説明

電磁クラッチ

【課題】省電力の要請にも応えながら、相対的に大きな伝達トルクを得ることが可能な構成の電磁クラッチを提供する。
【解決手段】ロータ部7のトルクをアーマチュア6が駆動軸10の径方向に沿ってハブ3側に押される押圧力に変換するアーマチュア吸着補助手段としてトルク伝達機構35を有し、このトルク伝達機構35は、従動機器の駆動がOFF状態でアーマチュア6とハブ3とが非吸着時にはその長手方向に沿った仮想線が駆動軸10の径方向よりもアウター部材4及びアーマチュア6の周方向に沿って傾いた位置にあり、従動機器の駆動がONとなりハブ3が回転を開始するとロータ部7の回転力を受けてトルク伝達機構35が起き上がり、トルク伝達機構35のアーマチュア6側で当該アーチュア6を押圧する構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動力源からコンプレッサ等の従動機器に伝達する動力を断続させるために用いられる電磁クラッチの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電磁クラッチとしては、例えば特許文献1に示されるように、回転自在に取り付けられたプーリの内周面に設けられた摩擦板と、この摩擦板と対峙する接離面と磁気通路面とを有するアーマチュアと、このアーマチュアを支える弾性体と、この弾性体を支え且つ回転軸に固定されるハブと、前記アーマチュアを磁化し、該アーマチュアを径方向へ移動させることで前記摩擦板と接触させる電磁石とから構成されるものが既に公知となっている。
【0003】
さらに、電磁クラッチについて、相対的に大きな伝達トルクを得るための構成としては、例えば特許文献2に示されるように、電磁クラッチのディスクの半径方向の中程に、磁気の流れを遮断する磁気遮断部をディスクの周方向に沿って形成すると共に、電磁クラッチのロータの摩擦面に対し、前記磁気遮断部とは当該ロータの半径方向において異なった位置に磁気の流れを遮断する磁気遮断部をディスクの周方向に沿って形成することで、複数の磁極が形成されると共に、各磁極の相互に対向する側の面積を見るに外周側磁極の対向面積が内周側磁極の対向面積よりも狭くなるようにして、外周側磁極では磁束密度を増加させ、接触面圧を向上させるものが本願の特許出願人により既に公知となっている。
【特許文献1】特開平11−257376号公報
【特許文献2】特開2004−52985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば特許文献1に記載の電磁クラッチにおいて、相対的に大きな伝達トルクを得るための手法として、電磁コイルの巻き数を多くしたり、電磁コイルに流す電流量を増やすことが考えられるところ、電磁コイルが相対的に大型化し、コンプレッサの製造コストが相対的に上昇したり、コンプレッサの消費電力が増加し、このコンプレッサを車両用空調装置の構成部品として用いた場合には当該車両の燃費が悪化したりするとの不具合を生ずる。
【0005】
これに対し、特許文献2に示されるような構成の電磁クラッチでは、前述したように相対的に大きな伝達トルクを得るための構成を有する一方で、前記特許文献1に記載の電磁クラッチと同様に、電磁コイルの起磁力のみによりアーマチュアが吸着される構成であることには変わりないので、近年における省電力化の要請に寄与することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、省電力の要請にも応えながら、相対的に大きな伝達トルクを得ることが可能な構成の電磁クラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る電磁クラッチは、従動機器の駆動軸に連結されると共にこの駆動軸の軸方向に沿って延びる延出部位を有するハブと、駆動源から動力が伝導されることで回転自在のプーリ、前記プーリに対し前記ハブの延出部位側に設けられたアウター部材、このアウター部材に対し前記ハブの延出部位側に固定される弾性を有するダンパー、及び、このダンパーに対し前記ハブの延出部位側に固定されたアーマチュアからなるロータ部と、前記従動機器のハウジングに固定された励磁コイルとを備え、前記励磁コイルへの通電にて発生する電磁力により前記ハブに前記アーマチュアを吸着させる電磁クラッチにおいて、前記ロータ部のトルクを前記アーマチュアが前記駆動軸の径方向に沿って前記ハブ側に押される押圧力に変換するアーマチュア吸着補助手段を有することを特徴としている(請求項1)。ここで、駆動源とは、例えば車両のエンジンやモータである。また、従動機器とは、例えば圧縮機若しくはコンプレッサと称される空調用機器である。
【0008】
これにより、励磁コイルへの通電にて発生する電磁力の他に電磁力アーマチュア吸着補助手段によって生ずる駆動軸の径方向に沿った押圧力によってもアーマチュアをハブと吸着させることができるので、励磁コイルへの電力供給量を相対的に減少させることが可能となる。
【0009】
ここで、前記アーマチュア吸着補助手段は、前記アウター部材と前記アーマチュアとの間に配置されたトルク伝達機構により少なくとも構成されており、このトルク伝達機構の長手方向に沿って延びる仮想線を採った場合に、前記ロータ部のトルクにより、この仮想線が前記駆動軸の径方向に沿って延びる仮想線に対し前記アウター部材及びアーマチュアの周方向に傾いた位置から、当該アウター部材及びアーマチュアの周方向に沿った方向においては変位することなく、前記駆動軸の軸方向に沿った線に向けて変位するように前記トルク伝達機構を可変させることにより、前記アーマチュアを前記ハブ側に押圧させることを特徴としている(請求項2)。
【0010】
すなわち、トルク伝達機構は、従動機器の駆動がOFF状態でアーマチュアとハブとが吸着していないときにはその長手方向に沿った仮想線が駆動軸の径方向に沿って延びる仮想線に対しアウター部材及びアーマチュアの周方向寄りに傾いた位置になっているところ、従動機器の駆動がONとなりハブが回転を開始すると、このトルク伝達機構もロータ部のトルクを受け、トルク伝達機構の長手方向に沿った仮想線が駆動軸の径方向に沿って延びる仮想線に向かって、トルク伝達機構が起き上がり、トルク伝達機構のアーマチュア側が当該アーチュアを押圧することとなる。
【0011】
そして、前記アーマチュアに前記駆動軸の径方向に向けて変形した部位を形成することにより、前記アーマチュアと前記ハブとが吸着している場合と吸着していない場合とに関係なく画成された空間部を有するものとしてもよい(請求項3)。これにより、アーマチュアのバネ定数が相対的に小さくなる。
【0012】
また、前記アーマチュアを複数に分割することにより、前記アーマチュアと前記ハブとが吸着している場合と吸着していない場合とに関係なく画成された空間部を有するものとしてもよい(請求項4)。
【0013】
更に、前記トルク伝達機構は、前記ダンパーに形成された収納室内に収納されており、この収納室は、かかる収納室の長手方向の一方端側の壁部が前記アウター部材の周方向に沿った内側輪郭線よりも突出していると共に、前記収納室の長手方向の他方側端の壁部が前記アーマチュアの周方向に沿った外側輪郭線よりも突出したものとしてもよい(請求項5)。
【0014】
その一方で、前記アーマチュア吸着補助手段は、前記駆動軸の径方向に延びる延出部により構成されており、この延出部は、その延出方向の一方端側が前記アウター部材と連結されていると共に、その延出方向の他方端側が前記アーマチュアと連結されており、この延出部の延出方向に沿って延びる仮想線を採った場合に、この仮想線が前記ロータ部のトルクにより前記駆動軸の径方向に沿って延びる仮想線に対しアウター部材及びアーマチュアの周方向に傾いた位置から前記駆動軸の軸方向に沿って延びる仮想線に向けて変位するように前記延出部を可変させることにより、前記アーマチュアを前記ハブ側に押圧するものとなっている(請求項6)。
【0015】
すなわち、延出部は、従動機器の駆動がOFF状態でアーマチュアとハブとが吸着していないときにはその延出方向に沿った仮想線が駆動軸の径方向に沿って延びる仮想線に対しアウター部材及びアーマチュアの周方向にずれたものとなっているところ、従動機器の駆動がONとなりハブが回転を開始すると、この延出部もロータ部のトルクを受け、延出部の長手方向に沿った仮想線が駆動軸の径方向に沿って延びる仮想線に向かって、延出部が立ち上がり、延長部のアーマチュア側が当該アーチュアを押圧することとなる。
【0016】
そして、前記プーリのうち前記駆動軸の径方向に沿って延びる面に貫通状の溝を当該プーリのうち駆動軸の径方向に沿って延びる面の周方向に沿って均等な間隔で且つ同じ長手方向に沿った寸法にて形成し、この溝に前記アーマチュアの一端が差し込まれていると共に、前記溝の軸方向に沿った位置に空間の有無を測定するギャップセンサが配置されることが可能となる(請求項7)。これにより、従動機器たる圧縮機、ひいては自動車のエンジンやモータに対する負荷の大きさを、ギャップセンサによってアーマチュアの溝の長手方向に沿った方向における寄りの程度を検出することで容易に測定することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、請求項1から7に記載の発明によれば、励磁コイルへの通電にて発生する電磁力の他に電磁力アーマチュア吸着補助手段によって生ずる駆動軸の径方向に沿った押圧力によってもアーマチュアをハブと吸着させることができるので、励磁コイルへの電力供給量を相対的に減少させることが可能となることから、従動機器の消費電力量を抑制することができ、省エネの要請に応えることが可能となる。
【0018】
特に請求項2に記載の発明によれば、アーマチュア吸着補助手段のトルク伝達機構は、従動機器の駆動がOFF状態でアーマチュアとハブとが吸着していないときにはその長手方向に沿った仮想線が駆動軸の径方向に沿って延びる仮想線に対し円周方向寄りに傾いた位置になっているが、従動機器の駆動がONとなりハブが回転を開始すると、ロータ部のトルクを受けて当該トルク伝達機構の長手方向に沿った仮想線が駆動軸の径方向に沿って延びる仮想線に向かって起き上がるので、アーチュアを押圧することができる。
【0019】
特に請求項3に記載の発明によれば、アーマチュアのバネ定数を相対的に小さくすることができる。
【0020】
特に請求項4に記載の発明によれば、アーマチュア吸着補助手段の延出部は、従動機器の駆動がOFF状態でアーマチュアとハブとが吸着していないときにはその延出方向に沿った仮想線が駆動軸の径方向に沿って延びる仮想線に対し円周方向にずれたものとなっているが、従動機器の駆動がONとなりハブが回転を開始すると、ロータ部の回転力を受けて当該延出部の長手方向に沿った仮想線が駆動軸の径方向に沿って延びる仮想線に向かって立ち上がるので、アーチュアを押圧することができる。
【0021】
特に請求項7に記載の発明によれば、従動機器たる圧縮機、ひいては自動車のエンジンやモータに対する負荷の大きさを、ギャップセンサによってアーマチュアの溝の長手方向に沿った方向での寄りの程度を検出することで容易に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0023】
図1から図3において、この発明に係る電磁クラッチ1の第1の実施例が示されている。この電磁クラッチ1は、自動車のエンジンやモータ等の駆動源からコンプレッサ等の従動機器に対し回転動力(トルク)を断続的に供給することができるようにするためのものである。
【0024】
そして、この電磁クラッチ1は、ハブ2と、プーリ3、アウター部材4、ダンパー5及びアーマチュア6から成るロータ部7と、励磁コイル8とを有して構成されている。
【0025】
このうち、ハブ2は、圧縮機等の従動機器の駆動軸10の長手方向に沿った端部とボルト11を介して連結される中央部材12と、駆動軸10の軸方向のうち従動機器の機内側にて中央部材12とビス等の固定具13を介して連結された外周部材14とを有して構成されており、中央部材12と外周部材14との組み合わせは駆動軸10の軸方向側から見て真円形状をなしていると共に外周部材14の外縁側は従動機器の機内側に向けて駆動軸10の軸方向に沿って延びる延出部位15を有している。これにより、ハブ2は駆動軸10と常に一体的に回転すると共に延出部位15のうち後述するアーマチュア6と対峙する側に摩擦面16を有し、この摩擦面16には、励磁コイル8によって発生する磁気の通過を遮断する磁気遮断部17が延出部位15の円周方向に沿って断続的に形成されている。
【0026】
励磁コイル8は、ステータハウジング18内に設けられたボビン19に巻回され、取付板20によって従動機器のハウジング21に固定されている。
【0027】
ロータ部7のプーリ3は、駆動軸10の軸方向に沿って延びて、駆動源たるエンジン又はモータと連結するための連結ベルト(図示せず)が装着される溝部22を有する延出部位23と、この延出部位23よりも駆動軸10側にてかかる駆動軸10の軸方向に沿って延び、従動機器のハウジング21とベアリング24を介して装着されている延出部位25と、駆動軸10の径方向に沿って延びて延出部位23と延出部位25とを連結する連結部位26とを有して構成されている。この連結部位26は、円周方向に沿って均等な間隔で且つ同じ長手方向に沿った寸法が同じになるように複数の貫通した溝27が形成されており、この溝27には後述するアーマチュア6の端部6aが挿嵌されている。
【0028】
ロータ部7のアウター部材4は、駆動軸10の軸方向からみて環状形状のものでプーリ3の延出部位23の内側に固定されてプーリ3と一体的に回転する。また、ロータ部7のアーマチュア6は、この実施例では駆動軸10の軸方向からみて環状形状をなし、駆動軸10の径方向に沿って窪んだ複数の窪み30が形成されることで、ハブ2側にこのハブ2の摩擦面16と対峙する摩擦面31が円周方向に沿って断続的に形成されたものとなっている。この摩擦面31には、励磁コイル8によって発生する磁気の通過を遮断する磁気遮断部32がアーマチュア6の円周方向に沿って断続的に形成されている一方で、この摩擦面31と摩擦面16とは従動機器の駆動がOFF状態では当接せず隙間を有している。そして、アウター部材4とアーマチュア6とは円周方向に沿っての変形・復元が可能な弾性素材で形成されたダンパー5を介して連結されて、アウター部材4とアーマチュア6とについても一体的に回転する。
【0029】
さらに、この実施例では、特に図2に示されるように、ダンパー5内に駆動軸10の軸方向に沿って延びる開口を有しない袋状の収納室34が複数設けられている。この収納室34は、図1(b)に示されるように、駆動軸10の軸心からアーマチュア6の摩擦面31の円周方向の略中央を通過する直線上に配置されていると共に、その長手方向の一方側端の壁部はアウター部材4の円周方向に沿った内側輪郭線よりも駆動軸10の径方向外側に突出していると共に、その長手方向の他方側端の壁部はアーマチュア6の周方向に沿った外側輪郭線よりも駆動軸10の径方向内側に突出している。そして、この収納室34は、図1(b)及び図2に示されるように、収納室34の長手方向に沿って延びる仮想線と駆動軸10の径方向に延びる仮想線とを採った場合に、収納室34の長手方向に沿った仮想線が駆動軸10の径方向に延びる仮想線に対してアウター部材4及びアーマチュア6の周方向側にずれるように形成されている。
【0030】
この収納室34には、その内部空間の全てを埋めるようにトルク伝達機構35が収納されており、このトルク伝達機構35は例えば金属製等の素材から成る直線状のつっぱり板等が主要部材として用いられる。
【0031】
このようなダンパー5の収納室34にトルク伝達機構35が収納された構成とすることにより、トルク伝達機構35は、従動機器の駆動がOFF状態でアーマチュアとハブとが吸着していないときには図2の2点鎖線に示されるようにその長手方向に沿った仮想線が駆動軸の径方向に沿って延びる仮想線に対しアウター部材4及びアーマチュア6の周方向寄りに傾いた位置になっているところ、従動機器の駆動がONとなりハブ2が回転を開始すると、このトルク伝達機構35もロータ部7のトルクを受ける。
【0032】
しかるに、図2に示されるように、ロータ部7が白抜き矢印の方向に回転すると、トルク伝達機構35の長手方向に沿った方向のうち反ハブ側では、ロータ部7の回転方向に沿った方向F1に力が生ずると共にトルク伝達機構35が圧縮される方向F2に力が生ずることにより、F2方向の力の分力として駆動軸10の径方向のうちハブ側の方向F3にも力が生じ、且つ、トルク伝達機構35の長手方向に沿った方向のうちハブ側では、ロータ部7の回転方向に対し反対方向F4に力が生ずると共にトルク伝達機構35が圧縮される方向F5に力が生ずることにより、F5方向の力の分力として駆動軸10の径方向のうち反ハブ側の方向F6にも力が生じ、更にこの反ハブ側の方向F6の力の反力として駆動軸10の径方向のうちハブ側の方向F7にも力が生ずる。これにより、F3方向の力とF7方向の力とを利用して、トルク伝達機構35によりアーマチュア6を押圧するので、アーマチュア6のハブ2への吸着の補助をすることができる。
【0033】
ところで、アーマチュア6は、図1(a)に示されるように、その端部6aがプーリ3の連結部位26の溝27に挿嵌されているところ、この溝27を図3(a)及び図4(a)に示されるように、連結部位26の円周方向に沿って均等な間隔で且つ同じ長手方向に沿った寸法にて例えば3つ形成し、アーマチュアの端部6aを従動機器の駆動がOFF時において各溝27の連結部位26の周方向のうち中心部位に位置させる。そして、この溝26の開口の軸方向に沿った位置に空間(ギャップ)の有無を測定するギャップセンサ39を配置し、このギャップセンサ39からの信号が図示しない空調ユニットのコントロールユニットに送られる構成となっている。
【0034】
これにより、従動機器の駆動がOFF状態では、ギャップセンサ39は、連結部位26の溝27がない範囲(P)、連結部位26の溝27でアーマチュア6の端部6aで塞がれた範囲(A)、これらのP範囲とA範囲との間における連結部位26の溝27でアーマチュア6の端部6aで塞がれていない空間(無印)を測定した場合に、図3(c)の最上段に示されるように、上記Pの範囲からAの範囲までの間隔W1とAの範囲からPの範囲までの間隔W2とが等しいとして測定される。よって、かかるPの範囲からAの範囲までの間隔W1とAの範囲からPの範囲までの間隔W2を、図3(c)の中段に示されるように、クロック数でカウントした場合には、いずれも同じクロック数(この実施例では3つクロック数)となり、更に、この図3(c)の中段に示されるクロック数をDAコンバータ変換すると、図3(c)の最下段に示されるように、いずれも同じ高さ(この実施例では3段)のピークとして示される。
【0035】
これに対し、従動機器の駆動がON状態では、回転アウター部材4とアーマチュア6との間でねじれが生じ、これを受けてダンパー5が溝27の円周方向に沿って変形するので、ダンパー5と連結されたアーマチュアの端部6aも、図4(a)に示されるように、溝27内をロータ部7の回転方向側とは反対側に寄ることとなる。このため、従動機器の駆動がON状態では、ギャップセンサ39は、連結部位26の溝27がない範囲(P)、連結部位26の溝27でアーマチュア6の端部6aで塞がれた範囲(A)、これらのP範囲とA範囲との間における連結部位26の溝27でアーマチュア6の端部6aで塞がれていない空間(無印)を検出した場合に、図4(c)の最上段に示されるように、Pの範囲からAの範囲までの間隔W1とAの範囲からPの範囲までの間隔W2とが異なるものとして検出される。よって、かかるPの範囲からAの範囲までの間隔W1とAの範囲からPの範囲までの間隔W2とを、図4(c)の中段に示されるように、クロック数でカウントした場合には、Pの範囲からAの範囲までの間隔W1におけるクロック数(この実施例においては4つのクロック数)が、Aの範囲からPの範囲までの間隔W2におけるクロック数(この実施例においては2つのクロック数)よりも多くなる。更に、この図4(c)の中段に示されるクロック数をDAコンバータ変換すると、図4(c)の最下段に示されるように、異なる高さのピーク(この実施例では4段と2段)として示される。
【0036】
しかるに、従動機器の駆動トルクが大きくなれば、アウター部材4とアーマチュア6との間のねじれ角度も相対的に大きくなり、これに伴いアーマチュアの端部6aの溝27の円周方向への寄る度合いが相対的に大きくなるので、DAコンバータ変換で得られた高いピークと低いピークとの差又は高い方のピークの高さから従動機器の駆動トルクひいてはエンジン又はモータの負荷を推定することができ、この推定結果に基づきエンジン又はモータを適正に制御することが可能となる。
【実施例2】
【0037】
図5において、この発明に係る電磁クラッチ1の第2の実施例が示されている。尚、先述した電磁クラッチ1の第1の実施例と同様の構成については、基本的に、同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成について図5を用いて以下に説明する。
【0038】
この電磁クラッチ1は、図5(b)に示されるように、アーマチュア6を駆動軸10の径方向に向けて窪ませた窪み41が形成されている。そして、アーマチュア6にこのような窪み41を形成することで、ダンパー5もこのアーマチュア6の窪み41のダンパー5側への入り込みに対応して湾曲するかたちで変形している。これに伴い、アーマチュア6の窪み41によって、空間部42がアーマチュア6とハブ2とが吸着している場合と吸着していない場合とに関係なく画成される。これにより、アーマチュア6のバネ定数が相対的に小さくなる。
【実施例3】
【0039】
図6において、この発明に係る電磁クラッチ1の第3の実施例が示されている。尚、先述した電磁クラッチ1の第1及び第2の実施例と同様の構成については、基本的に、同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成について図6を用いて以下に説明する。
【0040】
この電磁クラッチ1では、アーマチュア6とハブ2とが吸着している場合と吸着していない場合とに関係なく画成された空間部42は、駆動軸10の径方向に沿って延出することによりアーマチュア6を複数に分割することで形成されている。尚、この空間部42の先端は、ダンパー5まで達してこのダンパー5も窪ませた構成となっている。
【実施例4】
【0041】
図7において、この発明に係る電磁クラッチ1の第4の実施例が示されている。尚、先述した電磁クラッチ1の第1、第2及び第3の実施例と同様の構成については、基本的に、同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成について図7を用いて以下に説明する。
【0042】
この電磁クラッチ1では、特に図7(b)に示されるように、トルク伝達機構35の代わりに駆動軸10の径方向に延びる延出部44を有しており、この延出部44は、その延出方向の一方端側がアウター部材4と連結されていると共に、その延出方向の他方端側がアーマチュア6と連結されており、この延出部44の延出方向に沿って延びる仮想線を採った場合には、この仮想線が駆動軸10の径方向に延びる仮想線に対してアウター部材4及びアーマチュア6の周方向側にずれるように形成されている。そして、アーマチュア6も複数のアーマチュア部材45に分割されており、これらの分割されたアーマチュア部材45間には空間部46が配置されている。
【0043】
このような延出部44とアーマチュア6との構成とすることにより、延出部44は、従動機器の駆動がOFF状態でアーマチュアとハブとが吸着していないときには、その長手方向に沿って仮想線を採った場合には、この仮想線が駆動軸の径方向に沿って延びる仮想線に対しアウター部材4及びアーマチュア6の周方向寄りに傾いた位置になっているところ、従動機器の駆動がONとなりハブ2が回転を開始すると、この延出部44もロータ部7のトルクを受ける。
【0044】
しかるに、図2に示される力の方向を参酌して説明すると、ロータ部7が回転すると、延出部44の長手方向に沿った方向のうち反ハブ側では、ロータ部7の回転方向に沿った方向(図2のF1と同じ方向)に力が生ずると共に延出部44が圧縮される方向(図2のF2と同じ方向)に力が生ずることにより、図2のF2と同じ方向の力の分力として駆動軸10の径方向のうちハブ側の方向(図2のF3と同じ方向)にも力が生じ、且つ、延出部44の長手方向に沿った方向のうちハブ側では、ロータ部7の回転方向に対し反対方向(図2のF4と同じ方向)に力が生ずると共に延出部44が圧縮される方向(図2のF5と同じ方向)に力が生ずることにより、図2のF5と同じ方向の力の分力として駆動軸10の径方向のうち反ハブ側の方向(図2のF6と同じ方向)にも力が生じ、更にこの図2のF6と同じ方向の力の反力として駆動軸10の径方向のうちハブ側の方向(図2のF7と同じ方向)にも力が生ずる。これにより、図2のF3と同じ方向の力と図2のF7と同じ方向の力とを利用して、延出部44によりアーマチュア6を押圧するので、アーマチュア6のハブ2への吸着の補助をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、この発明の第1の実施例を示す説明図であって、図1(a)は図1(b)のI−I線断面図であり、図1(b)は駆動軸の軸方向のうち従動機器の機外側から見た状態を示す説明である。
【図2】図2は、図1(b)の破線で囲まれた部位についてトルク伝達機構の端面が外部に出るように示した断面図である。
【図3】図3は、ギャップセンサの配置並びに、同上の実施例において従動機器の駆動がOFFの状態における回転数を導くべく、ギャップセンサでのダンパーのねじれ度について測定結果として示すと共に、この測定結果をクロック数でカウントし、さらにこのクロック数をDAコンバータ変換してピークとして示した特性線図である。
【図4】図4は、ギャップセンサの配置並びに、同上の実施例において従動機器の駆動がOFFの状態における回転数を導くべく、ギャップセンサでのダンパーのねじれ度について測定結果として示すと共に、この測定結果をクロック数でカウントし、さらにこのクロック数をDAコンバータ変換してピークとして示した特性線図である。
【図5】図5は、この発明の第2の実施例を示す説明図であって、図5(a)は図5(b)のII−II線断面図であり、図5(b)は駆動軸の軸方向のうち従動機器の機外側から見た状態を示す説明である。
【図6】図6は、この発明の第3の実施例を示す説明図であって、図6(a)は図6(b)のIII−III線断面図であり、図6(b)は駆動軸の軸方向のうち従動機器の機外側から見た状態を示す説明である。
【図7】図7は、この発明の第4の実施例を示す説明図であって、図7(a)は図7(b)のIV−IV線断面図であり、図7(b)は駆動軸の軸方向のうち従動機器の機外側から見た状態を示す説明である。
【符号の説明】
【0046】
1 電磁クラッチ
2 ハブ
3 プーリ
4 アウター部材
5 ダンパー
6 アーマチュア
7 ロータ部
8 励磁コイル
10 駆動軸
15 延出部位
23 延出部位
26 連結部位
27 溝
34 収納室
35 トルク伝達機構
39 ギャップセンサ
41 窪み
42 空間部
44 延出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
従動機器の駆動軸に連結されると共にこの駆動軸の軸方向に沿って延びる延出部位を有するハブと、
駆動源から動力が伝導されることで回転自在のプーリ、前記プーリに対し前記ハブの延出部位側に設けられたアウター部材、このアウター部材に対し前記ハブの延出部位側に固定される弾性を有するダンパー、及び、このダンパーに対し前記ハブの延出部位側に固定されたアーマチュアからなるロータ部と、
前記従動機器のハウジングに固定された励磁コイルとを備え、
前記励磁コイルへの通電にて発生する電磁力により前記ハブに前記アーマチュアを吸着させる電磁クラッチにおいて、
前記ロータ部のトルクを前記アーマチュアが前記駆動軸の径方向に沿って前記ハブ側に押される押圧力に変換するアーマチュア吸着補助手段を有することを特徴とする電磁クラッチ。
【請求項2】
前記アーマチュア吸着補助手段は、前記アウター部材と前記アーマチュアとの間に配置されたトルク伝達機構により少なくとも構成されており、このトルク伝達機構の長手方向に沿って延びる仮想線を採った場合に、前記ロータ部のトルクにより、この仮想線が前記駆動軸の径方向に沿って延びる仮想線に対し前記アウター部材及びアーマチュアの周方向に傾いた位置から、当該アウター部材及びアーマチュアの周方向に沿った方向においては変位することなく、前記駆動軸の軸方向に沿った線に向けて変位するように前記トルク伝達機構を可変させることにより、前記アーマチュアを前記ハブ側に押圧させることを特徴とする請求項1に記載の電磁クラッチ。
【請求項3】
前記アーマチュアに前記駆動軸の径方向に向けて変形した部位を形成することにより、前記アーマチュアと前記ハブとが吸着している場合と吸着していない場合とに関係なく画成された空間部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁クラッチ。
【請求項4】
前記アーマチュアを複数に分割することにより、前記アーマチュアと前記ハブとが吸着している場合と吸着していない場合とに関係なく画成された空間部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁クラッチ。
【請求項5】
前記トルク伝達機構は、前記ダンパーに形成された収納室内に収納されており、この収納室は、かかる収納室の長手方向の一方端側の壁部が前記アウター部材の周方向に沿った内側輪郭線よりも突出していると共に、前記収納室の長手方向の他方側端の壁部が前記アーマチュアの周方向に沿った外側輪郭線よりも突出していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電磁クラッチ。
【請求項6】
前記アーマチュア吸着補助手段は、前記駆動軸の径方向に延びる延出部により構成されており、この延出部は、その延出方向の一方端側が前記アウター部材と連結されていると共に、その延出方向の他方端側が前記アーマチュアと連結されており、
この延出部の延出方向に沿って延びる仮想線を採った場合に、前記ロータ部のトルクにより、この仮想線が前記駆動軸の径方向に沿って延びる仮想線に対し前記アウター部材及びアーマチュアの周方向に傾いた位置から前記駆動軸の軸方向に沿って延びる仮想線に向けて変位するように前記延出部を可変させることにより、前記アーマチュアを前記ハブ側に押圧することを特徴とする請求項1に記載の電磁クラッチ。
【請求項7】
前記プーリのうち前記駆動軸の径方向に沿って延びる面に貫通状の溝を当該プーリのうち駆動軸の径方向に沿って延びる面の周方向に沿って均等な間隔で且つ同じ長手方向に沿った寸法にて形成し、この溝に前記アーマチュアの一端が差し込まれていると共に、前記溝の軸方向に沿った位置に空間の有無を測定するギャップセンサが配置されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の電磁クラッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−38303(P2010−38303A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203525(P2008−203525)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(500309126)株式会社ヴァレオサーマルシステムズ (282)