説明

電源装置

【課題】軽負荷状態でも高い電源変換効率を維持し、省エネルギー化を図る電源装置の提供。
【解決手段】入力電源(5)に共通に入力が接続された複数のコンバータ(8)と、前記複数のコンバータの共通接続された出力と負荷装置(6)との間に接続され負荷電流を検出する電流検出回路(2)と、前記電流検出回路(2)で検出された負荷電流値に応じてコンバータ(8)の並列運転数を算出し運転するコンバータ(8)には前記コンバータのスイッチング素子をオン・オフさせる信号を供給し、停止するコンバータ(8)に対して前記コンバータのスイッチング素子をオン・オフさせる信号をオフに固定する制御を行う制御回路(9)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源装置に関し、特に複数の電源を並列運転する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
装置(負荷)に電源を供給する電源回路は、該装置の最大消費電力に合わせて設計される。例えば図8に示すように、大電力の電源18(一台)から装置(負荷)6に電源を供給する構成、あるいは、図9に示すように、並置された複数の小電力の電源19の入力を入力直流電源5に共通に接続し、複数の電源19の出力を共通接続して装置(負荷)6に電源を供給する構成が用いられる。なお、図9において、各電源19の出力は、他の電源19からの電流の逆流を防止するためのダイオード等を含む構成とされ、並列接続が可能とされる。
【0003】
図8、図9の電源18、19として、スイッチング電源を用いる場合、該スイッチング電源の負荷変動による電力変換効率も変動する。負荷の変動に対する電力変換効率は、例えば図10に示すような特性となる。図10において、横軸は負荷率、縦軸は電力変換効率ηである。ここで、負荷率は、定格出力容量(単位:att)(あるいは定格電流(単位:mpere))に対する負荷容量(W)(負荷電流)の比率(百分率)で与えられる。また、電力変換効率ηは、入力電力PINと出力電力POUTの比率
η=POUT/PIN
で与えられる。
【0004】
図10に示すように、負荷が軽いほど(負荷率が低いほど)、電力変換効率ηが悪化する。電源回路は、常に最大負荷状態で使用されるということは少なく、むしろ、軽負荷の状態の方が時間的に長いというのが一般的である。装置6(図8又は図9)によっては、スタンバイ状態(軽負荷状態)が長時間継続するものもある。
【0005】
軽負荷状態のときに、電源回路が通常の動作状態のままであると、電力変換効率ηが低下している状態で電源回路が動作することとなり、省エネルギー化の妨げとなる。
【0006】
なお、特許文献1には、複数のDC/DCコンバータを並列接続した構成を有し、軽負荷の場合の電力変換効率の低下を防止する技術として、出力端子と負荷との間に電流検出回路を備え、総電流量に応じて、動作させるDC/DCコンバータの個数を制御するDC/DCコンバータオン/オフ制御回路を備えた構成が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、複数のコンバータユニットを並列接続した構成を有し、直流電力を入力し安定に制御された直流電圧を出力するコンバータ装置において、低負荷率時の効率を向上させる構成が開示されている。コンバータユニットは、運転動作モードと待機動作モードの動作モードを切り換える動作モード切替回路を有し、コンバータ装置の出力電圧が運転開始電圧以下であることが検出された場合に、運転動作モードに遷移し、電流検出回路で検出された電流が運転停止電流以下の場合、待機動作モードに切り替える構成が開示されている。
【0008】
さらに、特許文献3には、交流電力を直流電力に変換する複数の整流器ユニットを搭載する直流電源装置が非効率的な負荷率の運転である場合、整流器ユニットの台数を制御し、高電力変換効率で整流器ユニットを運転する直流電源装置が開示されている。直流電力を出力する出力端子に対し並列に接続された複数の整流器ユニットと、整流器ユニット毎に整流器ユニットと交流電力源との間に設けられた配線用遮断器と、直流出力電力の電流値を測定し、測定した電流値を出力する電流センサと、電流値により整流器ユニット各々の交流から直流への変換する損失が最小となる整流器ユニットの稼働台数を求め、稼働台数の整流器ユニットから直流電力が出力されるよう制御する稼働台数制御部とを有し、稼働台数制御部が、稼働台数に対応するように、整流器ユニットに接続されている配線用遮断器の開閉制御を行う。
【0009】
さらにまた、特許文献4には、交流電力を直流電力に変換する複数整流器ユニットを搭載する直流電源装置が非効率的な負荷率の運転である場合、整流器ユニットの台数を制御し、高電力変換効率で整流器ユニットを運転する直流電源装置として、整流器ユニットが出力電圧を分圧した検出電圧値と、基準電圧とを比較して出力電圧の制御を行い、ダイオードを介して出力電圧を出力し、稼働台数制御部が分圧回路の分圧比を制御し、整流ユニットの稼働制御を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−127573号公報
【特許文献2】特開2007−135373号公報
【特許文献3】特開2010−154613号公報
【特許文献4】特開2010−154614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以下に関連技術の分析を与える。
【0012】
上記引用文献1乃至4等の関連技術においては、複数の電源を並列接続し、装置の負荷電流に合わせて動作させる電源の個数を制御し、軽負荷の場合の電力変換効率の低下を防止する構成が開示されているが、単独で運転が可能な電源(コンバータ、コンバータユニット、整流器ユニット)を複数並列接続した構成において、電源の個数を制御している。
【0013】
ここで、セル化したコンバータを複数備えた電源において複数のセル化したコンバータを個別にフィードバック制御する方式について検討すると、この方式では、制御部が複雑化する、という問題がある。電源のコンバータ部は、半導体チップへの集積化が進み、半導体スイッチング素子、チョークコイル(インダクタ)、コンデンサ(キャパシタ)等のパワー・デバイスを、1つのチップに集積化(ワンチップ化)する方向にある。今後、複数のセル化したコンバータを、例えばワンチップ上に搭載する構成の実現にあたり、該複数のセル化したコンバータを個別にフィードバック制御する方式は、制御部が複雑化することから、実用的ではない(以上、本発明者による分析)。
【0014】
本発明は、上記知見に基づき創案されたものであって、さらなる改良を施し、軽負荷状態でも高い電源変換効率を維持し、省エネルギー化を図る電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、入力電源に共通に入力が接続された複数のコンバータと、前記複数のコンバータの共通接続された出力と負荷との間に接続され負荷電流を検出する電流検出回路と、前記電流検出回路で検出された負荷電流値に応じてコンバータの並列運転数を算出し、運転するコンバータには前記コンバータのスイッチング素子をオン・オフさせる信号を供給し、停止するコンバータに対して前記コンバータのスイッチング素子をオン・オフさせる信号をオフに固定する制御を行う制御回路を備えた電源装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、軽負荷状態でも高い電力変換効率が維持でき、省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1の構成を示す図である。
【図2】実施形態2の構成を示す図である。
【図3】参考例の構成を示す図である。
【図4】参考例の動作を示す流れ図である。
【図5】セル化コンバータの構成を模式的に示す図である。
【図6】出力電圧特性を示す図である。
【図7】セル化コンバータの出力電圧特性を示す図である。
【図8】関連技術1の構成を示す図である。
【図9】関連技術2の構成を示す図である。
【図10】変換効率特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するいくつかの好ましい態様(Preferred Modes)によれば、入力電源(5)に共通に入力が接続された複数のコンバータ(図1の8又は図2の11)と、前記複数のコンバータの共通接続された出力と負荷装置(6)との間に接続され負荷電流を検出する電流検出回路(2)と、前記電流検出回路(2)で検出された負荷電流値に応じてコンバータ(8)の並列運転数を算出し、並列運転するコンバータ(図1の8又は図2の11)には、前記コンバータ内のスイッチング素子をオン・オフさせる信号を供給し、停止するコンバータに対して前記コンバータ内のスイッチング素子をオン・オフさせる信号をオフに固定する制御を行う制御回路(図1の9又は図2の12)を備える。
【0019】
また、いくつかの好ましい態様の1つによれば、前記制御回路(9)は、前記コンバータ(8)の出力電圧のフィードバック制御を行い、前記コンバータのスイッチング素子をオン・オフさせるPWM(Pulse Width Modulation)信号を、並列運転する複数のコンバータ(8)に個別に供給する構成としてもよい。この場合、前記制御回路(9)は、停止するコンバータのスイッチング素子に供給する前記PWM信号を、前記コンバータのスイッチング素子をオフに固定する電位に固定する構成としてもよい。
【0020】
あるいは、いくつかの好ましい態様によれば、前記制御回路(12)は、前記コンバータの出力電圧のフィードバック制御は行わず、前記コンバータのスイッチング素子をオン・オフさせるPWM信号として、固定デューティのPWM信号を、並列運転するコンバータ(11)に共通に供給する構成としてもよい。この場合、前記制御回路(12)は、停止するコンバータに対して、前記停止するコンバータのスイッチング素子をオフ固定に設定するための制御信号を供給し、一方、運転するコンバータに対しては、前記制御信号のオフ固定を解除するようにしてもよい。いくつかの好ましい態様の1つによれば、固定デューティのPWM信号を並列運転する複数のコンバータ(11)に共通に供給し、前記負荷電流と出力電圧の特性として、所定範囲の負荷電流に対応する出力電圧の差電圧(負荷電流の所定範囲の上限と下限にそれぞれ対応する出力電圧の電圧差)により、前記並列運転するコンバータの出力電圧/出力電流がバランスする、領域で動作させるようにしてもよい。
【0021】
あるいは、いくつかの好ましい態様の別の1つによれば、前記制御回路(12)は、前記コンバータ(11)の出力電圧のフィードバック制御は行わず、前記コンバータのスイッチング素子をオン・オフさせる固定デューティのPWM(Pulse Width Modulation)信号を並列運転するコンバータ(11)に共通に供給し、入力電源電圧の変動に応じて、前記PWM信号の固定デューティを、別の固定値のデューティに設定し、別の固定値のデューティのPWM信号を並列運転するコンバータに共通に供給するフィードフォワード(feed forward)制御を行うようにしてもよい。
【0022】
あるいは、いくつかの好ましい態様によれば、前記複数のコンバータが、スタンバイ状態(待機系、予備系)のコンバータを含む冗長構成とされ、前記コンバータの動作異常を検出する回路を備え、前記コンバータの動作異常を検出した場合に、前記制御回路へ通知し、前記制御回路は、異常が検出されたコンバータを停止させ、前記スタンバイ状態のコンバータを運用系として動作させるようにしてもよい。
【0023】
いくつかの好ましい態様によれば、前記コンバータがスイッチング電源の電圧変換回路からなる。
【0024】
いくつかの好ましい態様によれば、前記複数のコンバータを1つの半導体チップに集積化される。
【0025】
以下、好ましい基本的な形態(基本概念)の一例を説明し、つづいて参考例、例示的な実施形態を説明する。
【0026】
<好ましい形態の一例>
図5は、好ましい形態の一例の基本構成を示す図である。負荷電流の変動に応じて、並列接続された、複数のセル化コンバータ部15のスイッチング素子のオン、オフを制御することで、全体の動作個数を調整し、出力電圧を高い変換効率を維持して制御する。なお、本明細書では、集積化した小型/小電力のコンバータを「セル化コンバータ」という。
【0027】
前述したように、複数のセル化コンバータを備えた電源において、複数のセル化コンバータを、個別に、フィードバック制御する方式では、制御部が複雑化する。そこで、好ましい形態の1つにおいては、制御部16は、複数のセル化コンバータ部15に対して共通にPWM信号(例えば固定デューティのPWM信号)を生成出力する回路と、複数のセル化コンバータ部15の各々を、個別に、オン又はオフさせる制御を行うコントロール回路で構成している。このような構成とすることで、制御部16の構成、制御の簡素化が期待できる。また、セル化コンバータ部15の多並列電源回路の実用化に資する。なお、デューティ(デューティ比)は、周期Tの矩形波のパルス幅をτとして、D=τ/Tで与えられる。固定デューティとは、周期Tの矩形波に関してそのパルス幅τが一定であることをいう。
【0028】
また、好ましい形態の1つによれば、複数の電源(コンバータ)を並列運転する構成において、負荷の変化に応じ高い変換効率を維持できるように、電源の並列構成をコントロールする。一般に、装置の最大消費電力に合わせて、電源(コンバータ)を複数並列運転する場合、単純に並列接続しただけでは、各電源(コンバータ)の出力電圧、及び、ライン・ドロップ(配線による電圧降下)等のバラツキにより、各電源(コンバータ)の出力電流が均等とならず、特定の電源(コンバータ)に負荷が集中するアンバランスな状態となる。そこで、電源の出力電圧を、負荷電流に対して、図6に示した出力電圧特性のように、傾斜する特性(右肩下がり:負荷電流の増大に伴い出力電圧が低下)を持たせることで、並列運転時の各々の電源(コンバータ)の負荷を均一化(出力電流の平準化)を行うカレント・シェア機能を具備している。
【0029】
図10を参照して説明したように、電源の電力変換効率ηは、負荷電流が軽くなるほど低下する。並列運転時の各々の電源において、カレント・シェア機能により負荷電流を均等に分散すると、装置の負荷が軽い場合には、各電源も均等に軽負荷状態となり、各電源の電力変換効率ηが著しく低下する。装置(負荷)は、常に最大負荷状態で使用されることは少なく、軽負荷の状態の方が時間的に長い場合がある。あるいは、装置によっては、スタンバイ状態が長時間継続するものもある。負荷に応じて、各電源の負荷電流が高い変換効率を得ることができる定格負荷電流の近傍になるように、余分な電源(セル化コンバータ)を個別にシャットダウン(オフ)し、稼働中の電源(コンバータ)の個数をコントロールする。この結果、装置の負荷状態に応じて常に高い変換効率を維持することができ省エネルギー化を図ることができる。
【0030】
<参考例>
以下では、並列運転制御の参考例として、汎用性の高い並列運転可能なオンボード電源(OBP:On Board Power−supply)で構成した場合について説明する。特に制限されないが、オンボード電源は、市販製品を用いることができる。一般に、オンボード電源についても、負荷電流に対する電力変換効率の特性は、図10に示すように、負荷率が定格負荷電流の約75%で電力変換効率ηがピークとなり、約50%以下から急激に低下する。この電力変換効率低下の原因は、オンボード電源内でスイッチング動作させるのに必要となる固定的に存在する回路電流、及び、スイッチング損失等の内部損失の比率が大きくなるためである。したがって、電力変換を効率的に行うには、オンボード電源の負荷電流を高い電力変換効率ηが得られる定格負荷近傍で使用するのが良いことになる。装置が軽負荷状態では、その負荷電流に見合った個数のオンボード電源で並列運転することで各動作中のオンボード電源の負荷電流を定格近傍にコントロールする。この時、余分なオンボード電源には、固定的に存在する内部損失を完全にシャットダウンするようにする。本実施形態では、オンボード電源の入力を遮断する。
【0031】
図3を参照すると、この参考例の構成が示されている。図3において、並列接続された複数(m個)のオンボード電源1と、複数(m個)のオンボード電源1と装置(負荷)6の間に接続され、装置(負荷)6に流れる負荷電流を検出する電流検出回路2と、直流電源5と各オンボード電源1間に接続され、各オンボード電源1をシャットダウンする複数(m個)の遮断機3と、装置6に流れる負荷電流に応じたオンボード電源1の並列個数を算出し、各遮断機3のオン(導通)又はオフ(非導通)を制御するコントロール回路4を備えている。
【0032】
<並列運転数の導出手順>
図4は、図3の参考例において、装置6の負荷電流が変化した場合の動作を説明するフローチャートである。
【0033】
<ステップ1>
装置6の現在の負荷電流(Iout)を電流検出回路2で検出する(S1)。
【0034】
<ステップ2>
電流検出回路2は、コントロール回路4へ負荷電流(Iout)情報を与える(S2)。
【0035】
<ステップ3>
コントロール回路4は、電流検出回路2からの負荷電流(Iout)の値を基に、式(1)より、負荷電流に対し、並列接続しているオンボード電源1の最適個数(n)を算出する(S3)。
【0036】
n=Iout/Iobp ・・・(1)
【0037】
ただし、nは整数値であり、小数点以下は切り上げとする。また、Iobpは、使用オンボード電源の電力変換効率ηが最大となる負荷電流値である。
【0038】
<ステップ4>
次に、並列のオンボード電源1が最適個数(n)になるように、遮断機3へ遮断又は遮断解除の信号を送る(S4)。
【0039】
<ステップ5>
検出された負荷電流に見合った電力変換効率ηを維持する電源が実現できる(S5)。
【0040】
参考例において、装置6の負荷電流(Iout)の検出は、各オンボード電源1の負荷電流を各々検出し、加算した値を使用してもよい。
【0041】
この参考例においては、装置6の負荷電流に応じて、オンボード電源の最適な並列運転数を調整することにより、各並列動作中のオンボード電源は、常に負荷電流に対して高い電力変換効率ηが得られる状態で動作することが可能となる。また、余分なオンボード電源は完全にシャットダウン(遮断)することから、損失を低減することができる。よって、装置システムの全体的な省エネルギー化を図ることができる。あるいは、市販オンボード電源を用いることで、容易に実現できる。このため、汎用性が高い。
【0042】
<例示的な実施形態1>
例示的な実施形態1においては、個別に遮断制御機能を持たないコンバータを複数並列接続し、マイコン等のコントローラを用いて一括制御するように構成したものである。なお、並列運転するコンバータの最適個数(n)の算出機能等、基本的構成は、図3の前記参考例に基づく。例示的な実施形態1においては、制御に必要な回路構成の統一による回路電流の削減を実現可能とし、負荷の状況に応じて、並列運転するコンバータの個数を容易にコントロールできるように工夫が施されている。
【0043】
図1は、例示的な実施形態1の構成を示す図である。なお、図1では、簡単のため、直流電源5とコンバータ8、装置(負荷)6等の正極電源線と負極電源線は1本のラインで示されている。図1において、制御回路9は、各コンバータ8のスイッチング素子のスイッチング制御(PWM制御)、及び、図3の前記参考例で説明した並列運転数の導出手順(図4)に従い、電流検出回路2で検出された負荷電流に応じて、コンバータ8の数の調整を行う。すなわち、図1の制御回路9は、図3の前記参考例で説明した装置6の負荷に応じたコンバータ8の数の調整を行うコントロール回路と、各コンバータ8のスイッチング制御を行う出力制御回路と、を備えている。
【0044】
複数のコンバータ8を並列運転するフィードバック制御には、各種方式が知られているが、実施形態1では、制御回路9側で、個別にコンバータ8のPWM制御を行うものとする。なお、PWM制御方式のスイッチング電源では、出力電圧と基準電圧の差を積分し、積分した電圧を三角波発振波形電圧と比較してスイッチング信号(PWM信号)を生成し、このPWM信号がコンバータ8内のスイッチング素子の制御端子(スイッチング素子をMOSトランジスタで構成する場合にはゲート端子)に供給される。例えばPWM信号のHighパルス期間、スイッチング素子をオンして出力電圧を上昇させ、PWM信号のLowパルス期間、スイッチング素子をオフして出力電圧を下降させ、コンバータ8の出力電圧が基準電圧と等しくなるようにするフィードバック制御が行われる。
【0045】
図1のコンバータ8は電圧変換回路(不図示)からなる。コンバータ8の出力電圧のフィードバック制御、コンバータ8内のスイッチング素子のオン・オフを制御するPWM信号の生成は、全て制御回路9側で行う。このため、マイコン等による一括制御により制御系回路を簡素化し(複数のコンバータ8の出力電圧をフィードバック制御する回路(PWM制御回路)を1つの出力制御回路にまとめたことで簡素化を図る)、制御系回路の消費電流の低減等を図ることができる。
【0046】
特に制限されないが、図1において、コンバータ8は、例えば降圧型DC−DCコンバータ等のスイッチング電源からなる。なお、コンバータ8自体は公知の構成を用いることができるため、図1には、その内部構成は図示されていない。例えば、非絶縁型降圧コンバータ(降圧チョッパ方式)の場合、直流電源5の正極端子は、コンバータ8内のいずれも図示されない、スイッチング素子、コイルを介して正極出力端子(負荷の正極端子)に接続され、直流電源5の負極端子は、コンバータ8内のいずれも図示されない、負極出力端子(負荷の負極端子)に接続され、正極出力端子と負極出力端子間にコンデンサ(平滑用コンデンサ)が設けられ、スイッチング素子とコイルの一端の接続点と負極出力端子間に、整流素子(ダイオード)を備えた構成とされる。あるいは、絶縁型降圧コンバータの場合、直流電源5の正極端子と負極端子間には、コンバータ8内のいずれも図示されないトランス1次側とスイッチング素子が接続され、トランス2次側に整流素子(ダイオード)、コイル、コンデンサを備えた構成とされる。
【0047】
制御回路9は、前述したように、コンバータ8の出力電圧のフィードバック制御を行う。制御回路9から、各コンバータ8に個別に供給される信号10は、PWM出力を含むコンバータ制御信号である。
【0048】
実施形態1は、図3の前記参考例と同様に、制御回路9内のコントロール回路は、装置6とコンバータ8の出力との間に配置された電流検出回路2における電流検出結果に基づき、負荷電流に応じて、動作するコンバータ8の個数を調整する。
【0049】
動作を停止させる余分なコンバータ8には、制御回路9から送出される信号10により、当該コンバータ8内のスイッチング素子をオフに固定することで該スイッチング素子の動作を停止させる。スイッチング素子を例えばNチャネルMOSトランジスタで構成する場合、制御回路9は、スイッチング素子の動作を停止させるため、信号10として、本来のPWMパルス出力のかわりに、Low固定の信号10をNチャネルMOSトランジスタのゲート端子に供給する。この制御の実装として、制御回路9のコントロール回路は、例えば、動作を停止させるコンバータ8に対しては、PWM信号の出力をマスクしLow固定の信号を信号10として出力する制御を行うことで実現される。本実施形態によれば、余分なコンバータ8のスイッチング素子の動作を停止させることで、当該コンバータ8での損失をゼロにする。なお、制御回路9は、動作(運転)する各コンバータ8には、該コンバータ8のスイッチング素子をオン/オフさせるPWM信号を信号10として各コンバータ8に個別に供給する。
【0050】
実施形態1によれば、図3の前記参考例と同様に、装置6の負荷電流に見合った高電力変換効率ηを維持する多並列電源構成を実現することが可能とされ、図3の前記参考例と同様な効果が得られる。
【0051】
なお、制御回路9内のコントロール回路において、電流検出回路2で検出された負荷電流(Iout)の値をもとに、式(1)より、負荷電流に対し、並列接続しているコンバータ8の最適個数(n)を算出する。
【0052】
コンバータ8の最適並列数(n)の導出手順は、図4において、
ステップS3の「オンボード電源」を、「コンバータ」と読み替え、
ステップS4の「コントロール回路より遮断機に対し遮断/遮断解除の指令を出す」を、「制御回路よりコンバータに対して当該コンバータ内のスイッチング素子をオン/オフさせる信号をオフ固定とする、又はオフ固定を解除する」と読み替える。
【0053】
<例示的な実施形態2>
次に例示的な実施形態2について説明する。この実施形態2においても、その基本的構成は、図1の前記例示的な実施形態1と同じである。図1の前記例示的な実施形態1においては、コンバータ8の制御は、出力電圧をフィードバックし、PWM制御等で出力電圧が一定となるように制御している。これに対して、この実施形態2では、コンバータの部品、レイアウトを同一にし、固定のデューティのPWM信号でスイッチング素子をスイッチングさせるセル化したコンバータの並列数で出力電圧を制御している。
【0054】
図2は、実施形態2の構成を示す図である。セル化コンバータ11は、図1のコンバータ8と同様な機能を備え、集積化した小型/小電力のコンバータである(図5のセル化コンバータ部15に対応する)。
【0055】
実施形態2では、制御回路12において、図3の上記参考例で説明した、電流検出回路2での負荷電流の検出結果に基づき、装置6の負荷に応じたコンバータ8の数の調整を行うコントロール回路と、各セル化コンバータ11のスイッチング素子に対して共通に固定デューティのPWM信号を生成出力するPWM信号発生器を備えている。
【0056】
実施形態2において、制御回路12は、複数のセル化コンバータ11に対して、その出力電圧のフィードバック制御は行わず、PWM信号発生器で固定デューティのPWM信号を生成し、固定デューティ(D)のPWM信号は、セル化コンバータ11内のスイッチング素子に供給され、セル化コンバータ11内のスイッチング素子はPWM信号の1周期(T)において固定期間τ=D×T(例えばHigh期間)オンとされ、PWM信号の1周期Tの残りの固定期間T−τ(Low期間)オフとされる。この点が、図1の実施形態1の制御回路9と相違している。その他の負荷の軽重に応じて並列運転させるセル化コンバータ11の数の調整機能等は同じである。
【0057】
制御回路12から複数のセル化コンバータ11に供給される信号13は、制御回路12のPWM信号発生器からの固定デューティのPWM信号(複数のセル化コンバータ11に共通)と、制御回路12のコントロール回路からのコンバータ制御信号(各セル化コンバータ11に個別に供給され、セル化コンバータ11をオフに制御する)を含む。特に制限されないが、例えば、動作を停止させるセル化コンバータ11のスイッチング素子(不図示)には、制御回路12内のコントロール回路から、セル化コンバータ11のスイッチング素子をオフ固定に設定するコンバータ制御信号が供給される。セル化コンバータ11のスイッチング素子がNチャネルMOSトランジスタの場合、例えばLow電位のコンバータ制御信号が当該セル化コンバータ11に供給され、当該セル化コンバータ11では、Low電位のコンバータ制御信号に基づき、PWM信号発生器からの固定デューティのPWM信号をマスクして、当該セル化コンバータ11内のスイッチング素子のゲートをLow固定とし、該スイッチング素子のオフ固定とする構成してもよい。一方、運転するセル化コンバータ11には、スイッチング素子のオフ固定を解除する値(例えばHigh電位)のコンバータ制御信号が供給され、PWM信号発生器からの固定デューティのPWM信号を当該セル化コンバータ11内のスイッチング素子のゲートに伝達する。なお、実施形態2において、コンバータ制御信号により、動作を停止するセル化コンバータ11のスイッチング素子をオフ固定とし、運転するセル化コンバータ11のスイッチング素子には、固定デューティのPWM信号を伝達してオン・オフさせる構成であれば、実装上は、任意の構成が用いられる。
【0058】
次に、実施形態2の動作について説明する。セル化コンバータ11は、入力電圧(Vin)とPWM信号のデューティ(D)が同じであれば、負荷電流に対する出力電圧(Vout)の特性は、例えば図7に示す特性となる。図7において、横軸は負荷電流、縦軸は出力電圧である。
【0059】
この特性を大別すると、
(a) 軽負荷時にチョークコイルが間欠状態になり出力電圧が跳ね上がる領域、
(b) 負荷電流に対し緩やかに出力電圧が変化する領域、
(c) 過電流保護による垂下領域、
の三つの領域に分けられる。
【0060】
降圧型DC/DCコンバータの場合、図7の(b)の領域(負荷が重くなるほど出力電圧は低下する)では、PWM信号のデューティ(D)が固定のとき、入力電圧(Vin)、出力電圧(Vout)は次式(2)で表わされる。
【0061】
Vout≒Vin×D ・・・(2)
【0062】
出力電圧の変動ΔVout(図7の領域(b)の両端の出力電圧の差ΔVout)は、負荷電流の変動によるパターン、部品等の電圧ドロップによる。
【0063】
図7の領域(b)の特性(図6の右肩下がりの傾斜特性に対応)は、複数のセル化コンバータ11を並列運転する上で、電圧/電流バランス機能として作用する。したがって、電流検出回路2での負荷電流の検出結果に基づき、セル化コンバータ11の並列動作数を決定した後に、並列運転される複数のセル化コンバータ11は、ΔVoutの範囲内で、出力電圧のバラツキ等が吸収され、出力電圧/電流がバランスされることになる。
【0064】
よって、実施形態2においても、図3の参考例及び図1の前記例示的な実施形態1と同様の手法により、制御回路12のコントロール回路において、負荷電流に応じてセル化コンバータ11の並列運転数を調整することで、出力電圧の調整が可能となる。
【0065】
なお、図7において、出力電圧の変動ΔVoutの傾斜がないか、小さすぎると、各セル化コンバータ11の出力電圧のバラツキ等により出力電圧の高いセル化コンバータ11からのみ負荷電流が出力されることになり、その結果、バランスが大きく崩れる。
【0066】
実施形態2によれば、図1の実施形態1と同じく、動作中のセル化コンバータ11は常に電力変換効率ηが高い領域で使用されることとなる。よって、装置の状態変化に応じて省エネルギー化が維持される。
【0067】
また、実施形態2によれば、セル化コンバータ11の集積度を上げて小型/小電力化し、セル数を増やすことで出力の電圧精度をあげることが可能となる。
【0068】
実施形態2では、セル化コンバータ11を固定デューティで動作させ、並列運転数をコントロールする。実施形態2では、実施形態1と相違して、各コンバータを個別にPWM制御することは行わないことから、実施形態1と比べて、コントロール系回路の簡素化、及び、制御系での損失(power dissipation)の低減をさらに図ることができる。
【0069】
また、実施形態2において、電源回路への入力電圧の変動が大きいシステムに適用する場合、入力電圧(入力電源電圧)に応じて、各セル化コンバータ11へマルチ出力しているPWM信号13のデューティ(D)を変化させるフィードフォワード制御を追加することにより、出力電圧(Vout)の精度を向上することができる。このため、実施形態2は、図3の前記参考例、図1の前記例示的な実施形態1の効果を奏することはもとより、出力電圧を安定化するフィードバック制御方式に比べ、出力電圧をセル化したコンバータ11の並列運転数でコントロールするため電圧/電流を自動バランスが可能である(ただし、出力電圧の安定精度は、若干低下する)。
【0070】
また、実施形態2によれば、個別に、PWM制御する前記実施形態に比べ、制御回路の構成が簡素化される。この結果、実施形態2によれば、小型、低消費電力化を図ることができる。
【0071】
<例示的な実施形態3>
次に、例示的な実施形態3について説明する。実施形態3は、直流電源と負荷装置間に、並列配置される複数のコンバータの少なくとも1つをスタンバイ状態(待機系、あるいは予備系ともいう)とした冗長構成が提供される。なお、図1又は図2に示したように、複数のコンバータの出力と負荷装置間に負荷電流を検出する電流検出回路を備え、制御回路において、負荷電流に基づき最適な並列運転数を導出し、余分なコンバータのスイッチング素子をオフとする構成とされる。
【0072】
さらに、図1の各コンバータ8(あるいは図2のセル化コンバータ11)に、動作異常を検出する回路(不図示)が追加される。動作異常を検出する回路は、例えば温度センサ等を含む。
【0073】
動作異常を検出する回路においてコンバータの動作異常を検出した場合に(例えば検出温度が所定の温度以上である場合)、制御回路(図1の9、図2の12)へ通知し、制御回路(図1の9、図2の12)は、異常が検出されたコンバータを強制停止させ、スタンバイ状態の正常のコンバータを動作させることで、電源機能を維持させることができる。実施形態3によれば、このような冗長構成をとることで、電源回路の信頼性を向上させることができる。
【0074】
上記実施形態1乃至3の電源回路(電源装置)は、一般的な電子機器装置の電源に適用される。
【0075】
なお、上記の特許文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
1 オンボード電源
2 電流検出回路
3 遮断機
4 コントロール回路
5 入力電源(直流電源)
6 装置
7 オン/オフ信号
8 コンバータ
9 制御回路
10 PWM出力及びコンバータ制御信号
11 セル化コンバータ
12 制御回路
13 PWM出力
14 セル化した多並列電源回路構成
15 セル化コンバータ部
16 制御部
17 負荷
18 電源(大電力)
19 電源(小電力)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電源に共通に入力が接続された複数のコンバータと、
前記複数のコンバータの共通接続された出力と負荷との間に接続され負荷電流を検出する電流検出回路と、
前記電流検出回路で検出された負荷電流値に応じてコンバータの並列運転数を算出し、運転するコンバータには前記コンバータのスイッチング素子をオン・オフさせる信号を供給し、停止するコンバータに対して前記コンバータのスイッチング素子をオン・オフさせる信号をオフに固定する制御を行う制御回路と、
を備えた、ことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記コンバータの出力電圧のフィードバック制御を行い、前記コンバータのスイッチング素子をオン・オフさせるPWM(Pulse Width Modulation)信号を並列運転するコンバータに個別に供給する、ことを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御回路は、停止するコンバータに対して、前記PWM信号を、前記停止するコンバータのスイッチング素子をオフ固定とする電位に固定する、ことを特徴とする請求項2記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記コンバータの出力電圧のフィードバック制御を行わず、前記コンバータのスイッチング素子をオン・オフさせる固定デューティのPWM(Pulse Width Modulation)信号を、並列運転するコンバータに共通に供給する、ことを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項5】
前記制御回路は、停止するコンバータに対して、前記停止するコンバータのスイッチング素子をオフ固定に設定する制御信号を供給し、運転するコンバータに対しては、前記制御信号のオフ固定を解除する、ことを特徴とする請求項4記載の電源装置。
【請求項6】
前記負荷電流と前記出力電圧の特性として、所定範囲の前記負荷電流に対応する前記出力電圧の差電圧により、前記並列運転するコンバータの出力電圧、出力電流がバランスする、領域で動作させる、ことを特徴とする請求項4又は5記載の電源装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記コンバータの出力電圧のフィードバック制御を行わず、前記コンバータのスイッチング素子をオン・オフさせる固定デューティのPWM(Pulse Width Modulation)信号を並列運転するコンバータに共通に供給し、
前記入力電源電圧の変動に応じて、前記PWM信号のデューティの固定値を、別の固定値に設定し、前記別の固定値のデューティのPWM信号を、並列運転するコンバータに共通に供給するフィードフォワード制御を行う、ことを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項8】
前記複数のコンバータが、スタンバイ状態のコンバータを少なくとも1つ含む冗長構成とされ、
前記コンバータの動作異常を検出する回路を備え、
前記コンバータの動作異常を検出した場合に、前記制御回路へ通知し、
前記制御回路は、異常が検出されたコンバータを停止させ、前記スタンバイ状態のコンバータを動作させる、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項9】
前記コンバータが、スイッチング電源の電圧変換回路からなる、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項10】
前記複数のコンバータを1つの半導体チップに集積化してなる請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−210013(P2012−210013A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72344(P2011−72344)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000232254)日本電気通信システム株式会社 (586)
【Fターム(参考)】