説明

電流制御装置及び電流制御方法

【課題】電源系統に供給するための装置の容量が比較的に小さくても、効果的に、電源系統の電圧変動を抑制することにある。
【解決手段】系統から負荷に接続される線路の電流を検出し、検出結果から所定の対象電流成分を分離し、対象電流成分のうち、所定時間範囲での、最大近傍電流及び、最小近傍電流を得て、最大近傍電流及び最小近傍電流に基づいて、最大電流と最小電流の間の値をとるような、所定の演算の結果である演算値を得て、演算値に基づいて、負荷よりも系統側圧源に近い線路に電流を供給する。
【効果】電源系統に供給するための装置の容量が比較的に小さくても、効果的に、電源系統の電圧変動を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流制御装置及び電流制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アーク炉のように大きく変動する負荷が電源系統に接続されると、負荷変動の影響を受けて電源系統の電圧が大きく変動し、他の電源系統に接続された機器に影響を及ぼしてしまう(この電圧変動はフリッカと呼ばれる)が発生する。
【0003】
このような電源系統の電圧変動を抑制するために、負荷に流れる、例えば無効電流を検出することで負荷変動を、負荷電流に含まれる無効分と逆位相の無効分として捕らえ、該負荷変動に応じて、電源系統に補償電流を供給する技術が知られている。このような技術は、例えば、特開昭63−194531号公報に記載されている。
【0004】
また、ローパスフィルタを用いて、定常的に流れる負荷無効電流を電流指令値から除去し、変動成分のみを補償電流とする技術が知られている。このような技術は、例えば、特開平5−11870号公報に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−194531号公報
【特許文献2】特開平5−11870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電源系統へ補償電流を供給して電源系統の電圧を平滑にするためには、電源系統の電圧がはねあがって頂上点になるときと、電源系統の電圧が落ち込んで谷間点になるときの両方において、電圧が同じになるように補償電流を供給することが必要になる。
【0007】
負荷の特性として変動が大きく、且つ、間欠的に頂上点及び谷間点が起こるものを電源系統に接続したときでも、有効的に電源系統を平滑化するためには、特開昭63−194531号公報記載の技術では、補償電流の供給上限を引き上げざるを得なく、それに伴って、電源系統に供給するための装置の容量が大きくなり、高価にならざるを得ない、との問題が生じていた。
【0008】
また、負荷変動幅が大きい負荷の場合、特開平5−11870号公報の技術では、ローパスフィルタを用いて算出した定常成分を除去しても同様に、電源系統に供給するための装置の容量が大きくなり、高価にならざるを得ない、との問題が生じていた。
【0009】
本発明の目的は、上記問題に対して、電源系統に補償電流を供給するための装置の容量が比較的に小さくても、効果的に、電源系統の電圧変動を抑制することができる電流制御装置及び電流制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、系統から負荷に接続される線路の電流を検出し、検出結果から所定の対象電流成分を分離し、対象電流成分のうち、所定時間範囲での、対象電流成分の統計演算である(あるいは、最大近傍電流及び、最小近傍電流を得て、最大近傍電流及び最小近傍電流に基づいて、最大電流と最小電流の間の値をとるような)所定の演算の結果である演算値を得て、演算値に基づいて、系統に接続された線路に電流を供給するように構成した。
【0011】
好ましくは、補償対象とする負荷電流の所定時間内における最大値と最小値の平均値を算出し補正値とし、補正値を補償電流値から減算し、補正後補償対象電流を算出するように構成した。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電源系統に供給するための装置の容量が比較的に小さくても、効果的に、電源系統の電圧変動を抑制することが可能となる。すなわち、変動の大きい負荷に対しても補償電流の絶対値を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1〜図3を用いて、本発明の実施例を説明する。電流制御装置101は、電力系統の線路110に連系され、電流指令値113にしたがって制御された電流を系統に出力する。このような電流を制御できる装置としては、自励式変換器,可変速フライホイール発電機等があるが、本発明における電流制御装置としては、そのいずれでもよい。線路110に連系された負荷112が変動すると、線路110を流れる電流が変動し、その結果として系統上流の母線100等の電圧が変動する。そこで、線路110に流れる電流の変動を補償するような電流を電流制御装置101から出力することにより線路110を流れる電流の変動を抑制し、母線100等の電圧の変動を抑制することができる。このために、線路110に設置された電流検出器111によって検出された電流値を基に補償電流算出器102によって、補償電流値115を算出する。
【0015】
ところで、電流制御装置が出力できる電流の限界値内に出力電流を抑制するために、制限器109を設ける。制限器109によって電流指令値113を制限するために、補償電流値115は直流量を用いる必要がある。このような直流量に変換された量として、補償電流値115は、電流検出器111で検出された電流の実効値、該電流の振幅,電圧を基準として計算された該電流の有効分と無効分、また三相交流電流が不平衡になる場合も考慮して、電圧を基準とした複素平面において計算された該電流の正相実軸成分,正相虚軸成分,逆相実軸成分,逆相虚軸成分等がある。本実施例では、目的及び電流制御装置の制約によって、前記各電流成分のいずれを用いる場合でも適用できる。
【0016】
電流制御装置の制約とは、例えば自励式変換器を用いた無効電力補償装置の場合、エネルギーを貯蔵する装置を持たないため、電流の有効分を自在に出力することはできないことなどをいう。無効電力補償装置を電流制御装置として用いる場合、補償電流115として、電流の無効分、または正相虚軸成分,逆相実軸成分,逆相虚軸成分を制御対象とする。さて、図2において、実線は線路110に流れる変動電流を示し、点線は補償電流算出器102が出力する補償電流115であるが、ある電流成分が図2の実線のように正負いずれかに偏って変動している場合、補償電流として図2の破線のような電流を電流制御装置101から出力すれば、結果として補償後の電流は変動が極めて小さくなる。しかし、電流の変動が大きいと、最大補償電流値が電流制御装置101の限界を超えてしまう場合がある。この場合、電流指令値113として、制限器109で制限された値が出力され、電流変動が十分抑制できない場合がある。このような場合、タイマ103によって与えられる、電流の変動周期より十分長い時間T[sec]毎(図2におけるt0 からt1 までの区間T1 ) の補償電流値115の最大値(あるいは、その近傍)を計算する最大値算出器
014と、時間T[sec]毎の補償電流値115の最小値(あるいは、その近傍) を計算する最小値算出器105と、最大値算出器104の出力と最小値算出器105の出力を加算する加算器106を備え、加算器106からの出力を1/2のゲインを乗じる乗算器107に入力し、出力された補正信号116を、減算器108によって、補償電流値115から減算された補正後補償電流値114を制限器109に入力して、電流指令値113を得るようにする。タイマ103の動作により今回の区間T1 で演算された補正信号116が次の区間T2 で用いられる。このような構成とすることで、図3に示すように補償における基準が遷移し、補償最大電流を小さくすることができ、制限器109で制限されない電流指令値113を得ることができる。
【0017】
以上の説明の実施例において、定められた時間間隔ごとにその時間間隔における補償電流115の最大値と最小値の平均値を計算して補正信号116とし、この補正信号116を補償電流115から減算して補正したものを新たに補償電流115とすることが良い。
【0018】
また、電流検出器111の出力の所定成分について変動分を積分し、積分値の出力を補正信号116とし、補償電流115に補正信号116を加算して補正することが良い。
【0019】
また、補償信号116を積分し、この積分値を補正信号116とし、この補正信号116を補償電流115から減算して補正したものを新たに補償電流115とすることが良い。
【0020】
このように、本装置は、交流系統に連系する電流制御装置、特に負荷の変動に伴う電流変動を補償することで、電圧変動を抑制することを目的とした電流制御装置に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明実施例の説明図。
【図2】変動電流に対する補償電流値を説明する図。
【図3】変動電流に対する補償電流値(補正有)を説明する図。
【符号の説明】
【0022】
101…電流制御装置、102…補償電流算出器、104…最大値算出器、105…最小値算出器、107…乗算器、108…減算器、110…線路、111…電流検出器、
112…負荷。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統から負荷に接続される線路の電流を検出する手段と、前記検出手段の出力から所定の対象電流成分を分離する手段と、前記対象電流成分のうち、所定時間範囲での、最大近傍電流及び最小近傍電流を求める手段と、前記最大近傍電流及び前記最小近傍電流に基づいて、最大電流と最小電流の間の値をとるような、所定の演算の結果である演算値を得る手段と、前記演算値に基づいて、前記系統に接続された線路に電流を供給するための補償値を演算する手段とを有することを特徴とする電流制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の電流制御装置であって、前記最大近傍電流は最大電流値であり、前記最小近傍電流は、最小電流値であり、前記所定の演算は、平均値を求めることを特徴とする電流制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の電流制御装置であって、前記系統に接続された線路に供給する電流を制限するように前記補償値を上限値あるいは下限値に制限する手段を有し、前記演算は、前記補償値が、前記上限値あるいは下限値を超えないように演算を行うことを特徴とする電流制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の電流制御装置であって、前記系統に接続された線路に、有効分または無効分に相当する電流を供給することを特徴とする電流制御装置。
【請求項5】
請求項1記載の電流制御装置であって、定められた時間間隔ごとにその時間間隔における前記補償値の最大値と最小値の平均値を計算して補正値とし、前記補正値を前記補償値から減算して補正したものを新たに補償値とすることを特徴とする電流制御装置。
【請求項6】
請求項1記載の電流制御装置であって、前記対象電流成分の変動分を積分し、積分値の出力を補正値とし、補償値に補正値を加算して補正することを特徴とする電流制御装置。
【請求項7】
請求項1記載の電流制御装置であって、前記補償値を積分し、前記積分値を補正値とし、前記補正値を前記補償値から減算して補正したものを新たに補償値とすることを特徴とする電流制御装置。
【請求項8】
系統から負荷に接続される線路の電流を検出する手段と、交流電圧ベクトルの向きと実軸が同じになる複素平面を制御における制御空間として、前記検出手段の出力から正相実軸成分,正相虚軸成分,逆相実軸成分,逆相虚軸成分のいずれかである対象電流成分を分離する手段と、前記補償対象電流成分のうち、所定時間範囲での、最大近傍電流、及び、最小近傍電流を求める手段と、前記最大近傍電流及び前記最小近傍電流に基づいて、最大電流と最小電流の間の値をとるような、所定の演算の結果である演算値を得る手段と、前記演算値に基づいて、前記系統に接続された線路に正相実軸成分,正相虚軸成分,逆相実軸成分,逆相虚軸成分のいずれかである電流を供給するための補償値を演算する手段とを有することを特徴とする電流制御装置。
【請求項9】
請求項8記載の電流制御装置であって、定められた時間間隔ごとにその時間間隔における、前記制御空間におけるいずれかの電流成分に関する補償値の最大値と最小値の平均値を計算して補正値とし、前記補正値を前記補償値から減算して補正したものを新たに補償値とすることを特徴とする電流制御装置。
【請求項10】
請求項8記載の電流制御装置であって、前記対象電流成分の変動分を積分し、前記積分値を補正値とし、補償値に補正値を加算して補正することを特徴とする電流制御装置。
【請求項11】
請求項9記載の電流制御装置であって、前記補償値を積分し、前記積分値を補正値とし、前記補正値を前記補償値から減算して補正したものを新たに補償値とすることを特徴とする電流制御装置。
【請求項12】
系統から負荷に接続される線路の電流を検出する手段と、前記検出手段の出力から所定の対象電流成分を分離する手段と、前記対象電流成分のうち、所定時間範囲での、前記対象電流成分の統計演算の結果である演算値を得る手段と、前記演算値に基づいて、前記系統に接続された線路に電流を供給するための補償値を演算する手段とを有することを特徴とする電流制御装置。
【請求項13】
系統から負荷に接続される線路の電流を検出し、前記検出結果から所定の対象電流成分を分離し、前記対象電流成分のうち、所定時間範囲での、最大近傍電流及び、最小近傍電流を得て、前記最大近傍電流及び前記最小近傍電流に基づいて、最大電流と最小電流の間の値をとるような、所定の演算の結果である演算値を得て、前記演算値に基づいて、前記負荷よりも前記系統に接続された線路に電流を供給するための補償値を演算する電流制御方法。
【請求項14】
系統から負荷に接続される線路の電流を検出し、前記検出結果から所定の対象電流成分を分離し、前記対象電流成分のうち、所定時間範囲での、前記対象電流成分の統計演算の結果である演算値を得て、前記演算値に基づいて、前記負荷よりも前記系統に接続された線路に電流を供給するための補償値を演算する電流制御方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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