説明

電源、ICおよび画像形成装置

【課題】 圧電トランスにおける駆動周波数相互の干渉の影響を抑え、小型化と高画質化を両立し、実験による対策を必要としない圧電トランスを用いた電源装置を提供すること。
【解決手段】複数の電源回路を備え、各電源回路が、圧電トランスと、制御信号に応じて前記圧電トランスを駆動するために使用する動作周波数の信号を発生する電圧制御発振器と、を有する電源装置は、少なくとも一の電源回路における電圧制御発振器が発生する前記動作周波数を分周し、一の電源回路の圧電トランスを駆動するための駆動周波数の信号を出力する分周回路を備え、少なくとも一の電源回路及び他の電源回路から電圧が出力されるとき、一の電源回路における電圧制御発振器が発生する動作周波数は、駆動周波数に対して高くなるように制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスにより画像を形成する画像形成装置に好適な電源装置に関し、特に圧電トランスを用いる電源装置とその電源装置を有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスにより画像を形成する画像形成装置において、感光体に転写部材を当接させて転写を行なう直接転写方式を採る場合、転写部材には導電体の回転軸を持つローラ状の導電性ゴムが用いられる。このとき、転写部材の駆動は感光体のプロセススピードに合わせて制御される。
【0003】
そして、転写部材に印加する電圧として、直流バイアス電圧を用いている。この時、直流バイアス電圧の極性は、通常のコロナ放電式の転写電圧と同じ極性である。しかし、こういった転写ローラを用いて良好な転写を行なうためには、通常3kV以上の電圧(所要電流は数μA)を転写ローラに印加する必要がある。上述の画像形成処理に必要とされる高電圧を生成するために、従来は巻線式の電磁トランスが使用されていた。しかし、電磁トランスは、銅線、ボビン、磁芯で構成されており、上記のような、3kV以上の電圧を印加して用いる場合は、出力電流値が数μAという微小な電流のために各部に於いて漏れ電流を最小限にしなければならなかった。そのため、トランスの巻線を絶縁物によりモールドする必要が有り、しかも供給電力に比較して大きなトランスを必要としたため、高圧電源装置の小型化・軽量化の妨げとなっていた。
【0004】
そこで、これらの欠点を補うために、薄型で軽量の高出力の圧電トランスを用いて高電圧を発生させることが検討されている。すなわち、セラミックを素材とした圧電トランスを用いることにより、電磁トランス以上の効率で高電圧を生成する事が可能となる。しかも、一次側および二次側間の結合に関係なく一次側と二次側の電極間の距離を離すことが可能になるので特別に絶縁のためにモールド加工をする必要がない。そのため高圧発生装置を小型・軽量にできるという優れた特性が得られる。
【0005】
圧電トランスを用いた高圧発生装置として、例えば、特許文献1に示されるものがある。
【0006】
圧電トランスを用いている高圧電源回路の例を図13の参照により説明する。図13において、101Yは高圧電源の圧電トランス(圧電セラミックトランス)である。圧電トランス101Yの出力はダイオード102Y、103Y及び高圧コンデンサ104Yによって正電圧に整流平滑され、負荷である転写ローラ(不図示)に供給される。出力電圧は抵抗105Y、106Y、107Yによって分圧され、保護用抵抗108Yを介してオペアンプ109Yの非反転入力端子(+端子)に入力される。他方オペアンプの反転入力端子(−端子)には抵抗114Yを介してDCコントローラ201からアナログ信号である高圧電源の制御信号(Vcont)が接続端子118Yに入力される。オペアンプ109Yと抵抗114Yとコンデンサ113Yにて積分回路を構成することにより、抵抗とコンデンサの部品定数によって決まる積分時定数で平滑された制御信号(Vcont)がオペアンプ109Yに入力される。オペアンプ109Yの出力端は電圧制御発振器(VCO)110Yに接続され、その出力端がインダクタ112Yに接続されたトランジスタ111Yを駆動することで、圧電トランスの一次側に電源が供給される。
【0007】
電子写真方式の画像形成装置の高圧電源ユニットでは、図13に示す圧電トランスを用いる高圧電源回路を複数有する。例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の画像形成部に対応し、帯電、現像、転写等のバイアスを出力し画像形成を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-206113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の例では、高圧電源ユニット内に圧電トランス及び制御回路を複数個配置することにより、複数バイアス電圧を出力して画像形成を行っている。特に、タンデム方式のカラー画像形成装置に搭載される高圧電源ユニットにおいては、帯電、現像、転写等のバイアス出力回路をシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの画像形成に対応して4回路が必要となる。そして、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(BK)の各色に対応した各回路は、ほぼ同一バイアス出力電圧に制御される。このとき高圧電源ユニットに搭載されている圧電トランスは帯電、現像、転写等のバイアス出力回路(C、M、Y、BK)毎にほぼ同一周波数(近接する周波数)で駆動される。
【0010】
このように、複数の圧電トランスを近接する周波数にて駆動し同一バイアス電圧出力を行なう場合に、隣接配置された圧電トランスにおいて、電源ライン経由或いは静電容量結合などによって、相互干渉を起こし、高圧バイアス電圧の出力精度向上が困難になる。或いは干渉周波数による高圧バイアス電圧の揺らぎ等の発生等を原因とする画像品質低下を招く恐れがある。
【0011】
このような高圧バイアス電圧精度を原因とする画像に対する影響を避けるために、圧電トランスの配置間隔を十分に広げる対策が考えられる。また、電源ラインを通じて干渉を抑えるために電源ラインのパターン設計の際に、パターン長を伸ばしたり、デカップリングコンデンサの容量を増やすなどの対策が考えられる。
【0012】
しかし、このような対策を理論的な計算によって求めることは困難であり、多くの実験によって上記対策による問題解決が可能かどうか、また可能ならば、その具体的内容を決定しなければならない。そのため、製品開発に要する期間が長くなってしまい、更に、上述の対策により問題解決が可能な場合であっても、高圧電源ユニットの小型化と高画質化とを両立することは困難である。
【0013】
本発明は、上述の問題点を鑑みてなされたものであり、圧電トランスにおける駆動周波数相互の干渉の影響を抑え、小型化と高画質化を両立し、実験による対策を必要としない圧電トランスを用いた電源装置の提供を目的とする。
【0014】
あるいは、上述の電源装置を有する画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明にかかる電源装置、画像形成装置は主として、以下の構成を備えることを特徴とする。
【0016】
すなわち、本発明に係る電源装置は、
複数の電源回路を備え、当該各電源回路が、圧電トランスと、制御信号に応じて前記圧電トランスを駆動するために使用する動作周波数の信号を発生する電圧制御発振器と、を有する電源装置であって、
少なくとも一の電源回路における電圧制御発振器が発生する前記動作周波数を分周し、当該一の電源回路の圧電トランスを駆動するための駆動周波数の信号を出力する分周回路を備え、
前記少なくとも一の電源回路及び他の電源回路から電圧が出力されるとき、前記一の電源回路における電圧制御発振器が発生する前記動作周波数は、前記駆動周波数に対して高くなるように制御されることを特徴とする。
【0017】
あるいは、本発明に係る画像形成装置は、上記の電源装置と、
トナー画像を形成する画像形成手段とを備え、
前記画像形成手段は、前記電源装置により供給される電圧を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、圧電トランスにおける駆動周波数相互の干渉の影響を抑え、小型化と高画質化を両立し、実験による対策を必要としない圧電トランスを用いた電源装置の提供が可能になる。
【0019】
あるいは、本発明によれば、上述の電源装置を有する画像形成装置の提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る圧電トランスを使用した転写高圧電源の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る圧電トランスを用いた高圧電源装置を備える本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。
【図3】干渉の発生するメカニズムの概略を説明する圧電トランスを使用した転写高圧電源の構成を示す図である。
【図4】圧電トランスの特性として、出力電圧(V)と駆動周波数(Hz)の関係を示す図である。
【図5】駆動周波数Fx1(Hz)及び駆動周波数Fx2(Hz)と、出力電圧(V)の関係を示す図である。
【図6】第1実施形態に係る転写高圧電源の構成に、分周回路を設けた場合の効果を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る圧電トランスを使用した転写高圧電源の構成を示す図である。
【図8】第2実施形態に係る圧電トランスを使用した転写高圧電源において、分周比の設定を説明する図である。
【図9】(a)は、バイアス電圧(制御出力電圧(Edc))と駆動周波数の関係を示す図であり、(b)は(a)の破線で囲んだ領域901を拡大した図である。
【図10】第3実施形態に係る圧電トランスを使用した転写高圧電源の構成を示す図である。
【図11】第3実施形態に係る圧電トランスを使用した転写高圧電源において、Yステーション高圧回路に設けられている検出回路の構成を示す図である。
【図12】(a)検出回路の入力信号、(b)高周波成分がカットされたローパスフィルタ出力、(c)検出回路の出力信号を示す図である。
【図13】圧電トランスを用いている高圧電源回路の従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面の参照により説明する。図2は、圧電トランスを用いた高圧電源装置202を備える本実施形態に係る画像形成装置(以下、「カラーレーザプリンタ」という。)の構成図である。
【0022】
カラーレーザプリンタ401は記録紙32を収納するデッキ402を有し、デッキ402内の記録紙32の有無を検知するデッキ紙有無センサ403が設けられている。また、カラーレーザプリンタ401は、デッキ402から記録紙32を繰り出すピックアップローラ404、ピックアップローラ404によって繰り出された記録紙32を搬送するデッキ給紙ローラ405が設けられている。更に、カラーレーザプリンタ401はデッキ給紙ローラ405と対をなし、記録紙32の重送を防止するためのリタードローラ406が設けられている。
【0023】
そして、デッキ給紙ローラ405の下流側には記録紙32を同期搬送するレジストローラ対407、レジストローラ対407への記録紙32の搬送状態を検知するレジ前センサ408が配設されている。また、レジストローラ対407の下流には静電吸着搬送転写ベルト(以下、「ETB」と記す)409が配設されている。ETB409上には4色(Y、M、C、BK)分のプロセスカートリッジ410(Y、M、C、BK)と、スキャナーユニット420(Y、M、C、BK)とからなる画像形成部によって画像が形成される。そして、形成された画像が転写ローラ430(Y、M、C、BK)によって順次重ね合わされてゆくことによりカラー画像が形成され、記録紙32上に転写搬送される。
【0024】
下流側には記録紙32上に転写されたトナー像を熱定着するために内部に加熱用のヒータ432を備えた定着ローラ433と加圧ローラ434対が配設されている。更に、定着ローラからの記録紙32を搬送するための定着排紙ローラ対435、定着部からの搬送状態を検知する定着排紙センサ436が配設されている。
【0025】
各スキャナーユニット420は、レーザユニット421、各レーザユニット421からのレーザ光を各感光ドラム305上に走査するためのポリゴンミラー422とスキャナモータ423、結像レンズ群424より構成されている。ここで、レーザユニット421から照射されるレーザ光は、ビデオコントローラ440から送出される各画像信号に基づいて変調されものである。
【0026】
各プロセスカートリッジ410には公知の電子写真プロセスに必要な感光ドラム305、帯電ローラ303と現像ローラ302、トナー格納容器411が具備されている。各プロセスカートリッジ410は、カラーレーザプリンタ401に対して着脱可能に構成されている。
【0027】
更に、ビデオコントローラ440はパーソナルコンピュータ(ホストコンピュータ)等の外部装置441から送出される画像データを受け取ると画像データをビットマップデータに展開し、画像形成用の画像信号を生成する。
【0028】
また、201はレーザプリンタの制御部であるDCコントローラである。RAM207a、ROM207b、タイマ207c、デジタル入出力ポート207d、D/Aポート207eを具備したMPU(マイクロコンピュータ)207、及び各種入出力制御回路(不図示)等で構成されている。
【0029】
202は高圧電源部(高圧電源装置)である。高圧電源装置202は、各プロセスカートリッジ410(Y、M、C、BK)に対応した帯電高圧電源(不図示)、現像高圧電源(不図示)と、各転写ローラ430に対応した高電圧を出力可能な圧電トランスを使用した転写高圧電源とで構成されている。
【0030】
次に、圧電トランスを使用した転写高圧電源の構成を図1の参照により説明する。尚、本実施形態に係る圧電トランスを使用した転写高圧電源(以下、単に「転写高圧電源」ともいう。)の構成は、正電圧、負電圧どちらの出力回路に対しても有効である。ここでは代表的に正電圧を必要とする転写高圧電源について説明を行なう。
【0031】
また、転写高圧電源は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の各転写ローラ430(Y、M、C、BK)に対応し、4回路設けられている。回路構成は各回路とも同じであるため、図1ではイエロー(Y)、マゼンタ(M)の2回路(符号末尾にY、Mを付して区別している)代表として示している。しかしながら、本発明の趣旨は2回路に限定されるものではなく、4回路以上の転写高圧電源を設ける構成でも適用できることはいうまでもない。
【0032】
本発明の実施形態に係る画像形成装置は、相互に異なる色の画像を形成する複数の色ステーションを有する。画像形成装置は、各色(Y、M、C、BK)ステーションで使用される電圧を出力するために、それぞれが圧電トランスを有する複数の高圧電源回路を有する。以下の説明では、各回路を、「Yステーション高圧回路」、「Mステーション高圧回路」、「Cステーション高圧回路」、「BKステーション高圧回路」ともいう。
【0033】
図1において、101Mは高圧電源の圧電トランス(圧電セラミックストランス)である。圧電トランス101Mの出力はダイオード102M、103M及び高圧コンデンサ104Mによって正電圧に整流平滑され、出力端子116Mから負荷である転写ローラ(不図示)に供給される。出力電圧は抵抗105M、106M、107Mによって分圧され、保護用抵抗108Mを介してオペアンプ109Mの非反転入力端子(+端子)に入力される。他方オペアンプの反転入力端子(-端子)には直列抵抗114Mを介してDCコントローラ201からアナログ信号である高圧電源の制御信号(Vcont)が接続端子118Mより入力される。
【0034】
オペアンプ109Mの出力端は電圧制御発振器(VCO)110Mに接続され、電圧制御発振器110Mの出力端は電界効果トランジスタ111Mのゲートに接続される。電界効果トランジスタ111Mのドレインはインダクタ112Mを介して電源(+24V:Vcc)に接続され、コンデンサ115Mを介して接地されている。更に、圧電トランス101Mにおける一次側の電極の一方に接続される。この一次側の電極の他方は接地されている。また、電界効果トランジスタ111Mのソースも接地されている。
【0035】
図4は圧電トランスの特性として、出力電圧(V)と駆動周波数(Hz)の関係を示す図である。圧電トランスの特性は一般的に図4に示すような共振周波数fにおいて出力電圧が最大電圧(Emax)となる。駆動周波数fxにおいて、規定出力電圧(以下、「制御出力電圧」ともいう。)Edcを出力する。共振周波数(以下、これを「最大周波数」ともいう。)fを中心として、出力電圧(V)の分布は裾広がりの分布形状となる。駆動周波数を変化させることにより、出力電圧の制御が可能になる。例えば、圧電トランスの出力電圧を増加させる場合は、駆動周波数を高い方から共振周波数fに向かい低い方へ変化させることで可能となる。これ以降、共振周波数fより高い側の周波数で制御を行なう場合について説明を行なうが、低い側の周波数で制御を行なう場合も考え方は同様である。
【0036】
電圧制御発振器(VCO)110Mは入力電圧が上がると出力周波数を上げ、入力電圧が下がると出力周波数を下げるように動作する。圧電トランス101Mの制御出力電圧(Edc)が上がると、抵抗105Mを介してオペアンプ109Mの非反転入力端子(+端子)の入力電圧(Vsns)も上がり、オペアンプ109Mの出力端子の電圧は上昇する。つまり、電圧制御発振器110Mの入力電圧が上昇するので、電圧制御発振器(VCO)110Mの出力周波数も上昇することになり、圧電トランス101Mの駆動周波数も上昇する。従って、駆動周波数fxより高い周波数で圧電トランス101Mは駆動する。駆動周波数fxが上がると圧電トランス101Mの出力電圧は下がるため、出力電圧は下がる方向に制御される。すなわち、図1の構成は、負帰還制御回路を構成している。
【0037】
また、圧電トランス101Mの制御出力電圧(Edc)が下がると、オペアンプ109Mの入力電圧(Vsns)も下がり、オペアンプ109Mの出力端子電圧は下がる。つまり、電圧制御発振器110Mの入力電圧は下がるので、電圧制御発振器(VCO)110Mの出力周波数も下がることになり、圧電トランス101Mの駆動周波数は下がる。駆動周波数fxが下がると、圧電トランス101Mの出力電圧は上がるため、出力電圧は上がる方向に制御される。
【0038】
このように、オペアンプ109Mの反転入力端子(-端子)に入力されるDCコントローラ201からの制御信号(Vcont)の電圧で決定される電圧に等しくなるよう、出力電圧が定電圧制御される。
【0039】
通常の印刷動作においては、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の4色に対応した印刷動作においては、Y、M、C、BKの4色に対応して、高圧回路、即ち、圧電トランスがほぼ同じタイミングで動作している。ここで、本実施形態の特徴を説明するために、イエロー(Y)及びマゼンタ(M)の2つの回路の動作について説明する。
【0040】
説明の準備として、イエロー(Y)及びマゼンタ(M)の2つの高圧回路において、干渉の発生するメカニズムの概略を図3の参照により説明する。
【0041】
図3におけるYステーション高圧回路の圧電トランス101Yは、図5に示す駆動周波数Fx1で駆動され、Mステーション高圧回路の圧電トランス101Mは、図5に示す駆動周波数Fx2で駆動されているものとする。
【0042】
抵抗105Y、106Y、107Y、108Yが接続するラインは、Yステーション高圧回路の圧電トランス101Yの電圧制御を行なうオペアンプ109Yの出力電圧を検出する出力電圧検出ラインを構成する。
【0043】
オペアンプ109Yの出力電圧検出ラインと、Mステ-ション高圧回路の圧電トランス101Mの駆動信号ライン(112M、111M、115M)及び整流回路接続ライン(102M、103M、104M等)とは近接して配置される。このとき、Yステーション高圧回路とMステーション高圧回路との間には、破線で示されるコンデンサ151、152が接続された回路モデルが形成される。
【0044】
Yステーション高圧回路の圧電トランス101Yの電圧制御を行うオペアンプ109Yの出力電圧検出ラインに関しては高圧出力(約1KV)を、通常は回路電圧(約5V)に降下させている。このため、この接続ラインのインピーダンスは他の回路のインピーダンスと比較して高くなり、干渉の影響を受けやすくなる。
【0045】
Yステーション高圧回路の電圧制御発振器110Yには、圧電トランス101Yの制御周波数Fx1に加えて、Mステーション高圧回路の圧電トランス101Mの制御周波数成分Fx2が、オペアンプ109Yを通じて入力される。
【0046】
YステーシションのVCO回路110Yに入力される周波数Fx1は、Mステーション高圧回路の圧電トランス101Mを制御するための周波数Fx2の影響を受け、出力電圧に干渉周波数のリップル電圧が現れる。ここで干渉周波数は、互いの圧電トランスにおける駆動周波数の差分となり、図3、図5の場合には、(1)式で示すように、制御出力電圧(Edc)に対応する駆動周波数の差分の絶対値として与えられる。
【0047】
干渉周波数Fb=|Fx1−Fx2|・・・(1)
この干渉に起因して、イエロー(Y)、マゼンタ(M)間における転写効率に差が生じる。この影響は、画像形成装置のプロセス速度(PS mm/S)との関係に従い、視覚的に確認できる周期として画像に表れ、画像品質を低下させてしまう可能性がある。
【0048】
プロセス速度PS(mm/S)と、干渉周波数Fbから画像に表れる可能性のある干渉画像周期Tb(mm)は、(2)式で与えられる。
【0049】
Tb=プロセス速度Ps/干渉周波数Fb・・・(2)
一般的に、この干渉画像周期Tb(mm)が0.3mm以上になると視覚認識できるといわれており、干渉画像周期が、印刷画像品質低下の原因となる。例えば、プロセス速度PSが100mm/Sで、干渉周波数Fbが300Hz以下になると、(2)式から印刷画像の濃度ムラとして人間の目で認識できるピッチは0.3mm以上となる。
【0050】
例えば、各周波数をFx1=163KHz、Fx2=163.2KHzとすると、(1)式の関係より干渉周波数は(3)式で与えられる。
【0051】
干渉周波数Fb=|163−163.2|=200Hz・・・(3)
干渉周波数Fb=200Hz、プロセス速度PSを100mm/Sとすると、印刷画像に生じる濃度ムラのピッチは(4)式で与えられる。
【0052】
Tb=100/200=0.5mm・・・(4)
次に、本発明の実施形態に係る電源装置の回路構成を図1の参照により説明する。本実施形態に係る電源装置は、複数の電源回路を備え、各電源回路が、圧電トランスと、制御信号に応じて圧電トランスを駆動するために使用する動作周波数の信号を発生する電圧制御発振器(VCO)とを有する。電源装置は、少なくとも一の電源回路における電圧制御発振器(VCO)が発生する動作周波数を分周し、一の電源回路の圧電トランスを駆動するための駆動周波数の信号を出力する分周回路を備える。少なくとも一の電源回路及び他の電源回路から電圧が出力されるとき、一の電源回路における電圧制御発振器が発生する動作周波数は、駆動周波数に対して高くなるように制御される。
【0053】
図1の回路と、干渉モデルの説明に用いた図3の回路との相違点は、Yステーション高圧回路における電圧制御発振器(VCO)110Yと圧電トランス駆動用FET111Yとの間に分周回路141Yを配した点にある。分周比の例として、分周回路141Yの分周比を2に設定している。このため電圧制御発振器(VCO)回路110Yの動作周波数は圧電トランス101Yを駆動する周波数の2倍の周波数で動作することになる。電圧制御発振器(VCO)回路110Yの動作周波数は、分周回路141の分周比がK(=1、2、4、8・・)の場合、K倍の周波数で動作することが可能である。
【0054】
ここで、分周比は、電圧制御発振器(VCO)の動作周波数と、圧電トランス101の駆動周波数との関係で、(5)式により求めることができる。
【0055】
分周比K=電圧制御発振器の動作周波数/圧電トランスの駆動周数・・・(5)
尚、図1に示す分周比は「2」に限定されるものでなく、回路構成、電圧制御発振器の動作周波数、圧電トランスの駆動周数に応じて設定可能であることはいうまでもない。
【0056】
図3の回路と同様に図1の回路構成においても、抵抗105Y、106Y、107Y、108Yが接続するラインは、Yステーション高圧回路の圧電トランス101Yの電圧制御を行なうオペアンプ109Yの出力電圧を検出する出力電圧検出ラインを構成する。また、オペアンプ109Yの出力電圧検出ラインとMステ-ション高圧回路の圧電トランス101Mの駆動信号ライン(112M、111M、115M)や整流回路接続ライン(102M、103M、104M等)とが近接配置されている。そして、Yステーション高圧回路とMステーション高圧回路との間にコンデンサ151、152が接続された回路モデルを構成する。
【0057】
Yステーション高圧回路の電圧制御発振器110Yは圧電トランス101Yの駆動周波数の2倍の周波数(動作周波数)で動作する。動作周波数は、分周回路141Yにより2分周(1/2倍)され、FET111Yを介して圧電トランス101Yに入力される。入力された周波数に基づいて圧電トランス101Yは駆動する。圧電トランス101Yの出力はダイオード102Y、103Y及び高圧コンデンサ104Yによって正電圧に整流平滑され、高圧回路181Yから高電圧出力バイアスが出力端子116Yを介して出力される。
【0058】
出力電圧は抵抗105Y、106Y、107Yによって分圧され、保護用抵抗108Yを介してオペアンプ109Yの非反転入力端子(+端子)に入力される。更に、+端子側の入力には、破線で示すコンデンサ151、152によって、Mステーション高圧回路の圧電トランス110Mの駆動周波数(Fx2)に基づく電圧成分が重畳して入力される。
【0059】
他方オペアンプの反転入力端子(-端子)には直列抵抗114Yを介してDCコントローラ201からアナログ信号である高圧電源の制御信号(Vcont)が接続端子118Yより入力される。1/K(分周比K(=1、2、4、8、・・・))に分周する場合、DCコントローラ201は、分周比Kに対応した高圧電源の制御信号を反転入力端子(-端子)に入力することが可能である。
【0060】
分周する前の信号のスプリアス(回路間の干渉によって生じる成分)が−A(dB)である場合、1/Kに分周すると、−A−20・logK(dB)となり、分周した分だけスプリアスの影響を低減することが可能になることが知られている。
【0061】
図6は、本実施形態に係る転写高圧電源の構成に、分周回路141Yを設けた場合の効果を示す図である。図中の参照番号601は分周しない場合の、周波数Fx1とFX2との干渉周波数Fb(Hz)に対する出力電圧に含まれるリップル電圧(Vrpl)を示す。601は2分周、603は4分周、604は8分周時のリップル電圧を示す。図6により分周回路141Yを設けることにより、リップル電圧(Vrpl)は低減され、分周比を高くするに従い、リップル電圧のピークはフラットな状態に近づく。すなわち、分周回路141Yを設けることにより、スプリアスの影響を低減することが可能になる。分周比2の分周回路141Yを設けることで、電圧制御発振器(VCO回路)110Yの出力電圧のスプリアスが約1/2に低減され、出力端子116Yから出力されるリップル電圧値が約半分に低減される。
【0062】
本実施形態に係る電源装置の回路構成において、分周回路141には分周比として、「2」を例示したが、図6の分周の効果でも説明したように、分周比として、1、2、4、8、・・・を設定することが可能であることはいうまでもない。また、本実施形態では、Yステーション高圧回路に分周回路141Yを設けた例を示したが、Mステーション高圧回路、Cステーション高圧回路、BKステーション高圧回路において分周回路を設けてもよい。この場合、それぞれ異なる分周比を各分周回路に設定することが可能である。
【0063】
本実施形態に係る電源装置によれば、高圧回路間において、圧電トランス101Y及び101Mを近接する周波数で駆動する場合であっても、出力リップル電圧値を低減し、干渉の影響を低減した良好な画像形成が可能になる。
【0064】
あるいは、本実施形態に係る電源装置によれば、圧電トランスにおける駆動周波数相互の干渉の影響を抑え、小型化と高画質化を両立し、実験による対策を必要としない圧電トランスを用いた電源装置の提供が可能になる。
【0065】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、高圧回路に分周回路(例えば、141Y)を設ける構成が出力リップル電圧値を低減するのに効果的であることを説明した。本実施形態では、分周回路の分周比をエンジンコントローラ(DCコントローラ)201から設定可能とした構成を説明する。
【0066】
図7は第2実施形態に係る圧電トランスを使用した転写高圧電源の構成を示す図であり、第1実施形態に係る図1と同一の構成に関しては同一の参照番号を付している。
【0067】
オペアンプ109Yの出力電圧検出ラインと、Mステ-ション高圧回路の圧電トランス101Mの駆動信号ライン(112M、111M、115M)及び整流回路接続ライン(102M、103M、104M等)とは近接して配置される。このとき、Yステーション高圧回路とMステーション高圧回路との間には、破線で示されるコンデンサ151、152が接続された回路モデルが形成される。また、オペアンプ109Mの出力電圧検出ラインと、Yステ-ション高圧回路の圧電トランス101Yの駆動信号ライン(112Y、111Y、115Y)及び整流回路接続ライン(102Y、103Y、104Y等)とは近接して配置されている。このとき、Mステーション高圧回路とYステーション高圧回路との間には、破線で示されるコンデンサ153、154が接続された回路モデルが形成される。
【0068】
Yステーション高圧回路の電圧制御発振器(VCO回路)110Yに接続された分周回路141Yはプログラマブルカウンタ等、外部からの分周比の設定が可能な回路で構成されている。また、同様にMステーション高圧回路の電圧制御発振器(VCO回路)110Mに接続された分周回路141Mもプログラマブルカウンタ等、外部からの分周比の設定が可能な回路で構成されているものとする。分周回路141Yには接続用の端子(端子142Ya、142Yb、142Yc)が設けられており、各端子はDCコントローラ201内に実装されたMPU207の出力ポートに接続されている。また、同様に、分周回路141Mにも接続用の端子(端子142Ma、142Mb、142Mc)が設けられており、各端子はDCコントローラ201内に実装された制御素子(例えば、MPU207)の出力ポートに接続されている。本実施形態において、分周比の設定に関する制御の主体は、MPU207を例として説明しているが、本発明の趣旨は、これに限定されるものでない。例えば、ASICや他の半導体デバイスを利用する構成でも同様の構成を実現することは可能である。
【0069】
図8は、DCコントローラ201のMPU207による分周比の設定を説明する図である。例えば、分周比2を分周回路141Y、141Mに設定する場合、MPU207の制御の下、端子(142Yc、142M)がオン(ON:1)、端子(142Ya、142Ma)及び端子(142Yb、142Mb)がオフ(OFF:0)に制御される。DCコントローラ201のMPU207は、各端子のオン、オフ状態を切り替えることにより、各分周回路(141Y、141M)に分周比(1、2、4、8、16、32、・・・等)を設定することが可能になる。
【0070】
分周比を固定せず、予め決められた値(例えば、1、2、4、8、16、32、・・・等)から選択設定を可能にすることで、転写高圧電源の回路基板を設計する際、使用する電子部品や、特に、電子部品の配置等の自由度を増大させることが可能になる。
【0071】
例えば、干渉周波数Fbを大きくするように各分周回路の分周比を設定することで、干渉画像周期Tbを小さくすることができるので((2)式)、周波数の干渉の影響による印刷画像の品質低下を防止することが可能になる。
【0072】
図9(a)は、バイアス電圧(制御出力電圧(Edc))と駆動周波数の関係を示す図である。図9(b)は図9(a)の破線で囲んだ領域901を拡大した図である。図9(b)に示すようにYステーション高圧回路の制御出力電圧はEdc_YLに設定され、Mステーション高圧回路の制御出力電圧はEdc_MLに設定されているものとする。2つのステーション高圧回路の制御出力電圧(Edc)の差分をΔEdcとする(図9(b)を参照)。
【0073】
Yステーション高圧回路が制御出力電圧Edc_YLを出力する時の圧電トランス101Yの駆動周波数をFx_YL、Mステーション高圧回路が制御出力電圧Edc_MLを出力する時の圧電トランス101Mの駆動周波数をFx_MLとする。このとき、Yステーション高圧回路及びMステーション高圧回路における駆動周波数の差分はΔFLとなる。
【0074】
環境変動等により、Yステーション高圧回路の制御出力電圧がEdc_YH、Mステーション高圧回路の制御出力電圧がEdc_MHに上昇する場合、制御出力電圧の差分はΔEdcである。このとき、各ステーション高圧回路の圧電トランスの駆動周波数は、図9(b)に示すようにFxY_H、FxM_Hとなり、その差分はΔFHとなる。駆動周波数の差分を比較した場合、ΔFH<ΔFLとなる。すなわち、環境変動等の影響により制御出力電圧が共に上昇する場合、駆動周波数の差分(ΔFH)は低下することになる。ΔFHが300Hzを下回る場合、プロセス速度PSを100mm/sとすると、印刷画像の濃度ムラとして人間の目で認識できるピッチは0.3mm以上となり((2)式を参照)、印刷画像の濃度ムラが発生する。
【0075】
駆動周波数の差分(ΔFH)が300Hzを下回ることよる印刷画像の濃度ムラの発生を防止するために、MPU207は、図8の設定例に従って、各分周回路(141Y、141M)の分周比を設定することが可能である。分周比の設定(例えば、分周比1を2に変更すること)により出力リップル電圧値は低減され、駆動周波数の干渉の影響を低減した良好な画像形成を実現することができる。
【0076】
ここで、Y及びMステーション高圧回路における分周回路の分周比を双方1に設定した状態(142Ya=142Yb=142Yc=0、142Ma=142Mb=142Mc=0)で、駆動周波数の差分ΔFL=500Hzの場合を考える。このとき、環境変動により駆動周波数の差分ΔFH=250Hzになった場合、MPU207は、Yステーション高圧回路における分周回路141Yの分周比を「2」(142Ya=142Yb=0、142Yc=1)に設定する。分周比の設定を「1」から「2」に切り替えることで出力リップル電圧値を低減することができる(図6を参照)。すなわち、駆動周波数の差分が小さくなる場合には、分周比の設定を大きくして干渉エネルギーを低減させて、出力リップル電圧値の影響を低減することが可能になる。
【0077】
分周比の設定の制御は、駆動周波数の差分(ΔEdc)に対して、各分周回路に設定するべき分周比を予めテーブルに記憶しておくことで実現が可能である。また、分周比の設定を変える場合、電圧制御発振器(VCO回路)110Y、110Mの動作周波数は分周比の設定に応じて可変することとする。この際、DCコントローラ201は、分周比に対応した高圧電源の制御信号を反転入力端子(-端子)に入力することが可能である。
【0078】
本実施形態によれば、分周比を固定せず、設定の変更を可能にすることで、転写高圧電源の回路基板を設計する際、使用する電子部品や、特に、電子部品の配置等の自由度を増大させることが可能になる。
【0079】
あるいは、本実施形態によれば、電子部品の配置や回路の動作状態に応じて分周比を設定することで、出力リップル電圧値を低減し、干渉の影響を低減した良好な画像形成が可能になる。
【0080】
あるいは、本実施形態に係る電源装置によれば、圧電トランスにおける駆動周波数相互の干渉の影響を抑え、小型化と高画質化を両立し、実験による対策を必要としない圧電トランスを用いた電源装置の提供が可能になる。
【0081】
(第3実施形態)
第2実施形態においては、分周回路の分周比をエンジンコントローラ(DCコントローラ)201から設定可能とした構成を説明した。本実施形態では、一の電源回路における圧電トランスの駆動周波数と、他の電源回路における圧電トランスの駆動周波数との干渉周波数成分の大きさを検出する検出回路(143Y、143M)を備える。この検出回路(143Y、143M)の検出結果に基づいて、分周回路の分周比の設定を制御する構成を説明する。
【0082】
図10は第3実施形態に係る圧電トランスを使用した転写高圧電源の構成を示す図であり、第2実施形態に係る転写高圧電源の構成を示す図7と同一の構成に関しては同一の参照番号を付している。
【0083】
Yステーション高圧回路の電圧制御発振器(VCO回路)110Yに接続された分周回路141Yはプログラマブルカウンタ等、外部からの分周比の設定が可能な回路で構成されている。また、同様にMステーション高圧回路の電圧制御発振器(VCO回路)110Mに接続された分周回路141Mもプログラマブルカウンタ等、外部からの分周比の設定が可能な回路で構成されているものとする。
【0084】
分周回路141Yには接続用の端子(端子142Ya、142Yb、142Yc)が設けられており、各端子はDCコントローラ201内に実装されたMPU207の出力ポートに接続されている。また、同様に、分周回路141Mにも接続用の端子(端子142Ma、142Mb、142Mc)が設けられており、各端子はDCコントローラ201内に実装された制御素子(例えば、MPU207)の出力ポートに接続されている。
【0085】
また、電圧制御発振器(VCO回路)110Y、110Mへの入力信号は、検出回路143Y、143Mにも入力される。検出回路143Y、143Mで処理された結果は接続端子144Y、144Mを介してDCコントローラ201のMPU207に入力される。
【0086】
図11は、Yステーション高圧回路に設けられている検出回路143Yの構成を示すブロック図である。Mステーション高圧回路内にも同様の構成のものが設けられているものとする。図11の構成において、電圧制御発振器(VCO回路)110Yへの入力信号は端子143inを介して検出回路143Yに入力される。検出回路143Yには、カットオフ周波数Fc=350Hzのローパスフィルタ1101Y(以下、「LPF」という)が設けられている。LPF1101Yの出力側にはアンプ素子(amp)1102Yが設けられており、amp1102Yは、LPF1101Yにて高周波成分がカットされた信号(LPFout)、即ち、干渉周波数成分のみが載った信号を増幅する。コンデンサ1103YにてDC成分を除去し、AC成分のみを整流回路(1104Y〜1107Y)にてDC化する。DC化された信号は端子143outを介して出力され、MPU207に入力される。
【0087】
例えば、分周回路141Y、141Mの分周比を1、Yステーション高圧回路における圧電トランス101Yの駆動周波数をFx1=163KHz、Mステーション高圧回路の圧電トランス101Mの駆動周波数をFx2=163.25KHzとする。この場合、駆動周波数Fx1とFx2の差分周波数(干渉周波数)250Hzの信号が検出回路143Yの入力信号として入力される。入力信号(143in(図12(a))はLPF1101Yにより、350Hz以上の高周波成分がカットされ(LPFout(図12(b)))、図12(c)に示す143outなるDC化された信号がMPU207に入力される。
【0088】
MPU207はDC化された信号(143out)の電圧値と、分周比の設定を変更する基準となる閾値電圧(Vth)とを比較する。そして、MPU207は閾値電圧(Vth)よりもDC化された信号(143out)の電圧値が大きい場合、視認可能な印刷画像の濃度ムラが発生すると判定し、分周比の設定を変更する。
【0089】
例えば、分周回路の分周比がY及びMステーション高圧回路において双方1に設定されている場合、MPU207は、Yステーション高圧回路における分周回路141Yの分周比を「2」(142Ya=142Yb=0、142Yc=1)に設定する。分周比の設定は、第1実施形態で説明したように、各端子(142Ya、142Yb、142Yc)に印加するオン、オフ信号の切り替えにより設定が可能である。分周比の設定を「1」から「2」に変更することで出力リップル電圧値を低減することができる(図6を参照)。すなわち、検出回路143Yの処理により得られた電圧値が閾値電圧(Vth)より大きくなる場合には、分周比の設定値を大きくして干渉エネルギーを低減させて、出力リップル電圧値の影響を低減することが可能になる。
【0090】
上述の説明では、Yステーション高圧回路の分周比の設定を変更する例を示している。Mステーション高圧回路において、検出回路143Mの処理によりDC化された信号の電圧値が閾値電圧(Vth)より大きくなる場合には、分周比の設定値を大きくして干渉エネルギーを低減させて、出力リップル電圧値の影響を低減することも可能である。
【0091】
また、分周比の設定を変える場合、電圧制御発振器(VCO回路)110Y、110Mの動作周波数は分周比の設定に応じて可変することとする。この際、DCコントローラ201は、分周比に対応した高圧電源の制御信号を反転入力端子(-端子)に入力することが可能である。検出回路143Y、143Mにより干渉周波数成分の大きさの検出を実行する高圧回路(ステーション)と、分周比の設定を行なう高圧回路(ステーション)の組み合わせは、DCコントローラの制御の下、選択が可能である。例えば、Yステーション高圧回路及びMステーション高圧回路の双方における干渉周波数成分の大きさの検出結果に基づいて、いずれか一方、または双方の高圧回路の分周比の設定を変更することが可能である。
【0092】
また、プロセス速度PSが100mm/Sで、干渉周波数Fbが300Hz以下になると、(2)式から印刷画像の濃度ムラとして人間の目で認識できるピッチは0.3mm以上となる。このことから、本実施形態ではLPF1101Yのカットオフ周波数を350Hzと設定しているが、例えば、画像形成装置のプロセス速度PSに応じて、カットオフ周波数を変更することも可能である。このカットオフ周波数の制御もDCコントローラ201を介して行うことが可能である。
【0093】
第1乃至第3実施形態においては、画像形成装置の説明を、タンデム方式のカラー画像形成装置に用いる転写高圧電源を例に説明している。更に、本発明の適用対象として、画像形成装置は、カラー画像形成装置に限定されるものではなく、モノクロ画像を形成するモノクロ画像形成装置であってもよい。画像形成装置を構成する高圧電源装置202に、図1、図7、図10の何れかの回路構成を適用することで、出力リップル電圧値を低減し、干渉の影響を低減した良好な画像形成の実現が可能になる。
【0094】
尚、第1乃至第3実施形態で説明した転写高圧電源の回路構成においてはディスクリート部品で構成されていても、半導体ICで構成されていたとしてもよい。例えば、第1乃至第3実施形態で説明した転写高圧電源の回路構成おいて、電圧制御発振器(VCO)及び分周回路はディスクリート部品により構成することが可能である。あるいは、本実施形態にかかる電源装置おいて、電圧制御発振器(VCO)及び分周回路は集積化された半導体ICデバイスで構成することも可能である。
【0095】
本実施形態によれば、分周比を固定せず、設定の変更を可能にすることで、転写高圧電源の回路基板を設計する際、使用する電子部品や、特に、電子部品の配置等の自由度を増大させることが可能になる。
【0096】
また、本実施形態によれば、電子部品の配置や回路の動作状態に応じて分周比を設定することで、出力リップル電圧値を低減し、干渉の影響を低減した良好な画像形成が可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電源回路を備え、当該各電源回路が、圧電トランスと、制御信号に応じて前記圧電トランスを駆動するために使用する動作周波数の信号を発生する電圧制御発振器と、を有する電源装置であって、
少なくとも一の電源回路における電圧制御発振器が発生する前記動作周波数を分周し、当該一の電源回路の圧電トランスを駆動するための駆動周波数の信号を出力する分周回路を備え、
前記少なくとも一の電源回路及び他の電源回路から電圧が出力されるとき、前記一の電源回路における電圧制御発振器が発生する前記動作周波数は、前記駆動周波数に対して高くなるように制御されることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記分周回路の分周比は外部回路で生成された信号に従い任意に設定可能であることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記一の電源回路における圧電トランスの駆動周波数と、前記他の電源回路における圧電トランスの駆動周波数との干渉周波数成分の大きさを検出する検出回路を更に備え、
前記検出回路の検出結果に基づいて、前記分周回路の分周比の設定が制御されることを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記電圧制御発振器及び前記分周回路はディスクリート部品により構成されること特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記電圧制御発振器及び前記分周回路は集積化された半導体ICデバイスで構成されること特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項6】
画像形成装置であって、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電源装置と、
トナー画像を形成する画像形成手段とを備え、
前記画像形成手段は、前記電源装置により供給される電圧を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−62077(P2011−62077A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273007(P2010−273007)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【分割の表示】特願2006−48978(P2006−48978)の分割
【原出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】