電源電流供給システム、コネクタ、及び電源電流供給方法
【課題】ギャング方式による1つのポートを介した電源電流の供給において、1ポート分の定格電流(最大電流)より大きい電流をより低コストで供給可能にするための技術を提供する。
【解決手段】USBソケット20aに接続されたダミーコネクタ40は、自身が必要とする電源電流より大きい電源電流をPC20に要求し、その差分の電源電流を確保する。別のUSBソケット20aに接続されたハードディスク装置30は、1つのUSBソケット20aで想定されている最大電流よりも大きい電流を必要とするが、USB規格に沿って、最大電流を要求する。CPU21は、PCH27を介して電源回路28を制御し、ダミーコネクタ40、及びハードディスク装置30がそれぞれ要求する分の電源電流を供給させる。この結果、ハードディスク装置30には、ダミーコネクタ40によって確保された分の電源電流が供給される。
【解決手段】USBソケット20aに接続されたダミーコネクタ40は、自身が必要とする電源電流より大きい電源電流をPC20に要求し、その差分の電源電流を確保する。別のUSBソケット20aに接続されたハードディスク装置30は、1つのUSBソケット20aで想定されている最大電流よりも大きい電流を必要とするが、USB規格に沿って、最大電流を要求する。CPU21は、PCH27を介して電源回路28を制御し、ダミーコネクタ40、及びハードディスク装置30がそれぞれ要求する分の電源電流を供給させる。この結果、ハードディスク装置30には、ダミーコネクタ40によって確保された分の電源電流が供給される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のインターフェース(ポート)を単位に電源電流を供給するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、数多くの規格が策定されている。規格のなかには、電源電流の供給を想定したものがある。電源電流の供給を想定する規格では、その規格に準拠したインターフェースを介して接続される機器に電源電流を供給することができる。従って、そのようなインターフェースへの接続を想定した機器では、内蔵電池、及びAC電源等は不要とすることができる。このため、そのような機器では、より小型化・軽量化を行うことができ、使用するうえでの準備が容易となる。パーソナルコンピュータ(以降「PC」)等には、電源電流の供給を想定する規格に準拠したインターフェースが複数、設けられるのが普通となっている。このことは、通常PCにはインターフェースを介して電源電流を供給する電源電流供給システムが搭載されていることを意味する。
【0003】
以降、インターフェースは「ポート」とも呼ぶことにする。また、ポートを介して電源電流を供給する電源電流供給システムはPCに構築されていると想定する。そのポートには、電源電流を供給するための少なくとも一つの電源出力端子、及びデータ信号を送受信するための少なくとも一つのデータ信号端子が存在する。
【0004】
ポートへの電源電流を供給する方式の一つに、複数のポートを単位にして、電源電流の供給のオンオフ、過電流の検出を行う方式(以降「ギャング方式」)がある。このギャング方式では、例えば図1に表すように、4つのポート(図1中「Vbusポート」と表記)11(11−1〜11−4)は、ヒューズ12を介して電源回路(図1中「Vbus Source」と表記)に接続される。それにより、電源回路からの電源電流は、ヒューズ12を介して各ポート11に供給されるようになっている。ヒューズ12は、500mAを超える過電流の検出、遮断のためのものである。図1中に表記の「500mA」は、1ポートの定格電流(最大電流)値の例である。
【0005】
ギャング方式では、各ポートに接続された機器は必要な電流値をPC(電流供給)側に通知し、PC側は通知された電流値分、供給する電源電流を増大させる。このことから、ギャング方式では、各ポートに供給可能になる電源電流の最大値は、ポートに接続された機器、及びその数に応じた値となる。
【0006】
近年、ポートに接続されることを想定した機器のなかには、そのポートの定格電流を越える電流を必要する機器が製品化されている。そのような機器(以降「高消費電力機器」と表記)として、例えばコーヒー保温機、電気こたつ、などもある。
【0007】
高消費電力機器に必要な電源電流を供給可能にするために、従来、他のポートに接続されている機器の必要とする電流量をPC側からの指示により変更することが行われていた。このような従来技術(以降「第1の従来技術」)では、必要な電流量を外部からの指示により変更可能な機器(以降「消費電力制御機器」と表記)が一つ以上ポートに接続されている状態を前提とする。この第1の従来技術では、そのような消費電力制御機器が接続されているポート数、及び消費電力制御機器により低減できる電流量に応じて、高消費電力機器により大きい電流を供給することができる。
【0008】
また、従来、PC側の複数のポートと接続可能なアダプタを用意し、そのアダプタを介して高消費電力機器に電流を供給することも行われていた。このような従来技術(以降「第2の従来技術」)では、アダプタと接続させるPC側のポート数分の電流を高消費電力機器に供給することができる。
【0009】
上記第1の従来技術では、ポートに接続された消費電力制御機器が必要とする電流量を供給した後に、PC側の制御で消費電力制御機器の必要とする電流量を変更させる必要がある。このため、PC側には、高消費電力機器のポートへの接続を契機に、他のポートに接続されている諸費電力制御機器の必要とする電流量を変更させる仕組みを用意しなければならない。消費電力制御機器には、外部からの指示により、必要とする電流量を変更させる仕組みを用意しなければならない。そのような仕組みを用意する必要から、PC側、及び消費電力制御機器の双方の制御は複雑化する。この複雑化は、PC側、及び消費電力制御機器それぞれの製造コストを上昇させる。
【0010】
上記第2の従来技術では、アダプタには例えばPC側の複数のポートとケーブルを介して接続するための複数のポート、及び高消費電力機器と接続するためのポートが設けられ、PC側に必要な電流量を通知する機能が搭載される。このようなことから、アダプタの製造コストは大きいものとなる。
【0011】
上記のように、第1及び第2の従来技術は共に、その実現のために必要なコストが大きいという問題点があった。高消費電力機器への必要な電流量の供給は、より低コストで実現できるようにすることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−75902号公報
【特許文献2】WO 2005/022369
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明を適用した1システムは、ギャング方式による1つのポートを介した電源電流の供給において、1ポート分の定格電流(最大電流)より大きい電流をより低コストで供給可能にするための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明を適用した1システムでは、電源電流が供給される電源入力端子と、電源入力端子に並列接続され、それぞれ電源電流を出力する複数の電源出力端子と、電源入力端子への供給電流に対する過電流保護を行う保護回路と、複数の電源出力端子にそれぞれ対応した複数のデータ信号端子と、複数の電源出力端子および複数のデータ信号端子による複数の組のうちの少なくとも一つの組に分離自在に接続され、電源出力端子とデータ信号端子を接続するコネクタとを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明を適用した場合には、ギャング方式による1つのポートを介した電源電流の供給において、1ポート分の定格電流(最大電流)より大きい電流をより低コストで供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ギャング方式による電源電流の供給を説明する図である。
【図2】第1の実施形態による電源電流供給システムの適用例を説明する図である。
【図3】第1の実施形態が適用されたダミーコネクタの回路構成を説明する図である。
【図4】ダミーコネクタの変形例を説明する図である。
【図5】ディスクリプタ情報の構成を説明する図である。
【図6】デバイスディスクリプタの構成を説明する図である。
【図7】第1の実施形態による電源電流供給システムが適用されたパーソナルコンピュータの回路構成を説明する図である。
【図8】第2の実施形態による電源電流供給システムが適用されたパーソナルコンピュータの回路構成を説明する図である。
【図9】第2の実施形態が適用されたダミーコネクタに設けられた選択スイッチを表す図である。
【図10】第2の実施形態が適用されたダミーコネクタの回路構成を説明する図である。
【図11】ターゲットポート、及びダミーコネクタが接続されるUSBソケットに係わる各種信号の時間変化の例を表すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
<第1の実施形態>
図2は、第1の実施形態による電源電流供給システムの適用例を説明する図である。本実施形態による電源電流供給システムは、図2に表すように、ノート型のパーソナルコンピュータ(PC)20に適用されている。PC20本体側面には、電源電流が供給される2つのポート20aが設けられている。本実施形態による電源電流供給システムは、ポート20aに接続可能なダミーコネクタ40を備える。このダミーコネクタ40は、本実施形態を適用したコネクタに相当する。ここでは、ポート20aはUSB(Universal Serial Bus)コネクタと想定する。USBコネクタには、メス側コネクタと、そのメス側コネクタと接続されるオス側コネクタの2種類がある。それらを区別するために、メス側コネクタは「USBレセプタクル」或いは「USBソケット」と呼び、オス側コネクタは「USBプラグ」と呼ぶことにする。PC20側にはUSBコネクタ20aとして「USBソケット」が設けられる。USB規格としては、USB2.0を想定する。USB規格では、その種類に係わらず、電圧は5Vである。
【0019】
図2中の30は、USBプラグ30aが付いたUSBケーブル30bを備え、そのUSBケーブル30bを介してUSBソケット20aと接続できるハードディスク装置(HDD)である。このハードディスク装置30は、USB2.0で定められた1ポートの定格電流(最大電流)である0.5Aより大きい電流、例えば1Aの電流を必要とする。ダミーコネクタ40は、そのような1Aの電源電流のハードディスク装置30への供給を可能とさせる。
【0020】
図3は、第1の実施形態が適用されたダミーコネクタの回路構成を説明する図である。
図3中に表記の1〜4の数字は、ダミーコネクタ40に設けられたUSBプラグ(不図示)の各ピンに割り当てられたピン番号を表している。Vbus、GND、D−(−DATA)、D+(+DATA)はそれぞれ、信号線を流れる信号の種類を表している。信号Vbus、GNDは供給される電源電流である。信号D−、D+はデータ通信される信号であり、それらの信号は差動信号である。
【0021】
ダミーコネクタ40は、図3に表すように、不図示のUSBプラグのピン番号が1のピンが信号線42と接続されている。同様に、ピン番号が2のピンは信号線43、ピン番号が3のピンは信号線44に、ピン番号が4のピンは信号線45にそれぞれ接続されている。LSI(Large Scale Integration)41は、全ての信号線42〜45と接続されている。
【0022】
信号線42と信号線44は、抵抗46を介して接続されている。それにより、信号D+はプルアップされる。このプルアップにより、ホスト(機器の接続先)は、USB規格に沿ってダミーコネクタ40を例えばUSB規格のフルスピードデバイスとして認識する。
【0023】
LSI40は、ダミーコネクタ40の接続先(ここではPC20)によるダミーコネクタ40の識別、消費電力の情報を含むディスクリプタ情報を格納した不揮発性メモリ41aを備えている。ディスクリプタ情報は、ホストに送信される。ホストにとっては、信号線D+のプルアップの存在のみによってダミーコネクタ40をフルスピードデバイスとして認識することが可能であることから、LSI40は省いても良い。図4は、図3上のLSI41を省いた場合のダミーコネクタの回路例を表している。信号線43は、抵抗46により信号線42と接続されたことにより、信号D−はプルアップされている。信号D−のプルアップにより、ホストは、ダミーコネクタ40をロースピードデバイスとして認識する。
【0024】
図5は、ディスクリプタ情報の構成を説明する図である。図5に表すように、ディスクリプタ情報は、デバイスディスクリプタ、コンフィグレーションディスクリプタ、インターフェースディスクリプタ、エンドポイントディスクリプタ、及びストリングディスクリプタ、を含む情報である。
【0025】
ストリングディスクリプタには機器、インターフェースなどの説明の記述や、機器のシリアル番号を設定できる。それにより、ストリングディスクリプタは、説明の記述の項目毎に用意することができる。
【0026】
デバイスディスクリプタには、図6に表すように、各種属性等の情報が記述される。例えばデバイスクラス61は、USBハブやキーボード、マウスなど、機器の分類(クラス)を表すための情報である。USB規格では、同じクラスに属する機器は同じリクエストパケットを使えるといった、機器の制御の共通化が図られている。ベンダID62、プロダクトID63は、ホスト(図2に表す構成ではPC20)側がロードすべきデバイスドライバの特定に用いられる。制御の共通化が図られた機器、例えばHID(Human Interface Device)やマスストレージデバイス等では、デバイスクラス61からデバイスドライバを特定することができる。ストリングインデックス(プロダクト)64は、機器の説明等が記述されたストリングディスクリプタへのインデックスを指定する。
【0027】
コンフィグレーションディスクリプタには、インターフェースの数、機器の消費電力、電源電流の供給方法などを記述することができる。インターフェースディスクリプタには、インターフェースの仕様が記述される。この仕様の一つとして、エンドポイントの数が記述される。エンドポイントは、ホストと機器を結ぶ論理的な通信経路となるバッファである。エンドポイント毎に、エンドポイント番号、転送方向、転送方式、最大パケットサイズが定義される。ホストと機器の間のデータ転送は、その転送内容に応じたエンドポイントを用いて行われる。エンドポイントディスクリプタは、そのような定義内容がエンドポイント毎に記述される。
【0028】
ホスト(PC20)に接続された機器は、ホストからの要求により、要求されたディスクリプタを送信する。図3に表すダミーコネクタ40のLSI41は、不揮発性メモリ41aに以下のようなディスクリプタ情報を格納している。
【0029】
上記ディスクリプタ情報のデバイスディスクリプタでは、例えばデバイスクラス61に「ダミーコネクタ」を表すクラスコードが記述されている。このデバイスディスクリプタでは、他に、ベンダID62にダミーコネクタ40を提供するベンダのID、プロダクトID63にダミーコネクタ40の製品型格、ストリングインデックス(プロダクト)64にダミーコネクタ40の説明が存在するストリングディスクリプタのインデックス、がそれぞれ記述されている。ダミーコネクタ40の説明が存在するストリングディスクリプタは、ディスクリプタ情報の一部として用意されている。
【0030】
コンフィグレーションディスクリプタでは、例えば機器の消費電力値として、要求する電源電流が0.5A程であることを表す値が記述される。
【0031】
ダミーコネクタ40が接続された図2に表すPC20は、上記のようなデバイスディスクリプタ、コンフィグレーションディスクリプタ及びストリングディスクリプタを含むディスクリプタ情報を収集するエニュメレーションを行い、ダミーコネクタ40を識別する。PC20は、エニュメレーションの結果を用いて、ダミーコネクタ40が要求する値分の電源電流の供給を可能にする。
【0032】
ハードディスク装置30も、ホスト(PC20)からの要求により、エニュメレーションのためにディスクリプタ情報を転送する。ホストは、ハードディスク装置30から転送されるディスクリプタ情報のデバイスディスクリプタにより、ハードディスク装置30を識別する。ホストは、コンフィグレーションディスクリプタにより、ハードディスク装置30が要求する値分の電源電流を供給可能にする。それにより、ハードディスク装置30は、例えば0.5Aの電源電流を確保することができる。
【0033】
上記のような構成のダミーコネクタ40は、自身の動作のために電源電流を必要とする。しかし、ダミーコネクタ40の消費電力は僅かである。そのため、ダミーコネクタ40が接続されたUSBソケット20aは、事実上、使用されないことになる。このことから、ダミーコネクタ40は、特定の電源電流を要求、例えば1つのUSBポートの定格電流より非常に大きい電流を必要とする他の機器に供給すべき電源電流の供給を確保するために、自身の動作に必要な電源電流より大きい電源電流を要求すれば良い。
【0034】
図2に表すPC20に適用された電源電流供給システムには、2つのUSBソケット20aを単位として、電源電流の供給のオンオフ、過電流の検出を行うギャング方式が採用されている。このため、ダミーコネクタ40をUSBソケット20aに装着されたPC20は、他のUSBソケット20aに接続された機器(以降「USB機器」)分の電流に加えて、ダミーコネクタ40によって確保される分の電流を供給することになる。上記のように、ダミーコネクタ40は自身では殆ど電力を消費しないため、他のUSBソケット20aに接続されたUSB機器は、PC20から供給される電流の殆どを使うことができる。それにより、図2に表すケースでは、ハードディスク装置30は、自身の分である0.5Aの電流と共に、ダミーコネクタ40が接続された1つのポートの定格電流からそのダミーコネクタ40によって消費される分を除いた電流を受けることができる。このようなことから、ギャング方式が2つのUSBソケット20aを単位として電源電流を供給する場合、ダミーコネクタ40を用いることにより、1つのUSBソケット20aから最大でほぼ1Aの電流を供給することができる。
【0035】
上記したように、ホストは、デバイスディスクリプタのベンダID62、プロダクトID63から、機器に対応するデバイスドライバをロードするか、或いはデバイスクラス61から特定されるデバイスドライバを必要に応じてロードする。ハードディスク装置30をUSBソケット20aに接続させた場合、ハードディスク装置30に対応する専用のデバイスドライバをロードさせることができる。そのようなデバイスドライバには、ダミーコネクタ40が接続されているか否かを確認し、その確認結果をホストがユーザに通知できるようにするための機能を搭載しても良い。そのような機能を搭載させた場合には、ダミーコネクタ40が接続されていないことの確認によって、ダミーコネクタ40の接続を促すユーザへの警告をホストが行えるようにしても良い。これらの機能は、ハードディスク装置30のクラス標準のデバイスドライバがロードされる場合には、そのデバイスドライバにアタッチされるフィルタードライバを用いて実現させても良い。
【0036】
図7は、PCの回路構成を説明する図である。図7に表すように、PC20は、CPU(Central Processing Unit)21、メモリ(例えばメモリモジュール)22、表示装置(図7中「Disp」と表記)23、ハードディスク装置24、ROM(Read Only Memory)25、入力装置26、PCH(Platform Controller Hub)27、電源回路28、及びヒューズ29を備える。入力装置26は、キーボード(図7中「KB」と表記)、及びキーボードコントローラ(図7中「KBC」と表記)を含む。本実施形態による電源電流供給システムは、例えばCPU21、メモリ22、ハードディスク装置24、ROM25、PCH27、電源回路28、ヒューズ29、2つのUSBソケット20a、及びダミーコネクタ40によって実現される。
【0037】
上記構成において、ROM25は、例えばBIOS(Basic Input/Output System)コードを格納し、ハードディスク装置24は、例えばOS(Operating System)、各種アプリケーションプログラム、及び各種データを格納している。CPU21は、PCH27を介してROM25から読み出されたBIOSコードを実行する。CPU21は、BIOSコードの実行により、PCH27を介してハードディスク装置24からOS(Operating System)を読み出して実行する。メモリ22は、CPU21によるBIOSコード及びOSの実行に用いられる。
【0038】
PCH27は、ハードディスク装置24等のUSB機器を含む各種周辺装置とのインターフェース機能を提供する。PCH27は、例えばPCIエクスプレスのオプションのバス・インターフェース(図示せず)、シリアルATA(AT Attachment)、USB、LAN、及びグラフィックスなどのための各種機能を備える。それにより、PCH27は、CPU21、ROM25、及びハードディスク装置24の他に、表示装置23、入力装置26、各USBソケット20a、及び電源回路28と接続されている。このことから、CPU21は、PCH27を介して、表示装置23上への画像の表示、入力装置26にユーザが行った操作内容の認識、電源回路28を用いた電源電流の供給制御、等を行う。
【0039】
電源回路28は、ヒューズ29を介して各USBソケット20aに電源電流を供給する。それにより、ヒューズ29には、各USBソケット20aのピン番号が1のピン、つまり信号Vbusを出力する信号線が並列に接続されている。このことから、電源回路28は、USB規格に沿って、5Vの電圧を発生させる、各USBソケット20aに接続されたUSB機器によって要求される様々な値の電源電流を供給できる電源である。その構成自体は周知であるため、ここでは詳細は省略する。
【0040】
上記ヒューズ29は、電源回路28からの過電流の検出、遮断のために用いられる保護回路の一例である。そのヒューズ29としては、例えばポリスイッチを用いることができる。ポリスイッチは、ポリマ系のPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタであり、過電流や過熱により熱せられると、素子内部の温度が上昇し、抵抗値が増大して、電流供給量を微少に制限する。このような熱による抵抗値変化は可逆性であることから、PTCサーミスタはヒューズ29として用いることができる。
【0041】
PCH27は、例えば各USBソケット20aからの信号D+、及びD−の電圧変化を監視する。例えばPCH27は、何れかのUSBソケット20aからの信号D+、或いはD−の電圧値が所定値以上となった場合に、USB規格における接続イベントが発生した旨をCPU21に通知する。CPU21は、その通知によりエニュメレーションを行う。このエニュメレーションでは、CPU21は、信号D+、及びD−を用いるPCH27を介してUSB機器にデバイスディスクリプタの送信を要求する。その要求により、デバイスディスクリプタを取得できた場合、CPU21は、取得したデバイスディスクリプタにより、信号D+、或いはD−の電圧値が所定値以上となったUSBソケット20aに接続されたUSB機器を識別し、そのUSB機器にアドレスを割り当てる。その後、CPU21は、コンフィグレーションディスクリプタ等の他のディスクリプタをUSB機器から取得して、そのUSB機器の構成を認識する。その認識によって、USBソケット20aに接続されたUSB機器は使用可能になり、エニュメレーションは終了する。電源回路28は、エニュメレーションにより特定された電流値に応じた電源電流を供給する。このように電源電流の供給量を制御することにより、USBソケット20aに接続されたUSB機器は指定した分の電源電流を受け取ることができる。
【0042】
USB仕様では、各ポートに対し、エミュレーションを行ううえで必要な電流(100mA)を供給することになっている。このことから、CPU21は、USBソケット20aに接続されたUSB機器を認識していない状況でも電源回路28に1USBソケット20a当たり100mAの電源電流を供給させている。
【0043】
上記のように、ハードディスク装置30及びダミーコネクタ40は共に電源電流として例えば0.5Aを指定する。このため、ハードディスク装置30及びダミーコネクタ40がそれぞれUSBソケット20aに接続されたPC20のCPU21は、電源回路28に1Aの電源電流を供給させる。その結果、ハードディスク装置30は、ほぼ1Aの電源電流を使用できることとなる。ハードディスク装置30による電源電流の指定は、ハードディスク装置30が有する不揮発性メモリ31に格納されたディスクリプタ情報をPC20のCPU21が収集するエニュメレーションにより行われる。
【0044】
ダミーコネクタ40は、図3或いは図4に表すように、簡単な構成であるため、低コストで製造することができる。このことから、ダミーコネクタ40を用いた他のUSBソケット20aから供給可能な電源電流量の調整は低コストで実現させることができる。
【0045】
なお、上記の説明では、ダミーコネクタ40に指定させる電源電流量は0.5Aを想定しているが、指定させる電源電流量は0.5Aに限定されない。つまり指定させる電源電流量は任意で良い。また、指定させる電源電流量は変更可能にしても良い。USBソケット20aを3つ以上、備えたPC20では、2個以上のダミーコネクタ40をUSBソケット20aに接続することにより、各ダミーコネクタ40の指定する電源電流量に応じた電源電流を他のUSBソケット20aからUSB機器に供給させることができる。
【0046】
<第2の実施形態>
上記第1の実施形態では、ダミーコネクタ40のUSBソケット20aへの接続により、PC20は、ダミーコネクタ40が指定する電流分の電源電流の供給を可能にさせる。ダミーコネクタ40の接続は、別のUSB機器の接続を物理的に防ぐと共に、USBソケット20aに接続されたUSB機器への定格電流を超える電流の供給を可能にさせる。このようなことから、第2の実施形態は、ダミーコネクタ40の接続によりそのダミーコネクタ40の指定する電流を供給した結果、USBソケットに接続されたUSB機器にとって過大な電流が供給されるのを回避できるようにしたものである。USBソケット20aに接続されたUSB機器への過大な電流供給を回避することにより、高い安全性を実現させることができる。
【0047】
第2の実施形態におけるPC、ダミーコネクタの各構成の大部分は上記第1の実施形態と同じである。このことから、第1の実施形態から変わらない、或いは基本的に同じ構成要素には第1の実施形態で付した符号をそのまま用いつつ、第1の実施形態から異なる部分に着目して説明を行う。
【0048】
図8は、第2の実施形態におけるPCの回路構成を説明する図である。この図8では、第2の実施形態を説明するうえで特に重要な部分を抜粋してPC20の回路構成を表している。それにより、図8では、図7に表すメモリ22、表示装置23、ハードディスク装置24、ROM25、入力装置26、及び電源回路28は省略している。
【0049】
第2の実施形態では、図8に表すように、PC20は4つのUSBソケット20a(20a−1〜20a−4)を備えている。各USBソケット20aのピン番号が1のピンに接続された信号線(電源電流である信号Vbusが供給される信号線)には、それぞれ抵抗82(82−1〜82−4)の一端が接続され、各抵抗82の他端はヒューズ83の一端に接続されている。ヒューズ83の他端は不図示の電源回路28に接続されている。それにより、ヒューズ83は、ヒューズ29と同様に、過電流の検出、遮断のために用いられる。そのヒューズ83は、例えばポリスイッチ(PTCサーミスタ)であり、ヒューズ29とは想定するUSBソケット20aの数、つまり遮断すべき電源電流の値が異なっている。
【0050】
各抵抗82の両端は、PチャネルのFET(Field Effect Transistor)81(81−1〜81−4)のドレイン、ソースと接続されている。各FET81のゲートは、PCH27と接続されている。それにより、CPU21は、PCH27を介して、各FET81のオン/オフを制御することができる。このため、CPU21は、各FET81のオン/オフ制御により、実際に電源電流が供給されるUSBソケット20aを選択することができる。PCH27から各FET81のゲートに出力される信号は以降「供給イネーブル信号」と呼ぶことにする。各FET81は、供給イネーブル信号の電圧レベルがL(low)のときにオンし、その電圧レベルがH(High)のときにオフする。
【0051】
第2の実施形態では、上記のように、電源電流が供給されるUSBソケット20aをCPU21が選択可能になっている。電源電流が供給されるUSBソケット20aを選択可能にすることにより、ダミーコネクタ40の指定分の電流を供給すべきUSBソケット20aを制限することができる。従って、ダミーコネクタ40の指定分の電流を供給した場合に、過大な電流が供給されることになるUSB機器が接続されたUSBソケット20aへの電流供給を回避させることができるようになる。このため、高い安全性を実現させることができる。
【0052】
上記ヒューズ83は、4つのUSBソケット20a全体に対する過電流を遮断するためのものである。電源電流を供給するUSBソケット20aを選択可能にする場合、或るUSBソケット20aに過大な電流が流れる可能性がある。上記各抵抗82は、そのような過大な電流がUSBソケット20aに供給されるのを回避できるようにするために設けている。
【0053】
各抵抗82は、例えばPTCサーミスタである。PTCサーミスタは、上記のように、電流を流すと自己発熱によって抵抗値が増大し、電流が流れにくくなる性質を有している。そのため、各抵抗82は、接続されたUSBソケット20aに過大な電流が流れないようにする電流制限素子として機能する。
【0054】
電源電流が供給されるUSBソケット20aは、ユーザが選択可能である。そのために、第2の実施形態では、ダミーコネクタ40に、電源電流を供給すべきUSBソケット20aを選択するための選択スイッチ90を設けている。
【0055】
図9は、第2の実施形態によるダミーコネクタに設けられた選択スイッチを表す図であり、図10は、第2の実施形態によるダミーコネクタの回路構成を説明する図である。
【0056】
図9に表すように、選択スイッチ90には、1〜4の数字が印字されている。それにより、選択スイッチ90は、1〜4の数字のうちの何れかをつまみ90aにより選択するようになっている。図9は、つまみ90aにより1が選択された状態を表している。1〜4の数字は、4つのUSBソケット20aに対応付けられており、1は、例えばUSBソケット20a−1を表す。同様に、2はUSBソケット20a−2、3はUSBソケット20a−3、4はUSBソケット20a−4をそれぞれ表している。
【0057】
ダミーコネクタ40は、図10に表すように、LSI41を備え、信号D+の入出力に用いられる信号線44を抵抗46によって信号線42に接続する構成である。このため、信号D+はプルアップされる。選択スイッチ90は、a〜d接点を有し、つまみ90aの位置、つまりつまみ90aが指す数字により、a〜d接点のうちの何れかとe接点を接続する。a〜d接点は、図9に表す「1」〜「4」の数字に対応する接点である。
【0058】
電源電流である信号Vbusが供給される信号線42と各a〜d接点の間には、それぞれ抵抗94〜91が配置され、e接点はグランドに接続されている。それにより、a〜d接点のなかでe接点と接続された接点の電圧値は、その接続によってグランドレベルまで低下する。このため、a〜d接点のなかでe接点と接続された接点は、a〜d接点の電圧値から特定できるようになっている。LSI41は、a〜d接点の各電圧値を監視して、e接点と接続された接点を特定し、信号線43、44に出力する信号D+、D−により、特定した接点に対応するUSBソケット20aを指定する情報(以降「USBポート番号」と表記)をPC20に通知する。図8において、「20a−」に続く「1」〜「4」の数字はUSBポート番号を表すと想定する。図9に表す「1」〜「4」の数字は、USBポート番号である。
【0059】
PC20のCPU21は、ダミーコネクタ40のUSBソケット20aへの接続により、エニュメレーションを行い、ダミーコネクタ40用のデバイスドライバをロードする。CPU21は、ロードしたデバイスドライバにより、エニュメレーションの後にダミーコネクタ40から通知されるUSBポート番号に応じて、各FET81のスイッチング制御を行う。
【0060】
USBソケット20aに接続されるUSB機器は、ハードディスク装置30のようなUSBプロトコルに応答可能な機器、つまりCPU21が認識可能な機器であるとは限らない。そのようなUSB機器に過大な電流を供給しないように、CPU21は、各FET81のスイッチング制御は以下のように行う。
【0061】
先ず、USBソケット20aに接続されたUSB機器を認識していない状況では、CPU21は、電源回路28に、1つのUSBソケット20a当たり100mAの電源電流を供給させ、全てのFET81はオンさせる。それにより、何れのUSBソケット20aにUSB機器が接続されてもエミュレーションを行える状態にする。
【0062】
上記のような状況において、USBソケット20aに接続されたUSB機器を認識した場合、CPU21は、エミュレーションを行い、そのUSB機器が指定する分の電源電流を電源回路28に更に供給させる。全てのFET81は、オンさせた状態を維持させる。
【0063】
全てのFET81のオン状態を維持させるのは、認識されたUSB機器がダミーコネクタ40以外の機器であった場合である。ダミーコネクタ40が認識されない状況では、CPU21は、全てのFET81のオン状態を維持させたまま、認識できるUSB機器の接続、或いはUSB機器の接続終了に応じて、電源回路28に供給させる電流量を調整する。USB機器の接続終了は、USB機器のUSBソケット20aからの取り外しに伴うPCH2727の通知、或いは入力装置26を用いたUSB機器の取り外し指示の処理によってCPU21に認識される。
【0064】
認識したUSB機器がダミーコネクタ40であった場合、CPU21は、電源回路28にダミーコネクタ40が指定する分の電源電流を更に供給させる。また、ダミーコネクタ40が接続されたUSBソケット20aのFET81、及びダミーコネクタ40から通知されたUSBポート番号が割り当てられているUSBソケット20aのFET81の2つのみオンさせ、残りのFET81は全てオフさせる。そのようにして、CPU21は、電源電流を供給すべきUSBソケット20aを制限する。この制限は、認識していないUSB機器が他のUSBソケット20aに接続されていることにより、或いは他のUSBソケット20aに新たにUSB機器が接続されることにより、そのUSB機器に過大な電流が供給されるのを防止する。
【0065】
ダミーコネクタ40の接続が終了した場合、CPU21は、電源回路28から1USBソケット20a当たり100mAの電源電流を供給させ、ダミーコネクタ40から通知されたUSBポート番号が割り当てられているUSBソケット20aのFET81をオフさせる。それにより、ユーザが選択スイッチ90により指定したUSBソケット20aへの電源電流供給はダミーコネクタ40の接続終了により直ちに停止される。そのようにして、第2の実施形態では、ダミーコネクタ40の接続終了は、ユーザが指定したUSBソケット20aへの電流供給の停止指示と見なされる。
【0066】
CPU21は、ユーザが指定したUSBソケット20aへの電流供給を停止する一方、オフさせている全てのFET81をオンさせる。それにより、ユーザが指定したUSBソケット20aのFET81以外の全てのFET81はオン状態に移行させて、ユーザが指定したUSBソケット20a以外のUSBソケット20aへのUSB機器の接続に対応可能にさせる。ユーザが指定したUSBソケット20aのFET81は、例えばオフさせてから所定時間が経過した後にオンさせる。これは、そのUSBソケット20aから、認識できないUSB機器が直ちに取り外されない可能性を考慮し、そのようなUSB機器が実際に取り外されるまで電源電流の供給を停止するようにしたためである。
【0067】
なお、本実施形態では、ダミーコネクタ40が接続された場合、ダミーコネクタ40が接続されたUSBソケット20aのFET81、及びダミーコネクタ40から通知されたUSBポート番号が割り当てられているUSBソケット20a(以降「ターゲットポート」と呼ぶ)のFET81の2つのみオンさせる。しかし、オンさせるFET81は、ダミーコネクタ40が接続される前に接続が認識されたUSBソケット20aを考慮して選択するようにしても良い。具体的には、例えばダミーコネクタ40が接続される前にUSBソケット20aに接続されていたUSB機器には、そのUSB機器がターゲットポートに接続されているか否かに係わらず、電源電流の供給を継続させるようにしても良い。これは、既に接続されているUSB機器はダミーコネクタ40の接続後も使用できるようにするためである。そのUSB機器がターゲットポートに接続されていない場合、そのUSB機器への電源電流の供給は、ターゲットポートにUSB機器が接続されていることが確認できた場合にのみ継続させるようにしても良い。これは、ターゲットポートに接続されたUSB機器によって電流が消費されることから、ターゲットポートに接続されていないUSB機器にとって過大な電流が供給される可能性が低くなるためである。
【0068】
図11は、ターゲットポート、及びダミーコネクタが接続されるUSBソケットに係わる各種信号の時間変化の例を表すタイミングチャートである。ここでは、ユーザが指定のUSBソケット20a(図11中「ターゲットポート」と表記)に係わる信号として、そのUSBソケット20aを介して出力される信号Vbusの電圧、及び電流、FET81に出力される供給イネーブル信号の電圧の時間変化を表している。ダミーコネクタ40が接続されるUSBソケット20aに係わる信号として、ダミーコネクタ40に入力される信号Vbusの電圧、信号D+、D−の各電圧、を表している。次に図11を参照して、PC20のCPU21およびダミーコネクタ40の動作について具体的に説明する。
【0069】
図11に表す例は、ターゲットポートに既にUSB機器が接続された後にダミーコネクタ40がUSBソケット20aに接続される場合のものである。ターゲットポートにUSB機器が接続された状況となった後、ダミーコネクタ40は、時刻t1でUSBソケット20aと接続され、接続されたUSBソケット20aを介して供給される信号Vbusの電圧が5Vとなる。その電圧の変動に伴い、抵抗46によりプルアップされた信号D+の電圧が時刻t2から上昇し、その電圧の上昇はPCH27により検出され、時刻t3にPC20のCPU21によって認識される。
【0070】
電圧の上昇を認識したPC20のCPU21は、機器接続時の不確定状態を排除するために、期間t4の間、バスリセット信号の発行をPCH27に指示し、ダミーコネクタ40の信号D+、D−の電圧をLに維持させる。それにより、ダミーコネクタ40のLSI41は、初期化処理(リセット)を行う。その後の期間t5において、PC20のCPU21は、PCH27にエニュメレーションの実行を指示し、ダミーコネクタ40からディスクリプタ情報、つまりデバイスディスクリプタ、コンフィグレーションディスクリプタ等の各種ディスクリプタを収集する。
【0071】
ダミーコネクタ40からのディスクリプタ情報の収集により、PC20のCPU21は、電源回路28に指示し、ダミーコネクタ40の指定する電流値に応じて、電源電流の供給量を増大させる。その結果、時刻t6以降、ターゲットポートは、信号Vbusにより0.5Aを越える電源電流の消費が可能になる。例えばターゲットポートに接続されたUSB機器がハードディスク装置30であった場合には、ハードディスク装置30はほぼ1Aの電源電流を引き入れることができるようになる。このとき、CPU21は、ターゲットポート、及びダミーコネクタ40が接続されたUSBソケット20aを除く他のUSBソケット20aのFET81への供給イネーブル信号は全てHとすることで、他のUSBソケット20aへのUSB機器の接続を無効にさせる。
【0072】
その後、ダミーコネクタ40がUSBポート20aから時刻t7に抜かれると、ダミーコネクタ40の信号線41の電圧はLとなり、その電圧の低下に伴って、LSI41は動作を停止し、信号D+の電圧も低下する。それにより、PC20のCPU21は、ダミーコネクタ40の接続終了を時刻t8にPCH27からの通知により認識する。そのため、CPU21は、ターゲットポートのFET81への供給イネーブル信号をHにして、ターゲットポートからの電源電流の供給を停止させる。この結果、ターゲットポートから供給される信号Vbusの電圧レベルはLに低下する。また、CPU21は、ターゲットポート、及びダミーコネクタ40が接続されたUSBソケット20aを除く他のUSBソケット20aのFET81への供給イネーブル信号を全てLとすることで、他のUSBソケット20aへの電源電流の供給を開始させる。
【0073】
ユーザが入力装置26を介してダミーコネクタ40の取り外しを指示した場合、CPU21は、その指示を処理することでダミーコネクタ40を接続終了と見なす。このため、この場合は、信号D+の電圧レベルに係わらず、ダミーコネクタ40の接続終了が認識される。
【0074】
なお、第2の実施形態では、USBソケット20aに接続可能なダミーコネクタ40は1個と想定しているが、複数個のダミーコネクタ40の接続を想定しても良い。その場合、複数個のダミーコネクタ40によってより大きい電源電流を1つのUSBソケット20a(ターゲットポート)から供給できるようになる。また、ダミーコネクタ40は、ターゲットポートを1つのみ選択可能としているが、複数のターゲットポートを選択可能にしても良い。
【0075】
本実施形態(第1及び第2の実施形態)では、電源電流を供給可能なインターフェースとしてUSB規格のインターフェースを想定しているが、電源電流を供給可能であれば、インターフェースの種類は特に限定されない。また、本実施形態はPC20に適用したものであるが、適用可能な装置はPC20のようなデータ処理装置に限定されない。本実施形態は、電源電流を供給可能なインターフェースを設ける電気製品に幅広く適用することができる。
【0076】
以上の変形例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
電源電流が供給される電源入力端子と、
前記電源入力端子に並列接続され、それぞれ電源電流を出力する複数の電源出力端子と、
前記電源入力端子への供給電流に対する過電流保護を行う保護回路と、
前記複数の電源出力端子にそれぞれ対応した複数のデータ信号端子と、
前記複数の電源出力端子および前記複数のデータ信号端子による複数の組のうちの少なくとも一つの組に分離自在に接続され、電源出力端子とデータ信号端子を接続するコネクタとを有することを特徴とする電源電流供給システム。
(付記2)
前記電源入力端子と各電源出力端子間にそれぞれ配置された複数のスイッチング手段と、
前記複数の電源出力端子のなかで前記電源電流を出力すべき電源出力端子を指定するための指定手段と、
前記複数のスイッチング手段のスイッチングを制御し、前記指定手段により指定された電源出力端子に前記電源電流を出力させるスイッチング制御手段とを更に有することを特徴とする付記1記載の電源電流供給システム。
(付記3)
前記指定手段は、前記コネクタに設けられていることを特徴とする付記2記載の電源電流供給システム。
(付記4)
前記スイッチング制御手段は、前記複数のスイッチング手段のスイッチングを制御することにより、前記コネクタが接続された電源出力端子および前記指定手段により指定された電源出力端子にのみ前記電源電流を供給させることを特徴とする付記3記載の電源電流供給システム。
(付記5)
電源電流供給システムが電源電流を出力する電源出力端子と接続可能な電源入力端子と、
前記電源電流供給システムの前記電源出力端子に対応したデータ信号端子と接続可能なデータ入出力端子と、
前記データ入出力端子に前記電源入力端子と接続する接続手段とを有することを特徴とするコネクタ。
(付記6)
前記電源電流供給システムが前記電源出力端子を複数、備えている場合に、該複数の電源出力端子のなかで前記電源電流を出力すべき電源出力端子を指定するための指定手段と、
前記データ入出力端子を介して、前記指定手段による指定結果を前記電源電流供給システムに通知する信号入出力手段とを更に有することを特徴とする付記5記載のコネクタ。
(付記7)
複数の電源出力端子を単位に電源電流を出力する電源電流供給システムに、
前記複数の電源出力端子および該複数の電源出力端子にそれぞれ対応した複数のデータ信号端子による複数の組のうちの一つの組に分離自在に接続されるコネクタを認識させ、
該認識させたコネクタに応じた電源電流を供給させることにより、該認識させたコネクタが接続されている組以外の組から、1つの組で想定されている電源電流より大きい電源電流を出力可能にさせることを特徴とする電源電流供給方法。
【符号の説明】
【0077】
20 パーソナルコンピュータ
20a、20a−1〜20a−4 USBコネクタ(USBソケット)
21 CPU
22 メモリ
24 ハードディスク装置
25 ROM
27 PCH
28 電源回路
29、83 ヒューズ
30 ハードディスク装置(機器)
31、41a 不揮発性メモリ
40 ダミーコネクタ
41 LSI
42〜45 信号線
46、82、82−1〜82−4、91〜94 抵抗
81、81−1〜81−4 FET
90 選択スイッチ
90a つまみ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のインターフェース(ポート)を単位に電源電流を供給するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、数多くの規格が策定されている。規格のなかには、電源電流の供給を想定したものがある。電源電流の供給を想定する規格では、その規格に準拠したインターフェースを介して接続される機器に電源電流を供給することができる。従って、そのようなインターフェースへの接続を想定した機器では、内蔵電池、及びAC電源等は不要とすることができる。このため、そのような機器では、より小型化・軽量化を行うことができ、使用するうえでの準備が容易となる。パーソナルコンピュータ(以降「PC」)等には、電源電流の供給を想定する規格に準拠したインターフェースが複数、設けられるのが普通となっている。このことは、通常PCにはインターフェースを介して電源電流を供給する電源電流供給システムが搭載されていることを意味する。
【0003】
以降、インターフェースは「ポート」とも呼ぶことにする。また、ポートを介して電源電流を供給する電源電流供給システムはPCに構築されていると想定する。そのポートには、電源電流を供給するための少なくとも一つの電源出力端子、及びデータ信号を送受信するための少なくとも一つのデータ信号端子が存在する。
【0004】
ポートへの電源電流を供給する方式の一つに、複数のポートを単位にして、電源電流の供給のオンオフ、過電流の検出を行う方式(以降「ギャング方式」)がある。このギャング方式では、例えば図1に表すように、4つのポート(図1中「Vbusポート」と表記)11(11−1〜11−4)は、ヒューズ12を介して電源回路(図1中「Vbus Source」と表記)に接続される。それにより、電源回路からの電源電流は、ヒューズ12を介して各ポート11に供給されるようになっている。ヒューズ12は、500mAを超える過電流の検出、遮断のためのものである。図1中に表記の「500mA」は、1ポートの定格電流(最大電流)値の例である。
【0005】
ギャング方式では、各ポートに接続された機器は必要な電流値をPC(電流供給)側に通知し、PC側は通知された電流値分、供給する電源電流を増大させる。このことから、ギャング方式では、各ポートに供給可能になる電源電流の最大値は、ポートに接続された機器、及びその数に応じた値となる。
【0006】
近年、ポートに接続されることを想定した機器のなかには、そのポートの定格電流を越える電流を必要する機器が製品化されている。そのような機器(以降「高消費電力機器」と表記)として、例えばコーヒー保温機、電気こたつ、などもある。
【0007】
高消費電力機器に必要な電源電流を供給可能にするために、従来、他のポートに接続されている機器の必要とする電流量をPC側からの指示により変更することが行われていた。このような従来技術(以降「第1の従来技術」)では、必要な電流量を外部からの指示により変更可能な機器(以降「消費電力制御機器」と表記)が一つ以上ポートに接続されている状態を前提とする。この第1の従来技術では、そのような消費電力制御機器が接続されているポート数、及び消費電力制御機器により低減できる電流量に応じて、高消費電力機器により大きい電流を供給することができる。
【0008】
また、従来、PC側の複数のポートと接続可能なアダプタを用意し、そのアダプタを介して高消費電力機器に電流を供給することも行われていた。このような従来技術(以降「第2の従来技術」)では、アダプタと接続させるPC側のポート数分の電流を高消費電力機器に供給することができる。
【0009】
上記第1の従来技術では、ポートに接続された消費電力制御機器が必要とする電流量を供給した後に、PC側の制御で消費電力制御機器の必要とする電流量を変更させる必要がある。このため、PC側には、高消費電力機器のポートへの接続を契機に、他のポートに接続されている諸費電力制御機器の必要とする電流量を変更させる仕組みを用意しなければならない。消費電力制御機器には、外部からの指示により、必要とする電流量を変更させる仕組みを用意しなければならない。そのような仕組みを用意する必要から、PC側、及び消費電力制御機器の双方の制御は複雑化する。この複雑化は、PC側、及び消費電力制御機器それぞれの製造コストを上昇させる。
【0010】
上記第2の従来技術では、アダプタには例えばPC側の複数のポートとケーブルを介して接続するための複数のポート、及び高消費電力機器と接続するためのポートが設けられ、PC側に必要な電流量を通知する機能が搭載される。このようなことから、アダプタの製造コストは大きいものとなる。
【0011】
上記のように、第1及び第2の従来技術は共に、その実現のために必要なコストが大きいという問題点があった。高消費電力機器への必要な電流量の供給は、より低コストで実現できるようにすることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−75902号公報
【特許文献2】WO 2005/022369
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明を適用した1システムは、ギャング方式による1つのポートを介した電源電流の供給において、1ポート分の定格電流(最大電流)より大きい電流をより低コストで供給可能にするための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明を適用した1システムでは、電源電流が供給される電源入力端子と、電源入力端子に並列接続され、それぞれ電源電流を出力する複数の電源出力端子と、電源入力端子への供給電流に対する過電流保護を行う保護回路と、複数の電源出力端子にそれぞれ対応した複数のデータ信号端子と、複数の電源出力端子および複数のデータ信号端子による複数の組のうちの少なくとも一つの組に分離自在に接続され、電源出力端子とデータ信号端子を接続するコネクタとを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明を適用した場合には、ギャング方式による1つのポートを介した電源電流の供給において、1ポート分の定格電流(最大電流)より大きい電流をより低コストで供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ギャング方式による電源電流の供給を説明する図である。
【図2】第1の実施形態による電源電流供給システムの適用例を説明する図である。
【図3】第1の実施形態が適用されたダミーコネクタの回路構成を説明する図である。
【図4】ダミーコネクタの変形例を説明する図である。
【図5】ディスクリプタ情報の構成を説明する図である。
【図6】デバイスディスクリプタの構成を説明する図である。
【図7】第1の実施形態による電源電流供給システムが適用されたパーソナルコンピュータの回路構成を説明する図である。
【図8】第2の実施形態による電源電流供給システムが適用されたパーソナルコンピュータの回路構成を説明する図である。
【図9】第2の実施形態が適用されたダミーコネクタに設けられた選択スイッチを表す図である。
【図10】第2の実施形態が適用されたダミーコネクタの回路構成を説明する図である。
【図11】ターゲットポート、及びダミーコネクタが接続されるUSBソケットに係わる各種信号の時間変化の例を表すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
<第1の実施形態>
図2は、第1の実施形態による電源電流供給システムの適用例を説明する図である。本実施形態による電源電流供給システムは、図2に表すように、ノート型のパーソナルコンピュータ(PC)20に適用されている。PC20本体側面には、電源電流が供給される2つのポート20aが設けられている。本実施形態による電源電流供給システムは、ポート20aに接続可能なダミーコネクタ40を備える。このダミーコネクタ40は、本実施形態を適用したコネクタに相当する。ここでは、ポート20aはUSB(Universal Serial Bus)コネクタと想定する。USBコネクタには、メス側コネクタと、そのメス側コネクタと接続されるオス側コネクタの2種類がある。それらを区別するために、メス側コネクタは「USBレセプタクル」或いは「USBソケット」と呼び、オス側コネクタは「USBプラグ」と呼ぶことにする。PC20側にはUSBコネクタ20aとして「USBソケット」が設けられる。USB規格としては、USB2.0を想定する。USB規格では、その種類に係わらず、電圧は5Vである。
【0019】
図2中の30は、USBプラグ30aが付いたUSBケーブル30bを備え、そのUSBケーブル30bを介してUSBソケット20aと接続できるハードディスク装置(HDD)である。このハードディスク装置30は、USB2.0で定められた1ポートの定格電流(最大電流)である0.5Aより大きい電流、例えば1Aの電流を必要とする。ダミーコネクタ40は、そのような1Aの電源電流のハードディスク装置30への供給を可能とさせる。
【0020】
図3は、第1の実施形態が適用されたダミーコネクタの回路構成を説明する図である。
図3中に表記の1〜4の数字は、ダミーコネクタ40に設けられたUSBプラグ(不図示)の各ピンに割り当てられたピン番号を表している。Vbus、GND、D−(−DATA)、D+(+DATA)はそれぞれ、信号線を流れる信号の種類を表している。信号Vbus、GNDは供給される電源電流である。信号D−、D+はデータ通信される信号であり、それらの信号は差動信号である。
【0021】
ダミーコネクタ40は、図3に表すように、不図示のUSBプラグのピン番号が1のピンが信号線42と接続されている。同様に、ピン番号が2のピンは信号線43、ピン番号が3のピンは信号線44に、ピン番号が4のピンは信号線45にそれぞれ接続されている。LSI(Large Scale Integration)41は、全ての信号線42〜45と接続されている。
【0022】
信号線42と信号線44は、抵抗46を介して接続されている。それにより、信号D+はプルアップされる。このプルアップにより、ホスト(機器の接続先)は、USB規格に沿ってダミーコネクタ40を例えばUSB規格のフルスピードデバイスとして認識する。
【0023】
LSI40は、ダミーコネクタ40の接続先(ここではPC20)によるダミーコネクタ40の識別、消費電力の情報を含むディスクリプタ情報を格納した不揮発性メモリ41aを備えている。ディスクリプタ情報は、ホストに送信される。ホストにとっては、信号線D+のプルアップの存在のみによってダミーコネクタ40をフルスピードデバイスとして認識することが可能であることから、LSI40は省いても良い。図4は、図3上のLSI41を省いた場合のダミーコネクタの回路例を表している。信号線43は、抵抗46により信号線42と接続されたことにより、信号D−はプルアップされている。信号D−のプルアップにより、ホストは、ダミーコネクタ40をロースピードデバイスとして認識する。
【0024】
図5は、ディスクリプタ情報の構成を説明する図である。図5に表すように、ディスクリプタ情報は、デバイスディスクリプタ、コンフィグレーションディスクリプタ、インターフェースディスクリプタ、エンドポイントディスクリプタ、及びストリングディスクリプタ、を含む情報である。
【0025】
ストリングディスクリプタには機器、インターフェースなどの説明の記述や、機器のシリアル番号を設定できる。それにより、ストリングディスクリプタは、説明の記述の項目毎に用意することができる。
【0026】
デバイスディスクリプタには、図6に表すように、各種属性等の情報が記述される。例えばデバイスクラス61は、USBハブやキーボード、マウスなど、機器の分類(クラス)を表すための情報である。USB規格では、同じクラスに属する機器は同じリクエストパケットを使えるといった、機器の制御の共通化が図られている。ベンダID62、プロダクトID63は、ホスト(図2に表す構成ではPC20)側がロードすべきデバイスドライバの特定に用いられる。制御の共通化が図られた機器、例えばHID(Human Interface Device)やマスストレージデバイス等では、デバイスクラス61からデバイスドライバを特定することができる。ストリングインデックス(プロダクト)64は、機器の説明等が記述されたストリングディスクリプタへのインデックスを指定する。
【0027】
コンフィグレーションディスクリプタには、インターフェースの数、機器の消費電力、電源電流の供給方法などを記述することができる。インターフェースディスクリプタには、インターフェースの仕様が記述される。この仕様の一つとして、エンドポイントの数が記述される。エンドポイントは、ホストと機器を結ぶ論理的な通信経路となるバッファである。エンドポイント毎に、エンドポイント番号、転送方向、転送方式、最大パケットサイズが定義される。ホストと機器の間のデータ転送は、その転送内容に応じたエンドポイントを用いて行われる。エンドポイントディスクリプタは、そのような定義内容がエンドポイント毎に記述される。
【0028】
ホスト(PC20)に接続された機器は、ホストからの要求により、要求されたディスクリプタを送信する。図3に表すダミーコネクタ40のLSI41は、不揮発性メモリ41aに以下のようなディスクリプタ情報を格納している。
【0029】
上記ディスクリプタ情報のデバイスディスクリプタでは、例えばデバイスクラス61に「ダミーコネクタ」を表すクラスコードが記述されている。このデバイスディスクリプタでは、他に、ベンダID62にダミーコネクタ40を提供するベンダのID、プロダクトID63にダミーコネクタ40の製品型格、ストリングインデックス(プロダクト)64にダミーコネクタ40の説明が存在するストリングディスクリプタのインデックス、がそれぞれ記述されている。ダミーコネクタ40の説明が存在するストリングディスクリプタは、ディスクリプタ情報の一部として用意されている。
【0030】
コンフィグレーションディスクリプタでは、例えば機器の消費電力値として、要求する電源電流が0.5A程であることを表す値が記述される。
【0031】
ダミーコネクタ40が接続された図2に表すPC20は、上記のようなデバイスディスクリプタ、コンフィグレーションディスクリプタ及びストリングディスクリプタを含むディスクリプタ情報を収集するエニュメレーションを行い、ダミーコネクタ40を識別する。PC20は、エニュメレーションの結果を用いて、ダミーコネクタ40が要求する値分の電源電流の供給を可能にする。
【0032】
ハードディスク装置30も、ホスト(PC20)からの要求により、エニュメレーションのためにディスクリプタ情報を転送する。ホストは、ハードディスク装置30から転送されるディスクリプタ情報のデバイスディスクリプタにより、ハードディスク装置30を識別する。ホストは、コンフィグレーションディスクリプタにより、ハードディスク装置30が要求する値分の電源電流を供給可能にする。それにより、ハードディスク装置30は、例えば0.5Aの電源電流を確保することができる。
【0033】
上記のような構成のダミーコネクタ40は、自身の動作のために電源電流を必要とする。しかし、ダミーコネクタ40の消費電力は僅かである。そのため、ダミーコネクタ40が接続されたUSBソケット20aは、事実上、使用されないことになる。このことから、ダミーコネクタ40は、特定の電源電流を要求、例えば1つのUSBポートの定格電流より非常に大きい電流を必要とする他の機器に供給すべき電源電流の供給を確保するために、自身の動作に必要な電源電流より大きい電源電流を要求すれば良い。
【0034】
図2に表すPC20に適用された電源電流供給システムには、2つのUSBソケット20aを単位として、電源電流の供給のオンオフ、過電流の検出を行うギャング方式が採用されている。このため、ダミーコネクタ40をUSBソケット20aに装着されたPC20は、他のUSBソケット20aに接続された機器(以降「USB機器」)分の電流に加えて、ダミーコネクタ40によって確保される分の電流を供給することになる。上記のように、ダミーコネクタ40は自身では殆ど電力を消費しないため、他のUSBソケット20aに接続されたUSB機器は、PC20から供給される電流の殆どを使うことができる。それにより、図2に表すケースでは、ハードディスク装置30は、自身の分である0.5Aの電流と共に、ダミーコネクタ40が接続された1つのポートの定格電流からそのダミーコネクタ40によって消費される分を除いた電流を受けることができる。このようなことから、ギャング方式が2つのUSBソケット20aを単位として電源電流を供給する場合、ダミーコネクタ40を用いることにより、1つのUSBソケット20aから最大でほぼ1Aの電流を供給することができる。
【0035】
上記したように、ホストは、デバイスディスクリプタのベンダID62、プロダクトID63から、機器に対応するデバイスドライバをロードするか、或いはデバイスクラス61から特定されるデバイスドライバを必要に応じてロードする。ハードディスク装置30をUSBソケット20aに接続させた場合、ハードディスク装置30に対応する専用のデバイスドライバをロードさせることができる。そのようなデバイスドライバには、ダミーコネクタ40が接続されているか否かを確認し、その確認結果をホストがユーザに通知できるようにするための機能を搭載しても良い。そのような機能を搭載させた場合には、ダミーコネクタ40が接続されていないことの確認によって、ダミーコネクタ40の接続を促すユーザへの警告をホストが行えるようにしても良い。これらの機能は、ハードディスク装置30のクラス標準のデバイスドライバがロードされる場合には、そのデバイスドライバにアタッチされるフィルタードライバを用いて実現させても良い。
【0036】
図7は、PCの回路構成を説明する図である。図7に表すように、PC20は、CPU(Central Processing Unit)21、メモリ(例えばメモリモジュール)22、表示装置(図7中「Disp」と表記)23、ハードディスク装置24、ROM(Read Only Memory)25、入力装置26、PCH(Platform Controller Hub)27、電源回路28、及びヒューズ29を備える。入力装置26は、キーボード(図7中「KB」と表記)、及びキーボードコントローラ(図7中「KBC」と表記)を含む。本実施形態による電源電流供給システムは、例えばCPU21、メモリ22、ハードディスク装置24、ROM25、PCH27、電源回路28、ヒューズ29、2つのUSBソケット20a、及びダミーコネクタ40によって実現される。
【0037】
上記構成において、ROM25は、例えばBIOS(Basic Input/Output System)コードを格納し、ハードディスク装置24は、例えばOS(Operating System)、各種アプリケーションプログラム、及び各種データを格納している。CPU21は、PCH27を介してROM25から読み出されたBIOSコードを実行する。CPU21は、BIOSコードの実行により、PCH27を介してハードディスク装置24からOS(Operating System)を読み出して実行する。メモリ22は、CPU21によるBIOSコード及びOSの実行に用いられる。
【0038】
PCH27は、ハードディスク装置24等のUSB機器を含む各種周辺装置とのインターフェース機能を提供する。PCH27は、例えばPCIエクスプレスのオプションのバス・インターフェース(図示せず)、シリアルATA(AT Attachment)、USB、LAN、及びグラフィックスなどのための各種機能を備える。それにより、PCH27は、CPU21、ROM25、及びハードディスク装置24の他に、表示装置23、入力装置26、各USBソケット20a、及び電源回路28と接続されている。このことから、CPU21は、PCH27を介して、表示装置23上への画像の表示、入力装置26にユーザが行った操作内容の認識、電源回路28を用いた電源電流の供給制御、等を行う。
【0039】
電源回路28は、ヒューズ29を介して各USBソケット20aに電源電流を供給する。それにより、ヒューズ29には、各USBソケット20aのピン番号が1のピン、つまり信号Vbusを出力する信号線が並列に接続されている。このことから、電源回路28は、USB規格に沿って、5Vの電圧を発生させる、各USBソケット20aに接続されたUSB機器によって要求される様々な値の電源電流を供給できる電源である。その構成自体は周知であるため、ここでは詳細は省略する。
【0040】
上記ヒューズ29は、電源回路28からの過電流の検出、遮断のために用いられる保護回路の一例である。そのヒューズ29としては、例えばポリスイッチを用いることができる。ポリスイッチは、ポリマ系のPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタであり、過電流や過熱により熱せられると、素子内部の温度が上昇し、抵抗値が増大して、電流供給量を微少に制限する。このような熱による抵抗値変化は可逆性であることから、PTCサーミスタはヒューズ29として用いることができる。
【0041】
PCH27は、例えば各USBソケット20aからの信号D+、及びD−の電圧変化を監視する。例えばPCH27は、何れかのUSBソケット20aからの信号D+、或いはD−の電圧値が所定値以上となった場合に、USB規格における接続イベントが発生した旨をCPU21に通知する。CPU21は、その通知によりエニュメレーションを行う。このエニュメレーションでは、CPU21は、信号D+、及びD−を用いるPCH27を介してUSB機器にデバイスディスクリプタの送信を要求する。その要求により、デバイスディスクリプタを取得できた場合、CPU21は、取得したデバイスディスクリプタにより、信号D+、或いはD−の電圧値が所定値以上となったUSBソケット20aに接続されたUSB機器を識別し、そのUSB機器にアドレスを割り当てる。その後、CPU21は、コンフィグレーションディスクリプタ等の他のディスクリプタをUSB機器から取得して、そのUSB機器の構成を認識する。その認識によって、USBソケット20aに接続されたUSB機器は使用可能になり、エニュメレーションは終了する。電源回路28は、エニュメレーションにより特定された電流値に応じた電源電流を供給する。このように電源電流の供給量を制御することにより、USBソケット20aに接続されたUSB機器は指定した分の電源電流を受け取ることができる。
【0042】
USB仕様では、各ポートに対し、エミュレーションを行ううえで必要な電流(100mA)を供給することになっている。このことから、CPU21は、USBソケット20aに接続されたUSB機器を認識していない状況でも電源回路28に1USBソケット20a当たり100mAの電源電流を供給させている。
【0043】
上記のように、ハードディスク装置30及びダミーコネクタ40は共に電源電流として例えば0.5Aを指定する。このため、ハードディスク装置30及びダミーコネクタ40がそれぞれUSBソケット20aに接続されたPC20のCPU21は、電源回路28に1Aの電源電流を供給させる。その結果、ハードディスク装置30は、ほぼ1Aの電源電流を使用できることとなる。ハードディスク装置30による電源電流の指定は、ハードディスク装置30が有する不揮発性メモリ31に格納されたディスクリプタ情報をPC20のCPU21が収集するエニュメレーションにより行われる。
【0044】
ダミーコネクタ40は、図3或いは図4に表すように、簡単な構成であるため、低コストで製造することができる。このことから、ダミーコネクタ40を用いた他のUSBソケット20aから供給可能な電源電流量の調整は低コストで実現させることができる。
【0045】
なお、上記の説明では、ダミーコネクタ40に指定させる電源電流量は0.5Aを想定しているが、指定させる電源電流量は0.5Aに限定されない。つまり指定させる電源電流量は任意で良い。また、指定させる電源電流量は変更可能にしても良い。USBソケット20aを3つ以上、備えたPC20では、2個以上のダミーコネクタ40をUSBソケット20aに接続することにより、各ダミーコネクタ40の指定する電源電流量に応じた電源電流を他のUSBソケット20aからUSB機器に供給させることができる。
【0046】
<第2の実施形態>
上記第1の実施形態では、ダミーコネクタ40のUSBソケット20aへの接続により、PC20は、ダミーコネクタ40が指定する電流分の電源電流の供給を可能にさせる。ダミーコネクタ40の接続は、別のUSB機器の接続を物理的に防ぐと共に、USBソケット20aに接続されたUSB機器への定格電流を超える電流の供給を可能にさせる。このようなことから、第2の実施形態は、ダミーコネクタ40の接続によりそのダミーコネクタ40の指定する電流を供給した結果、USBソケットに接続されたUSB機器にとって過大な電流が供給されるのを回避できるようにしたものである。USBソケット20aに接続されたUSB機器への過大な電流供給を回避することにより、高い安全性を実現させることができる。
【0047】
第2の実施形態におけるPC、ダミーコネクタの各構成の大部分は上記第1の実施形態と同じである。このことから、第1の実施形態から変わらない、或いは基本的に同じ構成要素には第1の実施形態で付した符号をそのまま用いつつ、第1の実施形態から異なる部分に着目して説明を行う。
【0048】
図8は、第2の実施形態におけるPCの回路構成を説明する図である。この図8では、第2の実施形態を説明するうえで特に重要な部分を抜粋してPC20の回路構成を表している。それにより、図8では、図7に表すメモリ22、表示装置23、ハードディスク装置24、ROM25、入力装置26、及び電源回路28は省略している。
【0049】
第2の実施形態では、図8に表すように、PC20は4つのUSBソケット20a(20a−1〜20a−4)を備えている。各USBソケット20aのピン番号が1のピンに接続された信号線(電源電流である信号Vbusが供給される信号線)には、それぞれ抵抗82(82−1〜82−4)の一端が接続され、各抵抗82の他端はヒューズ83の一端に接続されている。ヒューズ83の他端は不図示の電源回路28に接続されている。それにより、ヒューズ83は、ヒューズ29と同様に、過電流の検出、遮断のために用いられる。そのヒューズ83は、例えばポリスイッチ(PTCサーミスタ)であり、ヒューズ29とは想定するUSBソケット20aの数、つまり遮断すべき電源電流の値が異なっている。
【0050】
各抵抗82の両端は、PチャネルのFET(Field Effect Transistor)81(81−1〜81−4)のドレイン、ソースと接続されている。各FET81のゲートは、PCH27と接続されている。それにより、CPU21は、PCH27を介して、各FET81のオン/オフを制御することができる。このため、CPU21は、各FET81のオン/オフ制御により、実際に電源電流が供給されるUSBソケット20aを選択することができる。PCH27から各FET81のゲートに出力される信号は以降「供給イネーブル信号」と呼ぶことにする。各FET81は、供給イネーブル信号の電圧レベルがL(low)のときにオンし、その電圧レベルがH(High)のときにオフする。
【0051】
第2の実施形態では、上記のように、電源電流が供給されるUSBソケット20aをCPU21が選択可能になっている。電源電流が供給されるUSBソケット20aを選択可能にすることにより、ダミーコネクタ40の指定分の電流を供給すべきUSBソケット20aを制限することができる。従って、ダミーコネクタ40の指定分の電流を供給した場合に、過大な電流が供給されることになるUSB機器が接続されたUSBソケット20aへの電流供給を回避させることができるようになる。このため、高い安全性を実現させることができる。
【0052】
上記ヒューズ83は、4つのUSBソケット20a全体に対する過電流を遮断するためのものである。電源電流を供給するUSBソケット20aを選択可能にする場合、或るUSBソケット20aに過大な電流が流れる可能性がある。上記各抵抗82は、そのような過大な電流がUSBソケット20aに供給されるのを回避できるようにするために設けている。
【0053】
各抵抗82は、例えばPTCサーミスタである。PTCサーミスタは、上記のように、電流を流すと自己発熱によって抵抗値が増大し、電流が流れにくくなる性質を有している。そのため、各抵抗82は、接続されたUSBソケット20aに過大な電流が流れないようにする電流制限素子として機能する。
【0054】
電源電流が供給されるUSBソケット20aは、ユーザが選択可能である。そのために、第2の実施形態では、ダミーコネクタ40に、電源電流を供給すべきUSBソケット20aを選択するための選択スイッチ90を設けている。
【0055】
図9は、第2の実施形態によるダミーコネクタに設けられた選択スイッチを表す図であり、図10は、第2の実施形態によるダミーコネクタの回路構成を説明する図である。
【0056】
図9に表すように、選択スイッチ90には、1〜4の数字が印字されている。それにより、選択スイッチ90は、1〜4の数字のうちの何れかをつまみ90aにより選択するようになっている。図9は、つまみ90aにより1が選択された状態を表している。1〜4の数字は、4つのUSBソケット20aに対応付けられており、1は、例えばUSBソケット20a−1を表す。同様に、2はUSBソケット20a−2、3はUSBソケット20a−3、4はUSBソケット20a−4をそれぞれ表している。
【0057】
ダミーコネクタ40は、図10に表すように、LSI41を備え、信号D+の入出力に用いられる信号線44を抵抗46によって信号線42に接続する構成である。このため、信号D+はプルアップされる。選択スイッチ90は、a〜d接点を有し、つまみ90aの位置、つまりつまみ90aが指す数字により、a〜d接点のうちの何れかとe接点を接続する。a〜d接点は、図9に表す「1」〜「4」の数字に対応する接点である。
【0058】
電源電流である信号Vbusが供給される信号線42と各a〜d接点の間には、それぞれ抵抗94〜91が配置され、e接点はグランドに接続されている。それにより、a〜d接点のなかでe接点と接続された接点の電圧値は、その接続によってグランドレベルまで低下する。このため、a〜d接点のなかでe接点と接続された接点は、a〜d接点の電圧値から特定できるようになっている。LSI41は、a〜d接点の各電圧値を監視して、e接点と接続された接点を特定し、信号線43、44に出力する信号D+、D−により、特定した接点に対応するUSBソケット20aを指定する情報(以降「USBポート番号」と表記)をPC20に通知する。図8において、「20a−」に続く「1」〜「4」の数字はUSBポート番号を表すと想定する。図9に表す「1」〜「4」の数字は、USBポート番号である。
【0059】
PC20のCPU21は、ダミーコネクタ40のUSBソケット20aへの接続により、エニュメレーションを行い、ダミーコネクタ40用のデバイスドライバをロードする。CPU21は、ロードしたデバイスドライバにより、エニュメレーションの後にダミーコネクタ40から通知されるUSBポート番号に応じて、各FET81のスイッチング制御を行う。
【0060】
USBソケット20aに接続されるUSB機器は、ハードディスク装置30のようなUSBプロトコルに応答可能な機器、つまりCPU21が認識可能な機器であるとは限らない。そのようなUSB機器に過大な電流を供給しないように、CPU21は、各FET81のスイッチング制御は以下のように行う。
【0061】
先ず、USBソケット20aに接続されたUSB機器を認識していない状況では、CPU21は、電源回路28に、1つのUSBソケット20a当たり100mAの電源電流を供給させ、全てのFET81はオンさせる。それにより、何れのUSBソケット20aにUSB機器が接続されてもエミュレーションを行える状態にする。
【0062】
上記のような状況において、USBソケット20aに接続されたUSB機器を認識した場合、CPU21は、エミュレーションを行い、そのUSB機器が指定する分の電源電流を電源回路28に更に供給させる。全てのFET81は、オンさせた状態を維持させる。
【0063】
全てのFET81のオン状態を維持させるのは、認識されたUSB機器がダミーコネクタ40以外の機器であった場合である。ダミーコネクタ40が認識されない状況では、CPU21は、全てのFET81のオン状態を維持させたまま、認識できるUSB機器の接続、或いはUSB機器の接続終了に応じて、電源回路28に供給させる電流量を調整する。USB機器の接続終了は、USB機器のUSBソケット20aからの取り外しに伴うPCH2727の通知、或いは入力装置26を用いたUSB機器の取り外し指示の処理によってCPU21に認識される。
【0064】
認識したUSB機器がダミーコネクタ40であった場合、CPU21は、電源回路28にダミーコネクタ40が指定する分の電源電流を更に供給させる。また、ダミーコネクタ40が接続されたUSBソケット20aのFET81、及びダミーコネクタ40から通知されたUSBポート番号が割り当てられているUSBソケット20aのFET81の2つのみオンさせ、残りのFET81は全てオフさせる。そのようにして、CPU21は、電源電流を供給すべきUSBソケット20aを制限する。この制限は、認識していないUSB機器が他のUSBソケット20aに接続されていることにより、或いは他のUSBソケット20aに新たにUSB機器が接続されることにより、そのUSB機器に過大な電流が供給されるのを防止する。
【0065】
ダミーコネクタ40の接続が終了した場合、CPU21は、電源回路28から1USBソケット20a当たり100mAの電源電流を供給させ、ダミーコネクタ40から通知されたUSBポート番号が割り当てられているUSBソケット20aのFET81をオフさせる。それにより、ユーザが選択スイッチ90により指定したUSBソケット20aへの電源電流供給はダミーコネクタ40の接続終了により直ちに停止される。そのようにして、第2の実施形態では、ダミーコネクタ40の接続終了は、ユーザが指定したUSBソケット20aへの電流供給の停止指示と見なされる。
【0066】
CPU21は、ユーザが指定したUSBソケット20aへの電流供給を停止する一方、オフさせている全てのFET81をオンさせる。それにより、ユーザが指定したUSBソケット20aのFET81以外の全てのFET81はオン状態に移行させて、ユーザが指定したUSBソケット20a以外のUSBソケット20aへのUSB機器の接続に対応可能にさせる。ユーザが指定したUSBソケット20aのFET81は、例えばオフさせてから所定時間が経過した後にオンさせる。これは、そのUSBソケット20aから、認識できないUSB機器が直ちに取り外されない可能性を考慮し、そのようなUSB機器が実際に取り外されるまで電源電流の供給を停止するようにしたためである。
【0067】
なお、本実施形態では、ダミーコネクタ40が接続された場合、ダミーコネクタ40が接続されたUSBソケット20aのFET81、及びダミーコネクタ40から通知されたUSBポート番号が割り当てられているUSBソケット20a(以降「ターゲットポート」と呼ぶ)のFET81の2つのみオンさせる。しかし、オンさせるFET81は、ダミーコネクタ40が接続される前に接続が認識されたUSBソケット20aを考慮して選択するようにしても良い。具体的には、例えばダミーコネクタ40が接続される前にUSBソケット20aに接続されていたUSB機器には、そのUSB機器がターゲットポートに接続されているか否かに係わらず、電源電流の供給を継続させるようにしても良い。これは、既に接続されているUSB機器はダミーコネクタ40の接続後も使用できるようにするためである。そのUSB機器がターゲットポートに接続されていない場合、そのUSB機器への電源電流の供給は、ターゲットポートにUSB機器が接続されていることが確認できた場合にのみ継続させるようにしても良い。これは、ターゲットポートに接続されたUSB機器によって電流が消費されることから、ターゲットポートに接続されていないUSB機器にとって過大な電流が供給される可能性が低くなるためである。
【0068】
図11は、ターゲットポート、及びダミーコネクタが接続されるUSBソケットに係わる各種信号の時間変化の例を表すタイミングチャートである。ここでは、ユーザが指定のUSBソケット20a(図11中「ターゲットポート」と表記)に係わる信号として、そのUSBソケット20aを介して出力される信号Vbusの電圧、及び電流、FET81に出力される供給イネーブル信号の電圧の時間変化を表している。ダミーコネクタ40が接続されるUSBソケット20aに係わる信号として、ダミーコネクタ40に入力される信号Vbusの電圧、信号D+、D−の各電圧、を表している。次に図11を参照して、PC20のCPU21およびダミーコネクタ40の動作について具体的に説明する。
【0069】
図11に表す例は、ターゲットポートに既にUSB機器が接続された後にダミーコネクタ40がUSBソケット20aに接続される場合のものである。ターゲットポートにUSB機器が接続された状況となった後、ダミーコネクタ40は、時刻t1でUSBソケット20aと接続され、接続されたUSBソケット20aを介して供給される信号Vbusの電圧が5Vとなる。その電圧の変動に伴い、抵抗46によりプルアップされた信号D+の電圧が時刻t2から上昇し、その電圧の上昇はPCH27により検出され、時刻t3にPC20のCPU21によって認識される。
【0070】
電圧の上昇を認識したPC20のCPU21は、機器接続時の不確定状態を排除するために、期間t4の間、バスリセット信号の発行をPCH27に指示し、ダミーコネクタ40の信号D+、D−の電圧をLに維持させる。それにより、ダミーコネクタ40のLSI41は、初期化処理(リセット)を行う。その後の期間t5において、PC20のCPU21は、PCH27にエニュメレーションの実行を指示し、ダミーコネクタ40からディスクリプタ情報、つまりデバイスディスクリプタ、コンフィグレーションディスクリプタ等の各種ディスクリプタを収集する。
【0071】
ダミーコネクタ40からのディスクリプタ情報の収集により、PC20のCPU21は、電源回路28に指示し、ダミーコネクタ40の指定する電流値に応じて、電源電流の供給量を増大させる。その結果、時刻t6以降、ターゲットポートは、信号Vbusにより0.5Aを越える電源電流の消費が可能になる。例えばターゲットポートに接続されたUSB機器がハードディスク装置30であった場合には、ハードディスク装置30はほぼ1Aの電源電流を引き入れることができるようになる。このとき、CPU21は、ターゲットポート、及びダミーコネクタ40が接続されたUSBソケット20aを除く他のUSBソケット20aのFET81への供給イネーブル信号は全てHとすることで、他のUSBソケット20aへのUSB機器の接続を無効にさせる。
【0072】
その後、ダミーコネクタ40がUSBポート20aから時刻t7に抜かれると、ダミーコネクタ40の信号線41の電圧はLとなり、その電圧の低下に伴って、LSI41は動作を停止し、信号D+の電圧も低下する。それにより、PC20のCPU21は、ダミーコネクタ40の接続終了を時刻t8にPCH27からの通知により認識する。そのため、CPU21は、ターゲットポートのFET81への供給イネーブル信号をHにして、ターゲットポートからの電源電流の供給を停止させる。この結果、ターゲットポートから供給される信号Vbusの電圧レベルはLに低下する。また、CPU21は、ターゲットポート、及びダミーコネクタ40が接続されたUSBソケット20aを除く他のUSBソケット20aのFET81への供給イネーブル信号を全てLとすることで、他のUSBソケット20aへの電源電流の供給を開始させる。
【0073】
ユーザが入力装置26を介してダミーコネクタ40の取り外しを指示した場合、CPU21は、その指示を処理することでダミーコネクタ40を接続終了と見なす。このため、この場合は、信号D+の電圧レベルに係わらず、ダミーコネクタ40の接続終了が認識される。
【0074】
なお、第2の実施形態では、USBソケット20aに接続可能なダミーコネクタ40は1個と想定しているが、複数個のダミーコネクタ40の接続を想定しても良い。その場合、複数個のダミーコネクタ40によってより大きい電源電流を1つのUSBソケット20a(ターゲットポート)から供給できるようになる。また、ダミーコネクタ40は、ターゲットポートを1つのみ選択可能としているが、複数のターゲットポートを選択可能にしても良い。
【0075】
本実施形態(第1及び第2の実施形態)では、電源電流を供給可能なインターフェースとしてUSB規格のインターフェースを想定しているが、電源電流を供給可能であれば、インターフェースの種類は特に限定されない。また、本実施形態はPC20に適用したものであるが、適用可能な装置はPC20のようなデータ処理装置に限定されない。本実施形態は、電源電流を供給可能なインターフェースを設ける電気製品に幅広く適用することができる。
【0076】
以上の変形例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
電源電流が供給される電源入力端子と、
前記電源入力端子に並列接続され、それぞれ電源電流を出力する複数の電源出力端子と、
前記電源入力端子への供給電流に対する過電流保護を行う保護回路と、
前記複数の電源出力端子にそれぞれ対応した複数のデータ信号端子と、
前記複数の電源出力端子および前記複数のデータ信号端子による複数の組のうちの少なくとも一つの組に分離自在に接続され、電源出力端子とデータ信号端子を接続するコネクタとを有することを特徴とする電源電流供給システム。
(付記2)
前記電源入力端子と各電源出力端子間にそれぞれ配置された複数のスイッチング手段と、
前記複数の電源出力端子のなかで前記電源電流を出力すべき電源出力端子を指定するための指定手段と、
前記複数のスイッチング手段のスイッチングを制御し、前記指定手段により指定された電源出力端子に前記電源電流を出力させるスイッチング制御手段とを更に有することを特徴とする付記1記載の電源電流供給システム。
(付記3)
前記指定手段は、前記コネクタに設けられていることを特徴とする付記2記載の電源電流供給システム。
(付記4)
前記スイッチング制御手段は、前記複数のスイッチング手段のスイッチングを制御することにより、前記コネクタが接続された電源出力端子および前記指定手段により指定された電源出力端子にのみ前記電源電流を供給させることを特徴とする付記3記載の電源電流供給システム。
(付記5)
電源電流供給システムが電源電流を出力する電源出力端子と接続可能な電源入力端子と、
前記電源電流供給システムの前記電源出力端子に対応したデータ信号端子と接続可能なデータ入出力端子と、
前記データ入出力端子に前記電源入力端子と接続する接続手段とを有することを特徴とするコネクタ。
(付記6)
前記電源電流供給システムが前記電源出力端子を複数、備えている場合に、該複数の電源出力端子のなかで前記電源電流を出力すべき電源出力端子を指定するための指定手段と、
前記データ入出力端子を介して、前記指定手段による指定結果を前記電源電流供給システムに通知する信号入出力手段とを更に有することを特徴とする付記5記載のコネクタ。
(付記7)
複数の電源出力端子を単位に電源電流を出力する電源電流供給システムに、
前記複数の電源出力端子および該複数の電源出力端子にそれぞれ対応した複数のデータ信号端子による複数の組のうちの一つの組に分離自在に接続されるコネクタを認識させ、
該認識させたコネクタに応じた電源電流を供給させることにより、該認識させたコネクタが接続されている組以外の組から、1つの組で想定されている電源電流より大きい電源電流を出力可能にさせることを特徴とする電源電流供給方法。
【符号の説明】
【0077】
20 パーソナルコンピュータ
20a、20a−1〜20a−4 USBコネクタ(USBソケット)
21 CPU
22 メモリ
24 ハードディスク装置
25 ROM
27 PCH
28 電源回路
29、83 ヒューズ
30 ハードディスク装置(機器)
31、41a 不揮発性メモリ
40 ダミーコネクタ
41 LSI
42〜45 信号線
46、82、82−1〜82−4、91〜94 抵抗
81、81−1〜81−4 FET
90 選択スイッチ
90a つまみ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電流が供給される電源入力端子と、
前記電源入力端子に並列接続され、それぞれ電源電流を出力する複数の電源出力端子と、
前記電源入力端子への供給電流に対する過電流保護を行う電源回路と、
前記複数の電源出力端子にそれぞれ対応した複数のデータ信号端子と、
前記複数の電源出力端子および前記複数のデータ信号端子による複数の組のうちの少なくとも一つの組に分離自在に接続され、電源出力端子とデータ信号端子を接続するコネクタとを有することを特徴とする電源電流供給システム。
【請求項2】
前記電源入力端子と各電源出力端子間にそれぞれ配置された複数のスイッチング手段と、
前記複数の電源出力端子のなかで前記電源電流を出力すべき電源出力端子を指定するための指定手段と、
前記複数のスイッチング手段のスイッチングを制御し、前記指定手段により指定された電源出力端子に前記電源電流を出力させるスイッチング制御手段とを更に有することを特徴とする請求項1記載の電源電流供給システム。
【請求項3】
前記指定手段は、前記コネクタに設けられていることを特徴とする請求項2記載の電源電流供給システム。
【請求項4】
前記スイッチング制御手段は、前記複数のスイッチング手段のスイッチングを制御することにより、前記コネクタが接続された電源出力端子および前記指定手段により指定された電源出力端子にのみ前記電源電流を供給させることを特徴とする請求項3記載の電源電流供給システム。
【請求項5】
電源電流供給システムが電源電流を出力する電源出力端子と接続可能な電源入力端子と、
前記電源電流供給システムの前記電源出力端子に対応したデータ信号端子と接続可能なデータ入出力端子と、
前記データ入出力端子に前記電源入力端子と接続する接続手段とを有することを特徴とするコネクタ。
【請求項1】
電源電流が供給される電源入力端子と、
前記電源入力端子に並列接続され、それぞれ電源電流を出力する複数の電源出力端子と、
前記電源入力端子への供給電流に対する過電流保護を行う電源回路と、
前記複数の電源出力端子にそれぞれ対応した複数のデータ信号端子と、
前記複数の電源出力端子および前記複数のデータ信号端子による複数の組のうちの少なくとも一つの組に分離自在に接続され、電源出力端子とデータ信号端子を接続するコネクタとを有することを特徴とする電源電流供給システム。
【請求項2】
前記電源入力端子と各電源出力端子間にそれぞれ配置された複数のスイッチング手段と、
前記複数の電源出力端子のなかで前記電源電流を出力すべき電源出力端子を指定するための指定手段と、
前記複数のスイッチング手段のスイッチングを制御し、前記指定手段により指定された電源出力端子に前記電源電流を出力させるスイッチング制御手段とを更に有することを特徴とする請求項1記載の電源電流供給システム。
【請求項3】
前記指定手段は、前記コネクタに設けられていることを特徴とする請求項2記載の電源電流供給システム。
【請求項4】
前記スイッチング制御手段は、前記複数のスイッチング手段のスイッチングを制御することにより、前記コネクタが接続された電源出力端子および前記指定手段により指定された電源出力端子にのみ前記電源電流を供給させることを特徴とする請求項3記載の電源電流供給システム。
【請求項5】
電源電流供給システムが電源電流を出力する電源出力端子と接続可能な電源入力端子と、
前記電源電流供給システムの前記電源出力端子に対応したデータ信号端子と接続可能なデータ入出力端子と、
前記データ入出力端子に前記電源入力端子と接続する接続手段とを有することを特徴とするコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−50944(P2013−50944A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−135233(P2012−135233)
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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