説明

電熱機器の通電状態報知回路及び電熱機器の電源プラグ

【課題】電熱機器に備えられた電熱性負荷への通電状態を正確に報知することが可能な技術を提供する。
【解決手段】電熱機器50に備えられた電熱性負荷5への通電状態を報知する電熱機器の通電状態報知回路10は、交流電源9に対して直列に電熱性負荷5が接続された主回路6の導電路60を一次側として設けられたカレントトランス4と、主回路6に流れる交流電流に応じてカレントトランス4の二次側に生じる誘導電流により発光する発光素子7を有して構成される発光回路3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電熱機器に備えられた電熱性負荷への通電状態を適切に報知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
卓上で調理を行いながら食事を取ることも可能なホットプレートなどの卓上型の電熱調理器が普及している。このような電熱調理器は、それぞれ分離可能である、洗浄可能なプレート部と、ヒーターを備えた本体部と、この本体部に電源を供給する電源コードとを備えて構成されることが多い。特開2003−339550号公報(特許文献1)に開示されているように、この電源コードには、プレート部の温度を計測する感熱棒を備え、本体部のヒーターへの電力の供給量を調節する機能を備えた温度調節器付きプラグが設けられたものがある(第8〜14段落、図1〜3等)。
【0003】
このような電熱調理器では、電源コードの温度調節器付きプラグに設けられた2つの電源用接点と、本体部のプラグ受け部に設けられた2つの電源用接点とのそれぞれが接触することによって、本体部に電源が供給可能となる。ここで、温度調節器付きプラグに設けられた、例えばダイヤル式の温度調節スイッチを操作することによって、本体部に電源が供給される。この際、感熱棒により計測された温度が、温度調節スイッチにより設定された温度未満であるときに、本体部に電源が供給される。感熱棒により計測された温度が、温度調節スイッチにより設定された温度未満であり、本体部に電源が供給されていることをユーザーに報知するために、温度調節器付きプラグには、しばしばパイロットランプやパワーインジケーターなどの表示灯が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−339550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような表示灯は、温度調節スイッチのダイヤル位置が電源オフ位置以外の位置に設定され、且つ、感熱棒により計測された温度が温度調節スイッチにより設定される設定温度未満である場合に点灯するように、電源に対して本体部のヒーターと並列に接続されて構成されている場合が多い。このため、例えば、温度調節器付きプラグと、本体部のプラグ受け部とのそれぞれの電源用接点の接触が充分ではない場合であっても、上記ダイヤル位置及び計測される温度の条件を満たせば、表示灯が点灯する場合がある。但し、この場合には、表示灯が点灯していても、本体部のヒーターには電力が供給されないことになる。この際、ユーザーは、表示灯の点灯状態から、電熱調理器の温度が上がっていくものと理解するが、実際には温度が上がらないことになる。その結果、ユーザーは、電熱調理器の故障を疑ったり、温度調節器プラグの再挿抜を試みたりすることとなり、利便性が損なわれる。
【0006】
また、電熱調理器の本体部において配線に断線が生じており、ヒーターに電力が供給できない場合にも、同様に温度調節器付きプラグの表示灯が点灯することとなる。この場合には、本体部が故障しているにも拘わらず、ユーザーが故障に気づくのが遅れてしまい、利便性が損なわれることになる。同様の事象は、ホットプレートなどの電熱調理器に限らず、例えば電気カーペットや電気毛布など暖房器具においても発生することが考えられる。つまり、電熱調理器や暖房器具など、電熱性負荷を熱源とする電熱機器において、上述したような事象によってユーザーの利便性が低下する可能性がある。
【0007】
上記背景に鑑みて、電熱機器に備えられた電熱性負荷への通電状態を正確に報知することが可能な技術の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑みた本発明に係る電熱機器の通電状態報知回路の特徴構成は、
電熱機器に備えられた電熱性負荷への通電状態を報知する電熱機器の通電状態報知回路であって、
交流電源に対して直列に前記電熱性負荷が接続された主回路の導電路を一次側として設けられたカレントトランスと、
前記主回路に流れる交流電流に応じて前記カレントトランスの二次側に生じる誘導電流により発光する発光素子を有して構成される発光回路と、
を備える点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、主回路の導電路を一次側として設定されたカレントトランスの二次側に生じる誘導電流により発光素子が発光する。ユーザーは、この発光素子の発光状態により、電熱機器に備えられた電熱性負荷へ通電されていることを認知することができる。一方、例えば、断線や主回路内の接触不良等によって、交流電源に対して直列に電熱性負荷が接続された主回路が閉回路を形成できていないときには、主回路に電流が流れないので、カレントトランスの二次側には誘導電流が生じない。従って、発光素子が発光することもなく、ユーザーはこの発光素子の発光状態により、電熱機器に備えられた電熱性負荷へ通電されていないことを認知することができる。このように、本特徴構成によれば、電熱機器に備えられた電熱性負荷への通電状態を正確に報知することが可能な技術を提供することが可能となる。また、カレントトランスは、変圧器などと比べて一次側の回路、つまり主回路におけるインピーダンスが低い。従って、電熱機器の中核となる電熱性負荷に印加される電圧の低下を抑制することができ、加熱性能に対する影響が少なく好適である。
【0010】
ところで、カレントトランスは、二次側に生じる誘導電流が比較的小さいため、発光素子には発光効率の良い素子を用いることが好ましい。好適な態様として、例えば、発光素子として発光ダイオードを用いるとよい。但し、発光ダイオードは、電流を流す方向が一方向(順方向)に固定されている。順方向とは反対の逆方向に電流を流そうとすると、発光ダイオードに逆方向電圧が掛かってしまうので好ましくない。つまり、交流電流である誘導電流を単純に発光ダイオードに流すことは好ましくない。そこで、発光ダイオードの逆方向に電流が流れないように、整流用のダイオード(保護ダイオード)などで通流方向を制限するとよい。つまり、1つの好適な態様として、本発明に係る電熱機器の通電状態報知回路は、以下のように構成することができる。即ち、前記発光素子は、交流の前記誘導電流の第1通流方向を順方向として接続される少なくとも1つの発光ダイオードであり、前記発光回路は、前記発光素子としての発光ダイオードを有する第1アームと、前記誘導電流の通流方向が前記第1通流方向とは逆方向の第2通流方向の際に、逆方向電圧から前記第1アームの発光ダイオードを保護する保護ダイオードを有する第2アームとを備えて構成されると好適である。
【0011】
上述した形態では、交流の誘導電流の内のほぼ半分(半周期分の電流)は、保護ダイオードによって遮断されて発光回路で利用されないことになる。ここで、発光ダイオードに逆方向電圧が掛かることが抑制できればよいことを考慮すれば、逆方向電圧が掛かる際に、当該発光ダイオードと並列に、当該発光ダイオードの逆方向インピーダンスよりも低いインピーダンスの回路を設ければよい。そして、この回路として、発光ダイオードを適用すると好適である。具体的には、上述した第1アーム及び第2アームがそれぞれ発光ダイオードを有して構成され、各発光ダイオードの順方向が互いに逆方向となる状態で第1アームと第2アームとが並列接続されて、上述した発光回路が構成されると好適である。各アームの各発光ダイオードは、交流の誘導電流の通流方向に応じて相補的に点灯及び消灯して、点灯時に発光素子として機能する。従って、交流の誘導電流の内のほぼ全てが発光回路で利用でき、総合的に発光素子の輝度を向上させることが可能となる。また、相補的に点灯及び消灯する各アームの各発光ダイオードは、点灯中は消灯中の発光ダイオードに対する保護ダイオードとしても機能する。
【0012】
このように、1つの態様として、本発明に係る電熱機器の通電状態報知回路は、前記保護ダイオードが、発光ダイオードであり、前記発光回路が、前記第1アーム及び前記第2アームの各発光ダイオードの順方向が互いに逆方向となる状態で前記第1アームと前記第2アームとが並列接続されて構成され、前記第1アーム及び前記第2アームの各発光ダイオードは、交流の前記誘導電流の通流方向に応じて相補的に、前記発光素子としての発光ダイオード及び前記保護ダイオードとして機能するように構成されると好適である。
【0013】
上述した電熱機器の通電状態報知回路は、電熱機器の本体部に着脱自在に結合される電源プラグにおいて構成されると好適である。例えば、本体部とのインターフェースが共通であれば、ユーザーは、電源プラグだけを交換することによって、本発明に係る通電状態報知回路を簡単に利用することができる。その結果、ユーザーの利便性が飛躍的に向上することが期待できる。
【0014】
1つの好適な態様として、本発明に係る電熱機器の電源プラグは、
前記電熱性負荷を有する本体部に対して着脱自在に結合される電熱機器の電源プラグであって、
上述した前記電熱機器の前記通電状態報知回路と、
前記本体部との結合状態において前記本体部の電熱性負荷と共に前記主回路を形成し、前記主回路の前記導電路を構成する配線部とを備え、
前記配線部は、前記カレントトランスの一次側において、前記カレントトランスを構成する環状のコアに巻回されて構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ホットプレートの構成を示す分解斜視図
【図2】電源プラグのダイヤルとパイロットランプの配置を模式的に示す上面図
【図3】本発明の通電状態報知回路の一例を含む電熱機器の回路構成を模式的に示す等価回路図
【図4】カレントトランスの構成を模式的に示す説明図
【図5】発光回路の他の構成例を模式的に示す等価回路図
【図6】電源プラグの断面図
【図7】一般的な電熱機器の回路構成を模式的に示す等価回路図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき、電熱機器としての電熱調理器に本発明を適用した場合を例として、本発明の実施形態を説明する。図1は、電熱調理器の一例であるホットプレートの構成を示す分解斜視図である。本実施形態では、図1に示すように、ホットプレート50は、電源コード51と、本体部52と、本体ガード53と、プレート54とを備えて構成される。本体部52は、ホットプレート50の中核となる部分であり、ヒーター5(電熱性負荷)が備えられている。電源コード51は、商用電源を配給するコンセントに結合される差し込みプラグ58と、コード部59と、本体部52に結合される電源プラグ20とを備えて構成されている。電源コード51は、本体部52のプラグ受け部61に電源プラグ20を結合させてヒーター5に交流電力を供給する。本体部52は、実質的に回路部品としてヒーター5のみが備えられた単純な構造であり、温度調節や電源のオン・オフなどの制御は、電源プラグ20において行われる。電源プラグ20は、温度調節器あるいは電源制御器として機能する。
【0017】
本体ガード53は、本体部52の下部を覆うケースである。本体部52の底部には、遮熱板が設けられているが、高熱となる本体部52を覆って安全性を確保するために本体ガード53が設けられている。本体ガード53の周壁に設けられたプラグ受け部挿入孔62を通って、本体部52のプラグ受け部61が本体ガード53の周壁から外へ出るように、本体ガード53と本体部52との位置を合わせて、本体ガード53に本体部52が収容される。電源コード51の電源プラグ20は、本体ガード53と本体部52とがセットされた状態で、本体部52のプラグ受け部61と結合される。プレート54は、鍋や鉄板などの調理具として機能する部分である。プレート54は、本体ガード53と本体部52とがセットされた状態で、本体部52のヒーター5に近接あるいは接触して配置される。調理具として使用されるプレート54は、調理の後、単独で水等による洗浄が可能である。
【0018】
図1に示すように、電源プラグ20は、ダイヤル21、パイロットランプ22(パワーインジケータ、表示灯)、感熱棒23を備えて構成されている。ダイヤル21は、ユーザーが温度調節及び電源のオン・オフを行うための操作部である。パイロットランプ22は、点灯状態によって本体部52(ヒーター5)に電力が供給されている状態であるか否かをユーザーに報知する。例えば、パイロットランプ22が点灯状態の際は、ヒーター5に給電されてプレート54が加熱されていることを示し、消灯状態の際は、ヒーター5への給電が行われておらずプレート54が加熱されていないことを示す。
【0019】
感熱棒23は、電源プラグ20と本体部52とが結合された状態において、本体部52の内部に挿入され、プレート54と直接あるいは間接的に接触してプレート54の温度を感知する。電源プラグ20の内部には、感熱棒23に接続されたバイメタルなどの温度調節器8が備えられている(図3、図6、図7等参照。)。温度調節器8は、電源プラグ20の内部において電力の供給経路を接続あるいは遮断するスイッチとして機能する。ダイヤル21によって設定される設定温度と、感熱棒23によって感知されたプレート54の温度とに基づいて、温度調節器8は、電力の供給経路を接続あるいは遮断する。例えば、プレート54の温度が設定温度以上となると、ヒーター5による加熱は不要であるから、温度調節器8は電力の供給経路を遮断する。この際、パイロットランプ22は消灯状態となる。一方、プレート54の温度が設定温度に達していない場合には、ヒーター5による加熱が必要であるから、温度調節器8は電力の供給経路を接続状態にする。この際、パイロットランプ22は点灯状態となる。尚、ダイヤル21による設定温度及び感熱棒23による感知温度は、当然ながら所定の許容差を有する値であり、上述した「設定温度以上」、「設定温度に達していない」等の表現は、厳格に適用されるものではない。
【0020】
図2は、電源プラグ20の上面視であり、ダイヤル21とパイロットランプ22とを模式的に示している。パイロットランプ22は、電源プラグ20の上面に楕円形状に設けられ、その長軸が円形のダイヤル21の中心に向かうようにダイヤル21の近傍に配置されている。つまり、ダイヤル21の径方向に沿ったパイロットランプ22の長軸は、ダイヤル21による設定位置をユーザーに示す基準となっている。図2は、ダイヤル21による設定位置が「切」位置である場合を例示している。ダイヤル21の設定位置が「切」の位置の際には、温度調節器8は電力の供給経路を遮断している。例えば、本体部52に電源プラグ20を結合させてダイヤル21を図2に示すように時計回りに回転させると、ダイヤル21による設定位置は、「切」の位置から何れかの設定温度の位置に変位する。ダイヤル21による設定位置が、「切」から任意の設定温度の位置に変位すると、温度調節器8は電力の供給経路を接続する。そして、電力の供給経路が接続されたことによって、パイロットランプ22が点灯する。
【0021】
このような温度調節器8による電源供給状態をパイロットランプ22の点灯によりユーザーに報知するための回路は、一般的には図7に等価回路を示す構成によって実現可能である。この等価回路においては、温度調節器8は単純なスイッチとして図示されている。パイロットランプ22の光源となるランプ70は、ヒーター5と並列に接続されている。ランプ70には、ランプ70に流れる電流を制限する制限抵抗71が直列に接続されている。ここで、温度調節器8(スイッチ)がオン状態となり、交流電源9からの電力の供給経路が接続されると、ヒーター5及びランプ70の双方に電力が供給される。その結果、ヒーター5は発熱してプレート54を加熱し、ランプ70は点灯してパイロットランプ22を介してユーザーに通電状態を報知する。
【0022】
ところで、電源プラグ20と本体部52のプラグ受け部61との結合が充分ではない場合には、図7の等価回路における2箇所の接点P(P1,P2)の何れかにおいて回路が切断状態となる可能性がある。この場合に、温度調節器8によって電力の供給経路が接続されていれば、ヒーター5には電力が供給されないにも拘わらず、ランプ70には電力が供給されてランプ70が点灯する。このため、ユーザーは、パイロットランプ22の状態からヒーター5に通電されていると理解してプレート54の温度が所望の温度まで上昇するのを待つが、一向にプレート54の温度が上昇しないことになる。その結果、ユーザーは、ホットプレート50の故障を疑ったり、電源プラグ20の再挿抜を試みたりすることとなり、利便性が損なわれる。また、このような事象は、本体部52において断線が生じた場合にも起こり得るが、この場合もユーザーが迅速に断線故障に気づくための妨げとなる可能性がある。
【0023】
そこで、本実施形態においては、図3に等価回路を示すような回路構成を採用している。図3は、パイロットランプ22の光源を有する通電状態報知回路10の一例を含むホットプレート50(電熱機器)の回路構成を模式的に示す等価回路である。この等価回路においても、温度調節器8はスイッチとして図示している。温度調節器8によって交流電源9からの電力の供給経路が接続されると、ヒーター5に電力が供給される。ここで、図3に示すように、交流電源9に対して直列にヒーター5(電熱性負荷)が接続された閉回路を主回路6と称する。本実施形態においては、この主回路6の導電路60(交流電源9からの電力の供給経路)を一次側としてカレントトランス4が設けられている。つまり、交流電源9に対して直列にヒーター5が接続された閉回路を流れる電流が一次側電流となるように、カレントトランス4が設けられている。
【0024】
カレントトランス4の二次側には、主回路6を流れる交流電流、つまりヒーター5を流れる交流電流に応じて誘導電流が生じる。本実施形態では、この誘導電流によって発光する発光素子7を有して構成される発光回路3が備えられる。この発光回路3と、主回路6の導電路60を一次側として設けられるカレントトランス4とにより、通電状態報知回路10が構成される。カレントトランス4は、一般的には強磁性体の環状のコアと、互いに絶縁されて当該コアの異なる場所に巻回された一次側コイル及び二次側コイルとにより構成される。そして、一次側コイルに流れる電流に基づき、一次側コイルと二次側コイルとの巻線比に応じた電流が二次側コイルに誘導される。
【0025】
ところで、主回路6を流れる電流を一次側コイルに流すためには、主回路6の導電路60を切断してその間に一次側コイルを接続する必要がある。これに対して、本実施形態では、図4(及び図6)に示すように環状のコア43の中を通って主回路6の導電路60を配線することによって、導電路60を切断することなく、巻線数が“1”の一次側回路(一次側コイル)が構成される。二次側コイル42は、コア43に所定の巻き線数で巻回され、発光回路3に接続される。二次側に誘導される電流は、発光回路3の駆動電流となる。
【0026】
発光回路3は、発光素子7としての発光ダイオードと、電流の制限抵抗15とを備えて構成されている。図3に例示する等価回路においては、発光回路3は、第1アーム1と第2アーム2との並列回路と、この並列回路に直列接続された制限抵抗15との直並列回路として構成されている。第1アーム1及び第2アーム2は、それぞれ発光素子7としての発光ダイオードを備えて構成されている。第1アーム1には第1発光ダイオード11が備えられ、第2アーム2には第2発光ダイオード12が備えられている。第1アーム1と第2アーム2との並列回路は、各発光ダイオード(11,12)の順方向が互いに逆方向となる状態で構成されている。カレントトランス4の二次側の誘導電流は、交流電流であるから周期的に電流の方向が切り替わる。第1発光ダイオード11と第2発光ダイオード12の順方向が互いに逆方向であるから、周期的に切り替わる電流の方向に応じて何れかの発光ダイオードが順方向に接続されていることになる。つまり、一方の発光ダイオードが消灯している際には他方の発光ダイオードが点灯していることとなり、2つの発光ダイオードは誘導電流の通流方向(第1通流方向D1、第2通流方向D2)に応じて相補的に発光素子7として機能する。尚、図3では、第1発光ダイオード11の順方向を第1通流方向D1、第2発光ダイオードの順方向を第2通流方向D2として図示しているが、通流方向の名称は便宜的なものである。
【0027】
尚、発光回路3は、図3に例示した形態(発光回路3A)に限定されることなく、図5のような形態で構成することもできる。この発光回路3B(3)は、発光素子7としての第1発光ダイオード11と、制限抵抗15と、保護ダイオード13との直列回路によって構成されている。ここで、第1アーム1は第1発光ダイオード11を有して構成される部分であり、第2アーム2は保護ダイオード13を有して構成される部分である。保護ダイオード13は、発光ダイオード(第1発光ダイオード11)に印加される逆方向電圧から、当該発光ダイオードを保護する整流素子である。発光ダイオードに対して逆方向に電流を流そうとすると、当該発光ダイオードに逆方向電圧が印加されることになるが、一般的に発光ダイオードは逆方向電圧に対する耐性が高くない。このため、発光回路3B(3)では、第1発光ダイオード11に対して逆方向に電流が流れないように、第1発光ダイオード11と同じ方向を順方向として直列に保護ダイオード13が接続されている。
【0028】
即ち、図5に示す発光回路3B(3)を備えた通電状態報知回路10は、以下のように構成される。交流電源9に対して直列にヒーター5(電熱性負荷)が接続され主回路6の導電路60を一次側としてカレントトランス4が設けられる。発光回路3B(3)は、主回路6に流れる交流電流に応じてカレントトランス4の二次側に生じる誘導電流により発光する発光素子7を有して構成される。ここで、発光素子7は、交流の誘導電流の第1通流方向D1を順方向として接続される少なくとも1つの発光ダイオード(第1発光ダイオード11)である。そして、発光回路3B(3)は、発光素子7としての第1発光ダイオード11を有する第1アーム1と、保護ダイオード13を有する第2アーム2とを備えて構成される。保護ダイオード13は、誘導電流の通流方向が第1通流方向D1とは逆方向の第2通流方向D2の際に、誘導電流の通流を抑止し、逆方向電圧から第1アーム1の発光ダイオード(第1発光ダイオード11)を保護するものである。好適な構成として、第1アーム1と第2アーム2とは、図5に示すように、第1発光ダイオード11と保護ダイオード13との順方向が同一方向となるように直列接続される。
【0029】
尚、図3に示す発光回路3(3A)も、発光素子7としての発光ダイオードと、保護ダイオード13とを備えて構成されていると見ることができる。発光回路3Aは、各発光ダイオード(11,12)の順方向が互いに逆方向となる状態で、第1アーム1と第2アーム2とが並列接続された構成である。従って、上述したように、2つの発光ダイオード(11,12)は誘導電流の通流方向に応じて相補的に発光素子7として機能する。誘導電流の通流方向が、第1アーム1の第1発光ダイオード11に対して逆方向(第2通流方向D2)の場合には、第1発光ダイオード11に逆方向電圧が印加される可能性がある。しかし、この場合、誘導電流の通流方向は、第2アーム2の第2発光ダイオード12に対して順方向であるから、誘導電流のほぼ全量がインピーダンスの低い第2アーム2、即ち第2発光ダイオード12を通って流れることになる。従って、ここで発光素子7として機能する第2発光ダイオード12は、同時に、消灯中の第1発光ダイオード11に流れ込む電流を迂回させて第1発光ダイオード11を保護する保護ダイオード13としても機能する。同様に、第1発光ダイオード11が発光素子7として機能する際、第1発光ダイオード11は同時に消灯中の第2発光ダイオード12に対する保護ダイオード13としても機能する。つまり、2つの発光ダイオード(11,12)は誘導電流の通流方向に応じて相補的に消灯中の発光素子7(発光ダイオード(11,12))に対する保護ダイオード13として機能する。
【0030】
即ち、図3に示す発光回路3A(3)は、以下のように構成されていると言うことができる。発光回路3A(3)は、第1アーム1及び第2アーム2の各発光ダイオード(11,12)の順方向が互いに逆方向となる状態で第1アーム1と第2アーム2とが並列接続されて構成される。第1アーム1及び第2アーム2の各発光ダイオード(11,12)は、交流の誘導電流の通流方向に応じて相補的に、発光素子7としての発光ダイオード及び保護ダイオード13として機能する。より詳細には、各発光ダイオード(11,12)は、交流の誘導電流の通流方向に応じて相補的に点灯及び消灯して、点灯時に発光素子7として機能し、当該通流方向に応じて相補的に、消灯中の発光ダイオードに対する保護ダイオード13として機能する。
【0031】
ここで、図6を参照して電源プラグ20の内部構造について説明する。図6は、本体部52のプラグ受け部61と、電源プラグ20とが分離している状態を示している。また、図6は、電源プラグ20をダイヤル21が設けられる側とは逆側、つまり裏側から内部を見た裏面視の図である。プラグ受け部61は、電源プラグ20が挿入される凹部63が形成されている。凹部63の奥の中央には、電源プラグ20に設けられた感熱棒23を本体部52の内部へ導くための貫通孔66が形成されている。また、凹部63の奥の中央からほぼ均等な位置、つまり貫通孔66の両側には、ヒーター5に接続された一対のヒーター電極65が設けられている。これらのヒーター電極65は、図3の等価回路図における接点Pに相当する。
【0032】
プラグ受け部61と対向する側である電源プラグ20の前面には、挿入時にプラグ受け部61のヒーター電極65と対向する位置に電極挿入孔26が設けられている。電極挿入孔26の内部には、プラグ受け部61と電源プラグ20とが結合された状態において、プラグ受け部61のヒーター電極65と接触する電源端子25が設けられている。電源端子25は、前方に向けて付勢されており、プラグ受け部61と電源プラグ20とが結合された状態において、ヒーター電極65と電源端子25との接触がより確実となるように構成されている。電源端子25は、ヒーター電極65と共に図3の等価回路図における接点Pに相当する。
【0033】
電源プラグ20の両側面には、可動部材28が電源プラグ20に対して揺動自在に設けられている。可動部材28は、プラグ受け部61と対向しない側である後部側(可動部材28の後端部)において、電源プラグ20に軸支されている。また、可動部材28の前端部には、側方外側に向けて突出する爪部27が形成されている。この爪部27は、バネ29によって側方外側に向けて付勢されている。プラグ受け部61の凹部63の両側面には、これら爪部27に対向する係止部67が形成されている。電源プラグ20をプラグ受け部61に挿入した際、爪部27が係止部67により係止され、電源プラグ20とプラグ受け部61とが結合される。
【0034】
感熱棒23は、温度調節器8に接続されている。交流の商用電源である交流電源9に接続されるコード部59は、2本の電線により構成されている。当然ながら、撚り線により1本の電線が構成される場合を含む。一方の電線である第1コード31は、図3及び図6に示すように、直接、一方の電源端子25である第1電源端子25a(第1接点P1)に接続される。他方の電線である第2コード32は、温度調節器8の第1端子81(入力側端子)に接続される。温度調節器8の第1端子81と第2端子82(出力側端子)とは、上述したダイヤル21の設定位置及び感熱棒23によって感知される温度によって導通状態となったり、切断状態となったりする。第2端子82には、温度調節器8の第1端子81と第2端子82とが導通状態の時に、第2コード32と導通して主回路6を構成する導電路60となる第3コード33が接続される。第3コード33は、図4に示すように、カレントトランス4の環状のコア43の環の中を通って、他方の電源端子25である第2電源端子25b(第2接点P2)に接続される。
【0035】
カレントトランス4は、プリント配線基板30に実装されており、二次側コイル42に生じる誘導電流は、プリント配線基板30の上に実装される発光回路3に供給される。発光回路3を構成する制限抵抗15や発光素子7などは、カレントトランス4とは反対の面に実装されており、図6においては不図示である。
【0036】
プリント配線基板30は、電源プラグ20のケースに固定される。例えば、図6に示すケース部材20cに設けられた位置決めピン20pにプリント配線基板30に設けられた位置決め孔を係合させ、同様にケース部材20cに設けられた位置決めリブ20rによってプリント配線基板30の端部を係止することによって、当該ケース部材20cにプリント配線基板30が位置決めされる。ケース部材20cに不図示のカバー部材をかぶせることによって温度調節器が内蔵された電源プラグ20が構成される。このカバー部材には、プリント配線基板30の基板面に当接するリブが形成されており、ケース部材20cにカバー部材が被せられた状態でプリント配線基板30は、電源プラグ20のケースに固定される。
【0037】
カレントトランス4は、プリント配線基板30に実装されて固定されており、コア43はカレントトランス4を構成する成型部材に固定されている。この状態で、コア43は、プリント配線基板30に対して固定されていると共に、コア43とプリント配線基板30との間には所定の空隙が存在する。図6に示すように、この空隙を通って第3コード33は、コア43に巻回される。具体的には、第3コード33は、方形状のコア43の一辺側におけるプリント配線基板30とコア43との間の空隙を通ってコア43の内側へ導かれる。そして、当該一辺側の対辺側においてコア43に巻回され、再度、プリント配線基板30とコア43の当該一辺側との間を通って、コア43の内側から外側へと配線される。つまり、コア43に巻回される第3コード33の両端部側は、プリント配線基板30とコア43との間に形成される空隙によって係止されることとなり、コア43と第3コード33との位置関係、特に巻回された第3コード33の屈曲部におけるコア43との位置関係もほぼ固定される。これによって、安定した一次側回路が形成されることになる。
【0038】
ところで、図7に例示した一般的な回路構成の場合には、第3コード33は、例えば、図6における温度調節器8の第2端子82と、第2電源端子25b(第2接点P2)との間に単純に接続される。また、ランプ70と制限抵抗71との直列回路は、第1電源端子25aと第2電源端子25b(又は温度調節器8の第2端子82)との間に接続されることになる。図4及び図6に示したように、本発明に係る通電状態報知回路10も、第1コード31〜第3コード33の3本の電線によって構成される。つまり、本発明に係る通電状態報知回路10は、図7に例示したような一般的な回路構成に比べて電源コードの数を増やすことなく、カレントトランス4を利用した発光回路3を付加することが可能である。
【0039】
例えば、カレントトランス4に一次側コイルが設けられており、当該一次側コイルの両端がプリント配線基板30に実装されていると、温度調節器8の第2端子82とプリント配線基板30(一次側コイルの一方端)とを接続するコードと、プリント配線基板30(一次側コイルの他方端)と第2電源端子25b(第2接点P2)とを接続するコードとの2本のコードが必要となる。つまり、第3コード33が2本に分割されるので、部品コスト及び生産コストが高くなる可能性がある。しかし、本発明に係る通電状態報知回路10は、一般的な回路構成と同様に、第3コード33は1本でよく、部品コスト及び生産コストの増加が抑制される。
【0040】
尚、カレントトランス4に代えて、変圧器を用いる構成も考えられるが、変圧器はカレントトランス4に比べて一次側のインピーダンスが高い。このため、主回路6における変圧器の一次側での電圧降下が大きくなり、ヒーター5の両端に掛かる電圧が低下することになる。これにより、ヒーター5による加熱効率が低下してしまうため、変圧器を用いる構成は好ましくない。従って、上述したように、カレントトランス4を用いて通電状態報知回路10を構成すると好適である。また、カレントトランス4は、変圧器に比べて小型の部品が多く提供されており、電源プラグ20の内部に省スペースで格納することができる。例えば、図7に例示したような回路構成で一般的に利用されている電源プラグにおいてランプ70が格納されているようなスペースにプリント配線基板30と共にカレントトランス4を収容するようなことも可能である。
【0041】
一次側のインピーダンスが小さいことからも理解されるように、カレントトランス4の二次側に生じる誘導電流は小さい。従って、発光素子7として機能する発光ダイオード(11,12)は、高輝度発光ダイオードであることが好適である。また、図3に例示したように交流の誘導電流に応じて、相補的に発光素子7と機能するように第1発光ダイオード11と第2発光ダイオード12とを並列接続すると、それぞれの発光ダイオードを発光素子7として使用することができ、輝度を向上させることが可能である。
【0042】
〔その他の実施形態〕
以下、本発明のその他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0043】
(1)上記説明においては、電熱機器としてホットプレート50(電熱調理器)を例として説明した。しかし、当然ながら本発明が適用可能な電熱機器は、このような電熱調理器に限定されるものではない。本発明は、例えば電気カーペットや電気毛布など暖房器具に適用することも可能である。
【0044】
(2)上記説明においては、電源コード51と本体部52とが分離可能な形態を例として説明した。しかし、上述したように、電源コード51と本体部52との接触不良以外にも、本体部52における断線等により、電源の供給状態とパイロットランプ22により報知される内容とが異なる場合がある。従って、電源コード51と本体部52とが一体化されている電熱機器にも本発明を適用することが可能であり、当然ながらそのような形態も本発明の技術的範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、電熱機器に備えられた電熱性負荷への通電状態を報知する電熱機器の通電状態報知回路に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 :第1アーム
2 :第2アーム
3,3A,3B:発光回路
4 :カレントトランス
5 :ヒーター(電熱性負荷)
6 :主回路
7 :発光素子
9 :交流電源
10 :通電状態報知回路
11 :第1発光ダイオード(発光ダイオード)
12 :第2発光ダイオード(発光ダイオード)
13 :保護ダイオード
20 :電源プラグ
33 :配線部
43 :コア
50 :ホットプレート(電熱調理器、電熱機器)
52 :本体部
60 :導電路
D1 :第1通流方向
D2 :第2通流方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電熱機器に備えられた電熱性負荷への通電状態を報知する電熱機器の通電状態報知回路であって、
交流電源に対して直列に前記電熱性負荷が接続された主回路の導電路を一次側として設けられたカレントトランスと、
前記主回路に流れる交流電流に応じて前記カレントトランスの二次側に生じる誘導電流により発光する発光素子を有して構成される発光回路と、
を備える電熱機器の通電状態報知回路。
【請求項2】
前記発光素子は、交流の前記誘導電流の第1通流方向を順方向として接続される少なくとも1つの発光ダイオードであり、
前記発光回路は、前記発光素子としての発光ダイオードを有する第1アームと、前記誘導電流の通流方向が前記第1通流方向とは逆方向の第2通流方向の際に、逆方向電圧から前記第1アームの発光ダイオードを保護する保護ダイオードを有する第2アームとを備えて構成される請求項1に記載の電熱機器の通電状態報知回路。
【請求項3】
前記保護ダイオードは、発光ダイオードであり、
前記発光回路は、前記第1アーム及び前記第2アームの各発光ダイオードの順方向が互いに逆方向となる状態で前記第1アームと前記第2アームとが並列接続されて構成され、
前記第1アーム及び前記第2アームの各発光ダイオードは、交流の前記誘導電流の通流方向に応じて相補的に、前記発光素子としての発光ダイオード及び前記保護ダイオードとして機能する請求項2に記載の電熱機器の通電状態報知回路。
【請求項4】
前記電熱性負荷を有する本体部に対して着脱自在に結合される電熱機器の電源プラグであって、
請求項1から3の何れか一項に記載の電熱機器の通電状態報知回路と、
前記本体部との結合状態において前記本体部の電熱性負荷と共に前記主回路を形成し、前記主回路の前記導電路を構成する配線部とを備え、
前記配線部は、前記カレントトランスの一次側において、前記カレントトランスを構成する環状のコアに巻回されている電熱機器の電源プラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−27560(P2013−27560A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165758(P2011−165758)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】