電界放出型電子源装置
【課題】、シールド電極へのビーム電流の流れ込み量を低減することによりターゲットへ照射するビーム電流量を増加させて、信号電荷の読み取り能力を向上した電界放出型電子源装置を提供する。
【解決手段】電子を放出するエミッタが複数設けられた電子源アレイと、前記電子源アレイから放出された電子ビームにより所定の動作を行う光電変換膜と、前記電子源アレイと前記光電変換膜との間に内壁表面が二次電子放射物質の膜で被覆された複数の貫通孔を持つ電極と、を備えた電界放出型電子源装置。
【解決手段】電子を放出するエミッタが複数設けられた電子源アレイと、前記電子源アレイから放出された電子ビームにより所定の動作を行う光電変換膜と、前記電子源アレイと前記光電変換膜との間に内壁表面が二次電子放射物質の膜で被覆された複数の貫通孔を持つ電極と、を備えた電界放出型電子源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電界放出型電子源を用いた電界放出型撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体微細加工技術の進展により、半導体などの基板にミクロンオーダーの微細な冷陰極構造を多数集積化する真空マイクロエレクトロニクス技術が注目を集めている。これらの技術によって得られる微小冷陰極構造を備えた電界放出型電子源アレイは、平面型の電子放出特性や高い電流密度が期待できること、熱陰極とは異なりヒーター等の熱源を必要としないこと等から、低消費電力型の次世代フラットディスプレイ、センサ、平面型撮像装置の電子源として期待が集まっている。
【0003】
電界放出型電子源アレイを用いた平面型撮像装置の一例として、その基本構成を図7に示す。前面パネル1と、背面パネル2と、側面外周器3とを備え、これらはフリットガラスやインジウム等の封着材料4により固着固定され、その内部が真空に保持されている。前面パネル1の内面には、外部からの入射光を透過する陽極電極5が形成され、その表面にターゲット6として、硫化アンチモン、セレン等からなる光電変換膜が形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
背面パネル2の内面には、複数の冷陰極素子(エミッタ)と、各冷陰極素子の周辺に形成された絶縁層及び冷陰極素子から電子を取り出す為の電圧を印加するゲート電極等からなる周辺素子とが集積一体化された電界放出型電子源アレイ7が形成された半導体基板8が設置されている。冷陰極素子から放出された電子ビーム9をターゲット6にランディングさせて、入射光によりターゲット6中で発生・蓄積された信号電荷の空間分布を時系列電気信号として外部に取り出し、ターゲット6上に結像した画像を読み取ることができる。
【0005】
しかし、冷陰極素子7からは、電子ビームが広がりを持って放出されるため、この構成では、光電変換膜に到達する電子ビームはある程度の広がりを持つことになる。このため、ターゲット6上の隣接する画素の走査面電位の一部もしくは全部をも読み取ることになり、解像度の劣化や偽信号の読み取りが発生するという問題がある。
【0006】
そこで、電界放出型電子源アレイとターゲットとの間に複数の貫通孔を有するシールド−グリッド電極を配置し、電子ビームの広がりを抑え、解像度を向上する手段が提案されている。電子放出領域からの電子ビームの広がりをシールド−グリッド電極で抑えながらターゲットに蓄積された信号電荷を読み取るので、隣接する画素の電荷読み取りが減少し、高解像度化が実現されている。また光電変換膜中から放出されるガスによる正イオン、余剰電子からエミッタとゲート電極の損傷が防護され、陰極アレイの動作安定、低雑音も実現している(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平6−176704号公報
【特許文献2】特開2000−48743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、電子源アレイとターゲットとの間にシールド−グリッド電極が存在すると、電子源アレイから放射される電子ビームの大半がシールド−グリッド電極に流れ込むので、ターゲットに到達するビーム電流は大幅に減少する。ターゲットに到達するビーム電流が減ると、ターゲットに蓄積された信号電荷の読み取り能力が低下し、鮮明な画像を撮像することが困難となる。これを補うためには、電子源アレイからの電子放射量を増やし、高いビーム電流量で動作させる必要がある。しかしながら、ゲート電極に高電圧を印加してエミッタに高負荷をかける必要があるため、エミッタ−ゲート電極間での絶縁破壊や電子源の寿命低下を招くという問題を生じる。このため、十分な感度が得られる電子ビームをターゲットへ照射することができないという課題を有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、シールド電極へのビーム電流の流れ込み量を低減することによりターゲットへ照射するビーム電流量を増加させて、信号電荷の読み取り能力を向上した電界放出型電子源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電界放出型電子源装置は、電子を放出するエミッタが複数設けられた電子源アレイと、前記電子源アレイから放出された電子ビームにより所定の動作を行う光電変換膜と、前記電子源アレイと前記光電変換膜との間に内壁表面が二次電子放射物質の膜で被覆された複数の貫通孔を持つ電極と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電界放出型電子源装置によれば、貫通孔側面に電子ビームが衝突することで二次電子放射物質から電子が放射されるとともに、貫通孔側面に衝突した電子と、二次電子放射物質から放出された電子が散乱するので、貫通孔側面への電子の衝突機会が増え、二次電子の増倍率が向上することで、ターゲットへの照射電流が増え、ターゲットの信号電荷の読み取り感度が向上し、鮮明な画像を撮像することができる。
前記二次電子放射物質としては、酸化マグネシウム、酸化ベリリウムのいずれかを含む膜であることが好ましい。これらの物質は二次電子放出比が1を超えるので、貫通孔側面に衝突したビーム電流以上の電流をターゲットに照射させることができる。
【0011】
また、前記貫通孔は、開口径よりも電子ビーム通過行路の長さの方が大きい、トリミング型電極であることが好ましい。これにより、斜め方向の速度成分を持って貫通孔に入射した電子が貫通孔側面に衝突して、電子ビームの広がりが抑えられ、小さいビーム径の電子ビームをターゲットに照射できるので、画像の解像度が向上するとともに、貫通孔側面への電子の衝突機会が増え、二次電子の増倍率が向上することで、ターゲットへの照射電流が増え、信号電荷の読み取り感度が向上する。
【0012】
従って、本発明によれば、従来よりも高い電流量の電子ビームをターゲットへ照射することができるので、感度の高い電子源装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の電界放出型電子源装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
本発明の第一の実施形態について、図面を用いて説明する。本発明の電界放出型電子源装置の概略図を図1(a)に示す。前面パネル1と、背面パネル2と、側面外周器3とを備え、これらはインジウムからなる封着材料4により固着固定され、その内部が真空に保持されている。前面パネル1の内面には、外部からの入射光を透過する陽極電極5が形成され、その表面にターゲット6として、硫化アンチモンからなる光電変換膜が形成されている。
【0015】
背面パネル2の内面には、陰極基板10の上に、複数の冷陰極素子(エミッタ)と、各冷陰極素子の周辺に形成された絶縁層及び冷陰極素子から電子を取り出す為の電圧を印加するゲート電極等からなる周辺素子とが集積一体化された電界放出型電子源アレイ7が形成された半導体基板8が設置されている。さらに、陰極基板10の端部には、複数の貫通孔を有する電極11が搭載された電極サポート12が設置されている。
【0016】
図1(b)に複数の貫通孔を有する電極11の拡大図を示す。この電極11は、井桁状の貫通孔13を持ち、貫通孔の開口径Dに対して長さLが1:5の構造体である。このような構造の電極はトリミング電極と呼ばれる。(以下、この構造体の電極のことをトリミング電極という)
図1(c)にトリミング電極11の貫通孔の断面図を示す。断面図に示すように、貫通孔の内壁は、凹凸を持った形状となっている。さらに、その表面に、二次電子放射物質として酸化マグネシウムの層14が形成され、貫通孔の内壁面が凹凸のある酸化マグネシウムの膜で覆われている。トリミング電極11の貫通孔の側面が、凹凸を持っていることによって、貫通孔に斜め方向に入射した電子9が、貫通孔の側面に衝突して散乱するので、貫通孔の側面に衝突する回数が増え、さらに貫通孔の側面が、酸化マグネシウムの層14で覆われていることによって、二次電子が放出される回数も増える。この結果、トリミング電極11からターゲット6へ向かう電流は、トリミング電極11の貫通孔に入射する電流よりも増加することになる。これにより、ターゲット6に照射される電子ビームが増加し、ターゲット表面の信号電荷の読み取り感度が向上するので、高感度、高コントラストの撮像装置を実現することができる。
【0017】
更に、トリミング電極11によって、電子ビームの広がりを抑え、ビーム径を小さくすることができるので、冷陰極素子7から放出された電子ビームをターゲット6にランディングさせて、入射光によりターゲット6中で発生・蓄積された信号電荷の空間分布を時系列電気信号として外部に取り出し、ターゲット6上に結像した画像を読み取る際に、精細な読み取り精度を保つことができ、撮像装置の解像度を向上することができる。
【0018】
次にトリミング電極11の作製方法と酸化マグネシウムの層14の形成方法について説明する。図2(a)は、トリミング電極の加工前の状態を示している。加工前のトリミング電極は、複数層の珪素(Si)15と酸化珪素(SiO2)16が重なった積層板となっている。この積層板に対して、エッチング処理を行い、貫通孔を形成していく。なお、エッチング処理は、以下のウエットエッチング工程により行う。
【0019】
珪素層15と酸化珪素層16が重なった積層板において、エッチングをさせない部分の表面に、蒸着等により窒化ケイ素を100nmの厚さで形成し、マスキング層を形成する。次に、前記積層板を、50重量%のフッ化水素を含有したエッチング液に浸す。この工程により、マスキング層がない部分の珪素層15と酸化ケイ素層16がフッ化水素により侵食されるので、積層板内に貫通孔が形成されていく。この積層板では、珪素層15と酸化珪素層16とで、エッチングの速度が多少異なり、酸化珪素層16がやや早く侵食される。前記エッチング液中で前記積層板を30分間浸し、エッチング処理を完了させると、図2(b)に示すように、貫通孔の側面は、凹凸のある形状となる。次に、アルキルベンゼンスルホン酸等の剥離液で窒化ケイ素のマスキング層を除去すると、図2(b)に示す、側面に凹凸のある貫通孔を持ったトリミング電極11が完成する。
【0020】
複数の貫通孔を形成した積層板に対して、電子ビームが入射する側の貫通孔以外の部分をマスキングし、電子ビームが入射する側の斜め方向からマグネシウムを蒸着・成膜して、貫通孔の側面にマグネシウムの層を形成する。その後、マグネシウムの層を酸化処理し、図2(c)に示すように、貫通孔表面に凹凸を持った酸化マグネシウムの層14を形成した珪素と酸化珪素の積層板を作製する。この積層板を電極サポート12に、導電性物質で接着させることにより、トリミング電極11が完成する。導電性物質で接着させることで、トリミング電極の上面から底面まで一様の電圧を印加することができる。
【0021】
なお、本実施形態では、トリミング電極の材料として、珪素を主成分とする物質を用いたが、導電性物質であれば、特に材料を選ぶものではない。ただし、真空中で使用する部材であることから、真空中での放出ガスが少ないものが好ましい。また、本実施形態では、二次電子放射物質として酸化マグネシウムを用いたが、酸化ベリリウムを用いた場合でも、同様の効果が得られる。
【0022】
(実施の形態2)
本発明の第二の実施形態について説明する。第二の実施形態の電界放出型電子源装置の概略図を図3(a)に示す。第二の実施形態の電界放出型電子源装置の構成は、複数の貫通孔を有するトリミング電極17を除いて、図1に示した第一の実施形態と同じである。
図3(b)に貫通孔を有するトリミング電極の断面図を示す。第一の実施形態と異なる点は、材料が多孔質金属からなり、貫通孔の内壁は金属粒子の隙間によって、図3(b)に示すような凹凸を持った形状を有している。また、貫通孔の内壁には、二次電子放射物質として酸化マグネシウムの層14が形成されている。このトリミング電極17を用いた場合であっても、貫通孔の側面が凹凸を持っているので、貫通孔に斜め方向に入射した電子が、貫通孔の側面に衝突して散乱し、貫通孔の側面に衝突する回数が増える。さらに貫通孔の側面が、酸化マグネシウムの層14で覆われていることによって、二次電子が放出される回数も増えるので、トリミング電極17からターゲット6へ向かう電流は、トリミング電極17の貫通孔に入射する電流よりも増加することになる。これにより、ターゲット6に照射される電子ビームが増加し、ターゲット表面の信号電荷の読み取り感度が向上するので、高感度、高コントラストの撮像装置を実現することができる。
【0023】
次に、トリミング電極17の作製方法について説明する。図4(a)に示した多孔質ニッケルの板18に、エッチング処理を行い、貫通孔を形成していく。多孔質ニッケルは、ニッケルの粒子が焼結したものであり、内部には、粒子の間に隙間がある。多孔質ニッケルの板18のニッケル粒子は、主に球形状の粒子でできており、それらの粒子径は1.8μmから4.7μmの範囲にあって、平均粒子径は3.0μmである。なお、図4(a)の多孔質ニッケルの板では、説明を簡単にするために、同一粒子径のものが規則正しく並んでいるものを記載している。貫通孔を形成すると、図4(b)に示したように、貫通孔の側面は、平均で1.5μm程度の凹凸を持った形状となる。
【0024】
多孔質ニッケルの板18のエッチング処理は、以下のウエットエッチング工程により行う。多孔質ニッケルの板18において、エッチングをさせない部分の表面に、蒸着等により窒化ケイ素を100nmの厚さで形成し、マスキング層を形成する。次に、多孔質ニッケルの板18を、10重量%の硝酸を含有したエッチング液に浸す。この工程により、マスキング層がない部分のニッケルが硝酸により侵食されるので、多孔質ニッケル内に貫通孔が形成されていく。前記エッチング液中で多孔質ニッケルの板18を2時間浸し、エッチング処理を完了させると、図4(b)に示すように、貫通孔の側面は、平均で1.5μm程度の凹凸のある形状となる。最後に、アルキルベンゼンスルホン酸等の剥離液で窒化ケイ素のマスキング層を除去すると、図4(b)に示す、側面に凹凸のある貫通孔を持ったトリミング電極17が完成する。
【0025】
複数の貫通孔を形成した多孔質ニッケルの板に対して、電子ビームが入射する側の貫通孔以外の部分をマスキングし、電子ビームが入射する側の斜め方向からマグネシウムを蒸着・成膜して、貫通孔の側面にマグネシウムの層を形成する。その後、マグネシウムの層を酸化処理し、図4(c)に示すように、貫通孔表面に凹凸を持った酸化マグネシウムの層14を形成した多孔質ニッケルの板を作製する。この多孔質ニッケルの板を電極サポート12に、導電性物質で接着させることにより、トリミング電極17が完成する。
【0026】
なお、第二の実施形態では、トリミング電極の材料として、多孔質ニッケルを用いたが、導電性のある多孔質物質であれば、特に材料を選ぶものではない。ただし、真空中で使用する部材であることから、真空中での放出ガスが少ないものが好ましく、かつマグネシウムの酸化工程において酸化されないことが必要であるので、多孔質金属としては、ニッケルか銅が好ましい。
【0027】
(実施の形態3)
本発明の第三の実施形態について、図面を用いて説明する。本発明の電界放出型電子源装置の概略図を図5(a)に示す。第三の実施形態の電界放出型電子源装置の構成は、複数の貫通孔を有するトリミング電極19を除いて、図1に示した第一の実施形態と同じである。
【0028】
図5(b)に貫通孔を有するトリミング電極部の拡大断面図を示す。第三の実施形態におけるトリミング電極19は、第一の実施形態におけるトリミング電極11と同様に、井桁状の貫通孔を持ち、貫通孔の開口径Dに対して長さLが1:5の構造体である。第三の実施形態におけるトリミング電極19の貫通孔の側面は、平面の電極基体上に、二次電子放射物質として酸化マグネシウムの微粒子の層20を形成することにより、凹凸を持った形状となっている。
【0029】
このトリミング電極19を用いた場合であっても、貫通孔の側面が酸化マグネシウムの微粒子によって凹凸を形成しているので、貫通孔に斜め方向に入射した電子が、貫通孔の側面に衝突して散乱し、貫通孔の側面に衝突する回数が増える。同時に、酸化マグネシウムの微粒子が二次電子を放出するので、ターゲット6へ向かう電流は、トリミング電極19の貫通孔に入射する電流よりも増加することになる。これにより、第一の実施形態と同様に、ターゲット6に照射される電子ビームが増加し、ターゲット表面の信号電荷の読み取り感度が向上するので、高感度、高コントラストの撮像装置を実現することができる。
【0030】
次にトリミング電極19の作製方法と酸化マグネシウムの微粒子の層20の形成方法について説明する。図6(a)は、トリミング電極の加工前の状態を示している。加工前のトリミング電極は、珪素の単一基板21となっている。この珪素基板21に対して、エッチング処理を行い、貫通孔を形成していく。
【0031】
なお、エッチング処理は、以下のウエットエッチング工程により行う。珪素基板21において、エッチングをさせない部分の表面に、蒸着等により窒化ケイ素を100nmの厚さで形成し、マスキング層を形成する。次に、珪素基板21を、30重量%の水酸化カリウムを含有したエッチング液に浸す。この工程により、マスキング層がない部分の珪素が水酸化カリウムにより侵食されるので、珪素基板内に貫通孔が形成されていく。前記エッチング液中で珪素基板21を30分間浸し、エッチング処理を完了させると、図6(b)に示すように、側面が平面形状の貫通孔が形成される。次に、アルキルベンゼンスルホン酸等の剥離液で窒化ケイ素のマスキング層を除去し、複数の貫通孔を持った珪素基板21を製造する。
【0032】
次に、複数の貫通孔を形成した珪素基板21に対して、高分散溶媒と粒子径1μm以下の酸化マグネシウムの微粒子を混合した混合液に浸し、珪素基板に電荷を与えて、珪素基板の表面に厚さ2μm程度の酸化マグネシウムの微粒子の層20を電着・形成する。次に、珪素基板の表面と裏面の酸化マグネシウムの微粒子層を除去し、珪素基板の貫通孔の側面のみに酸化マグネシウムの微粒子層20を残すことによって、図6(c)に示すように、貫通孔表面に酸化マグネシウムの微粒子層20を形成した珪素基板を作製する。この珪素基板を図5(a)に示す電極サポート12に、導電性物質で接着させることにより、トリミング電極19が完成する。
【0033】
なお、第三の実施形態では、トリミング電極の材料として、珪素を用いたが、導電性物質であれば特に材料を選ぶものではないことは、第一の実施形態の場合と同様である。また、トリミング電極の貫通孔の側面には酸化マグネシウムの微粒子の層を形成したが、酸化ベリリウムの微粒子の層を形成しても同様の効果が得られる。また、第三の実施形態では、酸化マグネシウムの微粒子の層の形成方法として電着法を用いたが、特に形成方法を限定するものではなく、例えば、スラリー塗布法を用いても酸化マグネシウムの微粒子の層の形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の利用分野は、電界放出型電子源撮像装置として、特に暗視カメラ等の高感度・高解像度の撮像装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる電界放出型電子源装置の断面図
【図2】本発明の実施の形態1にかかる電界放出型電子源装置に使用されるトリミング電極の作成方法を示す図
【図3】本発明の実施の形態2にかかる電界放出型電子源装置の断面図
【図4】本発明の実施の形態2にかかる電界放出型電子源装置に使用されるトリミング電極の作成方法を示す図
【図5】本発明の実施の形態3にかかる電界放出型電子源装置の断面図
【図6】本発明の実施の形態3にかかる電界放出型電子源装置に使用されるトリミング電極の作成方法を示す図
【図7】従来の電界放出型電子源アレイを用いた電界放出型電子源装置の断面図
【符号の説明】
【0036】
1 前面パネル
2 背面パネル
3 側面外周器
4 封着部材
5 陽極電極
6 ターゲット
7 電界放出型電子源アレイ
8 半導体基板
9 電子ビーム
10 陰極基板
11 トリミング電極
12 電極サポート
13 貫通孔
14 酸化マグネシウムの層
15 珪素の層
16 酸化珪素の層
17 トリミング電極
18 多孔質ニッケルの板
19 トリミング電極
20 酸化マグネシウムの微粒子の層
21 珪素基板
【技術分野】
【0001】
本発明は電界放出型電子源を用いた電界放出型撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体微細加工技術の進展により、半導体などの基板にミクロンオーダーの微細な冷陰極構造を多数集積化する真空マイクロエレクトロニクス技術が注目を集めている。これらの技術によって得られる微小冷陰極構造を備えた電界放出型電子源アレイは、平面型の電子放出特性や高い電流密度が期待できること、熱陰極とは異なりヒーター等の熱源を必要としないこと等から、低消費電力型の次世代フラットディスプレイ、センサ、平面型撮像装置の電子源として期待が集まっている。
【0003】
電界放出型電子源アレイを用いた平面型撮像装置の一例として、その基本構成を図7に示す。前面パネル1と、背面パネル2と、側面外周器3とを備え、これらはフリットガラスやインジウム等の封着材料4により固着固定され、その内部が真空に保持されている。前面パネル1の内面には、外部からの入射光を透過する陽極電極5が形成され、その表面にターゲット6として、硫化アンチモン、セレン等からなる光電変換膜が形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
背面パネル2の内面には、複数の冷陰極素子(エミッタ)と、各冷陰極素子の周辺に形成された絶縁層及び冷陰極素子から電子を取り出す為の電圧を印加するゲート電極等からなる周辺素子とが集積一体化された電界放出型電子源アレイ7が形成された半導体基板8が設置されている。冷陰極素子から放出された電子ビーム9をターゲット6にランディングさせて、入射光によりターゲット6中で発生・蓄積された信号電荷の空間分布を時系列電気信号として外部に取り出し、ターゲット6上に結像した画像を読み取ることができる。
【0005】
しかし、冷陰極素子7からは、電子ビームが広がりを持って放出されるため、この構成では、光電変換膜に到達する電子ビームはある程度の広がりを持つことになる。このため、ターゲット6上の隣接する画素の走査面電位の一部もしくは全部をも読み取ることになり、解像度の劣化や偽信号の読み取りが発生するという問題がある。
【0006】
そこで、電界放出型電子源アレイとターゲットとの間に複数の貫通孔を有するシールド−グリッド電極を配置し、電子ビームの広がりを抑え、解像度を向上する手段が提案されている。電子放出領域からの電子ビームの広がりをシールド−グリッド電極で抑えながらターゲットに蓄積された信号電荷を読み取るので、隣接する画素の電荷読み取りが減少し、高解像度化が実現されている。また光電変換膜中から放出されるガスによる正イオン、余剰電子からエミッタとゲート電極の損傷が防護され、陰極アレイの動作安定、低雑音も実現している(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平6−176704号公報
【特許文献2】特開2000−48743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、電子源アレイとターゲットとの間にシールド−グリッド電極が存在すると、電子源アレイから放射される電子ビームの大半がシールド−グリッド電極に流れ込むので、ターゲットに到達するビーム電流は大幅に減少する。ターゲットに到達するビーム電流が減ると、ターゲットに蓄積された信号電荷の読み取り能力が低下し、鮮明な画像を撮像することが困難となる。これを補うためには、電子源アレイからの電子放射量を増やし、高いビーム電流量で動作させる必要がある。しかしながら、ゲート電極に高電圧を印加してエミッタに高負荷をかける必要があるため、エミッタ−ゲート電極間での絶縁破壊や電子源の寿命低下を招くという問題を生じる。このため、十分な感度が得られる電子ビームをターゲットへ照射することができないという課題を有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、シールド電極へのビーム電流の流れ込み量を低減することによりターゲットへ照射するビーム電流量を増加させて、信号電荷の読み取り能力を向上した電界放出型電子源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電界放出型電子源装置は、電子を放出するエミッタが複数設けられた電子源アレイと、前記電子源アレイから放出された電子ビームにより所定の動作を行う光電変換膜と、前記電子源アレイと前記光電変換膜との間に内壁表面が二次電子放射物質の膜で被覆された複数の貫通孔を持つ電極と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電界放出型電子源装置によれば、貫通孔側面に電子ビームが衝突することで二次電子放射物質から電子が放射されるとともに、貫通孔側面に衝突した電子と、二次電子放射物質から放出された電子が散乱するので、貫通孔側面への電子の衝突機会が増え、二次電子の増倍率が向上することで、ターゲットへの照射電流が増え、ターゲットの信号電荷の読み取り感度が向上し、鮮明な画像を撮像することができる。
前記二次電子放射物質としては、酸化マグネシウム、酸化ベリリウムのいずれかを含む膜であることが好ましい。これらの物質は二次電子放出比が1を超えるので、貫通孔側面に衝突したビーム電流以上の電流をターゲットに照射させることができる。
【0011】
また、前記貫通孔は、開口径よりも電子ビーム通過行路の長さの方が大きい、トリミング型電極であることが好ましい。これにより、斜め方向の速度成分を持って貫通孔に入射した電子が貫通孔側面に衝突して、電子ビームの広がりが抑えられ、小さいビーム径の電子ビームをターゲットに照射できるので、画像の解像度が向上するとともに、貫通孔側面への電子の衝突機会が増え、二次電子の増倍率が向上することで、ターゲットへの照射電流が増え、信号電荷の読み取り感度が向上する。
【0012】
従って、本発明によれば、従来よりも高い電流量の電子ビームをターゲットへ照射することができるので、感度の高い電子源装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の電界放出型電子源装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
本発明の第一の実施形態について、図面を用いて説明する。本発明の電界放出型電子源装置の概略図を図1(a)に示す。前面パネル1と、背面パネル2と、側面外周器3とを備え、これらはインジウムからなる封着材料4により固着固定され、その内部が真空に保持されている。前面パネル1の内面には、外部からの入射光を透過する陽極電極5が形成され、その表面にターゲット6として、硫化アンチモンからなる光電変換膜が形成されている。
【0015】
背面パネル2の内面には、陰極基板10の上に、複数の冷陰極素子(エミッタ)と、各冷陰極素子の周辺に形成された絶縁層及び冷陰極素子から電子を取り出す為の電圧を印加するゲート電極等からなる周辺素子とが集積一体化された電界放出型電子源アレイ7が形成された半導体基板8が設置されている。さらに、陰極基板10の端部には、複数の貫通孔を有する電極11が搭載された電極サポート12が設置されている。
【0016】
図1(b)に複数の貫通孔を有する電極11の拡大図を示す。この電極11は、井桁状の貫通孔13を持ち、貫通孔の開口径Dに対して長さLが1:5の構造体である。このような構造の電極はトリミング電極と呼ばれる。(以下、この構造体の電極のことをトリミング電極という)
図1(c)にトリミング電極11の貫通孔の断面図を示す。断面図に示すように、貫通孔の内壁は、凹凸を持った形状となっている。さらに、その表面に、二次電子放射物質として酸化マグネシウムの層14が形成され、貫通孔の内壁面が凹凸のある酸化マグネシウムの膜で覆われている。トリミング電極11の貫通孔の側面が、凹凸を持っていることによって、貫通孔に斜め方向に入射した電子9が、貫通孔の側面に衝突して散乱するので、貫通孔の側面に衝突する回数が増え、さらに貫通孔の側面が、酸化マグネシウムの層14で覆われていることによって、二次電子が放出される回数も増える。この結果、トリミング電極11からターゲット6へ向かう電流は、トリミング電極11の貫通孔に入射する電流よりも増加することになる。これにより、ターゲット6に照射される電子ビームが増加し、ターゲット表面の信号電荷の読み取り感度が向上するので、高感度、高コントラストの撮像装置を実現することができる。
【0017】
更に、トリミング電極11によって、電子ビームの広がりを抑え、ビーム径を小さくすることができるので、冷陰極素子7から放出された電子ビームをターゲット6にランディングさせて、入射光によりターゲット6中で発生・蓄積された信号電荷の空間分布を時系列電気信号として外部に取り出し、ターゲット6上に結像した画像を読み取る際に、精細な読み取り精度を保つことができ、撮像装置の解像度を向上することができる。
【0018】
次にトリミング電極11の作製方法と酸化マグネシウムの層14の形成方法について説明する。図2(a)は、トリミング電極の加工前の状態を示している。加工前のトリミング電極は、複数層の珪素(Si)15と酸化珪素(SiO2)16が重なった積層板となっている。この積層板に対して、エッチング処理を行い、貫通孔を形成していく。なお、エッチング処理は、以下のウエットエッチング工程により行う。
【0019】
珪素層15と酸化珪素層16が重なった積層板において、エッチングをさせない部分の表面に、蒸着等により窒化ケイ素を100nmの厚さで形成し、マスキング層を形成する。次に、前記積層板を、50重量%のフッ化水素を含有したエッチング液に浸す。この工程により、マスキング層がない部分の珪素層15と酸化ケイ素層16がフッ化水素により侵食されるので、積層板内に貫通孔が形成されていく。この積層板では、珪素層15と酸化珪素層16とで、エッチングの速度が多少異なり、酸化珪素層16がやや早く侵食される。前記エッチング液中で前記積層板を30分間浸し、エッチング処理を完了させると、図2(b)に示すように、貫通孔の側面は、凹凸のある形状となる。次に、アルキルベンゼンスルホン酸等の剥離液で窒化ケイ素のマスキング層を除去すると、図2(b)に示す、側面に凹凸のある貫通孔を持ったトリミング電極11が完成する。
【0020】
複数の貫通孔を形成した積層板に対して、電子ビームが入射する側の貫通孔以外の部分をマスキングし、電子ビームが入射する側の斜め方向からマグネシウムを蒸着・成膜して、貫通孔の側面にマグネシウムの層を形成する。その後、マグネシウムの層を酸化処理し、図2(c)に示すように、貫通孔表面に凹凸を持った酸化マグネシウムの層14を形成した珪素と酸化珪素の積層板を作製する。この積層板を電極サポート12に、導電性物質で接着させることにより、トリミング電極11が完成する。導電性物質で接着させることで、トリミング電極の上面から底面まで一様の電圧を印加することができる。
【0021】
なお、本実施形態では、トリミング電極の材料として、珪素を主成分とする物質を用いたが、導電性物質であれば、特に材料を選ぶものではない。ただし、真空中で使用する部材であることから、真空中での放出ガスが少ないものが好ましい。また、本実施形態では、二次電子放射物質として酸化マグネシウムを用いたが、酸化ベリリウムを用いた場合でも、同様の効果が得られる。
【0022】
(実施の形態2)
本発明の第二の実施形態について説明する。第二の実施形態の電界放出型電子源装置の概略図を図3(a)に示す。第二の実施形態の電界放出型電子源装置の構成は、複数の貫通孔を有するトリミング電極17を除いて、図1に示した第一の実施形態と同じである。
図3(b)に貫通孔を有するトリミング電極の断面図を示す。第一の実施形態と異なる点は、材料が多孔質金属からなり、貫通孔の内壁は金属粒子の隙間によって、図3(b)に示すような凹凸を持った形状を有している。また、貫通孔の内壁には、二次電子放射物質として酸化マグネシウムの層14が形成されている。このトリミング電極17を用いた場合であっても、貫通孔の側面が凹凸を持っているので、貫通孔に斜め方向に入射した電子が、貫通孔の側面に衝突して散乱し、貫通孔の側面に衝突する回数が増える。さらに貫通孔の側面が、酸化マグネシウムの層14で覆われていることによって、二次電子が放出される回数も増えるので、トリミング電極17からターゲット6へ向かう電流は、トリミング電極17の貫通孔に入射する電流よりも増加することになる。これにより、ターゲット6に照射される電子ビームが増加し、ターゲット表面の信号電荷の読み取り感度が向上するので、高感度、高コントラストの撮像装置を実現することができる。
【0023】
次に、トリミング電極17の作製方法について説明する。図4(a)に示した多孔質ニッケルの板18に、エッチング処理を行い、貫通孔を形成していく。多孔質ニッケルは、ニッケルの粒子が焼結したものであり、内部には、粒子の間に隙間がある。多孔質ニッケルの板18のニッケル粒子は、主に球形状の粒子でできており、それらの粒子径は1.8μmから4.7μmの範囲にあって、平均粒子径は3.0μmである。なお、図4(a)の多孔質ニッケルの板では、説明を簡単にするために、同一粒子径のものが規則正しく並んでいるものを記載している。貫通孔を形成すると、図4(b)に示したように、貫通孔の側面は、平均で1.5μm程度の凹凸を持った形状となる。
【0024】
多孔質ニッケルの板18のエッチング処理は、以下のウエットエッチング工程により行う。多孔質ニッケルの板18において、エッチングをさせない部分の表面に、蒸着等により窒化ケイ素を100nmの厚さで形成し、マスキング層を形成する。次に、多孔質ニッケルの板18を、10重量%の硝酸を含有したエッチング液に浸す。この工程により、マスキング層がない部分のニッケルが硝酸により侵食されるので、多孔質ニッケル内に貫通孔が形成されていく。前記エッチング液中で多孔質ニッケルの板18を2時間浸し、エッチング処理を完了させると、図4(b)に示すように、貫通孔の側面は、平均で1.5μm程度の凹凸のある形状となる。最後に、アルキルベンゼンスルホン酸等の剥離液で窒化ケイ素のマスキング層を除去すると、図4(b)に示す、側面に凹凸のある貫通孔を持ったトリミング電極17が完成する。
【0025】
複数の貫通孔を形成した多孔質ニッケルの板に対して、電子ビームが入射する側の貫通孔以外の部分をマスキングし、電子ビームが入射する側の斜め方向からマグネシウムを蒸着・成膜して、貫通孔の側面にマグネシウムの層を形成する。その後、マグネシウムの層を酸化処理し、図4(c)に示すように、貫通孔表面に凹凸を持った酸化マグネシウムの層14を形成した多孔質ニッケルの板を作製する。この多孔質ニッケルの板を電極サポート12に、導電性物質で接着させることにより、トリミング電極17が完成する。
【0026】
なお、第二の実施形態では、トリミング電極の材料として、多孔質ニッケルを用いたが、導電性のある多孔質物質であれば、特に材料を選ぶものではない。ただし、真空中で使用する部材であることから、真空中での放出ガスが少ないものが好ましく、かつマグネシウムの酸化工程において酸化されないことが必要であるので、多孔質金属としては、ニッケルか銅が好ましい。
【0027】
(実施の形態3)
本発明の第三の実施形態について、図面を用いて説明する。本発明の電界放出型電子源装置の概略図を図5(a)に示す。第三の実施形態の電界放出型電子源装置の構成は、複数の貫通孔を有するトリミング電極19を除いて、図1に示した第一の実施形態と同じである。
【0028】
図5(b)に貫通孔を有するトリミング電極部の拡大断面図を示す。第三の実施形態におけるトリミング電極19は、第一の実施形態におけるトリミング電極11と同様に、井桁状の貫通孔を持ち、貫通孔の開口径Dに対して長さLが1:5の構造体である。第三の実施形態におけるトリミング電極19の貫通孔の側面は、平面の電極基体上に、二次電子放射物質として酸化マグネシウムの微粒子の層20を形成することにより、凹凸を持った形状となっている。
【0029】
このトリミング電極19を用いた場合であっても、貫通孔の側面が酸化マグネシウムの微粒子によって凹凸を形成しているので、貫通孔に斜め方向に入射した電子が、貫通孔の側面に衝突して散乱し、貫通孔の側面に衝突する回数が増える。同時に、酸化マグネシウムの微粒子が二次電子を放出するので、ターゲット6へ向かう電流は、トリミング電極19の貫通孔に入射する電流よりも増加することになる。これにより、第一の実施形態と同様に、ターゲット6に照射される電子ビームが増加し、ターゲット表面の信号電荷の読み取り感度が向上するので、高感度、高コントラストの撮像装置を実現することができる。
【0030】
次にトリミング電極19の作製方法と酸化マグネシウムの微粒子の層20の形成方法について説明する。図6(a)は、トリミング電極の加工前の状態を示している。加工前のトリミング電極は、珪素の単一基板21となっている。この珪素基板21に対して、エッチング処理を行い、貫通孔を形成していく。
【0031】
なお、エッチング処理は、以下のウエットエッチング工程により行う。珪素基板21において、エッチングをさせない部分の表面に、蒸着等により窒化ケイ素を100nmの厚さで形成し、マスキング層を形成する。次に、珪素基板21を、30重量%の水酸化カリウムを含有したエッチング液に浸す。この工程により、マスキング層がない部分の珪素が水酸化カリウムにより侵食されるので、珪素基板内に貫通孔が形成されていく。前記エッチング液中で珪素基板21を30分間浸し、エッチング処理を完了させると、図6(b)に示すように、側面が平面形状の貫通孔が形成される。次に、アルキルベンゼンスルホン酸等の剥離液で窒化ケイ素のマスキング層を除去し、複数の貫通孔を持った珪素基板21を製造する。
【0032】
次に、複数の貫通孔を形成した珪素基板21に対して、高分散溶媒と粒子径1μm以下の酸化マグネシウムの微粒子を混合した混合液に浸し、珪素基板に電荷を与えて、珪素基板の表面に厚さ2μm程度の酸化マグネシウムの微粒子の層20を電着・形成する。次に、珪素基板の表面と裏面の酸化マグネシウムの微粒子層を除去し、珪素基板の貫通孔の側面のみに酸化マグネシウムの微粒子層20を残すことによって、図6(c)に示すように、貫通孔表面に酸化マグネシウムの微粒子層20を形成した珪素基板を作製する。この珪素基板を図5(a)に示す電極サポート12に、導電性物質で接着させることにより、トリミング電極19が完成する。
【0033】
なお、第三の実施形態では、トリミング電極の材料として、珪素を用いたが、導電性物質であれば特に材料を選ぶものではないことは、第一の実施形態の場合と同様である。また、トリミング電極の貫通孔の側面には酸化マグネシウムの微粒子の層を形成したが、酸化ベリリウムの微粒子の層を形成しても同様の効果が得られる。また、第三の実施形態では、酸化マグネシウムの微粒子の層の形成方法として電着法を用いたが、特に形成方法を限定するものではなく、例えば、スラリー塗布法を用いても酸化マグネシウムの微粒子の層の形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の利用分野は、電界放出型電子源撮像装置として、特に暗視カメラ等の高感度・高解像度の撮像装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる電界放出型電子源装置の断面図
【図2】本発明の実施の形態1にかかる電界放出型電子源装置に使用されるトリミング電極の作成方法を示す図
【図3】本発明の実施の形態2にかかる電界放出型電子源装置の断面図
【図4】本発明の実施の形態2にかかる電界放出型電子源装置に使用されるトリミング電極の作成方法を示す図
【図5】本発明の実施の形態3にかかる電界放出型電子源装置の断面図
【図6】本発明の実施の形態3にかかる電界放出型電子源装置に使用されるトリミング電極の作成方法を示す図
【図7】従来の電界放出型電子源アレイを用いた電界放出型電子源装置の断面図
【符号の説明】
【0036】
1 前面パネル
2 背面パネル
3 側面外周器
4 封着部材
5 陽極電極
6 ターゲット
7 電界放出型電子源アレイ
8 半導体基板
9 電子ビーム
10 陰極基板
11 トリミング電極
12 電極サポート
13 貫通孔
14 酸化マグネシウムの層
15 珪素の層
16 酸化珪素の層
17 トリミング電極
18 多孔質ニッケルの板
19 トリミング電極
20 酸化マグネシウムの微粒子の層
21 珪素基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を放出するエミッタが複数設けられた電子源アレイと、
前記電子源アレイから放出された電子ビームにより所定の動作を行う光電変換膜と、
前記電子源アレイと前記光電変換膜との間に内壁表面が二次電子放射物質の膜で被覆された複数の貫通孔を持つ電極と、
を備えた電界放出型電子源装置。
【請求項2】
前記電子源アレイは、電子を放出するエミッタが複数配列されている請求項1に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項3】
前記貫通孔に被覆された前記二次電子放射物質の膜の表面に凸凹を施した請求項1に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項4】
前記二次電子放射物質が、酸化マグネシウム、酸化ベリリウムのいずれかを含む薄膜であることを特徴とする請求項1に記載の電子源装置。
【請求項5】
前記二次電子放射物質が、酸化マグネシウム、酸化ベリリウムの微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の電子源装置。
【請求項6】
前記貫通孔は、開口径よりも長さの方が大きいことを特徴とする請求項1に記載の電子源装置。
【請求項7】
前記電極は、珪素と酸化珪素の積層板からなることを特徴とする請求項1に記載の電子源装置。
【請求項8】
前記複数の貫通孔を有する電極が、多孔質金属からなることを特徴とする請求項1から請求項3に記載の電子源装置。
【請求項9】
前記多孔質金属がニッケルまたは銅からなることを特徴とする請求項5に記載の電子源装置。
【請求項1】
電子を放出するエミッタが複数設けられた電子源アレイと、
前記電子源アレイから放出された電子ビームにより所定の動作を行う光電変換膜と、
前記電子源アレイと前記光電変換膜との間に内壁表面が二次電子放射物質の膜で被覆された複数の貫通孔を持つ電極と、
を備えた電界放出型電子源装置。
【請求項2】
前記電子源アレイは、電子を放出するエミッタが複数配列されている請求項1に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項3】
前記貫通孔に被覆された前記二次電子放射物質の膜の表面に凸凹を施した請求項1に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項4】
前記二次電子放射物質が、酸化マグネシウム、酸化ベリリウムのいずれかを含む薄膜であることを特徴とする請求項1に記載の電子源装置。
【請求項5】
前記二次電子放射物質が、酸化マグネシウム、酸化ベリリウムの微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の電子源装置。
【請求項6】
前記貫通孔は、開口径よりも長さの方が大きいことを特徴とする請求項1に記載の電子源装置。
【請求項7】
前記電極は、珪素と酸化珪素の積層板からなることを特徴とする請求項1に記載の電子源装置。
【請求項8】
前記複数の貫通孔を有する電極が、多孔質金属からなることを特徴とする請求項1から請求項3に記載の電子源装置。
【請求項9】
前記多孔質金属がニッケルまたは銅からなることを特徴とする請求項5に記載の電子源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2009−81017(P2009−81017A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248616(P2007−248616)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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