端部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、外部デバイスかまたは埋込みデバイスのいずれかに、複数の標的体内組織に、そして選択的な標的体内組織に電流を通す受動導体(passive electrical conductor)を使用するインプラント、システムおよび方法に対する改良に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
体内組織および神経の電気刺激は、さまざまな指示のために広く使用されている。標的とされる体内部位または器官に電気刺激を送達するいくつかの手法が知られている。手法には、刺激の送達を集中させる必要のあるものもあり、それほど送達の的を絞る必要のないものもある。
【0003】
経皮的電気的神経刺激法(transcutaneous electrical nerve stimulation)(一般にTENSと呼ばれる)は、神経を刺激するために皮膚表面に電極を取り付けることにより皮膚を通して電気信号を提供することを含む。TENSは、非侵襲的(non-invasive)であるため有利である。しかしながら、送達される刺激の焦点が合わず皮膚を通して送達される電気信号の一部しか有効に使用されないため、その有効性は疑わしい。皮膚表面に取り付けられる電極は、特定の体内領域、たとえば特定の筋肉またはより深い筋組織を選択することができない。TENSは、一般に、鎮痛に限られる。しかしながら、刺激は皮膚の受容器(receptors)によって検知される可能性があるため、TENSにより刺激が誘発する疼痛によって不快感がもたらされる可能性がある。
【0004】
別法として、皮膚受容器を活性化することなく集中させた有効な刺激を送達するために経皮(percutaneous)刺激を使用することができる。リード線を体内組織に埋め込み、外部刺激装置に接続するために皮膚を通す。電気信号は、リード線を通して体内組織に送達される。しかしながら、経皮刺激は、経皮的リード線が非審美的かつ非衛生的であり、感染ルートを提供するため、広く実施されていない。
【0005】
小型埋込み式刺激装置、たとえばRFバイオン(RF BION)(登録商標)デバイス(米国カリフォルニア州のアドバンスト・バイオニクス・コーポレーション(Advanced Bionics Corporation(California,USA))は、集中した刺激を送達するが、皮膚の完全性を損なう。埋込み刺激装置は、刺激装置を皮膚の近くに配置するために埋込みリード線に接続することができる一方で、刺激をより深い体内領域に送達する。小型埋込み刺激装置は、身体の外側からのエネルギーの送達が必要であり、それは通常、低周波数磁界を生成する、皮膚に近接する外部コイルによって達成される。RFバイオン(RF BION)(登録商標)デバイスの欠点は、外部コイルが必要であるということである。電池式バイオン(BION)(登録商標)刺激装置(アドバンスト・バイオニクス・コーポレーション)は、この問題を回避する。バイオン(BION)(登録商標)刺激装置は、小型充電式電池を含む小型埋込み式刺激装置である。電池を、比較的短い充電時間で充電コイルを使用して無線で充電することができる。しかしながら、かかる埋込み式刺激装置は、一般に、費用がかかるために望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現行の技法の上記問題を克服するシステムは、2005年8月4日に公開され、2004年1月22日に出願された米国仮特許出願第60/538,618号明細書に対する優先権を主張する、プロハースカ(Prochazka)による国際公開第2005/070494A1号パンフレットに記載されているような「ルータシステム」である(Neural Prosthesis Program Meeting, NIH Meeting, November 2004; Gan etal., 2005)。ルータシステムは、表面陰極電極の下方に位置する皮下組織から標的体内組織まで延在する受動導体(passive electrical conductor)(たとえばリード線)に基づく。導体は、電流が導体内を流れるのを可能にするピックアップ端と、電流を標的体内組織まで送達する刺激端と、を有する。皮膚の上には表面陽極電極も配置される。有利には、ルータシステムは、知覚されない程度の経皮刺激(sub-sensational levels of transcutaneous stimulation)を印加し、それにより刺激がもたらす痛みを回避する。標的体内組織に対する刺激の集中送達は、受動導体を介して達成される。かかる重要な利点のために、ルータシステムのさらなる開発が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要約
本発明は、電流を外部電気デバイス又は埋込み電気デバイスのいずれかに、複数の標的体内組織に、そして選択的な標的体内組織に電流を流す受動導体を使用するインプラント、システムおよび方法に対する改良に関する。
【0008】
広い態様において、対象の標的体内組織を選択的かつ電気的に刺激する方法であって、
a)対象の皮膚に電気を通すために表面陰極電極および表面陽極電極を提供するステップと、
b)対象の皮膚の上に間隔を空けた関係で配置される表面陰極電極と表面陽極電極との間を流れる電流の少なくとも一部のための導電経路としての役割を果たすインプラントを提供し、かつ電流の一部を標的体内組織まで伝達するステップであって、インプラントが、
埋め込まれると、表面陰極電極または表面陽極電極のいずれかまたは両方の下方に位置する皮下組織から標的体内組織まで延在するために十分な長さの受動導体を備え、
導体が、ピックアップ端および刺激端を有し、かつその端部の間にわたって絶縁され(being insulated between its ends)、ピックアップ端が複数の導電性ピックアップ電極を有し、刺激端が複数の導電性刺激電極を有し、導電性ピックアップ電極の各々が、1つまたは複数の対応する導電性刺激電極と電気的に接続され、それにより、表面陰極電極または表面陽極電極のいずれかまたは両方を導電性ピックアップ電極のうちの1つの上に配置することにより、電流の一部が、導電性ピックアップ電極のうちの1つに電気的に接続された1つまたは複数の対応する導電性刺激電極に伝達される、ステップと、
c)導電性ピックアップ電極を皮下組織に配置し、導電性刺激電極を標的体内組織の近傍に(in the vicinity of the target body tissue)配置し、対応する導電性刺激電極のうちの1つまたは複数を標的体内組織に近接して(proximate to the target body tissue)配置して、インプラントを対象の皮膚の下に完全に埋め込むステップと、
d)表面陰極電極および表面陽極電極を対象の皮膚の上に間隔を空けた関係で配置するステップであって、表面陰極電極または表面陽極電極のいずれかまたは両方を、標的体内組織に近接する1つまたは複数の対応する導電性刺激電極に電気的に接続される導電性ピックアップ電極の上に配置し、それにより、電流の一部が、標的体内組織を刺激するために導体を通って1つまたは複数の対応する導電性刺激電極まで伝達される、ステップと、
e)表面陰極電極と表面陽極電極との間に、直流電流、脈動電流または交流電流を印加して、電流の一部が、標的体内組織を刺激するために十分、インプラント内を流れるようにする、ステップと、
を含む、方法を提供する。
【0009】
別の態様において、対象の標的体内組織を選択的かつ電気的に刺激するシステムであって、
i)対象の皮膚に電気を通すための表面陰極電極および表面陽極電極であって、対象の皮膚の上に間隔を空けた関係で配置されると、表面陰極電極と表面陽極電極との下方かつ間に位置する皮下組織に電流を伝達する、表面陰極電極および表面陽極電極と、
ii)表面陰極電極および表面陽極電極に電気的に接続された、対象の体外の刺激装置であって、表面陰極電極および表面陽極電極に電流を供給する、刺激装置と、
iii)表面陰極電極と表面陽極電極との間を流れる電流の一部をピックアップし、かつ電流の一部を標的体内組織に伝達するインプラントであって、
埋め込まれると、表面陰極電極または表面陽極電極のいずれかまたは両方の下方に位置する皮下組織から標的体内組織まで延在するために十分な長さの受動導体を備え、
導体が、ピックアップ端および刺激端を有し、かつその端部の間にわたって絶縁され、ピックアップ端が複数の導電性ピックアップ電極を有し、刺激端が複数の導電性刺激電極を有し、導電性ピックアップ電極の各々が、1つまたは複数の対応する導電性刺激電極に電気的に接続され、それによって、表面陰極電極または表面陽極電極のいずれかまたは両方を導電性ピックアップ電極のうちの1つの上に配置することにより、電流の一部が、導電性ピックアップ電極のうちの1つに電気的に接続された1つまたは複数の対応する導電性刺激電極に伝達される、インプラントと、
を備えるシステムを提供する。
【0010】
別の広い態様において、対象の体内に埋め込まれた1つまたは複数の電気デバイスに電流を送達する方法であって、
a)対象の皮膚に電気を通すために表面陰極電極および表面陽極電極を提供するステップと、
b)対象の皮膚の上に間隔を空けた関係で配置される表面陰極電極と表面陽極電極との間を流れる電流の少なくとも一部のための導電経路としての役割を果たすインプラントを提供し、かつ電流の一部を1つまたは複数の電気デバイスまで伝達するステップであって、インプラントが、
埋め込まれると、表面陰極電極または表面陽極電極のいずれかまたは両方の下方に位置する皮下組織から1つまたは複数の電気デバイスまで延在するために十分な長さの受動導体を備え、
導体が、ピックアップ端および送達端を有し、かつその端部の間にわたって絶縁され、ピックアップ端が、電流の十分な部分が導体を通って流れるのを可能にする十分な表面積を有する電気的終端を形成し、送達端が、電流の一部を1つまたは複数の電気デバイスに送達するための電気的終端を形成する、ステップと、
c)1つまたは複数の電気デバイスを提供するステップと、
d)ピックアップ端を表面陰極電極または表面陽極電極のいずれかまたは両方の下方に位置する皮下組織に配置して、インプラントを対象の皮膚の下に完全に埋め込むステップと、
e)1つまたは複数の電気デバイスを対象の皮膚の下に完全に埋め込むステップであって、1つまたは複数の電気デバイスが導体に沿って配置されるかまたはピックアップ端の電気的終端として形成され、1つまたは複数の電気デバイスが、導体に電気的に接続され、それにより電流が導体から1つまたは複数の電気デバイスに伝達される、ステップと、
f)表面陰極電極および表面陽極電極を対象の皮膚の上に間隔を空けた関係で配置するステップであって、表面陰極電極または表面陽極電極のいずれかまたは両方を導体のピックアップ端の上に配置し、そのため電流の一部が導体を通って1つまたは複数の電気デバイスに伝達され、かつ体内組織を通って表面陰極電極または表面陽極電極のいずれかまで戻る、ステップと、
g)表面陰極電極と表面陽極電極との間に、直流電流、脈動電流または交流電流を印加することにより、電流の一部が、1つまたは複数の電気デバイスに電流を送達するために十分、インプラントを流れるようにする、ステップと、
を含む、方法を提供する。
【0011】
別の態様において、対象の体内に埋め込まれた1つまたは複数の電気デバイスに電流を送達するシステムであって、
i)対象の皮膚に電気を通すための表面陰極電極および表面陽極電極であって、対象の皮膚の上に間隔を空けた関係で配置されると、表面陰極電極と表面陽極電極との下方にかつ間に位置する皮下組織に電流を伝達する、表面陰極電極および表面陽極電極と、
ii)表面陰極電極および表面陽極電極に電気的に接続された、対象の体外の刺激装置であって、表面陰極電極および表面陽極電極に電流を供給する、刺激装置と、
iii)表面陰極電極と表面陽極電極との間を流れる電流の一部をピックアップし、かつ電流のその部分を標的体内組織に伝達するインプラントであって、
埋め込まれると、表面陰極電極または表面陽極電極のいずれかまたは両方の下方に位置する皮下組織から1つまたは複数の電気デバイスまで延在するために十分な長さの受動導体を備え、
導体が、ピックアップ端および送達端を有し、かつその端部の間にわたって絶縁され、ピックアップ端が、表面陰極電極と表面陽極電極との間の体内組織内を流れる電流に優先して、印加されている電流の十分な部分が導体内を流れるのを可能にする、十分な表面積を有する電気的終端を形成し、それにより、1つまたは複数のデバイスに電流が供給され、送達端が、電流の一部を1つまたは複数のデバイスに送達するために1つまたは複数のデバイスとの電気的終端を形成する、インプラントと、
を備え、
iv)1つまたは複数の電気デバイスが、導体に電気的に接続され、それにより電流が導体から1つまたは複数の電気デバイスまで伝達される、
システムを提供する。
【0012】
別の広い態様において、対象の体外に位置する1つまたは複数の外部デバイスに標的体内組織から電気信号を送達する方法であって、
a)対象の皮膚に電気を通すために表面電極を提供するステップと、
b)標的体内組織からの電気信号のための導電経路としての役割を果たすインプラントを提供するステップであって、インプラントが、
埋め込まれると、対象の皮膚の上に配置された表面電極の下方に位置する皮下組織から標的体内組織まで延在するために十分な長さの受動導体を備え、
導体がピックアップ端および送達端を有し、かつその端部の間にわたって絶縁され、ピックアップ端が、標的体内組織からの電気信号が導体を通って流れるのを可能にする十分な表面積を有する電気的終端を形成し、送達端が、電気信号を1つまたは複数の電気デバイスに送達するための電気的終端を形成する、ステップと、
c)送達端を表面電極の下方に位置する皮下組織に配置し、ピックアップ端を標的体内組織に近接して配置して、インプラントを対象の皮膚の下に完全に埋め込むステップと、
d)表面電極を対象の皮膚の上に配置するステップであって、表面電極を導体の送達端の上に配置し、表面電極を1つまたは複数の外部デバイスに電気的に接続し、それにより標的体内組織からの電気信号が導体を通って1つまたは複数の外部デバイスまで伝達されるようにする、ステップと、
を含む、方法を提供する。
【0013】
別の態様において、標的体内組織からの電気信号を対象の体外に位置する1つまたは複数の外部デバイスに送達するシステムであって、
i)対象の皮膚に電気を通す少なくとも1つの表面電極と、
ii)標的体内組織からの電気信号をピックアップし、かつ電気信号を1つまたは複数の外部デバイスに伝送するインプラントであって、
埋め込まれると、少なくとも1つの表面陽極電極の下方に位置する皮下組織から標的体内組織まで延在するために十分な長さの受動導体を備え、
導体がピックアップ端および送達端を有し、かつその端部の間にわたって絶縁され、ピックアップ端が、標的体内組織からの信号が導体を通って流れるのを可能にする十分な表面積を有する電気的終端を形成し、送達端が、電気信号を1つまたは複数の電気デバイスに送達するための電気的終端を形成する、インプラントと、
を備える、システムを提供する。
【0014】
別の広い態様において、複数の標的体内組織を刺激する方法であって、
a)対象の皮膚に電気を通すために1つまたは複数の表面陰極電極および表面陽極電極を提供するステップと、
b)1つまたは複数の外部刺激装置を提供するステップであって、1つまたは複数の外部刺激装置が、対象の体外にあり、1つまたは複数の表面陰極電極および1つまたは複数の表面陽極電極に電気的に接続され、1つまたは複数の表面陰極電極および1つまたは複数の表面陽極電極に電流を供給する、ステップと、
c)複数の標的体内組織を独立してまたは一致して電気的に刺激するために複数のインプラントであって、各インプラントが、対象の皮膚の上に間隔を空けた関係で配置される1つまたは複数の表面陰極電極と1つまたは複数の表面陽極電極との間を流れる電流の少なくとも一部のための導電経路としての役割を果たす、インプラントを提供し、かつ電流の一部を複数の標的体内組織に伝達するステップであって、各インプラントが、
埋め込まれると、1つまたは複数の表面陰極電極または1つまたは複数の表面陽極電極のいずれかの下方に位置する皮下組織から複数の標的体内組織複数の標的体内組織まで延在するために十分な長さの受動導体を備え、
各導体が、ピックアップ端および刺激端を有し、かつその端部の間にわたって絶縁され、ピックアップ端が、標的体内組織が刺激されるように電流の十分な部分が導体内を流れるのを可能にする十分な表面積を有する電気的終端を形成し、刺激端が、電流の一部を標的体内組織に送達するための電気的終端を形成する、ステップと、
d)導体のピックアップ端を、1つまたは複数の表面陰極電極または1つまたは複数の表面陽極電極のいずれかまたは両方の下方に位置する皮下組織に配置し、刺激端を複数の標的体内組織に近接して配置して、複数のインプラントを対象の皮膚の下に完全に埋め込むステップと、
e)表面陰極電極および表面陽極電極を対象の皮膚の上に間隔を空けた関係で配置するステップであって、表面陰極電極または表面陽極電極のいずれかまたは両方を導体のピックアップ端の上に配置し、それにより、電流の一部が導体を通って複数の標的体内組織に伝達され、それにより電流が複数の標的体内組織内を流れ、かつ体内組織を通って表面陰極電極または表面陽極電極のいずれかに戻る、ステップと、
f)1つまたは複数の表面陰極電極と1つまたは複数の表面陽極電極との間に、直流電流、脈動電流または交流電流を印加することにより、電流の一部が、複数の標的体内組織を刺激するために十分、複数のインプラントを流れるようにするステップと、
を含む、方法を提供する。
【0015】
別の態様において、対象内の複数の標的体内組織を電気的に刺激するシステムであって、
i)対象の皮膚に電気を通すための表面陰極電極および表面陽極電極であって、対象の皮膚の上に間隔を空けた関係で配置されると、複数の標的体内組織に電流を伝達する、表面陰極電極および表面陽極電極と、
ii)表面陰極電極および表面陽極電極に電気的に接続された、対象の体外の刺激装置であって、表面陰極電極および表面陽極電極に、直流電流、脈動電流または交流電流を印加する、刺激装置と、
iii)表面陰極電極と表面陽極電極との間を流れる電流の一部をピックアップし、かつ電流のその部分を複数の標的体内組織に伝達する複数のインプラントであって、その各々が、
埋め込まれると、表面陰極電極または表面陽極電極のいずれかの下方に位置する皮下組織から標的体内組織まで延在するために十分な長さの受動導体を備え、
導体が、ピックアップ端および刺激端を有し、かつその端部の間にわたって絶縁され、ピックアップ端が、表面陰極電極と表面陽極電極との間の体内組織内を流れる電流に優先して、印加される電流の十分な部分が導体内を流れるのを可能にする十分な表面積を有する電気的終端を形成し、それにより標的体内組織が刺激され、刺激端が、電流の一部を標的体内組織に伝達するための電気的終端を形成する、インプラントと、
を備える、システムを提供する。
【0016】
概して、本明細書で使用する用語および句は、標準テキスト、論文誌および当業者には既知である文脈を参照することによって見つけることができる、それらの技術分野において理解される意味を有する。以下の定義は、本発明の文脈においてそれらの特定の使用を明確にするために提供する。
【0017】
「活性化する」とは、部分的にまたは完全に標的神経の軸索に沿って活動電位または神経インパルスの伝導または伝播を引き起こすことを言うように意図される。
【0018】
「生体適合性」は、意図された利用に対して望ましくない宿主反応がそれほど発生しないことを意味する。生体適合材料は意図された利用に対して無毒性であることがもっとも好ましい。このため、人間に利用する場合、生体適合性は、人間または人間の組織に対して無毒性であることがもっとも好ましい。
【0019】
「遮断する」は、部分的にまたは完全に標的神経の軸索に沿って活動電位または神経インパルスが伝導または伝播しないようにすることを言うように意図される。
【0020】
「体内組織」は、神経組織(末梢神経系または中枢神経系)、神経、筋肉(骨格筋、呼吸筋または心筋)もしくは器官、たとえば脳、蝸牛、視神経、心臓、膀胱、尿道、腎臓および骨を言うように意図される。
【0021】
「電気デバイス」は、電流によって電力が供給されるかまたは電気信号を処理するデバイスを意味する。
【0022】
「電気的に接続される」とは、電流の伝達を可能にするように接続されることを意味する。
【0023】
「電流」は、埋込み受動導体に抵抗的かつ容量的に結合される皮膚の表面に印加される電流を言うように意図され、埋込み受動導体はそれによって標的体内組織またはデバイスに電流を運ぶ。
【0024】
「近接する(proximate)」とは、標的体内組織と直接接触することを含む、標的体内組織を刺激するために十分接近した距離を意味する。
【0025】
「刺激する」とは、部分的にまたは完全に標的神経の軸索に沿って活動電位または神経インパルスの伝導または伝播を活性化するかまたは遮断するように標的神経を刺激することを意味する。
【0026】
「対象」は、人間を含む動物を意味する。
【0027】
「近傍(vicinity)」は、標的体内組織に近いが標的体内組織を刺激するためには十分近くない距離を意味する。
【0028】
本明細書においてマーカッシュグループまたは他のグループ化が使用される場合、グループの個々のメンバすべてならびにグループのあり得るすべてのコンビネーションおよびサブコンビネーションは、本開示において個々に含まれるように意図されている。明細書において範囲、たとえば温度範囲、時間範囲または組成範囲が与えられる場合はいつでも、中間の範囲および部分的な範囲は、与えられる範囲に含まれる個々の値すべてとともに、本開示に含まれるように意図されている。
【0029】
本明細書で使用する「具備する、備える」は、「含む」、「包含する」または「特徴とする」と同義であり、包括的であるかまたは幅広い解釈ができ(open−ended)、追加の列挙していない要素または方法ステップを排除しない。本明細書で使用する「〜からなる」は、特許請求の範囲の要素において指定されないいかなる要素、ステップまたは成分をも排除する。本明細書で使用する「本質的に〜からなる」は、特許請求の範囲の基本特性および新規な特性に実質的に影響しない材料またはステップを排除しない。本明細書において、特に組成物の成分の説明またはデバイスの要素の説明において「具備する、備える」という用語のいかなる列挙も、列挙される成分または要素から本質的に構成されかつ構成されるそれら組成物および方法を包含するように理解される。本明細書において例示的に説明する発明を、本明細書において特に開示していない1つまたは複数の任意の要素、1つまたは複数の任意の限定なしに実施してもよい。
【0030】
特許請求の範囲において要素の前に不定冠詞「a(或る、1つの)」を使用する場合、それは要素のうちの1つが指定されるが、文脈が要素のうちのただ1つしかないことを明らかに要求しない限り、存在する要素の他のものを特に排除しないことを意味する。
【0031】
採用した用語および表現は、限定の用語としてではなく説明の用語として使用されるものであり、かかる用語および表現を、示し説明する特徴またはその一部のいなかる等価物をも排除するように使用する意図はなく、請求項に記載される本発明の範囲内でさまざまな変更があり得ることが理解される。そのため、本発明を好ましい実施形態および任意の特徴によって特に開示しているが、本明細書で開示する概念の変更および変形は当業者によって行われ得るものであり、かかる変更および変形は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲内にあるものとみなされる、ということが理解されるべきである。
【0032】
本発明を、単に例としてかつ以下の図面を参照してさらに説明する。異なる図面において同様の参照番号を使用して同様の構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】埋込み導体、表面陰極電極および表面陽極電極、ならびに埋込み帰路導体を有する従来技術のルータシステムの略3次元図である。
【図2】ENG信号を取得するために皮下に埋め込まれた受動導体を示す略断面図である。
【図3】皮下に埋め込まれた受動導体と、埋込み電気デバイスの導体への組込みとを示す略断面図である。
【図4】皮下に埋め込まれた受動導体と、埋込み電気デバイスの導体との直列または並列の接続とを示す略断面図である。
【図5】皮下に埋め込まれた受動導体と、ENG検知デバイスの導体への組込みとを示す略断面図である。
【図6】皮下に埋め込まれた受動導体と、過刺激保護回路の導体への組込みとを示す略断面図である。
【図7】刺激およびデータを伝達する波形を示す概略図である。
【図8A】2つの表面陰極電極、2つの終端、および共通表面陽極電極を使用する、2つのチャネルを示す概略図である。
【図8B】単一パッチ、2チャネル表面電極を示す概略図である。
【図9A】同じ終端に接続されるいくつかの導体を示す概略図である。
【図9B】共通表面陰極電極下に配置される終端に接続されるいくつかの導体を示す概略図である。
【図10】皮下に埋め込まれた受動導体を示す略断面図であり、導体は、e1、e2およびe3として示し、かつ3つの導電性ピックアップ電極p1、p2およびp3に夫々接続される3つの導電性刺激電極を組み込んだリード線を有する。
【図11】皮下に埋め込まれた受動導体と、電流を、p3−e3経路を介して迂回させるように、表面陰極電極を導電性ピックアップ電極p3の上に配置することと、を示す略断面図である。
【図12A】皮下に埋め込まれた受動導体と、電流を刺激電極e3に迂回させるように、導電性ピックアップ電極p1およびp2を絶縁しかつ導電性ピックアップ電極p3を露出させることと、を示す略断面図である。
【図12B】皮下に埋め込まれた受動導体と、電流を刺激電極e2およびe3に迂回させるように、導電性ピックアップ電極p1を絶縁しかつ導電性ピックアップ電極p2およびp3を露出させることと、を示す略断面図である。
【図12C】皮下に埋め込まれた受動導体と、電流を導電性ピックアップ電極e1およびe3に迂回させるように、導電性ピックアップ電極p2を絶縁しかつ導電性ピックアップ電極p1およびp3を露出させることと、を示す略断面図である。
【図12D】皮下に埋め込まれかつ表面陰極電極と表面陽極電極との両方の下方に配置される受動導体を示す略断面図である。
【図12E】皮下に埋め込まれた2つの受動導体を示す略断面図であり、一方の導体は表面陰極電極の下方に配置され、他方の導体は表面陽極電極の下方に配置されていることを示す図である。
【図13】不揮発性メモリに基づく電子回路による導電性ピックアップ電極/刺激電極の無線選択を示す略図である。
【図14A】皮下に埋め込まれた受動導体と、導電性ピックアップ電極の分岐配置と、を示す略断面図である。
【図14B】トリミングに続く図14Aの導電性ピックアップ電極を示す略断面図である。
【図15A】導電性ピックアップ電極と3つの導電性刺激電極とを有するリード線を示す略図である。
【図15B】絶縁裏材を備えた導電性ピックアップコイル電極を有するリード線を示す略図である。
【図15C】導電性ピックアップ円形電極と3つの導電性刺激電極とを有するリード線を示す略図である。
【図15D】絶縁裏材を備えた導電性ピックアップ円形電極と3つの導電性刺激電極とを有するリード線を示す略図である。
【図15E】埋込み中に絶縁裏材が取り付けられる導電性ピックアップ電極を有するリード線を示す略図である。
【図16A】導電性刺激電極を備えたパドルと、直線に配置されたディスク形状導電性ピックアップ電極と、を有する「パドルタイプ」電極を示す略平面図である。
【図16B】導電性刺激電極を備えたパドルと、クラスタとして配置されたディスク形状導電性ピックアップ電極と、を有する「パドルタイプ」電極を示す略平面図である。
【図17A】絶縁材が皮下に埋め込まれた導電性ピックアップ電極を示す略断面図である。
【図17B】絶縁材が皮下に埋め込まれた導電性ピックアップ電極を示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
好適な実施形態の説明
本発明は、プロハースカ(Prochazka)による国際公開第2005/070494A1号パンフレット(2005年8月4日に公開、2004年1月22日に出願された米国仮特許出願第60/538,618号明細書に対する優先権を主張)と、ゴーント(Gaunto)およびプロハースカ(Prochazka)による2006年1月23日に出願された米国特許出願第11/337,824号明細書におい述べられているような「ルータシステム」の改良に関する。これら出願は、治療される症状に応じて神経インパルスを活性化するかまたは遮断する問題において神経等の標的体内組織を電気的に刺激するインプラントについて述べている。
【0035】
国際公開第2005/070494A1号パンフレットからの図1は、対象の皮膚10、神経12、神経鞘14および筋肉16を示す。インプラント18は、表面陰極電極20と表面陽極電極22との間を流れる電流の少なくとも一部のための導電経路を提供する。インプラント18は、埋め込まれると、表面陰極電極20の下方に位置する皮下組織から標的体内組織12まで延在するのに十分な長さの受動導体24を備える。導体は、ピックアップ端26と刺激端28とを有し、それらの一方または両方が、導体24のピックアップ端26および刺激端28と周囲の体内組織との間の界面の電気インピーダンスを低減する十分な表面積を有する電気的終端30を形成する。図1において、終端30は、神経12の周囲に配置される包囲カフ(embracing cuff)32の形態で示されている。任意の帰路導体34は、標的体内組織から表面陽極電極22までの低インピーダンス導電経路を提供し、それにより標的組織12内に電界が集中する。帰路導体34は収集端36と戻り端38とを有する。陰極ワイヤ42および陽極ワイヤ44は、電源(図示せず)によって動作電力が提供される外部刺激装置(図示せず)に接続される。インプラント18は、埋め込まれると、表面陰極電極20と表面陽極電極22との間を流れる電流の少なくとも一部のための導電経路を提供する。
【0036】
国際公開第2005/070494A1号パンフレットおよび米国特許出願第11/337,824号明細書では、ルータシステムは、神経インパルスを活性化するかまたは遮断する刺激が必要であるさまざまな症状に対して有益であるものとして述べられている。かかる症状には、運動障害(たとえば、痙性、筋緊張亢進、硬直、震顫および/または筋力低下、パーキンソン病、ジストニー、脳性麻痺)、筋肉障害(たとえば筋ジストロフィー)、失禁(たとえば膀胱障害)、尿閉、疼痛(たとえば偏頭痛、頸痛および背痛、他の病状からもたらされる疼痛)、癲癇(たとえば全身発作性疾患および局部発作性疾患)、脳血管障害(たとえば卒中、動脈瘤)、睡眠障害(たとえば睡眠時無呼吸)、自律神経障害(たとえば胃腸障害、心血管障害)、視覚障害、聴覚障害および平衡障害、ならびに神経精神障害(たとえば鬱病)があり得る。ルータシステムを、骨成長(たとえば骨折の治癒で必要であるように)、創傷治癒または組織再生を促進するために使用してもよい。
【0037】
本発明は、表1に記載する特定のカテゴリの状態に対するルータシステムの使用について考慮する。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
表1の状態のカテゴリは、広く、筋刺激(たとえば、機能/リハビリテーション刺激、疼痛または痙性の予防、整形外科回復)と、疼痛治療と、美容の用途と、に関する。機能/リハビリテーション刺激は、選択された筋肉を活性化することにより正常な活動を回復するよう試みる。機能/リハビリテーション刺激は、連続的(たとえば、切迫性尿失禁に適用されるように)であってもよく、または繰返し可能(たとえば横隔膜ペーシング、腕リハビリテーションおよび歩行制御に対して適用されるように)であってもよい。疼痛または痙性の予防には、疼痛を抑制するのではなく予防するための刺激印加が含まれる。整形外科回復には、萎縮を予防するための筋刺激または膝関節置換に関連するような処置後痛の予防が含まれる。身体の同じ領域に刺激してもよい。たとえば、神経根炎および腰痛はオーバラップし同じ刺激部位を有する可能性がある。美容用途には、美容上の改善に的を絞った電気刺激、たとえば筋肉を構築しピーク状態を維持する(たとえば、損傷のために通常の運動が中断されている場合)、末梢循環を維持する、肉離れの後に筋肉を緩和する、または出産の後に腹筋を引き締めるのを助ける電気刺激が含まれる。
【0042】
本発明は、ルータシステムを、後述するように、外部デバイスまたは埋込みデバイスのいずれかに、複数の標的体内組織に、そして選択的な標的体内組織に電気刺激を送達するために使用することができる、ということを考慮する。
【0043】
A.ルータシステムを使用する外部電気デバイスおよび埋込み電気デバイスへの電気エネルギーの送達
本発明は、電気エネルギーを、電流によって電力が供給されるかまたは電気信号を処理する1つまたは複数の電気デバイスに送達するために使用することができるルータシステムを考慮する。かかる電気デバイスの非限定例には、たとえば、センサ(たとえばENGセンサ、温度センサ、圧力センサ、pHセンサ、インピーダンスセンサおよび当業者には既知である他のセンサ)、増幅器、フィルタ、高電圧/定電流発生器、スイッチ、電源、電池、電池充電回路、小型充電式電池、プロセッサ、周波数シフタ、過刺激保護回路、通信モジュール(有線または無線)および当業者に既知である他の適当なデバイスが含まれ得る。かかる電気デバイスは、体外にあってもよく、または体内に埋め込まれてもよい。
【0044】
埋込み電気デバイスは、生体適合性を有しかつ非毒性であるか、または生体適合ケースに封入されることが好ましく、それにより意図された利用に対し望ましくない宿主反応がそれほど発生しない。たとえば、体内パラメータを評価する生体適合センサならびに前処理回路、通信回路および電源回路は、通常、体内に埋め込まれ、それにより、埋込み電気デバイス、たとえばセンサからの生データが体外のデバイス、たとえば、高性能のアルゴリズムと、埋込みデバイスに比較してより大きい処理能力、空間および出力要件と、を伴う後処理回路に送信される。
【0045】
i)ルータシステムの外部電気デバイスとの使用
ルータシステムを、体内の標的組織からの電気信号(単極信号および双極信号)(電気信号グラフィック(electroneurographic)またはENG信号)を外部電気デバイスに送達するために使用することができる。一例として、ENGは、標的組織または器官の完全性を、標的組織または器官の自発的な電気的活動を記録することにより、または刺激に対する電気的に被刺激性の組織または器官の反応を評価することにより検査する、一般的な非侵襲性試験である。さらなる例として、聴性脳幹反応(Auditory Brainstem Response)(ABR)試験は、内耳および脳幹を含む上部聴覚系に関する目的情報(objective information)を提供する。標的組織は、通常、神経、たとえば末梢神経か、または器官、たとえば神経によって刺激される特定の筋肉である。
【0046】
図2は、ENG信号を取得するルータシステムの使用を示す。2つの表面電極(たとえば、2つの表面陰極電極20aおよび表面陽極電極20b)が、2つの埋込み受動導体24aおよび24bの上に別々に配置されて示されている。導体24aは、神経12の第1点に近接して的が絞られているが、導体24bは同じ神経12の第2点に近接している。1つの表面基準電極(たとえば表面陽極電極22b)が皮膚10の上に配置される。
【0047】
導体24aおよび24bは、神経12の夫々第1点および第2点から電気信号を送達する。神経12の第1点および第2点の各々においてENG信号間の差を増幅させるために差動増幅器46が提供される。増幅された電気信号の測定は、後に、たとえばRMSメータ、ピークメータ、またはオシロスコープ、またはデジタルデータ取得システムによって実行される。差動増幅器46aは、第1点において信号を増幅し(ENG1)、差動増幅器46bは、第2点において信号を増幅する(ENG2)。別法として、ENG信号を、導体24と表面基準電極(たとえば表面陽極電極22)との間に接続された差動増幅器によって増幅させてもよい。
【0048】
ENG信号の信号対雑音比を、増幅器を埋め込むことによって向上させることができる。増幅器は、導体24aと導体24bとの間に埋め込まれかつ接続される。増幅器は、ENG信号を増幅し、その増幅信号を、導体24および終端30を介して外部表面電極20aと20bとの間に接続される外部信号取得デバイスに送達する。埋込み増幅器および追加の電子回路(たとえば、一続きの増幅器、帯域幅を当該信号のみに制限するバンドパスフィルタ、または電源ラインによって誘導される50Hzまたは60Hzが入らないようにするバンドストップフィルタ)に対する電力を、皮膚10内を通して閾値以下(sub-threshold)電流を送達する外部発生器によって供給することができる。
【0049】
さまざまな状態が、上述したように、たとえば胃の活動をモニタすること等、電気信号を体内の標的組織から送達するためにルータシステムを使用することを必要とする。胃の活動の電気パターンにおける振れは、種々の病理学的症状、たとえば胃排出時間が遅れていることを示すことができる。従来技術による手法は、外部電極によって電気的活動を記録することであり、それには、非標的器官からの電気雑音および電気信号にさらされるという欠点がある。本出願は、ルータシステムが胃の領域においてこれら信号をモニタする能力を向上させるために有用であることを考慮する。
【0050】
ii)ルータシステムの埋込み電気デバイスとの使用
本発明は、ルータシステムを、電流を1つまたは複数の埋込み電気デバイス48に送達するために使用することも可能である、ということを考慮する。この目的のために、埋込み受動導体24は、ピックアップ端26と送達端28(刺激端28自体ではなく)とを有する。ピックアップ端26は、電流の十分な部分が導体24内を流れるのを可能にする。送達端28は、電流を1つまたは複数の電気デバイス48に送達する。
【0051】
さらに、本発明は、ルータシステムを2つの目的、すなわち電流を1つまたは複数の埋込みデバイス48に送達し、かつ標的体内組織を刺激するために使用することができる、ということを考慮する。この目的のために、埋込み受動導体24は、ピックアップ端26である一端と、電流を1つまたは複数の埋込み電気デバイス48に送達するための送達端28と電流を標的体内組織に送達するための刺激端28との両方として作用する別端と、を有する。
【0052】
例示の目的のために、図3、図4、図5および図6において、導体24を、概略的に、表面陰極電極20の下に配置されているように示すが、当業者には、導体24を、表面陰極電極20または表面陽極電極22のいずれかまたは両方の下方に配置することができる、ということが理解されよう。
【0053】
埋込み電気デバイス48を、導体24に沿ったいずれの場所に配置してもよく、またはたとえばピックアップ端26の終端30の一部として形成してもよい。図3は、埋込み電気デバイス48をルータシステムに組み込む例としてのいくつかの手法を示す。外部刺激装置50は、終端30a、30b、30cによってピックアップされる閾値以下(または閾値を上回る)経皮電流を送達する。埋込みデバイス48を、終端30aの一部として構築してもよく(たとえばデバイス48a)、終端30bとは別個であるが隣接して構築してもよく(たとえばデバイス48b)、または終端30cとは別個にかつそれに対して遠隔に構築してもよい(たとえば、デバイス48cのように神経の近くに埋め込む)。
【0054】
図4に示すように、埋込み電気デバイス48を、デバイス48aの位置づけによって示すように、直列に接続することができる。外部刺激装置50は、表面陰極電極20に電流を提供し、その電流は終端30aに送達される。そして、終端30aによってピックアップされる電流(「It」として示す)は、デバイス48a内を流れ、導体24aおよび刺激端28aを流れて、標的体内組織、たとえば神経12内に送達される。電流は、体内組織および表面陽極電極22を通って外部刺激装置50まで戻る。別法として、デバイス48bの位置づけによって示すように、「並列」接続を使用してもよい。デバイス48bは、終端30bによってピックアップされる「It」電流の一部(「Ie」として示す)を消費する。帰路電流は、デバイス48bから体内組織を通って表面陽極電極22まで流れるように示されている。電流(It−Ieである「Is」として示す)は、導体24bを介して刺激端28bまで流れ、体内組織を通して表面陽極電極22まで戻る。
【0055】
さまざまな状態に、上述したように、体内の埋込みデバイスに電気信号を送達するためにルータシステムを使用することが必要である。たとえば、埋込み増幅器は、体内電気信号の取得の質を向上させることができる。電流は、増幅器に電力を供給するために送達される。必要な電流は、知覚または刺激を回避し、または測定されたENG信号との干渉を回避するために、たとえば1mA未満であり、皮膚を容易に通過するために50KHzより高い周波数とすることができる。
【0056】
一例として、図5は、標的組織、たとえば神経12からENG信号を取得するために埋込みデバイスに電気エネルギーを送達するためのルータシステムの使用を示す。概して48に示す埋込みデバイスは、電源52と、差動増幅器46と、周波数シフタ54と、基準電極56と、を含む。基準電極56は、刺激端28と組織内の別の場所に位置する基準電極とによってピックアップされる、基準電極56と神経12との間の電位差を、測定する役割を果たす。基準電極56を、刺激端28の数mmから数cmまでの距離内に配置することができる。外部刺激装置50は、たとえばENGの周波数外の周波数を有する正弦波信号であってもよい閾値以下信号を、電流を終端30に送達する表面陰極電極20に送達する。そして、終端30によってピックアップされる電流は、電源52によって整流され安定化される。皮膚の炎症、疼痛または局部筋萎縮をもたらすことなくエネルギーを組織内に送達するために、外部刺激装置50を使用して、高周波数、たとえば通常30〜50KHzを超える周波数の対称波形を送達する。電子回路、特に差動増幅器46に電力を供給するために、DC電流が必要である。電源52は、刺激装置50によってピックアップ電極30に伝達される電流を整流し、その後安定化して必要な電圧/電流を生成する。そして、電源52は、差動増幅器46に電力を送達する。差動増幅器46は、刺激端28によってピックアップされる神経信号12を増幅する。そして、増幅された信号は、外部陰極電極への終端30にフィードバックされる。
【0057】
特に、電流は、外部刺激装置50から表面陰極電極20へ、終端30への容量結合を介して流れ、電源52を介して電子回路、たとえば増幅器46まで流れ、導体24、刺激端28まで流れ続け、組織を通って表面陽極電極22、外部刺激装置50に戻る。当業者には、増幅器46および周波数シフタ54によって生成される信号を、同じ電流経路上で重畳することができる、ということが理解されよう。これら信号は測定を干渉しない。増幅されたENG信号を元のENG信号の周波数スペクトル外にシフトさせるために、任意に周波数シフタ54を提供することができ、それにより元のENG信号への干渉を回避することができるためである。本技術分野において、周波数シフト、たとえば振幅変調(信号が搬送波と混合され、それにより元の信号スペクトルが搬送波周波数の辺りにシフトする)、単側波帯変調(single side band modulation)(SSB)、周波数変調(FM)および位相変調(PM)を達成するいくつかの技法が知られている。信号を、そのアナログ形式で送信してもよく、またはデジタル符号化を使用して送信してもよい。増幅された信号を、アナログまたはデジタル処理技法を使用することによって処理してもよく、たとえば、増幅された信号を、外部フィルタ58によってフィルタリングし、元の周波数に戻るようにシフトさせ、さらなる処理のために出力してもよい。
【0058】
当業者には既知であるように、時分割を使用することができる。一タイムスロットにおいて、埋込みモジュールまたは記録デバイスにおいてENG信号を増幅して記録し、次のタイムスロットにおいて、記録された信号を、終端30を通して送信する。情報の無線送信もまた適用可能であり得る。
【0059】
さらなる例として、図6は、電気エネルギーを概して60に示す過刺激保護回路に送達するためのルータシステムの使用を示す。コントローラ62および電源52が、受動導体24に接続されて埋め込まれている。コントローラ62は、刺激端28を選択的に切断するためのスイッチ64を含む。切断を、たとえば、電流が事前定義された閾値を超過する場合に実行してもよい。別法として、外部デバイスを使用して、刺激端28を接続または切断するための信号を提供してもよい。電源52は、外部刺激装置50の通し番号またはコード番号を格納するために不揮発性メモリを組み込んでもよい。外部刺激装置50は数字を送信し、数字が格納された数字に一致する場合、刺激端28が接続され、一致しない場合、刺激端28が切断される。この手法により、無許可なまたは承認されていない外部刺激装置の使用が防止される。
【0060】
さらなる一例として、ルータシステムを使用して、埋込みバッテリを充電するための電気エネルギーを送達することができる。たとえば、小型埋込み式刺激装置を、この手法を使用して充電することができる。
【0061】
刺激およびデータの両方を伝達する可能性のうちの1つを図7に示す。あり得る一手法は、連続した刺激の間にデータを伝送するというものである。データは、たとえば、閾値以下正弦波を変調することによって送信される。この例では振幅変調を示すが、別法として他のさまざまな変調技法を使用することができる。
【0062】
B.ルータシステムを使用する複数の標的体内組織の刺激
国際公開第2005/070494A1号パンフレットおよび米国特許出願第11/337,824号明細書は、2つ以上の標的体内組織を、神経インパルスを活性化することとは独立してまたはそれと一致して電気的に刺激するために複数のインプラントを含むものとして、ルータシステムの一実施形態について述べている。複数のインプラントが存在するためには、異なる標的体内組織を独立してまたは一致して刺激するために、複数の表面陰極電極と1つまたは複数の表面陽極電極とを、インプラントに対して適当に配置する必要がある。1つまたは複数の外部刺激装置が必要である。本発明は、後述するようないくつかの構成を考慮する。
【0063】
例示の目的で、図8A、図9Aおよび図9Bおいて、導体24を、表面陰極電極20の下に配置されているように概略的に示すが、当業者には、導体24を、表面陰極電極20または表面陽極電極22のいずれかまたは両方の下方に配置してもよい、ということが理解されよう。
【0064】
a)1つの表面陽極電極22を共有する複数の表面陰極電極20と1つまたは複数の外部刺激装置50とを使用することができる。
この構成では、各表面陰極電極20a、20bを、異なる標的体内組織12a、12bまで延在する別個の埋込み受動導体24a、24bの上に配置する。各導体24a、24bは、そのピックアップ端26a、26bにおいて電気的終端30a、30bを形成し、複数の表面陰極電極20a、20bと1つの陽極電極22との間に流れる電流の少なくとも一部のための導電経路を提供する。各表面陰極電極20a、20bを、別個の刺激装置50a、50bに接続してもよく(すなわち、図8Aに示すように2つの別個のチャネルを形成する)、または単一の多チャネル刺激装置50に接続してもよい(たとえば、図8Bに示すように導電性材料65上に配置された単一パッチ、2チャネル表面電極)。表面陽極電極22を、別個の刺激装置50a、50bの各々に接続してもよく、または単一の多チャネル刺激装置50に接続してもよい。
【0065】
b)1つの外部刺激装置50を共有する1つの表面陰極電極20および1つの表面陽極電極22を使用することができる。
この構成では、表面陰極電極20を、2つ以上の別個の埋込み受動導体24a、24b、24cが任意の適当な手段、たとえば圧着接続67によるかまたは溶接によって接続される2つ以上の終端30の上に配置する(図9A)。代替構成では、表面陰極電極20を、2つ以上の導体24a、24bに電流を提供するために2つ以上の別個の終端30a、30bの上に配置してもよい(図9B)。
【0066】
c)分割表面陰極電極
表面陰極電極20および刺激のあり得る位置ずれを補償するために、表面陰極電極20を切片に分割してもよく、各切片は、スイッチングマトリクスによって外部刺激装置50に個々に接続される。スイッチは、手動でまたはコントローラによって操作される。それにより、電気刺激は、導体24の終端30の上方に配置される表面陰極電極20の領域に主に送達される。当業者には、最適な刺激を送達するために、たとえばインピーダンスが最低である切片を選択することにより、適当なアルゴリズムを確定することができる、ということが理解されよう。この構成は、導体24との位置合せをより容易にし、電流を伝導する皮膚表面10をより小さくし、複数の導体24が存在する場合に刺激を平衡させる方法(a way of balancing stimulation)を提供する。
【0067】
刺激部位、たとえば背中が、容易にアクセス可能でない可能性がある状況が発生する場合がある。解決法は、アクセス可能な場所に終端30を埋め込み、標的体内組織までリード線を通す、というものである。刺激部位を、集中させてもよく(すなわち、標的体内組織に隣接して)、または分散させてもよい(すなわち、いかなる特定の標的体内組織にも隣接しない)。
【0068】
上記構成には、表面陰極電極20および表面陽極電極22に電流を供給するために1つまたは複数の外部刺激装置50が必要である。適当な外部刺激装置50には、電極20、22に接続された外部刺激装置50、電極20、22に取り付けられかつ電源を含む携帯刺激装置50、または遠隔制御によって制御される携帯刺激装置50がある。
【0069】
外部刺激装置50を、単に、陰極ワイヤ42および陽極ワイヤ44によって、皮膚10上に配置された表面陰極電極20および表面陽極電極22に接続することができる(図1に示すように)。しかしながら、電極20、22の取付けは困難である可能性があり、電極20、22の個々の配置と電極20、22の刺激装置50への個々の接続とが必要である。手の届かない身体部分、たとえば肩部において、極めて不都合である可能性がある。さらに、刺激装置50のサイズが対象の可動性を制限する可能性がある。刺激の期間が限られている必要のある用途に対して許容可能であるが、他の用途には制限がある可能性がある。
【0070】
別法として、陰極電極20および陽極電極22と表示ボタンおよび制御ボタンとを含む携帯刺激装置50を使用することができる。しかしながら、刺激装置の制御ボタンおよび表示ボタンへのアクセスは、不便でありかつ/または制限される可能性がある。たとえば、肩に配置される場合、かかる表示ボタンおよび制御ボタンにアクセスすることができなくなる。携帯刺激装置50は、限定されないが多用途電極と、限られたユーザインタフェース(オン/オフLED)と、表示機能および制御機能を有するリモートコントロールユニットと、を含む。しかしながら、このセットアップには、リモートコントロールの形態の追加のデバイスと、追加の規制態様(additional regulatory aspects)(たとえば、FCC、欧州無線規制)と、が必要である。いくつかの刺激装置50を制御する1つのリモートユニットを使用することができるが、それには、より複雑な通信プロトコルと、異なるユーザ間の衝突を防止するために各刺激装置50に対して一意のIDとが必要である可能性がある。
【0071】
たとえば肩の上において表面陰極電極20および表面陽極電極22の位置決めが困難であることを、可撓性衣服または剛性装具(a flexible garment or a rigid orthosis)を使用することによって克服することができる。非限定的な例には、刺激装置が埋め込まれる手袋を備えるT−CUFF(登録商標)(アルバータ大学のプロハースカ(Prochazka,University of Alberta))と、ワイヤによって接続される埋込み電極および刺激装置を有する剛性装具を備えるNESS H200(登録商標)(イスラエルのネス社(NESS Ltd.,Israel))と、がある。
【0072】
さまざまな状態において、上述したように複数の標的体内組織に電気信号を送達するためにルータシステムを使用することが必要である。たとえば、腕のリハビリテーションでは、一般に、屈筋および伸筋の選択的動作が必要である。屈筋および伸筋を活性化するピックアップ電極20を、前腕の皮膚10の下に配置することができる。活性化を、屈筋と伸筋との間で交互に数秒間、200μ秒時間のパルスを、30パルス/秒で印加することによって達成してもよい。
【0073】
C.体内組織を選択的に刺激するためのルータシステムの使用
上述したように複数の標的体内組織を刺激するためにルータシステムを使用することができるが、特定の体内組織に対し他の体内組織より大きい刺激が必要である場合もある。たとえば、疼痛治療のための皮下刺激において、疼痛の領域全体を刺激することが必要である場合もある。本発明は、電流を選択的に送達するためにルータシステムを使用することができることをさらに考慮する。
【0074】
受動導体24を、ピックアップ端26および刺激端28を有するリード線66から形成することができる(たとえば、図10に示すように)。ピックアップ端26は、1つまたは複数の導電性ピックアップ電極68を備えてもよく、刺激端28は、1つまたは複数の導電性刺激電極70を備えてもよい。リード線66上の導電性刺激電極70は、通常最適なサイズを有する。導電性刺激電極70が小さすぎる、たとえば10mm未満の表面積を有する場合、導電性刺激電極70と標的体内組織12との間の伝達インピーダンスは高くなりすぎる。導電性刺激電極70が大きすぎる、たとえば50〜60mmを超える場合、導電性刺激電極70によって送達される電流密度は、標的体内組織、たとえば神経12を活性化するためには小さくなりすぎる。導電性刺激電極70の最適な長さは、通常数mm、好ましくは3〜4mmであり、約20mmの面積を有する。それは、一般に、標的神経の近傍に、好ましくは1〜3mm、より好ましくは1mm以下に配置される。埋込みの制約および機械的な神経損傷の問題のために、導電性刺激電極70は、一般に、神経に接触しないように配置される。そうでない場合、必要な刺激レベルは高くなりすぎ、望ましくない知覚および/または局部筋萎縮がもたらされる。
【0075】
かかるリード線66を正確に挿入することが困難であるため、解決法は、電極68、70のアレイを埋めこみ、電極68、70を所望の位置で活性化するか、または「電流ステアリング」として知られる、刺激の最適な送達をもたらす電極68、70の組合せを埋め込むというものである。リード線66の埋込み中または埋込みの後に異なるピックアップ電極68または刺激電極70を選択する能力は有益である可能性があり、たとえば、刺激端28または標的組織が体内で移動し、選択された刺激電極70がすでに標的体内組織の近傍にない場合、またはピックアップ電極68と刺激電極70との間のいずれかのワイヤが破損した場合である。
【0076】
図10(パネルA)は、e1、e2およびe3として示す3つの導電性刺激電極70と、夫々p1、p2およびp3として示す3つの導電性ピックアップ電極68と、を組み込んだリード線66を備える、埋込み受動導体24を示す。図10(パネルB)は、各導電性ピックアップ電極68が対応する導電性刺激電極70を有することを示す。別法として、各導電性ピックアップ電極68は、2つ以上の対応する導電性刺激電極70を有してもよい。導電性刺激電極e3は、標的体内組織(すなわち神経12)の最も近くに配置される。表面陰極電極20は、皮膚10の導電性ピックアップ電極「p1」の上方に配置される。表面陰極電極20に提供される電流は、「p1」および「e1」を通って表面陽極電極22まで流れる(e1は、導電性ピックアップ電極p1に対して対応する導電性刺激電極である)。このため、電流の大部分は、神経12に送達されない。しかしながら、図11に示すように、導電性ピックアップ電極p3の上に表面陰極電極20を配置することにより、電流がp3−e3経路を介して迂回し(divert)、電流が神経12の近傍を通過して刺激が提供される(e3は、導電性ピックアップ電極p3に対して対応する導電性刺激電極である)。
【0077】
導電性ピックアップ電極68上への表面陰極電極20の配置を簡略化するために、表面陰極電極20を、1つまたは複数の導電性ピックアップ電極68にオーバラップするようなサイズにすることができるが、電流の送達の的が絞られなくなる可能性がある。さらに、1つまたは複数の導電性ピックアップ電極68を露出させる一方で、残りの導電性ピックアップ電極68を、1回使い切り、または取外し可能かつ再取付可能な電気的絶縁層によって絶縁する。絶縁層を、取付けプロセス(すなわち、いずれの導電性ピックアップ電極68および導電性刺激電極70が、標的体内組織に刺激を送達するために最も効率的であるかの試験)中に引っ掻くか、切断するか、または溶解してもよい。別法として、適当な手段、たとえば、電流が流れないようにする絶縁を提供するために導電性ピックアップ電極68上を摺動可能であるか、または導電性ピックアップ電極68を露出させそれにより電流の流れを受け取るように、取外し可能でありかつ再取付け可能である、スリーブにより、絶縁層を、導電性ピックアップ電極68から取り外しかつ再度取り付けることができる。
【0078】
図12Aは、絶縁される導電性ピックアップ電極p1およびp2と、露出される導電性ピックアップ電極p3と、を示す。電流は後に、神経12の近傍に配置される導電性刺激電極e3に迂回する(e3は、導電性ピックアップ電極p3に対し対応する導電性刺激電極である)。図12Bは、導電性刺激電極e2とe3との間に配置される神経12を示す。導電性ピックアップ電極p1の絶縁と導電性ピックアップ電極p2およびp3の露出とにより、電流が導電性刺激電極e2およびe3に迂回し、それにより神経12を刺激する。
【0079】
さらなる態様では、図12Cは、2つの神経12a、12bを示し、導電性刺激電極e3が一方の神経12aに配置され、導電性刺激電極e1が他方の神経12bに配置される。導電性ピックアップ端p2は絶縁され、導線性ピックアップ電極p1およびp3は露出される。電流は、電流を夫々導電性ピックアップ電極e1およびe3に送達する導電性ピックアップ電極p1およびp3に迂回して、それにより神経12a、12bを刺激する。
【0080】
例示の目的で、図10、図11、図12A、図12Bおよび図12Cにおいて、導体24を、表面陰極電極20の下に配置されているように概略的に示すが、当業者には、導体24を表面陰極電極20または表面陽極電極22のいずれかまたは両方の下方に配置してもよい、ということが理解されよう。たとえば、図12Dは、p1、p2およびp3として示す3つの導電性ピックアップ電極68と、夫々e1、e2およびe3として示す3つの導電性刺激電極70とを組み込んだリード線66を有する埋込み受動導体24を示す。リード線66の導電性ピックアップ電極68は、表面陰極電極20および表面陽極電極22の両方の下方に配置される。導電性ピックアップ電極p1は、表面陰極電極20の下方に配置され、導電性ピックアップ電極p3は、表面陽極電極22の下方に配置される(e1は、導電性ピックアップ電極p1に対応する導電性刺激電極であり、e3は、導電性ピックアップ電極p3に対応する導電性刺激電極である)。
【0081】
図12Eは、2つの埋込み受動導体24a、24bを示す。導体24aは、p1、p2およびp3として示す3つの導電性ピックアップ電極68aと、夫々e1、e2およびe3として示す3つの導電性刺激電極70aと、を組み込んだリード線66aを有する。導体24aは、表面陰極電極20の下方に配置され、導電性ピックアップ電極p3は表面陰極電極20の下方に位置する(e3は、導電性ピックアップ電極p3に対し対応する導電性刺激電極である)。導体24bは、p4およびp5として示す2つの導電性ピックアップ電極68bと、夫々e4およびe5として示す2つの導電性刺激電極79bと、を組み込んだリード線66bを有する。導体24bは、表面陽極電極22の下方に配置され、導電性ピックアップ電極p4は表面陽極電極22の下方に位置する(e4は、導電性ピックアップ電極p4に対し対応する導電性刺激電極である)。
【0082】
さらなる態様では、導電性ピックアップ電極68および導電性刺激電極70の無線または有線選択を、たとえば不揮発性メモリ72(図13)に基づく電子回路を含めることによって達成することができる。電流は、導電性ピックアップ電極(p1、p2、p3、p4)によってピックアップされ、埋込み電極52内を通過することにより不揮発性メモリ72を動作させる。不揮発性メモリ72の出力は、導電性ピックアップ電極(p1、p2、p3、p4)と導電性刺激電極(e1、e2、e3、d4)との間の電流の経路を使用可能または不能にするスイッチ(T1、T2、T3、T4)を駆動する。導電性ピックアップ電極68によってピックアップされる事前定義されたパターンは、異なるパターンの導電性刺激電極70を選択することができるように不揮発性メモリ72を変更するようプログラミング回路74を起動する。
【0083】
別法として、形状記憶合金(SMA)に基づくスイッチングマトリクスを使用することができる。SMAは、その幾何学形状を記憶する金属である。SMAのサンプルは、その元の形態から変形した後、特定の閾値を上回る温度に露出されると、加熱中にそれ自体でその元の幾何学形状を回復する。SMA接点を加熱することにより、それはその形状を変化させ、刺激電極を切断する。たとえば、SMAは、体温を5℃上回る温度まで加熱されるとその形状を変化させ、体温を5℃下回る温度まで冷却されるまでこの新たな形状を維持する。たとえば超音波ビームによって実行される経皮加熱は、ONからOFFへの切換えに基づいてSMAを操作することができる。SMAの非限定的な例には、銅・亜鉛・アルミニウム合金、銅・アルミニウム・ニッケル合金およびニッケル・チタン合金がある。
【0084】
導電性ピックアップ電極68および導電性刺激電極70の試験を、たとえば埋込み中に行ってもよい。標的体内組織における導電性刺激電極70の埋込みの後、導電性ピックアップ電極68は依然として経皮的に突出する。導電性ピックアップ電極68を外部刺激装置50に直接接続することができ、最良の導電性ピックアップ電極68を選択してもよい。外部刺激装置50を、(たとえばクランプにより)或る導電性ピックアップ電極かまたは電極の組合せに接続する。反応を観測する。たとえば、運動点刺激の場合、最低活性化閾値をもたらす組合せを選択してもよい。さらなる一例として、疼痛治療の場合、患者反応を検査する。刺激がひりひりする感覚をもたらし疼痛が消える場合、それは成果をもたらす電極の組合せであることを示す。
【0085】
ピックアップ電極68を選択する一方法は、表面電極(たとえば表面陰極電極20)を特定の埋込みピックアップ電極(たとえば図14Aに示すようなピックアップ電極p3)の上に配置するというものである。別法として、使用されていない電極を、埋込みおよび取付け手続き中にトリミングしてもよい(図14B)。
【0086】
上述した「電流ステアリング」および本明細書で説明する他の用途に対して有用なリード線66の非限定的な例を、図15A乃至図15Eに示す。図15Aは、導電性ピックアップ電極68および3つの導電性刺激電極70を有するリード線66を示す。ピックアップ端26の効力を向上させるために、絶縁裏材76を導電性ピックアップ電極68に取り付けてもよい。適当な絶縁裏材76には、たとえば、シリコーン、ダクロン(Dacron)(登録商標)(インビスタ社(Invista,Inc))等のポリエステル繊維または他の適当な生体適合材料があり得る。図15Bは、絶縁裏材76を備えた導電性ピックアップコイル電極68を有するリード線66を示す。図15Cは、導電性ピックアップ円形電極68および3つの導電性刺激電極70を有するリード線66を示し、図15Dは、絶縁裏材76を備えた導電性ピックアップ円形電極68および3つの導電性刺激電極70を示す。図15Eは、たとえば埋込み中に同様に絶縁裏材76を取り付けることができる導電性ピックアップ電極68を有するリード線66を示す。
【0087】
リード線66のさらなる非限定的な一例は、シース(sheath)に封入された二重螺旋リード線である。二重螺旋、アンカおよび他の部品の構成は、メンバーグ(Memberg)他(1994)によって記載されているものと同様である。メンバーグ(Memberg)他(1994)は、シースに封入された二重螺旋を含むリード線について述べている。二重螺旋は分離され、非絶縁ワイヤが、アンカが取り付けられる刺激端に巻き戻される。同様に、アンカなしの電極が単一ピックアップ端電極としての役割を果たしてもよい。本発明の目的のために、メンバーグ(Memberg)他(1994)のリード線を変更してもよい。ピックアップ端26において、二重螺旋を分離し、ワイヤを巻き戻すことにより、2つの別個の導電性ピックアップ電極68を形成する。同様に、刺激端28において、二重螺旋を分離し、ワイヤを巻き戻すことにより2つの別個の導電性刺激電極70を形成する。別法として、二重螺旋を分離し、ワイヤを別々に巻き戻すことにより2つの別個の導電性ピックアップ電極68と2つの別個の導電性刺激電極70とを形成する。任意に、導電性刺激電極70を適所に固定するために、刺激端28においてアンカ形状の歯(tine)を形成してもよい。
【0088】
別法として、市販の多電極リード線66を、適合するコネクタを介して導電性ピックアップ電極68のアレイに接続してもよい。非限定的な例には、Axxess 3/6リード(米国のアドバンスド・ニューロモデュレーション・システムズ社(Advanced Neuromodulation Systems Inc.(USA))かまたはTOタイプリード(ドイツ、Dr.オスピカ、GmbHメディツィンテクニック(Dr.Osypka,GmbH Medizintechnik(Germany))がある。
【0089】
非導電性基板上にクラスタとして配置される複数の導電性刺激電極70と、リード線66と、直線にまたはクラスタとして配置される複数の導電性ピックアップ電極68と、を含むインプラントを使用してもよい。たとえば、図16Aおよび図16Bは、導電性ピックアップ電極68および導電性刺激電極70の両方を組み込んだ「パドルタイプ」電極78を示す。図16Aは、導電性刺激電極70を備えたパドル80と、直線に配置されたディスク形状導電性ピックアップ電極68と、を有する、「パドルタイプ」電極78示す。図16Bは、クラスタとして配置されたディスク形状導電性ピックアップ電極68を有する「パドルタイプ」電極78を示す。特定の構成の利点は、電極によってカバーされるべき領域のサイズおよび形状によって決まる。
【0090】
任意に、絶縁材料82によって表面および周辺部が覆われる導電性ピックアップ電極68が有益である。表面陰極電極20からの電流は、導電性ピックアップ電極68の周辺部から組織内に「漏れる」可能性がある(「lescape」として示す漏れ電流)(図17A)。この電流の皮膚10を通る経路は短い可能性があり(「d」として示す)、そのため経路の抵抗は小さい可能性がある。導電性ピックアップ電極68の径が大きいほど、周辺面積が大きくなることが知られている。この現象は、より大きい径の導電性ピックアップ電極68に対する改善された経皮送達に対して作用し、それを無効にする可能性がある。「lescape」を減ずるために、皮膚10の厚さと同様の距離を覆うように導電性ピックアップ電極68の周辺部を覆うために、絶縁材料82を施してもよい(図17B)。別法として、絶縁材料82を、導電性ピックアップ電極68の下方に配置しそれを越えて延在させてもよい。適当な絶縁材料82には、たとえば、シリコーン、ダクロン(Dacron)(登録商標)(インビスタ社(Invista,Inc))等のポリエステル繊維または他の適当な生体適合材料があり得る。この構成では、表面陰極電極20の径は少なくとも10mmであることが好ましい。導電性ピックアップ電極68の径は少なくとも16mmであることが好ましい。導電性ピックアップ電極68は、その周辺部がたとえば少なくとも3mmの絶縁材料82で覆われる。
【0091】
当業者は、本明細書で説明した発明に対し、特に説明したもの以外の変形および変更が可能である、ということを理解するであろう。本発明は、かかる変形および変更のすべてを含むということが理解されるべきである。本発明はまた、本明細書において言及されるかまたは示されるステップ、特徴、組成物および合成物のすべてを個々にまたは集合的に、かつ前記ステップまたは特徴のうちの任意の2つ以上の任意の組合せおよびすべての組合せを包含する。
【0092】
本明細書で列挙したすべての参考文献は、本明細書と矛盾しない範囲で参照によりその開示内容がすべて本明細書に援用される。
【0093】
参考文献
Gan, L., Bornes, T., Denington, A. and Prochazka, A. (2005) The stimulus router: a novel means of directing current from surface electrodes to nerves. IFESS 2005 Conference Proceedings, pp. 21-23
Memberg W.D., Peckham P.H, Keith M.W. (June 1994) A surgically implanted intramuscular electrode for an implantable neuromuscular stimulation system
IEEE Transactions on Rehabilitation Engineering 2(2): 80-91
Prochazka, A. (2004) Neural Prosthesis Program Meeting, NIH Meeting, November 2004
【0094】
特許文献
Gaunt, R.A. and Prochazka, A. Method of routing electrical current to bodily tissues via implanted passive conductors. 米国特許出願第11/337,824号明細書、2006年1月23日出願
Prochazka, A., Wieler, M., Kenwell, Z.R., Gauthier, M.J.A. (1996) Garment for applying controlled electrical stimulation to restore motor function.米国特許第5,562,707号明細書、1996年10月8日出願
Prochazka, A. Method and apparatus for controlling a device or process with vibrations generated by tooth clicks.国際公開第2004/034937号パンフレット、2003年10月16日公開
Prochazka, A. Method of routing electrical current to bodily tissues via implanted passive conductors.国際公開第2005/070494A1号パンフレット、2005年8月4日公開
Prochazka, A. Method and apparatus for controlling a device or process with vibrations generated by tooth clicks.米国特許第6,961,623号明細書、2005年11月1日発行

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の標的体内組織を選択的かつ電気的に刺激する方法であって、
a)該対象の皮膚に電気を通すために表面陰極電極および表面陽極電極を提供するステップと、
b)該対象の皮膚の上に間隔を空けた関係で配置される該表面陰極電極と該表面陽極電極との間を流れる電流の少なくとも一部のための導電経路としての役割を果たすインプラントを提供し、かつ該電流の該一部を該標的体内組織まで伝達するステップであって、該インプラントが、
埋め込まれると、該表面陰極電極または該表面陽極電極のいずれかまたは両方の下方に位置する皮下組織から該標的体内組織まで延在するために十分な長さの受動導体を備え、
該導体が、ピックアップ端および刺激端を有し、かつその端部の間にわたって絶縁され、該ピックアップ端が複数の導電性ピックアップ電極を有し、該刺激端が複数の導電性刺激電極を有し、
該導電性ピックアップ電極の各々が、1つまたは複数の対応する導電性刺激電極と電気的に接続され、それにより、該表面陰極電極または該表面陽極電極のいずれかまたは両方を該導電性ピックアップ電極のうちの1つの上に配置することにより、該電流の該一部が、該導電性ピックアップ電極のうちの該1つに電気的に接続された該1つまたは複数の対応する導電性刺激電極に伝達される、ステップと、
c)該導電性ピックアップ電極を該皮下組織に配置し、該導電性刺激電極を該標的体内組織の近傍に配置し、該対応する導電性刺激電極のうちの1つまたは複数を該標的体内組織に近接して配置して、該インプラントを該対象の皮膚の下に完全に埋め込むステップと、
d)該表面陰極電極および該表面陽極電極を該対象の皮膚の上に間隔を空けた関係で配置するステップであって、該表面陰極電極または該表面陽極電極のいずれかまたは両方を、該標的体内組織に近接する該1つまたは複数の対応する導電性刺激電極に電気的に接続される該導電性ピックアップ電極の上に配置し、それにより、該電流の該一部が、該標的体内組織を刺激するために該導体を通って該1つまたは複数の対応する導電性刺激電極まで伝達される、ステップと、
e)該表面陰極電極と該表面陽極電極との間に直流電流、脈動電流または交流電流を印加して、該電流の該一部が、該標的体内組織を刺激するために十分、該インプラント内を流れるようにする、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記導体の前記ピックアップ端が、前記表面陰極電極の下方に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記導電性ピックアップ電極の少なくとも一つを絶縁するステップであって、それにより該絶縁された導電性ピックアップ電極に電流が流れないようにし、かつ該電流が該導電性ピックアップ電極の別の方に迂回するようにする、ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記導電性ピックアップ電極の下方で該導電性ピックアップ電極を絶縁するステップであって、それにより下にある皮下組織への電流の流れを制限する、ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記表面陰極電極または前記表面陽極電極のいずれかが、2つ以上の標的体内組織を刺激するために2つ以上の導電性ピックアップ電極の上に配置されるような寸法である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記導電性ピックアップ電極が分岐構成で配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記インプラントが、非導電性基板上にクラスタとして配置される前記複数の導電性刺激電極と、直線にまたはクラスタとして配置される前記複数の導電性ピックアップ電極と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記標的体内組織が、末梢神経系または中枢神経系における神経組織か、もしくは神経から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記標的体内組織が、機能またはリハビリテーション、運動、整形外科回復、全身疼痛、頭痛および頸痛、腹痛、背痛、四肢痛または美容の用途のカテゴリから選択される状態を処置するように刺激される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
対象の標的体内組織を選択的かつ電気的に刺激するシステムであって、
i)該対象の皮膚に電気を通すための表面陰極電極および表面陽極電極であって、該対象の皮膚の上に間隔を空けた関係で配置されると、該表面陰極電極と該表面陽極電極との下方にかつ間に位置する皮下組織に電流を伝達する、表面陰極電極および表面陽極電極と、
ii)該表面陰極電極および該表面陽極電極に電気的に接続された、該対象の体外の刺激装置であって、該表面陰極電極および該表面陽極電極に電流を供給する、刺激装置と、
iii)該表面陰極電極と該表面陽極電極との間を流れる該電流の一部をピックアップし、かつ該電流の該一部を該標的体内組織に伝達するインプラントであって、
埋め込まれると、該表面陰極電極または該表面陽極電極のいずれかまたは両方の下方に位置する皮下組織から該標的体内組織まで延在するために十分な長さの受動導体を備え、
該導体が、ピックアップ端および刺激端を有し、かつその端部の間にわたって絶縁され、該ピックアップ端が複数の導電性ピックアップ電極を有し、該刺激端が複数の導電性刺激電極を有し、
該導電性ピックアップ電極の各々が、1つまたは複数の対応する導電性刺激電極に電気的に接続され、それによって、該表面陰極電極または該表面陽極電極のいずれかまたは両方を該導電性ピックアップ電極のうちの1つに上に配置することにより、該電流の該一部が、該導電性ピックアップ電極のうちの該1つに電気的に接続された該1つまたは複数の対応する導電性刺激電極に伝達される、インプラントと、
を具備する、システム。
【請求項11】
対象の体内に埋め込まれた1つまたは複数の電気デバイスに電流を送達する方法であって、
a)該対象の皮膚に電気を通すために表面陰極電極および表面陽極電極を提供するステップと、
b)該対象の皮膚の上に間隔を空けた関係で配置される該表面陰極電極と該表面陽極電極との間を流れる該電流の少なくとも一部のための導電経路としての役割を果たすインプラントを提供し、かつ該電流の該一部を該1つまたは複数の電気デバイスまで伝達するステップであって、該インプラントが、
埋め込まれると、該表面陰極電極または該表面陽極電極のいずれかまたは両方の下方に位置する皮下組織から該1つまたは複数の電気デバイスまで延在するために十分な長さの受動導体を備え、
該導体が、ピックアップ端および送達端を有し、かつその端部の間にわたって絶縁され、該ピックアップ端が、該電流の十分な部分が該導体を通って流れるのを可能にする十分な表面積を有する電気的終端を形成し、該送達端が、該電流の該一部を該1つまたは複数の電気デバイスに送達するための電気的終端を形成する、ステップと、
c)該1つまたは複数の電気デバイスを提供するステップと、
d)該ピックアップ端を該表面陰極電極または該表面陽極電極のいずれかまたは両方の下方に位置する皮下組織に配置して、該インプラントを該対象の皮膚の下に完全に埋め込むステップと、
e)該1つまたは複数の電気デバイスを該対象の皮膚の下に完全に埋め込むステップであって、該1つまたは複数の電気デバイスが該導体に沿って配置されるかまたは該ピックアップ端の該電気的終端として形成され、該1つまたは複数の電気デバイスが、該導体に電気的に接続され、それにより該電流が該導体から該1つまたは複数の電気デバイスに伝達される、ステップと、
f)該表面陰極電極および該表面陽極電極を該対象の皮膚の上に間隔を空けた関係で配置するステップであって、該表面陰極電極または該表面陽極電極のいずれかまたは両方を該導体の該ピックアップ端の上に配置し、そのため該電流の該一部が該導体を通って該1つまたは複数の電気デバイスに伝達され、かつ体内組織を通って該表面陰極電極または該表面陽極電極のいずれかまで戻る、ステップと、
g)該表面陰極電極と該表面陽極電極との間に直流電流、脈動電流または交流電流を印加することにより、該電流の該一部が、該1つまたは複数の電気デバイスに電流を送達するために十分、該インプラントを流れるようにする、ステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記1つまたは複数の電気デバイスが、センサ、増幅器、フィルタ、スイッチ、電源、電池、プロセッサ、周波数シフタ、過刺激保護回路、有線または無線通信モジュールもしくは基準電極から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記センサが、ENGセンサ、温度センサ、圧力センサ、pHセンサまたはインピーダンスセンサから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記センサがENGセンサである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記1つまたは複数の電気デバイスが、
(i)前記ピックアップ端の前記電気的終端として形成されるか、
(ii)該ピックアップ端とは無関係に配置されるか、または
(iii)前記標的体内組織の近傍に配置される
請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記1つまたは複数の電気デバイスが、前記導体と直列にまたは並列に電気的に接続される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記導体の前記ピックアップ端が前記表面陰極電極の下方に配置される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記インプラントを、前記送達端が標的体内組織に近接するように埋め込むステップであって、それにより前記導体を流れる前記電流の一部もまた該標的体内組織を刺激するために該標的体内組織まで伝達される、ステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記標的体内組織が、機能またはリハビリテーション、運動、整形外科回復、全身疼痛、頭痛および頸痛、腹痛、背痛、四肢痛または美容の用途のカテゴリから選択される状態を処置するように刺激される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記標的体内組織が、末梢神経系または中枢神経系における神経組織かもしくは神経から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ピックアップ端の下方で該ピックアップ端を絶縁することによって、下にある皮下組織への電流の流れを制限するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記1つまたは複数の電気デバイスが、前記表面陰極電極の下に埋め込まれた電源であって、該電源が、不揮発性メモリに基づく電子回路を組み込み、それにより、該電子回路が、前記標的体内組織を刺激するために前記刺激電極を電気的に接続するかまたは該標的体内組織を刺激しないように該刺激電極を切断することができる、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記1つまたは複数のデバイスが、形状記憶合金に基づくスイッチングマトリクスであり、かつ前記標的体内組織を刺激するために前記刺激電極を接続するかまたは該標的体内組織を刺激しないように該刺激電極を切断することができる、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
対象の体内に埋め込まれた1つまたは複数の電気デバイスに電流を送達するシステムであって、
i)該対象の皮膚に電気を通すための表面陰極電極および表面陽極電極であって、該対象の皮膚の上に間隔を空けた関係で配置されると、該表面陰極電極と該表面陽極電極との下方にかつ間に位置する皮下組織に電流を伝達する、表面陰極電極および表面陽極電極と、
ii)該表面陰極電極および該表面陽極電極に電気的に接続された、該対象の体外の刺激装置であって、該表面陰極電極および該表面陽極電極に電流を供給する、刺激装置と、
iii)該表面陰極電極と該表面陽極電極との間を流れる該電流の一部をピックアップし、かつ該電流のその部分を該1つまたは複数の電気デバイスに伝達するインプラントであって、
埋め込まれると、該表面陰極電極または該表面陽極電極のいずれかまたは両方の下方に位置する皮下組織から該1つまたは複数の電気デバイスまで延在するために十分な長さの受動導体を備え、
該導体が、ピックアップ端および送達端を有し、かつその端部の間にわたって絶縁され、該ピックアップ端が、該表面陰極電極と該表面陽極電極との間の体内組織内を流れる電流に優先して、印加されている該電流の十分な部分が該導体内を流れるのを可能にする、十分な表面積を有する電気的終端を形成し、それにより、該1つまたは複数のデバイスに電流が供給され、該送達端が、該電流の該一部を該1つまたは複数のデバイスに送達するために該1つまたは複数のデバイスとの電気的終端を形成する、インプラントと、
iv)該導体に電気的に接続され、それにより該電流が該導体から1つまたは複数の電気デバイスまで伝達される、1つまたは複数の電気デバイスと、
を具備する、システム。
【請求項25】
対象の体外に位置する1つまたは複数の外部デバイスに標的体内組織から電気信号を送達する方法であって、
a)該対象の皮膚に電気を通すために表面電極を提供するステップと、
b)該標的体内組織からの該電気信号のための導電経路としての役割を果たすインプラントを提供するステップであって、該インプラントが、
埋め込まれると、該対象の皮膚の上に配置された表面電極の下方に位置する皮下組織から該標的体内組織まで延在するために十分な長さの受動導体を備え、
該導体がピックアップ端および送達端を有し、かつその端部の間にわたって絶縁され、該ピックアップ端が、該標的体内組織からの該電気信号が該導体を通って流れるのを可能にする十分な表面積を有する電気的終端を形成し、該送達端が、該電気信号を該1つまたは複数の外部デバイスに送達するための電気的終端を形成する、ステップと、
c)該送達端を該表面電極の下方に位置する皮下組織に配置し、該ピックアップ端を該標的体内組織に近接して配置して、該インプラントを該対象の皮膚の下に完全に埋め込むステップと、
d)該表面電極を該対象の皮膚の上に配置するステップであって、該表面電極を該導体の該送達端の上に配置し、該表面電極を該1つまたは複数の外部デバイスに電気的に接続し、それにより該標的体内組織からの該電気信号が該導体を通って該1つまたは複数の外部デバイスまで伝達されるようにする、ステップと、
を含む、方法。
【請求項26】
前記1つまたは複数の外部デバイスが、センサ、増幅器、フィルタ、スイッチ、電源、電池、プロセッサ、周波数シフタ、過刺激保護回路、有線または無線通信モジュールもしくは基準電極から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記1つまたは複数の外部デバイスが、前記標的体内組織からの前記電気信号を増幅する増幅器である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記標的体内組織が、末梢神経系または中枢神経系における神経組織かもしくは神経から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記標的体内組織からの前記電気信号が、機能またはリハビリテーション、運動、整形外科回復、全身疼痛、頭痛および頸痛、腹痛、背痛、四肢痛または美容の用途のカテゴリから選択される状態を処置するために評価される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
標的体内組織からの電気信号を対象の体外に位置する1つまたは複数の外部デバイスに送達するシステムであって、
i)該対象の皮膚に電気を通す少なくとも1つの表面電極と、
ii)該標的体内組織からの該電気信号をピックアップし、かつ該電気信号を該1つまたは複数の外部デバイスに伝送するインプラントであって、
埋め込まれると、該少なくとも1つの表面陽極電極の下方に位置する皮下組織から該標的体内組織まで延在するために十分な長さの受動導体を備え、
該導体がピックアップ端および送達端を有し、かつその端部の間にわたって絶縁され、該ピックアップ端が、該標的体内組織からの該信号が該導体を通って流れるのを可能にする十分な表面積を有する電気的終端を形成し、該送達端が、該電気信号を該1つまたは複数の外部デバイスに送達するための電気的終端を形成する、インプラントと、
を具備する、システム。
【請求項31】
複数の標的体内組織を刺激する方法であって、
a)対象の体に電気を通すために1つまたは複数の表面陰極電極および表面陽極電極を提供するステップと、
b)1つまたは複数の外部刺激装置を提供するステップであって、該1つまたは複数の外部刺激装置が、該対象の体外にあり、該1つまたは複数の表面陰極電極および該1つまたは複数の表面陽極電極に電気的に接続され、該1つまたは複数の表面陰極電極および該1つまたは複数の表面陽極電極に電流を供給する、ステップと、
c)複数の標的体内組織を独立にまたは一致して電気的に刺激するために、複数のインプラントであって、各インプラントが、該対象の皮膚の上に間隔を空けた関係で配置される該1つまたは複数の表面陰極電極と該1つまたは複数の表面陽極電極との間を流れる該電流の少なくとも一部のための導電経路としての役割を果たす、インプラントを提供し、かつ該電流の一部を該複数の標的体内組織に伝達するステップであって、各インプラントが、
埋め込まれると、該1つまたは複数の表面陰極電極または該1つまたは複数の表面陽極電極のいずれかの下方に位置する皮下組織から複数の標的体内組織まで延在するために十分な長さの受動導体を備え、
各導体が、ピックアップ端および刺激端を有し、かつその端部の間にわたって絶縁され、該ピックアップ端が、該標的体内組織が刺激されるように該電流の十分な部分が該導体内を流れるのを可能にする十分な表面積を有する電気的終端を形成し、該刺激端が、該電流の該一部を該標的体内組織に送達するための電気的終端を形成する、ステップと、
d)該導体の該ピックアップ端を、該1つまたは複数の表面陰極電極または該1つまたは複数の表面陽極電極のいずれかまたは両方の下方に位置する皮下組織に配置し、該刺激端を該複数の標的体内組織に近接して配置して、該複数のインプラントを該対象の皮膚の下に完全に埋め込むステップと、
e)該表面陰極電極および該表面陽極電極を該対象の皮膚の上に間隔を空けた関係で配置するステップであって、該表面陰極電極または該表面陽極電極のいずれかまたは両方を該導体の該ピックアップ端の上に配置し、それにより、該電流の該一部が該導体を通って該複数の標的体内組織に伝達され、それにより該電流が該複数の標的体内組織内を流れ、かつ体内組織を通って該表面陰極電極または該表面陽極電極のいずれかに戻る、ステップと、
f)該1つまたは複数の表面陰極電極と該1つまたは複数の表面陽極電極との間に直流電流、脈動電流または交流電流を印加することにより、該電流の該一部が、該複数の標的体内組織を刺激するために十分、該複数のインプラントを流れるようにするステップと、
を含む、方法。
【請求項32】
前記標的体内組織が、末梢神経系または中枢神経系における神経組織かもしくは神経から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記複数の標的体内組織の刺激が、機能またはリハビリテーション、運動、整形外科回復、全身疼痛、頭痛および頸痛、腹痛、背痛、四肢痛または美容の用途のカテゴリから選択される状態を処置するように行われる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記1つまたは複数の表面陰極電極および前記1つの表面陽極電極が、前記1つまたは複数の外部刺激装置に電気的に接続される、請求項33に記載の複数の標的体内組織を刺激する方法。
【請求項35】
前記1つの表面陰極電極および前記1つの表面陽極電極が、1つの外部刺激装置に電気的に接続される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記表面陰極電極が切片に分割され、各切片が、スイッチングマトリクスによって1つまたは複数の外部刺激装置に電気的に接続される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記導体の前記ピックアップ端が前記表面陰極電極の下方に配置される、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記1つまたは複数の外部刺激装置が、電極に電気的に接続される外部刺激装置、小型刺激装置、またはリモートコントロールが提供される小型刺激装置から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記表面陰極電極および前記表面陽極電極が、可撓性衣服または剛性装具を使用して前記対象の皮膚の上に配置される、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記ピックアップ端の下方で該ピックアップ端を絶縁することにより、下にある皮下組織への電流の流れを制限するステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
対象内の複数の標的体内組織を電気的に刺激するシステムであって、
i)該対象の皮膚に電気を通すための表面陰極電極および表面陽極電極であって、該対象の皮膚の上に間隔を空けた関係で配置されると、該複数の標的体内組織に電流を伝達する、表面陰極電極および表面陽極電極と、
ii)該表面陰極電極および該表面陽極電極に電気的に接続された、該対象の体外の刺激装置であって、該表面陰極電極および該表面陽極電極に直流電流、脈動電流または交流電流を印加する、刺激装置と、
iii)該表面陰極電極と該表面陽極電極との間を流れる該電流の一部をピックアップし、かつ該電流のその部分を該複数の標的体内組織に伝達する複数のインプラントであって、その各々が、
埋め込まれると、該表面陰極電極または該表面陽極電極のいずれかの下方に位置する皮下組織から該標的体内組織まで延在するために十分な長さの受動導体を備え、
該導体が、ピックアップ端および刺激端を有し、かつその端部の間にわたって絶縁され、該ピックアップ端が、該表面陰極電極と該表面陽極電極との間の体内組織内を流れる電流に優先して、印加される該電流の十分な部分が該導体内を流れるのを可能にする、十分な表面積を有する電気的終端を形成し、それにより該標的体内組織が刺激され、該刺激端が、該電流の該一部を該標的体内組織に伝達するための電気的終端を形成する、インプラントと、
を具備する、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【公開番号】特開2012−75933(P2012−75933A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−281270(P2011−281270)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【分割の表示】特願2008−519515(P2008−519515)の分割
【原出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(507373704)バイオネス インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】